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JP2008214248A - ビスフェノール化合物の製造方法 - Google Patents

ビスフェノール化合物の製造方法 Download PDF

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JP2008214248A
JP2008214248A JP2007052877A JP2007052877A JP2008214248A JP 2008214248 A JP2008214248 A JP 2008214248A JP 2007052877 A JP2007052877 A JP 2007052877A JP 2007052877 A JP2007052877 A JP 2007052877A JP 2008214248 A JP2008214248 A JP 2008214248A
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Abstract

【課題】反応率及び選択性が高くかつ効率的なビスフェノール化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】酸性触媒を含む第1の混合物と、フェノール化合物(例えばO−クレゾール)及びケトン化合物又はアルデヒド化合物(例えばアセトン)を含む第2の混合物のうちの少なくとも一方に有機溶媒を添加し、前記第1の混合物に前記第2の混合物を加えて縮合反応させる、ビスフェノール化合物(例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン)の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明はビスフェノール化合物の製造方法に関し、詳細にはフェノール化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物との縮合反応によるビスフェノール化合物の製造方法に関する。
ビスフェノール化合物は、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステルなどの高分子材料の原料として重要な化合物である。ビスフェノール化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンなどに代表される4,4−イソプロピリデンビスフェノール化合物が知られている。その製造方法として、例えば、特許文献1には、フェノール化合物であるo−クレゾールと、アセトンとを仕込み、これに塩化水素ガスを吹き込んで脱水縮合させる方法が開示されており、アセトンに対して6倍モルという大過剰のo−クレゾールを使用している。
上記縮合反応において、フェノール化合物と、アセトンとのモル比は理論上2であるが、この比率で反応させると、アセトンから生じたカルボニウムイオンがフェノールのp位だけでなくo位をも攻撃してo,p−位置異性体が副生するとともに、アセトン縮合物とフェノール化合物との反応生成物などが副生して反応選択性を低下させ、更にはイソプロピリデンビスフェノールの芳香環に2−(ヒドロキシフェニル)プロピル基が更に置換した3核体や4核体などの副生などにより、収率も大きく低下するという問題が生ずる。また、本願発明者らの知見によれば、濃塩酸などの強酸性物質を触媒として使用することに起因して次のような問題が生ずる。反応液が著しく着色し、目的物である4,4’−イソプロピリデンビスフェノール化合物も着色して色相が悪化する。また更に、反応液が固化して撹拌不能になり、その結果反応を完結できなくなるだけでなく、縮合反応で生成する水によって触媒が不活性化され、そのため反応率が著しく低下する。これらの問題は、上記比率が小さくなるほど顕在化する。したがって、化学量論量と同等、あるいはそれ以下の割合でフェノール化合物を使用し従来公知の方法をそのまま適用してビスフェノール化合物を製造することは困難である。
大過剰にフェノール化合物を用いれば、反応選択性の問題は改善されるものの、目的物の着色防止は未だ不十分である。また、未反応のフェノール化合物が大量に残存するために、目的物の精製工程に加えて原料化合物の回収工程が必要になり、その結果操作が煩雑になるだけでなく操作時の加熱によってより着色しやすくなるという新たな問題を惹起する。したがって、上記製造方法は工業的製法として非効率的であり、経済的にも有利な方法とは言い難い。
近年、ビスフェノール化合物の需要は益々増大する傾向にあるため、ビスフェノール化合物を高い反応率及び選択性で効率的に製造できれば、その技術的意義は大きい。
特開昭62−138443号公報
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題は反応率及び選択性が高くかつ効率的なビスフェノール化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するためにフェノール化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物との縮合反応における反応条件について鋭意研究を重ねた結果、触媒組成、反応基質の割合及びその仕込み順序などにより、反応率や反応選択性などが大きく変動するとの知見を得た。更に、本発明者らは縮合反応の条件について精査したところ、縮合反応前に酸性触媒と反応基質との接触を回避するとともに、反応系内において反応基質を溶解させ、縮合反応により生成したビスフェノール化合物を凝集させて顆粒状に析出させることの可能な条件で製造とすることで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1]酸性触媒を含む第1の混合物と、下記一般式(I)で表されるフェノール化合物及び下記一般式(II)で表されるケトン化合物又はアルデヒド化合物を含む第2の混合物のうちの少なくとも一方に有機溶媒を添加し、前記第1の混合物に前記第2の混合物を加えて縮合反応させる、下記一般式(III)で表されるビスフェノール化合物の製造方法。
