以下、本発明を実施するための最良の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係るブラシ摩耗検知装置を備えた車載用液圧装置の構成を模式的に示すブロック図である。尚、図1(a)では、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを図示しており、その他の構成要素は図示を省略している。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る車載用液圧装置100a(例えば、テールゲートリフタ)は、電源10と、この電源10から後述するブラシモータ30への電力の供給を断続する開閉器20と、この開閉器20を介して電源10から電力が供給されてその回転子が回転するブラシモータ30と、このブラシモータ30の主軸により駆動されて作動油タンク40から後述するアクチュエータ70に向けて作動油40aを圧送する液圧ポンプ50と、この液圧ポンプ50から圧送される作動油40aを必要に応じて作動油タンク40へ戻すリリーフ弁60と、このリリーフ弁60により作動油タンク40に戻されなかった液圧ポンプ50からの作動油40aが供給されて力学エネルギーを物理運動量に変換するアクチュエータ70と、を備えている。そして、図1(a)に示すように、本実施の形態に係る車載用液圧装置100aは、電源10からブラシモータ30に電力が供給されている際の電流を検出する電流センサ80aと、この電流センサ80aの出力電圧に基づきブラシモータ30が備えるブラシの寿命終期を検知するブラシ摩耗検知装置90とを、その特徴的な構成要素として備えている。
以下、車載用液圧装置100aの各構成要素について順を追って詳細に説明すると、電源10は、蓄電池(バッテリ)を備えている。この蓄電池としては、例えば、出力電圧が24Vである車載用のバッテリが配設される。
開閉器20は、スイッチ、或いは、継電器(リレー)等で構成されている。この開閉器20としては、例えば、機械式又は半導体式のスイッチ、電磁式の継電器、半導体式の継電器等が配設される。尚、一般的なテールゲートリフタ等の車載用液圧装置では、通常、作業者が手動により適宜操作する機械式のスイッチが用いられる。
ブラシモータ30は、図1(a)では図示しないが、従来の一般的なブラシモータと同様にして、回転モーメントの作用により主軸を中心に回転される回転子と、この回転子と相互作用してそれに回転モーメントを発生させる固定子と、を備えている。又、このブラシモータ30は、図1(a)では図示しないが、回転子が備えるコイルに電力を供給するためのブラシ及びコミュテータを備えている。ここで、これらのブラシとコミュテータとは、従来の一般的なブラシモータの場合と同様、ブラシからコミュテータに電力を確実に供給するために、スプリング等の弾性部材により相互に加圧接触されている。これにより、ブラシモータ30において、ブラシからコミュテータへの電力の供給が確実に行われる。
作動油タンク40は、アクチュエータ70を作動させるための作動油40aをその内部に蓄える。この作動油40aとしては、環境温度の影響による粘度変化や、油圧回路における圧力損失分のエネルギーによる粘度変化を考慮して、アクチュエータ70の運動性能及びその位置決め精度等に問題が発生しないように、適切な作動油が選択される。
液圧ポンプ50は、ブラシモータ30の回転子の回転運動に係る機械エネルギーのトルクと速度とを、作動油40aの流体エネルギーの圧力と流量とに変換する。この液圧ポンプ50としては、例えば、ギヤポンプ、ねじポンプ等のポンプが配設される。この液圧ポンプ50の主軸がブラシモータ30の主軸により回転駆動されると、液圧ポンプ50の主軸に連結されたギヤ等の液送部材が回転駆動され、これにより、作動油タンク40からアクチュエータ70に向けて作動油40aが圧送される。
リリーフ弁60は、所謂安全弁であって、液圧ポンプ50とアクチュエータ70とを接続する配管内の作動油40aの圧力が所定の圧力閾値を超えると、そのバルブを自動的に開放状態として、その配管内から作動油タンク40に向けて過剰な作動油40aを自動的に排出させる。つまり、このリリーフ弁60は、作動油タンク40から作動油40aがアクチュエータ70に向けて過剰に供給されることを防止することで、アクチュエータ70の誤動作を適切に防止する。尚、このリリーフ弁60に設定される所定の圧力閾値は、車載用液圧装置100aの仕様等に基づき、予め適切に設定される。又、この所定の圧力閾値は、通常、一度設定されると、安全性を確保するために、その後に変更されることはない。
アクチュエータ70は、液圧ポンプ50により作動油タンク40から作動油40aが供給されると、その作動油40aが有する力学エネルギーを利用して、伸縮運動や屈伸運動等の物理的な運動を発生させる。そして、このアクチュエータ70は、伸縮運動や屈伸運動等の物理的な運動を発生させることにより、車両が備えるテールゲートを上昇及び下降させる。尚、このアクチュエータ70は、車載用液圧装置100aに要求される昇降仕様等に基づき、適切に選定される。
一方、本実施の形態において特徴的に配設される電流センサ80aは、電源10とブラシモータ30とを電気的に接続する配線の近傍、或いは、その配線を自己に貫通させるようにして、適切に配設される。ここで、この電流センサ80aとしては、例えば、磁気比例型センサ、磁気平衡型センサ、磁気コイル型センサ、コアレスコイル型センサ等のセンサが用いられる。この電流センサ80aは、電源10からブラシモータ30に電力が供給されている際、電源10とブラシモータ30とを電気的に接続する配線に流れるモータ電流を、それに比例する直流電圧に変換して出力する。ここで、電流センサ80aは、ブラシモータ30に流れるモータ電流の乱れの周期(周波数)に応じて、そのモータ電流の乱れを確実に検知できるよう、適切に選定される。尚、この電流センサ80aとしては、シャント抵抗を使用した電流計を用いることも可能である。この場合、電流計は、電源10とブラシモータ30との間に直列に接続されたシャント抵抗間の電圧差を測定して、その測定した電圧差を出力する。
