JP4876414B2 - 活物質の製造方法及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
正極活物質及び負極活物質等の活物質としては、一般に、例えばコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム等の化合物が用いられている。しかし、このような活物質は、環境負荷の大きいCoやNiを主成分としているため、環境問題上好ましくはなかった。また、環境問題に対応するため、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム等の化合物からなる活物質は、リサイクルにより回収・再利用されていたが、リサイクルを行うことによりコストが増大するという問題を抱えていた。そして、近年の環境問題に対する意識の高まりからこれらに代わる活物質の開発が望まれるようになってきた。
また、LiFePO4中のFeは、2価の状態にあり、非常に酸化されやすい。そのため、合成時には原料を不活性ガス中で加熱する必要がある。しかし、例えば不活性ガス中で加熱しても、酸化されやすい2価のFeの一部が酸化され、部分的に3価のFeが生成してしまうことがあった。この3価のFeが生成するとLiFePO4は、本来の優れた容量を充分に発揮できなくなり、容量が低下してしまうという問題があった。
しかしながら、上記のように、合成原料に炭素材料を添加する方法においては、合成原料と炭素材料とを均一に混合することが困難であるという問題があった。即ち、合成原料と炭素材料とは、その機械的強度が異なる。そのため、両者をFeの酸化を防止する程充分に均一に混合させることは困難であった。それ故、反応が均一に起こらず、部分的にLiFePO4のFeが酸化され、電池の活物質として用いた際に、容量が低下したり、充放電を繰り返すことにより容量が劣化したりするという問題があった。
また、上記従来の製造方法においては、炭素材料をできるだけ均一に混合する必要があるため、製造工程数が増加し、複雑になってしまうという問題があった。
Li源と、Fe源と、P源とを含有する合成原料を準備する原料準備工程と、
上記合成原料を加熱して反応させて上記リチウム鉄リン系複合酸化物を合成する反応工程とを有し、
上記Li源、上記Fe源及び上記P源としては、構成元素からLi、Fe、及びPO4を差し引いた残りの元素から、上記反応工程の温度下においてガス又は蒸気となる元素をさらに差し引いた残りの元素がCとなるような原料を用い、
上記Fe源としてはフマル酸鉄を用い、
上記反応工程における加熱温度を550℃〜850℃にすることを特徴とする活物質の製造方法にある(請求項1)。
そのため、上記反応工程においては、LiFePO4の合成に用いられず、かつガス又は蒸気となって放出されない炭素(C)が残存する。それ故、合成時の反応雰囲気が還元雰囲気となり、Feの酸化を防止することができる。そのため、上記反応工程後には、3価のFeをほとんど含有しないリチウム鉄リン系複合酸化物からなる活物質を得ることができる。それ故、該活物質は、例えば理論容量に近いくらいの高い充放電容量を発揮することができると共に、充放電を繰り返すことによって起こりうる充放電容量の低下が抑制され、優れた充放電サイクル特性を示すことができる。
本発明において、上記活物質は、基本式LiFePO4で表されるリチウム鉄リン系複合酸化物からなる。
ここで、上記基本式で表されるリチウム鉄リン系複合酸化物は、例えばFeの少なくとも一部がMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B及びNb等から選ばれる1種以上の金属元素で置換された複合酸化物等を含む概念である。また、基本式LiFePO4においてLiのFe(置換元素がある場合には置換元素とFeとの合計)に対するモル比は1以外であってもよい。
また、上記合成原料においては、Li源、Fe源、及びP源として、それぞれ別々の化合物を用いることができるが、Li、Fe、及びPのうち2種以上を含有する化合物を用いることもできる。例えばLi源及びP源の両方になりうる化合物としては、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)等がある。
