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JP4849080B2 - 電子写真用感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真用感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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JP4849080B2 JP2008027822A JP2008027822A JP4849080B2 JP 4849080 B2 JP4849080 B2 JP 4849080B2 JP 2008027822 A JP2008027822 A JP 2008027822A JP 2008027822 A JP2008027822 A JP 2008027822A JP 4849080 B2 JP4849080 B2 JP 4849080B2
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Description

本発明は、電子写真用感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
近年、電子写真法は複写機やプリンター技術として大きな広がりを見せている。電子写真法に使用される電子写真用感光体(以下、単に「感光体」と称することがある。)は、電子写真法による画像形成プロセスにおける多くの接触機構やストレス機構などの、さまざまの劣化要因に曝される。さらに、デジタル化やカラー化にともなって電子写真用感光体にはさらなる高速信頼性が求められてきている。
電子写真法の帯電プロセスにおいて、非接触帯電方式を用いた場合には電子写真用感光体の表面に放電生成物が付着し、画像ぼけなどが発生することがある。放電生成物の除去のために現像剤中に研磨機能を持つ粒子を混合してクリーニング部などでかきとる研磨手段が採用されることがある。この場合感光体表面は磨耗することによって劣化する。また、近年帯電プロセスにおいて接触帯電方式が広く使用されているが、この方式により磨耗が加速される場合がある。このような背景から電子写真用感光体にはさらなる長寿命化が求められている。
電子写真用感光体の長寿命化には耐磨耗性の観点から高い表面硬度が要求される。電子写真用感光体の表面を硬度の高いアモルファスシリコンで覆うと、表面に付着した放電生成物が原因で画像ボケや画像ながれが特に高湿時に発生することがあるため、炭素系の膜が電子写真用感光体の表面層として多く使用されている。しかしながら炭素系の膜[例えば水素化アモルファス炭素膜(a−C:H)あるいはフッ素化された水素化アモルファス炭素膜(a−C:H,F)]に十分な硬度を持たせると有色膜となるため表面の磨耗につれて光透過が大きくなり感度が高くなることがある。また磨耗が不均一に起こると感度も不均一となり特に中間調での画像むらとして影響が表われることがある。
電子写真用感光体表面の耐磨耗性を高くすることによって電子写真用感光体を長寿命化する試みとして、フッ化マグネシウムを主成分とする表面層を用いる提案がされている(例えば、特許文献1参照。)。
また、有機感光層の上に触媒CVD法によるアモルファスシリコンカーバイド表面保護層の成膜形成を行う提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。さらには、アモルファス炭素中に微量のガリウム原子を含有させることにより電子写真用感光体の耐湿性や耐刷性を改善することも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。一方、ダイヤモンド結合を有するアモルファス窒化炭素(例えば、特許文献4参照。)や非単結晶の水素化窒化物半導体(例えば、特許文献5参照。)を表面層に有する電子写真用感光体が提案されている。
一方、炭素系の薄膜材料であるダイアモンドライクカーボンやダイヤモンド膜を半導体材料、耐磨耗材料、低摩擦材料、ガスバリア性材料、電子放出材料などとして応用することを目的に広く研究開発が行われている。
同様に近年、窒化炭素膜の研究開発が行われている。
また、本発明者らにより、有機感光体の表面層として、13族元素と15原子%以上の酸素とから形成される表面層が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
また塗布により形成される硬質表面層が提案されており、例えば、シロキサン結合を有する高分子化合物を表面層に用いた電子写真用感光体が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
特開2003−29437号公報 特開2003−316053号公報 特開2−110470号公報 特開2003−27238号公報 特開平11−186571号公報 特開2006−267507号公報 特開2006−267225号公報
シロキサン結合を有する高分子化合物を表面層に用いた場合、磨耗的には改善があるものの硬度が低く、傷の発生や磨耗の際にトナー成分が付着しやすくなり感光体の寿命が低下することがある。
また、スパッタリングやCVD法その他製膜時に昇温を伴う方法を用いて表面層を形成する場合、表面層の製膜プロセスにおいて有機感光層等の下地の熱膨張等により表面層に応力が生じ、表面層に歪みが生ずることがあった。この表面層の歪みは、電子写真法で画像を形成する場合の画像ムラの原因となる。
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、画像ムラの生じにくい電子写真用感光体並びにこれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者等は、以下の本発明により当該課題を解決できることを見出した。
すなわち請求項1に係る発明は、導電性基体と、有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層と、有機感光層と、13族元素と酸素とを少なくとも含有し酸素の13族元素に対する元素組成比が0.9以上1.4以下である表面層と、をこの順に備える電子写真用感光体である。
請求項2に係る発明は、導電性基体と、有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層と、有機感光層と、13族元素と窒素とを少なくとも含有し窒素の13族元素に対する元素組成比が0.4以上0.8以下である表面層と、をこの順に備える電子写真用感光体である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の表面層の最表面部の酸素の13族元素に対する元素組成比が1.4以上1.6以下である電子写真用感光体である。
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面層が水素をさらに含有する電子写真用感光体である。
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に記載の電子写真用感光体と、
前記電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真用感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを少なくとも含む現像剤を用いて前記電子写真用感光体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成手段と、
前記電子写真用感光体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写手段と、
前記被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のトナーの形状係数SF1が、100以上140以下である画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の現像剤が、樹脂被覆キャリアをさらに含む画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置が、転写後の前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段をさらに有する画像形成装置である。
請求項9に係る発明は、請求項8に記載のクリーニング手段が、クリーニングブレードである画像形成装置である。
請求項10に係る発明は、請求項9に記載のクリーニングブレードの前記電子写真用感光体表面への圧接力が、5gf/cm以上25gf/cm以下である画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、請求項9又は10に記載のクリーニング手段が、前記クリーニングブレードの上流側に配置された静電ブラシをさらに有する画像形成装置である。
請求項12に係る発明は、請求項5〜請求項11のいずれか1項に記載の画像形成手段の下流側であって且つ前記転写手段の上流側に配置され、前記トナー画像を形成する際にトナーと共に前記電子写真用感光体表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段をさらに有する画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項5〜請求項12のいずれか1項に記載の帯電手段が、接触型帯電器である画像形成装置である。
請求項14に係る発明は、請求項1又は2に記載の電子写真用感光体と、
前記電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、トナーを少なくとも含む現像剤を用いて前記電子写真用感光体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成手段、前記トナー画像を形成する際にトナーと共に前記電子写真用感光体表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段、前記電子写真用感光体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写手段、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段及び転写後の前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一種と、を一体に有し、
画像形成装置本体から脱着可能とされたプロセスカートリッジである。
請求項1に係る発明によれば、画像ムラの生じにくい電子写真用感光体を得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、画像ムラの生じにくい電子写真用感光体を得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、画像の解像度低下の防止効果を有する電子写真用感光体を得ることができる。
請求項4に係る発明によれば、表面層の表面エネルギーを小さくすることができ、その結果として放電生成物や転写残トナーの付着を抑制することができる。
請求項5に係る発明によれば、画像ムラの少ない画像を形成可能な画像形成装置を得ることができる。
請求項6に係る発明によれば、高精細な画像を形成可能になる。
請求項7に係る発明によれば、微小キャリアによる電子写真用感光体表面の傷の発生を抑制することができる。
請求項8に係る発明によれば、電子写真用感光体表面の残留トナーを除去することができる。
請求項9に係る発明によれば、簡易な構成で確実に電子写真用感光体表面の残留トナーを除去することができる。
請求項10に係る発明によれば、クリーニングブレードの電子写真用感光体表面への圧接力が小さいため電子写真用感光体の摩耗を抑制することができる。
請求項11に係る発明によれば、不正キャリアによる感光体表面の傷の発生を抑制することができる。
請求項12に係る発明によれば、不正キャリアによる感光体表面の傷の発生を抑制することができる。
請求項13に係る発明によれば、電子写真用感光体表面を帯電する際に発生するオゾン量を減少することができる。
請求項14に係る発明によれば、画像ムラの生じにくい電子写真用感光体の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性を高めることができる。
以下、本発明の電子写真用感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジの実施形態について詳細に説明する。
<電子写真用感光体>
第一の実施形態に係る電子写真用感光体は、導電性基体と、有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層と、有機感光層と、13族元素と酸素とを少なくとも含有し酸素の13族元素に対する元素組成比が0.9以上1.4以下である表面層と、をこの順に備える。酸素の13族元素に対する元素組成比は0.9以上1.35以下が好ましく、0.95以上1.3以下がさらに好ましい。
また、第二の実施形態に係る電子写真用感光体は、導電性基体と、有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層と、有機感光層と、13族元素と窒素とを少なくとも含有し窒素の13族元素に対する元素組成比が0.4以上0.8以下である表面層と、をこの順に備える。窒素の13族元素に対する元素組成比は0.45以上0.75以下が好ましく、0.5以上0.7以下がさらに好ましい。
