本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る電磁引き外し装置を用いた回路遮断器の分解斜視図であり、図2は電磁引き外し装置の分解斜視図である。
本発明に係る電磁引き外し装置を適用した回路遮断器は、例えば分岐ブレーカとして主幹ブレーカとともに分電盤の内部に配設され、各分岐回路に過電流や短絡電流が流れた際に熱動釈放動作あるいは電磁釈放動作を行って、分岐回路を保護するものである。尚、以下の説明では便宜上図3(a)に示す向きにおいて上下左右の方向を規定し、図3(b)中の下側を前側、上側を後側として説明を行うが、実際には例えば図3(a)中の左右方向が上下方向に沿うようにして分電盤の内部に配設される。
回路遮断器Aの器体1は横長の直方体状であって、図1および図3に示すように厚み方向(前後方向)において2分割された半割体であるボディ2とカバー3とを結合して構成される。そして、この器体1の内部に、可動接点4および固定接点5からなり電源と負荷との間の通電電路に挿入される接点部6と、ハンドル7の開閉操作に応じて接点部6を開閉させる開閉機構部8と、接点部6の閉極状態で接点部6に過電流が流れていない通常時は可動接点4が固定接点5から離れる方向の力を蓄積し、接点部6に過電流が流れると通常時に蓄積した力を解放して接点部6を強制的に開極させる引き外し部材55とを備えている。
ボディ2およびカバー3は、例えばナイロン樹脂などの絶縁性の合成樹脂によって、上面側の中央部が上方に突出した一面開口の箱状に形成されており、ボディ2およびカバー3の開口縁部にはそれぞれ4組の組立孔2a,3aが穿設されている。これにより、ボディ2およびカバー3を内面同士が対面するようにして組み合わせた上で、各組の組立孔2a,3aにリベット11を挿通すれば、ボディ2およびカバー3が固定されて器体1が構成されることになる。またボディ2およびカバー3の上面中央は左右両側に比べて上側に突出しており、この凸部の表面にハンドル7用の開口部1aとなるコ字状の角溝2b,3bと、表示部材52用の開口窓1bとなるコ字状の角溝2e,3eとが形成されている。さらにボディ2およびカバー3の右側面には、それぞれ電源側の電線やブスバーなどの配線部材が挿入される開口部となるコ字状の角溝(図1ではボディ2の角溝2cのみ図示)が形成され、そしてボディ2およびカバー3の左側面には、それぞれ負荷側の電線やブスバーなどの配線部材が挿入される開口部となるコ字状の角溝2d,3dが形成されている。また器体1の下部には、器体1の左右方向において移動自在にスライダ12を取り付けてあり、分電盤内部に配設されたDINレールのような取付レール90(図4参照)のフランジ部91にスライダ12を係止させることで、器体1が取付レール90に取着されるようになっている。
器体1の長手方向両側部には電源側端子部13と負荷側端子部14とがそれぞれ収納されている。電源側端子部13は、板金を折曲げて断面四角状の筒状に形成されて成り上面にねじ孔15aを有する端子金具15と、この端子金具15のねじ孔15aに螺挿される引締めねじ16と、電源側端子17とを備えている。電源側端子17は、前側から見た形状がコ字状に形成され、上側片に引締めねじ16を挿通させる挿通孔17aが形成されるとともに、下側片が端子金具15内に挿通される端子部17bとなっている。また電源側端子17は、上側片の先端から下方に延出し、中間部に固定接点5が固着された固定接点板17cを備えており、固定接点板17cの下側部には導電性のアーク走行板18が接続されている。アーク走行板18は、固定接点板17cの下側部から、可動接点4の周辺に発生する磁界との相互作用によってアークに作用する電磁力の向き(左斜め下向き)に延出する幅細のアーク走行部18aと、アーク走行部18aの下側端から器体1の底面に沿って突出する矩形板状の主部18bとを備えている。このアーク走行板18によって、接点部6の開極時に発生するアークを器体1の下面方向に引き延ばすことができ、主部18bの上側に配置される消弧グリッド19によってアークが消弧されるようになっている。なお接点部6の前後両側には、接点部6の周辺に発生する磁界を高めるための鉄片25が内ケース26を介してそれぞれ配置されている。また消弧グリッド19の前後には絶縁シート27がそれぞれ配置されている。また消弧グリッド19の上側では後述するコイル29と支持板23との間に絶縁シート27が配置され、下側ではアーク走行板18とボディ2およびカバー3の底面との間に絶縁シート27が配置されている(図4参照)。
