JP4722263B2 - パウチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗剤、化粧品、食料品等に用いられるパウチに関し、剛性、低温ヒートシール性、水蒸気バリア性、保香性、衛生性に優れ、高いヒートシール強度、突刺強度を有し、特にスタンディングパウチ、レトルトパウチ等に好適なパウチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液体洗剤、シャンプー、リンス、食用油、調味料などは注出口の付いた容器に入れられて使用されている。最近では、省資源化のため、容器の再利用を目的として、スタンディングパウチ(例えば、底ガゼットの自立袋)等の補充用の内容物が入れられた詰め替え製品が別売りされている。
パウチの別の形態としては、レトルト食品用のレトルトパウチ、吸飲ゼリーなどに用いられる吸飲用スパウト付きパウチなども知られている。
【0003】
このようなパウチには、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等からなる単層フィルム、あるいは高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレン、あるいは線状低密度ポリエチレンとの積層フィルム等が用いられている。これらのパウチはヒートシールが容易であり、かつ高いヒートシール強度が得られ、袋形状が得やすいことが要求されている。また、昨今ではこのような単層フィルム、積層フィルム等から得られるパウチには、さらに高性能性と低コスト化が望まれ、かつ内容物の品質を保つために水蒸気バリア性、保香性に優れること;パウチから低分子量成分などの移行によって味覚や品質が変化したり、パウチから臭気が内容物に移行したりしないように衛生性に優れること;製品輸送時の振動によってピンホールが生じないために十分な突刺強度を有すること;などが要求されている。また、スタンディングパウチには、自立に必要な十分な剛性(腰)を有することがさらに要求される。さらに、最近では、省資源化、環境保護等の観点から容器や包装材には、リサイクル性や回収が容易になされることが要望され、上記諸性能とリサイクル性や回収性を満足することが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンの積層フィルムからなるパウチは、低温ヒートシール性に劣り、十分なシール強度を得るためには高温でヒートシールする必要があった。そのため、高速充填性や高速成形性に劣り、かつパウチに臭気などが発生しやすく、内容物の品質を悪化させる原因にもなっており、上記要求性能を同時に満足するものではない。
【0005】
よって、本発明の目的は、剛性、低温ヒートシール性、水蒸気バリア性、保香性、衛生性、耐熱性、耐ピンホール性に優れ、高いヒートシール強度を有するパウチを提供することにあり、さらには、同種の樹脂材料で構成されるためリサイクル性に優れるパウチを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のパウチは、密度0.93g/cm 3 以上の中・高密度ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、曲げ弾性率が2500kgf/cm2 以上であるポリオレフィン系樹脂材料(i)からなる第I層と、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下に製造された下記(a)〜(d)の要件を満足する(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層と、第I層に接着されたバリア性材料(iii)からなるバリア層(III)とが積層された積層体を、第II層が内側となるように袋状に成形してなることを特徴とする。
(a)密度が0.86〜0.94g/cm3 、
(b)メルトフローレートが0.01〜50g/10分、
(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5、
(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0007】
また、本発明のパウチは、第II層同士をヒートシール圧力1kg/cm2 、ヒートシール時間1秒間の条件でヒートシールしたときのヒートシール強度が3kg/15mmとなるようなヒートシール温度が、85〜125℃の範囲であることが望ましい。
【0008】
また、積層体の厚さは10μm〜0.5mmであり、かつ第I層および第II層の厚さはそれぞれ3μm〜0.4mmの範囲であることが望ましい。
また、第I層または第II層が、パウチをリサイクルすることで得られる樹脂材料(i)および樹脂材料(ii)のブレンド樹脂で形成されている、もしくは、該ブレンド樹脂からなるリサイクル樹脂層(IV)が、さらに積層体に設けられていることが望ましい。
【0009】
また、前記(A)線状低密度ポリエチレンは、さらに下記(e)および(f)の要件を満足する(A1)線状低密度ポリエチレンであることが望ましい。
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(重量%)、密度dおよびメルトフローレート(MFR)が下記(式2)および(式3)の関係を満足すること
(式2)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式3)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
【0010】
また、前記(A)線状低密度ポリエチレンは、さらに下記(g)および(h)の要件を満足する(A2)線状低密度ポリエチレンであることが望ましい。
(g)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつT75−T25および密度dが、下記(式4)の関係を満足すること
(式4) T75−T25≧−300×d+285
(h)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−17
また、前記(A2)線状低密度ポリエチレンは、さらに下記(i)の要件を満足することが望ましい。
(i)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
【0011】
また、前記樹脂材料(ii)に配合された添加剤が実質的に被接触物に移行しない添加剤である、もしくは前記樹脂材料(ii)に添加剤が配合されていないことが望ましい。
また、前記樹脂材料(ii)のハロゲン濃度は、10ppm以下であることが望ましい。
また、パウチの形状は、ガゼット袋、四方シール袋、合掌貼りの三方シール袋、インフレーション法による筒状フィルムの上下をシールした袋から選択された1種であることが好ましい。
また、パウチは、食品用包材、日用品包材および医療用包材のいずれか1つであることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
第I層を形成する樹脂材料(i)は、曲げ弾性率が2500kgf/cm2 以上であるポリオレフィン系樹脂材料であることが必要である。該曲げ弾性率は、好ましくは3500kgf/cm2 以上、より好ましくは4500kgf/cm2 以上であることが望ましい。該曲げ弾性率が2500kgf/cm2 未満では、パウチの剛性(腰)が低下し、自立性がなくなり、自動充填性能が低下することになる。ここで、樹脂材料(i)の曲げ弾性率は、JIS K 7203に準拠して測定される。