第一の実施形態及び第二の実施形態に係る電子写真用感光体(以下、単に「本実施形態の電子写真用感光体」と称することがある。)は有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層を有する。下引き層の厚みが5μm未満では電子写真感光体の帯電性や繰り返し特性が不十分となることがある。さらに、下引き層の厚みが5μm未満であると、13族元素と酸素又は窒素とを少なくとも含有し酸素又は窒素の13族元素に対する元素組成を所定の比率とした表面層を形成する際に生ずる応力により、有機感光層全体にトラップを形成することとなり初期の電子写真用感光体の残留電位が高くなることがある。この残留電位は暗所放置でも回復するものであるが、下引き層が5μm未満では表面層を設けることによるこの電気特性の回復に長時間が必要となり、部分的に回復のムラが発生しやすくその結果として画質ムラが生じ画質上実用的でない。
厚さ5μm以上の下引き層であっても、表面層として組成が化学量論比の13族元素酸化物や窒化物を設けたものは残留電位等の電気特性の回復に長時間が必要となる。また、残留電位の値は表面層の無い電子写真用感光体に比べて、数10V程度の増加で実用範囲にあるが、画像でみると電位回復のムラによる電位ムラが発生しやすく、その結果として画質ムラが発生するという問題がある。これは、有機感光層全体に空間電荷が発生しやすくなり、光照射後に電荷輸送層を移動した電荷が高抵抗な表面層により消去できないため電荷輸送層内部に蓄積し、この空間電荷のムラが発生することが原因と推定している。
これに対して、表面層として組成が化学量論比より酸素欠乏あるいは窒素欠乏状態の表面層と、5μm以上の下引き層とを設けた本実施形態の電子写真用感光体は、表面層形成時の応力による感光層での歪が減少して、成膜後に短時間で安定した電気特性となるほか、空間電荷消去の回復が均一であり、カラー画像の出力用として実用的なハーフトーン画像の均一性が得られる。
なお、下引き層を50μmよりも厚くした場合には、下引き層による残留電位や繰り返し特性が不十分になり、繰り返し使用により安定な画像を出力できないことがある。
また、下引き層を5μm以上50μm以下にすることによって、高画質用の電子写真用感光体として電荷輸送層を薄くした場合に下引き層の厚さで全体の厚さを調整することで表面層形成時の残留応力による歪を小さくすることができる。また、導電性フィラーを含む下引き層は応力緩和効果が高い。
下引き層と有機感光層との間に、硬さや膨張率、密着性の向上などの観点から中間層を設けても良い。
本実施形態の電子写真用感光体の層構成は、導電性基体と下引き層と有機感光層と表面層とをこの順に備えるものであれば特に限定されない。また、必要に応じてその他の層を備えていてもよい。以下、本実施形態の電子写真用感光体の層構成の具体例について、より詳細に説明する。
図1及び図2は、本実施形態の電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。図1及び図2において、1は導電性基体、2は下引き層、3は有機感光層、3Aは電荷発生層、3Bは電荷輸送層、4は表面層を示す。
有機感光層を形成する有機高分子化合物は熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また2種類の分子を反応させて形成するものでも良い。また、有機感光層と表面層との間に、硬度や膨張係数、弾力性の調整、密着性の向上などの観点から中間層を設けても良い。中間層は、表面層の物性および有機感光層(機能分離型の場合は電荷輸送層)の物性の両者に対して、中間的な特性を示すものが好適である。また、中間層を設ける場合には、中間層は、電荷をトラップする層として機能しても良い。
有機感光層は、図1に示すように機能一体型であってもよいし、図2に示すように電荷発生層と電荷輸送層とに分かれた機能分離型でも良い。機能分離型の場合には感光体の表面側に電荷発生層を設けたものでも良いし、表面側に電荷輸送層を設けたものでも良い。
有機感光層上に、後述する方法により表面層を形成する場合、熱以外の短波長電磁波の照射により有機感光層が分解したりすることを防ぐため、有機感光層表面には、表面層を形成する前に紫外線などの短波長光吸収層を予め設けてもよい。また、短波長光が有機感光層に照射されないように、表面層を形成する初期の段階で、バンドギャップの小さい層を最初に形成することもできる。有機感光層側に設けられるバンドギャップの小さい層の組成としては、例えば、Inを含んだ13族元素比としてGaIn(1−X)(0≦X≦0.99)が好適である。
また、紫外線吸収剤を含む層(例えば、高分子樹脂に分散させた層を塗布等を利用して形成される層)を有機感光層表面に設けても良い。
このように、表面層を形成する前に感光体表面に中間層を設けることで、表面層を形成するときの紫外線や、画像形成装置内で感光体が使用された場合のコロナ放電や各種の光源からの紫外線などの短波長光による有機感光層への影響を防ぐことができる。
−表面層−
次に、表面層の特性等についてより詳細に説明する。
表面層は表面の傷を防止し、また均一な研磨を保証し、窒素酸化物などの吸着がおこり難く、またオゾンや窒素酸化物による酸化雰囲気にたいして表面の酸素濃度が高く耐性を示すものである。また透明性が高く緻密で硬度に優れた膜である。
本実施形態に係る表面層は表面電荷を表面にトラップしても、また内部にトラップするものでも良い。また表面電荷を積極的に注入させるものでも良い。表面層の内部に電荷を注入する場合には有機感光層との界面に電荷がトラップする構成が必要であり、負帯電で表面層が電子を注入する場合には正孔輸送層の表面が電荷トラップの機能を果たしても良いし、電荷注入阻止とトラップのための層を設けても良い。正帯電性の場合にも同様にすることができる。
本実施形態に係る表面層は、13族元素と酸素又は窒素とを少なくとも含有し、酸素の13族元素に対する元素組成比が0.9以上1.4以下又は窒素の13族元素に対する元素組成比が0.4以上0.8以下とされている。
本実施形態に係る表面層は、13族元素と酸素あるいは窒素を含む13族酸化物あるいは窒化物半導体であり、硬度も高く、電気抵抗が潜像を保持するとともに表面層での電荷蓄積を防止するように制御できる。また、大気中の酸素や酸化雰囲気中においても耐酸化性に優れ、経時的な物性変化が極めて小さい。
本実施形態に係る表面層は、13族元素と酸素あるいは窒素のみからなるものであってもよいが、この他にも水素等の第4の元素が必要に応じて含まれていてもよく、特に水素が含まれていることが好ましい。この場合、水素が、13族元素と酸素との結合により発生したダングリングボンドや構造欠陥を補償することによって電気的な安定性、化学的安定性、機械的な安定性を増すと共に、高い硬度と透明性に加えて表面層表面の高い撥水性や低摩擦係数も得ることができる。
表面層の厚み方向の組成は、均一であってもよいが、13族元素と酸素あるいは窒素を含むものであれば、膜の厚み方向において組成に傾斜構造を有していたり、多層構成からなるものであってもよい。
表面層の厚み方向における酸素あるいは窒素の濃度分布は基材側に向かって減少し、表面は化学量論比となつていても良い。
酸素あるいは窒素の量が減少することにより、表面層は表面にむかって抵抗は高く、硬度は高く、光吸収は減少し、有機感光層の光電特性を低下させずまた長期安定性に優れた表面層となる。
なお、13族元素と表面層中の酸素の化学量論比は2:3であり、窒素との化学量論比は1:1であり、本実施形態においては窒素又は酸素が欠乏状態となっている。酸素あるいは窒素が欠乏状態の酸化物又は窒化物の抵抗は化学量論比にあるそれらの化合物よりも抵抗が低くなる。酸素又は窒素の13族元素に対する元素組成比が各々0.9未満又は0.4未満であると表面層の電気抵抗が低くなり静電潜像を保持出来なくなることがある。
さらに、表面層が水素を含む場合には、表面層の最表面の表面エネルギーが小さくなるために放電生成物や転写残トナーの付着が抑制でき、放電生成物の付着に起因する画像欠陥の発生も抑制できる。これに加えて、表面層の最表面の摩擦係数も小さくなるため、磨耗の進行や傷の発生をより一層抑制することができる。
さらに、表面層の最表面の摩擦係数が小さいため、クリーニングブレードで感光体表面の転写残トナーを除去する際に低いトルクでクリーニングすることができる。クリーニングブレードは、他のクリーニング手段と比べると感光体表面を傷つけ、また、磨耗を促進しやすいものである。しかし、本実施形態の電子写真用感光体の表面は滑らかで滑り性に富むため、長期に渡る使用においても、感光体表面の傷の発生や磨耗を抑制することができる。
表面層中の水素の含有量としては0.1原子%以上40原子%以下の範囲が好ましく、0.5以上30原子%以下の範囲内がより好ましい。
水素の含有量が0.1原子%未満の場合には膜内部に構造的な乱れを内蔵したままとなり、電気的に不安定となったり機械的な特性も不十分となる場合がある。また、40原子%を超える場合には水素が13族元素に2原子以上結合する確率が増加して、三次元構造を保つことができず硬度や化学的安定性(特に耐水性)などが不十分となる場合がある。
なお、本実施形態において、表面層中の水素含有量はハイドロジェンフォワードスキャタリング(HFS)により求められた値を意味する。
HFSは、加速器としてNEC社の3SDH Pelletronを用い、エンドステーションとしてCE&A社のRBS−400を用い、システムとしてCE&A社の3S−R10を用いた。
解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いた。
HFSの測定条件は、以下の通りである。
He++イオンビームエネルギー:2.275eV
検出角度160°入射ビームに対してGrazing Angle30°である。
HFS測定は、He++イオンビームに対して検出器が30°に、試料が法線から75°になるようにセットすることにより、試料の前方に散乱する水素のシグナルを拾うことが可能である。この時検出器を薄いアルミ箔で覆い、水素とともに散乱するHe原子を取り除くことが良い。定量は参照用試料と被測定試料との水素のカウントを阻止能で規格化した後に比較することによっておこなう。参照用試料としてSi中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用した。
白雲母は水素濃度が約6.5原子%であることが知られている。
最表面に吸着しているHは、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって補正を行うことができる。
表面層中には、炭素も含まれていてもよいが、この場合の炭素含有量は10原子%以下であることが好ましい。とくに炭素が−CH,−CHとして存在する場合には、表面層内部に含まれる水素が多くなるため、結果として表面層の大気中での化学的安定性等が不充分となる場合がある。
表面層に含まれる13族元素としては、具体的には、B,Al,Ga,Inから選ばれる少なくとも一つの元素を用いることができ、これらの元素から選択される二つ以上の元素を組み合わせて用いることもできる。
この場合、これらの原子の表面層中の含有量の組み合わせに制限は無いが、上記4つの元素のうち、Inの窒化物の場合には可視光域に吸収があり、In以外の元素は可視光域に吸収がないため、使用する13族元素を適宜選択することにより、表面層の光に対する感応波長域を任意に調整することが可能である。本実施形態に係る表面層においては、この感光体を備えた画像形成装置の露光波長やイレーズ波長などに対して、これらの光を出来るだけ吸収しないように元素を選択する必要がある。
なお、本実施形態において、表面層中の13族元素や窒素、酸素、炭素等の元素の含有量は、膜厚方向の分布も含めてラザフォードバックスキャタリング(RBS)により求めた値を意味する。
RBSは、加速器としてNEC社の3SDH Pelletronを、エンドステーションとしてCE&A社のRBS−400を、システムとしてCE&A社の3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いた。
RBSの測定条件は以下のとおりである。
He++イオンビームエネルギー:2.275eV
検出角度 160°入射ビームに対してGrazing Angle 109°である。
RBS測定はHe++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。
組成比と膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定しても良い。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度を向上できる。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー 3)散乱角度
の3つの要素のみにより決まる。
測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて膜厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
ここで、上述した「13族元素と酸素又は窒素との元素組成比(酸素又は窒素/13族元素)」とは、最表面から深さ10nmの範囲を除いた、表面層の膜厚方向に平均化された値を意味する。最表面から深さ10nmの範囲を含まないのは、汚染による炭素等の影響をなくすことと、自然酸化の影響を除くためである。なお、最表面から10nm以内の深さで自然酸化により化学量論比の絶縁膜が形成されていても、感光体の電気特性に与える悪影響はほとんどない。なお、最表面から少なくとも深さ10nmの範囲を除いた領域で、元素組成比は膜厚方向に対して異なった値を有していてもよい。この場合、「元素組成比」とは、膜厚方向に対して平均化された値を意味する。
表面層の結晶性/非結晶性は特に限定されないが、微結晶、多結晶、あるいは、非晶質のいずれであってもよい。
