JP4851702B2 - インキ - Google Patents
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Description
また、連続印刷の実施などによって、シリコーンブランケットがインキの溶剤で膨潤した場合には、インキに対する濡れ性、インキの塗布性が変化することから、インキベタの膜厚を変動するなど、安定したインキベタの形成ができなくなるという問題が生じる。
そこで、本発明の目的は、印刷用ブランケットの表面における印刷領域の全面にインキベタを形成する塗布工程、所望のパターンに応じて、上記インキベタのインキを凹版または凸版で除去する除去工程、および、印刷用ブランケットの表面に残存したインキを被印刷体に転写する転写工程をこの順序で実行する印刷方法での使用に適したインキを提供することである。
しかし、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、インキの表面張力、インキの溶剤の沸点、インキの粘度、および、シリコーンブランケットのシリコーン層に対する膨潤率を、それぞれ、所定の範囲に設定したときには、意外にも、シリコーンブランケットに対するインキの塗布性を良好なものとすることができ、上述の印刷方法によって、印刷形状が極めて優れたパターンを安定して形成することができるという事実を見出し、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
(1) シリコーン層を有する印刷用ブランケットの前記シリコーン層の表面における印刷領域の全面にインキを塗布して、インキベタを形成した後、凹版または凸版を前記インキベタの表面に当接させて、前記凹版または凸版と当接した箇所のインキを前記シリコーン層から除去し、前記シリコーン層に残存したインキを被印刷体に転写する印刷方法に用いられるインキであって、
重量平均分子量が1000〜20000である樹脂と、
沸点が70〜200℃である溶剤と、
平均一次粒子径が1〜100nmである顔料とを含み、
インキの表面張力が20〜40mN/mであり、インキの粘度が5〜50mPa・sであり、前記シリコーン層をインキに23℃で24時間浸漬させたときの前記シリコーン層の膨潤率が5〜100%であることを特徴とする、インキ、
(2) さらに、顔料分散剤を含むことを特徴とする、前記(1)に記載のインキ、
を提供するものである。
また、本発明において、樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)分析により測定された標準ポリスチレン換算値である。
本発明のインキに用いられる樹脂としては、インキ用の樹脂として用いられている種々の樹脂が挙げられるが、なかでも、好ましくは、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル−メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型メタクリル樹脂などが挙げられる。
本発明のインキに用いられる樹脂は、上記例示のなかでも、好ましくは、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、アクリル樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリエステル−メラミン樹脂が挙げられる。
本発明のインキに用いられる溶剤としては、沸点が70〜200℃であり、上記樹脂および後述する着色剤、その他の配合剤に対する良好な分散媒であること以外は、特に限定されるものではなく、インキ用の溶剤として用いられる種々の溶剤が挙げられ、なかでも、好ましくは、アルコール類(特に好ましくは、高級アルコール)、グリコール類、グリコールエステル類、アルキルエーテル類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、カルボン酸エステル類などの有機溶剤が挙げられる。
顔料の平均一次粒子径が1nmを下回るものについては、入手が困難であるほか、顔料の凝集性が極めて高くなるために、インキ中での顔料の分散性を低下させるおそれがある。逆に、顔料の平均一次粒子径が100nmを超えるものについては、インキ膜の平坦性を低下させたり、インキベタを形成する際に用いられるスリットダイコーターなどに目詰まりなどの不具合を生じさせたりするおそれがある。
顔料分散剤は、本発明のインキに配合される顔料が、粒径の極めて小さいものであることに鑑みて、顔料の凝集を抑制し、インキの樹脂中での顔料の分散性をより一層向上させることを目的として配合されるものである。