【0013】
第I層を形成する曲げ弾性率2500kgf/cm2 以上のポリオレフィン系樹脂材料(i)とは、密度が0.93g/cm3 以上の中・高密度ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、必要に応じて他のポリエチレン系樹脂を配合したものである。
中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンとしては、密度が0.93g/cm3 以上のものであれば各種のものを利用することができる。具体的には、エチレンのみからなるホモポリマー、エチレンと他のモノマー(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン)とからなる共重合体、あるいはエチレンと2種以上のモノマーからなる多元共重合体などを例示することができる。
【0014】
中・高密度ポリエチレンの密度が0.93g/cm3 未満では、得られるパウチの腰の強さ(剛性)、水蒸気バリア性、保香性、防湿性、耐熱性などが損なわれる。
また、中・高密度ポリエチレンのMFR(190℃)は好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.05〜30g/分、さらに好ましくは0.1〜10g/分の範囲である。MFR(190℃)が0.01g/10分未満では加工性に問題を生じ、50g/10分を超えるとパウチの強度が低下する傾向にある。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体などが挙げられる。
また、ポリプロピレン系樹脂のMFR(JIS K 6758準拠)は好ましくは0.1〜50g/10分、より好ましくは0.1〜20g/分の範囲である。MFR0.1g/10分未満では加工性に問題を生じ、50g/10分を超えると積層体の強度が低下する傾向にある。
【0016】
第I層を形成する樹脂材料(i)中の中・高密度ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン系樹脂の配合割合は、50〜100重量%であり、好ましくは70〜100重量%である。これらの割合が50重量%未満では、積層体の剛性(腰)、水蒸気バリア性、保香性が低下する。
【0017】
樹脂材料(i)に配合できる他のポリエチレン系樹脂としては、例えば、チーグラー型触媒、メタロセン系触媒等によって得られる線状低密度ポリエチレン、高圧ラジカル法エチレン系重合体、後述の特定の(A)線状低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0018】
チーグラー型触媒によって得られる線状低密度ポリエチレンのメルトフローレート(以下MFRと記す)は、一般に0.01〜50g/10分であり、好ましくは0.5〜30g/10分、より好ましくは0.5〜10g/分である。MFRが0.01g/10分未満では、流動性(インフレーションによる積層体の成形性)などの低下が見られ、50g/10分を超えると強度等の低下が見られる。
【0019】
高圧ラジカル重合法エチレン系重合体としては、高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体などが挙げられる。
【0020】
上記低密度ポリエチレン(LDPE)のMFRは、0.01〜50g/10分、好ましくは0.05〜30g/分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。また、MFRが20g/10分を超えると積層体の強度が不足するようになる。
また、LDPEの密度は、0.91〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.912〜0.935g/cm3 の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。LDPEのメルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、LDPEの分子量分布Mw/Mnは、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0である。
【0021】
上記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のMFRは、0.01〜50g/10分、好ましくは0.05〜30g/分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分の範囲である。
【0022】
上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体のMFRは0.01〜50g/10分、好ましくは0.05〜30g/10分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分である。
【0023】
第II層を形成する(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)とは、下記の(a)〜(d)の要件を満たす特定の(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とし、必要に応じて他のポリエチレン系樹脂を配合したものである。
【0024】
(A)線状低密度ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとを共重合させることにより得られるエチレン共重合体であって、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが用いられる。(A)線状低密度ポリエチレン中における炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位は、1〜7モル%、好ましくは1〜5モル%、さらに好ましくは2〜3モル%である。炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位が7モル%を超えると、耐衝撃性、耐クリープ性、ヒートシール強度の低下が見られ、1モル%未満では、透明性の低下が見られる。
【0025】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンの(a)密度は、0.86〜0.94g/cm3 、好ましくは、0.89〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.90〜0.93g/cm3 の範囲である。密度が0.86g/cm3 未満では、剛性(腰の強さ)、耐熱性が低下するおそれがある。また、密度が0.94g/cm3 を超えると、耐ピンホール性、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となるおそれがある。
【0026】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンの(b)MFRは、0.01〜50g/10分であり、好ましくは0.05〜30g/10分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分である。MFRが0.01g/10分未満では、流動性(積層体の成形性)の低下が見られ、50g/10分を超えると強度の低下が見られる。