なお、表面層は、安定性や硬度から微結晶が含まれた非晶質、非晶質が含まれた微結晶/多結晶であっても良いが、表面層表面の平滑性や摩擦の点からは非晶質であることが好ましい。結晶性/非晶質性は、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像の点や線の有無により判別することができる。また、非晶質性は、X線回折スペクトル測定によっても回折角に固有の鋭いピークが現れないことによっても判別することができる。
表面層には、導電型の制御や導電性の制御のために種々のドーパントを添加することができる。表面層の導電性をn型に制御する場合には、例えば、Si,Ge,Snから選ばれる一つ以上の元素を用いることができ、p型に制御する場合には、例えば、Be,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれる一つ以上の元素を用いることができる。また通常ドープしていない半導体はn型が多く、さらに暗抵抗を高くするためにp型化で使用する元素を使用することができる。
本実施形態に係る表面層は、その結晶性/非結晶性が、微結晶、多結晶あるいは非晶質のいずれの場合においても、その内部構造に結合欠陥や、転位欠陥、結晶粒界の欠陥などが多く含まれる傾向にある。このため、これらの欠陥の不活性化のために表面層中には、水素および/またはハロゲン元素が含まれていても良い。表面層中の水素やハロゲン元素は結合欠陥などに取り込まれて、反応活性点を消失させ、電気的な補償を行う働きを有するため、表面層内のキャリアの拡散や移動に関係するトラップが抑制される。
十分な機械的強度を保つために本実施形態に係る表面層が厚膜とされた場合にも、帯電と露光が繰り返された場合の電荷の内部蓄積による感光体表面の残留電位やそのサイクルアップを抑え、帯電特性をより安定化することができる。
表面層は、既述したように非晶性あるいは結晶性のいずれでもよいが、有機感光層(あるいは中間層)との密着性を高めかつ感光体表面の滑りを良くするためには、表面層は非晶質性であることが好ましい。また表面層の下層(有機感光層側)が微結晶性であり、上層(感光体表面側)が非晶質性であっても良い。
表面層は、帯電時、表面層に注入させるものでも良い。この場合表面層と有機感光層の界面で電荷がトラップする必要がある。また電荷が表面層の表面にトラップしても良い。例えば、有機感光層が図2に示すように機能分離型である場合、負帯電で表面層が電子を注入する場合には電荷輸送層の表面層側の面が電荷トラップの機能を果たしても良いし、電荷の注入阻止とトラップのために、電荷輸送層と表面層との間に中間層を設けても良い。正帯電性の場合にも同様にすることができる。
表面層の厚さは0.01μm以上5μm以下の範囲内が好ましい。厚みが0.01μm未満では有機感光層の影響を受けやすく、機械的強度が不十分となる場合がある。5μmよりも厚い場合には帯電露光の繰り返しによって残留電位が上昇し、また有機感光層に対する機械的な内部応力が増加して、剥離やひび割れが発生しやすくなる場合がある。
また、表面層は電荷注入阻止層、あるいは、電荷注入層としての機能を兼ねてもよい。この場合、既述したように表面層の導電型をn型やp型に調整することによって、表面層を電荷注入阻止層、あるいは、電荷注入層としても機能させることができる。
表面層が電荷注入層としても機能する場合には、中間層や有機感光層の表面(表面層側の面)で電荷がトラップされる。負帯電の場合にn型の表面層は電荷注入層として機能し、p型の表面層は電荷注入阻止層として機能する。正帯電の場合にはn型の表面層は電荷注入阻止層として機能し、p型の表面層は電荷注入層として機能する。
また、静電潜像を維持するため、高抵抗としたi型の半導体膜を表面層として形成しても良い。本実施形態では抵抗を酸素あるいは窒素原子の13族原子との比で制御する。
本実施形態においては、表面層の最表面部の酸素の13族元素に対する元素組成比が1.4以上1.6以下であることが好ましい。これにより、化学的安定性と高撥水性の効果が得られる。なお、本実施形態において「最表面層」とは表面より10nmまでの部分をいう。最表面組成はX線光電子分光(XPS)を用いて測定することができる。最表面は炭素化合物が吸着している場合があるがAr+スパッターを行っても良い。最表面は自然酸化でも良いし膜を作製しても良い。
−導電性基体−
導電性基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性基体の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。なお、本実施形態において「導電性」とは1000Ω/□以下の条件を満たすことをいう。
また、導電性基体として金属製パイプ基体を用いる場合、当該金属製パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておくことも可能である。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、感光体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラを防止することができる。表面処理の方法としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等が挙げられる。
特に、有機感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、以下のようにアルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものを導電性基体として用いることが好ましい。
以下、表面に陽極酸化処理を施した導電性基体の製造方法について説明する。まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JISH4080に規定されている合金番号1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10質量%以上20質量%以下、浴温:5℃以上25℃以下、電流密度:1A/dm以上4A/dm以下、電解電圧:5V以上30V以下、処理時間:5分以上60分以下程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
このようにしてアルミニウム基体上に成膜された陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、皮膜形成後にその物性値が経時的に変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最もよく用いられる。
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが好ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、可能な限りきれいな(脱イオンされた)洗浄液が用いられる。また、多段階の洗浄工程のうち、いずれか1工程において、ブラシ等の接触部材を用いた物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに好ましい。
以上のようにして形成される導電性基体表面の陽極酸化皮膜の膜厚は、3μm以上15μm以下程度の範囲内であることが好ましい。陽極酸化皮膜上には多孔質陽極酸化膜のポーラスな形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。以上のようにして、陽極酸化処理された導電性基体を得ることができる。
このように得られた導電性基体は、陽極酸化処理により基体上に成膜された陽極酸化皮膜が高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体を用いた感光体を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作製後における物性値の経時変化を防止することができる。また、封孔処理後に導電性基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により導電性基体表面に付着した金属塩等を除去することができ、この導電性基体を用いて作製した感光体を備えた画像形成装置により画像を形成した場合に地汚れの発生を防止することができる。
−下引き層−
次に、下引き層について説明する。
本実施形態に係る下引き層は、有機高分子中に導電性フィラーが分散されており厚さが5μm以上50μm以下とされたものである。
下記の分散型下引層用塗布剤を用いることで下引き層を形成することができる。これにより、適度に下引き層の抵抗値を調整することにより残留電荷の蓄積を防ぐことができるとともに、下引き層の膜厚をより厚くすることが可能となるため感光体の耐リーク性、とくに接触帯電時のリークの防止を図ることができる。
この分散型下引層用塗布剤としては、導電性フィラーを結着樹脂である有機高分子中に分散したものが挙げられる。導電性フィラーとしては、平均1次粒径0.5μm以下の金属酸化物粒子が好ましく用いられる。平均1次粒径が大きすぎる場合には局部的な導電路形成を起こしやすく、電流のリークが発生しやすく、その結果かぶりの発生や帯電器からの大電流のリークが生じる場合がある。下引き層はリーク耐性の向上のために適切な抵抗値に調整されることが必要である。そのため、上述の金属酸化物粒子は、10Ω・cm以上1011Ω・cm以下程度の粉体抵抗を有することが好ましい。
好ましい導電性フィラーとしては、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、ITO、ヨウ化銅や金属粉末等が挙げられる。これらの中でも、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物が好ましい。
導電性フィラーの好ましい平均1次粒径は、0.1μm以上5μm以下であり、0.2μm以上3μm以下がさらに好ましく、0.2μm以上2μm以下が特に好ましい。なお、本実施形態において平均1次粒径は、膜の断面観察により測定された値をいう。
なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こす場合ある。従って、中でも上記の範囲内の抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粒子がより好ましく用いられる。また、金属酸化物粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物粒子にカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体の抵抗を制御することができる。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
カップリング剤としては従来公知のカップリング剤を選択して使用することができる。本実施形態で使用可能なカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。これらの中でもγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が好ましい。
この金属酸化物粒子の表面処理においては、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。次に、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けの効果によりカップリング剤を硬化させ金属酸化物粒子と堅固な化学反応を起こさせることができる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法を用いる場合においては、乾式法と同様に、まず、金属酸化物粒子の表面吸着水を除去する。この表面吸着水を除去する方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。次に、金属酸化物粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
金属酸化物粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。電子写真特性は表面処理後に金属酸化物粒子に表面処理剤が付着している量によって影響される。シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析により測定される(シランカップリング剤に起因する)Si強度と、使用されている金属酸化物の主たる金属元素強度とから求められる。この蛍光X線分析により測定されるSi強度は用いられる金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10−5倍以上1.0×10−3倍以下の範囲であることが好ましい。この範囲を下回った場合、かぶりなどの画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合、残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすくなる場合がある。
分散型下引層用塗布剤に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。
中でも下引き層上に形成される層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。
分散型下引層形成用塗布液中(即ち下引き層中)の金属酸化物粒子と結着樹脂との比率(質量基準)としては、10:100〜100:10が好ましく、20:100〜100:20がさらに好ましく、30:100〜100:30が特に好ましい。