負荷側端子部14は、電源側端子部13と同様に端子金具15および引締めねじ16を備えるとともに、負荷側端子20を備えている。負荷側端子20は前側から見た形状がコ字状に形成され、両側片を上方に向けた状態で中央片を端子金具15の内部に挿入してある。また負荷側端子20の右側片は、編組線のような可撓性を有する可撓電線21を介して細長い板状のバイメタル22の下側端(固定端)に電気的に接続されている。なおバイメタル22の長手方向中間部は可撓電線30を介してコイル29の一端に接続され、さらにコイル29の他端は可撓電線31を介して可動接触子47に電気的に接続されている。而して可動接触子47の可動接点4と固定接点5とが閉極している状態では、電源側端子部13−接点部6−可動接触子47−コイル29−バイメタル22−負荷側端子部14という経路で電流が流れる主電路が形成される。
ここでボディ2およびカバー3の上面の開口縁部には、引締めねじ16に対向する部位に工具挿通孔1cを構成する円弧状の溝が形成されている(図3及び図4参照)。引締めねじ16は器体1の内部において上下方向への移動が規制されており、工具挿通孔1cを通して挿入されたドライバ(図示せず)によって引締めねじ16を回転させると、ねじ孔15aに引締めねじ16が螺挿した端子金具15が上昇又は下降する。したがって、端子金具15が上昇する方向に引締めねじ16を回転させると、端子金具15が上方に移動し、電源側端子17の端子部17bあるいは負荷側端子20の中央片と端子金具15の下側片15bとの間に配線部材が圧接接続されるのである。
次にハンドル7および開閉機構部8について説明を行う。ハンドル7は、器体1の内部に器体1の厚み方向(前後方向)に沿って橋架されるハンドル軸40を介して回動自在に支持される円柱状の本体部7aと、本体部7aの周方向に突設されて器体1の上面(短手方向一方側)から器体1の外部に突出するT字形の操作部7bと、本体部7aの右下側の周面に器体1の内部に向かって突設された突出部7cとを一体に備え、捩りコイルばねよりなるハンドル復帰ばね41によってオフ方向(図4中の左周り)に付勢されている。また器体1の外部に突出する操作部7bには操作摘み42が取着されるようになっている。
開閉機構部8はリンク44,44、接触子ホルダ46、接圧ばね49、表示部材52、付勢ばね53等を主要な構成として備えている。リンク44,44は同一の形状に形成されており、第1及び第2の腕部44a,44bが斜めに交差するように一端側が互いに連結されて、L字状に形成されている。そして両腕部44a,44bの連結部位が器体1の長手方向一方側(右側)で軸45を介して器体1に回動自在に支持されており、腕部44aが器体1の長手方向他方側(左側)に、腕部44bが器体1の短手方向他方側(下側)それぞれ延出している。またリンク44の腕部44aには、腕部44aの延出方向に沿って延び、ハンドル7の突出部7cに枢着された連結軸43が遊挿される長孔44cが形成されている。なお長孔44cの延出方向に沿った両側縁のうち本体部7aの回転中心から遠い方の側縁(下側縁)には、接点部6の閉極状態(図8、図9参照)で連結軸43が位置するオン位置よりも開極状態(図4、図5参照)で連結軸43が位置するオフ位置に近い部位(右寄りの部位)に、器体1の短手方向他方側(下側)に凹む切欠部44dを形成してある。また他方の腕部44bには、接触子ホルダ46および可動接触子47をリンク44,44とを連結するための連結軸48が挿通される丸孔44eが形成されている。ここに器体1の長手方向とは、電源側端子部13および負荷側端子部14の配列方向である左右方向(図4の左右)を意味している。また器体1の短手方向とは、長手方向および厚み方向(幅方向)とそれぞれ直交する方向であり、長手方向を左右方向と見たときの上下方向(図4の上下)を意味している。
可動接触子47は器体1の前後方向に2分割された半割体47a,47bからなり、両半割体47a,47bは前後方向の中間面に対して対称な形状に形成されている。各半割体47a,47bの上下方向中間部には、連結軸48が挿通される軸孔47cが貫設されており、その下側端には可動接点4が一体に形成されている。一方、可動接触子47の上側端には、左側に向かって突出片47dが延出しており、突出片47dの上側縁には、右斜め上方に湾曲しながら突出する乗り上げ部47eが形成されている。また両半割体47a,47bは、軸孔47cの形成部位よりも下側が互いに離れる向きに湾曲しており、両半割体47a,47bを重ねた際にこの湾曲部分にできる空間に後述の係合ピン36が挿通されるようになっている。
