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JP4857708B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

定着装置および画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置に関し、より詳しくは回動可能なベルト部材を備えた定着装置及び画像形成装置に関するものである。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、次のように画像形成が行われる。まず、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)の表面が帯電装置によって一様に帯電される。帯電された感光体ドラムは、画像情報に基づいて制御された光により走査露光され、その表面に静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像は現像装置により可視像(トナー像)化され、その後、トナー像は感光体ドラムの回転に伴って転写部まで搬送されて、記録紙(以下、用紙ともいう)上に静電転写される。そして、記録紙上に担持されたトナー像は定着装置によって定着処理が施されて、トナー画像が完成する。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置としては、2ロール方式と呼ばれる構成が従来から広く一般に利用されている。この2ロール方式の定着装置は、内部に加熱源(ヒーター)が配設された円筒状の芯金の表面に、耐熱性弾性層と離型層とが積層されて形成された定着ロールと、芯金に耐熱性弾性層と耐熱性樹脂被膜あるいは耐熱性ゴム被膜による離型層とが積層されて形成された加圧ロールとが互いに圧接されて構成されている。そして、定着ロールと加圧ロールとの圧接領域(ニップ部)に、未定着トナー像を担持した記録紙を通過させ、未定着トナー像に対して加熱と加圧とを行うことにより、トナー像を定着している。
ところで、近年、画像形成装置では、高生産性化やカラー化が急速に進展するとともに、両面印刷機構を備えたものも多く普及するに至っている。そのため、画像形成装置に搭載される定着装置においても、高速化への対応を一段と進める必要が生じている。
ところが、従来の2ロール方式の定着装置は、高速で連続して送られてくる多数枚の記録紙に対しては、充分な定着処理を行うことが困難であるという問題を有している。すなわち、2ロール方式の定着装置においては、定着ロールを構成する芯金や芯金に被覆されたシリコーンゴム等からなる弾性層等が熱的抵抗体として作用する。そのため、2ロール方式の定着装置では、記録紙が定着ロールの表面から奪う熱量に対応した熱量を、定着ロールの内部に配置したヒーターから即応的に、かつ充分に供給することが構造的に難しい。
その結果、2ロール方式の定着装置に高速で連続して記録紙が送られると、定着ロールの表面温度が漸次低下し、次第に定着性能が低下するという不都合が生じる。また、画像形成装置の立ち上がり時において、定着ロールの表面温度が一時的に落ち込む所謂「温度ドループ現象」が発生し易くなる。特に、記録紙として熱容量の大きい厚紙等が使用される場合には、定着ロールの表面から奪われる熱量が大きくなるので、定着性能の低下や温度ドループが大きくなり、定着不良に基づく画像品質の劣化を生じさせることとなる。
かかる状況から、2ロール方式の定着装置を用いた場合に生じる上記した問題点を解消し、画像形成装置の高速化に対応した定着装置を実現する技術が開発されている。例えば、記録紙を加熱する加熱部材が、複数の張架ロールによって張架されたフィルム状のベルト部材(定着ベルト)で構成された定着装置に関する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
このような定着ベルトを用いた定着装置では、ニップ部に進入する前に予め張架ロール内に配設されたヒーターによって定着ベルトを充分に加熱しておき、ニップ部においては加熱された定着ベルトから記録紙およびトナー像に熱を加えることでトナー像を定着している。そのため、定着ベルトが定着処理の間に記録紙によって熱を奪われても、定着ベルト自体の熱容量が小さいことから、定着ベルトは張架ロール内のヒーターにより短時間で所定の定着可能温度まで回復させることが可能である。それにより、加熱部材として定着ベルトを用いた定着装置では、ニップ部内に進入する際の定着ベルトの温度を所定値に維持することが容易となり、画像形成装置が高速化されても、ニップ部に充分な熱量を供給することが可能である。
