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JP4879003B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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本発明は、半導体ウェハーや液晶表示装置用ガラス基板等(以下、単に「基板」と称する)に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
従来より、イオン注入後の半導体ウェハーのイオン活性化工程においては、ハロゲンランプを使用したランプアニール装置が一般的に使用されていた。このようなランプアニール装置においては、半導体ウェハーを、例えば、1000℃ないし1100℃程度の温度に加熱(アニール)することにより、半導体ウェハーのイオン活性化を実行している。そして、このような熱処理装置においては、ハロゲンランプより照射される光のエネルギーを利用することにより、毎秒数百度程度の速度で基板を昇温する構成となっている。
一方、近年、半導体デバイスの高集積化が進展し、ゲート長が短くなるにつれて接合深さも浅くすることが望まれている。しかしながら、毎秒数百度程度の速度で半導体ウェハーを昇温する上記ランプアニール装置を使用して半導体ウェハーのイオン活性化を実行した場合においても、半導体ウェハーに打ち込まれたボロンやリン等のイオンが熱によって深く拡散するという現象が生ずることが判明した。このような現象が発生した場合においては、接合深さが要求よりも深くなり過ぎ、良好なデバイス形成に支障が生じることが懸念される。
このため、キセノンフラッシュランプを使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光(閃光)を照射することにより、イオンが注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリセカンド以下)に昇温させる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2)。キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリセカンド以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、イオンを深く拡散させることなく、イオン活性化のみを実行することができるのである。
上記のようなフラッシュ加熱を行う熱処理装置においては、キセノンフラッシュランプを冷却すべく、ランプを配置したランプハウスへのエアーの給排気を行っている。これにより、ランプハウス内の熱が排出されるとともに、キセノンフラッシュランプ自体もエアーによって冷却されることとなる。
特開2004−55821号公報 特開2004−88052号公報
ところで、フラッシュ加熱を行う熱処理装置には、フラッシュ光を照射する前に半導体ウェハーを予備加熱するホットプレートが設けられている場合が多い。これは、フラッシュ光照射のみによって1000℃以上にまで半導体ウェハーの表面を加熱しようとすると、非常に大きなエネルギーのフラッシュ光を照射しなければならず、ウェハー表面のみが急激に加熱されて半導体ウェハーが割れるおそれがあるため、ホットプレートに半導体ウェハーを載置して500℃程度にまで予備加熱した後にキセノンフラッシュランプからフラッシュ光を照射して所定のアニール温度に到達するようにしていることによるものである。
しかしながら、かかるホットプレートからはその温度に応じた比較的長波長の赤外線が放射されており、それによる輻射熱によってキセノンフラッシュランプの放電管(石英製)が外部から加熱されることとなる。500℃以上の比較的高温のホットプレートからの輻射熱によってキセノンフラッシュランプが加熱された場合、上述したエアーの給排気のみでは十分にキセノンフラッシュランプを冷却することができず、放電管が変色してランプ寿命が低下したり、最悪の場合キセノンフラッシュランプの劣化が急速に進行して破裂するという問題が生じる。このため、従来においては、ホットプレートによる予備加熱温度の上限が制約されることとなり、半導体ウェハーのアニール処理の処理条件も限定されたものにならざるを得なかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュランプを効果的に冷却することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を保持する保持部と、棒状の放電管から前記保持部に保持された基板に向けてフラッシュ光を出射するフラッシュランプと、バッファ空間を内蔵するとともに、前記バッファ空間に連通して前記フラッシュランプに向かう噴出孔を有する気体貯留部と、前記バッファ空間内の気圧が前記気体貯留部の周囲の気圧の略2倍以上となるように前記バッファ空間に気体を供給して前記噴出孔から前記フラッシュランプに向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付けさせる気体供給手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記噴出孔の径は0.5mm以上1.5mm以下であることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、基板に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を保持する保持部と、棒状の放電管から前記保持部に保持された基板に向けてフラッシュ光を出射する