接触子ホルダ46は、後述するラッチ部材54の右側端が挿通される挿通孔46bを有する中央片46aと、この中央片46aの前後方向における両側縁から右方向にそれぞれ突出する側片46cとでコ字状に形成されており、各側片46cには連結軸48を挿通する挿通孔46dが貫設されている。接点部6に接圧を与える接圧ばね49は一対の捩りコイルばねの一端側が互いに連結された形状に形成されており、連結部分を接触子ホルダ46の中央片46aに当接させるとともに、各捩りコイルばねの他端側を可動接触子47に係止させている。また器体1には、接点部6が閉極している状態で側片46cによって撓められて、可動接点4が固定接点5から離れる方向の復帰力を接触子ホルダ46に付与する開極ばね51が取着されている。
また表示部材52は接点部6のオン/オフ状態を表示するためのもので、図5に示すように軸45を介してリンク44とともに回転自在に支持される円筒状の主部52aと、主部52aの上面側に設けられた表示部52bと、主部52aの右側部(器体1の長手方向他方側の部位)から突出し、先端側が下向きに湾曲した弧状の当接部52cとを備えている。表示部52bは左右方向の中央部において上側への突出量が最も高くなっており、中央部から両側部にかけて斜め下向きにそれぞれ傾斜する2つの表示面52d,52eを備えている。ここで、左側の表示面52dはオフ表示用、右側の表示面52eはオン表示用の表示面であり、各々の表示面52d,52eの色や文字などでオン/オフの状態が判別できるようになっており、器体1の開口窓1bから何れかの表示面が露出することで現在の接点状態を判別することができる。なお表示部材52は捩りコイルばねからなる復帰ばね53によってオフ表示方向(図5中の右回り)に付勢されている。
而して開閉機構部8は、接触子ホルダ46の両側片46cの間に、可動接触子47と、円筒状のスペーサ50と、一対の捩りコイルばねの一端側を互いに連結した形状に形成された接圧ばね49と、一対のリンク44,44とを配置し、各側片46cの挿通孔46dと、スペーサ50の中心孔と、接圧ばね49のコイル部分の中心孔と、可動接触子47の軸孔47cと、リンク44の丸孔44eとに連結軸48を挿通することによって、接触子ホルダ46に対してリンク44および可動接触子47が所定の角度範囲で回転自在に枢着される。このように、接触子ホルダ46にリンク44と可動接触子47とを保持させた状態で、リンク44の中央部を軸45により器体1に回動自在に枢支させ、さらにリンク44の長孔44cとハンドル7の突出部7cに設けた挿通孔とに連結軸43を挿通することで、ハンドル7と接触子ホルダ46とがリンク44を介して連結されるのである。なお接圧ばね49は、一対の捩りコイルばねを連結する部位が接触子ホルダ46の中央片46aに当接するとともに、捩りコイルばねの他端側が可動接触子47の中央部に係止しており、可動接触子47が連結軸48を中心に右回りに回転すると、可動接触子47を左回りに回転させる方向のばね復帰力を可動接触子47に付与するようになっている。
次に強制開極機構部9について説明する。強制開極機構部9はバイメタル22、電磁引き外し装置(電磁石装置)28、ラッチ部材54、引き外し部材55などを主要な構成として備え、接点部6に定格電流以上の過電流が流れた際に接点部6を強制開極させる熱動釈放機能と、熱動釈放機能が作動する電流値に比べて遙かに大きい短絡電流のような大電流が接点部6に流れた際に接点部6を強制開極させる電磁釈放機能とを備えている。
バイメタル22の下側端は、板金の左右方向の両側縁が上側に折曲されたコ字状の支持板23の左側片に固着されている。支持板23の右側片には、消弧グリッド19の上側に横片が載置される導電性のL字形のアーク走行板24の縦片が連結されており、支持板23の中央片とアーク走行板24の横片とは隙間をあけて並行に配置されている。支持板23の左側片の上縁からは幅細の突出片23aが上方に突出しており、この突出片23aに対向して調整ねじ57が配設される。調整ねじ57は、器体1の内面に設けた溝内に嵌め込んだ保持片58のねじ孔に螺合し、その先端が突出片23aと対向している。したがって、調整ねじ57のねじ込み量を調整して、調整ねじ57の先端で突出片23aを押圧することによって、突出片23aを左右方向に撓ませて、バイメタル22の上側端(自由端)の位置を左右方向に移動させることができ、バイメタル22が湾曲して強制開極機構部9がトリップ動作を行う時の電流値を調整することができる。
