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JP4716369B2 - 粉末醤油、糖低減化醤油、および糖低減化醤油の製造法 - Google Patents

粉末醤油、糖低減化醤油、および糖低減化醤油の製造法 Download PDF

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Description

本発明は、保存中に固結が起こりにくい粉末醤油、その製造に好適な糖低減化醤油およびそれらの製造法に関する。
粉末醤油は、保存中に固結し易い難点を有している。従来、この難点を解消するため、醤油にゼラチン、デキストリン、可溶性澱粉又はコーンスターチなどの吸湿、固結防止剤を添加する方法が使用されている(特許文献1〜3参照)。しかしこれらの方法は、固結防止剤の添加により、相対的に醤油本来の呈味成分が希釈され、濃厚な呈味を有する粉末醤油が得られない問題点を有している。
特公昭46−28839号公報 特許第2767679号公報 特許第3441219号公報
本発明は、醤油に固結防止剤を添加することなく、保存中に固結が起こりにくい粉末醤油を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルコール発酵が終了した醤油諸味に水又は食塩水を13%(W/W)以上加水し、醤油酵母を添加して培養するときは糖低減化醤油が得られ、この醤油を乾燥粉末化すると固結が起こりにくい特性を有する粉末醤油が得られることを知った。また、上記加水後の醤油諸味に醤油酵母を添加培養して得られる醤油の直接還元糖含量を1.5%(W/V)以下とするときは、乾燥粉末化後に固結が特に起こりにくい特性を有する糖低減化醤油が得られることを知った。またさらに、上記のように得られた糖低減化醤油および粉末醤油に非還元糖を添加するときは、固結が起こりにくい特性を維持したまま、呈味性を改善し得ることを知り、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1)アルコール発酵が終了した醤油諸味に水を13〜150%(w/w)加水し、醤油酵母を添加して培養することにより得られる糖低減化醤油。
(2)直接還元糖含量が1.5%(w/v)以下である上記(1)に記載の糖低減化醤油。
(3)上記(1)で得られる糖低減化醤油を乾燥粉末化することにより得られる粉末醤油。
(4)上記(1)で得られる糖低減化醤油に非還元糖を添加した後、乾燥粉末化することにより得られる粉末醤油。
(5)窒素含量が3.5%(w/w)以上である上記(3)又は(4)に記載の粉末醤油。
(6)アルコール発酵が終了した醤油諸味に水を13〜150%(w/w)加水し、醤油酵母を添加して培養することを特徴とする、直接還元糖含量が1.5%(w/v)以下である糖低減化醤油の製造法。
(7)醤油酵母が、チゴサッカロマイセス属に属する耐塩性酵母であることを特徴とする、上記(6)に記載の糖低減化醤油の製造法。
本発明によれば、固結が起こりにくい粉末醤油およびその製造に好適な糖低減化醤油を得ることができる。
以下、この発明の構成及び好ましい形態について更に詳しく説明する。
本発明において、醤油諸味とは、醤油麹と食塩水を混和(これを仕込みともいう)したものを意味し、例えば濃口醤油諸味、淡口醤油諸味、たまり醤油諸味、再仕込醤油諸味、白醤油諸味等が挙げられる。
アルコール発酵が終了した醤油諸味とは、例えば仕込み後40日経過したものから圧搾直前のものに至る任意の醤油諸味を意味し、仕込後2〜5カ月経過の醤油諸味がより好ましく、仕込後3〜4カ月経過の醤油諸味が最も好ましい。
上記の醤油諸味に対する加水は、水又は食塩水が用いられる。加水の量は、醤油諸味に対し13〜150%(W/W)が好ましく、15〜80%(W/W)がより好ましく、20〜50%(W/W)が最も好ましい。上記加水量が13%(W/W)未満であるときは、この後に行われる醤油酵母の培養において、醤油諸味液汁中の直接還元糖を効率よく低減することができない。これに対し加水量が13〜150%(W/W)であるときは、醤油諸味液汁中の直接還元糖を効率よく低減することができ、特に加水量が20〜50(W/W)であるときは、さらに効率よく醤油諸味液汁中の直接還元糖を低減することができる。