複数のフラッシュランプを配列して有する光源と、バッファ空間を内蔵するとともに、前記バッファ空間に連通して前記光源に向かう複数の噴出孔を有する気体貯留部と、前記バッファ空間内の気圧が前記気体貯留部の周囲の気圧の略2倍以上となるように前記バッファ空間に気体を供給して前記複数の噴出孔から前記光源に向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付けさせる気体供給手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る熱処理装置において、前記複数の噴出孔のそれぞれは前記複数のフラッシュランプのいずれかに向けて気体を噴出するように前記気体貯留部に形成されていることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項3の発明に係る熱処理装置において、前記複数の噴出孔のそれぞれは前記複数のフラッシュランプの配列におけるランプ間の隙間に向けて気体を噴出するように前記気体貯留部に形成されていることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項3から請求項5のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記複数の噴出孔のそれぞれの径は0.5mm以上1.5mm以下であることを特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項3から請求項6のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記保持部は、フラッシュ光照射の前に保持する基板を予備加熱する予備加熱機構を備えることを特徴とする。
また、請求項8の発明は、基板に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を保持する保持部と、棒状の放電管から前記保持部に保持された基板に向けてフラッシュ光を出射するフラッシュランプと、前記フラッシュランプに向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付ける気体噴出部と、を備えることを特徴とする。
請求項1および請求項2の発明によれば、バッファ空間内の気圧が気体貯留部の周囲の気圧の略2倍以上となるようにバッファ空間に気体を供給するため、噴出孔からフラッシュランプに向けて遷音速以上の流速の気体流が乱流として噴出されることとなり、フラッシュランプを効果的に冷却することができる。
また、請求項3から請求項7の発明によれば、バッファ空間内の気圧が気体貯留部の周囲の気圧の略2倍以上となるようにバッファ空間に気体を供給するため、噴出孔から光源に向けて遷音速以上の流速の気体流が乱流として噴出されることとなり、フラッシュランプを効果的に冷却することができる。
また、特に、請求項4の発明によれば、複数の噴出孔のそれぞれから複数のフラッシュランプのいずれかに向けて気体が噴出されるため、より効果的にフラッシュランプを冷却することができる。
また、特に、請求項5の発明によれば、複数の噴出孔のそれぞれから複数のフラッシュランプの配列におけるランプ間の隙間に向けて気体が噴出されるため、1つの噴出孔にて2本のフラッシュランプを冷却することができ、噴出孔の総数を少なくして容易に遷音速以上の流速の気体流を形成することができる。
また、請求項8の発明によれば、フラッシュランプに向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付けるため、フラッシュランプの周囲に乱流が形成されることとなり、フラッシュランプを効果的に冷却することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.第1実施形態>
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す側断面図である。熱処理装置1は基板として略円形の半導体ウェハーWに閃光(フラッシュ光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプ69を内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射された光を熱処理空間65に透過する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(02)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。図2に示すように、ガス導入バッファ83は、図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が図1に示す半導体ウェハーWの受渡位置と図4に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
図3は、ホットプレート71を示す平面図である。図3に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線が周回するように配設されてヒータが形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
次に、ランプハウス5について説明する。ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」という)69からなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、リフレクタ52の上側に配設された冷却ボックス20と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプ69からフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