Figure 2008214248
Figure 2008214248
Figure 2008214248
上記式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を示す。
[2]上記フェノール化合物と、上記ケトン化合物又はアルデヒド化合物との割合がモル比(I/II)で2.5以下である、上記[1]記載の製造方法。
[3]上記縮合反応により生成したビスフェノール化合物を凝集させ顆粒状にて析出させる、上記[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]上記有機溶媒の添加量がフェノール化合物に対して0.1〜25重量%である、上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の製造方法。
[5]上記有機溶媒が芳香族炭化水素、脂肪族カルボン酸又はアルコールである、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の製造方法。
[6]上記第1の混合物がチオール化合物を含有する、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の製造方法。
[7]上記チオール化合物が3−メルカプトプロピオン酸である、上記[6]記載の製造方法。
[8]上記第1の混合物が次亜リン酸化合物を含有する、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の製造方法。
[9]上記次亜リン酸化合物が次亜リン酸又は次亜リン酸ナトリウムである、上記[8]記載の製造方法。
[10]上記酸性触媒が無機酸である、上記[1]〜[9]のいずれか一つに記載の製造方法。
[11]上記無機酸が塩酸である、上記[10]記載の製造方法。
[12]上記フェノール化合物がo−置換フェノール化合物である、上記[1]〜[11]のいずれか一つに記載の製造方法。
[13]上記o−置換フェノール化合物がo−クレゾールである、上記[12]記載の製造方法。
本発明によれば、反応性及び選択性が高く、副生成物の生成が抑制されているため、再結晶などの簡便な精製手段でビスフェノール化合物を純度よく効率的に得ることができる。また、ケトン化合物又はアルデヒド化合物に対して化学量論量と同等又はそれ以下のフェノール化合物を使用することで、フェノール化合物の回収が不要になり、しかもビスフェノール化合物の着色も抑制されるため、色相の良好な高品質のビスフェノール化合物を経済的に製造することが可能である。したがって、本発明の製造方法は、反応率及び選択性の低下、着色、経済性といった従来の製造方法における問題を克服した点において技術的意義が大きい。
以下、本発明に係る一般式(III)で表されるビスフェノール化合物(以下、「ビスフェノール化合物(III)」ともいう)の製造方法について、その好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本明細書において使用する各式中の記号の定義を説明する。
〜Rにおける炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示される。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロプロピロキシ基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基が例示される。中でも、炭素数1〜6(好ましくは1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好適である。
〜Rにおけるアルキル基としては、上記したアルキル基が好適であり、具体的には、炭素数1〜6(より好ましくは1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好適に使用される。また、アリール基としては、炭素数6〜14(好ましくは6〜8)のアリール基が好適である。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが例示され、中でもフェニル基が好適である。
〜Rにおける置換アルキル基とは、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基(上記と同義)、アリール基(上記と同義)などで1又はそれ以上置換されているアルキル基をいい、例えば、ベンジル基、エチルフェニル基(例えば、炭素数7〜10のアラルキル基)、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基が例示される。
〜Rにおける置換アルコキシ基とは、アルキル部分が炭素数1〜6アルコキシ基(上記と同義)、トリフルオロメチル基などで1又はそれ以上置換されているアルコキシ基をいう。
