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JP4874125B2 - 異性体形成の低減されたビスフェノールaの製造 - Google Patents

異性体形成の低減されたビスフェノールaの製造 Download PDF

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Description

本出願は、フェノールとアセトンを含有する混合物を48〜54℃の温度となす、ビスフェノールAの製造方法に関する。
フェノールとカルボニル化合物の縮合生成物としてのビスフェノールは、多数の市販製品を製造するための出発物質又は中間体である。フェノールとアセトン間の反応の縮合生成物である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA、BPA)は、工業上特に重要である。BPAは、様々な種類のポリマー物質、例えばポリアリール化物、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよび変性フェノール/ホルムアルデヒド樹脂を製造するための出発物質として使用される。好ましい適用領域は、エポキシ樹脂およびポリカーボネートの製造である。
BPAの工業的に重要な製造方法は既知であって、フェノールとアセトンの酸触媒反応に基づくものである。ここで、反応中、5:1より大きいフェノール/アセトン比が使用される。DE−A−9957602に記載されているように、この反応は通常、連続的に、45〜110℃、好ましくは50〜80℃の温度で起こる。均一または不均一ブレンステッド酸またはルイス酸、即ち例えば、塩酸または硫酸のような強鉱酸を、酸触媒として使用し得る。ゲル様またはマクロ多孔性のスルホン化架橋ポリスチレン樹脂(酸性イオン交換体)が好ましく使用される。通常、ジビニルベンゼンが架橋剤として使用されるが、他の架橋剤(例えばジビニルビフェニル)を使用することもできる。この触媒を共触媒と共に使用してもよい。通常、共触媒は、少なくとも1つのSH基を保持するチオールである。共触媒は、反応溶液中に均一に溶解していてよく、また、酸性イオン交換体の場合、触媒それ自体に固定されていてもよい。均一な共触媒の例は、メルカプトプロピオン酸、硫化水素、例えば硫化エチルなどの硫化アルキル、および同様の化合物である。固定された共触媒は、触媒にイオン結合したアミノアルキルチオールおよびピリジルアルキルチオールであって、そのSH基を保護し、そして触媒への固定中または固定後にのみ遊離することができる。また共触媒を、アルキルチオールまたはアリールチオールのように、触媒に共有結合させることもできる。
酸触媒の存在下でフェノールとアセトンを反応させる際、生成した生成物混合物は、未反応フェノールおよび場合によりアセトンとは別に、本質的にBPAおよび水を含有する。また、これらに、縮合反応の通常の副生成物として少量の異性体が付随する。その例は、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン(o,p−BPA)、置換インダン、ヒドロキシフェニルインダノール、ヒドロキシフェニルクロマン、スピロビスインダン、置換インデノール、置換キサンテン、並びに、より高度に縮合した化合物(分子骨格に3個またはそれ以上のフェニル環を有する)である。また、他の二次成分、例えば、アニソール、メシチルオキシド、メシチレンおよびジアセトンアルコールが、アセトンの自己縮合および原料中の不純物との反応によって生成することもある。
経済的および技術的な理由により、通常は、100%のアセトン変換は達成されず、0.1〜0.6重量%のアセトンが反応器流出物中になお含まれるように、反応が行われる。
上記した水などの副生成物ならびに未反応原料(フェノールおよびアセトンなど)は、ポリマーの製造のためのBPAの適合性を損ない、適切な方法によって分離しなければならない。高純度の要求が、特にポリカーボネートの製造のための、原料BPAに対して為される。
BPAについてのある加工と精製の方法は、ほぼ等モルの結晶質付加物とフェノールの形態での反応混合物から、該反応混合物を冷却しBPA/フェノール付加物を懸濁結晶体中に晶出させることで、BPAを分離することによって行われる。次いで、BPA/フェノール付加物結晶を例えば回転濾過器又は遠心機など、固/液分離用の適当な装置によって液相から分離し、更なる精製のために受け継がれる。
このような方法で得た付加物結晶は、通常、約40重量%のフェノール割合で、BPAと二次成分の合計に基づき>99重量%BPAの純度を示す。アセトン、水、フェノール、BPA及び二次成分からなる群からの1以上の成分を通常含む適当な溶液で洗浄することにより、付加物結晶から表面に付着する不純物を除去し得る。