しかし、定着ベルトを用いた定着装置においても、記録紙の表面にはトナー像が担持されているため、定着ベルトの熱によってトナー像が溶融した際に、トナー像が接着剤となって記録紙と定着ベルトとの間に付着力が作用する。そのため、従来の2ロール方式の定着装置と同様に、定着ベルト表面から記録紙を剥離する機構を設ける必要がある。特に、画像形成装置の高速化が図られた場合には、定着装置において一旦剥離不良が生じて紙詰まり(ジャム)が生じると、その影響を受けて損傷する後続の記録紙の枚数も多くなることから、ニップ部を高速で通過した記録紙を定着ベルト側から安定的かつ確実に剥離する必要がある。
記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構としては、上述した特許文献1に記載されたように、従来から、ニップ部の下流側に定着ベルトに当接して分離爪を配設する構成が用いられている。また、定着ロールと加熱ロールとに張架された定着ベルトに対して加圧ロールが圧接して配設された構成の定着装置においては、ニップ部の出口部(最下流部)に対応した位置の定着ベルトの内側に、かかる出口部における定着ベルトの曲率を大きく設定するための固定部材を設け、定着ベルトの曲率の変化により記録紙を剥離する構成も用いられる(例えば、特許文献2参照)。
特開平3−133871号公報(第4頁、図3) 特開2003−5566号公報(第6−8頁、図4)
しかしながら、定着ベルトを用いた定着装置において、記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構として分離爪を用いる場合には、記録紙を定着ベルト側から安定的に剥離するために、分離爪を定着ベルトに当接させて配設する必要がある。そのために、分離爪を用いた場合に高速定着を行うと、定着ベルト表面は分離爪によって磨耗され易くなる。そして、定着ベルト表面に分離爪による磨耗が生じると、定着画像上に定着ベルト表面の磨耗痕に対応した定着ムラが発生して画像品質を低下させる場合がある。また、磨耗痕上にオフセットしたトナーが次第に付着堆積して、定着画像上に汚れを生じさせることもある。さらには、定着ベルト表面の磨耗が進んだ場合には、薄層の定着ベルトは最終的に破断にまで至り、定着装置の機能が損なわれるおそれもある。
また、記録紙を定着ベルト表面から剥離する機構として、ニップ部の出口部に定着ベルトの曲率を大きく形成するための固定部材を設ける場合には、定着ロールと加圧ロールとが圧接されるニップ部の入口部と、固定部材が配設される出口部との間のニップ中間領域においては、定着ベルトは定着ベルトの張力のみによって加圧ロールに圧接されることとなる。そのために、ニップ中間領域でのニップ圧は、比較的低いものとなる。そして、このような低ニップ圧領域において記録紙やトナーが加熱されると、記録紙中の水分が気化して水蒸気となったり、トナー中の空気が熱膨張したりして、定着ベルトと加圧ロールとの間にエアーギャップ(気泡)が生じることがある。このようなエアーギャップが生じた場合には、ニップ部内に存在する記録紙上のトナーが未だ完全に定着されていない状態にあると、気泡が動き回ることによって未定着トナーが乱され易くなる。その結果、定着画像にムラ等の画像不良が発生し、画像品質の低下を招くおそれがある。
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、定着の高速化を図った場合においても用紙剥離性能を確保することが可能な定着装置等を提供することにある。
また別の目的は、急激に用紙を加熱することにより発生する画像欠陥を防止することにある。
かかる目的のもと、本発明が適用される定着装置は、回動可能な定着ロールと、定着ロールに張架されるベルト部材と、ベルト部材を張架する張架ロールと、定着ロールを押圧するように配置され、定着ロールに張架されたベルト部材との間で記録材が通過するニップ部を形成する加圧部材と定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、ベルト部材の外表面を加圧部材に押圧させると共に、加圧部材に押圧された状態での加圧部材の表面形状と略同一である押圧面を有する剥離部材と、を含み、加圧部材は、ベルト部材が定着ロールに巻き付けられた領域内において加圧部材がベルト部材の外周面に圧接する圧接領域の下流側端部の近傍から離れるに従って曲率が小さくなっていく表面形状であり、剥離部材の押圧面は、所定の曲率半径の円弧が形成された上流側の第1押圧面と、下流側で第1押圧面に連続すると共に第1押圧面の曲率半径よりも大きい曲率半径の円弧が形成された第2押圧面と、を含み、剥離部材の押圧面が加圧部材を押圧する圧力は、ベルト部材の搬送方向において略均等であることを特徴とするものである