また支持板23の中央片には電磁引き外し装置28が載置されている。電磁引き外し装置28は、一端が可撓電線30を介してバイメタル22の自由端に接続されるとともに他端が可撓電線31を介して可動接触子47に電気的に接続され、電源と負荷との間の通電電路に挿入されたコイル29と、コイル29が巻装された円筒状のコイル枠32と、コイル枠32の内部に軸方向において進退自在に配置される可動鉄心(プランジャ)33と、コイル枠32の一端側(引き外し部材55側)の開口部に取着される固定鉄心34と、可動鉄心33の一面(固定鉄心34との対向面側)に取着される合成樹脂製のスペーサ38と、可動鉄心33と固定鉄心34との間に介装されて可動鉄心33を固定鉄心34から離れる向きに押圧するコイルばね35(付勢ばね)と、可動鉄心33の他面(固定鉄心34と反対側の面)に取着されてコイル枠32の右側の開口部から外部に突出する係合ピン36と、固定鉄心34を軸方向に貫通する挿通孔34aに移動自在に挿通される駆動ピン37と、左右方向の両側縁が下向きに折曲されてコイル29の左右両側および上側を覆うヨーク39とを備えている。
ここで、可動鉄心33には、スペーサ38との対向面に、スペーサ38側に突出する円柱状の係合凸部33aが突設されている。一方、スペーサ38は非磁性材料により形成されており、付勢ばね35側の面には付勢ばね35の中心に挿通される円柱状の凸部38aが突設され、可動鉄心33側の面には係合凸部33aが凹凸係合する係合凹部38bが凹設されている。而して係合凸部33aと係合凹部38bとを凹凸係合させることによって、可動鉄心33にスペーサ38が取着されており、可動鉄心33とスペーサ38とで駆動部材が構成されている。
ヨーク39には右側片から中央片にかけてスリット39aが形成されており、このスリット39aを通して係合ピン36が右方向に突出している。またヨーク39の中央片の下側には板状のばね部材61が配置されており、ばね部材61の一部を切り起こして形成された弾性ばね片61aがスリット39aを通して上方に突出している。コイル29に通電すると、固定鉄心34−ヨーク39−可動鉄心33を通る磁路の磁気抵抗を小さくするように、可動鉄心33に対して固定鉄心34との間で吸引力が発生する。そして主電路に短絡電流のような大電流が流れた場合には、付勢ばね35のばね力に抗して可動鉄心33が固定鉄心34に近づく向きに移動し、可動鉄心33に押された駆動ピン37が引き外し部材55の突出片23aを左向きに押圧して、引き外し部材55を軸59を中心として右回りに回転させることにより、ラッチ部材54の係合を解除するとともに、可動鉄心33に取着された係合ピン36の大径部36aが可動接触子47と当接して、可動接触子47を連結軸48を中心として右回りに回転させる。
ラッチ部材54は鉄製(SPCC)の部品であって細長い棒状に形成されており、長手方向の中間部が軸56を介して器体1に回動自在に軸支されている。またラッチ部材54の上側縁には、長手方向の一端側(右側)には接触子ホルダ46と係合する凹溝54aが形成されており、この凹溝54aよりも中央寄りの部位には上側に突出する突起部54bが形成されている。一方、ラッチ部材54の長手方向他端側(左側)には、引き外し部材55と係止する係止突起54cが突設されている。
引き外し部材55は、軸59を介して器体1に回動自在に軸支される本体部55aと、この本体部55aから下方に突出し先端部が駆動ピン37に対向配置される延出片55bとを有し、本体部55aの下側縁には、ラッチ部材54の係止突起54cと係止する係止部55cが設けられている。引き外し部材55は復帰ばね60によって軸59を中心に左回りに付勢されており、係止部55cをラッチ部材54の係止突起54cと係止させることによって、接点部6を開極させる方向の勢力を蓄積した状態でラッチ部材54をラッチしている。
