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JP4723429B2 - 自動制動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、貨物や乗客を輸送するための大型車(トラック、バス)に利用する。
自動車の電子制御化は、日進月歩で進歩し、これまでは運転者の判断のみに頼っていた事象についても車載したコンピュータによって行われるようになった。
その一つの例として、先行車と自車との間の距離(車間距離)をレーダによって監視し、車間距離が異常に接近した場合には、自動的に適切な制動制御を行い、万が一の衝突時に、その被害を小さく抑えるという自動制動制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−31967号公報
上述した自動制動制御装置は、乗用車においては既に実用化されつつあるが、同様の機能を、貨物や乗客を輸送するための大型車(トラック、バス)に利用しようとしたときに、解決しなければならない問題がある。
すなわち、大型車は乗用車と比較して質量がきわめて大きく、また、運転者自身の安全の他に、乗客や貨物の安全を確保しなければならず、乗用車の自動制動制御で行われているような単純な急制動制御だけでは所期の目的を達成することは困難であり、乗用車の場合と比較してより高度な自動制動制御を行う必要がある。しかし、そのような手段が確立されていないため、トラックやバスにおける自動制動制御装置は未だ実用化されていない。
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、トラックやバスにおける自動制動制御を実現することができる自動制動制御装置を提供することを目的とする。
本発明の自動制動制御装置は、段階的な制動制御を行うことにより、トラックやバスなどの大型車両においても車両の安定性を保ちつつ、衝突の際の衝撃を和らげることができる装置である。
すなわち、本発明は、自車の進行方向に有る対象物との距離を含むセンサ出力に基づき運転操作がなくとも自動的に制動制御を行う制御手段を備えた自動制動制御装置である。
ここで、本発明の特徴とするところは、前記車両には、操作入力に従って所定の自車速を維持する速度維持手段が設けられ、前記制御手段は、前記センサ出力により得られた前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出される前記対象物と自車とが所定距離以下となるまでに要する時間の予測値が設定値を下回ったときに自動的に、時系列的に複数段階にわたり制動力または制動減速度を徐々に増大させる段階的な制動制御を行う段階的制動制御手段を備え、前記段階的制動制御手段による段階的な制動制御が行われているときには、少なくとも最終段階において前記速度維持手段による自車速の維持を無効にする手段を備えたところにある。
前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出される前記対象物と自車とが所定距離以下となるまでに要する時間の予測値とは、例えば、対象物と自車とが衝突するまでに要する時間の予測値(以下では、TTC(Time To Collision)と呼ぶ)である。
前記速度維持手段は、一般的に、オートクルーズと呼ばれる機能であり、運転者の操作入力に従って、設定された一定の速度を、ブレーキ操作またはアクセル操作が行われるまで、自動的に維持する機能である。
このようなオートクルーズ機能と自動制動制御機能とは相反する機能である。すなわち、一方は一定の速度を維持しようとする機能であり、他方は速度を減じようとする機能である。本発明では、自動制動制御機能をオートクルーズ機能に優先させ、自動制動制御が行われているときには、オートクルーズ機能を無効とする。
ただし、自動制動制御の初期の段階では、未だハンドル操作によって衝突を未然に回避できる可能性が残っており、このような初期の段階では、オートクルーズ機能を何としても無効にする必要性は低い。よって、本発明では、段階的制動制御の少なくとも最終段階においてオートクルーズ機能を無効とするが、それ以前の段階においてはオートクルーズ機能を有効のままにすることも許容する。
また、自車速が所定値未満であり、操舵角あるいはヨーレイトのとる値が所定範囲外であるときには、前記段階的制動制御手段の起動を禁止する手段を備えることが望ましい。