また、上述した下引層形成用塗布液には、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させておくことが好ましい。電子受容性物質の具体例としては、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体がより好ましく用いられる。これにより、有機感光層における光感度の向上や残留電位の低減を図るとともに、繰り返し使用した場合の光感度の劣化を低減することができ、下引き層に電子受容性物質を含む感光体を備えた画像形成装置により形成したトナー像の濃度ムラを防止することができる。
電子受容性物質の好ましい含有量は、金属酸化物に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
上述した方法により表面処理された金属酸化物粒子を結着樹脂に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を用いた方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
また、下引き層を形成するための下引層形成用塗布液に用いる溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。なお2種以上の溶媒を混合する場合に使用できる溶媒としては、混合溶媒として結着樹脂を溶かす事ができる溶媒であれば、いかなるものでも使用することができる。
下引き層の形成は、まず、下引層用塗布剤および溶媒を分散及び混合して調合された下引層形成用塗布液を用意し、導電性基体表面に塗布することにより行う。下引層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。下引き層を形成する場合には、その膜厚は5μm以上50μm以下の範囲内となるように形成される。下引き層の膜厚をこのような膜厚範囲内とすることにより、電気的な障壁を過剰に強くすることなく減感及び繰り返しによる電位の上昇を防止することができる。
このようにして導電性基体上に下引き層を形成することにより、下引き層上に形成される層を塗布形成する際の濡れ性の改善を図ることができるとともに、電気的なブロッキング層としての機能を十分に果たすことができる。
上記により形成された下引き層の表面粗さは、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)倍(但し、nは下引き層よりも外周側に設けられる層の屈折率)〜1倍程度の範囲内の粗度を有するように調整することが可能である。表面粗さの調整は、下引層形成用塗布液中に樹脂粒子を添加することにより行われる。これにより下引き層の表面粗さを調整して作製した感光体を画像形成装置に用いた場合に、レーザ光源による干渉縞像をより十分に防止することができる。
なお、樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引き層表面を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成の画像形成装置に用いられる感光体では、レーザ入射光は感光体の極表面近傍で吸収され、さらに有機感光層中で散乱されるため、下引き層の表面粗さの調整は強くは必要とされない。
−有機感光層:電荷輸送層−
次に、有機感光層について、電荷輸送層と電荷発生層とに分けてこの順に以下に説明する。
電荷輸送層に用いられる電荷輸送材料としては、下記に示すものが例示できる。即ち2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質が用いられる。あるいは、上記化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用できる。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂には任意のものを用いることができるが、結着樹脂は、特に電荷輸送材料と相溶性を有し適当な強度を有するものであることが望ましい。
この結着樹脂の例として、ビスフェノールAやビスフェノールZ,ビスフェノールC,ビスフェノールTPなどからなる各種のポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリアリレート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、アチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂の分子量は、有機感光層の膜厚や溶剤などの成膜条件によって選択されるが、通常は粘度平均分子量で3000以上30万以下の範囲内が好ましく、2万以上20万以下の範囲内がより好ましい。
電荷輸送層および/または後述する電荷発生層は、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を含んでもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルなどが挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。
有機イオウ系酸化防止剤では、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。
有機燐系酸化防止剤では、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
なお、有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われるもので、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより酸化防止効果を相乗的により高めることができる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤として、2−(−2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル 5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
電荷輸送層は、上記に示した電荷輸送材料及び結着樹脂を適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって形成することができる。電荷輸送層形成用塗布液の調製に用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系、アセトン、2ーブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或るいは直鎖状エーテル等、あるいはこれ等の混合溶媒を用いることができる。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1乃至1:5であることが好ましい。また電荷輸送層の膜厚は一般には5μm以上50μm以下の範囲内とすることが好ましく、10μm以上40μm以下の範囲内がより好ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がさらに好ましい。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布は、感光体の形状や用途に応じて、浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法などの塗布法を用いて行うことが出来る。乾燥は、室温での指触乾燥の後に加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥は、30℃以上200℃以下の温度域で5分以上2時間の範囲の時間で行うことが望ましい。
−有機感光層:電荷発生層−
電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
なお、上述した電荷発生材料の中でも、フタロシアニン化合物が好ましい。この場合、有機感光層に光が照射されると、有機感光層に含まれるフタロシアニン化合物がフォトンを吸収してキャリアを発生させる。このとき、フタロシアニン化合物は、高い量子効率を有するため、吸収したフォトンを効率よく吸収してキャリアを発生させることができる。
更にフタロシアニン化合物の中でも、下記(1)〜(3)に示すフタロシアニンがより好ましい。すなわち、
(1)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型のヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型のクロルガリウムフタロシアニン。
(3)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型のチタニルフタロシアニン。
これらのフタロシアニン化合物は、特に、光感度が高いだけでなく、その光感度の安定性も高いため、これらフタロシアニン化合物を含む有機感光層を有する感光体は、高速な画像形成及び繰り返し再現性が要求されるカラー画像形成装置の感光体として好適である。
なお、結晶の形状や測定方法によりこれらのピーク強度や位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものを例示することができる。即ちビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂およびその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
これらの結着樹脂は、単独であるいは2種以上混合して用いることが可能である。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、質量比で、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。また電荷発生層の厚みは、一般には0.01μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましく0.05μm以上2.0μm以下の範囲内であることがより好ましい。
また電荷発生層は、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。電荷発生層に用いられる電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピークリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミルなどの方法を用いることができる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種類以上の溶媒を混合して用いる場合には、混合溶媒として結着樹脂を溶かす事ができる溶媒であれば使用することができる。但し、有機感光層が、導電性基体側から、電荷輸送層と電荷発生層とをこの順に形成した層構成を有する場合に、浸漬塗布のように下層を溶解しやすい塗布方法を利用して電荷発生層を形成する際には、電荷輸送層等の下層を溶解しない溶媒を用いることが望ましい。また、比較的下層の侵食性の少ないスプレー塗布塗布法やリング塗布法を利用して電荷発生層を形成する場合には溶媒の選択範囲を広げることができる。
−中間層−
例えば、帯電器により感光体表面を帯電させる際に、帯電電荷が感光体表面から対抗電極である感光体の導電性基体にまで注入して帯電電位が得られなくなることを防止するために必要に応じて表面層と電荷発生層との間に電荷注入阻止層として中間層を形成することができる。
電荷注入阻止層の材料としては上記に列挙したシランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、その他の有機金属化合物、ポリエステル、ポリビニルブチラールなどの汎用樹脂を用いることができる。電荷注入阻止層の膜厚は0.001μm以上5μm以下程度の範囲内で成膜性及びキャリアブロッキング性を考慮して設定される。
(表面層の製造方法)
次に本実施形態に係る表面層の製造方法について説明する。本実施形態に係る表面層は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、有機金属気相成長法、分子線エキタピシー法、蒸着、スパッタリング等の公知の気相成膜法が利用できるが有機金属気相成長法を用いることが好ましい。
この場合、窒素を含む物質あるいは酸素を含む物質を反応に必要なエネルギー状態または励起状態に活性化する活性化手段によって、前記窒素を含む物質あるいは前記酸素を含む物質を活性種とし、前記活性種と、活性化していない13族元素を含む有機金属化合物とを反応させることにより、基材上に本実施形態に係る表面層を形成することが好ましい。
これにより、基材が有機材料を含む場合、例えば、有機感光体である場合においても、導電性基体や有機感光層に熱的なダメージを与えることなく、感光体の表面層として上述した特性を有する表面層を形成することができる。なお、表面層の形成に際しては、基材の表面を予めプラズマによりクリーニングしてもよい。
13族元素を含む有機金属化合物を活性化させるとともに、窒素を含む物質あるいは酸素を含む物質を反応に必要なエネルギー状態または励起状態に活性化させた種とを反応させることによって基材上に表面層を形成してもよい。
なお、上述した表面層の形成は、通常は、窒素を含む物質や、酸素を含む物質、13族元素を含む有機金属化合物からなるガスまたはこれらを気化したガスの各々を、基材が配置された反応室(成膜室)内に供給しつつ、反応を終えたガスを反応室から排気しながら行われる。このような観点からは、13族元素を含む有機金属化合物を、窒素を含む物質又は酸素を含む物質を活性化する活性化手段の下流側に導入することが好ましい。あるいは基体を回転する場合には平面上で13族元素を回転の上流に、活性化手段を回転の下流として空間的に分離しても良い。分離手段として仕切りを用いても良いし空間的に距離を置いて設置したものでも良い。