通常の醤油諸味中の塩分濃度は約13〜20%と高く、パン酵母、清酒酵母、ワイン酵母、焼酎酵母等の醤油酵母以外の多くの酵母は醤油諸味中では成育できない。本発明で使用する醤油酵母とは、約13〜20%の食塩濃度を有する醤油諸味中で糖類を効率よく低減化できる酵母であればいかなるものでもよく、例えばチゴサッカロマイセス属に属する主発酵酵母類(例えばチゴサッカロマイセス・ルキシー等)が挙げられる。
本発明においては、諸味への加水(水又は食塩水)によって諸味を希釈するが(通常の醤油製造と同程度、若しくは通常より低食塩濃度となる)、この条件下で成育し、糖類を効率よく分解できるだけの耐塩性を有している必要があり、当然ながら、より高度な耐塩性を有していることが好ましい。そのような耐塩性を有する醤油酵母を選択するために、例えば、候補菌株を通常の耐塩性を指標とする選抜に供することができる。
具体的には、例えば各種微生物保存機関より入手した、あるいは醤油諸味中から分離した各種酵母を、10〜20%塩化ナトリウムを含有するYPD培地(1%イーストエクストラクト(Difco社製)、2%ペプトン(Difco社製)、2%グルコース(和光純薬工業株式会社製))に1白金耳接種し、30℃、3日間振とう培養して増殖度合を観察する。醤油酵母の増殖度合は、通常の方法、例えば、600nmにおける吸光度(OD600)測定などにより行うことができる。前記の培養において、例えば食塩濃度を段階的に上げ、15%、さらに20%の条件下でも良好に生育するものを選抜する。
醤油諸味に対する酵母の添加は、醤油諸味に対して0.01〜50×10個/mlとなるように行うことが好ましく、0.1〜10×10個/mlがより好ましく、1〜5×10個/ml添加することが最も好ましい。このような濃度となるように醤油酵母を添加するときは、効率良い糖類の資化が達成される。
醤油酵母は、前培養液として、または乾燥菌体としてあるいは凍結菌体として添加してもよい。適当な条件下で前培養を行うことにより、活発に生育中の酵母を取得し、これを添加することが、菌体の速やかな成長および糖の資化のために好ましい。例えば、塩化ナトリウム含有YPD培地中、あるいは生醤油中などで、20〜40℃、2〜14日間培養した培養液を一部採取し、醤油諸味に添加することができる。
加水から醤油酵母添加までの間隔は限定されないが、希釈諸味は防黴性が低下しているため、できるだけ迅速に酵母を添加し、必要な糖低減化処理を行って圧搾濾過し、醤油製造を終了させることが望ましく、そのためには加水と同時、もしくは加水直後に醤油酵母を添加することがより好ましい。
醤油酵母添加後の醤油諸味は20〜40℃に保持することが好ましく、25〜37℃に保持することがより好ましい。20℃未満では醤油酵母が十分に生育せず、反対に40℃を超えると酵母の成育が阻害されるとともに醤油の褐変が進行するので好ましくない。
培養期間中は、醤油諸味を時々撹拌しながら保持することが好ましく、必要に応じて通気を行うこともできる。加水及び醤油酵母の培養は、通常の醤油醸造法において発酵が終了した醤油諸味又は熟成期間中の諸味に本発明の手段を組み入れて行っても良い。具体的には、糖低減化を達成するために、例えば通常の熟成期間終了時に加水と醤油酵母添加を行いさらに1週間保持(培養)してもよく、または、通常の熟成期間が終了し圧搾する1週間前に加水と醤油酵母添加を行い1週間保持(培養)してもよい。醤油酵母の培養を終了した醤油諸味を圧搾濾過することにより、糖低減化醤油が得られる。
醤油諸味と醤油酵母との培養の終了時期は、諸味液汁(醤油)中の糖類濃度が目的濃度以下に低減化されていることを確認することにより決定できる。本発明で低減化対象とする糖類は、グルコースなどの直接還元糖である。直接還元糖とは、還元性を示す糖量をグルコース量に換算した値をいい、醤油中のほぼ全ての単糖と還元性オリゴ糖(麦芽糖、乳糖など)、多糖類の還元性末端などを含む。例えば、濃口醤油の場合、通常その重量に対し2.0〜5%程度の直接還元糖を含んでいるが、これを1.5%以下、より好ましくは1%以下に低減化することにより本発明の糖低減化醤油が得られる。
本発明において、醤油中の直接還元糖含量を1.5%(W/V)以下とすることは非常に重要である。すなわち、1.5%(W/V)を越える醤油であるときは、乾燥粉末化の際に、粉化性が十分でなく、しかも得られる粉末醤油は、吸湿性、潮解性があり、保存中に容易にブロックを形成するほか、条件が悪いものではべとつき易く、他の粉末成分と均一に混合し難くなる場合があり好ましくない。なお、醤油中の直接還元糖の測定は、しょうゆ試験法(日本醤油研究所編集発行、昭和60年)記載のフェ―リング・レーマン・ショール法により測定する。