【0027】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンの(c)分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4.5、好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣り、Mw/Mnが4.5を超えると、耐ピンホール性、引裂強度、耐衝撃性等が劣る。
ここで、線状低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0028】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンは、例えば、図1に示すように、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足するものである。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足しない場合には、低温ヒートシール性が劣るものとなる。
【0029】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05重量%となるように加え、135℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン共重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0030】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンは、さらに後述の(e)および(f)の要件を満足する(A1)線状低密度ポリエチレン、または、さらに後述の(g)および(h)の要件を満足する(A2)線状低密度ポリエチレンのいずれかであることが好ましい。
【0031】
本発明における(A1)線状低密度ポリエチレンの(e)25℃におけるODCB可溶分の量X(重量%)と密度dおよびMFRは、下記(式2)および(式3)の関係を満足しており、
(式2)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式3)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足しており、好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足しており、さらに好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足している。
【0032】
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0033】
25℃におけるODCB可溶分は、線状低密度ポリエチレンに含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0034】
また、本発明における(A1)線状低密度ポリエチレンは、(f)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピーク温度は85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
【0035】
ここで、(A1)線状低密度ポリエチレンは、図2に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊な線状低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)である。一方、図3のエチレン共重合体は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークを1個有する線状低密度ポリエチレンであり、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体がこれに該当する。
【0036】
本発明における(A2)線状低密度ポリエチレンは、図1に示すように、(g)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつT75−T25および密度dが、下記(式4)の関係を満足するものである。
(式4) T75−T25≧−300×d+285
T75−T25と密度dが上記(式4)の関係を満足しない場合には、ヒートシール強度と耐熱性が劣ることになる。
また、本発明における(A2)線状低密度ポリエチレンは、(h)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tml≧150×d−17
融点Tm1と密度dが上記(式5)の関係を満足しないと、耐熱性が劣るものとなる。
【0037】
また、(A2)線状低密度ポリエチレンの中でも、さらに下記(i)の要件を満足する線状低密度ポリエチレンが好適である。
(i)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、積層体等の成形加工性が良好なものとなる。
【0038】
ここで、(A2)線状低密度ポリエチレンは、図1に示されるように、TREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン共重合体は上記(式4)を満足せず、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン共重合体とは区別されるものである。
【0039】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンは、前記のパラメーターを満足すれば触媒、製造方法等に特に限定されるものではないが、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンとを(共)重合させて得られる直鎖状のエチレン(共)重合体であることが望ましい。このような直鎖状のエチレン(共)重合体は、分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、ヒートシール性、耐熱ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
【0040】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンの製造は、特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で重合することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-r で表される化合物(式中Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素、R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0041】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-r で表される化合物の式中、Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。pおよびqはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0042】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4 化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等があげられる。
