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JP4730796B2 - 誘電体セラミック原料粉末の製造方法および誘電体セラミック組成物 - Google Patents

誘電体セラミック原料粉末の製造方法および誘電体セラミック組成物 Download PDF

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JP4730796B2
JP4730796B2 JP11725097A JP11725097A JP4730796B2 JP 4730796 B2 JP4730796 B2 JP 4730796B2 JP 11725097 A JP11725097 A JP 11725097A JP 11725097 A JP11725097 A JP 11725097A JP 4730796 B2 JP4730796 B2 JP 4730796B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘電体セラミック組成物の製造方法および誘電体セラミック組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、平坦な誘電率温度特性を持つ積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層を形成する誘電体セラミック組成物としては、BaTiO3を主成分とし、これにBi23−TiO2、Bi23−SnO2、Bi23−ZrO2などのビスマス化合物と希土類酸化物とを副成分として添加したものが広く知られている。
【0003】
一方、上記の組成の誘電体セラミック組成物とは別に、BaTiO3を主成分とし、これにNb25、希土類酸化物、及びCr、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属酸化物を副成分として添加した誘電体セラミック組成物を用いても平坦な誘電率温度特性が得られることが報告されている。
【0004】
これらの誘電体セラミック組成物を用いた積層セラミックコンデンサの容量温度特性は、JIS規格のB特性、すなわち−25℃から+85℃の温度範囲で、+20℃における静電容量を基準としたときの容量変化率が±10%以内、あるいはEIA規格のX7R特性、すなわち−55℃から+125℃の温度範囲で、+25℃における静電容量を基準としたときの容量変化率が±15%以内であることを満足するものであった。
【0005】
これらの誘電体セラミック組成物の原料粉末としては、高純度のBaTiO3を原料粉末の主成分として用い、それに残り全ての添加成分を加えて混合したものをそのまま原料粉末として使用するか、あるいはその混合物を一旦熱処理したものを原料粉末として使用していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、JIS規格のB特性及びEIA規格のX7R特性など容量温度特性の平坦な積層セラミックコンデンサに用いられる誘電体セラミック組成物(以下、これらを総称してB特性材と呼ぶ)の微細構造を分析電子顕微鏡(以下、AEMと呼ぶ)で観察すると、いわゆるコア・シェル構造と呼ばれる微細構造を呈していることが知られている。
【0007】
従来の方法で作製されたB特性材は、図5のようにコア部1とシェル部2に明確な境界3(以下、コア・シェル境界3とする)が見られる。このような構造を持つ結晶粒子の粒界から結晶粒子中心にかけて(コア・シェル境界3からコア部1に至るまで)の添加成分の濃度分布をAEMに付属しているエネルギ−分散型X線分光器(以下、EDXと呼ぶ)で調べると、図6に示されるように、コア部1には添加成分がほとんど固溶しておらず、ほぼ純粋なBaTiO3からなっていること、一方、シェル部2には高濃度で添加成分が固溶していることがわかる。このことは言い換えると、コア・シェル境界3において、添加成分の濃度に大きな差が生じていることを示している。
【0008】
このような場合、B特性材のコンデンサの容量温度特性は図7のように、+100℃付近で容量が落ち込むように変化しており、容量の安定性からみて不十分である場合がある。
【0009】