すなわち、本発明の自動制動制御装置が行う段階的制動制御は、自車速が例えば60km/h以上であり、車線変更中や急カーブ走行中などのような大きなハンドル操作を行っていない状態での使用を想定しているため、それ以外の走行状態では、段階的制動制御の起動を制限することができる。
例えば、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満であれば、車両の有する運動エネルギは少ないため、従来から乗用車に適用されているような単純な急制動制御を行っても支障はないので、段階的制動制御の起動を制限する。また、例えば、制動制御開始以前の操舵角が+30度以上あるいは−30度以下であれば、これは車線変更中や急カーブ走行中であるので、段階的制動制御の適用事象外であり起動を制限する。この場合には、操舵角の代わりにヨーレイトを用いてもよい。
また、前記速度維持手段による自車速の維持を無効にする際に、その旨を運転者に報知する手段を備えることができる。これによれば、運転者が非常事態の発生を認識し、これを回避するための措置をとることができる。
あるいは、前記速度維持手段による自車速の維持を無効にするのに先立って、予めその旨を運転者に報知する手段を備えることができる。これによれば、運転者に非常事態の発生を初期の段階で認識させることができるため、運転者は、これを回避するための措置を早めにとることができる。よって、非常事態の回避の成功確率を高くすることができる。
本発明によれば、トラックやバスにおける自動制動制御を実現することができる。特に、オートクルーズ機能との適切な競合を図ることができる。
(第一実施例)
本発明第一実施例の自動制動制御装置を図1ないし図7を参照して説明する。図1は第一実施例の制御系統構成図である。図2は第一実施例の制動制御ECU(Electric Control Unit)の制御手順を示すフローチャートである。図3は制動制御ECUが有する空積時の制動パターンを示す図である。図4は制動制御ECUが有する半積時の制動パターンを示す図である。図5は制動制御ECUが有する定積時の制動パターンを示す図である。図6は制動制御ECUが有する本格制動パターンを示す図である。図7は第一実施例における自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を説明するためのタイムチャートである。
図1に示すように、制動制御ECU4、ゲートウェイECU5、メータECU6、エンジンECU8、軸重計9、EBS(Electric Breaking System)_ECU10、オートクルーズECU14はVehicleCAN(J1939)7を介してそれぞれ接続される。
また、ステアリングセンサ2およびヨーレイトセンサ3および車速センサ13は、ゲートウェイECU5を介してVehicleCAN(J1939)7にそれぞれ接続され、これらのセンサ情報は、制動制御ECU4に取り込まれる。また、ブレーキ制御は、EBS_ECU10がブレーキアクチュエータ11を駆動することによって行われる。なお、EBS_ECU10に対するブレーキ指示は、運転席(図外)のブレーキ操作および制動制御ECU4によって行われる。運転者によるブレーキ操作の情報を含むブレーキ情報もEBS_ECU10が出力して制動制御ECU4に取り込まれる。エンジンECU8は、エンジン12の燃料噴射量制御その他のエンジン制御を行う。なお、エンジンECU8に対する噴射量制御指示は運転席のアクセル操作およびオートクルーズECU14によって行われる。また、制動制御ECU4により出力された警報表示や音がメータECU6により運転席の表示部(図示省略)に表示される。ステアリングセンサ2以外の操舵に関連する制御系統は本発明とは直接関係が無いので図示を省略した。
オートクルーズECU14に対するオートクルーズ機能ON/OFF指示は運転席からの操作入力によって行われる。また、オートクルーズ機能OFF指示は、制動制御ECU4によっても行われる。オートクルーズECU14は、オートクルーズ機能ON指示が入力されると、車速センサ13からの車速情報を受け取り、自車速が設定された値となるようにエンジンECU8に対して燃料の噴射量制御指示を行う。
本実施例は、図1に示すように、自車の進行方向に有る先行車あるいは落下物などの対象物との距離を測定するミリ波レーダ1、操舵角を検出するためのステアリングセンサ2、ヨーレイトを検出するためのヨーレイトセンサ3、自車速を検出するための車速センサ13などのセンサ出力に基づき運転操作がなくとも自動的に制動制御を行う制動制御ECU4を備えた自動制動制御装置である。
