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JP4715047B2 - 金属蒸着被膜における突起物生成の抑制方法 - Google Patents

金属蒸着被膜における突起物生成の抑制方法 Download PDF

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JP4715047B2 JP2001199749A JP2001199749A JP4715047B2 JP 4715047 B2 JP4715047 B2 JP 4715047B2 JP 2001199749 A JP2001199749 A JP 2001199749A JP 2001199749 A JP2001199749 A JP 2001199749A JP 4715047 B2 JP4715047 B2 JP 4715047B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類系永久磁石などの被処理物の表面にアルミニウムや亜鉛などの金属蒸着被膜を形成した際、該被膜に突起物が生成してしまうことを抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Nd−Fe−B系永久磁石に代表されるR−Fe−B系永久磁石などの希土類系永久磁石は、高い磁気特性を有しており、今日様々な分野で使用されている。
しかしながら、希土類系永久磁石は、大気中で酸化腐食されやすい金属種(特にR)を含む。それ故、表面処理を行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの影響によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁気特性の劣化やばらつきを招くことになる。さらに、磁気回路などの装置に組み込んだ磁石に錆が発生した場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。
上記の点に鑑み、希土類系永久磁石に優れた耐食性を付与することを目的として、その表面にアルミニウムや亜鉛などの金属蒸着被膜を形成することが行われている。
特に、アルミニウム被膜は耐食性や量産性に優れていることに加え、部品組み込み時に必要とされる接着剤との接着信頼性に優れている(接着剤が本質的に有する破壊強度に達するまでに被膜と接着剤との間で剥離が生じにくい)ので、強い接着強度が要求される希土類系永久磁石に対しても広く適用されている。ここで接着剤としては、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、反応性アクリル樹脂系、変性アクリル樹脂系(紫外線硬化型接着剤や嫌気性接着剤)、シアノアクリレート樹脂系、シリコーン樹脂系、ポリイソシアネート系、酢酸ビニル樹脂系、メタクリル樹脂系、ポリアミド系、ポリエーテル系などの各種樹脂系接着剤、各種樹脂系接着剤(例えば、酢酸ビニル樹脂系接着剤やアクリル樹脂系接着剤など)のエマルジョン型接着剤、各種ゴム系接着剤(例えば、ニトリルゴム系接着剤やポリウレタンゴム系接着剤など)、セラミックス接着剤などが耐熱性や耐衝撃性などの目的に応じて適宜選択されて使用される。
希土類系永久磁石表面に金属蒸着被膜を形成するために使用される装置としては、例えば、米国特許4116161号公報やGraham Legge :"Ion Vapor Deposited Coatings for Improved Corrosion Protection": Reprinted from Industrial Heating, September, 135-140, 1994に記載の装置がある。図1は、その一例の、図略の真空排気系に連なる真空処理室1の内部の模式的正面図(一部透視図)である。その室内上方には、例えば、ステンレス製のメッシュ金網で形成された円筒形バレル5が水平方向の回転軸線上の回転シャフト6を中心に回転自在に2個併設されている。また、その室内下方には、例えば、金属蒸着材料であるアルミニウムを蒸発させる蒸発部であるボート2が、支持テーブル3上に立設されたボート支持台4上に複数個配置されている。