これにより、13族元素を含む有機金属化合物が導入された位置よりも上流あるいは回転下流側で、活性化された窒素を含む物質又は酸素を含む物質が合流するため、活性化していない13族元素を含む有機金属化合物と活性化した窒素を含む物質又は酸素を含む物質とを反応させることができる。
基体の回転させる場合には上述の位置関係のほかに、回転上流側に窒素を含む物質又は酸素を含む物質を活性化する活性化手段を、回転下流側に13族元素を含む有機金属化合物からなるガスまたはこれらを気化したガスを供給しても良い。
また、本実施形態に係る表面層を基材上に形成する際の基材表面の最高温度は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることが好ましく、基材表面の最高温度は常温に近ければ近いほど好ましい。100℃を超えると、基材が変形したり、基材に含まれる有機材料の分解等によりその物性が劣化してしまう場合がある。また成膜時の熱膨張率の違いによる有機感光層内部での残留応力が多く発生し、電子写真用感光体の電気特性の劣化を引き起こす。具体的には感度低下、有機感光層内部での空間電荷発生による残留電位の上昇や、空間電荷のばらつきによる画質ムラ等の問題である。
以下に、表面層の製造方法について、より詳細に説明する。
図3は、表面層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図であり、図3Aは、成膜装置を側面から見た場合の模式断面図を表し、図3Bは、図3Aに示す成膜装置のA1−A2間における模式断面図を表す。図3中、10は成膜室、11は排気口、12は基体回転部、13は基体ホルダー、14は基体、15は平板電極、16はガス導入管、17はガスノズル、18はガス導入管、19は高周波電力供給部、20は高周波電源部である。
図3に示す成膜装置において、成膜室10の一端には、不図示の真空排気装置に接続された排気口11が設けられており、成膜室10の排気口11が設けられた側と反対側に、高周波電源20、高周波電力供給部19および平板電極15からなるプラズマ発生装置が設けられている。
この平板電極15には、内部に第二の非成膜性ガス供給用のガス導入管16が接続されている。この平板電極15の基体に向き合う面には基体にガス供給するためのガス穴が開いている。穴の間隔は均等にあけても良いし、不均一に分配しても良い。
基体に近接して第一のガスを導入するためのガスノズル17が設けられている。ガスノズルにはガス供給のためのガス導入管18が接続されている。
このガス導入管18のもう一方の端は、成膜室10外に設けられた不図示の第1のガス供給源に接続されている。
平板電極15の放電面側には、放電面と略平行な棒状のシャワーノズルを接続しても良い。ガス導入管16は成膜室10外に設けられた不図示の第2のガス供給源と接続されている。
また、成膜室10外には、基体回転部12が設けられており、円筒状の基体14が、平板電極15、ガスノズル17と基体14の軸方向とが略平行に対面するように基体ホルダー13を介して基体回転部12に取りつけられるようになっている。成膜に際しては、基体回転部12が回転することによって、基体14が周方向に回転させることができる。なお、基体14としては、予め有機感光層まで積層された感光体、あるいは、有機感光層上に中間層までが積層された感光体が用いられる。回転方向は平行電極15からガスノズル17に向かう方向でも良いし、反対方向でも良い。
表面層の形成は、例えば以下のように実施することができる。まず、HガスとHeガスと酸素ガスあるいは窒素ガスとをガス導入管16から平板電極15に導入し、13.56MHzのラジオ波を供給すると、平板電極15と基体の間にプラズマが形成される。ここで、ガス導入管16から平板電極15を通って導入されたガスは成膜室10を平板電極15側から排気口11側へと流れる。
平板電極15は電極の周りをアースシールドで囲んだものが好ましい。また、基体を同心円状に囲んだ円筒状の電極でも良い。
次に、水素をキャリアガスとして用いて希釈したトリメチルガリウムガスをガス導入管18、活性化手段である平板電極15の隣接部に位置するガスノズル17を介して成膜室10に導入することによって、基体14表面にガリウムと窒素あるいは酸素を含む非単結晶膜を成膜することができる。窒素量あるいは酸素量は、飽和酸素あるいは飽和窒素で形成した膜が化学量論比となっている場合から減じて組成を制御する。たとえば酸素ガス濃度の増加に対して特性が変化しない酸素量での膜組成を酸化物の化学量論比とすることができる。あるいは窒素ガス濃度の増加に対して特性が変化しない窒素量での膜組成を窒化物の化学量論比とすることができる。但し飽和点よりも過剰な酸素あるいは窒素ガスを導入した場合には化学量論比で決定する膜との別の化学組成の膜が生成することがある。
成膜時の表面層の形成温度は特に限定されないが、感光体を作製する場合において、表面層の成膜時の基体14表面の温度は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、50℃以下が特に好ましい。基体14表面の温度が成膜開始当初は100℃以下であっても、プラズマの影響で150℃より高くなる場合には有機感光層が熱で損傷を受ける場合があるため、このような影響を考慮して基体14の表面温度を制御することが好ましい。
基体14表面の温度は加熱および/または冷却手段(図中、不図示)によって制御しても良いし、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。基体14を加熱する場合にはヒータを基体14の外側や内側に設置しても良い。基体14を冷却する場合には基体14の内側に冷却用の気体または液体を循環させても良い。
放電による基体14表面の温度の上昇を避けたい場合には、基体14表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
13族元素を含むガスとしてはトリメチルガリウムガスの代わりにインジウム、アルミニウムを含む有機金属化合物やジボランのような水素化物を用いることもでき、これらを2種類以上混合してもよい。
例えば、表面層の形成の初期において、トリメチルインジウムをガス導入管16、平板電極15を介して成膜室10内に導入することにより、基体14上に窒素とインジウムとを含む膜を成膜すれば、この膜が、継続して成膜する場合に発生し、有機感光層を劣化させる紫外線を吸収することができる。このため、成膜時の紫外線の発生による有機感光層へのダメージを抑制できる。
また、表面層には、その導電型を制御するためにドーパントを添加することができる。成膜時におけるドーパントのドーピングの方法としてはn型用としてはSiH,SnHを、p型用としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、などをガス状態で使用できる。また、ドーパント元素を表面層中にドーピングするには、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用することもできる。
具体的には、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管16、平板電極15を介して成膜室10内に導入することによってn型、p型等任意の導電型の表面層を得ることができる。
なお、13族原子の供給材料として水素原子を含む有機金属化合物を用い、13族原子と窒素原子あるいは酸素とを主に含む表面層を形成する場合、成膜室10内には活性水素が存在することが好ましい。活性水素は、キャリアガスとして使用する水素ガスや有機金属化合物に含まれる水素原子から供給されるものでもよい。
例えば、図3に示す成膜装置において、水素ガスと窒素ガスあるいは酸素ガスとを別々の位置から成膜装置内に導入する場合には、水素ガスの活性化状態と、窒素ガスあるいは酸素ガスの活性化状態とを各々独立して制御できるように、複数のプラズマ発生装置を設けてもよい。また、これに対して、装置の簡素化という点では、水素および窒素ガスあるいは酸素ガスの供給材料としてNH等の窒素原子と水素原子とを同時に含むガスを用いたり、酸素と水素を同時に含むHOガスを用いたり、酸素ガスと水素ガスを混合したガスを用いて、プラズマにより活性化することが好ましい。
また、キャリアガスとしてヘリウムなどの希ガスや、水素を組み合わせて用いれば、ヘリウムなどの希ガスと水素による基体14表面で成長している膜のエッチング効果により100℃以下の低温でも高温成長時と同等の水素の少ない非晶質の13族元素と窒素あるいは酸素の化合物を形成できる。
上述した方法により、活性化された水素、窒素あるいは酸素、希ガスおよび、13族原子が基体14表面近傍上に存在し、さらに、活性化された希ガスや水素が、有機金属化合物を構成するメチル基やエチル基等の炭化水素基の水素を分子として脱離させる効果を有する。それゆえ、基体14表面には、水素含有量が少なく、窒素あるいは酸素と13族元素が三次元的な結合を構成する硬質膜からなる表面層が低温で形成される。
このような硬質膜は、非晶質炭素膜に含まれるsp結合性の炭素原子とは異なり、ダイヤモンドを構成する炭素原子のように、GaとNとがsp結合を形成するため透明となる。さらに、この膜は透明且つ硬質である上に、膜の表面は撥水性であり同時に低摩擦となる。またGaとOの場合にはOが八面体構造の結合をとる割合が多く硬質で化学的安定な膜となる。AlやInの場合にも同様である。
図3に示す成膜装置のプラズマ発生手段は、高周波発振装置を用いたものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波発振装置を用いたり、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式の装置をもちいてもよい。また、高周波発振装置の場合は、誘導型でも容量型でも良い。
さらに、これらの装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。プラズマの照射によって基体14表面の温度が上昇しないようにするためには高周波発振装置が好ましいが、熱の照射を防止する装置を設けても良い。
一つの基体の周りに複数の電極を設けても良いし、複数のガスノズルを設けても良い。さらに電極とガスノズルを一対として設けても良い。
2種類以上の異なるプラズマ発生装置(プラズマ発生手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要がある。また、放電する領域と、成膜する領域(基体が設置された部分)とに圧力差を設けても良い。これらの装置は、成膜装置内をガスが導入される部分から排出される部分へと形成されるガス流に対して直列に配置してもよいし、いずれの装置も基体の成膜面に対向するように配置してもよい。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質の制御に有効である。また、放電は大気圧近傍で行っても良い。
大気圧近傍で放電を行う場合にはキャリアガスとしてHeを使用することが望ましい。
なお、表面層の形成に際しては、上述した方法以外にも、通常の有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法を使用することが出来るが、これらの方法による成膜に際しても、活性水素、活性酸素、活性窒素を使用することは低温化に有効である。
<画像形成装置>
次に、本実施形態の画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、上記実施形態に係る電子写真用感光体と、前記電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真用感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを少なくとも含む現像剤を用いて前記電子写真用感光体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成手段と、前記電子写真用感光体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を有するものである。
本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて転写後の前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段や、トナー画像を形成する際にトナーと共に前記電子写真用感光体表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段をさらに有していてもよい。
なお、この画像形成装置において、例えば電子写真用感光体を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能に装着されたカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
図4は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図4に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1〜第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに所定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に所定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の感光体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(画像形成手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能とされている。