制動制御ECU4は、ミリ波レーダ1および車速センサ13からのセンサ出力により得られた前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出されるTTCが設定値を下回ったときに自動的に、時系列的に複数段階にわたり制動力を徐々に増大させる段階的な制動制御を行う。この段階的制動制御は、図3に示すように、時系列的に三段階にわたり制動力を徐々に増大させる。
図3(b)の例では、まず、「警報」と記された第一段階で、0.1G程度の制動をTTC2.4秒〜1.6秒までかける。この段階では、未だ、いわゆる急制動がかかった状態にはなっておらず、ストップランプが点灯することにより後続車に対し、これから急制動が行われることを知らせることができる。次に、「拡大領域制動」と記された第二段階で、0.3G程度の制動をTTC1.6秒〜0.8秒までかける。最後に、「本格制動」と記された第三段階で、最大の制動(0.5G程度)をTTC0.8秒〜0秒までかける。
車両には、図1に示すように、運転席からの操作入力に従って所定の自車速を維持するオートクルーズECU14が設けられている。制動制御ECU4は、段階的な制動制御を行っているときには、例えば、図3に示す「拡大領域制動」および「本格制動」の各段階において、オートクルーズECU14による自車速の維持を無効にするためにオートクルーズ機能OFF指示をオートクルーズECU14に対して送出する。
本実施例において、図3に示す「警報」と記された第一段階ではオートクルーズ機能OFF指示を送出しない理由は、この段階では、TTCに多少の余裕があり、未だ、ハンドル操作によって衝突を回避できる可能性が残っており、何としてもオートクルーズ機能をOFF状態にする必要性は低いためである。さらに、「警報」の段階は、後続車に対する警告が主な役割であるため、オートクルーズ機能がON状態のままであることにより、オートクルーズ機能がOFF状態である場合と比較して自車速の減速がより緩やかになり、かえって好都合の場合もある。
よって、第一実施例では「警報」の段階では、オートクルーズ機能をOFF状態とせず、「拡大領域制動」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とする。もちろん、「警報」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とする実施例も採り得るものであり、むしろ、こちらの方が一般的である。こちらは容易に類推できるので、ここではあえて「拡大領域制動」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とする実施例を示したが、「警報」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とする実施例を排除するものではない。なお、他の実施例として、「本格制動」の段階になってからオートクルーズ機能OFF指示を送出する、という実施例も考えられる。
また、運転者が上記に示した制動力以上の強い制動操作を行った場合には、より強い制動力が優先して働くようにする。
なお、以下の説明では、先行車を対象として説明するが、本実施例の自動制動制御装置は、道路上の落下物などに対しても有効である。
また、図3、図4、図5に示すように、制動制御ECU4は、積載貨物や乗客の重量に応じて制動パターンを変更する制動パターン選択部40を含む。変更する方法としては、予め「空積時」、「半積時」、「定積時」における制御パターンを制動制御ECU4の制動パターン記憶部41に複数記憶しておき、制動パターン選択部40は、重量に応じてこれらの制動パターンから適合(または近似)する制動パターンを選択することにより実現できる。積載貨物や乗客の重量情報は、図1に示す軸重計9によって得られ、制動制御ECU4に取り込まれる。
図3における2.4秒、1.6秒、0.8秒という表記はTTCである。TTCは、
車間距離/(自車速−先行車速)
により計算される。図3(b)の例では、TTCが2.4秒の時点から「警報」段階が開始される。また、TTCが1.6秒の時点から「拡大領域制動」段階が開始される。また、TTCが0.8秒の時点から「本格制動」段階が開始される。
また、自車速が60km/h未満であり、操舵角が+30度以上あるいは−30度以下であるときには、制動制御ECU4は、段階的制動制御の起動を禁止する。なお、操舵角に代えてヨーレイトを用いることもできる。