次に回路遮断器の動作について図4〜図11を参照して説明する。図4及び図5は接点部6の開極状態(オフ状態)を示しており、ハンドル7は、操作部7bが開口部1aの左端に当接するまで、ハンドル復帰ばね41のばね力を受けて図中左回りに回動している。またハンドル7とリンク44とを連結する連結軸43は、腕部44aに設けた長孔44c内の右端(オフ位置)まで移動し、リンク44の回転に応じて腕部44bに回転自在に軸支された可動接触子47が図中左側に移動して、可動接触子47の可動接点4が固定接点5から開離している。すなわち電源側端子部13と負荷側端子部14とは非導通状態(オフ状態)となっている。またオフ状態では、可動接触子47の上端側に設けた乗り上げ部47eが、表示部材52に設けた当接部52cの基部付近と当接しており、表示部材52は復帰ばね53のばね力によって図中右回りに回転しているので、器体1の開口窓1bから左側の表示面52dが露出し、オフ状態を表示している。
このオフ状態から、操作摘み42を操作してハンドル復帰ばね41のばね力に抗してハンドル7を図中右回りに回転させると、ハンドル7の突出部7cに設けた連結軸43が長孔44c内を左方向へ移動し、連結軸43によって長孔44cの下側縁が下向きに押圧されるので、リンク44が軸45を中心に左回りに回転し、リンク44の回転に伴って可動接触子47が図中右側へ移動する。そして、図6及び図7に示すようにハンドル7の操作部7bがオフ位置とオン位置との略中間位置まで移動すると、可動接点4が固定接点5に接触する位置まで可動接触子47が移動する。ここでハンドル7を図4及び図5に示すオフ位置から図6及び図7に示す位置まで回転させる間は、可動接点4が固定接点5に接触しておらず、接圧ばね49による接圧が発生していないので、ハンドル7を小さい力で操作することができる。
その後、図8及び図9に示すようにハンドル復帰ばね41および接圧ばね49のばね力に抗して操作摘み42を図中右側に押し、操作部7bが開口部1aの右端に当接するまでハンドル7を図中右回りに回転させると、連結軸43が長孔44c内の左端(オン位置)まで移動し、連結軸43の移動に応じてリンク44が図中右回りに回転するので、リンク44の腕部44bに支持された接触子ホルダ46が図中右側へ移動する。この間、可動接触子47の一端側に設けた可動接点4は固定接点5と接触しているので、可動接触子47は連結軸48を中心として図中右回りに回転し、それに応じて接圧ばね49が撓められるので、接圧ばね49のばね復帰力によって可動接点4が固定接点5に押圧される。すなわち接圧ばね49により接点部6に接圧が与えられる。この状態では電源側端子部13と負荷側端子部14とは導通状態(オン状態)となっている。またハンドル7を図6及び図7に示す接点部6の接触開始位置から図8及び図9に示すオン位置まで回転させると、可動接触子47の上端側に設けた乗り上げ部47eが、表示部材52に設けた当接部52cの下側湾曲面に摺接しながら図中右側に移動するので、主部52aが復帰ばね53の付勢力に抗して図中左回りに回転する。そして上記オン位置では当接部52cの下側端が乗り上げ部47eの頂上部に乗り上げた状態となり、オン表示用の表示面52eが開口窓1bに臨む位置に移動するので、表示面52eにより接点部6のオン状態を容易に把握できる。なおハンドル7をオン位置まで回転させると、ハンドル7とリンク44とを連結する連結軸43が、ハンドル軸40と軸48とを結ぶ線分を超えて反対側(図8中の左側)に移動するので、開極ばね51などのばね力がハンドル7をオン方向に付勢する方向に作用し、ハンドル7がオン位置に保持される。
また図8及び図9に示すオン状態から、操作摘み42を操作してハンドル7をオフ方向(図中左回り)に回転させると、ハンドル7の突出部7cに設けた連結軸43が長孔44c内を右側に移動し、リンク44が図中右回りに回転するので、リンク44とともに接触子ホルダ46に支持された可動接触子47が図中左側に移動し、可動接点4が固定接点5から開離する。そして、ハンドル7とリンク44とを連結する連結軸43が、ハンドル軸40と軸48とを結ぶ線分を超えて反対側(図4中の右側)に移動すると、ハンドル復帰ばね41のばね力を受けてハンドル7がオフ方向に急速に回転し、図4及び図5に示すオフ状態となり、ハンドル7がオフ位置に保持される。またこの時、可動接触子47の乗り上げ部47eは、当接部52cの下側傾斜面に摺接しながら図中左側に移動するので、表示部材52が復帰ばね53の復帰力を受けて図中右回りに回転し、図4及び図5に示すオフ位置ではオフ表示用の表示面52dが開口窓1bから露出する。