【0043】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0044】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0045】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0046】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0047】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4-L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0048】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、ブチルシクロヘプタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエンとインデン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエンとインデン、プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエンシクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシラン、メチルシクロペンタジエントリメチルシランなどが挙げられる。
【0049】
本発明においては、a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物および/またはホウ素化合物が使用される。
Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物の具体例としては、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより得られる、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。この変性有機アルミニウムオキシ化合物としては、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有するものが挙げられる。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0050】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0051】
ホウ素化合物としては、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0052】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0053】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0054】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンの製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2 G、好ましくは常圧〜20kg/cm2 Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2 G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
【0055】
本発明における(A)線状低密度ポリエチレンは、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンを含まない触媒を使用して製造することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない(ND:2ppm以下)ものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーの線状低密度ポリエチレンを用いることにより、従来のような酸中和剤を使用する必要がなくなり、化学的安定性、衛生性が優れ、特に食品用包装材料等の分野において好適に活用されるパウチを提供することができる。
【0056】
第II層を形成する樹脂材料(ii)中の(A)線状低密度ポリエチレンの配合割合は、50〜100重量%であり、好ましくは70〜100重量%である。線状低密度ポリエチレンの割合が50重量%未満では積層体の、耐熱性、耐突刺強度、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、機械的強度が低下する。
【0057】
樹脂材料(ii)に配合できる他のポリエチレン系重合体としては、チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他、公知の方法によるエチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、および高圧ラジカル重合法によるエチレン系(共)重合体などが挙げられる。
【0058】
上記チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他の公知の方法によるエチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体とは、密度0.94〜0.97g/cm3 の高密度ポリエチレン、密度が0.91〜0.94g/cm3 の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度が0.86〜0.91g/cm3 の超低密度ポリエチレン(VLDPE)、密度が0.86〜0.91g/cm3 のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムを挙げることができる。
【0059】
上記チーグラー型触媒によるLLDPEとは、密度が0.91〜0.94g/cm3 、好ましくは0.91〜0.93g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
【0060】
また、上記チーグラー型触媒による超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.86〜0.91g/cm3 、好ましくは0.88〜0.905g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、LLDPEとエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)の中間の性状を示すポリエチレンである。
【0061】
また、上記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとは、密度が0.86〜0.91g/cm3 未満のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、該エチレン・プロピレン系ゴムとしては、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。
【0062】
本発明における樹脂材料(i)については公知の添加剤、充填材を配合してもよい。
また、樹脂材料(ii)については、ハロゲンを含まない触媒を用いて製造された(A)線状低密度ポリエチレンを用い、かつ酸化防止剤、中和剤等の添加剤を配合しないことにより、クリーンな成形体を提供することができる。
【0063】