すなわち、本実施例の自動制動制御装置が行う段階的制動制御は、制動制御開始以前の自車速が60km/h以上であり、車線変更中や急カーブ走行中などのような大きなハンドル操作を行っていない状態での使用を想定しているため、それ以外の走行状態では、段階的制動制御の起動を制限することができる。
また、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満であれば、車両の有する運動エネルギは少ないため、従来から乗用車に適用されているような単純な急制動制御を行っても支障はなく、段階的制動制御を実施する有用性は低いので、段階的制動制御の起動を制限する。または、制動制御開始以前の操舵角が+30度以上あるいは−30度以下であれば、これは車線変更中や急カーブ走行中であるので、段階的制動制御の適用事象外であり段階的制動制御の起動を制限する。この場合には、操舵角の代わりにヨーレイトを用いてもよい。
本実施例では、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満であり15km/h(自動制動制御(本格制動制御のみ)の有用性が認められる最低速度)以上である場合には、段階的制動制御は行わないが、図6に示すように、図3(b)、図4(b)、図5(b)に示す本格制動制御のみは実施することとする。このような本格制動制御のみを実施する場合は、乗用車に用いられている従来の自動制動制御と同等の制動制御を適用することができる。なお、このような従来と同等の自動制動制御を適用する場合には車線変更中や急カーブ走行中であるか否かを判断するステップは必要ない。
次に、本実施例の自動制動制御装置の動作を図2のフローチャートを参照しながら説明する。図2は空積時(図3)の制動パターンを例にとって説明を行うが、半積時(図4)または定積時(図5)においても図2のフローチャートの手順に準じる。図2に示すように、制動制御ECU4は、先行車との車間距離および先行車の車速をミリ波レーダ1により測定して監視する。また、自車速を車速センサ13により測定して監視する。さらに、軸重計9により積載貨物や乗客の重量を測定して監視する。制動制御ECU4の制動パターン選択部40は、当該重量の測定結果に基づき制動パターン(図3、図4、図5)のいずれかを予め選択する(S1)。以下の説明は、図3の制動パターンが選択された例である。
制動制御ECU4は、車間距離、自車速、先行車の車速によりTTCを計算する(S2)。計算方法は、
車間距離/(自車速−先行車の車速)
である。制動制御開始以前の自車速が60km/h以上であり(S3)、制動制御開始以前の操舵角が+30度以下であり−30度以上であり(S4)、TTCが図3(a)に示す(1)の領域にあれば(S5)、制動制御ECU4は、「警報」制動制御を実行する(S8)。「警報」の段階では、制動制御ECU4がEBS_ECU10に対して0.1Gの制動を指示し、EBS_ECU10はブレーキアクチュエータ11を駆動することによって、0.1Gの制動を行うが、このときにオートクルーズ機能がON状態であれば、オートクルーズECU14は、ブレーキ駆動に反発して自車速を一定に保つように、エンジンECU8に対して燃料の噴射量制御指示(噴射量増加指示)を行う。
前述したように、オートクルーズ機能がON状態のままであることにより、オートクルーズ機能がOFF状態である場合と比較して自車速の減速がより緩やかになるため、後続車に対する警告を行う意味では「警報」の段階では、オートクルーズ機能がON状態のままである方がかえって好都合である場合もあり、オートクルーズ機能を何としてもOFF状態とする必要性は低い。よって、第一実施例では「警報」の段階では、オートクルーズ機能をOFF状態とせず、「拡大領域制動」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とする。もちろん、「警報」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とする実施例も採り得るものであり、これを排除するものではない。
TTCが図3(a)に示す(2)の領域にあれば(S6)、制動制御ECU4は、「拡大領域制動」制御を実行すると共にオートクルーズ機能OFF指示をオートクルーズECU14に対して送出する(S9)。これにより、オートクルーズECU14は、オートクルーズ機能をOFF状態とする。よって、制動制御ECU4がEBS_ECU10に対して行った0.3Gの制動指示に対し、オートクルーズECU14は反発することなく、「警報」の段階と比較して大きな減速が開始される。