又、本実施の形態において特徴的に配設されるブラシ摩耗検知装置90は、電流センサ80aが検出する直流電流に基づき、その電流センサ80aが出力する直流電流の例えば下限値が所定の電流閾値を下回る場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定して、その旨を警告ランプ等の表示機器を介して作業者に伝達する。
以下、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置90の内部構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係るブラシ摩耗検知装置の内部の構成を模式的に示すブロック図である。尚、図2(a)は、ブラシ摩耗検知装置の第1の内部構成を模式的に示している。又、図2(b)は、ブラシ摩耗検知装置の第2の内部構成を模式的に示している。又、図2では、本発明に係るブラシ摩耗検知装置を説明するために必要となる構成要素のみを図示しており、その他の構成要素は図示を省略している。
本発明では、ブラシ摩耗検知装置90の内部構成としては、図2(a)に示す第1の内部構成を適用してもよく、或いは、図2(b)に示す第2の内部構成を適用してもよい。尚、何れの内部構成が採られる場合でも、それらを構成する構成要素の駆動用の電力は、車載用液圧装置100aの電源10から供給される。
先ず、ブラシ摩耗検知装置90の第1の内部構成について説明する。
図2(a)に示すように、本実施の形態に係る第1のブラシ摩耗検知装置90aは、電流センサ80aが出力する直流電圧値をA/D変換するA/D変換器91と、このA/D変換器91の出力と、メモリ93の記憶情報と、タイマ94の出力と、に基づきブラシモータ30が備えるブラシの寿命終期を検知するためのCPU92と、このCPU92の出力に基づき警告を行う警告ランプ95と、を備えている。
以下、第1のブラシ摩耗検知装置90aの各構成要素について順を追って詳細に説明すると、A/D変換器91は、電流センサ80aが出力する連続的なアナログ値を所定のサンプリング周期でサンプリングして量子化し、そのアナログ値をそれに比例する離散的なデジタル値に変換する。ここで、A/D変換器91としては、ブラシモータ30が備える回転子の回転数と、そのブラシモータ30が備えるコミュテータにおける電極の枚数と、を十分に考慮して、モータ電流の乱れを確実に検知可能な変換時間(或いは、サンプリング周期)を有するA/D変換器を選定する。
例えば、ブラシモータ30が備える回転子の回転速度を3000min-1とし、ブラシモータ30が備えるコミュテータにおける電極の枚数が25枚であると仮定すると、モータ電流の乱れの周波数は1.25kHz程度となるので、モータ電流の乱れの周期は800μS程度となることが予想される。
そこで、本実施の形態では、このモータ電流の乱れを確実に検知するために、変換時間が800μS未満、望ましくは、変換時間が100μS以下であるA/D変換器を選定する。このような変換時間を有するA/D変換器は、安価な組み込み型マイコンが内蔵するA/D変換器であってもその変換時間が50μS以下であることから、容易にかつ非常に安価に入手することが可能である。尚、ブラシモータ30が備える回転子の回転数や、ブラシモータ30が備えるコミュテータにおける電極の枚数によっては、モータ電流の乱れの周期が非常に短くなる。この場合、モータ電流の乱れを確実に検知可能な変換時間を有する適切なA/D変換器を選定する必要がある。
一方、CPU92は、A/D変換器91の出力と、メモリ93に予め記憶されているプログラム及び所定の閾値と、タイマ94の出力と、に基づき、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたか否かを判定する。そして、このCPU92は、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定すると、警告ランプ95を点灯させるための制御信号を出力する。ここで、CPU92としては、A/D変換器91の出力を適切に利用可能なクロック周波数を有するCPUを選定する。尚、このようなクロック周波数を有するCPUは、A/D変換器91の変換時間が短くても100μS程度であるので、容易にかつ非常に安価に入手することが可能である。
メモリ93は、ブラシモータ30が備えるブラシの寿命終期を検知するために必要となるプログラム及び所定の閾値を格納する。ここで、このメモリ93としては、本実施の形態において格納されるプログラム及び所定の閾値のデータ容量が比較的少ないため、その種類が特に限定されることはなく、容易にかつ非常に安価に入手可能な汎用型のメモリを利用することが可能である。
タイマ94は、CPU92がブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたか否かを判定する際の経過時間をカウントする。ここで、このタイマ94としては、カウントする経過時間が数秒から数分程度であり、かつカウントする経過時間に高精度が要求されることはないため、その構成が特に限定されることはなく、如何なる構成のタイマであっても適用可能である。例えば、タイマ94をハードウェアにより構成してもよく、或いは、それをソフトウェアにより構成してもよい。