〜Rにおける置換アリール基とは、ハロゲン原子(上記と同義)、炭素数1〜6のアルコキシ基(上記と同義)、トリフルオロメチル基などで1又はそれ以上置換されているアリール基をいい、例えば、o−、m−又はp−メトキシフェニル基、o−、m−又はp−トリフルオロメチルフェニル基が例示される。
〜Rは上記置換基を任意に組み合わせることが可能であるが、例えば、下記(i)〜(iii)のうちの一つに、(iv)〜(vii)のいずれかを組み合わせたものが好適である。
(i)R〜Rの全てが水素原子である。
(ii)Rが炭素数1〜6(好ましくは1〜4)のアルキル基であり、かつR〜Rが水素原子である。
(iii)Rが炭素数6〜8のアリール基であり、かつR〜Rが水素原子である。
(iv)R及びRが炭素数1〜6(好ましくは1〜4)のアルキル基である。
(v)Rが炭素数1〜6(好ましくは1〜4)のアルキル基であり、かつRが炭素数6〜8のアリール基である。
(vi)Rが水素原子であり、かつRが炭素数1〜6(好ましくは1〜4)アルキル基である。
(vii)Rが水素原子であり、かつRが炭素数6〜8のアリール基である。
次に、本発明に係る製造方法について説明する。
ビスフェノール化合物(III)の製造方法は、第1の混合物に、第2の混合物を加えて縮合反応させることを特徴とする。そして、第1の混合物は酸性触媒を含み、第2の混合物はフェノール化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物とを含んでおり、第1及び第2の混合物のうちの少なくとも一方は有機溶媒が添加されている。
酸性触媒としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、臭化水素、過塩素酸)、有機酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、固体酸(例えば、スルホン酸基などを有する酸性陽イオン交換樹脂、ゼオライト、粘土)が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、水溶液の形態で好適に用いられる。中でも、無機酸が好ましく、塩酸がより好ましく、濃塩酸が更に好ましい。なお、酸性触媒は、例えば、塩化水素のようにガスの形態であってもよい。
酸性触媒の使用量は、フェノール化合物に対して、好ましくは15〜150重量%、より好ましくは25〜110重量%、更に好ましくは30〜70重量%である。15重量%未満であると、撹拌不能あるいは反応性が低下するなどの傾向にあり、他方、150重量%を越えると、経済性が低下する。なお、酸性触媒が塩酸などの水溶液の形態である場合には、水溶液中の酸成分の重量である。
また、第1の混合物はチオール化合物を含有していてもよい。これにより、より一層反応を促進させることができる。
チオール化合物としては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸の他、ノニルメルカプタンなどのアルキルメルカプタンが例示され、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、3−メルカプトプロピオン酸が好ましい。
チオール化合物の使用量は、フェノール化合物に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。0.1重量%未満であると選択性が低下する傾向にあり、他方、10重量%を越えて使用しても選択性や反応性において添加量に見合う効果が得られないので経済的でない。
更に、第1の混合物は次亜リン酸化合物を含有していてもよい。これにより、目的物であるビスフェノール化合物の着色を有意に防止することができる。
次亜リン酸化合物としては、例えば、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウムが例示される。これらは水和物の形態であってもよく、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムが好適に使用される。
次亜リン酸化合物の使用量は、フェノール化合物に対して、好ましくは0.1〜3.0重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。なお、次亜リン酸化合物は、第1の混合物を調製する際に、粉体又は水溶液の形態で酸性触媒に加えて用いることができる。
第1の混合物の調製する際、各配合成分の混合順序に特に限定はなく、全ての配合成分を同時に投入するか、あるいは成分ごとに順次容器に投入し混合物としてもよい。また、酸性触媒として塩酸を使用する場合には、例えば、水又は有機溶媒に塩化水素ガスを吹き込んで第1の混合物を調製してもよく、また、次亜リン酸化合物及びチオール化合物のうちの少なくとも一方を含有する場合には、これらに塩化水素ガスを吹き込むか、あるいはこれらを塩酸に添加して第1の混合物を調製してもよい。
第2の混合物に含まれるフェノール化合物は、上記一般式(I)で表される化合物であるが、具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、o−t−ブチルフェノール(以上、1置換フェノール化合物)などが好適に使用される。中でも、フェノール、o−置換フェノール化合物が好ましく、o−クレゾール、o−t−ブチルフェノールがより好ましい。