複数のフラッシュランプ69は、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。フラッシュランプ69は、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に巻回されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態では放電管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気が放電管内に瞬時に流れ、そのときのジュール熱でキセノンガスが加熱されて光が放出される。このフラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。なお、本実施形態の各フラッシュランプ69の放電管の管径は約13mmであり、ランプ配列における隣接するフラッシュランプ69の隙間は約2mmである。
図5は、冷却ボックス20の構成を模式的に示す図である。冷却ボックス20は、内側にバッファ空間21を内蔵する平面視矩形形状の箱状部材であり、フラッシュランプ69の反射板たるリフレクタ52の上面に面接触するように設置される。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプ69から出射されたフラッシュ光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプ69に臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプ69からの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布均一性が低下するためである。なお、リフレクタ52は冷却ボックス20の底部外面に貼設しても良いし、リフレクタ52と冷却ボックス20とを一体として形成するようにしても良い。
冷却ボックス20のバッファ空間21にはガス供給部30から所定の気体(本実施形態では窒素ガス)が供給される。ガス供給部30は、ガス配管37に手動弁31、レギュレータ32、空気作動弁33、フローメータ34およびフィルター35を介挿して構成されている。また、ガス供給部30は圧力計36を備える。ガス配管37の先端部はバッファ空間21に連通接続されるとともに、その基端部は窒素ガス供給源99に連通接続される。窒素ガス供給源99としては、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティを使用することができる。
手動弁31は、手動によってガス配管37を開閉するバルブである。レギュレータ32は、ガス配管37を通過する窒素ガスの整圧動作を行うものである。空気作動弁33は、緊急時にガス配管37を閉鎖するために設けられているものであり、熱処理装置1の通常の稼働時には開放されている。フローメータ34はガス配管37を通過する窒素ガスの流量を計測し、圧力計36はその圧力を計測する。フィルター35は、ガス配管37を通過する窒素ガスから微粒子等を取り除いて浄化する。また、圧力計36はフィルター35よりも下流側のガス配管37内の圧力を計測するものであり、その圧力はバッファ空間21内の圧力と等しい。すなわち、圧力計36によって計測される圧力はバッファ空間21内の圧力である。
フローメータ34、圧力計36およびレギュレータ32は制御部3と接続されており、手動弁31および空気作動弁33を開放した状態にて、フローメータ34および圧力計36の測定結果に基づいて制御部3がレギュレータ32を制御することにより、窒素ガス供給源99からガス配管37を介してバッファ空間21に供給する窒素ガスの流量を調整することができる。また、熱処理装置1のオペレータがフローメータ34および圧力計36を監視しつつレギュレータ32の設定値を手動で調整してバッファ空間21に供給する窒素ガスの流量を調整するようにしても良い。なお、フローメータ34およびレギュレータ32に代えて双方の機能を併せ持つマスフローメータを使用するようにしても良い。
また、冷却ボックス20の低壁面およびリフレクタ52を貫通して複数の噴出孔22が穿設されている。各噴出孔22は、径がφ0.5mm以上φ1.5mm以下の円筒形状の孔であり、その円筒軸心方向が鉛直方向に沿うように形成されている。それぞれの噴出孔22の上端はバッファ空間21に開口して連通している。一方、噴出孔22の下端は複数のフラッシュランプ69からなる光源に向けて開口している。
図6は、第1実施形態における噴出孔22の配置を示す平面図である。第1実施形態においては、複数の噴出孔22が格子状に配置されており、複数の噴出孔22のそれぞれは複数のフラッシュランプ69のいずれかの直上(厳密にはフラッシュランプ69の放電管の直上)に位置するように設けられている。また、全てのフラッシュランプ69の直上に噴出孔22の列が形成されている。従って、バッファ空間21に供給された窒素ガスは、複数の噴出孔22のそれぞれからフラッシュランプ69に向けて噴出される。
図1に戻り、ランプハウス5には給気ポート55および排気ポート56が設けられている。排気ポート56は排気管57を介して図示省略の排気機構に連通接続されている。排気管57の経路途中には排気弁58が介挿されている。排気弁58を開放することによって排気ポート56を介してランプハウス5内に負圧が作用し、その結果として給気ポート55から外気(空気)が吸引される。給気ポート55から吸引された空気は、リフレクタ52とランプ光放射窓53との間、つまり複数のフラッシュランプ69の周囲を略水平方向に流れて排気ポート56から排出されるように構成されている。なお、給気ポート55に空気を供給する空気供給機構を付設するようにしても良い。