警告ランプ95は、CPU92がブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定して、警告ランプ95を点灯させるための制御信号を出力すると、その制御信号に基づきランプの点灯或いは点滅により作業者に向けて警告を行う。尚、本実施の形態では、警告ランプ95がランプの点灯等により警告を行う形態を示しているが、このような形態に限定されることはない。例えば、音声、ブザー音、エラーメッセージの表示等、如何なる警告形態が採られてもよい。
ここで、図2(a)に示す第1のブラシ摩耗検知装置90aでは、A/D変換器91、CPU92、メモリ93、タイマ94等を個々に配設する形態に代えて、それらの構成要素を全て具備するマイクロコンピュータMを配設する形態を採ることが、より一層望ましい。このような、A/D変換器、CPU、メモリ、タイマ等を具備するマイクロコンピュータは、通常、非常に安価に流通している。従って、かかる構成とすると、本発明に係るブラシ摩耗検知装置90aを非常に安価に構成することが可能になる。
次に、ブラシ摩耗検知装置90の第2の内部構成について説明する。
図2(b)に示すように、本実施の形態に係る第2のブラシ摩耗検知装置90bは、電源10の出力電圧を分圧して基準電圧値Vstdを生成する抵抗器96a,96bと、電流センサ80aが出力する直流電圧値(検出電流値)と基準電圧値Estdとの比較に基づきブラシモータ30が備えるブラシの寿命終期を検知するための比較器(オペアンプ、或いは、コンパレータ)97と、この比較器97の出力に基づき警告を行う警告ランプ95と、を備えている。尚、この第2のブラシ摩耗検知装置90bにおいて、警告ランプ95の構成は、第1のブラシ摩耗検知装置90aにおける警告ランプ95の構成と同様である。
以下、第2のブラシ摩耗検知装置90bの各構成要素について順を追って詳細に説明すると、直列接続された抵抗器96a,96bは、電源10の出力端子とグランド(車体シャーシ)との間に直列に挿入され、電源10の出力電圧値を分圧することにより、比較器97がブラシの寿命終期を検知する際に必要となる基準電圧値Vstdを生成する。尚、抵抗器96a,96bとしては、電源10が出力する直流電圧値を単に分圧可能であればよいため、その種類が特に限定されることはなく、如何なる種類の抵抗器であっても適用することが可能である。
一方、比較器97は、電流センサ80aが出力する直流電圧値と、抵抗器96a,96bにより生成された基準電圧値Vstdと、を比較する。そして、この比較器97は、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えた場合に、警告ランプ95を点灯等させる。ここで、この比較器97としては、A/D変換器91を選定する場合と同様、ブラシモータ30が備える回転子の回転数と、ブラシモータ30が備えるコミュテータにおける電極の枚数とを考慮して、モータ電流の乱れを確実に検知可能な応答時間を有する比較器を選定する。尚、このような応答時間を有する比較器は、通常の比較器の応答時間が1μS程度と十分に短いことから、容易にかつ非常に安価に入手することが可能である。但し、ブラシモータ30が備える回転子の回転数や、ブラシモータ30が備えるコミュテータにおける電極の枚数により、モータ電流の乱れの周期が非常に短くなる場合には、それを十分に考慮して、適切な変換器を選定する必要がある。
以下、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置90の特徴的な動作について説明する。
尚、以下の説明では、ブラシモータ30のモータ電流に基づきブラシの寿命終期を検知する形態を説明するが、便宜上、モータ電流或いはそれに対応する電圧値(例えば、電流センサ80aの出力電圧値)に基づく形態として説明する。
図3は、ブラシ摩耗検知装置がブラシモータにおけるブラシの寿命終期を検知するための第1の原理を説明する解説図である。尚、図3(a)は、ブラシが寿命終期を迎える以前におけるモータ電流の経時的な変化を示している。又、図3(b)は、ブラシが寿命終期を迎えた以後におけるモータ電流の経時的な変化を示している。
図3では、ブラシモータに印加する直流電圧を24V±5%とし、モータ電流が約80Aとなるように設定し、回転子の回転速度を約3000min-1とした場合のモータ電流の経時的な変化を、50μsのサンプリングレートで測定した結果を示している。尚、本測定の際には、作動油の吐出ポートを盲栓にて閉鎖することでリリーフ弁を動作させることにより(以下、「リリーフ状態」という)、液圧ポンプに対する負荷が一定の負荷となるように調整した。又、ブラシモータには、その回転子が11秒間回転した後、それが70秒間停止するように、直流電圧を印加した。又、モータ電流は、ブラシモータの直近部分において電流プローブにより測定した。
図3(a)に示すように、ブラシモータのブラシが寿命終期を迎える以前では、リリーフ状態におけるモータ電流の値は、ブラシとコミュテータとの接触状態の影響を受けて若干変動はするが、比較的小さい変動幅aの範囲内において概ね一定の値で推移する。
一方、図3(b)に示すように、ブラシモータのブラシが寿命終期を迎えた以後においては、リリーフ状態におけるモータ電流の値は、ブラシとコミュテータとの接触状態の悪化の影響を受けて、変動幅aを大きく超える変動幅bの範囲内で経時的に変動する。例えば、図3(a)及び(b)に示すように、寿命終期を迎える以前のモータ電流の変動幅が約10Aであるのに対して、寿命終期を迎えた以後のモータ電流の変動幅は約40Aである。このモータ電流の変動幅の増加は、ブラシモータのブラシが寿命終期に近付くと、ブラシの表面が荒れることにより、ブラシとコミュータとの接触状態が悪化して、コミュータとブラシとの間に異常なアークが発生することに起因する。