そして、この装置によれば、被処理物である希土類系永久磁石30を円筒形バレル5内に複数個収容し、この円筒形バレルを矢示のごとく回転シャフト6を中心に自転させながら、図略の加熱手段によって所定温度に加熱されたボート2からアルミニウムを蒸発させ、円筒形バレル5内の希土類永久磁石30の表面にアルミニウム蒸着被膜を形成するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図1に示す蒸着装置は、大量処理が可能であり、生産性に優れたものである。しかしながら、時として、希土類系永久磁石表面に形成された金属蒸着被膜に突起物が生成してしまうことがあった。
被膜にこのような突起物が存在すると、接着剤を使用して磁石を部品に組み込む際、接着性に悪影響を及ぼす。特に、突起物の高さがJIS B0601−1994における粗さ曲線の平均線より100μmを越えるものになった場合、突起物が存在することの影響を回避して十分な接着力を確保するためには接着剤の厚みをかなり大きくせざるを得ない。従って、低粘性の接着剤を使用した場合にはそれだけの厚みを確保できず、結果として十分な接着強度が得られないことになる。また、シアノアクリレート系接着剤などのような被膜表面との化学反応を介して硬化する接着剤を使用した場合、その硬化が十分に起こらず、結果として十分な接着強度が得られないことになる。さらに、埋め込み磁石(IPM)型モーターに磁石を組み込む場合のように接着剤を使用しない場合でも、突起物の存在によって部品の寸法精度を高くすることができず、その結果、近年の部品の小型化や高精度化の要求に対応することが困難となる。
そこで、本発明においては、希土類系永久磁石などの被処理物の表面にアルミニウムや亜鉛などの金属蒸着被膜を形成した際、該被膜に突起物が生成してしまうことを効果的に抑制する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、金属蒸着被膜に突起物がなぜ、どのようにして生成するのかを詳細に解析検討した結果、以下のような事実を見出した。即ち、図1に示すような蒸着装置では、装置の構成上、円筒形バレルが自転することにより、バレル内で、該バレルに収容された希土類系永久磁石同士の衝突や擦れ合い、磁石とバレル壁面との衝突や擦れ合いといった現象が生じるが、これにより磁石の表面に形成された金属蒸着被膜が損傷を受け、その一部が削れ、さらに削れた切片が磁石などと擦れ合うことによって粒状化して他の被膜部分に付着し、その上にさらに被膜が形成されることで、通常、被膜形成後に被膜耐食性向上などを目的として行われるピーニング加工(例えば、特開昭62−60212号公報を参照)などを行っても除去不可能な突起物となること、磁石は、常に蒸発部からの輻射熱などで加熱された状態になっており、これに起因した磁石の必要以上の温度上昇によってその表面に形成された金属蒸着被膜が軟化してしまい、損傷しやすくなっていることを見出した。
【0005】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明のアルミニウム蒸着被膜における突起物生成の抑制方法は、請求項1記載の通り、真空処理室内に、蒸着材料の蒸発部と、被処理物を収容するための収容部材を備えた蒸着装置を用い、複数個の被処理物を収容した収容部材を水平方向の回転軸線を中心に回転させながら、金属蒸着材料としてアルミニウムを被処理物の表面に蒸着させるに際し、収容部材に収容された被処理物の温度を350℃以下に維持することによってアルミニウムのバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3以下に維持し、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して被処理物同士の衝突や擦れ合いによる被膜の損傷を抑制しながら蒸着を行うことを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、蒸着を真空蒸着法またはイオンプレーティング法によって行うことを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1または2記載の方法において、前記収容部材が着脱自在に構成されていることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、前記収容部材がメッシュで形成された筒型バレルであることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項4記載の方法において、前記筒型バレルが水平方向の回転軸線を中心に回転自在とした支持部材の回転軸線の周方向の外方に公転自在に支持されており、支持部材を回転させることにより、支持部材の回転軸線を中心に公転運動することを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項5記載の方法において、前記筒型バレルおよび/または前記筒型バレルを支持する支持部材が着脱自在に構成されていることを特徴とする。