また、本発明においては、前記樹脂材料(ii)に酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、有機系あるいは無機系顔料、造核剤、架橋剤などの公知の添加剤が配合されてない、もしくは、前記樹脂材料(ii)に添加剤が配合されたとしても、配合された添加剤が実質的に内容物等の被接触物に移行しない添加剤であることが望ましい。
本発明においては、外部に溶出してしまうような添加剤、例えば、内容物が液体の場合は、該液体に溶出されてしまうような添加剤、臭気が移行してしまう添加剤、あるいは時間とともにフイルム表面に偏在するような添加剤が、樹脂材料(ii)に含まれていないことにより、臭いの少なく、衛生的で、クリーンな積層体、容器を提供することが可能となる。
【0064】
本発明における、実質的に被接触物に移行しない添加剤とは、有機あるいは無機フィラーのような充填剤であって、被接触物を変質させず、かつ本発明の樹脂シートの特性を本質的に阻害しない範囲で添加が可能な添加剤である。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カリオン、アルミナ、水酸化アルミニウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ、ガラスフレーク、ゼオライト、珪藻土、パーライト、パーミキュライト、シラスバルーン、ガラスマイクロフェアー、フライアッシュ、ガラスビーズなどが挙げられる。
有機フィラーとしては、ポリメチルメタクリレート架橋物、ポリエチレンテレフタレート架橋物、フェノール樹脂その他の合成樹脂の粉末および微小ビーズ、木粉、パルプ粉等が挙げられる。
これら充填材は、積層体の剛性を向上させる目的で配合可能である。
【0065】
本発明における積層体は、前記ポリオレフィン系樹脂材料(i)からなる第I層と、前記(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層とを有するものである。
【0066】
なお、本発明における積層体は、パウチに成形した際にパウチの最内層に相当する層を第II層で形成することが、各層の特性(第I層:剛性、水蒸気バリア性、保香性、第II層:低温ヒートシール性、ヒートシール強度、突刺強度、衛生性)を生かすために肝要である。
第I層と第II層との間に、その他の層を介在させてもよい。その他の層としては、第I層と第II層とをより強固に結合するための接着性樹脂層などが挙げられる。
【0067】
本発明における積層体は、第II層同士をヒートシール温度120℃、ヒートシール圧力1kg/cm2 、ヒートシール時間1秒間の条件でヒートシールしたときのヒートシール強度(以下、120℃ヒートシール強度と記す)が、2.5〜6kg/15mmの範囲であることが望ましい。
【0068】
ここで、120℃ヒートシール強度は、具体的には以下のようにして測定される。
ヒートシール試験機(シールバー幅1mm)を用い、パウチの第II層どうしを、シール温度120℃、シール圧力1kg/cm2 で1秒間ヒートシールし、室温23℃かつ湿度50%で24時間状態調節後、ヒートシール部を15mm幅で短冊状に切り出し、引張試験機にて300mm/minでヒートシール部を剥離し、その最大荷重を測定する。
【0069】
本発明における積層体は、第II層同士をヒートシール圧力1kg/cm2 、ヒートシール時間1秒間の条件でヒートシールしたときのヒートシール強度が3kg/15mmとなるようなヒートシール温度(以下、3kg荷重ヒートシール温度と記す)が、85〜125℃の範囲であることが望ましい。3kg荷重ヒートシール温度が85℃未満では耐熱性が劣り、125℃を超えると高速充填性が劣るものとなる。
【0070】
ここで、3kg荷重ヒートシール温度は、具体的には以下のようにして測定される。
ヒートシール試験機(シールバー幅1mm)を用い、パウチの第II層どうしを、ヒートシール温度80℃、ヒートシール圧力1kg/cm2 で1秒間ヒートシールし、室温23℃かつ湿度50%で24時間状態調節後、ヒートシール部を15mm幅で短冊状に切り出し、引張試験機にて300mm/minでヒートシール部を剥離し、その最大荷重(ヒートシール強度)を測定する。
上記の測定をヒートシール温度を5℃ずつ上げながら繰り返し行い、85,90,95,100,105,110,115,120,125および130℃におけるヒートシール強度を測定する。ヒートシール温度に対してヒートシール強度をプロットしてヒートシール温度−ヒートシール強度曲線を作成し、この曲線からヒートシール強度が3kg/15mmにおけるヒートシール温度を読み取る。
【0071】
本発明における積層体の厚さは、目的、用途等により異なるが、一般的には10μm〜0.5mmの範囲であり、好ましくは30μm〜0.3mm、より好ましくは50μm〜0.2mmの範囲で選択されることが好ましい。
また、本発明の積層体の第I層および第II層の各層の厚さは、3μm〜0.4mmであるが、好ましくは、それぞれ10μm〜0.2mm/10μm〜02mmの範囲で選択されることが好ましい。また、各層の厚み比(第I層:第II層)は、1:10〜10:1であることが好ましい。
【0072】
本発明における積層体は、第I層に接着するバリア層(III)を有していてもよい。バリア層(III)を設けることによって水蒸気バリア性、保香性がさらに向上する。また、バリア層(III)は、パウチの補強、保護層、印刷層、遮光層としての役割を担うこともでき、さらには、ヒートシール時にパウチの形状を保持するための耐熱層としての役割も担っている。
【0073】
上記バリア層(III)としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックフイルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフイルム、シートを包含する)、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔が挙げられる。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等も場合によっては用いてもよい。
【0074】
また、積層体を構成する前記第I層および第II層のいずれかの層がリサイクルすることで得られる樹脂材料(i)および樹脂材料(ii)のブレンド樹脂で形成されていてもよい。また、本発明のパウチを構成する積層体は、前記ブレンド樹脂からなるリサイクル樹脂層(IV)をさらに有していてもよい。ここで、積層体をリサイクルすることで得られるブレンド樹脂とは、積層体の不良品、積層体からなるパウチの回収品、パウチ等に加工後の仕上げ段階で生ずるバリ等を粉砕した混合樹脂のことである。
このように、本発明のパウチは、リサイクルされたブレンド樹脂を用いることが可能であり、かつ同種の樹脂材料を使用するためリサイクル性が良好である。
【0075】
上記積層体の例としては、I/II/、I/III/II、III/I/II、 I/接着剤/IV/接着剤/IIなどの態様が挙げられる。より具体的には、HD/SLL、HD+LL/SLL、HD/SLL+LD、HD+LL/SLL+LD、RC/SLL、RC/HD/SLL、RC+HD/SLL、HD/LL、バリア層(EVOH、PA、PEs、OPPなど)/接着剤/HD/SLLなどが挙げられる(ここで、HD:高密度ポリエチレン、LD:高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、LL:線状低密度ポリエチレン、SLL:特定の(A)線状低密度ポリエチレン、RC:リサイクルされたブレンド樹脂、EVOH:エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、PA:ポリアミド樹脂、PEs:ポリエステル樹脂、OPP:配向ポリプロピレン樹脂、接着剤:酸変性ポリエチレン樹脂を示す)。