糖低減化醤油の乾燥粉末化は、通常の粉末醤油の製造法により行う。例えば醤油にデキストリンなどの賦形剤を添加し加熱溶解した後、スプレードライ法、ドラムドライ法、フリーズドライ法などの乾燥粉末化を行う方法が挙げられる。一般に、乾燥粉末化により得られた粉末醤油は、加熱や酸化によりメイラード反応が進行し、そこで生じる水によって固結し、サラサラした粉末状からブロック状に変化する。本発明の糖低減化醤油においては、メイラード反応の原因物質に含まれる還元糖およびグルコースが低減されているため、得られる粉末醤油は保存中のブロック形成が起こりにくいものとなる。すなわち、本発明の糖低減化醤油においては、同じ温度条件で乾燥粉末化を行った場合、糖低減化を行わないものに比べて固結安定性に優れた(固結しにくい)粉末醤油を得ることができる。
さらに本発明により、固結安定性が顕著に改善された粉末醤油が得られるようになることにより、従来の粉末醤油においては製造が困難であった組成の粉末醤油を製造することも可能になる。例えばその一例として、高窒素含有粉末醤油が挙げられる。
粉末醤油は従来、粉末中の窒素濃度の上昇に伴い、著しく固結安定性を失う特性を有し、高窒素含有粉末醤油、例えば窒素含量3.0%(W/W)以上、特に3.5%(W/W)以上の粉末醤油の製造は工業的に困難であった。高窒素含有粉末醤油は、少量の粉末の中にアミノ酸、ペプチドなどの各種旨味成分を多量に含み、加工食品への使用などにおいて利便性を有し得ると考えられるが、固結安定性の問題から実用化が困難であった。本発明により得られる糖低減化粉末醤油を使用することによって、高濃度の窒素を含有させた場合においても良好な粉末状態を維持できる粉末醤油を製造することが可能となり、従来は製造困難であった窒素含量3.0%(W/W)以上、特に3.5%(W/W)以上の高窒素含有粉末醤油の製造が可能となる。
また、本発明により得られる糖低減化醤油または粉末醤油においては、糖類の含有濃度が通常の醤油に比較して顕著に低いため、得られる醤油の甘味が乏しく、用途によっては呈味性の面でやや物足りない可能性を有している。そこで本発明においては、本発明の効果を維持しつつ、呈味性を改善するために、上記糖低減化醤油または粉末醤油に非還元糖を添加することができる。
本発明の非還元糖としては、還元末端を含まないものならばいずれの糖質、糖アルコールでもよく、例としてトレハロース、スクロース、シクロデキストリンが挙げられる。非還元糖の添加は、例えば上記糖低減化醤油中に直接混合することができる。また、糖低減化醤油に非還元糖を添加した後、これを乾燥粉末化することで、非還元糖添加粉末醤油を容易に得ることができる。あるいは、非還元糖を添加していない糖低減化粉末醤油に対し、粉末の非還元糖を混合することも可能である。
非還元糖の添加量は、添加する非還元糖の種類その他の条件によって変わるが、例えば濃口醤油の糖低減化醤油にトレハロースを添加する場合では、0.5〜3%(W/V)添加し、好ましくは、1%(W/V)添加することによって、固結性が少ないという本発明の特性を維持しつつ、呈味性の改善された糖低減化醤油、粉末醤油が得られる。
次に、本発明の実施例を詳細に述べるが、本発明は何らこれにより限定されるものではない。
(1)高耐塩性醤油酵母の選抜
0.2μmメッシュフィルター(Millipore社製)にて濾過滅菌後、5mlずつ小分けした、15%塩化ナトリウム含有YPD培地(1%イーストエクストラクト(Difco社製)、2%ペプトン(Difco社製)、2%グルコース(和光純薬工業株式会社製))の各々に対し、各種の醤油諸味から分離された醤油酵母20株を各1白金耳接種し、30℃、1〜7日間振とう培養して増殖度合を観察した。その結果、上記培地で17株が成育し、3株は生育しなかった。次いで上記17株を、食塩濃度20%のYPD培地に対し、添加時の600nmにおける吸光度が0.1となるように接種し、30℃、4日間振騰培養して、この培地中で旺盛に成育する醤油酵母を高耐塩性醤油酵母として選抜した。