そこで、本実施の形態では、車載用液圧装置100aの始業前点検時等において、リリーフ状態におけるモータ電流を検出して、その検出したモータ電流の値の変動幅が所定の変動閾値以上となる場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定する。例えば、リリーフ状態におけるモータ電流を検出して、その検出したモータ電流の値の変動幅ΔId(平均値)が定格電流値80Aの20%である16A以上となる場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定する。
或いは、本実施の形態では、車載用液圧装置100aの始業前点検時等において、リリーフ状態におけるモータ電流を検出して、その検出したモータ電流の値の上限値又は下限値が所定の電流閾値以上又は以下となる場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定する。例えば、リリーフ状態におけるモータ電流を検出して、その検出したモータ電流の値の上限値(下限値)が定格電流値80Aの+20%である96A以上となる場合(定格電流値80Aの−20%である64A以下となる場合)、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定する。
そして、本実施の形態では、作業者は、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたことをブラシ摩耗検知装置90により検知すると、車載用液圧装置100aからブラシモータ30を取り出し、そのブラシモータ30のブラシを交換する。尚、作業者は、ブラシモータ30のブラシを交換した後、車載用液圧装置100aの運転を開始する。
以下、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置90の特徴的な動作について説明する。
図4は、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置の特徴的な動作を具体的に例示するフローチャートである。尚、図4(a)は、第1のブラシ摩耗検知装置の具体的な動作を例示している。又、図4(b)は、第2のブラシ摩耗検知装置の具体的な動作を例示している。又、図4では、ブラシ摩耗検知装置の特徴的な動作を説明するための特徴的なステップを示し、その他の一般的なステップは省略している。
図4(a)に示すように、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、作業者がブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を検知するための所定の操作を開閉器20により実行すると、先ず、リリーフ弁60の出力信号に基づき、リリーフ弁60の状態がリリーフ状態であるか否かを、CPU92により判定する(ステップS1)。
第1のブラシ摩耗検知装置90aは、CPU92によりリリーフ弁60の状態がリリーフ状態ではないと判定すると(ステップS1でNO)、リリーフ弁60の状態がリリーフ状態となったか否かを継続して判定する。
一方、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、CPU92によりリリーフ弁60の状態がリリーフ状態であると判定すると(ステップS1でYES)、そのリリーフ状態での所定の期間において電流センサ80aが出力する出力電圧値をA/D変換器91によりA/D変換した後、その変換後の出力電圧値に基づき、モータ電流の値の平均値Iavgを算出する(ステップS2)。
次いで、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、平均電流値Iavgと、予めメモリ93に記憶される基準電流値IL(下限の基準値)及び基準電流値IU(上限の基準値)と、に基づき、平均電流値Iavgが基準電流値ILを超えかつ基準電流値IUを下回っているか否かを判定する(ステップS3)。尚、本実施の形態において、基準電流値ILは、リリーフ状態における正常なモータ電流の平均値をInとすると、例えば、IL=0.95Inとして設定される。又、本実施の形態において、基準電流値IUは、リリーフ状態における正常なモータ電流の平均値をInとして、例えば、IU=1.05Inとして設定される。つまり、このステップS3では、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、所定の期間における平均電流値Iavgが正常なモータ電流の平均値In±5%の範囲内であるか否かを判定する。
第1のブラシ摩耗検知装置90aは、平均電流値Iavgが基準電流値IL以下であるか、或いは、平均電流値Iavgが基準電流値IU以上であると判定すると(ステップS3でNO)、ブラシモータ30においてブラシの寿命終期以外の重大な異常が発生していると判定して、所定の警告を行う(ステップS4)。
一方、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、平均電流値Iavgが基準電流値ILを超えかつ基準電流値IUを下回っていると判定すると(ステップS3でYES)、ブラシモータ30においてはブラシの摩耗以外の重大な異常は発生していないと判定して、電流センサ80aによるモータ電流Idの検出を開始する(ステップS5)。