また、請求項7記載の方法は、請求項5記載の方法において、前記筒型バレルが支持部材の回転軸線の周方向の外方に環状に複数個支持されていることを特徴とする。
また、請求項8記載の方法は、請求項4記載の方法において、前記筒型バレルの内部が分割されて2以上の収容部が形成されていることを特徴とする。
また、請求項9記載の方法は、請求項8記載の方法において、前記筒型バレルの内部が回転軸線から放射状に分割されて2以上の収容部が形成されていることを特徴とする。
また、請求項10記載の方法は、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法において、前記被処理物が希土類系永久磁石であることを特徴とする
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の金属蒸着被膜における突起物生成の抑制方法は、真空処理室内に、蒸着材料の蒸発部と、被処理物を収容および/または保持するための収容部材および/または保持部材を備えた蒸着装置を用い、前記収容部材および/または前記保持部材を水平方向の回転軸線を中心に回転させながら、金属蒸着材料を被処理物の表面に蒸着させるに際し、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を行うことを特徴とするものである。
【0007】
即ち、本発明は、被処理物の必要以上の温度上昇を抑制しながら蒸着を行うことで、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持することにより、該被膜が軟化し、被処理物同士の衝突や擦れ合い、被処理物とバレル壁面との衝突や擦れ合いによって損傷しやすくなることを抑制し、その結果として形成される被膜に突起物が生成してしまうことを効果的に抑制することができることを見出したことに基づく。
【0008】
本発明において金属蒸着被膜の形成対象となる被処理物は、金属蒸着被膜を形成することができるものであれば特段限定されるものではないが、本発明は、強力な磁力を有することから、部品に組み込む際に接着剤との間で強い接着強度が要求される希土類系永久磁石に対してとりわけ効果を発揮する。
【0009】
本発明において適用される金属蒸着材料は、特段限定されるものではないが、本発明は、特に、融点が低いため、形成された被膜の軟化が被処理物の温度上昇によって起こりやすいアルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、これらの金属成分の少なくとも一成分を含む合金に適用された場合に効果を発揮する。
【0010】
本発明において、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を行うためには、収容部材または保持部材に収容または保持された被処理物の温度を、金属蒸着材料のバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3以下に維持して蒸着を行えばよい。上記の金属蒸着材料のバルクにおける融点はそれぞれ、アルミニウムは660℃、亜鉛は420℃、錫は232℃、鉛は328℃、ビスマスは271℃である。合金の場合は、高温で固相と液相の2相共存状態が存在するときは、その組成における固相線温度を融点とする。被処理物が希土類系永久磁石の場合、金属蒸着材料として望ましいものはコストの点を考慮するとアルミニウムや亜鉛である。アルミニウムを使用する場合は、磁石の温度をアルミニウムのバルクにおける融点の2/3以下、即ち、440℃以下に維持して蒸着を行えばよいが、350℃以下に維持して蒸着を行うことが望ましく、300℃以下に維持して蒸着を行うことがより望ましい。また、亜鉛を使用する場合は、磁石の温度を亜鉛のバルクにおける融点の2/3以下、即ち、280℃以下に維持して蒸着を行えばよいが、250℃以下に維持して蒸着を行うことが望ましい。
被処理物の温度の下限は、被処理物が希土類系永久磁石の場合、一般的には100℃である。100℃よりも低い温度で蒸着を行った場合、磁石と金属蒸着被膜との間で十分な密着性が得られない恐れがあるからである。
【0011】