固/液分離の間に生ずる液体(母液)の流れは、フェノール、BPA、反応中に生ずる水および未反応アセトンを含有し、BPA製造中に典型的に生ずる二次成分で富んでいる。この母液の流れは、一般に、反応装置中に再循環させる。酸性イオン交換体の触媒活性を維持するために、先に生じた水を蒸留により除去し、なお存在するアセトンも、母液から同時に除去する。このようにして得られる脱水反応流を、フェノール、アセトンおよび任意に共触媒でつぎ足し、反応装置に戻す。しかし、脱水前に、フェノールを完全に又は部分的に添加してもよい。あるいは、水およびアセトンを、BPA/フェノール付加物の懸濁液結晶化を行う前に、蒸留により除去することもできる。上記の蒸留工程中に、反応溶液中に存在するフェノールの部分量も蒸留により同時に除去され得る。
この種の循環手順の場合における問題は、BPAの製造からの二次生成物が、循環流中に蓄積し、触媒系の失活につながって生成物の品質を低下させ得ることである。循環流中における二次成分の過剰の蓄積を回避するために、いくらかの循環流を、場合によりフェノールの蒸留による部分または完全回収の後に、好ましくはプロセス連鎖から所謂BPA樹脂として排除する。
さらに、循環流の一部または全量を、固/液分離の後並びに水および残留アセトンの分離前または分離後に、酸性イオン交換体で充填した再配列装置に通すことができる。この装置は、反応装置より高い温度で一般に運転する。この再配列装置内において、一般的な条件下で、循環流中に存在するBPA製造からの二次成分のいくらかは、BPAに異性化し、BPAの全収率が向上し得る。
二次成分を更に回収するために、樹脂を熱開裂、酸開裂又は塩基開裂に付してもよい。この場合に放出されるフェノール、並びに、場合によりイソプロペニルフェノールは、蒸留によって分離して、反応に戻し得る。
上述した反応溶液の懸濁結晶化と固/液分離に従って得られたBPA/フェノール付加物結晶を、更なる精製工程へ供給し、フェノールの分離と、場合により二次成分の濃度低減を達成する。
こうして、フェノール、有機溶媒、水又は上記溶媒の混合物(これらは場合によりBPA及びその異性体をも含み得る)から更に精製を行うため、懸濁結晶化によって、BPA/フェノール付加物結晶を再結晶化してよい。適当な溶媒を選択することにより、同時に、付加物結晶中に存在するフェノールを完全に又は部分的に除去することもできる。その後、再結晶化後にBPA中に残存する全てのフェノールを、適当な蒸留法、脱離法又は抽出法によって完全に分離する。
あるいは、メルトアウト法(Ausschmelzverfahren)によって、BPA/フェノール付加物結晶からフェノールを除去することもできる。
フェノールを分離した後、ビスフェノールA溶融物が得られ、これを、予め固化させることなく、エステル交換法によるポリカーボネートの製造(溶融ポリカーボネート)に使用することができる。しかし、販売または更なる利用のために、ビスフェノールA溶融物を、既知の方法、例えば造粒法又はフレーキングによって固化させることもできる。また、溶融物を、水酸化ナトリウム溶液に溶解し、界面重縮合法によるポリカーボネートの製造に使用することもできる。フェノールが除去されたビスフェノールAは、場合によって、更に加工する前に、これを例えば、フェノール、水或いは有機溶媒(例えばトルエンなど)、又は上記物質の混合物からの、溶融結晶化、蒸留及び/又は再結晶化などのような別の精製工程に付すことができる。
上記した方法との関係で、二次成分、所謂異性体の含有量は、ビスフェノールの品質において決定的な役割を果たす。このような所謂異性体(インダン、クロマン、トリスフェノール、o,p-BPAなど)は、反応溶液からのビスフェノールAの結晶化に影響を及ぼす。反応溶液中でそれらの含有量が増加するにつれ、その影響もまた大きくなる。それにもかかわらず結晶化において十分な品質を達成するためには、上記に既述したように、循環流、所謂BPA樹脂の一部を、その循環から排出しなければならない。経済的理由から、ここではフェノールとアセトンがビスフェノールAおよび異性体として失われるため、排出する量をできるだけ少なく保つ必要がある。転位や樹脂開裂など当業者に既知の方法によって原料の幾分かを回収できるのは事実だが、これにはエネルギー導入と追加的な投資費用が付随してしまう。
従って、本発明の課題は、反応の間の異性体形成を低減し、結晶化と濾過の後に最終生成物における高純度のビスフェノールAを達成し、それによって循環流、所謂BPA樹脂からの排出量を低く保ち得る、ビスフェノールAの製造方法を提供することであった。
この度、特別な方法で反応を行うことによって、この課題を解決できることが見出された。
本発明は、ビスフェノールAの製造方法であって、