図1に示す制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えている。制御部3は、モータ40、弁82,87、フラッシュランプ69への給電回路およびガス供給部30を制御する。
なお、第1実施形態の熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプ69およびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するための冷却用の構造(図示省略)を備えている。具体的には、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管が設けられており、チャンバー6が受けた熱を排出するようにしている。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について簡単に説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物が添加された半導体基板であり、添加された不純物の活性化が熱処理装置1による熱処理により行われる。
まず、保持部7が図4に示す処理位置から図1に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプ69から半導体ウェハーWに閃光照射が行われるときの保持部7の位置であり、図4に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、図1に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。熱処理装置1における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。図1に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
次に、保持部7が受渡位置に下降したときに、弁82および弁87が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に常温の窒素ガスが導入される。続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、複数の支持ピン70上に載置される。
半導体ウェハーWの搬入時におけるチャンバー6への窒素ガスのパージ量は約40リットル/分とされ、供給された窒素ガスはチャンバー6内においてガス導入バッファ83から図2中に示す矢印AR4の方向へと流れ、図1に示す排出路86および弁87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。なお、以下で説明する各ステップにおいて、チャンバー6には常に窒素ガスが供給および排気され続けており、窒素ガスの供給量は半導体ウェハーWの処理工程に合わせて様々に変更される。
半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されると、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖される。そして、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に載置された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に配設された抵抗加熱線により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWは予備加熱されて温度が次第に上昇する。
この処理位置にて約60秒間の予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし600℃程度、好ましくは350℃ないし550℃程度とされる。また、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
約60秒間の予備加熱時間が経過した後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプ69から半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される。このとき、フラッシュランプ69から放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱は、フラッシュランプ69からの閃光照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。
すなわち、ランプハウス5のフラッシュランプ69から照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリ秒ないし10ミリ秒程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプ69からの閃光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに添加された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに添加された不純物の熱による拡散(この拡散現象を、半導体ウェハーW中の不純物のプロファイルがなまる、ともいう)を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、添加不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