ケトン化合物又はアルデヒド化合物は、上記一般式(II)で表される化合物であるが、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなど(以上、ケトン化合物);ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなど(以上、アルデヒド化合物)が例示される。中でも、ケトン化合物が好ましく、アセトンがより好ましい。
フェノール化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物とは任意に組み合わせることが可能であるが、中でも表1に記載の組み合わせが好適である。
Figure 2008214248
フェノール化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物との配合割合(I/II、モル比)は、ケトン化合物又はアルデヒド化合物に対してフェノール化合物を大過剰に使用することが可能であるが、経済的観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.8以下である。なお、モル比の下限は、経済的観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。
本発明においては、(I)/(II)の割合を化学量論量と同等、あるいはそれ以下にしても、副生成物の生成を抑制して高い反応率及び選択性で効率的に製造することが可能である。したがって、大過剰にフェノール化合物を使用する従来の製造方法に比して経済的にも有利である。
本発明においては、酸性触媒と反応基質とをそれぞれ2つの混合物に分離して縮合反応前における酸性触媒と反応基質との接触を回避し、これらを縮合反応時に初めて接触させる。これにより、縮合反応前における副反応を効果的に抑制することができる。また、縮合反応において、反応基質を溶解させ、かつビスフェノール化合物が完全に溶解しない量の有機溶媒を使用することで、縮合反応で生成したビスフェノール化合物を凝集させて顆粒状のビスフェノール化合物として析出させる。これにより、反応系内が懸濁状態になり、縮合反応後における副反応を有効に抑制することができ、更に反応液の粘度の上昇を抑制して撹拌容易化が達成される。フェノール化合物を化学量論量と同等又はそれ以下で使用すれば、上記効果に加えて、高反応率及び高選択性がより確実に達成され、しかも良好な色相が実現される。したがって、本発明に係る上記手法は従来公知の製法とは全く異なる新たな技術的手段というべきである。
第2の混合物の調製方法は特に制限はなく、フェノール化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物とを同時に、あるいは各化合物を順次容器に投入し混合すればよい。
第1及び第2の混合物は少なくとも一方が有機溶媒を含有していてれば、両方が含有していてもよい。
有機溶媒としては、縮合反応を阻害しないものであれば特に限定なく使用することができる。例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、メシチレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン)、脂肪族カルボン酸(例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1〜C4アルコール)が例示され、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、芳香族炭化水素、脂肪族カルボン酸、アルコールが好ましく、トルエン、酢酸、メタノールが特に好ましい。
有機溶媒は、縮合反応前に、第1及び第2の混合物のうちの少なくとも一方に添加すればよく、両方に添加してもよい。
有機溶媒の使用量は反応基質を溶解させることが可能であり、かつ目的とするビスフェノール化合物を完全に溶解し得る量よりも少なければ特に限定されるものではないが、例えば、フェノール化合物に対して、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.1〜15重量%である。これにより、縮合反応により生成したビスフェノール化合物を反応系内で凝集させ顆粒状にて析出させることが可能になるため、縮合反応後の副反応をより確実に抑制することができる。なお、0.1重量%未満であると反応液が固化し撹拌不能となる傾向にあり、他方、25重量%を越えると縮合反応の著しい低下を伴うことがある。
縮合反応は、下記の条件で好適に実施される。
反応温度は、好ましくは20〜70℃、より好ましくは30〜60℃、更に好ましくは35℃〜50℃であり、反応の進行状況に応じて段階的に昇温してもよい。また、第1の混合物に第2の混合物を加える際には滴下によるのが好ましく、滴下時間は好ましくは1〜5時間、より好ましくは2〜3である。反応時間は、好ましくは3〜12時間、より好ましくは3〜8時間である。なお、高速液体クロマトグラフィーにより反応の進行状況をチェックし、所定の反応率に達したところで、反応液に水を加えて縮合反応を停止させてもよい。
