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JP4874143B2 - 塗膜積層体 - Google Patents

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JP4874143B2 JP2007080345A JP2007080345A JP4874143B2 JP 4874143 B2 JP4874143 B2 JP 4874143B2 JP 2007080345 A JP2007080345 A JP 2007080345A JP 2007080345 A JP2007080345 A JP 2007080345A JP 4874143 B2 JP4874143 B2 JP 4874143B2
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Description

本発明は、建築物等の表面化粧に用いられる塗膜積層体に関するものである。
従来、建築物の壁面を構成する材料として、漆喰、壁土、石膏、モルタル等が使用されており、これら材料に対する表面化粧塗材として、砂壁調、自然石調等の意匠性を表出する塗材が種々提案されている。また、近年では、珪藻土等の吸放湿成分を配合した塗材(特許文献1等)が内壁用化粧塗材として注目されている。
このような材料で構成される化粧面では、その表面の艶の程度を艶消しにすることで、落ち着きのある質感を得ることができる。
しかし、上記のような化粧面は水分を吸収するおそれがある。水分中に水溶性成分や分散成分等が含まれる場合は、これらの成分も化粧面に吸収拡散される。さらに、水分中の物質が変色性や着色性を有する場合は、水分が付着した部分の塗膜の変色や、染みの発生が問題となる。特に、特許文献1等に記載された吸放湿性塗材の塗膜は、水分を吸収しやすい性質を有するため、このような問題が生じやすい。
これに対し、化粧面の上にクリヤー塗料を塗装する方法がある(特許文献2等)が、この方法では、艶消しの質感が損われやすくなる。また、汚れ防止性能についても十分とは言えない。さらに、化粧面が吸放湿性を有する場合は、その性能が阻害されたり、あるいはクリヤー塗膜に膨れが発生しやすくなる等の問題も生じる。
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、化粧面の艶消しの質感を保持するとともに、その表面の汚れ防止性を高めることを目的とするものである。さらに、化粧面が吸放湿性を有する場合は、その吸放湿性を確保しつつ、艶消しの質感保持と汚れ防止の効果を得ることを目的とするものである。
特公昭62−15108号公報 特開平10−212436号公報
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、艶消し塗膜層の表面に対し、特定の樹脂成分を主成分とする特定被覆層を設けた塗膜積層体に想到し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.艶消し塗膜層の表面に、該艶消し塗膜層が視認可能な状態で被覆層が設けられた塗膜積層体において、前記被覆層は、樹脂成分として、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルションであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が混在する外層と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂を含む内層を有する多層構造型合成樹脂エマルションを含む被覆液によって形成され、
前記被覆層の塗付量は固形分で0.1〜50g/m であることを特徴とする塗膜積層体。
2.前記被覆層は、樹脂成分として、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルションであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が混在する外層と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が混在する内層を有する多層構造型合成樹脂エマルションを含む被覆液によって形成されることを特徴とする1.に記載の塗膜積層体。

本発明によれば、化粧面における艶消しの質感を保持しつつ、その塗膜表面の耐汚染性を高めることができる。化粧面が吸放湿性を有する場合は、その吸放湿性を確保しつつ、艶消しの質感保持と汚れ防止の効果を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の塗膜積層体は、艶消し塗膜層の表面に被覆層が設けられたものであり、主に建築物等の表面化粧用、特に建築物内壁面の化粧用として好ましく適用できるものである。
このうち艶消し塗膜層は、艶消し塗料によって形成される。このような艶消し塗料としては、JIS K5663「合成樹脂エマルションペイント」に規定される塗料が挙げられる。このタイプの塗料は、一般にフラット塗料と呼ばれるものである。この他の艶消し塗料としては、JIS A6909に規定されるリシン塗料等の薄付け仕上塗材、スタッコ塗料等の厚付け仕上塗材等、その他石材調仕上塗材、砂岩調仕上塗材等の各種建築用仕上塗材が挙げられる。このような建築用仕上塗材は、種々の表面凹凸模様が形成可能な厚膜タイプの材料として使用できるものである。
艶消し塗膜層は、建築物等の基材表面に艶消し塗料を塗付・乾燥することによって形成できる。艶消し塗膜層は、建築物等の基材表面に予め旧塗膜として存在するものであってもよい。
なお、艶消し塗膜層における「艶消し」の程度は、その鏡面光沢度によって規定することができる。艶消し塗膜層の鏡面光沢度(測定角度60度)は通常20以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
本発明の塗膜積層体は、上述の艶消し塗膜層の表面に、被覆層が設けられたものである。この被覆層は、艶消し塗膜層が視認可能な状態で設けられる。すなわち、艶消し塗膜が有する色相、凹凸模様は、被覆層の有無にかかわらずほとんど変化しない。
本発明における被覆層は、特定の樹脂成分を含む被覆液によって形成されるものである。すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルション(以下「(A)成分」という)を樹脂成分とする被覆液によって形成されるものである。
本発明では、このような樹脂成分を使用することにより、底艶、濡れ色、干渉ムラ等の発生を抑制し、艶消し塗膜の質感を保持することが可能となり、さらに艶消し塗膜表面の汚れ防止効果を高めることができる。
(A)成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主単量体成分(アクリル樹脂を構成する全モノマーに対し30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上)とするアクリル樹脂をいう。