また、フラッシュ加熱の前に保持部7により半導体ウェハーWを予備加熱しておくことにより、フラッシュランプ69からの閃光照射によって半導体ウェハーWの表面温度を処理温度T2まで速やかに上昇させることができる。
フラッシュ加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び図1に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWは装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理が完了する。
既述のように、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスがチャンバー6に継続的に供給されており、その供給量は、保持部7が処理位置に位置するときには約30リットル/分とされ、保持部7が処理位置以外の位置に位置するときには約40リットル/分とされる。
上述したような一連のフラッシュ加熱処理を繰り返して行うことにより、フラッシュランプ69の放電管は徐々に蓄熱されてその温度が上昇する。これは、フラッシュランプ69自身の瞬間的なパルス発光による影響よりも、むしろ保持部7のホットプレート71からの輻射熱による影響が大きい。すなわち、ホットプレート71は半導体ウェハーWの予備加熱を行うために200℃ないし600℃程度にまで昇温しており、比較的波長の長い赤外線を放射している。長波長の赤外線は石英にも吸収される。このため、ホットプレート71から放射された赤外線は、まずチャンバー6の石英製のチャンバー窓61に吸収され、チャンバー窓61が昇温する。特に、本実施形態の熱処理装置1においては、保持部7の基準位置がチャンバー窓61に近接した処理位置であるため、半導体ウェハーWの搬出入を行うとき以外はホットプレート71がチャンバー窓61に近接しており、ホットプレート71からの輻射熱によってチャンバー窓61が容易に昇温する。
チャンバー窓61が昇温すると、そのチャンバー窓61からも長波長の赤外線が放射され、それによってランプハウス5のランプ光放射窓53(石英製)が昇温する。そして、昇温したランプ光放射窓53からも長波長の赤外線が放射されることとなり、その赤外線がフラッシュランプ69の放電管(石英製)によって吸収され、フラッシュランプ69の温度が上昇するのである。このように、フラッシュランプ69の放電管はホットプレート71からの輻射熱によってチャンバー窓61およびランプ光放射窓53を介して間接的に加熱される。ホットプレート71からは持続的に赤外線放射がなされているため、フラッシュランプ69には徐々に蓄熱されてその温度が上昇する。また、予備加熱された半導体ウェハーWからの輻射熱によってもフラッシュランプ69は昇温する。
熱処理装置1においては、給気ポート55および排気ポート56によってリフレクタ52とランプ光放射窓53との間に気流を形成してランプハウス5内に蓄積された熱を排出するようにしているのであるが、ホットプレート71および半導体ウェハーWからの輻射熱によって昇温したフラッシュランプ69を冷却するにはこれだけでは不十分であり、加熱によりフラッシュランプ69の劣化が促進されて寿命が短くなったり破裂するおそれもある。
このため、本実施形態の熱処理装置1においては、冷却ボックス20の噴出孔22からフラッシュランプ69に向けて窒素ガスを噴出するようにしている。このときに、バッファ空間21内の気圧が冷却ボックス20の周囲の気圧の略2倍以上となるようにガス供給部30がバッファ空間21に窒素ガスを供給する。具体的には、バッファ空間21内の気圧を測定する圧力計36の測定結果に基づいて制御部3がレギュレータ32を制御してバッファ空間21に供給する窒素ガスの流量を調整しても良いし、オペレータが圧力計36を監視しつつレギュレータ32を調整しても良い。通常、ランプハウス5内部の冷却ボックス20の周囲の気圧は概ね大気圧(101325Pa)程度であるため、バッファ空間21内の気圧が0.19MPa以上、すなわちバッファ空間21内の気圧が冷却ボックス20周囲の気圧の略2倍以上となるようにガス供給部30がバッファ空間21に窒素ガスを供給する。
バッファ空間21内の気圧が冷却ボックス20の周囲の気圧の略2倍以上になると、複数の噴出孔22のそれぞれからは遷音速以上の流速の窒素ガス流が噴出されることとなる。本明細書における「遷音速」とは、約マッハ0.7以上である。バッファ空間21内の気圧が冷却ボックス20の周囲の気圧の略2倍を超えて高くなるほど、より高速の窒素ガスが噴出孔22から噴出されることとなる。
第1実施形態においては、複数の噴出孔22のそれぞれから複数のフラッシュランプ69のいずれかに向けて窒素ガスが噴出されるため、各フラッシュランプ69には遷音速以上の流速の窒素ガス流が直接吹き付けられることとなる。また、フラッシュランプ69は水平方向に沿って配設され、噴出孔22が鉛直方向に沿って形設されているため、フラッシュランプ69の放電管に対して垂直に遷音速以上の流速の窒素ガス流が吹き付けられる。さらに、ガス供給部30から供給された窒素ガスが一旦バッファ空間21に貯留されてから複数の噴出孔22より噴出されるので、複数の噴出孔22のそれぞれからフラッシュランプ69に均一に窒素ガス流を噴出することができる。