本発明の金属蒸着被膜における突起物生成の抑制方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、ビーム法、CVD法などのような蒸着方法、即ち、蒸着時に被処理物の温度が必要以上に上昇してしまい、その結果として被膜に突起物が生成する恐れのある方法に対して好適に適用される。中でも、真空蒸着法やイオンプレーティング法などで採用されるような、抵抗加熱方式による蒸着方法、とりわけ、通電加熱した蒸発部に蒸着材料を連続供給して溶解する方式による蒸着方法は、高い成膜速度による成膜が可能であり、大量処理に有用であるが、このような蒸着方法に本発明の突起物生成の抑制方法を適用することにより、優れた品質の被膜を安定してしかも効率的に被処理物表面に形成することができるという効果が発揮される。
【0012】
本発明において適用される、真空処理室内に、蒸着材料の蒸発部と、被処理物を収容するための収容部材を備え、前記収容部材を水平方向の回転軸線を中心に回転させながら、蒸着材料を被処理物の表面に蒸着させることができる蒸着装置としては、例えば、以下のような装置が挙げられる。
【0013】
例えば、前述の図1に示した蒸着装置である。このような装置を使用する場合、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を行う方法としては、円筒形バレルに収容された被処理物の温度が、金属蒸着材料のバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3に達するまでに蒸着を完了させる方法、融点の2/3の温度に達するまでにいったん蒸着を中断し、被処理物を冷却した後、蒸着を再開し、これを繰り返す方法、円筒形バレルに冷却水や冷却ガスなどを使用した冷却機構を導入し、被処理物の温度を融点の2/3の温度以下に維持する方法、蒸発部からの輻射熱を抑制するための遮蔽板を配置する方法などがある。
【0014】
また、図2に示すような蒸着装置を用いれば、被処理物の温度が必要以上に上昇することを効果的に抑制することができ、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を容易に行うことができる。
【0015】
図2は、図略の真空排気系に連なる真空処理室51の内部の模式的正面図(一部透視図)である(希土類系永久磁石表面にアルミニウム蒸着被膜を形成するための装置を例にとって説明する)。
室内上方には、水平方向の回転軸線上の回転シャフト56を中心に回転自在とした支持部材57が2個併設されており、この支持部材57の回転シャフト56の周方向の外方に6個の例えば、ステンレス製のメッシュ金網で形成された円筒形バレル55が支持軸58によって公転自在に環状に支持されている。また、室内下方には、金属蒸着材料を蒸発させる蒸発部であるボート52が、支持テーブル53上に立設されたボート支持台54上に複数個配置されている。
支持テーブル53の下方内部には、金属蒸着材料であるアルミニウムのワイヤー59が繰り出しリール60に巻回保持されている。アルミニウムワイヤー59の先端はボート52の内面に向かって臨ませた耐熱性の保護チューブ61によってボート52の上方に案内されている。保護チューブ61の一部には切り欠き窓62が設けられており、この切り欠き窓62に対応して設けられた繰り出しギア63がアルミニウムワイヤー59に直接接触し、アルミニウムワイヤー59を繰り出すことによってボート52内にアルミニウムが絶えず補給されるように構成されている。
【0016】
図3は、水平方向の回転軸線上の回転シャフト56を中心に回転自在とした支持部材57の回転シャフト56の周方向の外方に6個のステンレス製のメッシュ金網で形成された円筒形バレル55が支持軸58によって公転自在に環状に支持されていることを示す模式的斜視図である(2連で支持されているので支持されている円筒形バレルの合計数は12個)(磁石は未収容)。
【0017】
回転シャフト56を中心に支持部材57を回転させると(図2矢印参照)、支持部材57の回転シャフト56の周方向の外方に支持軸58によって支持されている円筒形バレル55は、これに対応して、回転シャフト56を中心に公転運動する。その結果、個々の円筒形バレルと支持部材の下方に配置された蒸発部との間の距離が変動することになり、以下の効果が発揮される。
即ち、支持部材57の下部に位置した円筒形バレルは蒸発部に接近している。従って、この円筒形バレルに収容された希土類系永久磁石80に対しては、その表面に金属蒸着被膜が効率よく形成される。一方、蒸発部から遠ざかった円筒形バレルに収容された希土類系永久磁石は、蒸発部から遠ざかった分だけ温度上昇が抑制される。従って、この間、その表面に形成された金属蒸着被膜の軟化が抑制される。このように、この蒸着装置を用いれば、金属蒸着被膜の効率的形成と形成された金属蒸着被膜の軟化抑制を同時に達成することが可能となり、突起物生成を効果的に抑制することができる。