また、(A)成分における環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂とは、環状シロキサン化合物を主単量体成分(シリコーン樹脂を構成する全モノマーに対し、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上)とするシリコーン樹脂をいう。
また、(A)成分におけるアクリル樹脂とシリコーン樹脂の形態は特に限定されず、均一に混ざりあった形態であってもよいが、海島構造等により相互に分離した形態が好適である。
(A)成分を構成するアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体であり、必要に応じその他のモノマーを共重合したものである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常30重量%以上、好ましくは40〜99.9重量%、より好ましくは50〜99.5重量%である。
その他のモノマーとしては、例えばカルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、芳香族モノマー等が挙げられる。これらモノマーの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%である。
このうち、カルボキシル基含有モノマーを共重合して、カルボキシル基含有アクリル樹脂とした場合には、(A)成分の安定性を高めることができ、さらにカルボキシル基と反応可能な化合物を別途添加することにより、塗膜の諸物性向上を図ることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。このうち、特にアクリル酸、メタクリル酸から選ばれる1種以上が好適である。カルボキシル基含有モノマーの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%である。
(A)成分を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度は、特に限定されず、通常−40〜80℃に設定すればよい。
(A)成分におけるシリコーン樹脂は、環状シロキサン化合物を重合して得られるものである。環状シロキサン化合物としては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。このような環状シロキサン化合物を重合する際には、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物等を用いることもできる。このうち、アルコキシシラン化合物としては、分子中に1個以上のアルコキシル基を有するシラン化合物が使用でき、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の他、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が使用できる。シリコーン樹脂の平均分子量は、通常10000以上、好ましくは50000以上である。
(A)成分におけるアクリル樹脂とシリコーン樹脂の重量比率は、通常99:1〜30:70、好ましくは97:3〜40:60、より好ましくは95:5〜50:50である。このような比率で両成分が混在することにより、艶消し塗膜の質感保持性、耐汚染性等の諸性能を発揮することが可能となる。さらに、艶消し塗膜が吸放湿性を有する場合は、その吸放湿性を保持することができる。
本発明における(A)成分は、上述の如きアクリル樹脂及びシリコーン樹脂が混在する多層構造型合成樹脂エマルションであり、その外層には少なくともシリコーン樹脂が存在することが好ましい。また、特に、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂がエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルションであり、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂が混在する外層と、アクリル樹脂を含む内層を有する多層構造型合成樹脂エマルション(以下、「(A−1)成分」ともいう。)が好適である。
(A−1)成分の外層にアクリル樹脂及びシリコーン樹脂が混在することにより艶消し塗膜の質感保持性と耐汚染性の両性能を効果的に発揮することができる。その理由は明確ではないが、エマルション粒子の外層にシリコーン樹脂が存在することで、シリコーン樹脂の撥水性能が効果的に発揮され、さらに、アクリル樹脂とシリコーン樹脂が互いに非相溶であることにより、被膜の光沢が適度に減ぜられるためと推測される。
なお、(A−1)成分においては、内層を構成する樹脂として上述の如きシリコーン樹脂が含まれていてもよい。内層にシリコーン樹脂が含まれることにより、艶消し塗膜の質感や吸放湿性保持の点でいっそう有利となる。さらに、被覆層のひび割れ防止性等を高めることもできる。
(A−1)成分としては、外層を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度よりも、内層を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が低く設定された多層構造型合成樹脂エマルションが好適である。
具体的には、(A−1)成分の内層を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度は、通常−60〜20℃(好ましくは−50〜10℃)に設定すればよい。外層のガラス転移温度は、通常20〜100℃(好ましくは30〜90℃)である。各層のアクリル樹脂のガラス転移温度がこのような範囲内であれば、上述の如き効果を安定して得ることができる。なお、本発明におけるガラス転移温度は、Foxの計算式により求められる値である。
また、外層と内層の重量比率は、通常80:20〜20:80、好ましくは70:30〜30:70である。
このような(A)成分は、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂を混合し乳化重合等により合成する方法、または、アクリル樹脂及び/またはシリコーン樹脂を乳化重合等により合成した後、アクリル樹脂及び/またはシリコーン樹脂を乳化重合等により合成する方法等により得ることができる。
特に(A−1)成分を得る場合には、内層を構成するアクリル樹脂を乳化重合により合成した後、外層を構成するアクリル樹脂及びシリコーン樹脂を乳化重合により合成する方法等によって得ることができる。(A−1)成分においては、内層を構成する樹脂として、シリコーン樹脂が含まれていてもよい。