【0076】
本発明における積層体は、剛性(腰)に優れることから、自立性が求められるスタンディングパウチに好適に用いることができる。
また、本発明における積層体は、比較的低いヒートシール温度でも十分なヒートシール強度を発揮することができることから、パウチ等を低温のヒートシールで製造することができ、製造されたパウチ等には、臭気などの発生が少なく、内容物の品質を悪化させることがない。
【0077】
本発明における積層体は、種々の方法で製造することが可能であるが、好ましくは、第I層および第II層を共押出法により成形することによって製造される。成形方法としては、例えば、多層インフレーション成形法、多層キャスト成形法等によって生産性高く製造できる。中でも、多層インフレーション成形法が、経済性、成形性等の点で好適に用いられる。
【0078】
多層インフレーション成形法によるシートの製造は、通例の空冷法インフレーションフィルム製造装置で実行可能であり、例えば、各樹脂材料を150〜250℃の温度で押出機よりサーキュラーダイを通して押出し、空冷式エアーリングより吹き出す空気に接触させて急冷し、固化させてピンチロールで引き取った後、枠に巻き取ることにより行われる。
【0079】
また、空冷法インフレーション成形以外にも、水冷法インフレーション成形、T−ダイ法等で製造することもでき、透明性、低温衝撃性等の良好なシートを得ることができる。
【0080】
また、少なくとも前記樹脂材料(i)および樹脂材料(ii)を多層インフレーション成形して得られる中空状のチューブを挟み潰して、3層以上の積層体とすることも可能である。このような積層体を得る方法としては、各樹脂材料をサーキュラーダイを通して押出して形成された中空状のチューブを、内層の樹脂材料の融点よりも高い温度の状態でピンチロールで挟み潰す方法や、各樹脂材料をサーキュラーダイを通して押出して形成された中空状のチューブを、空冷式エアーリングより吹き出す空気に接触させて冷却し、固化させた後、加熱したピンチロールで挟み潰す方法などが挙げられる。このような製造方法によれば、効率的かつ経済的に安価な積層体を得ることができる。
【0081】
このように多層インフレーション成形法によって積層体を製造することによって、▲1▼Tダイ法で得られた積層体のようなむらがない、▲2▼空冷による徐冷のため樹脂が均一に結晶化し、強度の強い積層体となる、▲3▼低温成形が可能であるところから添加剤フリーで成形でき、被接触物に悪影響を与えない積層体が得られる、▲4▼ブローアップ比(BUR)が調節でき、品質のコントロールが可能である、▲5▼Tダイ法に比べ、耳ロスがなく、生産性が高く、経済性に優れる、▲6▼ピンチロールにより多層化して押しつぶすことにより、倍の肉厚のシートが一度に成形が可能であり、厚みの均質化も可能であるという利点が得られる。
【0082】
本発明のパウチは、上記積層体を、第II層が内側になるようにヒートシールして袋状としたものである。
パウチの種類としては、自立性のスタンディングパウチ、アルミ箔からなるバリア層を有するレトルト食品用のレトルトパウチ、吸飲用スパウト付きパウチ等が挙げられ、より具体的にはフレキシブルスパウトパウチ、デユアルチャンバーパウチ、ディスペンサーパウチなどが挙げられる。
また、パウチの形状としては、ガゼット袋、四方シール袋、合掌貼りの三方シール袋、インフレーション法による筒状フィルムの上下をシールした袋などが挙げられる。
【0083】
ヒートシールの方法としては、公知の方法を使用でき、例えば、加熱バー、加熱ナイフ、加熱ワイヤ、インパルスシールなどの外部加熱方式、超音波シール、誘電加熱シールなどの内部加熱方式が挙げられる。
【0084】
本発明のパウチ、特に、スタンディングパウチは、上記積層体が剛性(腰)に優れることから、自立性にたいへん優れ、薄肉化、軽量化も可能である。
また、本発明のパウチは、上記積層体が比較的低いヒートシール温度でも十分なヒートシール強度を発揮することができることから、低温のヒートシールで製造することができ、臭気などの発生が少なく、内容物の品質を悪化させることがない。
【0085】
このようなパウチは、食用油、調味料、乾物、加工食品等の食品用包材;液体洗剤、シャンプー、リンスなどの日用品包材;輸液バックなどの医療用包材などとして幅広く利用することができる。
【0086】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0087】
本実施例における試験方法は以下の通りである。
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムはショウデックス HT806Mを使用した。
【0088】
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃迄昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
[TREF]
カラムを140℃に保った状態で、カラムに試料を注入して0.1℃/分で25℃まで降温し、ポリマーをガラスビーズ上に沈着させた後、カラムを下記条件にて昇温して各温度で溶出したポリマー濃度を赤外検出器で検出した。(溶媒:ODCB、流速:1ml/分、昇温速度:50℃/hr、検出器:赤外分光器(波長2925cm-1)、カラム:0.8cmφ×12cmL(ガラスビーズを充填)、試料濃度:0.05重量%)
【0089】
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、シリンダー下降速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
[塩素濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下についてはNDとし、実質的には含まれないものとした。
【0090】
<積層体の評価>
[ヒートシール強度]
テスター産業(株)製ヒートシール試験機(シールバー幅1mm、シール圧力1kg/cm2 )を用い、積層体の第II層どうしを、ヒートシール温度120℃で1秒間シールし、室温23℃かつ湿度50%で24時間状態調節後、シール部を15mm幅で短冊状に切り出し、引張試験機にて300mm/minでシール部を剥離し、その最大荷重を測定した。
[3kg荷重ヒートシール温度]
テスター産業(株)製ヒートシール試験機(シールバー幅1mm、シール圧力1kg/cm2 )を用い、積層体の第II層どうしを、ヒートシール温度80℃、ヒートシール圧力1kg/cm2 で1秒間ヒートシールし、室温23℃かつ湿度50%で24時間状態調節後、ヒートシール部を15mm幅で短冊状に切り出し、引張試験機にて300mm/minでヒートシール部を剥離し、その最大荷重(ヒートシール強度)を測定した
上記の測定をヒートシール温度を5℃ずつ上げながら繰り返し行い、85,90,95,100,105,110,115,120,125および130℃におけるヒートシール強度を測定した。ヒートシール温度に対してヒートシール強度をプロットしてヒートシール温度−ヒートシール強度曲線を作成し、この曲線からヒートシール強度が3kg/15mmにおけるヒートシール温度を読み取った。
【0091】
[耐ピンホール性]
積層体から、成形時の流れ方向に幅200mm、長さ300mmの試験片を切り取った。この試験片を理学工業(株)製ゲルボフレックステスターに取り付け、常温で3000ストローク負荷後、試験片のピンホール数を測定した。同様の試験を3回繰り返し、ピンホール数の平均値を求めた。