TTCが図3(a)に示す(3)の領域にあれば(S7)、制動制御ECU4は、「本格制動」制御を実行すると共に引き続きオートクルーズ機能OFF指示をオートクルーズECU14に対して送出する(S10)。
また、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満15km/h以上であり(S3、S11)、TTCが図3(c)に示す(4)の領域にあれば(S12)、制動制御ECU4は、運転者に対して先行車との相対距離が近いことを報知する(S13)。報知は、警報表示やブザー音により行う。さらに、TTCが図3(c)に示す(5)の領域にあれば(S14)、「本格制動」制御を実行すると共にオートクルーズ機能OFF指示をオートクルーズECU14に対して送出する(S10)。
なお、ステアリングセンサ2からの操舵角の代わりにヨーレイトセンサ3からのヨーレイトを利用することもできる。あるいは、操舵角とヨーレイトを併用してもよい。
図2に示す制御手順が行われた場合の自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を図7のタイムチャートに示す。図7に示すように、オートクルーズ機能は運転席からの操作入力(ON操作またはOFF操作)に従ってON/OFFされる。ON操作時には維持すべき速度の設定も行われる。自動制動制御が開始されたときには、運転席からの操作入力の如何に関わらず「拡大領域制動」の段階でオートクルーズ機能はOFFとなる。
ここで、図3〜図4について説明する。図3〜図4における直線c、f、iは、操舵回避限界直線と呼ばれるものである。また、図3〜図4における曲線B、D、Fは、制動回避限界曲線と呼ばれるものである。
すなわち、操舵回避限界直線とは、障害物までの一つの相対距離および障害物との一つの相対速度の関係において、所定のTTC以内にハンドル操作によって衝突を回避可能な限界を示す直線である。また、制動回避限界曲線とは、障害物までの一つの相対距離および障害物との一つの相対速度の関係において、所定のTTC以内に制動操作によって衝突を回避可能な限界を示す曲線である。
図3〜図4において、これらの直線または曲線の下側の領域の内、双方が共に関わる領域では、もはやハンドル操作によってもブレーキ操作によっても衝突を回避することはできない。
例えば、図3の空積時の例では、直線cは、TTCが0.8秒に設定されている。本実施例では、操舵回避限界直線cの上側に、TTCが1.6秒である場合の直線bを設け、TTCが2.4秒である場合の直線aを設ける。また、TTCが0.8秒に設定された制動回避限界曲線Bの上側にTTCが1.6秒に設定された曲線Aを設ける。
当初の車両の状態は、図3の黒点Gに示す障害物との相対距離および相対速度を有している。制動制御開始以前の自車速が60km/h以上であるときに、次第に相対距離が短くなり、直線aの位置に来たときには、警報モードとなる(領域(1))。警報モードでは、0.1G程度の制動をTTC2.4秒〜1.6秒までかける(さらに、後述する第二実施例では、オートクルーズ機能OFF指示およびその旨を運転者に報知、また、後述する第三実施例では、オートクルーズ機能OFF予告を運転者に報知)。この期間は、ストップランプを点灯させ、後続車にブレーキをかけることを知らせる意義がある。さらに相対速度が下がり、直線bの位置に来たときには、拡大領域制動モードとなる(領域(2))。拡大領域制動モードでは、0.3G程度の制動をTTC1.6秒〜0.8秒までかけると共にオートクルーズ機能OFF指示を行う(後述する第二および第三実施例でも同様、さらに、第三実施例ではオートクルーズ機能OFFを運転者に報知)。直線cの位置に来たときには、本格制動モードとなる(領域(3))。本格制動モードでは、最大の制動(0.5G程度)をTTC0.8秒〜0秒までかけると共にオートクルーズ機能OFF指示を行う(後述する第二および第三実施例でも同様)。図2のステップS2の計算によれば、このときに衝突が起こることになる。しかし、ステップS2の計算結果よりも実際のTTCは長くなる。
すなわち、本発明が対象とする自動制動制御装置におけるTTCの計算では、精密な距離測定や複雑な演算処理を極力省き、汎用の簡易な距離測定装置(例えば、ミリ波レーダ)や演算装置を用いることを前提としている。このような配慮は、車両の製造コストあるいは維持費を低く抑えるために有用である。