この剥離部材の押圧面は、加圧部材に押圧された状態で加圧部材の表面形状に沿うように形成されていることを特徴とすることができる
更に本発明を別の観点から捉えると、本発明が適用される画像形成装置は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、記録材上に転写されたトナー像を記録材に定着する定着手段と、を含み、定着手段は、ヒーターと、回動可能に設けられたベルト部材と、ベルト部材を張架するとともに、ヒーターの熱を用いてトナー像を定着する定着ロールと、定着ロールを押圧するように配置され、定着ロールに張架されたベルト部材との間で記録材が通過するニップ部を形成する加圧部材と、定着ロールと加圧部材との圧接部の下流側近傍にてベルト部材の外表面を加圧部材に押圧すると共に、ベルト部材を屈曲させてベルト部材から記録材を剥離するための剥離部材と、を備え、加圧部材は、ベルト部材が定着ロールに巻き付けられた領域内において加圧部材がベルト部材の外周面に圧接する圧接領域の下流側端部の近傍から離れるに従って曲率が小さくなっていく表面形状であり、剥離部材の押圧面は、所定の曲率半径の円弧が形成された上流側の第1押圧面と、下流側で第1押圧面に連続すると共に第1押圧面の曲率半径よりも大きい曲率半径の円弧が形成された第2押圧面と、を含み、剥離部材の押圧面が加圧部材を押圧する圧力は、ベルト部材の搬送方向において略均等であることを特徴とするものである。
加圧部材により形成されたニップ部における加圧部材の変形量が定着ロールの変形量よりも大きいことを特徴とすることができる。また、定着手段の加圧部材は、ロール部材で形成されたことを特徴とすることができる。
本発明によれば、定着の高速化を図った場合においても用紙剥離性能を確保することが可能になる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10とを備えている。また、画像形成装置は、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60とを備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲には、各種の電子写真用デバイスが順次配設されている。このデバイスとしては、感光体ドラム11を帯電する帯電器12と、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)と、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14とが含まれる。また、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17とが含まれる。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
本実施の形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙トレイから用紙Pを所定のタイミングで取り出して二次転写部20へと送り込む手段を備えている。また、用紙搬送系として、二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55と、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56とを備えている。また、用紙搬送系として、定着装置60から排紙された用紙Pをガイドする排紙ガイド65と、排紙ガイド65によりガイドされた用紙Pを機外に排出する排紙ロール66とを備えている。
すなわち、二次転写部20にてトナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における搬送速度に合わせて、用紙Pを最適な搬送速度で定着装置60まで定着入口ガイド56を介して搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、排紙ガイド65及び排紙ロール66を介して、画像形成装置の排出部に設けられた図示しない排紙載置部に搬送される。