[水蒸気透過率]
JIS K7129に準拠した。
[ヘイズ]
ASTM D1003に準拠した。
[引張弾性率]
ASTM D882に準拠し、MD(押出方向)について測定した。
[引張衝撃強さ]
ASTM D1822に準拠し、MD(押出方向)について測定した。
【0092】
<パウチの評価>
[臭気および衛生性]
蒸留水500mlを充填し、40℃オーブン中にて72時間保存したのち室温まで冷却し、内容液を20mlを磁器製の器に移し、浮遊物の有無と臭気および味覚について官能試験を実施した。
◎:良い
○:比較的良い
△:やや不良
×:不良
【0093】
[耐熱性]
蒸留水500mlを充填した容器を121℃、20分間高圧蒸気滅菌し、変形を目視により観察した。
○:変形せず
△:やや変形した
×:変形著しい
[落下試験]
蒸留水500mlを充填した容器を5℃の雰囲気化で24時間、状態調節したのち、10個の容器を高さ1.2mから落下させ、破袋した容器の数を調べた。
○:破袋せず
△:1〜2個破袋
×:3個以上破袋
[自立性]
直径200mmφ、高さ300mmの円筒を制作し、自立させた時の上部開口部のたわみから判定した。
○:たわみなし
△:ややたわみあり
×:たわみ著しい
【0094】
実施例および比較例に用いた各種成分は以下の通りである。
[(A)線状低密度ポリエチレン]
1)(A1)特定の線状低密度ポリエチレンは次の方法で重合した。
(固体触媒の調製)
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラエトキシジルコニウム(Zr(OEt)4 )22gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度2.5mmol/ml)を3200ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(グレース社製、#952、表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒を得た。
【0095】
(気相重合)
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(LLDPE−1)を得た。また、LLDPE−1と同じエチレン共重合体であり、かつ添加剤を含まないものをLLDPE−3とした。これらの物性を表1に示した。
【0096】
2)(A2)特定の線状低密度ポリエチレンは次の方法で重合した。
上記連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度75℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(LLDPE−2)を得た。その物性を表に示した。
【0097】
[他の線状低密度ポリエチレン]
1)一般のメタロセン系触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(M−LLDPE)
窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=500)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を6kg/cm3 に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(M−LLDPE)を製造した。
その物性を表1に示した。
【0098】
2)市販のチーグラー型触媒による線状低密度ポリエチレン(Z−LLDPE)
物性を表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
[密度0.94g/cm3 以下のポリエチレン系樹脂]
高圧法低密度ポリエチレン:HP−LDPE
MFR=2.0g/10min、密度=0.923g/cm3
[曲げ弾性率2500kgf/cm2以上のポリオレフィン系樹脂]
(1)高密度ポリエチレン
エチレン・1−ブテン共重合体(HDPE:MFR=1.5g/10分、密度=0.951g/cm3 、曲げ弾性率=11,000)
(2)エチレン・1−ブテン共重合体(MDPE:MFR=1.0g/10分、密度=0.942g/cm3 、曲げ弾性率=10,000)
(3)エチレン・プロピレン共重合体(PP:エチレン含有量=3重量%、曲げ弾性率=12,500)
【0101】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
酸化防止剤(イルガノックス1076=0.1重量%、イルガフォス168=0.1重量%)とステアリン酸カルシウム(中和剤=0.1重量%)を配合した表2〜表4に示すHDPE、HP−LDPE、LLDPE(ただし、LLDPE−3には酸化防止剤を加えない)を、トミー機械工業(株)製2層インフレーション成形機(40mmφ押出機2台)を用い、成形リップギャップ3mm、成形温度200℃の条件下で成形し、巾が300mmであり、表2〜表4に示す層厚み構成を有する積層体を製造した。
ついで、O−ナイロン(厚み15μm、ユニチカ(株)製)を接着剤(アンカーコート剤:東洋モートンTM―329)を使用しドライラミネート法により貼り合わせた。
【0102】
さらに、積層体の第III層同士を3kg荷重ヒートシール温度+5℃の温度で、圧力1kg/cm2、1秒間でヒートシールして内容量500mlのスタンディングパウチを製造し、積層体およびパウチの評価を行った。結果を表2〜表4に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
表2および表3の結果から明らかなように、実施例の積層体は、ヒートシール性、耐ピンホール性、水蒸気バリア性、透明性および機械的強度に優れていることがわかる。また、実施例のパウチは、十分な耐熱性および落下強度を有していた。特に、ハロゲンがほとんど含まれていないLLDPE−1を内層(第II層)に用いたパウチは、臭気が少なく、衛生性に優れていた。
【0107】
一方、表4の結果から明らかなように、比較例1の積層体およびパウチは、第II層に特定の(A)線状低密度ポリエチレンを用いず、MDPEを用いたため、ヒートシール強度、耐ピンホール性、引張衝撃強さ、落下強度に劣っていた。
比較例2の積層体およびパウチは、第II層に(A)線状低密度ポリエチレンを用いず、HP−LDPEを用いたため、ヒートシール強度、耐ピンホール性、引張衝撃強さ、落下強度に劣り、しかも、臭気が激しく、衛生性が悪かった。
比較例3の積層体およびパウチも、第II層に(A)線状低密度ポリエチレンを用いず、Z−LLDPEを用いたため、ヒートシール強度、耐ピンホール性、引張衝撃強さ、落下強度に劣り、しかも、臭気を有し、衛生性が悪かった。
比較例4の積層体およびパウチは第I層にLDPEを用いているため、耐熱性、落下強度、自立性が劣るものであった。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のパウチは、曲げ弾性率が2500kgf/cm2 以上であるポリオレフィン系樹脂材料(i)からなる第I層と、上述の(a)〜(d)の要件を満足する(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層とが積層された積層体を、第II層が内側となるように袋状に成形してなるものであるので、剛性、低温ヒートシール性、水蒸気バリア性、保香性、衛生性、耐熱性に優れ、高いヒートシール強度、突刺強度を有する。
【0109】