このような顔料分散剤の具体例としては、例えば、アビシア社製の顔料分散剤、商品名「ソルスパース」シリーズが挙げられる。さらに具体的には、分子の末端に上記機能部を有する高分子タイプの顔料分散剤(ソルスパース3000、同9000、同17000、同20000、同27000など)、上記機能部に対して櫛状に上記炭化水素基が連結するコポリマータイプの顔料分散剤(ソルスパース24000GR(SC)、同13000、同26000など)、上記機能部の先端に顔料誘導体などからなる相乗剤を有する、シナジストタイプの顔料分散剤(ソルスパース5000、同12000、同22000など)が挙げられる。
硬化触媒としては、使用する樹脂に応じて適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、トリメリト酸などの、酸性官能基を有する触媒が挙げられる。上記例示の硬化触媒は、単独で用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
インキの粘度は、上述のように、5〜50mPa・sの範囲に設定される。インキの粘度が5mPa・sを下回ると、インキが垂れ易くなることから、均一なインキ膜を形成するために、インキの表面張力を高く設定する必要が生じる。従って、インキの表面張力の許容範囲が狭まることになる。逆に、インキの粘度が50mPa・sを超えると、インキの表面張力の許容範囲は拡がるものの、印刷用ブランケットの表面でインキが弾かれ易くなって、印刷用ブランケットの表面に均一なインキ膜を塗布、形成するための操作が行いにくくなる。
上述の印刷方法において用いられる、表面にシリコーン層を有する印刷用ブランケットは、表面がシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなる印刷用ブランケットであって、表面のシリコーン層を上記インキに23℃で24時間浸漬させたときの膨潤率(体積変化率)が、5〜100%であることを特徴としている。
上記膨潤率は、主として、インキの溶剤、または、インキの溶剤と印刷用ブランケットのシリコーン層を形成するシリコーン材料との組合せを変更することによって、適宜調節することができる。これに限定されるものではないが、例えば、上記膨潤率を低く設定するには、アルコール系の溶剤を使用すればよく、上記膨潤率を高く設定するには、脂肪族炭化水素などの炭化水素系の溶剤を使用すればよい。なお、シリコーン材料は極性の低い材料であることから、極性の高いアルコール系溶剤などに対する膨潤度は小さく、逆に、極性の低い炭化水素系の溶剤などに対する膨潤度は大きい。
上記印刷用ブランケットのシリコーン層を形成するシリコーンゴムやシリコーン樹脂については、特に限定されるものではなく、種々のタイプのものを使用することができる。
本発明のインキについて、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、上記の樹脂、溶剤、顔料、およびその他の成分を配合して、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ディゾルバーなどのミキサー;ニーダー;ビーズミル、3本ロールミルなどのミルを用いて、混合、撹拌することによって、製造することができる。
下記の実施例および比較例で使用したインキの溶剤とその沸点は、次のとおりである。
・実施例1、実施例11〜12、比較例14、比較例16:メトキシプロパノール(121℃)
・実施例2:3−メトキシブタノール(161℃)
・実施例3:メチルグリコールアセテート(145℃)
・実施例4:メトキシプロピルアセテート(146℃)
・実施例5:3−メトキシブチルアセテート(171℃)
・実施例6:エチレングリコールモノエチルアセテート(156℃)
・実施例7:2−メトキシエタノール(124℃)
・実施例8:3−メトキシブタノールとアセトンの混合溶剤(重量比1:2、75℃)
・実施例9:3−メトキシブタノールとアセトンの混合溶剤(重量比1:1、90℃)
・実施例13:メトキシプロパノールとトルエンの混合溶剤(重量比3:2、115℃)
・実施例14:メトキシプロパノールとトルエンの混合溶剤(重量比3:1、120℃)
・比較例1:酢酸ブチル(126℃)
・比較例2:エチルグリコール(135℃)
・比較例3:エチルジグリコール(202℃)
・比較例4:ブチルジグリコール(230℃)
・比較例5:エチルジグリコールアセテート(217℃)
・比較例6:ブチルジグリコールアセテート(247℃)
・比較例7:ジエチレングリコール(244℃)
・比較例8:ベンジルアルコール(205℃)
・比較例9:ベンジルアミン(185℃)
・比較例10:2−メチルペンタン(62℃)
・比較例11:2,3−ジメチルブタン(58℃)
・比較例12:アセトン(56℃)
・比較例13:イソオクタン(99℃)
・比較例15:ジエチレングリコールと2−メトキシエタノールの混合溶剤(重量比1:2、160℃)