a)フェノールとアセトンを一緒に混合し、
b)フェノールとアセトンを含有する混合物を48〜54℃の範囲の温度となし、次いで、
c)この温度でフェノールとアセトンを含有する混合物を触媒としての酸性イオン交換体と接触させ、
d)フェノールとアセトンを含有する混合物を反応させてビスフェノールAを生成する、
ことを含む方法に関する。
フェノールとアセトンを含有する混合物を、反応前に工程b)で48〜54℃、好ましくは50〜53℃、特に好ましくは51.5〜52.5℃の温度となすことは、本発明による方法の本質的特徴である。
工程c)での酸性イオン交換体は、好適には共触媒と組み合わせて用いられる。
フェノールとアセトンを含有する混合物中に、他の物質も含有し得る。例えば、p,p-ビスフェノールAそれ自体のほかに、再利用された母液の部分流中に含まれ、BPA/フェノール付加物の結晶化と濾過に由来する所謂異性体がその中に含有し得る。当業者に既知の化合物には、例えば、o,p-ビスフェノールA、o,o-ビスフェノールA、トリスフェノール、(ヒドロキシフェニル)クロマン、(ヒドロキシフェニル)インダン、(置換)インダン、(置換)インデノール、(置換)スピロビスインダン、イソプロペニルフェノール及びその二量体やオリゴマー、(置換)キサンテン、並びに分子骨格に3個又はそれ以上のフェニル環を有する他のより高度に縮合した化合物などがある。また、他の置換フェノール、アニソール、メタノール、メシチルオキシド、メシチレン、ジアセトンアルコール及び水、触媒や共触媒の分解生成物、並びに原料由来の不純物も、再利用された部分流中に含まれ得る。
フェノールとアセトンを含有する混合物を、さもなければ従来型である55〜60℃から、48〜54℃へ冷却することによって、反応開始温度を最終的に48〜54℃の範囲内の温度へ低下させる。その結果、酸性イオン交換体上での反応の間の異性体形成が、所望の主生成物であるp,p-ビスフェノールAについてより選択的となる。同時に、BPA/フェノール付加物結晶の結晶化と濾過に由来する、再利用された母液の部分流から排出すべき量、即ち、最終的には、反応器内の副生成物、所謂異性体、の含有量を結晶化の性能及び最終生成物の純度にとって許容できる水準で一定に保つために排出すべきBPA樹脂の量、を低減させる。より少ない排出のおかげで、残留物質として生じるビスフェノール樹脂は少なくなる。従って、BPA樹脂の量は、反応中の異性体形成の直接的な目安である。反応器の入口温度を下げることによって、該樹脂形成を50%にまで低減させることができ、そのことは、一定の生成物品質を備えつつ経済的節約が大きいことを意味する。
反応は、反応器温度77℃を超えないようにして行うのが好ましい。この反応は、断熱的に行うことが好ましい。実際には、この反応によると、一般には、反応器出口で最高温度を生じることになる。従って、反応器出口温度は、反応器内で生じる最高温度である。ここで、反応を断熱的に行うことは、壁領域での結晶化を避けるために反応器ジャケットを外側から僅かに加熱する反応の実施方法をも包含する。
高濃度のアセトンがまだ存在する反応初期での低い温度の結果、特に、アセトンの自己縮合、並びにクロマン、インダン及び当業者に既知のビスフェノールA製造の他の副生成物の生成が低減される。
十分な品質のビスフェノールを得るためには、及び、ビスフェノールA/フェノール付加物結晶の結晶化と濾過を何ら問題なく行い得るためには、反応後に反応混合物中の所謂異性体の含有量は、できるだけ、100g/Lを超えないようにすべきである。反応器出口での反応混合物中の所謂異性体の含有量を60〜100g/Lに設定することが好ましい。本発明による方法の結果、反応器出口での生成物混合物中の所謂異性体の上限100g/Lを超過することなく、BPA/フェノール付加物結晶の結晶化と濾過に由来する再利用された母液の部分流の排出を、量的に低減し得る。従って、工程d)で生成物混合物を得、次いで該混合物からビスフェノールA/フェノール付加物を晶出させて濾過し、ビスフェノールAをそこから生成させること、及び、結晶化と濾過の間に生じた母液を部分的に工程a)でのフェノールとアセトンの混合へ再利用し、再利用した母液から部分流を排出し、この部分流は、存在するあらゆるフェノールを無視したビスフェノールAの製造された量に基づき6重量%より少ない量を構成すること、を含む方法が好適である。従って、排出される母液の部分流は、量的に、部分流中に含まれるフェノール以外の全成分を考慮した、製造されたビスフェノールAの量に基づき6重量%より少ない量である。排出されるべき母液の部分流中のフェノール含有量は、一般的な分析手法を用いて、当業者により容易に決定し得る。
最終的に生成するBPA樹脂の量は、例えば転位や樹脂開裂など、当業者に既知の方法によって、本発明による方法において、さらに低減させることもできる。