次いで、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、モータ電流Idの検出を開始してからの経過時間Tdをタイマ94により計測することにより、経過時間Tdが予めメモリ93に記憶される所定の時間閾値Tstd(例えば、1秒間)に到達したか否かをCPU92により判定する(ステップS6)。
第1のブラシ摩耗検知装置90aは、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達してはいないと判定すると(ステップS6でNO)、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達したか否かを継続して判定する。
一方、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達したと判定すると(ステップS6でYES)、電流センサ80aの出力電圧値に基づき、モータ電流の値の上限平均値及び下限平均値をCPU92により各々算出した後、その算出したモータ電流の値の上限平均値と下限平均値との差としての変動幅ΔId(平均値)をCPU92により更に算出する(ステップS7)。
そして、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ステップS7で算出したモータ電流の値の変動幅ΔIdと、予めメモリ93に記憶される所定の電流変動閾値ΔIstdと、に基づき、モータ電流の値の変動幅ΔIdが所定の電流変動閾値ΔIstd以上であるか否かをCPU92により判定する(ステップS8)。
本実施の形態において、所定の電流変動閾値ΔIstdは、リリーフ状態における正常なモータ電流の平均値をInとすると、例えば、ΔIstd=0.2Inとして設定される。具体的には、上述したように、リリーフ状態における正常なモータ電流が80Aである場合には、ΔIstdを80Aの20%である16Aとする。尚、この所定の電流変動閾値ΔIstdは、車載用液圧装置100aが備えるブラシモータ30の性能に応じて、適切に設定される。
そして、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、モータ電流の値の変動幅ΔIdが所定の電流変動閾値ΔIstd以上であると判定すると(ステップS8でYES)、ブラシモータ30が備えるブラシが寿命終期を迎えたと判定して、警告ランプ95により作業者に向けて警告を行う(ステップS4)。尚、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、モータ電流の値の変動幅ΔIdが所定の電流変動閾値ΔIstd以上ではないと判定すると(ステップS8でNO)、ブラシの寿命終期を検知するための一連の動作を終了する。
一方、図4(b)に示すように、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、作業者がブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を検知するための所定の操作を開閉器20により実行すると、リリーフ状態における電流センサ80aの出力電圧値Vd(この場合、電流センサ80aの出力電圧値Vdの下限電圧値Vmin)と、基準電圧値Vstdと、に基づき、電流センサ80aの出力電圧値Vdが基準電圧値Vstd以下であるか否かを、比較器97により判定する(ステップS1)。或いは、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、作業者がブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を検知するための所定の操作を開閉器20により実行すると、リリーフ状態における電流センサ80aの出力電圧値Vd(この場合、電流センサ80aの出力電圧値Vdの上限電圧値Vmax)と、基準電圧値Vstdと、に基づき、電流センサ80aの出力電圧値Vdが基準電圧値Vstd以上であるか否かを、比較器97により判定する。
本実施の形態において、基準電圧値Vstdは、リリーフ状態における定格電流値の+20%(又は、−20%)の電流値に対応する電圧値に設定される。例えば、上述したように、リリーフ状態における正常なモータ電流が80Aである場合には、基準電圧値Vstdは、定格電流値80Aの+20%である96Aに対応する電圧値に設定される。或いは、基準電圧値Vstdは、定格電流値80Aの−20%である64Aに対応する電圧値に設定される。
そして、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、電流センサ80aの出力電圧値Vdが基準電圧値Vstd以下であると判定すると(ステップS1でYES)、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定して、警告ランプ95により作業者に向けて警告を行う(ステップS2)。或いは、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、電流センサ80aの出力電圧値Vdが基準電圧値Vstd以上であると判定すると、同様にしてブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定して、警告ランプ95により作業者に向けて警告を行う。尚、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、ステップS1においてブラシモータ30のブラシは未だ寿命終期を迎えてはいないと判定すると(ステップS1でNO;出力電圧値Vdの下限電圧値Vminがそれに対応する基準電圧値Vstd以下ではない場合、及び、出力電圧値Vdの上限電圧値Vmaxがそれに対応する基準電圧値Vstd以上ではない場合の各々の場合)、ブラシの寿命終期を検知するための一連の動作を終了する。