また、純粋なBaTiO3における誘電率の直流電圧依存性(以下、DCバイアス特性と呼ぶ)は大きいため、上記のような構造を呈する誘電体セラミック組成物を用いた場合のB特性材のコンデンサのDCバイアス特性は一般に悪い。例えば、定格電圧50VでMIL規格のBX特性、すなわち定格電圧印加時の容量温度特性が、−55℃から+125℃の温度範囲で、+25℃における静電容量を基準としたときの容量変化率が+15%から−25%の範囲内にあることを満足するような積層セラミックコンデンサを作製する場合には、誘電率が約1800程度のとき誘電体セラミック層は25μm以上に厚くする必要があり、コンデンサの小型化に対する障害となっていた。
【0010】
さらに、従来の方法で作製された誘電体セラミック組成物は、添加成分の固溶が不十分な場合が多く、焼成後の組織において異相が生じたり、特に積層セラミックコンデンサとした場合、主成分のBaTiO3中への固溶が十分に進まず粒界に取り残された添加成分が内部電極と反応し、内部電極が切れ切れになったり、さらにはデラミネ−ションが生じることもあって問題となっていた。
【0011】
それ故に、本発明の主たる目的は、従来のB特性材に比べて特に容量温度特性の安定性またはDCバイアス特性に優れ、さらに添加成分の固溶が十分進められるために上述のような構造的な欠陥のない、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製する上で有用な誘電体セラミック原料粉末の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の主たる目的は、上記のような特性を満足する誘電体セラミック組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような目的に鑑みてなされたものである。本願第1の発明の誘電体セラミック原料粉末の製造方法は、(1)誘電体セラミック原料粉末の主成分と添加成分の一部とを混合する工程と、(2)前記混合物を熱処理することにより、前記主成分と前記添加成分の一部とを反応させる工程と、(3)前記添加成分の残部を混合する工程と、を備える誘電体セラミック原料粉末の製造方法であって、前記(1)の主成分がBaTiO3であり、かつ、前記(1)の添加成分の一部がBi23およびTiO2 のみからなることを特徴とする。
【0014】
上記製造方法を用いて作製された誘電体セラミック組成物は、その微細構造において、従来のようなコア・シェル境界での添加成分濃度の大きな変化を持たず、結晶粒界から結晶粒子中心に至るまで連続的な濃度分布を持つ。
【0015】
これは、従来のコア・シェル構造の形成が、まず添加物間で準安定な中間生成物を生成する反応が生じ、それから生成した中間生成物とBaTiO3との反応が起こるという経路で進むため、BaTiO3中への添加物の固溶が進みにくく、添加物はBaTiO3の結晶粒界近傍に局在するのに対して、本願第1の発明の製造方法を用いて作製された誘電体セラミック組成物においては、固溶を阻害する中間生成物を生成しないように添加物をBi 2 3 およびTiO 2 選択して、予めBi 2 3 およびTiO 2 だけをBaTiO3と反応させるため、添加物のBaTiO3中への拡散が進み、従って、後に加える固溶を抑える添加物の影響を受けにくく、焼成時にも予め反応させたBiがさらにBaTiO3中へ固溶する。その結果、コア部、シェル部双方の相変態が分散して広い温度範囲で連続して起こり、その重ね合わせの効果により+100℃付近のTCの落ち込みが解消される。
【0020】
【発明の実施の形態】
誘電体セラミック原料粉末の主成分の組成は必ずしも限定されるものではない。代表的なものとしては、BaTiO3、SrTIO3、CaTiO3などがある。
【0021】
添加成分の一部を予め添加して主成分と混合するときの添加成分の添加量は特に限定されるものではなく、所望の特性を満足するように調整すればよい。
【0022】
添加成分の一部とは、添加成分の組成の全種類のうちの一部の種類を意味するものである。
【0024】
コア・シェル境界からコア部に至るまで実質的な濃度勾配を有するとは、コア・シェル境界部での添加成分濃度の大きな変化を持たず、結晶粒界から結晶粒子中心に至るまで添加物が連続的な濃度分布を持つことを意味するものである。よって、一定の濃度勾配でなくても構わない。
【0025】
次に、本発明に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
はじめに誘電体セラミック原料粉末の作製手順について述べる。
出発原料として、主成分であるBaTiO3と、添加成分の一部であるBi23、TiO2を用意し、これらの出発原料を97.8BaTiO3−2.2Bi4Ti312(モル%)に換算した組成比となるように秤量し、純水を加えてボ−ルミルで16時間湿式混合粉砕した後、蒸発乾燥して混合粉末を得た。