(A)成分にカルボキシル基含有アクリル樹脂が含まれる場合、カルボキシル基と反応可能な化合物を別途配合することにより、膨れ防止性、剥れ防止性等の効果を高めることができる。さらに、塗膜表面の粘着性が軽減され、耐汚染性が高まる。このような化合物としては、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基等から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物が挙げられる。このうち、本発明では特にエポキシ基を有する反応性化合物が好適である。
エポキシ基を有する反応性化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。この他、エポキシ基含有モノマーの重合体(ホモポリマーまたはコポリマー)からなる水溶性樹脂やエマルションを使用することもできる。このような化合物の混合量は、通常(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜20重量部である。
本発明では、上記(A)成分を結合材として使用するが、(A)成分以外の結合材を(A)成分と併用することもできる。
このような結合材としては、例えば(A)成分以外の合成樹脂エマルションや、各種水溶性樹脂等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系を挙げることができる。
本発明では、(A)成分と、それ以外の結合材を併用することにより、艶消し塗膜の質感や吸放湿性保持、汚れ防止効果を高めることもできる。
(A)成分と、それ以外の結合材との混合比率は、固形分換算で通常95:5〜20:80(好ましくは90:10〜30:70)程度とすればよい。
(A)成分以外の結合材として、架橋反応型合成樹脂エマルションを使用した場合は、さらに汚れ防止効果、ひび割れ防止効果等の物性を高めることもできる。
このような架橋反応型合成樹脂エマルションにおける架橋反応としては、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基と金属イオン、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、エポキシ基とヒドラジド基、カルボキシル基とカルボジイミド、カルボキシル基とオキサゾリン、アルコキシシリル基どうし等の組み合わせが挙げられる。架橋反応型合成樹脂エマルションとしては、ここに例示したような架橋反応をエマルション内で生じるものであってもよいし、エマルション粒子と架橋剤との間で架橋反応が生じるものであってもよい。架橋反応型合成樹脂エマルションを使用する場合、(A)成分と架橋反応型合成樹脂エマルションとの混合比率は、固形分換算で通常95:5〜20:80(好ましくは90:10〜30:70)程度とすることが好ましい。本発明では、上述したカルボキシル基と反応可能な化合物と、このような架橋反応型合成樹脂エマルションを併用することもできる。
被覆層を形成する被覆液には、上記樹脂成分以外の成分を適宜混合することができる。このような成分としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、撥水剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
被覆液の固形分濃度は、通常20重量%以下(好ましくは10重量%以下)に設定することが望ましい。本発明の被覆液は、主に水を媒体とするものであり、その固形分調整においては水を使用すればよいが、適宜水溶性溶剤等を使用することも可能である。
被覆液によって被覆層を形成する際には、スプレー塗り、刷毛塗り、ローラー塗り等の塗装手段を適宜採用することができる。
被覆層の塗付量は固形分で0.1〜50g/m(好ましくは0.5〜20g/m)とする。塗付量が0.1g/mよりも少ない場合は耐汚染性向上効果が得られず、50g/mよりも多い場合は、艶消し塗膜表面の微細な凹凸が平坦化してしまい、艶消し塗膜の質感が損われやすくなる。また、艶消し塗膜が吸放湿性を有する場合は、その吸放湿性を阻害するおそれがある。なお、本発明における被覆層は、上記範囲内で塗付量が多少変動しても艶むら等の不具合が生じないため、塗付作業の効率化を図ることができる。
被覆層の乾燥は、通常常温で行えばよいが、必要に応じ加温することも可能である。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、被覆液の製造においては以下の原料を使用した。
・樹脂1:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg45℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、外層アクリル樹脂とシリコーン樹脂との重量比80:20、
内層;アクリル樹脂(Tg−50℃、構成成分;n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート)、
外層と内層の重量比45:55、固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中)
・樹脂2:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg45℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、外層アクリル樹脂と外層シリコーン樹脂との重量比80:20、
内層;アクリル樹脂(Tg−50℃、構成成分;n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、内層アクリル樹脂と内層シリコーン樹脂との重量比80:20、
外層と内層の重量比45:55、固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中)
・樹脂3:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg45℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸)、
内層;シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、
外層と内層の重量比70:30、固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中)
・樹脂4:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg45℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸)、
内層;アクリル樹脂(Tg−50℃、構成成分;n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート)、
