JP4731756B2 - 斜板式圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板式圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、シリンダブロックの一方の端面に取り付けられクランク室を形成するフロントハウジングと、弁板を介してシリンダブロックの他方の端面に取り付けられ吸入室と吐出室とを形成するシリンダヘッドと、クランク室内で延在しフロントハウジングとシリンダブロックとにより回転可能に支持された駆動軸と、駆動軸に同期して回転するように駆動軸に連結された斜板と、斜板の周縁部を間に挟んで配設され斜板に摺動可能に当接する複数対のシューと、シュー保持部を有し斜板の回転に伴ってシリンダボア内で往復摺動するピストンと、吸入室からシリンダボアへの冷媒ガスの流れを制御する吸入弁と、シリンダボアから吐出室への冷媒ガスの流れを制御する吐出弁とを備える斜板式圧縮機が自動車空調装置等に広く使用されている。
従来の斜板式圧縮機においては、シューは斜板に当接する平面部と、ピストンのシュー保持部に当接する球面部と、両者の接合部に形成された直線的な面取り部とから成る単純な略半球形状を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
単純な略半球形状を有するシューを備える斜板式圧縮機においては、往復動部材の質量が大きく、往復動部材の慣性力が大きい。
可変容量型斜板式圧縮機においては、斜板傾角を減少させるためにクランク室の圧力を増加させる。可変容量型斜板式圧縮機において往復動部材の慣性力が大きいと、当該慣性力により高速回転時に斜板傾角が不要に増大する。従って、往復動部材の慣性力が大きな可変容量型斜板式圧縮機において、高速回転時に吐出容量を減少させる際には、不要に増大した斜板傾角を所望の傾斜角まで減少させるために、クランク室の圧力を過度に増加させる必要がある。クランク室の圧力を過度に増加させる制御は困難なので、高速回転時の容量制御が困難になる。また、往復動部材の慣性力が大きいと、大きな振動が発生する。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高速回転時の容量制御に困難を生じず、また振動の小さな斜板式圧縮機を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、シリンダブロックの一方の端面に取り付けられクランク室を形成するフロントハウジングと、弁板を介してシリンダブロックの他方の端面に取り付けられ吸入室と吐出室とを形成するシリンダヘッドと、クランク室内で延在しフロントハウジングとシリンダブロックとにより回転可能に支持された駆動軸と、駆動軸に同期して回転するように駆動軸に連結された斜板と、斜板の周縁部を間に挟んで配設され斜板に摺動可能に当接する複数対のシューと、シュー保持部を有し斜板の回転に伴ってシリンダボア内で往復摺動するピストンと、吸入室からシリンダボアへの冷媒ガスの流れを制御する吸入弁と、シリンダボアから吐出室への冷媒ガスの流れを制御する吐出弁とを備える斜板式圧縮機であって、シューの斜板に当接する平面部とピストンのシュー保持部に当接する球面部とに凹部が形成されており、球面部の凹部は球面中心部に形成された単一の凹部であり、平面部の凹部は球面部の凹部と同心に形成された環状凹部であり、シューの径方向肉厚分布が略一定であることを特徴とする斜板式圧縮機を提供する。
【0005】
本発明に係る斜板式圧縮機においては、シューの平面部と球面部とに凹部が形成されることにより、シューが軽量化され、往復動部材の慣性力が従来に比べて低減している。従って、容量可変型斜板式圧縮機にあっては、高速回転時に斜板傾角は不要に増大しないので、高速回転時の容量低減制御に困難を生じない。また、容量可変型斜板式圧縮機、固定容量型斜板式圧縮機の何れにおいても、従来に比べて振動が小さい。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、球面部の凹部の半径は球面半径の10乃至30%である。
シューとピストンのシュー保持部との間の適正な接触面積を確保するために、球面部の凹部の半径は球面半径の30%以下とするのが望ましい。シューの軽量化の実効を担保するために、球面部の凹部の半径は球面半径の10%以上とするのが望ましい。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、シューの斜板に当接する平面部とピストンのシュー保持部に当接する球面部との接合部が円弧で面取り加工されている。