また、上記リチウム鉄リン系複合酸化物として、上述のごとく例えば記一般式LixFe1-yMyPO4で表される化合物を作製する場合には、上記原料準備工程において、Li源、Fe源、及びP源の他に、M源を含有する合成原料を準備する。
一般に、ガス又は蒸気となる元素としては、H、O、C等がある。本発明においては、上記Li源、上記Fe源及び上記P源の構成元素から、上記反応工程後に上記基本式LiFePO4で表されるリチウム鉄リン系複合酸化物を構成するLi、Fe、及びPO4を差し引き、さらに上記反応工程においてガス又は蒸気となる元素を差し引いて残る元素がCとなるように、上記Li源、上記Fe源及び上記P源を選択することができる。
上記フマル酸鉄、シュウ酸鉄は、原材料として一般に入手しやすい。
上記反応工程における加熱温度は、500℃〜900℃であることが好ましい。
加熱温度が500℃未満の場合には、上記反応工程において、上記合成原料の反応が進行し難くなり、上記リチウム鉄リン系複合酸化物が充分に合成されなくなるおそれがある。その結果、上記反応工程後に得られる活物質の放電容量が低下するおそれがある。一方、900℃を越える場合には、上記反応工程において、粒成長が過剰に進行するおそれがある。その結果、上記反応工程後に得られる活物質の充放電容量や充放電サイクル特性が低下するおそれがある。より好ましくは、上記反応工程における加熱温度は、550〜850℃がよく、さらに好ましくは、600〜800℃がよい。
上記正極活物質としては、例えば上記第1の発明の製造方法によって得られるリチウム鉄リン系複合酸化物からなる活物質を用いることができる。
これら活物質、導電材、結着剤を分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
次に、本発明の実施例につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例においては、基本式LiFePO4で表されるリチウム鉄リン系複合酸化物からなるリチウム二次電池用の活物質を作製し、該活物質を用いてリチウム二次電池を作製する。
まず、リン酸二水素リチウム(Li源、P源)とフマル酸鉄(Fe源)を準備し、これらを1:1のモル比で秤量し、エタノール中に分散させてボールミルで10時間混合した。混合後、窒素雰囲気中でエタノールを蒸発させ、粉末状の合成原料を得た。
次いで、合成原料をペレット状に成形し、不活性雰囲気で満たした焼成炉中で、温度700℃で10時間焼成してLiFePO4からなる活物質を得た。これを試料E1とする。
試料C1の作製にあたっては、リン酸二水素リチウム(Li源、P源)と硫酸鉄七水和物(Fe源)を準備し、これらを1:1のモル比で秤量し、上記試料E1と同様にエタノール中に分散させてボールミルで10時間混合した。混合後、さらに試料E1と同様にして、エタノールを蒸発させ、ペレット状に成形し、温度700℃で10時間焼成してLiFePO4からなる活物質(試料C1)を得た。
図2より知られるごとく、試料E1及び試料C1のXRDパターンにおいては、いずれもがLiFePO4で帰属されるピークのみが観察され、試料E1及び試料C1においては、LiFePO4が単相で合成されていると判断できる。
また、本例においては明確に示していないが、試料E1及び試料C1の活物質についてSEM観察により粒子径を確認したところ、粒子径は1〜2μmであった。そして、試料E1及び試料C1においては、粒径1〜2μmの一次粒子が弱く凝集して二次粒子を構成していた。一方、焼成温度が850℃を越えると粒子径3μm以上の1次粒子の割合が増加することを確認している。
即ち、まず、試料E1(正極活物質)と、導電材(導電助剤)としてのカーボンブラックと、バインダ(結着材)としてのポリフッ化ビニリデンとを85:10:5の重量比でN−メチル−2−ピロリドンに分散させた。次いで、この分散物をドクターブレードでアルミニウム箔集電体の両面に塗布して、乾燥させた。その後、ロールプレスで高密度化させ、φ15mmに打ち抜いて円盤状の正極2を作製した。
次いで、負極3としてφ16mmに打ち抜いたリチウム金属を準備した。