【0027】
得られた混合粉末を匣に入れて、自然雰囲気中で1000℃、2時間仮焼した後、200メッシュの篩を通過するように粗粉砕して、Bi4Ti312による変性BaTiO3(以下、変性BTとする)を得た。なお、この作業は必要に応じて添加するBi23、TiO2をいくつかに分けて上記の作業を複数回繰り返して行ってもよい。
【0028】
なお、本実施例では、焼成温度を積層セラミックコンデンサの場合で、Ag/Pd=70/30(重量%)の内部電極が使用可能な1140℃以下にする焼結助剤(低温焼結用)として、組成が8BaO−6SrO−6CaO−30Li2O−50SiO2(モル%)の組成比で表される酸化物ガラスを用いた。
【0029】
上記焼結助剤の作製手順を述べる。出発原料として、工業用原料であるBaCO3、SrCO3、CaCO3、Li2O、及びSiO2を用意し、これらの出発原料を上記の組成比となるように秤量し、純水を加えてボ−ルミルで16時間湿式混合粉砕した後、蒸発乾燥して混合粉末を得た。
【0030】
得られた混合粉末をアルミナ製のるつぼに入れて1300℃の温度で1時間放置し、その後急冷してガラス化した。これを200メッシュの篩を通過するように粗粉砕したものを焼結助剤とした。
【0031】
以上のようにして準備した上記変性BaTiO3および上記焼結助剤と、温度特性を整え、絶縁抵抗を高めるために添加成分の残部である以下のZnO、Nb25、Nd23、MnO2、NiO、TiO2を、次の組成式、96.00変性BT−0.45ZnO−0.80Nb25−0.85Nd23−0.15MnO2−0.05NiO−1.00TiO2−0.70酸化物ガラス(焼結助剤)のような組成比(重量%)となるように秤量し、純水を加えてボ−ルミルで8時間湿式混合粉砕した後、蒸発乾燥したものを乾式解砕して誘電体セラミック原料粉末とした。なお、添加成分の残部としてはTiO2を必ずしも添加しなくてもよい。
【0032】
また、比較例として、焼結助剤以外の全添加成分を本実施例と同じ組成比となるようにBaTiO3に対して同時に添加したものを、同じ粉砕混合条件、仮焼条件、解砕条件で処理した誘電体セラミック原料粉末も作製した。
【0033】
これらにポリビニルブチラ−ル系の有機バインダ−と、可塑剤及び分散剤と、トルエン及びエチルアルコ−ルなどの有機溶剤とを加え、さらに比較例については実施例と同じ組成比となるように焼結助剤を加えてボ−ルミルで16時間湿式混合した後、ドクタ−ブレ−ド法によりシ−ト成形を行った。得られたグリ−ンシ−トの厚みは26μmであった。これに内部電極パタ−ンをAg/Pd=70/30(重量%)のペ−ストを用いてスクリーン印刷した後、それらを6層積み重ねて、積層セラミックコンデンサの外層部となるダミ−シ−トと共に、60℃、2000kg/cm2で熱圧着し、その圧着体から長さ5.5mm、幅4.5mm、厚さ1.2mmの成形体を切り出した。
【0034】
この成形体を匣内に置いたZrO2の上に並べて焼成炉内に入れた。これを350℃まで緩やかに昇温し、その温度で3時間保持して有機バインダ−成分を除去した後、1130℃まで昇温し、その温度で3時間保持して焼結体を得た。本実施例および比較例ともに焼結体の密度は5.78g/cm3であり、焼結後の密度を同じ条件で作製した円板状の焼結体と比較すれば十分焼結していることが確認された。なお、焼結後の誘電体セラミック層の厚みは20μmであった。
【0035】
得られた焼結体の両端に外部電極としてAgを焼き付け、測定試料(積層セラミックコンデンサ)とした。本実施例および比較例のそれぞれの積層セラミックコンデンサについて、その室温での誘電率(εr)、誘電損失(tanδ)、容量温度特性(TC)および直流電圧印加時の容量温度特性(バイアスTC)を測定した。なお、このときεr、tanδ、TCおよびバイアスTCは1kHz、1Vrmsの条件下で測定した。測定個数はεr、tanδについては20個、TCについては4個である。また、TCは−55℃から150℃の温度範囲について測定し、25℃での静電容量を基準として容量変化を求めた。バイアスTCは50Vの直流電圧を印加しながら容量温度特性を測定し、DCバイアスを印加せずに測定した通常の容量温度特性での25℃の静電容量の値を基準として容量変化率を求めた。
【0036】
また、積層セラミックコンデンサと同時に焼成した円板状の焼結体を機械研磨後、イオンミリングにより薄膜に加工し、TEM観察を行った。加えてTEMに付属するEDXにより結晶粒内におけるBi濃度分布を調べた。
【0037】