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。
図2は、本実施の形態の定着装置60の概略構成を示す側断面図である。
図2に示すように、この定着装置60は、加熱部材の一例としての定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61に対して圧接して配置された加圧部材の一例としての加圧ロール62とで主要部が構成されている。
定着ベルトモジュール61は、ベルト部材の一例としての定着ベルト610と、定着ロール611と、アルミニウムで形成された円柱状の張架ロール612,613,615と、姿勢矯正ロール614と、剥離部材の一例としての剥離パッド64と、により主要部が構成されている。定着ロール611は、定着ベルト610を張架しながら回転駆動するものである。張架ロール612は、定着ベルト610を内側から張架するものであり、張架ロール613は、定着ベルト610を外側から張架するものである。姿勢矯正ロール614は、定着ロール611と張架ロール612との間で定着ベルト610の姿勢を矯正するものである。剥離パッド64は、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接する領域であるニップ部N内の下流側領域であって定着ロール611の近傍位置に配置されたものである。張架ロール615は、ニップ部Nの下流側において定着ベルト610を張架するものである。
定着ベルト610は、厚さ80μmのポリイミド樹脂で形成されたベース層と、ベース層の表面側(外周面側)に積層された厚さ200μmのシリコーンゴムからなる弾性体層と、弾性体層上にさらに被覆された厚さ30μmのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)チューブからなる離型層と、で構成されている。ここでは、弾性体層は、特にカラー画像に対する画質向上のために設けられたものである。なお、定着ベルト610は、フレキシブルなエンドレスベルトであり、その構成は、使用目的や使用条件等の装置設計条件に応じて、材質・厚さ・硬度等を適宜選択することができる。
定着ロール611は、所定厚のアルミニウムからなる円筒状のコアロール(芯金)に、コアロール表面の金属磨耗を防止する保護層として、厚さ200μmのフッ素樹脂が皮膜して形成された直径100mmのハードロールである。ただし、定着ロール611は、この構成に限られるものではなく、加圧ロール62との間でニップ部Nを形成する際に、加圧ロール62からの押圧力に対してほとんど変形を生じない充分にハードなロールとして機能する構成であればよい。そして定着ロール611は、図示しない駆動モータからの駆動力を受けて、高速度例えば264mm/sの表面速度(プロセススピード)で矢印C方向に回転する。
また、定着ロール611の内部には、加熱源としてのハロゲンヒーター616aが配設されている。そして、定着ロール611の表面に接触するように配置された温度センサ617aの計測値に基づき、画像形成装置の制御部40(図1参照)が定着ロール611の表面温度を所定値となるように制御している。
張架ロール612は、内部に加熱源としてのハロゲンヒーター616bが配設され、温度センサ617bと制御部40(図1参照)とによって、表面温度が所定値となるように制御されている。したがって、張架ロール612は、定着ベルト610を張架する機能と共に、定着ベルト610を内周面側から加熱する機能をも併せ持っている。
また、張架ロール612の両端部には、定着ベルト610を外側に押圧する図示しないバネ部材が配設されている。そして、張架ロール612には、ベルトエッジ位置検知機構の検知結果に応じて定着ベルト610の軸方向における当接位置を変位させる軸変位機構が配設され、これにより定着ベルト610の蛇行(ベルトウォーク)を制御するように構成されている。
張架ロール613の表面には、厚さ20μmのPFAからなる離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト610の外周面からの僅かなオフセットトナーや紙粉が張架ロール613に堆積するのを防止するために形成されるものである。