特に、インダン、インデノール及びスピロビスインダンの生成は、高い温度が有利である。式(I)及び(II)は、インダンの例を、式(III)はインデノールの例を、及び式(IV)はスピロビスインダンの例を示す。
Figure 0004874125
o,p-BPAなどの異性体は反応の間にも転位し得るが、インダン、スピロビスインダン及びインデノールは転位し得ないことは、既知である。従って、反応中のそれらの形成は、可能な限り、特に避けなければならず、そして、反応混合物中のそれらの濃度は低く保たれる。
反応器出口での、生成物混合物中のこれらのインダン、スピロビスインダン及びインデノールの含有量を、本発明による方法によって15g/Lより低く低減し得ることが示された。
本発明による方法によって、BPA/フェノール付加物の結晶化と濾過、その後のフェノールによる洗浄、並びに、蒸留及び/又は脱離によるフェノールの分離の後に、再結晶化による更なる精製を要することなく、p,p-ビスフェノールAが99.5重量%より高い純度にBPAを製造することが可能となる。
本発明の方法によって製造されたビスフェノールAを、界面重縮合法によってホスゲンと、若しくは、溶融法によってジアリールカーボネート(好ましくはジフェニルカーボネート)と反応させて、ポリカーボネートを生成させることができる。
〔実施例1〕(本発明による)
アセトン4重量%、異性体6重量%、ビスフェノールA7重量%、水0.05重量%、メルカプトプロピオン酸300ppm及び残りのフェノール(約83重量%)から構成される反応溶液を、100mの、フェノールで湿らせた酸性イオン交換体 Lewatit SC104 を充填した反応器中、最上部から最下部まで、処理量30t/時で通過させる。これは、4.2t/時のビスフェノールAの製造に相当する。反応器入口温度は52℃に調節する。反応器出口温度は75℃である。この設定では、排出された母液の部分流は、量的に、部分流中に含まれるフェノール以外の全成分を考慮した、製造されたビスフェノールAの量を基準にして、5.1重量%となる。インダン、スピロビスインダン及びインデノールの含有量は、この操作方法を用いる反応器排出において、全部で12g/Lである。
〔実施例2〕(比較例)
ここで反応器入口温度が56℃及び反応器出口温度が79℃であること以外は、実施例と同様にして、試験を行う。この設定では、排出された母液の部分流は、量的に、部分流中に含まれるフェノール以外の全成分を考慮した、製造されたビスフェノールAの量を基準にして、8重量%となる。インダン、スピロビスインダン及びインデノールの含有量は、この操作方法を用いる反応器排出において、全部で19g/Lである。

Claims (7)

  1. p,p-ビスフェノールAが99.5重量%より高い純度でのビスフェノールAの製造方法であって、
    a)フェノールとアセトンを一緒に混合し、
    b)フェノールとアセトンを含有する混合物を50〜53℃の範囲の温度として、温混合物を形成し、次いで、
    c)この温度でフェノールとアセトンを含有する混合物を触媒としての酸性イオン交換体と接触させ、
    d)フェノールとアセトンを含有する混合物を反応させてビスフェノールAを生成する、
    ことを含む方法。
  2. 工程c)でのイオン交換体を共触媒と併用する、請求項1に記載の方法。
  3. 工程d)での反応温度は77℃を超えない、請求項1と2のいずれかに記載の方法。
  4. 工程d)での反応を断熱に行う、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、
    工程d)で生成物混合物を得、次いで該混合物からビスフェノールA/フェノール付加物を晶出させて濾過し、ビスフェノールAをそこから生成させること、及び、
    結晶化と濾過の間に生じた母液を部分的に工程a)でのフェノールとアセトンの混合へ再利用し、再利用した母液から部分流を排出し、この部分流は、存在するあらゆるフェノールを無視したビスフェノールAの製造された量に基づき6重量%より少ない量を構成すること、
    を含む方法。
  6. 工程d)で得られた生成物混合物中のインダン、スピロビスインダン及びインデノールの含有量は、生成物混合物に基づいて15g/Lより少ない、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかの記載に従ってビスフェノールAを製造し、次いで、これを界面重縮合法によってホスゲンと、若しくは、溶融法によってジフェニルカーボネートと反応させてポリカーボネートを生成することを含む、ポリカーボネートの製造方法。
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