外層と内層の重量比50:50、固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中)
・樹脂5:アクリル樹脂エマルション(Tg12℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸;固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中))
・架橋剤:エポキシ基含有化合物(ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・増粘剤:ポリウレタン系増粘剤(固形分30重量%)
・消泡剤:シリコン系消泡剤(固形分50重量%)
(水性被覆液A)
容器内に樹脂1を100重量部仕込み、造膜助剤3重量部、増粘剤10重量部、消泡剤2重量部を常法により混合し、これに水を加えて固形分5重量%の水性被覆液Aを作製した。
(水性被覆液B)
容器内に樹脂2を100重量部仕込み、造膜助剤3重量部、増粘剤10重量部、消泡剤2重量部を常法により混合し、これに水を加えて固形分5重量%の水性被覆液Bを作製した。
(水性被覆液C)
容器内に樹脂2を100重量部仕込み、架橋剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤10重量部、消泡剤2重量部を常法により混合し、これに水を加えて固形分5重量%の水性被覆液Cを作製した。
(水性被覆液D)
容器内に樹脂3を100重量部仕込み、造膜助剤3重量部、増粘剤10重量部、消泡剤2重量部を常法により混合し、これに水を加えて固形分5重量%の水性被覆液Dを作製した。
(水性被覆液E)
容器内に樹脂4を100重量部仕込み、造膜助剤3重量部、増粘剤10重量部、消泡剤2重量部を常法により混合し、これに水を加えて固形分5重量%の水性被覆液Eを作製した。
(水性被覆液F)
容器内に樹脂5を100重量部仕込み、造膜助剤3重量部、増粘剤10重量部、消泡剤2重量部を常法により混合し、これに水を加えて固形分5重量%の水性被覆液Fを作製した。
(実施例1)
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、Tg20℃)100重量部に対し、シリカゲル(平均粒子径20μm)65重量部、淡黄色系着色骨材(平均粒子径200μm)780重量部、造膜助剤2重量部、増粘剤1重量部、消泡剤2重量部を常法により均一に混合して艶消し塗料を作製した。
予めシーラー処理を行ったスレート板に、上記方法にて得られた艶消し塗料を塗付量(固形分)が800g/mとなるように鏝塗りし、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で48時間乾燥させることにより、淡黄色の艶消し塗膜を形成させた。この艶消し塗膜の60度鏡面光沢度は1.6であった。また、この艶消し塗膜の吸放湿量を、JIS A6909 7.32「吸放湿性試験」によって測定したところ、その値は98g/mであった。
以上の方法で得られた艶消し塗膜に対し、前記水性被覆液Aを塗付量(固形分)が5g/mとなるようにスプレー塗装し、標準状態で24時間乾燥させて試験体を得た。得られた試験体につき以下の試験を行った。結果を表1に示す。
・外観
得られた試験体の仕上状態を目視にて観察し、艶・色の状態、及び全体的な質感において艶消し塗膜との差異を確認した。評価は、差異が認められないものを「5」、差異が認められるものを「1」とする5段階(5>4>3>2>1)で行った。
・耐汚染性
試験体の表面を上向きにして水平に静置し、スポイドを用いて、試験体の中央付近に市販の飲料用コーヒーを2cc滴下した。5分放置後、塗膜表面に水を流してコーヒーを除去して、乾燥したガーゼで軽く拭いた。このときの塗膜表面の状態を目視にて確認した。評価は、色・艶の変化が認められないものを「5」、色・艶の大きな変化が認められるものを「1」とする5段階(5>4>3>2>1)で行った。
・吸放湿性
得られた試験体につき、JIS A6909 7.32「吸放湿性試験」の試験手順に従って吸放湿量を算出した。評価は、吸放湿量が90g/m以上を「5」、80g/m以上90g/m未満を「4」、70g/m以上80g/m未満を「3」、60g/m以上70g/m未満を「2」、60g/m未満を「1」とした。
・耐水性
得られた試験体を50℃温水に24時間浸漬し、浸漬後の表面状態を目視にて確認した。評価は、膨れ、白化等の異常が認められないものを「5」、異常が認められるものを「1」とする5段階(5>4>3>2>1)で行った。
(実施例2)
水性被覆液Aに替えて水性被覆液Bを使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
水性被覆液Aに替えて水性被覆液Cを使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
水性被覆液Aに替えて水性被覆液Dを使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
水性被覆液Aに替えて水性被覆液Eを使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
水性被覆液Aに替えて水性被覆液Fを使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004874143

Claims (2)

  1. 艶消し塗膜層の表面に、該艶消し塗膜層が視認可能な状態で被覆層が設けられた塗膜積層体において、前記被覆層は、樹脂成分として、
    (メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルションであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が混在する外層と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂を含む内層を有する多層構造型合成樹脂エマルションを含む被覆液によって形成され、
    前記被覆層の塗付量は固形分で0.1〜50g/m であることを特徴とする塗膜積層体。
  2. 前記被覆層は、樹脂成分として、
    (メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルションであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が混在する外層と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が混在する内層を有する多層構造型合成樹脂エマルションを含む被覆液によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の塗膜積層体。
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