張架ロール613の内部には、加熱源としてのハロゲンヒーター616cが配設されており、温度センサ617cと制御部40(図1参照)とによって、表面温度が所定値となるように制御されている。したがって、張架ロール613は、定着ベルト610を張架する機能と共に、定着ベルト610を外周面側から加熱する機能をも併せ持っている。したがって、本実施の形態では、定着ロール611と張架ロール612および張架ロール613とによって定着ベルト610が加熱される構成を採用している。
姿勢矯正ロール614は、アルミニウムで形成された円柱状ロールである。姿勢矯正ロール614の近傍には、定着ベルト610のエッジ位置を検知する図示しないベルトエッジ位置検知機構が配置されている。
加圧ロール62は、直径80mmのアルミニウムからなる円柱状ロール621を基体として、基体側から順に、ゴム硬度30°(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ10mmの弾性層(Siゴム中間層)622と膜厚100μmのPFAチューブからなる離型層623とが積層されて構成されたソフトロールである。そして、加圧ロール62は、定着ベルトモジュール61に押圧されるように設置され、定着ベルトモジュール61の定着ロール611が矢印C方向へ回転するのに伴い、定着ロール611に従動して矢印E方向に回動する。その進行速度は、定着ロール611の表面速度と同じ264mm/sである。
また、張架ロール615は、剥離パッド64を通過した定着ベルト610が定着ロール611に向けて円滑に回動するように、剥離パッド64の定着ベルト610進行方向下流側近傍に配置されている。
剥離パッド64は、ステンレス鋼(SUS)で形成された断面が略円弧形状のブロック部材である。そして、加圧ロール62が定着ベルト610を介して定着ロール611に圧接される領域の下流側近傍位置において、定着ロール611の軸方向全域にわたって配置されている。また剥離パッド64は、定着ベルト610を介して加圧ロール62を所定の幅領域に亘って所定の荷重(例えば、30kgf)で均一に押圧するように設置されている。
このように構成された定着装置60において、ニップ部Nを通過した後の定着ベルト610は、剥離パッド64の側面に倣って回動する。それにより、定着ベルト610の進行方向は剥離パッド64によって張架ロール615の方向に屈曲するように急激に変化する。そのため、定着ベルト610と共に進行方向に導かれている用紙Pは、ニップ部Nを出た時点で定着ベルト610の進行方向の変化に追随できなくなる。これにより、用紙Pは自身の所謂「コシ」によって定着ベルト610から剥離され、定着処理が完了する。このようにして、ニップ部Nの出口部において、用紙Pに対する曲率分離が安定的に行なわれる。なお、定着ベルト610から剥離された用紙Pは、剥離案内板83及び排紙ガイド65により機外に排出される。
次に、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接されたニップ部Nについて説明する。
図3は、ニップ部Nの近傍領域を表す概略断面図である。
図3に示したように、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接されたニップ部Nには、定着ベルト610が定着ロール611に巻き付けられた(ラップされた)領域(ラップ領域)内において、加圧ロール62が定着ベルト610の外周面に圧接するように配置されることにより、ロールニップ部(第1ニップ部)N1が含まれる。
また、上述したように、ロールニップ部N1の下流側近傍には剥離パッド64が配設されており、剥離パッド64は、定着ベルト610を加圧ロール62表面に押圧している。これにより、ロールニップ部N1の下流側には、ロールニップ部N1に連続して、定着ベルト610が加圧ロール62表面にラップされた剥離パッドニップ部(第2ニップ部)N2が形成されている。すなわち、ニップ部Nは、ロールニップ部N1と剥離パッドニップ部N2とからなる(N=N1+N2)。また、ロールニップ部N1と剥離パッドニップ部N2とは、ロールニップ部N1の下流側端部N1Eにて連続している。
剥離パッドニップ部N2は、剥離パッドニップ部N2内の剥離パッド64が配設された領域(剥離パッド64と加圧ロール62との圧接部)N2Tと、領域N2Tよりもロールニップ部N1側に位置する境界領域N2Sとからなる(N2=N2S+N2T)。
ここで、境界領域N2Sには、定着ベルト610を定着ロール611および加圧ロール62のいずれにも直接押圧する部材が存在しない。そのため、この境界領域N2Sでは定着ベルト610の張力のみによって加圧ロール62に圧接されることとなるので、この境界領域N2Sでのニップ圧は、定着ベルト610の張力のみで形成される。