シューの斜板に当接する平面部とピストンのシュー保持部に当接する球面部との接合部が直線的に面取り加工されていると、斜板式圧縮機が高速高負荷で断続運転される際の始動時に、高い圧縮反力を受けているシューの面取り加工部のエッジが斜板に食い込み、斜板が損傷する可能性がある。シューの斜板に当接する平面部とピストンのシュー保持部に当接する球面部との接合部が円弧で面取り加工されていれば、斜板式圧縮機が高速高負荷で断続運転される際の始動時に、シューは斜板に食い込まない。円弧の半径を、球面半径の5%以上とすれば、面取り部を介してシューの平面部と斜板との間に十分な潤滑油が取り込まれる。円弧の半径を、球面半径の15%以下とすれば、十分な広さのシュー平面部が残り、シューと斜板との当接部の面圧が適正範囲に維持され、当該当接部の磨耗が抑制される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例に係る斜板式圧縮機を説明する。
図1に示すように、斜板式圧縮機100は、複数のシリンダボア1が形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の一方の端面に取り付けられシリンダブロック2と協働してクランク室3を形成するフロントハウジング4と、弁板5を介してシリンダブロック2の他方の端面に取り付けられ、吸入室6と吐出室7とを形成するシリンダヘッド8とを備えている。吸入室6は吸入ポートに連通し、吐出室7は吐出ポート9に連通している。
【0009】
斜板式圧縮機100は更に、クランク室3内でシリンダボア1の延在方向に平行に延在しフロントハウジング4とシリンダブロック2とにより回転可能に支持された駆動軸10を備えている。駆動軸10の一端はフロントハウジング4を貫通してフロントハウジング4外へ延びている。フロントハウジング4には、電磁クラッチ11が取り付けられている。
【0010】
クランク室3内に配設された斜板12がヒンジ機構13を介して駆動軸10に、相対回転不能に且つ傾角変動可能に取り付けられている。
斜板12の周縁部に、斜板12を挟んで一対のスライディングシュー14が摺動可能に当接している。複数の一対のスライディングシュー14が、周方向に互いに間隔を隔てて配設されている。各一対のスライディングシュー14は、それぞれピストン15のシュー保持部により保持されている。ピストン15はシリンダボア1に摺動可能に挿通されている。
【0011】
クランク室3と吸入室6との間に連通路16が配設され、連通路16の途上に容量制御弁17が配設されている。
【0012】
図2に示すように、斜板12に当接するシュー14の平面部14aに環状凹部14cが形成され、ピストン15のシュー保持部に当接するシュー14の球面部14bの頂部に凹部14dが形成されている。凹部14dの半径r′は球面部14bの球面半径Rの10乃至30%に設定されている。
図2に示すように、斜板12に当接するシュー14の平面部14aと、ピストン15のシュー保持部に当接するシュー14の球面部14bとの接合部が、球面部14bの球面半径Rの5乃至15%の半径rの円弧で面取り加工されている。
【0013】
斜板式圧縮機100においては、電磁クラッチ11を介して、車載エンジン等の図示しない外部駆動源により、駆動軸10が回転駆動される。駆動軸10の回転に伴って斜板12が回転する。斜板12の回転に伴ってスライディングシュー14が斜板12の周縁上を摺動しつつ駆動軸10の延在方向に往復運動し、スライディングシュー14を保持するピストン15が、シリンダボア1内をシリンダボア1の延在方向に往復摺動する。
【0014】
ピストン15の往復摺動に伴って、吸入ポートから吸入室6へ流入した冷媒ガスが、弁板5に形成された吸入口と吸入弁とを介してシリンダボア1へ吸引され、シリンダボア1内で圧縮され、弁板5に形成された吐出孔と吐出弁とを介して吐出室7へ吐出し、吐出ポート9を通って圧縮機外へ流出する。圧縮機外へ流出した冷媒ガスは、車載空調装置等の冷却回路を流れた後、斜板式圧縮機100へ還流する。
【0015】
ピストン15とシリンダボア1との摺接部から漏出するブローバイガスによりクランク室3内の圧力が上昇し、容量制御弁17が有するベローズの封入圧力よりも高くなると、ベローズが収縮して、クランク室3が連通路16と容量制御弁17とを介して吸入室6に連通し、クランク室3内の冷媒ガスが吸入室6へ流出し、クランク室3内の圧力が低下する。クランク室3内の圧力がベローズの封入圧力よりも低くなると、ベローズが伸長して、クランク室3と吸入室6との連通が遮断され、ブローバイガスによりクランク室3内の圧力が上昇する。クランク室3内の圧力が上昇すると斜板12の駆動軸10に対する傾角が減少しピストンストロークが減少して斜板式圧縮機100の吐出容量が減少し、クランク室3内の圧力が低下すると斜板12の駆動軸10に対する傾角が増加しピストンストロークが増加して斜板式圧縮機100の吐出容量が増加する。上記説明から分かるように、容量制御弁17がクランク室3内の圧力を制御することにより、斜板12の駆動軸10に対する傾角が制御され、ピストンストロークが制御されて、斜板式圧縮機100の吐出容量が制御される。
【0016】
斜板式圧縮機100においては、シュー14の平面部14aに凹部14cが形成され、球面部14bに凹部14dが形成されることにより、シュー14が軽量化され、シュー14とピストン15とを含む往復動部材の慣性力が低減している。従って、斜板式圧縮機100にあっては、高速回転時に斜板12の傾角は不要に増大しないので、高速回転時の容量低減制御に困難を生じない。また、斜板式圧縮機100においては、往復動部材の慣性力が小さいので振動が小さい。