上述した第1〜第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
第1ユニット10Yは、電子写真用感光体(感光体)1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を所定の電位に帯電させる接触型帯電器である帯電ローラ2Y(帯電手段)、帯電された感光体1Yの表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電潜像を形成する露光装置3(静電潜像形成手段)、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(画像形成手段)4Y、トナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去するクリーニングブレード(クリーニング手段)6Yが配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600Vから−800V程度の電位に帯電される。
帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の有機感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
静電潜像は、電荷によって感光体1Yの表面にいわゆるネガ潜像として形成される。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの回転に従って所定の現像位置まで搬送される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像)化される。
現像装置4Y内には、イエロートナーとキャリアとを含む現像剤(二成分現像剤)が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、静電潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き所定速度で回転し、感光体1Y上に現像されたトナー像が所定の1次転写位置へ搬送される。
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに所定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用し、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニングブレード6Yで除去されて回収される。
以下、同様にして第2ユニット10Mではマゼンタトナー像が、第3ユニット10Cではシアントナー像が、第4ユニット10Kではブラックトナー像が順次形成され、中間転写ベルト20において重ね合わせられて、多重トナー像が形成される。
4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙P(被転写体)が供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に所定のタイミングで給紙され、所定の2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれてトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融して記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了する。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
本実施形態の画像形成装置においては帯電手段として接触型帯電器である帯電ローラ2を用いているが、ブラシ状、フィルム状又はピン電極状の導電性又は半導電性の帯電部材を用いた接触型帯電器を用いてもよいし、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器などを用いることもできる。接触型帯電器は非接触型帯電器に比べて感光体を帯電させるときに発生するオゾンの発生量を抑えることができるが、微小放電により感光体の寿命を短くしてしまうことがある。しかし、本実施形態の電子写真用感光体は所定の表面層を備えるため、接触型帯電器を用いても感光体の寿命を長くすることができる。
クリーニングブレード6の材料としては公知のゴム材料を用いることができる。例えばウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等を用いることができる。その中で耐摩耗性に優れていることからウレタンゴム(ポリウレタン弾性体)を用いる事が好ましい。
ポリウレタン弾性体としては、一般にイソシアネートとポリオール及び各種水素含有化合物との付加反応を経て合成されるポリウレタンが用いられており、ポリオール成分として、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオールや、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクタム系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等のポリエステル系ポリオールを用い、ポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、4,4′ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートを用いてウレタンプレポリマーを調製し、これに硬化剤を加えて、所定の型内に注入し、架橋硬化させた後、常温で熟成することによって製造されている。上記硬化剤としては、通常、1,4−ブタンジオール等の二価アルコールとトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上の多価アルコールとが併用される。
クリーニングブレード6の物性としては、硬度(JIS Aスケール)が50〜90,ヤング率が(kg/cm 2 )40〜90,100%モジュラス(kg/cm 2 )が20〜65,300%モジュラス(kg/cm 2 )が70〜150,引っ張り強さ(kg/cm 2 )が240〜500,伸び(%)が290〜500,反発弾性(%)が30〜70,引裂強さ(kg/cm 2 )が25〜75,永久伸(%)が4.0以下のものが好ましい。
クリーニングブレード6の感光体1への圧接力は5gf/cm以上25gf/cm以下であることが好ましく、7gf/cm以上23gf/cm以下であることがさらに好ましい。クリーニングブレード6の感光体1への圧接力を5gf/cm以上25gf/cm以下とすることにより、摩耗による感光体の劣化を防ぐことができ、そのため感光体の寿命を延ばすことができる。本実施形態に係る電子写真用感光体の表面は滑らかで滑り性に富むため、クリーニングブレードの押圧を低下させることができる。このため従来よりも押圧力を軽い設定にても使用することができる。なお、従来のクリーニングブレードの感光体に対する押圧力は通常30gf/cm程度である。
従来の摩耗を前提とする表面層ではスクラッチ傷や窪みなどの外傷は摩耗により消えて行くので大きな問題にならない。これに対して、摩耗が少なく薄い硬質表面層を持つ有機感光体では、表面に傷や窪みなどの外傷の発生が最大の問題で、このためブレードクリーニングでは異物などによる傷を発生しないようにする必要がある。本実施形態に係る電子写真用感光体は表面の摩擦が低くかつトナーフィルミングや放電成生物の付着が起こらずクリーニング不良が起こりにくいためクリーニングブレードの押圧力を低下させることが出来る。その結果として長期での安定な画質を提供できる
本実施形態の画像形成装置においては、クリーニング手段がクリーニングブレードの上流側に配置された静電ブラシをさらに有してもよい。クリーニングブレードの上流側に静電ブラシを配置することにより、クリーニングブレードによる残留トナーの除去の前に静電ブラシにより該残留トナーの多くを除去することができる。そのため、残留トナー中に含まれる感光体表面に転移した不正キャリアが感光体とクリーニングブレードとの接触部に突入する量を減らすことができるようになる。その結果として、感光体表面の傷の発生を抑制することができる。
静電ブラシとしては、カーボンブラック、金属酸化物等の導電性フィラーを含有させた樹脂からなる繊維状の物質、あるいは、前記導電性フィラーを表面に被覆した繊維状の物質を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態の画像形成装置においては、現像装置4の下流側であって且つ1次転写ローラ5の上流側に配置され、トナー画像を形成する際にトナーと共に感光体1表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段をさらに有していてもよい。
現像時に、理論的には、キャリアが感光体1へ転移することはないが、実際には、キャリアがトナーと共に感光体1表面へ転移してしまう場合がある(以下、転移したキャリアを不正キャリアという)。
この不正キャリアは、画像の白抜け等、画質に悪影響を及ぼす原因となるとともに、一次転写部において感光体1表面に傷を生じさせる一因ともなる。そのため、転写前に不正キャリアを捕集する必要がある。
そこで、感光体1の周面における現像装置4と1次転写ローラ5との間には、キャリア捕集手段が配設されてもよい。
キャリア捕集手段は、感光体1の周面に対向配置されたマグネットキャッチアップロールと、このマグネットキャッチアップロールを覆うロールハウジングとで構成することができる。
マグネットキャッチアップロールは、磁力を有するロール本体と、このロール本体の周面を覆うように配設された導電性スリーブによって構成される。この結果、感光体1に直接接触するのは、導電性スリーブとなる。
マグネットキャッチアップロールは、感光体1の回転に従動して回転し、不正キャリアを磁界力によって捕集する機能を有している。
これにより、現像装置4から排出された不正キャリアは、1次転写ローラ5へ至る前に捕集され、適正な転写を行うことができる。
なお、本実施形態に係る電子写真用感光体の表面層が水素を含有する場合、上述のように表面層の最表面における表面エネルギーが低下する。そのため、感光体表面上の転写残トナーの量が抑制される。そのため、本実施形態の画像形成装置をクリーニング手段を備えない画像形成装置として構成することも可能となる。
<プロセスカートリッジ>
図5は、本実施形態のプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電装置108、現像装置111、クリーニング手段113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。なお、300は記録紙である。
図5で示すプロセスカートリッジでは、感光体107、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせることが可能である。
なお、本実施形態のプロセスカートリッジは、本実施形態の電子写真用感光体と、前記電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、トナーを少なくとも含む現像剤を用いて前記電子写真用感光体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成手段、前記トナー画像を形成する際にトナーと共に前記電子写真用感光体表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段、前記電子写真用感光体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写手段、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段及び転写後の前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一種と、を一体に有し、画像形成装置本体から脱着可能とされていればよい。
−トナー−
本実施形態に用いられるトナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されない。
また、トナーの形状係数SF1は100以上140以下であることが好ましく、110以上135以下がさらに好ましい。この形状係数SF1が140よりも大きくなると、良好な転写性等が得られにくくなり、得られる画像の高画質化が困難となる場合がある。
なお、形状係数SF1とは下式で定義される値である。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100
式中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて以下のように測定することができる。
まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定する。次に、個々のトナーについて、最大長の2乗/(4×投影面積/π)、すなわち、ML/(4A/π)を算出し、これを平均した値を形状係数SF1として求めた。
一方、本実施形態に用いられるトナーは、高い画質を得るためには、その体積平均粒子径は好ましくは2〜8μmである。