縮合反応後におけるビスフェノール化合物(III)の単離精製は、常法により行うことができる。本発明の製造方法は反応率及び選択性が高く副生成物の生成が抑制されているために、例えば、再結晶やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機層を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機層を冷却して晶析させる。また、フェノール化合物の回収に係る蒸留などの精製手段が不要になるため、色相の良好な高品質のビスフェノール化合物(III)を得ることができる。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、反応液中の反応生成物の組成及び純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、型式LC−10A、島津製作所製)にて下記の条件で面積%として測定した。
カラム:ガスクロ工業社製 ODS−2(6mm×150mm)
移動層:CHCN/0.05%リン酸水(65/35(v/v%))
検出波長:280nm
流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
また、色相(APHA)は、ビスフェノール化合物を150℃/1hで溶融させた後、JISK 1545に準拠して測定した。
上記測定結果に基づき、反応選択率を下記式より求めた。
反応選択率=目的物の面積%/(目的物及び副生成物の合計面積%)×100
反応率=目的物の面積%
更に、上記測定において同定された副生成物1は下記式(IV)で表されるo,p−位置異性体であり、副生成物2は下記式(V)で表される、イソプロピリデンビスフェノール化合物の芳香環に2−(ヒドロキシメチルフェニル)プロピル基が更に置換した3核体である。
Figure 2008214248
Figure 2008214248
(実施例1)
200ml四つ口フラスコに、濃塩酸47g、3−メルカプトプロピオン酸2g及びジ亜リン酸ナトリウム一水和物0.5gを仕込み撹拌して第1の混合物を調製した。これを加温し内温が35℃になった後、o−クレゾール45g、アセトン18g及びトルエン6gの第2の混合物を2時間で滴下し更に40℃で6時間反応を行った。反応途中に結晶が析出するが撹拌を継続すると析出物が顆粒状態となり反応が継続できた。反応液に水40g及びトルエン60gを加え反応を停止した。
反応液中の反応生成物組成をHPLCにて測定すると、o−クレゾール:6.4面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:88.9面積%、副生成物1:1.8面積%、副生成物2:2.0面積%、その他生成物合計:0.9面積%であった。よって、反応選択率は95%であり、反応率は88.9%であった。
反応液を75℃に加熱し塩酸水相を分液し、トルエン相を30gの水で水洗した後、重曹水にて中和水洗した。トルエン相を冷却すると結晶が晶出し融点140℃の2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの結晶を45g得た。この結晶のHPLC純度は99.8面積%であり、色相(APHA)はAPHA10であった。この結果から、得られた結晶は高純度かつ色相の良好な白色結晶であることが確認された。
(実施例2)
第2の混合物に代えて、第1の混合物へトルエン6gを反応開始前に添加したこと以外は実施例1と同様の操作で反応した。反応液は顆粒状態となり反応を継続できた。反応液中の反応生成物組成は、o−クレゾール:8.3面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:86.7面積%、副生成物1:1.6面積%、副生成物2:2.1面積%、その他生成物合計:1.3面積%であった。よって、反応選択率は94.5%であり、反応率は86.7%であった。
実施例1と同様の操作を行ない、白色結晶44gを得た。得られた結晶のHPLC純度は99.9面積%であり、色相(APHA)はAPHA10であった。この結果から、得られた結晶は高純度かつ色相の良好な結晶であることが確認された。
(実施例3)
アセトン18gの代わりにアセトン13.2gを用い、かつトルエン6gの代わりに酢酸4gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作で反応した。反応は顆粒状態で進行した。反応液の反応生成物組成は、o−クレゾール:2.6面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:91.6面積%、副生成物1:2.3面積%、副生成物2:2.6面積%、その他生成物合計:0.9面積%であった。よって、反応選択率は94%であり、反応率は91.6%であった。
次いで、実施例1と同様の操作を行ない、白色結晶46gを得た。得られた結晶のHPLC純度は99.9面積%であり、色相(APHA)はAPHA10であった。この結果から、得られた結晶は高純度で色相の良好な結晶であることが確認された。
(実施例4)
反応温度を50℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作で反応した。反応は顆粒状態で実施することができた。反応液中の反応生成物組成は、o−クレゾール:4.3面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:91.6面積%、副生成物1:1.5面積%、副生成物2:1.7面積%、その他生成物合計:0.9面積%であった。よって、反応選択率は95.7%であり、反応率は91.6%であった。
次いで、実施例1と同様の操作を行ない、白色結晶46gを得た。得られた結晶のHPLC純度は99.9面積%であり、色相(APHA)はAPHA10であった。この結果から、得られた結晶は高純度かつ色相の良好な結晶であることが確認された。