よって、厳密には、対象物である先行車と自車とは、制動(減速)によって等加速度運動を行っているのであるから、TTC計算も等加速度運動に基づき計算しなければならないところを、単に等速運動を行っているものとしてTTCを計算することにより、精密な距離測定や複雑な演算処理を省いている。
また、このような等速運動とみなした計算を行うことにより、計算されたTTCの値は実際のTTCの値よりも小さくなるが、これは安全側への誤差であるから容認しても何ら支障はない。
さらに、制動制御開始以前の自車速が15km/h以上であり60km/h未満であるときには、次第に相対距離が短くなり、直線bの位置に来たときには、報知モードとなる(領域(4))。報知モードでは、運転者に対して警報表示やブザー音によって、障害物との相対距離が短くなっていることを知らせる。直線cの位置に来たときには、図7に示すように本格制動モードとなる(領域(5))。本格制動モードでは、最大の制動(0.5G程度)をTTC0.8秒〜0秒までかけると共にオートクルーズ機能OFF指示を行う(後述する第二および第三実施例でも同様)。
また、図4は半積時の例であり、図5は定積時の例であるが、等しい制動力同士で比べれば、積載貨物や乗客の重量が増すにつれて制動距離も長くなるため、操舵回避限界曲線および制動回避限界曲線も図の上方にそれぞれ移動する。これにより、領域(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の面積は、積載貨物や乗客の重量に応じて大きくなる。
図3における直線a〜cは、図4における直線d〜f、図5における直線g〜iに対応し、図3における曲線A、Bは、図4における曲線C、D、図5における曲線E、Fに対応し、図3における黒点Gは、図4における黒点H、図5における黒点Iに対応する。
(第二実施例)
第二実施例を図8および図9を参照して説明する。制御系統構成は図1と同じである。図8は第二実施例の制動制御ECUの制御手順を示すフローチャートである。図9は第二実施例における自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を説明するためのタイムチャートである。
第二実施例では、オートクルーズECU14による自車速の維持を無効にする際に、制動制御ECU4は、その旨を運転者に報知する。すなわち、図8のステップS28に示すように、制動制御ECU4は、「警報」制動制御を実行すると共にオートクルーズ機能OFFをオートクルーズECU14に指示し、オートクルーズ機能がOFF状態となったことをメータECU6を介して運転者に報知する。他の動作は、第一実施例と同じである。
第二実施例では、自動制動制御が始まったことを運転者に報知し、運転者自身の操縦による衝突回避を期待する。このために、自動制動制御の初期段階である「警報」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態にすると共に運転者に自動制動制御が始まったことを報知する。
また、図2に示した第一実施例のフローチャートのように、「拡大領域制動」の段階からオートクルーズ機能をOFF状態とし、このときに、運転者にその旨を報知してもよいが、報知の目的は、運転者自身の操縦による衝突回避であるから報知は早めの段階から行うことが望ましい。
(第三実施例)
第三実施例を図10および図11を参照して説明する。制御系統構成は図1と同じである。図10は第三実施例の制動制御ECUの制御手順を示すフローチャートである。図11は第三実施例における自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を説明するためのタイムチャートである。
第三実施例では、オートクルーズECU14による自車速の維持を無効にするのに先立って、制動制御ECU4は、予めその旨を運転者に報知する。すなわち、図10のステップS48に示すように、制動制御ECU4は、「警報」制動制御を実行すると共に、オートクルーズ機能がOFF状態となることの予告をメータECU6を介して運転者に報知する。また、ステップS49に示すように、制動制御ECU4は、「拡大領域制動」制御を実行すると共に、オートクルーズECU14に対してオートクルーズ機能OFFを指示し、オートクルーズ機能がOFF状態になったことをメータECU6を介して運転者に報知する。他の動作は、第一実施例と同じである。