本実施形態に用いられるトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有し、必要に応じて離型剤やその他の添加剤を含有したものである。その結着樹脂は、従来よりトナーに用いられている結着樹脂を用いることができ、特に制限されない。
結着樹脂としては、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルフォン酸ナトリウム等のエチレン性不飽和酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類などの単量体からなる単独重合体、それらの単量体を2種以上組み合せた共重合体、又はそれらの混合物を挙げられる。
さらには、これら単独重合体、共重合体又は混合物と、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂との混合物、非ビニル縮合系樹脂の共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等を挙げることができる。
上記着色剤は、従来より公知の着色剤を用いることができ、特に制限されない。例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などを1種又は2種以上を併せて使用することができる。
本実施形態に用いられるトナーに必要に応じて添加できる離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;シリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウのごとき動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系又は石油系のワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。これらのうちの少なくとも1種をトナー粒子内に含有させるのがよい。
また、トナーには、上記成分の他に、さまざまな特性を制御するために、種々の成分を含有させることができる。例えば、磁性トナーとして用いる場合、磁性粉(例えばフェライトやマグネタイト)、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金又はこれら金属を含む化合物などを含有させることもできる。さらに必要に応じて、4級アンモニウム塩、ニグロシン系化合物やトリフェニルメタン系顔料等の通常使用される帯電制御剤を選択して含有させてもよい。
さらに、トナーには、必要に応じて研磨剤や潤滑剤、転写助剤等の公知の外添剤を外添することができる。
トナーに外添される潤滑剤としては滑性粒子を用いることもできる。この滑性粒子は、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩や、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用でき、これら列挙した材料を単独あるいは併用しても良い。これらの中でも、本実施形態においては、ステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
滑性粒子の体積平均一次粒径としては、0.1μm以上10μm以下の範囲内が好ましく、0.2μm以上8μm以下の範囲内がより好ましい。なお、滑性粒子を粉砕することにより、粒度分布を小さくし、粒径を揃えてもよい。滑性粒子の添加量は、トナー粒子およびこの表面に外添された全ての添加剤に対して0.05〜2.0質量%の範囲内が好ましく、0.1〜1.5質量%の範囲内がより好ましい。
本実施形態に用いられるトナーを製造する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、通常の粉砕法や、分散媒中で作製する湿式溶融球形化法や、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法によるトナー製造法などを用いることができる。これらの中でも、形状係数SF1が100以上140以下のトナーを製造容易な重合法が好ましい。
また、本実施形態に用いられるトナーには、上述した研磨剤、潤滑剤の他にも、例えば平均粒径10〜300nm程度のシリカおよびチタニア等の無機粒子などの種々の外添剤を適宜量外添することができる。
−キャリア−
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができるが、特に、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物などの芯材(コア)を樹脂により被覆した樹脂被覆キャリアを用いることが好ましい。
樹脂被覆キャリアは現像器中でトナーや外添剤とともに攪拌されることで帯電する。樹脂被覆キャリアは表面が樹脂に覆われているために、機械的な摺擦力による破損が小さく、また砕けて微粉を発生することが極めて少ない。
微粉等の発生が著しかった従来のキャリアでは、転写工程において該微粉等が感光体に対して押付けられ、感光体を傷つけたりあるいは刺さることがあり、更に感光体に一度刺さった微粉等は抜けにくく、長期にわたってクリーニングブレードに突入するため、ブレード先端部の欠けが問題であった。ブレード先端部が欠けた箇所からはトナーが漏れ出し、そのトナーが後工程の画像に入ることで画質欠陥を生じていた。しかし、樹脂被覆キャリアでは微粉等の発生が極めて少なく、これらの問題が格段に改善される。
樹脂被覆キャリアに使用される樹脂としては、キャリア用の樹脂層材料として用いられているものであれば公知の樹脂が利用でき、二種類以上の樹脂をブレンドして用いても良い。樹脂層を構成する樹脂としては大別すると、トナーに帯電性を付与するための帯電付与樹脂と、トナー成分のキャリアへの移行を防止するために用いられる表面エネルギーの低い樹脂とが挙げられる。
ここで、トナーに負帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、アミノ系樹脂、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、およびエポキシ樹脂等があげられ、さらにポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂等があげられる。
また、トナーに正帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
トナー成分のキャリアへの移行を防止するために用いられる表面エネルギーの低い樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等があげられる。
また、樹脂層には、抵抗調整を目的として導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの導電粉は平均粒径1μm以下のものが好ましい。更に、必要に応じて、複数の導電性樹脂等を併用することができる。
また、樹脂層には、帯電制御を目的として樹脂粒子を含有しても良い。樹脂粒子を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が利用できる。
熱可塑性樹脂の場合、ポリオレフィン系樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂またはその変性品;フッ素樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリカーボネート等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂;アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、樹脂被覆キャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物が挙げられる。芯材の体積平均粒径としては、一般的には10μm以上500μm以下であり、好ましくは30μm以上100μm以下である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<<電子写真用感光体>>
(実施例1)
まず、以下に説明する手順により、Al基体上に、下引き層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体を作製した。
−下引き層の形成−
平均1次粒径が70nmの酸化亜鉛100質量部をテトラヒドラフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、焼き付けを行いシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛顔料を得た。
前記表面処理した酸化亜鉛60質量部とアリザリン0.6質量部と硬化剤ブロック化イソシアネート(スミジュール3173:住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部とブチラール樹脂(エスレックBM−1:積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmΦのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジウラレート0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145:GE東芝シリコーン社製)4.0質量部を添加し、下引き層塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材上に塗布し、170℃40分の乾燥硬化を行い厚さ5μmの下引き層を得た
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部および酢酸n−ブチル100質量部と混合して得られた混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。
この分散液を浸漬塗布法により下引き層の上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
−電荷輸送層の形成−
次に、下記構造式(1)で表される化合物を2質量部、および、下記構造式(2)で表される高分子化合物(粘度平均分子量:39000)3質量部をクロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を得た。
Figure 0004849080
Figure 0004849080
この塗布液を、浸漬塗布法により電荷発生層上に塗布し、110℃で40分間加熱して膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、Al基体上に、下引き層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体(以下、「ノンコート感光体」と称す場合がある)を得た。
−表面層の形成−
ノンコート感光体表面への表面層の形成は、図3に示す構成を有する成膜装置を用いて行った。
まず、ノンコート感光体を、成膜装置の成膜室10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して成膜室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、Heガスと水素ガスとHeで4%に希釈した酸素ガスとを図示にしない混合装置にて混合したガスをガス導入管16を介して、長さ350mmの平板電極15内に約450sccm(Heガス250sccm、水素200sccm、酸素2sccm)導入し、高周波電力供給部19および高周波電源部20により、13.56MHzのラジオ波を出力80Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極15で放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、トリメチルガリウムガスをガス導入管18を介してガスノズル17から成膜室10内に、1.0sccmとなるように導入した。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室10内の反応圧力は30Paであった。
この状態で、ノンコート感光体を100rpmの速度で回転させながら60分間成膜し、膜厚0.5μmの水素を含むGaO膜を形成し電荷輸送層表面に表面層が設けられた有機感光体を得た。なお、成膜に際しては、ノンコート感光体の加熱処理は行わなかった。また、同じ条件にて、Al箔を基体に貼り付けて表面層のみを形成したものも作成した。この時、成膜時の温度をモニターするために、成膜前に予め基体表面に貼り付けておいたサーモテープの色を、成膜後に確認したところ、42℃であった。
−表面層の分析・評価−
サンプル膜の組成をラザフォード・バック・スキャタリングを用いて測定した。ガリウムと酸素との元素組成比はガリウム1.0に対して、酸素は1.2の比であった。酸素は表面層全体に分布しており、表面層中に含まれる水素はハイドロジェン・フォワードスキヤタリング法で測定し全体の18原子%含まれることが分かった。
RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像にはハローパターンのみが見え、膜は非晶質膜であることがわかった。
以上の分析・評価結果から、ノンコート感光体表面に形成された表面層は、非晶質膜で、水素を含んだ酸化ガリウムで、耐水性、撥水性および十分な硬度をもっていることが分った。
さらに、表面層の最表面部の13族元素と酸素との元素組成比を測定した。得られた結果を表1に示す。
−評価−