給気ポート55および排気ポート56によってリフレクタ52とランプ光放射窓53との間に形成される気流は比較的流速が遅く層流となりやすい。層流がフラッシュランプ69の放電管の周囲に流れると、気流の粘性と放電管の管壁の摩擦とによって該管壁と外気との界面に静止気体層が形成されるため、気体と放電管との熱交換が抑制されるのである。これに対して、噴出孔22から噴出された遷音速以上の流速の窒素ガス流はレイノルズ数の高い乱流である。このため、放電管の管壁と窒素ガス流との界面に静止気体層が形成されにくく、窒素ガスと放電管との間の熱交換が活発に行われることなる。その結果、各フラッシュランプ69が効果的に冷却されることとなり、各フラッシュランプ69の温度上昇を抑制して劣化を防止し、放電管の寿命を延ばすことが可能となる。フラッシュランプ69の温度上昇を抑制できれば、ランプの破裂を防止できるのは勿論である。また、フラッシュランプ69を効果的に冷却することができれば、ホットプレート71による半導体ウェハーWの予備加熱温度を高く設定することができ、半導体ウェハーWのアニール処理の処理条件をも幅広いものとすることができる。なお、冷却ボックス20から噴出された窒素ガスは排気ポート56から外部へと排気される。
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね図1,4に示した第1実施形態の装置構成と同じであり、また第2実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順についても第1実施形態と同一である。第2実施形態の熱処理装置が第1実施形態と相違するのは、冷却ボックス20に設けられた複数の噴出孔22の配置である。
図7は、第2実施形態における噴出孔22の配置を示す平面図である。第2実施形態においては、複数の噴出孔22が千鳥状に配置されており、複数の噴出孔22のそれぞれは複数のフラッシュランプ69の配列におけるランプ間の隙間の直上に位置するように設けられている。従って、バッファ空間21に供給された窒素ガスは、複数の噴出孔22のそれぞれから隣接するフラッシュランプ69間の隙間に向けて噴出される。なお、各噴出孔22の形状は第1実施形態と同じである。
第2実施形態においても、バッファ空間21内の気圧が冷却ボックス20の周囲の気圧の略2倍以上となるようにガス供給部30がバッファ空間21に窒素ガスを供給する。よって、複数の噴出孔22のそれぞれからは遷音速以上の流速の窒素ガス流が噴出される。第2実施形態においては、複数の噴出孔22のそれぞれから隣接するフラッシュランプ69間の隙間に向けて窒素ガスが噴出されるため、各フラッシュランプ69に直接には遷音速以上の流速の窒素ガス流が吹き付けられるものではない。しかしながら、噴出孔22から噴出された遷音速以上の流速の窒素ガス流は乱流であり、当該噴出孔22を挟んで配置された隣接するフラッシュランプ69の双方の放電管の管壁側面に乱流の窒素ガス流が流れることとなる。
このため、第1実施形態と同様に、フラッシュランプ69の放電管の管壁と窒素ガス流との界面に静止気体層が形成されることはなく、窒素ガスと放電管との間の熱交換が活発に行われることなる。その結果、各フラッシュランプ69が効果的に冷却されることとなり、各フラッシュランプ69の温度上昇を抑制して劣化を防止し、放電管の寿命を延ばすことが可能となる。また、第1実施形態と同様に、ホットプレート71による半導体ウェハーWの予備加熱温度を高く設定することができ、半導体ウェハーWのアニール処理の処理条件を幅広いものとすることができる。しかも、第2実施形態においては、1つの噴出孔22によって2本のフラッシュランプ69を冷却することができるため、各フラッシュランプ69の直上に噴出孔22を形成するのに比較して冷却ボックス20に設ける噴出孔22の総数を少なくすることが可能である。よって、より少ない窒素ガス流量にてバッファ空間21内の気圧を冷却ボックス20の周囲の気圧の略2倍以上とすることができ、容易に遷音速以上の流速の窒素ガス流を噴出することができる。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態において、複数の噴出孔22を千鳥状に配置するとともに、複数の噴出孔22のそれぞれを複数のフラッシュランプ69のいずれかの直上に形設するようにしても良い。また、第2実施形態において、複数の噴出孔22を格子状に配置するとともに、複数の噴出孔22のそれぞれを複数のフラッシュランプ69の配列におけるランプ間の隙間の直上に形設するようにしても良い。
複数の噴出孔22を格子状に配置した方がより多量の窒素ガスを噴出することができ、窒素ガスの乱流とフラッシュランプ69の放電管との接触面積を大きくして冷却効果を高めることができる。一方、複数の噴出孔22を千鳥状に配置すれば、噴出孔22の総数を少なくすることができ、冷却ボックス20に供給する窒素ガスがより少量であっても容易に遷音速以上の流速の窒素ガス流を形成することができる。また、噴出孔22をフラッシュランプ69の直上に配置した方がより大きな冷却効果を得られるが、上述の如くフラッシュランプ69間の隙間直上に配置した方が容易に遷音速以上の流速の窒素ガス流を形成することができる。
また、上記実施形態においては、遷音速以上の流速の窒素ガス流をフラッシュランプ69に噴出するようにしていたが、フラッシュランプ69に吹き付けるガス種は窒素ガスに限定されるものではなく、冷却能を有するガスであれば良く、例えば空気であっても良い。もっとも、遷音速以上の流速のガス流を形成するためには多量のガスを消費するため、コスト上昇を抑制する観点からは安価な空気または窒素ガスが好ましい。