以上、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置100aの構成によれば、リリーフ状態においてブラシモータ30のモータ電流を検出することにより、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたか否かを判定するので、高価でかつ維持管理を要する絶縁抵抗計等の測定機器が一切不要となり、かつ分解等の手間を一切掛けることなく、ブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を確実に検知することが可能になる。これにより、ブラシ摩耗検知装置90を備える車載用液圧装置100aにおいて、ブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を確実に検知することが可能になるので、適切な時期に必要最低限の労力によりブラシモータ30のブラシを交換することが可能になる。従って、本実施の形態によれば、ブラシモータ30を備える車載用液圧装置100a等の流体圧装置を長期間に渡り好適に利用することが可能になる。
(実施の形態2)
図1(b)は、本発明の実施の形態2に係るブラシ摩耗検知装置を備えた車載用液圧装置の構成を模式的に示すブロック図である。尚、図1(b)では、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを図示しており、その他の構成要素は図示を省略している。
本実施の形態に係る車載用液圧装置100bの構成は、図1(a)に示す電流センサ80aに代えて温度センサ80bを備えている点を除き、図1(a)に示す実施の形態1に係る車載用液圧装置100aの構成と同様である。従って、以下の説明では、車載用液圧装置100bにおける車載用液圧装置100aの構成要素と同様の構成要素に関する説明は省略し、両者の相違点についてのみ説明する。
図1(b)に示すように、本実施の形態に係る車載用液圧装置100bは、実施の形態1の場合と同様にして、電源10と、開閉器20と、ブラシモータ30と、作動油タンク40と、液圧ポンプ50と、リリーフ弁60と、アクチュエータ70と、ブラシ摩耗検知装置90とを備えている。しかし、図1(b)に示すように、本実施の形態に係る車載用液圧装置100bは、電源10からブラシモータ30に電力が供給され、回転子が回転駆動されている際のブラシの温度を検出するための温度センサ80bを、車載用液圧装置100aの電流センサ80aに代えて備えている。
本実施の形態において特徴的に配設される温度センサ80bは、ブラシモータ30におけるブラシの近傍、或いは、ブラシモータ30のブラシの内部に埋設される。この温度センサ80bとしては、例えば、サーミスタ、熱電対等の一般的に入手容易な測温素子が配設される。この温度センサ80bは、電源10からブラシモータ30に電力が供給され、その回転子が回転駆動されている際、ブラシモータ30が備えるブラシの温度に比例する直流電圧を出力する。ここで、温度センサ80bは、ブラシの熱容量等の物理特性に応じて、ブラシモータ30が備えるブラシの温度変化を正確に検出することが可能な、適切な応答特性を備える温度センサが選定される。又、温度センサ80bの配設位置は、ブラシモータ30の放熱特性等を考慮して、ブラシの温度変化を正確に検出することが可能な適切な位置に配設される。
尚、本実施の形態において、ブラシ摩耗検知装置90は、温度センサ80bの出力電圧値に基づき、例えば温度センサ80bにより検知されるブラシの温度変化(終期温度−初期温度)が所定の温度閾値以上となる場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定して、その旨を警告ランプ等の表示機器を介して作業者に伝達する。従って、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置90のハードウェア上の構成は、実施の形態1に示すブラシ摩耗検知装置90のハードウェア上の構成と同様である。しかし、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置90のソフトウェア上の構成は、実施の形態1に示すブラシ摩耗検知装置90の場合とは異なり、温度センサ80bの出力電圧値に基づきブラシモータ30のブラシの寿命終期を検知可能な構成とされている。
以下、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置の特徴的な動作について説明する。
図5(a)は、ブラシ摩耗検知装置がブラシモータにおけるブラシの寿命終期を検知するための第2の原理を説明するための解説図である。尚、図5(a)において、曲線aはブラシの寿命初期におけるブラシの温度変化を経時的に示し、曲線bはブラシの寿命終期におけるブラシの温度変化を経時的に示している。
図5(a)では、ブラシモータに印加する直流電圧を24V±5%とし、モータ電流が約80Aとなるように設定し、回転子の回転速度を約3000min-1とした場合のブラシ温度の経時的な変化を、100msのサンプリングレートで繰り返し測定した結果を示している。尚、この測定の際、実施の形態1の場合と同様にして、リリーフ状態を擬似的に構成することにより、液圧ポンプに対する負荷を一定とした。又、ブラシモータには、回転子を11秒間回転駆動し、その後、70秒間停止させるように、直流電圧を周期的に印加した。又、ブラシの温度は、温度センサとしての熱電対をブラシの内部に埋設することにより測定した。