下記の実施例および比較例で使用した顔料、顔料分散剤および体質顔料は、次のとおりである。
・レッド顔料:平均1次粒子径が1〜100nmであるアントラキノン系顔料
・グリーン顔料:平均1次粒子径が1〜100nmである臭素化フタロシアニン
・ブルー顔料:平均1次粒子径が1〜100nmである銅フタロシアニン
・顔料分散剤:アビシア社製の顔料分散剤(顔料誘導体タイプ)「ソルスパース5000」と、同社製の顔料分散剤(櫛型コポリマータイプ)「ソルスパース24000GR(SC)」との1:1(重量比)混合物
・体質顔料:乾式シリカ(アエロジル)
<インキの調製>
実施例1
ブルー顔料20重量部、重量平均分子量Mwが10000であるポリエステル−メラミン樹脂100重量部、メトキシプロパノール(沸点121℃)500重量部、顔料分散剤5重量部、および、体質顔料5重量部をプラネタリーミキサーに投入して、予備混合した後、ビーズミルで分散させて、インキを得た。
また、レッド顔料を使用したインキ、および、グリーン顔料を使用したインキを、上記と同様にして、調製した。
インキの溶剤として、メトキシプロパノール(沸点121℃)に代えて、上記溶剤を同量使用したこと以外は、実施例1と同様にしてインキを製造し、その表面張力および粘度を測定した。
実施例11〜12、比較例16
ポリエステル−メラミン樹脂として、重量平均分子量Mwが21000であるもの(比較例16)、15000であるもの(実施例11)または4000であるもの(実施例12)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインキを製造し、その表面張力および粘度を測定した。
下記の物性評価および印刷試験において、印刷用ブランケットには、支持体としての厚さ350μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、常温硬化型−付加型のシリコーンからなる厚さ600μmのシリコーン層(ゴム硬度(JISA)40度)を有するシリコーンブランケット(総厚み950μm、シリコーン層の10点平均粗さ0.1μm)を使用した。
上記シリコーンブランケットのシリコーン層から、厚さ600μm、長さ10mm、幅10mmの試料片を切り出して、実施例1〜14および比較例1〜16で得られたインキに、それぞれ、23℃で24時間浸漬した。
次いで、浸漬前の試料片の体積Aと、浸漬後の試料片の体積Bとの測定値から、式:
(B−A)/A×100
により、シリコーンブランケットの膨潤率(体積変化率)を算出した。
(2)印刷試験
下記の印刷試験において、印刷用ブランケットには、上記の物性評価に使用したシリコーンブランケットを使用した。
シリコーンブランケットの表面に形成されたインキ膜については、光学顕微鏡で観察することによって、インキ膜の均一性の評価を実施した。
A:インキ膜の厚みが極めて均一であった。
A-:インキ膜の厚みに、わずかにばらつきが生じていたが、実用上問題のない程度であった。
B:インキ膜の厚みに、実用上支障を来たす程度のばらつきが生じていた。
C:インキ膜の厚みのばらつきが顕著であった。
こうしてストライプパターンを印刷形成した後、シリコーンブランケットから凹版へのインキの転移性、シリコーンブランケットから被印刷体であるガラス基板へのインキの転移性、および、上記ガラス基板上に印刷されたパターンの形状(印刷形状)について、評価を実施した。
A:インキの転移性または印刷形状が、極めて良好であった。
A-:インキの転移性または印刷形状は概ね良好であって、実用上問題のない程度であった。
B:インキの転移性または印刷形状について、実用上支障を来たす程度の劣化が観察された。
C:インキの転移性または印刷形状の劣化が顕著であった。
Claims (2)
- シリコーン層を有する印刷用ブランケットの前記シリコーン層の表面における印刷領域の全面にインキを塗布して、インキベタを形成した後、凹版または凸版を前記インキベタの表面に当接させて、前記凹版または凸版と当接した箇所のインキを前記シリコーン層から除去し、前記シリコーン層に残存したインキを被印刷体に転写する印刷方法に用いられるインキであって、
重量平均分子量が1000〜20000である樹脂と、
沸点が70〜200℃である溶剤と、
平均一次粒子径が1〜100nmである顔料とを含み、
インキの表面張力が20〜40mN/mであり、インキの粘度が5〜50mPa・sであり、前記シリコーン層をインキに23℃で24時間浸漬させたときの前記シリコーン層の膨潤率が5〜100%であることを特徴とする、インキ。 - さらに、顔料分散剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のインキ。
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