JP4739780B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
しかし、ガンマブチロラクトンを電解質として用いた非水電解質電池は、ジエチルカーボネートを代表とする鎖状カーボネートを電解質として用いた非水電解質電池に比べて、十分な充電保存特性が得られなかった。その原因としては、正負極上でのガンマブチロラクトンの分解等が生じるということが考えられる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、初期放電容量を低下させることなく、高温での充電保存特性を向上させることができる非水電解質電池を提供することを目的としている。
即ち、正極活物質に低温相のコバルト酸リチウムが含有されていれば、高温保存中の電解液(ガンマブチロラクトン)と正極活物質との副反応は、先ず低温相のコバルト酸リチウムとの間で生じるため(即ち、低温相のコバルト酸リチウムとの間で集中して生じるため)、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムとの間で生じるのを抑制できる。したがって、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムの劣化が抑制されるため、充電保存特性の低下が抑制されたものと考えられる。
これらのことから、電池の初期放電容量を低下させることなく、充電保存特性を改善させることができる。
一方、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムは、低温相のコバルト酸リチウムよりも高い熱処理温度で得られるものであり、リチウム金属に対する電位で3.8〜4.3V付近に放電容量を有する。
尚、本発明における低温相のコバルト酸リチウムは、その構造安定性や電気化学的特性を向上させるために、NiやMnなどの元素を適宜添加することが可能である。
このように規制するのは、溶媒の総量に対する上記ガンマブチロラクトンの量が50体積%以上の場合に、ガンマブチロラクトンと正極活物質との副反応が多く生じるため、低温相のコバルト酸リチウムの添加効果が一層発揮されるからである。
本発明における低温相のコバルト酸リチウムは、例えば、非特許文献1(Materials Research Bulletin、28、pp.235〜246、1992)及び非特許文献2(Solid State lonics、62、pp.53〜60、1993)に記載されているようなスピネル型構造に類似した構造を有する。そこで、上記文献に基づく場合の低温相のコバルト酸リチウムの結晶構造を特定すべく、上記構成の如くスピネル型構造又はこれに類似する構造と規定している。
先ず、Li2CO3とCo3O4とを、Li:Coのモル比が1.03:1となるようにして石川式らいかい乳鉢にて混合し、空気雰囲気中にて850℃で20時間熱処理後した後、粉砕することにより、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウム(Li1.03CoO2)を得た。
次に、このコバルト酸リチウム(Li1.03CoO2)とCoCO3を、Li1.03CoO2とCoCO3とのモル比が1:0.03となるように秤量し、混合した。次いで、得られた粉末を400℃で20時間熱処理することで、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムに対して低温相のコバルト酸リチウム(LT)が3質量%含有されたコバルト酸リチウム(LT含有LiCoO2)からなる正極活物質を得た。
所定厚みのリチウム圧延板から直径20mmの円板を打ち抜くことにより、負極を作製した。
エチレンカーボネート(EC)とガンマブチロラクトン(γ−BL)とを体積比30:70の割合で混合した混合溶媒に、溶質としてのテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)を、濃度が1.2モル/リットルとなるように溶解させ、更に、上記混合溶媒100質量部に対し、ビニレンカーボネート2質量部と、界面活性剤としてのリン酸トリオクチルを2質量部の割合で添加することにより、電解液を調製した。
図1に示すように、上記の如く作製した正極(作用極)2と、負極(対極)1との間に、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ3を挟み込んだ。次に、試験セルの電池缶4の上蓋4bに、正極の集電体2aを接触させると共に、上記負極1を電池缶4の底部に接触させた。これらを電池缶4内に収容し、上記上蓋4bと底部4aとを絶縁パッキン5にて電気的に絶縁させ、本発明に係る非水電解質電池を作製した。
(実施例1)
実施例1としては、前記発明を実施するための最良の形態で示した非水電解質電池を用いた。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A1と称する。
層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムに対する低温相のコバルト酸リチウム(LT)の割合が4質量%となるように正極活物質を作製すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
具体的には、Li2CO3とCo3O4とを、Li:Coのモル比が1.04:1となるようにしてコバルト酸リチウム(Li1.04CoO2)を作製すると共に、このコバルト酸リチウムとCoCO3を、Li1.04CoO2とCoCO3とのモル比が1:0.04となるようにした以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A2と称する。
正極活物質として、低温相のコバルト酸リチウムを含有していない層状岩塩型構造を有するLiCoO2を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
具体的には、Li2CO3とCo3O4とを、Li:Coのモル比が1:1となるようにして石川式らいかい乳鉢にて混合し、空気雰囲気中にて850℃で20時間熱処理後した後、粉砕することにより、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウム (LiCoO2)を作製し、これを正極活物質として用いる(即ち、この後、このコバルト酸リチウムとCoCO3とを混合して400℃で熱処理するという工程を行なわない)以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Xと称する。
本発明電池A1、A2及び比較電池Xについて、以下の条件で充放電と保存とを行い、保存前放電容量(但し、表1においては、比較電池Xに対する保存前放電容量比で表示している)と、初期充放電効率と、容量復帰率とを測定したので、その結果を表1に示す。