【0018】
この蒸着装置は、上記の効果を発揮するとともに、以下の利点を有する点において都合がよい。
即ち、大量処理を行う場合でも、図1に示す蒸着装置のように1個の円筒形バレルに磁石を大量に収容するよりも、この蒸着装置における各円筒形バレルに少量ずつ収容する方が、バレル内での磁石同士の衝突回数や擦れ合い回数などを減少させることができるので、被膜の損傷に起因する突起物の生成をさらに抑制することが可能となる。
また、弓型形状の磁石や大型磁石などのように、図1に示す蒸着装置におけるR(曲率半径)が大きい円筒形バレルに収容して蒸着処理した場合、バレル内面に沿って滑り落ちてしまい、バレル内面との擦れにより被膜が損傷しやすい磁石であっても、この蒸着装置における小さいRの各円筒形バレルに収容して蒸着処理することにより、攪拌を均一に行うことができるようになるので、被膜の損傷に起因する突起物の生成をさらに抑制することが可能となる。
また、従来は、磁石同士の衝突回数や擦れ合い回数などを減少させるために、バレル内に磁石とともに収容することがあったダミー(例えば、直径10mmのセラミックスボールが挙げられる)を使用する方法を採用する場合があったが、この蒸着装置を使用することでその必要がなくなり、磁石への被膜形成効率を向上させることが可能となるので、磁石の温度が、金属蒸着材料のバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3に達するまでに蒸着を完了させる事が容易となる。
【0019】
なお、図2および図3に示す蒸着装置においては、真空処理室51の室内上方に円筒形バレル55を支持する支持部材57が配置され、室内下方に蒸発部であるボート52が配置されているが、支持部材と蒸発部との位置関係は、この位置関係に限定されるものではなく、支持部材を回転させることによって、円筒形バレルと蒸発部との間の距離が可変自在となるような位置関係であれば、支持部材と蒸発部は真空処理室内のどのような場所に配置されていてもかまわない。しかしながら、支持部材の外方に蒸発部を配置すれば、支持部材と蒸発部との間の距離の設定を真空処理室の内部空間の中で広範囲に行うことができるので、金属蒸着被膜の効率的形成と形成された被膜の軟化抑制を行うために望ましい距離の設定を容易に行うことが可能となり、また、金属蒸着材料を溶融しながら蒸発させて蒸着被膜形成を行う場合であっても、各部材の配置を容易に設定でき、取り扱いにも優れたものとなる。
また、図2および図3に示す蒸着装置においては、1個の支持部材57の片面に6個の円筒形バレル55が支持されているが(2連で支持されているので支持されている円筒形バレルの合計数は12個)、支持部材に支持される円筒形バレルの個数はこれに限るものではなく、1個であってもかまわない。
また、円筒形バレル55は、支持軸58を回転させることによって、支持部材57の回転シャフト56を中心に公転運動するとともに自体公知の機構によって自転運動するように支持されていてもよい。
【0020】
また、図4に示すような蒸着装置を用いても、被処理物の温度が必要以上に上昇することを効果的に抑制することができ、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を容易に行うことができる。
【0021】
図4は、図略の真空排気系に連なる真空処理室101の内部の模式的正面図(一部透視図)である(希土類系永久磁石表面にアルミニウム蒸着被膜を形成するための装置を例にとって説明する)。
室内上方には、例えば、ステンレス製のメッシュ金網で形成された、水平方向の回転軸線上の回転シャフト106を中心に回転自在の円筒形バレル105が2個併設されている。この円筒形バレル105は、その内部が回転軸線から放射状に6分割されて断面が扇形の収容部が形成されている。また、室内下方には、金属蒸着材料を蒸発させる蒸発部であるボート102が、支持テーブル103上に立設されたボート支持台104上に複数個配置されている。
支持テーブル103の下方内部には、金属蒸着材料であるアルミニウムのワイヤー109が繰り出しリール110に巻回保持されている。アルミニウムワイヤー109の先端はボート102の内面に向かって臨ませた耐熱性の保護チューブ111によってボート102の上方に案内されている。保護チューブ111の一部には切り欠き窓112が設けられており、この切り欠き窓112に対応して設けられた繰り出しギア113がアルミニウムワイヤー109に直接接触し、アルミニウムワイヤー109を繰り出すことによってボート102内にアルミニウムが絶えず補給されるように構成されている。