図4は、剥離パッド64を説明するために拡大して示す概略構成図である。
図4に示すように、剥離パッド64には、主として、定着ロール611側に面する内側面64aと、剥離パッドニップ部N2(図3参照)を通過した定着ベルト610の進行方向を急激に変化させる外側面64bと、定着ベルト610を加圧ロール62に押圧する押圧面64cとが形成されている。
剥離パッド64の内側面64aは、剥離パッド64を定着ロール611側に極力近接させて(例えば、剥離パッド64と定着ロール611とのギャップを0.5mm)配置するために、定着ロール611の周面に倣った湾曲面で形成されている。すなわち、図5に示した境界領域N2Sを極力狭く設定するためには、ロールニップ部N1(図3も参照)の下流側近傍であって、定着ロール611と加圧ロール62とで画成されたくさび状領域Qにおいて、剥離パッド64が加圧ロール62表面を押圧するように配置する必要がある。そのため、内側面64aの上流側端部(押圧面64cの上流側端部、先端部)64pをロールニップ部N1の下流側端部(出口)N1Eの近傍、すなわち上述したくさび状領域Q内の定着ロール611に近接した位置に設置できるように、内側面64aは定着ロール611の周面に倣った湾曲面に形成している。
剥離パッド64の押圧面64cは、定着ベルト610を加圧ロール62に押圧し、加圧ロール62の表面に圧接させる面であり、凹状曲面に形成されている。この押圧面64cについて更に詳細に説明すると、押圧面64cは、互いに曲率半径が異なる領域を有する。すなわち、加圧ロール62の表面に当接していない状態において、押圧面64cは、曲率半径がR1の第1押圧面64c1と、曲率半径がR2(R2≠R1)の第2押圧面64c2とからなる。
ここで、図4に図示する曲率半径R1,R2は、加圧ロール62の表面に当接していない状態の曲率半径を言うものである。この曲率半径R1,R2は、加圧ロール62の寸法等の種々の条件に応じた値を採用すればよいが、本実施の形態では、R1=40mm、R2=50mmである。また、第1押圧面64c1は、上流側端部64pから2mmの範囲に形成され、それ以降は進行方向に沿って、第2押圧面64c2が6mmの範囲で形成されている。
このように、本実施の形態では、剥離パッド64に、曲率半径が互いに異なる第1押圧面64c1及び第2押圧面64c2からなる押圧面64cを形成しているので、後述するように、剥離パッド64と加圧ロール62との圧力状態を良好な状態に維持することができる。
なお、本実施の形態では、剥離パッド64の押圧面64cの形状を、曲率半径が互いに異なる2つの円弧が連続する形状としているが、後述するように、1つの円弧からなる円弧形状に形成するような変形例(図5の(b)参照)も考えられる。
図5は、ニップしている状態の剥離パッド64の押圧面64cの形状を説明するための概略構成図を示すと共に、その圧力状態のグラフを示す説明図である。図5の(a)は、本実施の形態の場合を示し、(b)は本実施の形態の変形例の場合を示し、(c)は比較例を示している。ここで、圧力状態のグラフは、縦軸が押圧力で、横軸が用紙Pの進行方向における位置を示したものである。
なお、ニップによる接触形状は、シミュレーションによる外形計算およびニップ状態のロール出口形状を樹脂で型取りしたピース形状の2つの方法で求めたものである。また、圧力状態のグラフでの圧力プロファイルは、圧力センサ(タクタイル)により測定したものである。
図5の(a)に示す本実施の形態の場合には、剥離パッド64の押圧面64cは、2種類以上の円弧を連結してなる形状である。具体的には、上述したように、曲率半径が40mmと50mmである。
このような形状の押圧面64cは、加圧ロール62とのニップ状態では、加圧ロール62の表面形状と略同一である。すなわち、押圧面64cは、加圧ロール62とのニップ状態で加圧ロール62の表面形状に沿うように形成されている。また、剥離パッド64による押圧力は、ほぼ均等に加わる圧力分布をしている。なお、図5の(a)における境界領域N2Sは2mmであり、領域(圧接部)N2Tは6mmである。
ここで、ロールニップ部N1の下流側端部N1E(図3参照)の極近傍における加圧ロール62の表面形状は、ロールニップ部N1の歪の影響により複雑な形状をとる。すなわち、加圧ロール62は、ロールニップ部N1の下流側端部N1E(図3参照)の極近傍で曲率が大きく、そこから離れるに従って曲率が小さくなっていく。このため、図5の(a)に示すように、本実施の形態のような曲率半径R1,R2にて剥離パッド64の押圧面64cを形成すると、剥離パッド64による押圧力を加圧ロール62にほぼ均等に加えることが可能になる。言い換えると、剥離パッド64の押圧面64cにおける上流側と下流側とで加圧ロール62への押圧力が略同一である。