また、上記各実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプ69を備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプ69の本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプ69はキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
また、上記各実施形態においては、半導体ウェハーに光を照射してイオン活性化処理を行うようにしていたが、本発明にかかる熱処理装置による処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではない。例えば、窒化シリコン膜や多結晶シリコン膜等の種々のシリコン膜が形成されたガラス基板に対して本発明にかかる熱処理装置による処理を行っても良い。一例として、CVD法によりガラス基板上に形成した多結晶シリコン膜にシリコンをイオン注入して非晶質化した非晶質シリコン膜を形成し、さらにその上に反射防止膜となる酸化シリコン膜を形成する。この状態で、本発明にかかる熱処理装置により非晶質のシリコン膜の全面に光照射を行い、非晶質のシリコン膜が多結晶化した多結晶シリコン膜を形成することもできる。
また、ガラス基板上に下地酸化シリコン膜、アモルファスシリコンを結晶化したポリシリコン膜を形成し、そのポリシリコン膜にリンやボロン等の不純物をドーピングした構造のTFT基板に対して本発明にかかる熱処理装置により光照射を行い、ドーピング工程で打ち込まれた不純物の活性化を行うこともできる。
本発明に係る熱処理装置の構成を示す側断面図である。 図1の熱処理装置のガス路を示す断面図である。 ホットプレートを示す平面図である。 図1の熱処理装置の構成を示す側断面図である。 冷却ボックスの構成を模式的に示す図である。 噴出孔の配置の一例を示す平面図である。 噴出孔の配置の他の例を示す平面図である。
符号の説明
1 熱処理装置
3 制御部
4 保持部昇降機構
5 ランプハウス
6 チャンバー
7 保持部
20 冷却ボックス
21 バッファ空間
22 噴出孔
30 ガス供給部
52 リフレクタ
53 ランプ光放射窓
61 チャンバー窓
65 熱処理空間
69 フラッシュランプ
71 ホットプレート
72 サセプタ
W 半導体ウェハー

Claims (8)

  1. 基板に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    基板を保持する保持部と、
    棒状の放電管から前記保持部に保持された基板に向けてフラッシュ光を出射するフラッシュランプと、
    バッファ空間を内蔵するとともに、前記バッファ空間に連通して前記フラッシュランプに向かう噴出孔を有する気体貯留部と、
    前記バッファ空間内の気圧が前記気体貯留部の周囲の気圧の2倍以上となるように前記バッファ空間に気体を供給して前記噴出孔から前記フラッシュランプに向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付けさせる気体供給手段と、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
  2. 請求項1記載の熱処理装置において、
    前記噴出孔の径は0.5mm以上1.5mm以下であることを特徴とする熱処理装置。
  3. 基板に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    基板を保持する保持部と、
    棒状の放電管から前記保持部に保持された基板に向けてフラッシュ光を出射する複数のフラッシュランプを配列して有する光源と、
    バッファ空間を内蔵するとともに、前記バッファ空間に連通して前記光源に向かう複数の噴出孔を有する気体貯留部と、
    前記バッファ空間内の気圧が前記気体貯留部の周囲の気圧の2倍以上となるように前記バッファ空間に気体を供給して前記複数の噴出孔から前記光源に向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付けさせる気体供給手段と、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
  4. 請求項3記載の熱処理装置において、
    前記複数の噴出孔のそれぞれは前記複数のフラッシュランプのいずれかに向けて気体を噴出するように前記気体貯留部に形成されていることを特徴とする熱処理装置。
  5. 請求項3記載の熱処理装置において、
    前記複数の噴出孔のそれぞれは前記複数のフラッシュランプの配列におけるランプ間の隙間に向けて気体を噴出するように前記気体貯留部に形成されていることを特徴とする熱処理装置。
  6. 請求項3から請求項5のいずれかに記載の熱処理装置において、
    前記複数の噴出孔のそれぞれの径は0.5mm以上1.5mm以下であることを特徴とする熱処理装置。
  7. 請求項3から請求項6のいずれかに記載の熱処理装置において、
    前記保持部は、フラッシュ光照射の前に保持する基板を予備加熱する予備加熱機構を備えることを特徴とする熱処理装置。
  8. 基板に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    基板を保持する保持部と、
    棒状の放電管から前記保持部に保持された基板に向けてフラッシュ光を出射するフラッシュランプと、
    前記フラッシュランプに向けて遷音速以上の流速の気体を吹き付ける気体噴出部と、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
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