【0017】
斜板式圧縮機100においては、シューの球面部14bに形成する凹部14dの半径r′をシューの球面部14bの球面半径Rの30%以下としているので、シュー14とピストン15のシュー保持部との間の適正な接触面積が確保され、保持部での焼付きの発生が抑制されている。他方、シューの球面部14bに形成する凹部14dの半径r′をシューの球面部14bの球面半径Rの10%以上とすることにより、シュー14の軽量化の実効が担保されている。
【0018】
斜板式圧縮機100が高速高負荷で運転されている時に、自動車空調装置の断続使用等により、斜板式圧縮機100が断続運転される場合がある。シュー14の斜板12に当接する平面部14aとピストン15のシュー保持部に当接する球面部14bとの接合部が直線的に面取り加工されていると、斜板式圧縮機100が高速高負荷で断続運転される際の始動時に、高い圧縮反力を受けているシューの面取り加工部のエッジが斜板12に食い込み、斜板12が損傷する可能性がある。斜板式圧縮機100においては、斜板12に当接するシュー14の平面部14aと、ピストン15のシュー保持部に当接するシュー14の球面部14bとの接合部が円弧で面取り加工されているので、斜板式圧縮機100が高速高負荷で断続運転される際の始動時に、シュー14は斜板12に食い込まない。
【0019】
面取り部の円弧の半径rを、球面部14bの球面半径Rの5%以上としているので、円弧状の面取り部を介してシューの平面部14aと斜板12との間に十分な潤滑油が取り込まれる。面取り部の円弧の半径rを、球面部14bの球面半径Rの15%以下としているので、十分な広さのシュー平面部14aが残り、シュー14と斜板12との当接部の面圧が適正範囲に維持され、当該当接部の磨耗が抑制される。
【0020】
本発明は固定容量斜板式圧縮機にも適用可能である。シューの平面部14aと球面部14bとに凹部14c、14dを形成して、シュー14を軽量化し、斜板12の回転に伴って往復運動する部材の慣性力を低減させることにより、振動が低減する。斜板12に当接するシュー14の平面部14aと、ピストン15のシュー保持部に当接するシュー14の球面部14bとの接合部を円弧で面取り加工することにより、斜板式圧縮機が高速高負荷で断続運転される際の始動時に、シュー14が斜板12に食い込むのを防止することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明に係る斜板式圧縮機においては、シューの平面部と球面部とに凹部が形成されることにより、シューが軽量化され、往復動部材の慣性力が従来に比べて 低減している。従って、容量可変型斜板式圧縮機にあっては、高速回転時に斜板傾角は不要に増大しないので、高速回転時の容量低減制御に困難を生じない。また、容量可変型斜板式圧縮機、固定容量型斜板式圧縮機の何れにおいても、従来に比べて振動が小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機が備えるシューの断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダボア
2 シリンダブロック
3 クランク室
4 フロントハウジング
5 弁板
6 吸入室
7 吐出室
8 シリンダヘッド
12 斜板
13 ヒンジ機構
14 シュー
15 ピストン
16 連通路
17 容量制御弁
Claims (3)
- 複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、シリンダブロックの一方の端面に取り付けられクランク室を形成するフロントハウジングと、弁板を介してシリンダブロックの他方の端面に取り付けられ吸入室と吐出室とを形成するシリンダヘッドと、クランク室内で延在しフロントハウジングとシリンダブロックとにより回転可能に支持された駆動軸と、駆動軸に同期して回転するように駆動軸に連結された斜板と、斜板の周縁部を間に挟んで配設され斜板に摺動可能に当接する複数対のシューと、シュー保持部を有し斜板の回転に伴ってシリンダボア内で往復摺動するピストンと、吸入室からシリンダボアへの冷媒ガスの流れを制御する吸入弁と、シリンダボアから吐出室への冷媒ガスの流れを制御する吐出弁とを備える斜板式圧縮機であって、シューの斜板に当接する平面部とピストンのシュー保持部に当接する球面部とに凹部が形成されており、球面部の凹部は球面中心部に形成された単一の凹部であり、平面部の凹部は球面部の凹部と同心に形成された環状凹部であり、シューの径方向肉厚分布が略一定であることを特徴とする斜板式圧縮機。
- 球面部の凹部の半径は球面半径の10乃至30%であることを特徴とする請求項1に記載の斜板式圧縮機。
- シューの斜板に当接する平面部とピストンのシュー保持部に当接する球面部との接合部が、球面半径の5乃至15%の半径の円弧で面取り加工されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の斜板式圧縮機。
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