図5(a)の曲線aに示すように、ブラシモータのブラシが寿命初期である場合、リリーフ状態におけるブラシの温度は、ブラシとコミュテータとの摩擦の影響を受けて若干上昇するが、1周期(11秒間)における温度上昇の程度は比較的穏やかである。
一方、図5(a)の曲線bに示すように、ブラシモータのブラシが寿命終期を迎えた場合には、リリーフ状態におけるブラシの温度は、ブラシとコミュテータとの接触状態の悪化の影響を受けて、1周期において急激に上昇する。例えば、図5(a)に示すように、第1周期においては、寿命初期のブラシの上昇温度が約50℃であるのに対して、寿命終期のブラシの上昇温度は約90℃である。尚、このブラシの温度の急激な上昇は、実施の形態1の場合と同様、ブラシが寿命終期を迎えると、ブラシの表面が荒れることによりブラシとコミュータとの接触状態が悪化して、コミュータとブラシとの間に異常なアークが発生することに起因する。この異常なアークが、ブラシの温度を短期間において急激に上昇させる。
そこで、本実施の形態では、車載用液圧装置100bの始業前点検時等に、リリーフ状態においてブラシの温度を所定の期間検出して、その所定の期間において検出したブラシの温度変化が所定の温度閾値以上である場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定する。
図5(b)は、ブラシ摩耗検知装置がブラシモータにおけるブラシの寿命終期を検知するための技術的な構成例を具体的に説明するための解説図である。尚、図5(b)において、曲線aは、ブラシモータの回転子を回転駆動するための制御信号の変化を経時的に示している。又、曲線bは、ブラシの温度変化を経時的に示している。
本実施の形態では、図5(b)の曲線aに示すように、ブラシ摩耗検知装置90が、リリーフ状態において、ブラシモータ30の回転子を例えば10秒間回転駆動させる。この間、ブラシ摩耗検知装置90は、その温度センサ80bによりブラシモータ30が備えるブラシの温度を継続して検出する。一方、図5(b)の曲線bに示すように、ブラシモータ30の回転子が回転駆動されると、そのブラシの温度は経時的に上昇する。そこで、本実施の形態では、ブラシ摩耗検知装置90が、10秒間のリリーフ状態におけるブラシの温度変化ΔTmを算出する。そして、ブラシ摩耗検知装置90は、その算出した温度変化ΔTmが例えば70K以上である場合、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定する。尚、実施の形態1の場合と同様、作業者は、ブラシモータ30のブラシがその寿命終期を迎えたことを知ると、車載用液圧装置100bからブラシモータ30を取り出し、ブラシモータ30のブラシを交換する。又、作業者は、ブラシモータ30のブラシを交換した後、車載用液圧装置100bの運転を開始する。
図6は、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置の特徴的な動作を具体的に例示するフローチャートである。尚、図6(a)は、第1のブラシ摩耗検知装置の具体的な動作を例示している。又、図6(b)は、第2のブラシ摩耗検知装置の具体的な動作を例示している。又、図6では、ブラシ摩耗検知装置の特徴的な動作を説明するための特徴的なステップを示し、その他の一般的なステップは省略している。
図6(a)に示すように、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ブラシが常温時に作業者がブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を検知するための所定の操作を開閉器20により実行すると、先ず、リリーフ弁60の出力信号に基づき、リリーフ弁60の状態がリリーフ状態であるか否かを、CPU92により判定する(ステップS1)。
第1のブラシ摩耗検知装置90aは、CPU92によりリリーフ弁60の状態がリリーフ状態ではないと判定すると(ステップS1でNO)、リリーフ弁60の状態がリリーフ状態となったか否かを継続して判定する。
一方、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、CPU92によりリリーフ弁60の状態がリリーフ状態であると判定すると(ステップS1でYES)、そのリリーフ状態において温度センサ80bが出力する出力電圧値に基づき、ブラシモータ30が備えるブラシの初期温度Tm1を検出する(ステップS2)。
次いで、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、電源10からブラシモータ30に向けて所定の電力が供給されるように制御することにより、ブラシモータ30の駆動を開始させる(ステップS3)。
次いで、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ブラシモータ30の駆動が開始されてからの経過時間Tdをタイマ94により計測することにより、経過時間Tdが予めメモリ93に記憶される所定の時間閾値Tstd(例えば、10秒間)に到達したか否かをCPU92により判定する(ステップS4)。
第1のブラシ摩耗検知装置90aは、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達してはいないと判定すると(ステップS4でNO)、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達したか否かを継続して判定する。
一方、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達したと判定すると(ステップS4でYES)、温度センサ80bが出力する出力電圧値に基づき、ブラシモータ30が備えるブラシの後期温度Tm2を検出する(ステップS5)。