【0022】
図5は、ステンレス製のメッシュ金網で形成された、水平方向の回転軸線上の回転シャフト106を中心に回転自在の、内部が回転軸線から放射状に6分割されて断面が扇形の収容部が形成された円筒形バレル105を示す模式的斜視図である(磁石は未収容)。
【0023】
回転シャフト106を中心に円筒形バレル105を回転させると(図4矢印参照)、円筒形バレルの内部に形成された個々の収容部と、その下方に配置された蒸発部との間の距離が変動することになり、図2および図3に示す蒸着装置を用いて蒸着を行った場合と同様、突起物の生成を効果的に抑制することができる。
【0024】
なお、図4および図5に示す蒸着装置においては、真空処理室101の室内上方に内部が回転軸線から放射状に6分割されて断面が扇形の収容部が形成された円筒形バレル105が配置され、室内下方に蒸発部であるボート102が配置されているが、円筒形バレルと蒸発部との位置関係は、この位置関係に限定されるものではなく、円筒形バレルを回転させることによって、収容部と蒸発部との間の距離が可変自在となるような位置関係であれば、円筒形バレルと蒸発部は真空処理室内のどのような場所に配置されていてもかまわない。
また、図4および図5に示す蒸着装置においては、円筒形バレルの内部が回転軸線から放射状に6分割されて断面が扇形の収容部が形成されているが、円筒形バレルの内部に形成される収容部は、円筒形バレルを回転させることによって、収容部と蒸発部との間の距離が可変自在となるものであれば、どのような分割形態によって形成されたものであってもかまわない。
【0025】
以上のような蒸着装置における収容部材としてのバレルの形状は、筒型であれば円筒形に限定されるものではなく、断面が6角形や8角形などの多角筒形であってもよい。
また、メッシュとしては、ステンレス製やチタン製のメッシュ金網などが挙げられる。メッシュの材質としてステンレスやチタンが望ましいのは、材質強度に優れることや、バレルに付着した蒸着材料の除去作業に使用されるアルカリ性水溶液などのエッチング液や剥離液に対する耐久性に優れることなどからである。なお、メッシュは、平板の打ち抜きやエッチングによって得られた網状板を使用して作成されたものであってもよいし、線状体を編んで作成されたものであってもよい。
また、メッシュの開口率(メッシュの面積に対する開口部の面積の割合)は、被処理物の形状や大きさにも依存するが、被処理物への被膜形成効率を向上させ、被処理物の温度が、金属蒸着材料のバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3に達するまでに蒸着を容易に完了させるためには50%以上とすることが望ましく、60%以上とすることがより望ましい。開口率の上限は特段制限されるものではないが、95%よりも大きいとメッシュが蒸着処理時やその他の取り扱いの際に変形したり破損したりしてしまう恐れがあるので、95%以下が望ましく、85%以下がより望ましい。なお、メッシュの線径は、その開口率や強度を考慮して選定されるものであるが、一般には、0.1mm〜10mmが望ましい。さらに、取り扱いの容易性などを考慮すると、0.3mm〜5mmがより望ましい。
【0026】
本発明において適用される、真空処理室内に、蒸着材料の蒸発部と、被処理物を保持するための保持部材を備え、前記保持部材を水平方向の回転軸線を中心に回転させながら、蒸着材料を被処理物の表面に蒸着させることができる蒸着装置としては、例えば、図1に示す装置において、円筒形バレルの代わりに図6に示す治具を使用した装置が挙げられる。即ち、水平方向の回転軸線上の回転シャフト156を中心に回転自在とした支持部材157の回転シャフト156の周方向の外方に保持部材としてリング状磁石などの中空部を有する被処理物190を吊り下げるための吊り下げ部材160が公転自在に支持されており、支持部材157を回転させることにより、支持部材157の回転シャフト156を中心に吊り下げ部材160が公転運動する装置が挙げられる。このような装置を用いて蒸着を行った場合、吊り下げ部材と、該部材に吊り下げられた被処理物の該部材との当接部分である内周面とで擦れ合いが生じ、その部分に形成された金属蒸着被膜が損傷を受け、その一部が削れ、さらに削れた切片が吊り下げ部材と擦れ合うことによって粒状化して他の被膜部分に付着し、その上にさらに被膜が形成されることで除去不可能な突起物となる恐れがある。従って、このような装置を用いて蒸着を行う際にも、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を行うことで本発明の効果が得られる。