[初期充放電効率測定における充放電条件]
・充電条件
充電電流9.3mAで充電終止電圧4.3Vまで充電した後、充電電流3.1mAで充電終止電圧4.3Vまで充電。充電時の温度は25℃。
・放電条件
放電電流3.1mAで放電終止電圧2.75Vまで放電。放電時の温度は25℃。
そして、上記充放電時に充電容量と放電容量とを測定した。そして、当該放電容量を初期放電容量とした。
[初期充放電効率の算出]
上記初期の充電容量と放電容量とから、下記(1)式にしたがって、初期充放電効率を算出した。
初期充放電効率(%)={(初期放電容量)÷(初期充電容量)}×100…(1)
上記初期の充放電が終了後、上記充放電条件と同様の条件で充放電を2回行い、2回目の放電容量を保存前の放電容量とした。
[充電保存時の充電条件と保存条件]
・充電条件
上記保存前の充放電が終了した後、上記充電条件と同様の条件で充電。
・保存条件
上記充電を行った後、温度60℃で、10日間保存。
上記保存を終了した後、上記保存前の放電容量測定における充放電条件と同様の条件で、放電と充電と再度の放電とを行なう。
そして、再度の放電時に放電容量を測定し、これを保存後の放電容量とした。
上記保存前の放電容量と保存後の再度の放電時における放電容量とから、下記(2)式にしたがって、容量復帰率を算出した。
容量復帰率(%)={(保存後の再度の放電時における放電容量)÷(保存前の放電容量)}×100…(2)
尚、この容量復帰率が大きいほど、充電保存特性が優れることを示す。
これは、正極活物質に低温相のコバルト酸リチウムを含有させることで、先にγ−BLと低温相のコバルト酸リチウムとが副反応を起こすため、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムの劣化を抑制し、充電保存特性の低下を抑制したものと考えられる。
但し、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムに対して低温相のコバルト酸リチウム(LT)の割合が4質量%の本発明電池A2は、その割合が3質量%の本発明電池A1に比べて、初期放電容量と初期充放電効率とが低下していることが認められる。
本参考例では、本発明の効果はγ−BLを含む溶媒を用いた非水電解質電池に特有の効果であることを確認するために行なった。以下、その内容について述べる。
(参考例1)
電解液の溶媒として、ECとγ−BLとの混合溶媒の代わりに、ECとエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(体積比は30:70)を用い、且つ、界面活性剤としてのリン酸トリオクチルを添加しない以外は、本実施例の実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、参考電池Y1と称する。
電解液の溶媒として、ECとγ−BLとの混合溶媒の代わりに、ECとエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(体積比は30:70)を用い、且つ、界面活性剤としてのリン酸トリオクチルを添加しない以外は、本実施例の比較例と同様にして非水電解質電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、参考電池Y2と称する。
参考電池Y1、Y2について充放電と保存とを行い、保存前の放電容量(但し、表2においては、参考電池Y2に対する保存前放電容量比で表示している)と、初期充放電効率と、容量復帰率とを測定したので、その結果を表2に示す。尚、実験条件は、前記本実施例の実験と同様の条件である。
このことから、低温相のコバルト酸リチウムを含有することによる充電保存特性の優位性は、γ−BLを含む電解液を用いた場合にのみ発現するということがわかる。
(1)負極活物質としては、上記金属リチウムに限定するものではなく、非水電解液電池に従来から用いられてきた種々の負極材料、例えば、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−鉛合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−スズ合金などのリチウム合金、黒鉛、コークス、有機物焼成体などの炭素材料、並びにSnO2、SnO、TiO2などの電位が正極活物質に比べて卑な金属酸化物を用いることができる。
尚、C=C不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物の中でも、特に、C=C不飽和結合を有する環状炭酸エステルであることが好ましく、このC=C不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、ビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−エチル−5−メチルビニレンカーボネート、4−エチル−5−プロピルビニレンカーボネート、4−エチル−5−プロピルビニレンカーボネート、4−メチル−5−メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどが例示される。
尚、非水電解液中におけるC=C不飽和化合物を有する環状炭酸エステル化合物の割合は、非水電解質の総量に対して1〜15質量部、より好ましくは2〜10質量部である。これは、C=C不飽和化合物を有する環状炭酸エステル化合物の含有量が少なすぎると充放電特性の改善効果が十分に得られない場合がある一方、含有量が多すぎると負極表面上に形成される被膜が厚くなり過ぎて、負極の反応抵抗が増大する結果、充放電特性が低下するおそれがあるからである。
2 正極
3 セパレータ
Claims (3)
- リチウムの吸蔵,放出が可能な負極と、層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムからなる正極活物質を含有する正極と、溶媒及び溶質を含有する非水電解質とを備え、且つ、上記溶媒にはガンマブチロラクトンが含まれる非水電解質電池において、
前記正極活物質には、低温相のコバルト酸リチウムが含有され、
前記層状岩塩型構造を有するコバルト酸リチウムに対する、前記低温相のコバルト酸リチウムの割合が、0.01〜3質量%に規制されていることを特徴とする非水電解質電池。 - 上記溶媒の総量に対する上記ガンマブチロラクトンの量が50体積%以上に規制される、請求項1記載の非水電解質電池。
- 前記低温相のコバルト酸リチウムが、スピネル型構造又はこれに類似する構造を有する、請求項1又は2記載の非水電解質電池。
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