なお、上記試験において選抜された高耐塩性醤油酵母のひとつであるNo.28に関し、公知の文献(Kurtzman, C.P.およびBlanz, P.A.(1998)In The Yeasts, A Taxonomic Study, 4th ed. (Kurtzman, C.P. および Fell, J.W.,Eds.), Elsevier, Amsterdam, pp69−74)に従って、rDNAの多型性による種同定を行った。酵母の18S rDNAをPCRにて増幅し、その塩基配列を同定し、公知の遺伝子配列データベース(Genbank)を利用して既知配列と比較したところ、既報のチゾサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)の塩基配列と一致した。この結果より、No.28の醤油酵母はチゾサッカロマイセス・ルキシーであると判断した。
(2)高耐塩性醤油酵母培養液の調製
500ml容の坂口フラスコに、無菌濾過した濃口生醤油50mlを量り採り、そこに上記の選抜操作で調製した高耐塩性醤油酵母(No.28)の培養液5mlを添加し、30℃で7日間振盪培養した。酵母菌体を遠心(3000rpm、5分間)、集菌後、諸味液汁で洗浄し、次いで諸味液汁2mlに懸濁した。
(3)醤油熟成諸味に対する加水及び醤油酵母添加による糖低減化醤油の製造
常法に従って製造された濃口醤油熟成諸味(仕込後4ヶ月)を、蓋付ポリ容器に300mlずつ入れ、それらに加水を行うことなく(比較例1)、または食塩を含まない水を10%(W/W)加水し(比較例2)、または13%(W/W)加水し(本発明1)、または20%(W/W)加水して(本発明2)調整した諸味300mlに対し、高耐塩性醤油酵母(坂口フラスコ1本分の酵母菌体)を、終濃度1×10個/mlとなるように添加した。その後、30℃で、朝夕2回の通気撹拌を行う以外は7日間静置培養し、4種類の糖低減化醤油を得た。
(対照例)
比較のため、上記実施例1と同様の加水条件(加水なし、及び10、13、20%(W/W)加水)において、醤油酵母の添加培養を行わないものを同様に培養し、それぞれ対照1〜4の醤油を得た。実施例1及び比較例で得られた醤油の食塩濃度、直接還元糖(RS)、アルコール(Alc)、グルコースの成分を分析した。その結果を表1に示す。なお、グルコースの成分分析は、高速液体クロマトグラフィー法を用いて上記培養上清の糖分析を行った。糖分析用の装置はTOSOH社製SC8020、カラムはTSD‐GEL SUGAR AX1(4.6mm i.d×150mm)を用い、メーカーの説明書に従って分析した。
Figure 0004716369
表1の結果から、醤油酵母を添加しない対照1〜4においては、いずれも7日間の培養実施後も直接還元糖の減少がみられず、諸味中の水分が蒸発することでむしろ濃度がやや増加した。また、醤油酵母を添加した試験区において、加水を行わない比較例1では、醤油諸味中の酵母菌数は培養7日後に4×104個/mlとなったが、得られる醤油中の直接還元糖の濃度は酵母を添加しない対照1とほとんど差がなく、十分な直接還元糖低減効果は見られなかった。また、水を10%(W/W)加水した比較例2の醤油においても、十分な直接還元糖低減効果は見られないことがわかった。
これに対し、13%(W/W)及び20%(W/W)加水した本発明1及び2においては、酵母菌数はそれぞれ5×10及び1×10個/mlにまで増殖し、培養前に2.5%(W/V)及び2.2%(W/V)であった直接還元糖量が1.5%(W/V)及び1.2%(W/V)にまで低下した醤油が得られた。なお、13%及び20%の加水後に酵母を添加した本発明1及び2におけるグルコース含量は、培養前の諸味液汁中で12.8%であったが、醤油酵母添加培養後においてはそれぞれ0.19%及び0.12%にまで減少し、ほとんどのグルコースが酵母によって資化され、酵母の増殖に伴って直接還元糖が十分に低減されていた。以上の結果より、13%(W/W)以上加水した醤油諸味に高耐塩性醤油酵母を添加し培養することにより、得られる醤油中の糖を有効に低減できることがわかった。また、本発明により得られた糖低減化醤油はいずれも、醤油らしい熟成感や色、香りを有するものであった。
(粉末醤油の調製例)
表2に示す醤油300ml当り、デキストリン(FSD607二村化学社製)69g、食塩15g、水道水90mlの割合となるように、醤油、デキストリン、食塩及び水道水を混和し、80℃に加温溶解した。その後、NIRO JAPAN社製モービルマイナ型スプレードライヤーTM−2000Model−Aを用いて、入口温度170〜180℃、出口温度90℃、液供給量15ml/min、アトマイザー回転数20,000〜22,000rpmの条件にて噴霧乾燥し、粉末醤油を得た。
Figure 0004716369