【0027】
以上のような蒸着装置において、収容部材や保持部材を支持部材から着脱自在に構成したり、支持部材を真空処理室から着脱自在に構成することには以下のような利点がある。即ち、被処理物の出し入れを任意の場所で行うことが可能となるので、利便性が向上する。また、通常、1回の蒸着処理が完了した際、収容部材や保持部材はそれ自体が加熱されて高い温度になっている。この状態のままの収容部材や保持部材を使用して次の蒸着処理を行った場合、被処理物の温度が必要以上に上昇してしまう恐れがある。従って、次の蒸着処理を行うまでには時間をかけて収容部材や保持部材を冷やすことが望ましい。収容部材や保持部材を着脱自在に構成し、同一形状のものを複数個準備しておけば、1回の蒸着処理に使用した収容部材や保持部材を取り外し、別の収容部材や保持部材を取り付けてすぐに次の蒸着処理を行うことができるので、大量処理を効率よく行うことが可能となる。
また、以上のような蒸着装置における収容部材の内部の長手方向を分割して2以上の収容区画部を形成し、各収容区画部に被処理物を1つずつまたは少量ずつ収容して処理することにより、収容部材内部で被処理物同士が衝突することによって被処理物に割れや欠けが発生することを抑制することができるので、被処理物の損傷に伴う突起物生成の抑制をより効果的に行うことが可能となる。
【0028】
【実施例】
本発明を以下の実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、以下の実施例と比較例は、例えば、米国特許4770723号公報や米国特許4792368号公報に記載されているようにして、公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼結、熱処理、表面加工を行うことによって得られたNd14Fe79Co組成の直径9mm×厚さ3mm寸法の焼結磁石(以下、磁石体試験片と称する)を用いて行った。
【0029】
実施例1:
円筒形バレルが直径355mm×長さ1200mmのステンレス製で、メッシュの開口率が64%(開口部となる目開きが一辺が4mmの正方形で、線径が1mm)である図1で示した蒸着装置(但し、蒸発部に関する構成は図2で示した蒸着装置と同じ)を用いて以下の実験を行った。
磁石体試験片に対し、ショットブラスト加工を行い、前工程の表面加工で生じた試験片表面の酸化層を除去した。この酸化層が除去された磁石体試験片を2個の円筒形バレルの各々に5000個ずつ、合計10000個収容した。真空処理室内を1×10−3Pa以下に真空排気した後、回転シャフトを1.5rpmで回転させながら、Arガス圧1Pa、バイアス電圧−500Vの条件下、20分間スパッタリングして磁石体試験片表面を清浄化した。続いて、Arガス圧1Pa、バイアス電圧−100Vの条件下、金属蒸着材料としてアルミニウムワイヤーをワイヤー送り速度3g/minで補給しながら、これを加熱して蒸発させ、イオン化し、20分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面にアルミニウム蒸着被膜を形成した。放冷後、アルミニウム蒸着被膜を有する磁石体試験片について以下の項目を評価した。
▲1▼ 蒸着終了時の磁石体試験片の温度(n=10の平均値)
▲2▼ 蒸着終了時のアルミニウム蒸着被膜のビッカース硬度(n=3の平均値)
▲3▼ 形成されたアルミニウム蒸着被膜の膜厚(n=10の平均値)
▲4▼ 個々の磁石体試験片の外観
▲5▼ JIS B0601−1994における粗さ曲線の平均線より100μmを越える高さの突起物が1つ以上生成してしまった磁石体試験片の個数(突起不良数)(n=500)
▲6▼ 投射材(新東ブレーター株式会社製のガラスビーズ・商品名:GB−AG)を投射圧0.2MPaで投射してピーニング処理した後、温度80℃×相対湿度90%の高温高湿条件下にて500時間放置するという条件での耐食性試験を行い、錆が発生した磁石体試験片の個数(発錆不良数)(n=10)
▲7▼ 上記の条件によるピーニング処理後の磁石体試験片をシアノアクリレート樹脂系接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製の商品名:ロックタイト406)を用いて鋳鉄製治具に接着し、24時間放置後に圧縮せん断強度を測定することによる接着強度の測定(n=10の平均値)