次に、この表面層を設けた有機感光体の電子写真特性を評価した。まず、上述の表面層形成前のノンコート感光体と、Al箔上に形成した表面層と、表面層を設けた感光体とに対して、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長780nm、出力5mW)を用い、表面を走査しながら40rpmで回転させながら、スコロトロン帯電器によりノンコート感光体が−700Vに負帯電する電流量に設定した状態で、帯電電位及び露光用の光を照射した後の表面の残留電位を測定した。
その結果、Al箔上に形成した表面層の帯電電位は1μm厚に換算すると50V/μmであった。これに対して、表面層付きの感光体の帯電電位(初期帯電電位)は−600Vで少し電位が低かった。残留電位は−130Vであり、Al箔上の表面層の帯電電位と比較すると空間電荷による電位上昇が見られた。また1サイクルから100サイクルで残留電位(サイクル特性)は−40V増加した。ここで「サイクル」とは帯電から次の帯電までをいう。この感光体を一週間後に測定すると残留電位は40V低下し−90Vになっていた。なお、感光体の電位測定にはトレック社のモデル344表面電位計を用い20℃50%RHで測定した
次に、この表面層を設けた感光体を、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar 500に取り付けて、高温高湿環境(28℃ 80%RH)下で、連続20万枚の画像形成試験を実施した。このコピープリンターは帯電器にスコロトロンを用いている。また、トナーの形状係数SF1は130である。
その結果、画像形成の初期(10枚目)および画像形成の終期(20万枚目)のいずれにおいてもノンコート感光体を用いて形成された画像形成の初期(10枚目)より少し低いがほぼ同様の画像濃度が得られ、鮮明で濃度ムラも無く網点部での画像ボケの無い画像で10本/mmの解像度を得ることができた。傷は微小の打痕傷であった。
画像形成の終期(20万枚目)に得られた画像について下記基準に基づき評価した。さらに、画像形成試験終了後の感光体表面の傷を目視により下記基準に基づき評価した。評価結果を表1に示す。
光学干渉法を用いた膜厚測定による膜厚低下量は平均10nmであった。光学干渉法による膜厚低下量の測定は、ライン干渉膜厚計(自社製)を用いて実施した。
以上の結果から、表面層を設けた感光体は、耐久性が向上すると共に、感度や画像ボケのように画質の点では実用上問題ないレベルであることがわかった。
表1中に示す各項目の評価方法およびその評価基準は以下の通りである。
−濃度−
上記画像形成試験において、ノンコート感光体で濃度調整した後に、ベタ黒画像のプリント出力を行い、標準プリント濃度と比較して下記基準に基づき評価した。なお、標準プリント濃度はノンコート感光体を用いて形成された画像形成の初期(10枚目)の画像の濃度とした。さらに、濃度の比較は目視により行った。
○ :同じ
○− :わずかに薄い
△ :やや薄い
X :薄い
−濃度ムラ−
上記画像形成試験において、ノンコート感光体で濃度調整した後に、画像密度30%で300線/インチのハーフトーンパターンを用いて感光体全面画像のプリント出力を行い、全体的な画像濃度の均一性を目視により評価した。
○ :均一
○− :わずかにムラがある
△ :ややムラがある
X :ムラがある
−細線再現性−
上記画像形成試験において、ノンコート感光体で濃度調整した後に、レーザビームの1on,1offの条件でプリント出力を行い、線幅の広がりを目視によりノンコート感光体を用いて形成された画像形成の初期(10枚目)の画像(この画像を標準画像とする)と連続20万枚の画像形成試験後の画像とを比較して評価した。
○ :標準画像と同じ
○− :わずかに広がりがある
△ :ひろがりがある
X :線が分離されていない
−画像ボケ−
連続20万枚の画像形成試験後に、水溶性である放電生成物を除去するため感光体表面の一部を水拭きした。
その後、ハーフトーン画像(画像密度30%)をプリントし、ハーフトン画像中に感光体表面の水拭きした箇所と水拭きしていない箇所とに対応するような濃度差が目視で確認できるか否かにより画像ボケを判断した。濃度差が一見して容易に確認できる場合は画像ボケが発生しているものと判断した。
−表面傷−
光学顕微鏡(キーエンス社のデジタルマイクロスコープモデルVNX)を用いて、長軸の径が5μm以上の微小の傷の単位面積あたりの数を求め、下記基準に基づいて評価した。
A : 10個/mm以下
B : 10〜50個/mm以下
C : 50〜100個/mm以下
(実施例2〜実施例6)
実施例1において、表1に示したように酸素の流量と放電出力を変えた以外は、実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。但し有機感光体の下引き層の厚さを、5,10,20,30,50μmとしたものを使用した。
(実施例7〜実施例10)
実施例4において、放電出力を180Wとして、酸素量を表1のように流量を変えた以外は実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(実施例11〜実施例13)
実施例1において、表1に示したように酸素に替えて、窒素を用い流量と放電出力を変えた以外は、実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(実施例14〜実施例15)
実施例14及び15において、トリメチルガリウム(TMG)に替えて、表1に示すようにトリメチルアルミニウム(TMA)を用い、窒素を用い流量と放電出力を変えた以外は、実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(比較例1,2)
表1に示したように下引き層の厚さを変えた以外は実施例2と同じ条件で同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
比較例1では表面層の帯電電位は低いが空間電荷の発生が多くまた残留電位の変化も少なく、画像濃度が低く、画像ムラが大きく実用に適さない。
また比較例2では残留電位の放置による低下は大きいが下引き層での電荷蓄積が大きく画像濃度が低く、画像ムラが大きく実用に適さない。
(比較例3,4)
実施例7において、表1に示したように酸素の流量を変えた以外は、実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(比較例5,6)
実施例11において、表1に示したように窒素の流量を変えた以外は、実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(比較例7,8)
実施例14において、表1に示したように窒素の流量を変えた以外は、実施例1と同様に成膜をおこない表面層を形成した感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(実施例16)
実施例8の感光体を、富士ゼロックス社製DocuCenter Colar a450に取り付けて、高温高湿環境(28℃ 80%RH)下で、連続20万枚の画像形成試験を行った。このコピープリンターはロール帯電器を用いている。また、ブードクリーニング押圧は10kgf/cmとした。
その結果、画像形成の初期(10枚目)および画像形成の終期(20万枚目)のいずれにおいてもノンコート感光体を用いて形成された画像形成の初期(10枚目)の画像と同様の画像濃度が得られ、鮮明で濃度ムラも無く網点部での画像ボケの無い画像で10本/mmの解像度を得ることができた。
また、ブードクリーニング押圧を4kgf/cmから35kgf/cmで変化させ、ブードクリーニング押圧の違いによるクリーニング不良の有無を目視により評価した。さらに感光体表面の傷の数を数えた。得られた結果を表2に示す。
Figure 0004849080
Figure 0004849080
(比較例9)
比較例9では、下引き層を3μmとし、感光層の厚さを電荷輸送層のみ変化させて22μmとし、全体の厚さを25μmとして実施例1と同じ厚さとしたものを作製し同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
本実施形態の電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。 本実施形態の電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。 成膜装置の一例を示す概略模式図である。 4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。 プロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 導電性基体
2 下引き層
3 感光層
3A 電荷発生層
3B 電荷輸送層
4 表面層
10 成膜室
11 排気口
12 基体回転部
13 基体ホルダー
14 基体
15 平板電極
16 ガス導入部
17 ガスノズル
18 ガス導入部
19 高周波電力導入部
20 高周波電源部

Claims (14)

  1. 導電性基体と、有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層と、有機感光層と、13族元素と酸素とを少なくとも含有し酸素の13族元素に対する元素組成比が0.9以上1.4以下である表面層と、をこの順に備える電子写真用感光体。
  2. 導電性基体と、有機高分子中に導電性フィラーの分散した厚さ5μm以上50μm以下の下引き層と、有機感光層と、13族元素と窒素とを少なくとも含有し窒素の13族元素に対する元素組成比が0.4以上0.8以下である表面層と、をこの順に備える電子写真用感光体。
  3. 前記表面層の最表面部の酸素の13族元素に対する元素組成比が1.4以上1.6以下である請求項1又は2に記載の電子写真用感光体。
  4. 前記表面層が水素をさらに含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真用感光体。
  5. 請求項1又は2に記載の電子写真用感光体と、
    前記電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真用感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    トナーを少なくとも含む現像剤を用いて前記電子写真用感光体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成手段と、
    前記電子写真用感光体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写手段と、
    前記被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置。
  6. 前記トナーの形状係数SF1が、100以上140以下である請求項5に記載の画像形成装置。
  7. 前記現像剤が、樹脂被覆キャリアをさらに含む請求項5又は6に記載の画像形成装置。
  8. 転写後の前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段をさらに有する請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記クリーニング手段が、クリーニングブレードである請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 前記クリーニングブレードの前記電子写真用感光体表面への圧接力が、5gf/cm以上25gf/cm以下である請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 前記クリーニング手段が、前記クリーニングブレードの上流側に配置された静電ブラシをさらに有する請求項9又は10に記載の画像形成装置。
  12. 前記画像形成手段の下流側であって且つ前記転写手段の上流側に配置され、前記トナー画像を形成する際にトナーと共に前記電子写真用感光体表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段をさらに有する請求項5〜請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  13. 前記帯電手段が、接触型帯電器である請求項5〜請求項12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  14. 請求項1又は2に記載の電子写真用感光体と、
    前記電子写真用感光体表面を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真用感光体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、トナーを少なくとも含む現像剤を用いて前記電子写真用感光体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成手段、前記トナー画像を形成する際にトナーと共に前記電子写真用感光体表面へ転移した不正キャリアを磁力によって捕集するキャリア捕集手段、前記電子写真用感光体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写手段、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段及び転写後の前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一種と、を一体に有し、
    画像形成装置本体から脱着可能とされたプロセスカートリッジ。
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