得られた粉末醤油の成分組成及び固結安定性を調べた結果を表3に示す。固結安定性は、加熱処理後の固結強度の測定によって調べた。具体的には、得られた粉末醤油を80℃、3時間加熱処理した後、レオナー(株式会社山電社製RE3305)を用いた破断強度解析に供した。測定値が低いほど、固結し難い(固結安定性が高い)ことを意味する。
Figure 0004716369
表3の結果から、各粉末醤油の成分分析値は、直接還元糖含量以外には大きな差がないが、本発明の糖低減化粉末醤油は比較例の濃口醤油に比べて顕著に低い固結強度を示し、加熱後でも固結しにくく、良好な粉末状態が維持されることがわかった。
(呈味性の良好な粉末醤油の製造法)
糖低減醤油の粉末醤油は官能的には濃口醤油を原料としたものに比較して、淡白な味を呈する。これを改善するために、実施例1で得られた糖低減化醤油(本発明1及び2)に、非還元性の糖であるトレハロースおよびスクロースを添加した場合の固結安定性について検討した。
すなわち、実施例1で得られた糖低減化醤油にデキストリンと食塩、さらにトレハロースおよびスクロースを添加し、各粉末醤油における窒素濃度が2.8%(W/W)、食塩濃度は32.5%(W/W)となるよう配合した。各々の糖は重量百分率で酵母無添加時の濃口醤油中の還元糖と同等(3%(W/V))になるように添加した。固結安定性の試験は実施例2に記載の方法に準じて行った。その結果、トレハロース、スクロースを添加した粉末醤油の呈味は、糖低減化醤油の淡白な印象がなくなり、通常の濃口醤油を用いて製造した粉末醤油の呈味と大差なくなっていた。
また、上記の粉末醤油を80℃、180分間加熱した時の固結強度は、非還元糖であるトレハロースとスクロースを添加しても、非還元糖無添加のもの(実施例1で得られるもの)とほぼ同等であった。すなわち糖低減化醤油に非還元糖を添加しても高い固結安定性は保たれており、非還元糖は、粉末醤油が固結しにくいという本発明の良い効果を維持しつつ、呈味性の改善に利用できることがわかった。
(高窒素含有粉末醤油の製造)
実施例1記載の方法で得られた糖低減化醤油(本発明1)を用いて、高窒素含有する粉末醤油の製造を行った。固形分中の食塩含有量を35%(W/W)と設定し、実施例2に記載した方法に倣って、予め測定した濃口醤油または糖低減化醤油の固形分濃度と総窒素濃度をもとに、窒素含有量が2.5%(W/W)、3.0%(W/W)、3.5%(W/W)となるように、濃口醤油または糖低減化醤油を利用した粉末醤油の配合を設計し、粉化を行った。得られた粉末醤油の固結強度を表4に示す。
Figure 0004716369
濃口醤油、糖低減醤油いずれにおいても、窒素含有量が増加するに従って固結強度が上昇する傾向、すなわち固結安定性が低下する傾向が示された。特に濃口醤油を用いた場合には、窒素含有量が3.5%となるように粉末醤油を製造した場合、80℃、3時間処理後の固結強度は測定限界を超えるほどに増大し、粉末が強固なブロックを形成した。一方、糖低減醤油を用いた場合には、窒素含有量の増加に伴って固結安定性は低下するものの、その程度は濃口醤油に比べると明らかに緩やかであり、窒素濃度3.5%(W/W)の粉末においても、80℃、3時間の加熱処理後の固結強度は104程度であり、濃口醤油を使用して製造した3.0%窒素含有の粉末醤油と比較しても十分に優れた固結安定性を有していた。すなわち、本発明の糖低減醤油を用いることにより、従来製造が困難であった3.5%(W/W)以上の高窒素含有粉末醤油の製造が可能となることがわかった。

Claims (7)

  1. アルコール発酵が終了した醤油諸味に水を13〜150%(w/w)加水し、醤油酵母を添加して培養することにより得られる糖低減化醤油。
  2. 直接還元糖含量が1.5%(w/v)以下である請求項1に記載の糖低減化醤油。
  3. 請求項1で得られる糖低減化醤油を乾燥粉末化することにより得られる粉末醤油。
  4. 請求項1で得られる糖低減化醤油に非還元糖を添加した後、乾燥粉末化することにより得られる粉末醤油。
  5. 窒素含量が3.5%(w/w)以上である請求項3又は請求項4に記載の粉末醤油。
  6. アルコール発酵が終了した醤油諸味に水を13〜150%(w/w)加水し、醤油酵母を添加して培養することを特徴とする、直接還元糖含量が1.5%(w/v)以下である糖低減化醤油の製造法。
  7. 醤油酵母が、チゴサッカロマイセス属に属する耐塩性酵母であることを特徴とする、請求項6に記載の糖低減化醤油の製造法。
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