また、第II層同士をヒートシールしたときのヒートシール強度が3kg/15mmとなるようなヒートシール温度が、85〜125℃の範囲であれば、耐熱性、高速充填性がさらに向上する。
また、積層体の厚さが10μm〜0.5mmであり、かつ第I層および第II層の厚さがそれぞれ3μm〜0.4mmの範囲であれば、使いやすく、各層の特性が十分に発揮されたパウチとなる。
また、積層体がさらにバリア層(III)を有していれば、パウチの水蒸気バリア性、保香性がさらに向上する。
また、第I層および第II層のいずれかの層が、積層体をリサイクルすることで得られる樹脂材料(i)および樹脂材料(ii)のブレンド樹脂で形成されている、もしくは、該ブレンド樹脂からなるリサイクル樹脂層(IV)が、さらに設けられていれば、リサイクルされたブレンド樹脂を用いることが可能となり、リサイクル性が良好となる。
【0110】
また、前記(A)線状低密度ポリエチレンが、さらに上述の(e)および(f)の要件を満足する(A1)線状低密度ポリエチレンであれば、パウチの耐熱性、衛生性、剛性がさらに向上する。
また、前記(A)線状低密度ポリエチレンが、さらに上述の(g)および(h)の要件を満足する(A2)線状低密度ポリエチレンであれば、パウチの耐熱性、ヒートシール強度がさらに向上する。
また、前記(A2)線状低密度ポリエチレンが、さらに上述の(i)の要件を満足すれば、成形加工性がさらに向上する。
【0111】
また、前記(A)線状低密度ポリエチレンが、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンを共重合させて得られる直鎖状のエチレン共重合体であれば、パウチの機械的特性、ヒートシール性、耐熱ブロッキング性、耐熱性がさらに向上する。
また、前記樹脂材料(ii)に配合された添加剤が実質的に被接触物に移行しない添加剤である、もしくは前記樹脂材料(ii)に添加剤が配合されていなければ、臭いが少なく、衛生性を有するパウチを得ることができる。
また、樹脂材料(ii)のハロゲン濃度が、10ppm以下であれば、化学的安定性、衛生性が優れ、特に食品用包装材料等の分野において好適に活用されるパウチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における(A)または(A2)線状低密度ポリエチレンの溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図2】 本発明における(A1)線状低密度ポリエチレンの溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図3】 メタロセン系触媒によるエチレン共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
Claims (11)
- 密度0.93g/cm 3 以上の中・高密度ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、曲げ弾性率が2500kgf/cm2 以上であるポリオレフィン系樹脂材料(i)からなる第I層と、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下に製造された下記(a)〜(d)の要件を満足する(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層と、第I層に接着されたバリア性材料(iii)からなるバリア層(III)とが積層された積層体を、第II層が内側となるように袋状に成形してなることを特徴とするパウチ。
(a)密度が0.86〜0.94g/cm3 、
(b)メルトフローレートが0.01〜50g/10分、
(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5、
(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644 - 前記第II層同士をヒートシール圧力1kg/cm2 、ヒートシール時間1秒間の条件でヒートシールしたときのヒートシール強度が3kg/15mmとなるようなヒートシール温度が、85〜125℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載のパウチ。
- 積層体の厚さが10μm〜0.5mmであり、かつ第I層および第II層の厚さがそれぞれ3μm〜0.4mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のパウチ。
- 第I層または第II層が、パウチをリサイクルすることで得られる樹脂材料(i)、樹脂材料(ii)およびバリア性材料(iii)のブレンド樹脂で形成されている、もしくは、該ブレンド樹脂からなるリサイクル樹脂層(IV)が、さらに積層体に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載のパウチ。
- 前記(A)線状低密度ポリエチレンが、さらに下記(e)および(f)の要件を満足する(A1)線状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のパウチ。
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(重量%)、密度dおよびメルトフローレート(MFR)が下記(式2)および(式3)の関係を満足すること
(式2)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式3)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること - 前記(A)線状低密度ポリエチレンが、さらに下記(g)および(h)の要件を満足する(A2)線状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のパウチ。
(g)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつT75−T25および密度dが、下記(式4)の関係を満足すること
(式4) T75−T25≧−300×d+285
(h)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−17 - 前記(A2)線状低密度ポリエチレンが、さらに下記(i)の要件を満足することを特徴とする請求項6記載のパウチ。
(i)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3 - 前記樹脂材料(ii)に配合された添加剤が実質的に被接触物に移行しない添加剤である、もしくは前記樹脂材料(ii)に添加剤が配合されていないことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一項に記載のパウチ。
- 前記樹脂材料(ii)のハロゲン濃度が、10ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか一項に記載のパウチ。
- パウチの形状が、ガゼット袋、四方シール袋、合掌貼りの三方シール袋、インフレーション法による筒状フィルムの上下をシールした袋から選択された1種である請求項1〜9のいずれか一項に記載のパウチ。
- パウチが、食品用包材、日用品包材および医療用包材のいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のパウチ。
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