また、図5の(b)に示す変形例の場合には、剥離パッド91の押圧面91cは、1つの円弧からなる形状であり、具体的には、曲率半径が50mmである。このような形状の押圧面91cは、加圧ロール62とのニップ状態では、押圧面91cのほぼ全域にわたって接触が確保されているが、上流側端部64p(図4参照)寄りの領域Jでは、押圧力が小さくなり、不均一な接触状態になっている。
また、図5の(c)に示す比較例の場合には、剥離パッド92の押圧面92cは、直線形状である。このような形状の押圧面92cでは、加圧ロール62とのニップ状態のときに、上流側端部64p(図4参照)寄りの領域Kで加圧ロール62から完全に浮いてしまっている。このため、境界領域N2S’が、本実施の形態及び変形例の場合と比べて大きくなり、領域(圧接部)N2T’が小さくなる。なお、図5の(c)には、破線で本実施の形態(図5の(a))及び変形例(図5の(b))の場合の境界領域N2S及び領域(圧接部)N2Tを示している。
図5に示す本実施の形態、変形例および比較例の各々について、画像欠陥(ブリスタ)を比較した実験結果を表1に示す。具体的な実験の条件は、次のとおりである。用いた用紙は、OKトップコート(坪量127g/m2)とミラーコートプラチナ(坪量256g/m2)の2種類である。そして、OKトップコートでは、定着ベルト温度が160℃であり、ミラーコートプラチナの定着ベルト温度は190℃である。定着ニップ荷重は、1470N(150kgf)である。その他の条件は、上述した実施の形態における条件と同じである。また、画像種としては、プロセスブラック(濃度100%のC(シアン)、M(マゼンタ)及びY(イエロー)を重ねて作像して、ブリスタの目視評価を行った。
Figure 0004857708
表1に示すように、本実施の形態の場合では、いずれの用紙にもブリスタの発生はみられなかった。また、変形例の場合では、ミラーコートプラチナではブリスタ未発生であるものの、OKトップコートではブリスタが軽微に発生した。
その一方で、比較例の場合では、いずれの用紙にもブリスタが発生した。この比較例では、剥離パッド92の押圧面92cの形状が直線などの単純形状であり、加圧ロール62の複雑な形状に対応できない。このため、加圧ロール62の表面形状と剥離パッド92の押圧面92cの形状との不一致による低下圧力部分である領域Kが生じ、そこを起点とするブリスタが発生したものであると考えられる。
ここで、変形例のように、剥離パッド91の押圧面91cを円弧状に近似しても、ある程度のブリスタ抑制効果が得られる。このため、定着温度が低い場合等には、押圧面91cが円弧形状の剥離パッド91を使用することが可能になる。
このように、剥離パッドの押圧面の形状によりブリスタの抑制効果に差があることがわかる。すなわち、ブリスタを十分に抑制するためには、剥離パッドをロールニップ部N1に極近接させ、間隔を可能な限り小さくすること、および、剥離パッドの押圧力は均一でかつ低圧部がないことの2つの条件を同時に満たす必要がある。上述した内容と重複するが、これらの観点から本実施の形態、変形例および比較例を検討すると、本実施の形態(図5の(a))の場合は、この2つの条件を同時に満たすものであり、十分な抑制効果を期待できる。また、変形例(図5の(b))の場合には、低圧部があるものの、間隔を可能な限り小さくしている点で、ブリスタの抑制効果をある程度期待することができる。また、比較例(図5の(c))の場合には、間隔が大きくなっている点で、ブリスタの抑制効果を期待することは困難であると言える。
なお、加圧ロール62の形状は、ロールの仕様(径/層構成/材料硬度など)によって異なるため、ロール仕様ごとに剥離パッドの押圧面の形状設計を行う必要がある。
以上のように、本実施の形態の剥離パッド64(図5の(a)参照)又は変形例の剥離パッド91(図5の(b)参照)を用いることにより、用紙の剥離性能を確保しつつ、ブリスタを効果的に防止することができる。とりわけ、ブリスタは用紙及びトナーを急激に加熱する高速定着において発生し易いため、本実施の形態のブリスタ防止性能は高速定着を行う場合に有効となる。また、より高光沢の画像を得る場合には、トナーの粘度を下げるためにトナーや用紙を高温に加熱する必要があることから、やはりブリスタが発生し易い。このため、高光沢の画像を得る定着器に対しても、本実施の形態は効果的である。