充放電サイクル試験は、各電池を、温度20℃の条件下で、電流密度0.5Cの定電流で上限電圧4.2Vまで充電し、その後、電流密度0.5Cの定電流で下限電圧3.0Vまで放電する充放電を1サイクルとし、このサイクルを100サイクル繰り返すことにより行った。各充放電サイクルにおいては、充電休止時間及び放電休止時間をそれぞれ1分間ずつ設けた。
放電容量維持率は、充放電サイクル試験前の放電容量及び1〜100回の各充放電サイクルにおける放電容量をそれぞれ測定し、各充放電サイクルにおける放電容量をサイクル試験前の放電容量で除した値を百分率(%)で表したものである。
また、放電容量は、放電電流値(mA)を測定し、この放電電流値に放電に要した時間(hr)を乗じて得られた値を、電池内の正極活物質の重量(g)で除することにより算出した。
また、図3においては、横軸はサイクル数(回)を示し、縦軸は放電容量維持率(%)を示す。同図には、試料E1を正極活物質に用いて構成したリチウム二次電池を電池E1として示し、試料C1を正極活物質に用いて構成したリチウム二次電池を電池C1として示した。
即ち、試料E1は、その作製時に、合成原料の構成元素からLi、Fe、及びPO4を差し引いた残りの元素から、上記反応工程の温度下においてガス(CO2)又は蒸気(H2O)となる元素をさらに差し引いた残りの元素がCとなるような原料(リン酸二水素リチウム及びフマル酸鉄)を用いている。そのため、焼成時には、炭素(C)が残存し、このCが焼成雰囲気を還元雰囲気とし、Feが2+から3+に酸化されるのを抑制することができる。また、C以外の元素は、ガス又は蒸気となって反応系から外部へ放出されるため、合成物に悪影響を及ぼすものは残らない。このような理由により、試料E1は理論容量に近い高い容量を発揮できると考えられる。
本例は、焼成温度を変えて複数のLiFePO4からなる活物質を作製し、その放電容量の比較検討を行った例である。
即ち、本例においては、実施例1の試料E1と同様に、Fe源としてフマル酸鉄を用いて合成原料を作製し、この合成原料の焼成温度を500℃〜900℃の範囲内で変えて、6種類のLiFePO4からなる活物質(試料E2〜試料E7)を作製した。また、試料C1と同様に、Fe源として硫酸鉄を用いて合成原料を作製し、該合成原料の焼成温度を500℃〜900℃の範囲内で変えて、6種類のLiFePO4からなる活物質(試料C2〜試料C7)を作製した。
また、試料C2〜C7は、リン酸二水素リチウム(Li源、P源)と硫酸鉄とを1:1のモル比で秤量して、実施例1の試料C1と同様にして合成原料を作製し、該合成原料をそれぞれ温度500℃(試料C2)、550℃(試料C3)、600℃(試料C4)、800℃(試料C5)、850℃(試料C6)、900℃(試料C7)で10時間焼成して作製したものである。
図5においては、横軸は焼成温度(℃)を示し、縦軸は放電容量(mAh/g)を示す。また、図5においては、実施例1において焼成温度700℃で作製した試料E1及び試料C1の結果を併記してある。
一方、温度550℃〜850℃で焼成して作製した試料E1、試料3〜試料E6は、試料C1〜試料C7の中でも最大の放電容量を示す上記試料C1よりもさらに高い放電容量を示した。よって、焼成温度は、温度550℃〜850℃がより好ましいことがわかる。
2 正極
3 負極
4 セパレータ
Claims (2)
- 基本式LiFePO4で表されるリチウム鉄リン系複合酸化物からなるリチウム二次電池用の活物質の製造方法であって、
Li源と、Fe源と、P源とを含有する合成原料を準備する原料準備工程と、
上記合成原料を加熱して反応させて上記リチウム鉄リン系複合酸化物を合成する反応工程とを有し、
上記Li源、上記Fe源及び上記P源としては、構成元素からLi、Fe、及びPO4を差し引いた残りの元素から、上記反応工程の温度下においてガス又は蒸気となる元素をさらに差し引いた残りの元素がCとなるような原料を用い、
上記Fe源としてはフマル酸鉄を用い、
上記反応工程における加熱温度を550℃〜850℃にすることを特徴とする活物質の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法によって得られた活物質を正極又は負極に含有することを特徴とするリチウム二次電池。
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