次に接点部6に異常電流が流れた場合の強制開極機構部9の動作について説明する。図8及び図9に示すオン状態で短絡事故が発生するなどして接点部6に短絡電流のような大電流が流れた場合、コイル29に大電流が流れ、可動鉄心33と固定鉄心34との間に発生する電磁吸引力によって、可動鉄心33が付勢ばね35のばね力に抗して固定鉄心34に近づく向きに移動する(図10及び図11参照)。この時、可動鉄心33に押された駆動ピン37が、固定鉄心34の挿通孔34aを通して左側に突出し、引き外し部材55の突出片23aを左向きに押圧するので、引き外し部材55を軸59を中心に図中右回りに回転させることによって、引き外し部材55とラッチ部材54との係合状態が解除される。引き外し部材55とラッチ部材54との係合が外れると、ラッチ部材54が弾性ばね片29aのばね力を受け、軸56を中心に右回りに回転し、ラッチ部材54の凹溝54aと接触子ホルダ46の中央片46aとの係合が外れるので、接圧ばね49や開極ばね51のばね力を受けて接触子ホルダ46が連結軸48を中心に右回りに回転するとともに、可動接触子47が図中右回りに回転し、可動接点4が固定接点5から開離する。また可動鉄心33とともに係合ピン36が図中左側に移動し、係合ピン36の大径部36aによって可動接触子47の下端側が左側に押圧されるので、可動接点4を固定接点5から短時間で引き外して、接点溶着の発生を防止することができる。なお図10および図11は強制開極機構部9が電磁釈放動作を行って接点部6を強制開極した直後の状態を示しており、その後ハンドル復帰ばね41や復帰ばね60などのばね力を受けて開閉機構部8および強制開極機構部9は図4および図5に示すオフ状態に復帰するので、復旧後にハンドル7をオン操作することによって、接点部6を再び閉極させることができる。
ここで、本実施形態の電磁引き外し装置28では、可動鉄心33における固定鉄心34との対向面側に非磁性材料で形成されたスペーサ38を取着しているので、可動鉄心33およびスペーサ38からなる駆動部材の全体を磁性材料で形成した場合に比べて駆動部材に作用する電磁吸引力を小さくでき、その結果駆動部材の動作開始電流を大きくできる。したがってモータのように始動電流が大きい負荷に回路遮断器を使用する場合に、始動電流によって電磁引き外し装置28が誤動作してしまうのを防止することができる。しかも、可動鉄心33に装着されたスペーサ38が付勢ばね35と当接する当接位置を、全体が磁性材料で形成された他の駆動部材が付勢ばね35と当接する当接位置と同一にしているので、駆動部材以外の付勢ばね35などの部品を変更することなく、駆動部材の動作開始電流を大きくとることができ、モータのような始動電流の大きい負荷に容易に対応することができる。しかも、係合凸部33aの突出量や係合凹部38bの深さを調整することで、固定鉄心34と可動鉄心33との間の距離を調整することができるので、駆動部材の動作開始電流の微調整が容易に行える。尚、本実施形態では可動鉄心33側に係合凸部33aを、スペーサ38側に係合凹部38bを設けているが、可動鉄心33に係合凹部を設けるとともに、スペーサ38に係合凸部を設けても良い。
また図8及び図9に示すオン状態で接点部6に定格電流を超える過電流(熱動釈放機能の作動電流)が流れた場合、バイメタル22が湾曲して、バイメタル22の上端側で引き外し部材55の上部が右側に押圧されるので、引き外し部材55が軸59を中心として右回りに回転し、引き外し部材55とラッチ部材54との係合が解除される。この時、ラッチ部材54が弾性ばね片29aのばね力を受け、軸56を中心に右回りに回転し、ラッチ部材54の凹溝54aと接触子ホルダ46の中央片46aとの係合が外れるので、接圧ばね49や開極ばね51のばね力を受けて接触子ホルダ46が連結軸48を中心に右回りに回転するとともに、可動接触子47が図中右回りに回転し、可動接点4が固定接点5から開離する。なお強制開極機構部9が熱動釈放動作を行って接点部6を強制開極した場合でも、上述と同様にハンドル復帰ばね41や復帰ばね60などのばね力を受けて開閉機構部8および強制開極機構部9は図4および図5に示すオフ状態に復帰するので、復旧後にハンドル7をオン操作することによって、接点部6を再び閉極させることができる。
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。