本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示した図である。 本実施の形態の定着装置の概略構成を示す側断面図である。 ニップ部の近傍領域を表す概略断面図である。 剥離パッドを説明するために拡大して示す概略構成図である。 ニップしている状態の剥離パッドの押圧面の形状を説明するための概略構成図を示すと共に、その圧力状態のグラフを示す説明図である。
符号の説明
60…定着装置、61…定着ベルトモジュール、610…定着ベルト、611…定着ロール、62…加圧ロール、64,91…剥離パッド、64c,91c…押圧面、64c1…第1押圧面、64c2…第2押圧面、N…ニップ部、N2…剥離パッドニップ部、N2T…領域(圧接部)、R1,R2…曲率半径

Claims (5)

  1. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動可能な定着ロールと、
    前記定着ロールに張架されるベルト部材と、
    前記ベルト部材を張架する張架ロールと、
    前記定着ロールを押圧するように配置され、当該定着ロールに張架された前記ベルト部材との間で記録材が通過するニップ部を形成する加圧部材と、
    前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて、前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧させると共に、当該加圧部材に押圧された状態での当該加圧部材の表面形状と略同一である押圧面を有する剥離部材と、
    を含み、
    前記加圧部材は、前記ベルト部材が前記定着ロールに巻き付けられた領域内において前記加圧部材が当該ベルト部材の外周面に圧接する圧接領域の下流側端部の近傍から離れるに従って曲率が小さくなっていく表面形状であり、
    前記剥離部材の前記押圧面は、所定の曲率半径の円弧が形成された上流側の第1押圧面と、下流側で当該第1押圧面に連続すると共に当該第1押圧面の曲率半径よりも大きい曲率半径の円弧が形成された第2押圧面と、を含み、
    前記剥離部材の前記押圧面が前記加圧部材を押圧する圧力は、前記ベルト部材の搬送方向において略均等であることを特徴とする定着装置。
  2. 前記剥離部材の押圧面は、前記加圧部材に押圧された状態で当該加圧部材の表面形状に沿うように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段と、を含み、
    前記定着手段は、
    ヒーターと、
    回動可能に設けられたベルト部材と、
    前記ベルト部材を張架するとともに、前記ヒーターの熱を用いてトナー像を定着する定着ロールと、
    前記定着ロールを押圧するように配置され、当該定着ロールに張架された前記ベルト部材との間で記録材が通過するニップ部を形成する加圧部材と、
    前記定着ロールと前記加圧部材との圧接部の下流側近傍にて前記ベルト部材の外表面を当該加圧部材に押圧すると共に、当該ベルト部材を屈曲させて当該ベルト部材から記録材を剥離するための剥離部材と、を備え、
    前記加圧部材は、前記ベルト部材が前記定着ロールに巻き付けられた領域内において当該加圧部材が当該ベルト部材の外周面に圧接する圧接領域の下流側端部の近傍から離れるに従って曲率が小さくなっていく表面形状であり、
    前記剥離部材の押圧面は、所定の曲率半径の円弧が形成された上流側の第1押圧面と、下流側で当該第1押圧面に連続すると共に当該第1押圧面の曲率半径よりも大きい曲率半径の円弧が形成された第2押圧面と、を含み、
    前記剥離部材の前記押圧面が前記加圧部材を押圧する圧力は、前記ベルト部材の搬送方向において略均等であることを特徴とする画像形成装置。
  4. 前記加圧部材により形成されたニップ部における当該加圧部材の変形量が前記定着ロールの変形量よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
  5. 前記定着手段の前記加圧部材は、ロール部材で形成されたことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
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