第三実施例では、第二実施例と同様に、自動制動制御が始まったことを運転者に報知し、運転者自身の操縦による衝突回避を期待する。このために、自動制動制御の初期段階である「警報」の段階から運転者に自動制動制御が始まったことを報知する。しかし、第二実施例とは異なり、「警報」の段階ではオートクルーズ機能をOFF状態とはせず、第一実施例と同様に「拡大領域制動」の段階になってからオートクルーズ機能をOFF状態にすると共にその旨を運転者に報知する。
第一実施例で説明したように、「警報」の段階は、後続車に対する警告が主な役割であるため、オートクルーズ機能がON状態のままであることにより、オートクルーズ機能がOFF状態である場合と比較して自車速の減速がより緩やかになるため、かえって好都合である場合もある。
本発明によれば、トラックやバスにおける自動制動制御を実現することができ、交通安全に寄与することができる。特に、特に、オートクルーズ機能との適切な競合を図ることができる。
第一実施例の制御系統構成図。 第一実施例の制動制御ECUの制御手順を示すフローチャート。 制動制御ECUが有する空積時の制動パターンを示す図。 制動制御ECUが有する半積時の制動パターンを示す図。 制動制御ECUが有する定積時の制動パターンを示す図。 制動制御ECUが有する本格制動パターンを示す図。 第一実施例の自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を説明するためのタイムチャート。 第二実施例の制動制御ECUの制御手順を示すフローチャート。 第二実施例の自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を説明するためのタイムチャート。 第三実施例の制動制御ECUの制御手順を示すフローチャート。 第三実施例の自動制動制御機能とオートクルーズ機能との競合状況を説明するためのタイムチャート。
符号の説明
1 ミリ波レーダ
2 ステアリングセンサ
3 ヨーレイトセンサ
4 制動制御ECU
5 ゲートウェイECU
6 メータECU
7 VehicleCAN(J1939)
8 エンジンECU
9 軸重計
10 EBS_ECU
11 ブレーキアクチュエータ
12 エンジン
13 車速センサ
14 オートクルーズECU
40 制動パターン選択部
41 制動パターン記憶部

Claims (4)

  1. 自車の進行方向に有る対象物との距離を含むセンサ出力に基づき運転操作がなくとも自動的に制動制御を行う制御手段を備え、
    前記車両には、操作入力に従って所定の自車速を維持する速度維持手段が設けられた、
    前記制御手段は、前記センサ出力により得られた前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき前記対象物と自車とが衝突するまでに要する予測時間を演算し、その予測時間が設定時間を下回ったときに自動的に段階的な制動制御を行う段階的制動制御手段を備え、
    この段階的制動制御手段は、第一制動段階、第二制動段階、第三制動段階と時系列的に3段階に制動力または制動減速度を大きくする制動制御手段であり
    前記予測時間が制動操作によって衝突を回避可能な限界の時間以前のあらかじめ設定された所定時間を下回ると第一制動段階の制動を制動操作によって衝突を回避可能な限界の時間まで継続して与え、
    前記予測時間が前記制動操作によって衝突を回避可能な限界の時間を下回るとハンドル操作によって衝突を回避できる限界の時間までは第二制動段階の制動を継続して与え、
    前記予測時間がハンドル操作によって衝突を回避できる限界の時間を下回ると第三制動段階の制動を継続して与える自動制動制御装置であって、
    前記段階的制動制御手段は、少なくとも前記予測時間が前記制動操作によって衝突を回避可能な限界の時間を下回ると前記速度維持手段による自車速の維持を無効にする手段を備えた
    ことを特徴とする自動制動制御装置。
  2. 自車速が所定値未満、または、操舵角あるいはヨーレイトのとる値が所定範囲外であるときには、前記段階的制動制御手段の起動を禁止する手段を備えた請求項1に記載の自動制動制御装置。
  3. 前記速度維持手段による自車速の維持を無効にする際に、その旨を運転者に報知する手段を備えた請求項1記載の自動制動制御装置。
  4. 前記速度維持手段による自車速の維持を無効にするに先立って、予めその旨を運転者に報知する手段を備えた請求項1記載の自動制動制御装置。
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