さらに、本実施例および比較例のそれぞれ36個の積層セラミックコンデンサについて信頼性試験を行った。試験条件は150℃で定格の2倍の直流電圧(2WV)を印加したもの、150℃で定格の4倍の直流電圧(4WV)を印加したもの、および175℃で定格の2倍の直流電圧(2WV)を印加したものの3通りで行った。試験結果の一覧を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004730796
【0039】
この試験結果からわかるように、本実施例の積層セラミックコンデンサは比較例に比べて非常に平坦な温度特性を示し、A特性及びY6E特性を満足する。
【0040】
また直流電圧印加時の容量温度特性(バイアスTC)においても定格電圧50Vとした場合にBX特性を満足し、比較例より大きく改善されていることがわかる。
【0041】
さらに信頼性試験を見ると、比較例においては、試験条件が過酷になるにつれて不良発生数が増大しているのに対し、本実施例は試験条件の如何にかかわらず、試験実施後2000時間経過しても不良が発生しておらず、高い信頼性を有することがわかる。
【0042】
さらに、従来のB特性材とは異なる微細構造及びその製造方法にあることを確認するため、本実施例における誘電体セラミックの微細構造をTEM観察したものを図1に示す。これを見ると、従来のB特性材の微細構造(図5)において見られたような明確なコア・シェル境界を示していないことがわかる。この原因を調べるため結晶粒内のBiの濃度分布を調べたものを図2に示す。従来のB特性材における濃度勾配の形状(図6)に比較して緩やかであり、コア部、すなわち強誘電体に見られるドメイン構造を示す領域の中心部に至るまでBiが固溶していることがわかる。そのために明確なコア・シェル境界を示さない。
【0043】
従って、このような微細構造を持つ誘電体セラミック組成物を用いた積層セラミックコンデンサにおいては、容量温度特性及びDCバイアス特性が改善され、本実施例に示した電気特性が発現する。ちなみに本実施例で得られた容量温度特性(TC)、及び直流電圧印加時の容量温度特性(バイアスTC)の測定結果を図3、及び図4に示す。
【0044】
【発明の効果】
本発明の誘電体セラミック原料粉末の製造方法を用いれば、JIS規格のA特性、すなわち−25℃から+85℃の温度範囲で、+20℃における静電容量を基準としたときの容量変化率が±5%以内、あるいはEIA規格のY6E特性、すなわち−30℃から105℃の温度範囲で、+25℃における静電容量を基準としたときの容量変化率が±4.7%を満足するようになり、従来のB特性セラミックコンデンサに比べて優れた容量温度特性の安定性を示すセラミックコンデンサが得られる。
【0045】
また、添加成分がコア部にまで固溶していることで、コア部のBaTiO3のDCバイアス特性が改善され、誘電率が約1800程度で、定格50VのBX特性を満足する積層セラミックコンデンサを作製する場合、誘電体厚みは従来のものに比べて薄くすることが可能であり、積層セラミックコンデンサの小型化に大きく寄与できる。
【0046】
さらに、添加成分の固溶が均一にかつ十分に進むことで、特に積層セラミックコンデンサとした場合、内部電極と添加成分の反応といった構造的な欠陥の要因を無くし、従来のものに比べて信頼性に優れるものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体セラミック組成物のTEM顕微鏡による微細構造を示す図。
【図2】本発明の誘電体セラミック組成物の結晶粒内のBiの濃度分布を示す図。
【図3】本発明の誘電体セラミック組成物の容量温度特性を示す図。
【図4】本発明の誘電体セラミック組成物の直流電圧印加時の容量温度特性を示す図。
【図5】従来の誘電体セラミック組成物のTEM顕微鏡による微細構造を示す図。
【図6】従来の誘電体セラミック組成物の結晶粒内のBiの濃度分布を示す図。
【図7】従来の誘電体セラミック組成物の容量温度特性を示す図。

Claims (1)

  1. (1)誘電体セラミック原料粉末の主成分と添加成分の一部とを混合する工程と、(2)前記混合物を熱処理することにより、前記主成分と前記添加成分の一部とを反応させる工程と、(3)前記添加成分の残部を混合する工程と、を備える誘電体セラミック原料粉末の製造方法であって、
    前記(1)の主成分がBaTiO3であり、かつ、前記(1)の添加成分の一部がBi23およびTiO2 のみからなることを特徴とする、誘電体セラミック原料粉末の製造方法。
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