(比較例1)
200mlフラスコに濃塩酸47g、o−クレゾール45g及び3−メルカプトプロピオン酸2gを仕込み内温30℃に加温し,アセトン13.2gを1時間で滴下した。滴下終了後2時間撹拌すると結晶が析出し反応液が固化し撹拌不能となった。
(比較例2)
o−クレゾール68gを用いること以外は比較例1と同様の操作で反応を実施した。反応液は固化することなく行うことができたが、原料が多量に残存した。反応液にトルエン及び水を加え加熱溶解し、実施例1と同じ操作を行ない2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの結晶45gを得た。得られた結晶のAPHAは150であり、着色が確認された。アセトンに基づく収量は良好であったが、濾液には未反応のo−クレゾールが多量に残存し回収する必要があった。なお、反応液中の反応生成物組成は、o−クレゾール:23.8面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:69.1面積%、副生成物1:3.2面積%、副生成物2:3.2面積%、その他生成物合計:0.7面積%であった。よって、反応選択率は90.7%であり、反応率は69.1%であった。
(比較例3)
o−クレゾール45g及び濃硫酸5gを仕込み、アセトン13.2gを滴下して33℃で8時間反応した。反応液中の反応生成物組成は、o−クレゾール:63.5面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:22.2面積%、副生成物1:3.8面積%、副生成物2:4.7面積%、その他生成物合計:5.8面積%であり、異性体、副産物が多量に生成した。なお、反応選択率は60.8%であり、反応率は22.2%であった。
(比較例4)
トルエン20gを用い33℃で反応させたこと以外は、比較例1と同様の操作で反応を行なった。反応液の反応生成物組成は、o−クレゾール:25.1面積%、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:71.3面積%、副生成物1:1.2面積%、副生成物2:1.6面積%、その他生成物合計:0.8面積%であった。実施例1と同じ操作を行ない2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの結晶36gを得た。得られた結晶のAPHAは120であり、着色が確認された。なお、反応選択率は95.2%であり、反応率は71.3%であった。

Claims (13)

  1. 酸性触媒を含む第1の混合物と、
    下記一般式(I):
    Figure 2008214248


    [式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。]
    で表されるフェノール化合物及び下記一般式(II):
    Figure 2008214248


    [式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を示す。]
    で表されるケトン化合物又はアルデヒド化合物を含む第2の混合物のうちの少なくとも一方に有機溶媒を添加し、
    前記第1の混合物に前記第2の混合物を加えて縮合反応させる、下記一般式(III):
    Figure 2008214248

    [式中、R〜Rは上記と同義である。]
    で表されるビスフェノール化合物の製造方法。
  2. 前記フェノール化合物と、前記ケトン化合物又はアルデヒド化合物との割合がモル比(I/II)で2.5以下である、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記縮合反応により生成したビスフェノール化合物を凝集させ顆粒状にて析出させる、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記有機溶媒の添加量がフェノール化合物に対して0.1〜25重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記有機溶媒が芳香族炭化水素、脂肪族カルボン酸又はアルコールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記第1の混合物がチオール化合物を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記チオール化合物が3−メルカプトプロピオン酸である、請求項6記載の製造方法。
  8. 前記第1の混合物が次亜リン酸化合物を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記次亜リン酸化合物が次亜リン酸又は次亜リン酸ナトリウムである、請求項8記載の製造方法。
  10. 前記酸性触媒が無機酸である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 前記無機酸が塩酸である、請求項10記載の製造方法。
  12. 前記フェノール化合物がo−置換フェノール化合物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 前記o−置換フェノール化合物がo−クレゾールである、請求項12記載の製造方法。
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