次いで、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ステップS2において検出したブラシの初期温度Tm1と、ステップS5において検出したブラシの後期温度Tm2と、の各々に基づき、その検出したブラシの後期温度Tm2と初期温度Tm1との差としての温度変化ΔTmをCPU92により算出する(ステップS6)。
そして、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ステップS6において算出したブラシの温度変化ΔTmと、予めメモリ93に記憶される所定の温度変化閾値ΔTmstdと、に基づき、ブラシの温度変化ΔTmが所定の温度変化閾値ΔTmstd以上であるか否かをCPU92により判定する(ステップS7)。
本実施の形態において、所定の温度変化閾値ΔTmstdは、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えた際の所定の時間(本実施の形態では、10秒間)におけるブラシの温度変化に基づき、適切に設定される。具体的には、本実施の形態では、所定の温度変化閾値ΔTmstdを70K(ケルビン)に設定する。尚、この所定の温度変化閾値ΔTmstdは、実施の形態1の場合と同様、車載用液圧装置100aが備えるブラシモータ30の性能に応じて、適切に設定される。
そして、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ブラシの温度変化ΔTmが所定の温度変化閾値ΔTmstd以上であると判定すると(ステップS7でYES)、ブラシモータ30が備えるブラシが寿命終期を迎えたと判定して、警告ランプ95により作業者に向けて警告を行う(ステップS8)。尚、第1のブラシ摩耗検知装置90aは、ブラシの温度変化ΔTmが所定の温度変化閾値ΔTmstd以上ではないと判定すると(ステップS7でNO)、ブラシの寿命終期を検知するための一連の動作を終了する。
一方、図6(b)に示すように、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、経過時間Tdが所定の時間閾値Tstdに到達したと判定すると(ステップS1でYES)、リリーフ状態における温度センサ80bの出力電圧値Vdと、基準電圧値Vstdと、に基づき、温度センサ80bの出力電圧値Vdが基準電圧値Vstd以上であるか否かを、比較器97により判定する(ステップS2)。
本実施の形態において、基準電圧値Vstdは、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えた際の所定の時間(本実施の形態では、10秒間)におけるブラシの上昇温度に対応する電圧値に設定される。例えば、所定の時間におけるブラシの上昇温度が70Kであり、かつその際の気温が30℃である場合、基準電圧値Vstdは、100℃に対応する電圧値に設定される。
そして、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、温度センサ80bの出力電圧値Vdが基準電圧値Vstd以上であると判定すると(ステップS2でYES)、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたと判定して、警告ランプ95により作業者に向けて警告を行う(ステップS3)。尚、第2のブラシ摩耗検知装置90bは、ブラシモータ30のブラシは未だ寿命終期を迎えてはいないと判定すると(ステップS2でNO)、ブラシの寿命終期を検知するための一連の動作を終了する。
このような、所定の時間が経過した後のブラシ温度に基づく実施形態は、例えば、年間の温度変化が比較的小さい地域等において特に有効な形態である。
尚、本実施の形態では、ブラシモータ30が備えるブラシの所定の時間における温度変化、或いは、ブラシモータ30が備えるブラシの所定の時間が経過した後の絶対温度を温度センサ80bにより検出して、これに基づき、ブラシの寿命終期を検知する形態を例示しているが、このような形態に限定されることはない。例えば、バイメタルスイッチ等のON/OFFスイッチを用いる形態としてもよい。この場合、規定温度(例えば、100℃)にて導通状態となるバイメタルスイッチを、ブラシモータ30が備えるブラシの近傍に配設する。そして、ブラシモータ30のブラシが常温状態にある場合に、リリーフ状態において、ブラシモータ30を規定時間(例えば、10秒間)駆動させる。そして、バイメタルスイッチが導通状態となった場合に、このバイメタルスイッチを介して電源10から電力が供給されて、警告ランプ95が点灯等する形態としてもよい。かかる形態によれば、電子回路を構成する必要がないため、ブラシ摩耗検知装置90を最も安価に構成することが可能になる。
以上、本実施の形態に係るブラシ摩耗検知装置100bの構成によれば、リリーフ状態においてブラシモータ30のブラシ温度を検出することにより、ブラシモータ30のブラシが寿命終期を迎えたか否かを判定するので、高価でかつ維持管理を要する絶縁抵抗計等の測定機器が一切不要となり、かつ分解等の手間を一切掛けることなく、ブラシモータ30におけるブラシの寿命終期を確実に検知することが可能になる。従って、本実施の形態によっても、ブラシ摩耗検知装置90を備える車載用液圧装置100bにおいて、適切な時期に必要最低限の労力によりブラシモータ30のブラシを交換することが可能になる。よって、本実施の形態によっても、ブラシモータ30を備える車載用液圧装置100b等の流体圧装置を長期間に渡り好適に利用することが可能になる。
尚、その他の点については、実施の形態1の場合と同様である。