なお、▲1▼の磁石体試験片の温度の測定は、▲2▼〜▲7▼の評価を行った蒸着被膜形成と同時に行わず、その蒸着被膜形成条件と同様の条件下で別途行った。具体的な方法は、各指示温度を示す複数のサーモクレヨン(日油技研工業株式会社製)を削ったものをアルミニウム箔に包み、これを磁石体試験片に巻き付けて蒸着を行った後、どの温度に対応するサーモクレヨンが溶融したかを確認する方法を採った。また、▲2▼の蒸着終了時のアルミニウム蒸着被膜のビッカース硬度は、測定装置として日本光学株式会社製の高温顕微硬度計QM型を使用し、上記の方法で得られたアルミニウム蒸着被膜を有する磁石体試験片を蒸着終了時の温度にまで加温し、試験加重0.5N、加重負荷時間30秒の条件で測定した。また、▲5▼の突起不良数は、上記の方法で得られたアルミニウム蒸着被膜を有する磁石体試験片の外観を拡大鏡(10倍)にて観察し、突起物の存在が確認された場合には、その最大突起物についてその高さを走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパス光学工業株式会社製のOLS1100)を使用して判定の上、求めた。
結果を表1に示す。
【0030】
実施例2:
図2および図3で示した蒸着装置を用いて以下の実験を行った。ここで、円筒形バレルは、直径110mm×長さ600mmのステンレス製で、メッシュの開口率が64%(開口部となる目開きが一辺が4mmの正方形で、線径が1mm)のものであり、1個の支持部材に6個(2連で合計12個)支持されている。
磁石体試験片に対し、ショットブラスト加工を行い、前工程の表面加工で生じた試験片表面の酸化層を除去した。この酸化層が除去された磁石体試験片を12個の円筒形バレルの各々に850個ずつ、左右2セットで、合計20400個収容した。その後、実施例1と同様にして40分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面にアルミニウム蒸着被膜を形成し、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0031】
実施例3:
実施例1において、2個の円筒形バレルの各々に酸化層が除去された磁石体試験片を5000個ずつ、合計10000個収容し、20分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面に膜厚が10μmのアルミニウム蒸着被膜を形成した代わりに、2個の円筒形バレルの各々に酸化層が除去された磁石体試験片を7500個ずつ、合計15000個収容し、30分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面にアルミニウム蒸着被膜を形成し(この他の条件は実施例1と同様)、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0032】
実施例4:
実施例1において、2個の円筒形バレルの各々に酸化層が除去された磁石体試験片を5000個ずつ、合計10000個収容し、20分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面に膜厚が10μmのアルミニウム蒸着被膜を形成した代わりに、2個の円筒形バレルの各々に酸化層が除去された磁石体試験片を10000個ずつ、合計20000個収容し、40分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面にアルミニウム蒸着被膜を形成し(この他の条件は実施例1と同様)、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0033】
比較例1:
実施例4において、アルミニウムワイヤーをワイヤー送り速度3g/minで補給しながら、40分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面に膜厚が10μmのアルミニウム蒸着被膜を形成した代わりに、アルミニウムワイヤーをワイヤー送り速度1.5g/minで補給しながら、80分間イオンプレーティング法にて磁石体試験片表面にアルミニウム蒸着被膜を形成し(この他の条件は実施例4と同様)、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004715047
【0035】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例4では磁石体試験片の温度を、アルミニウムのバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3以下、即ち、440℃以下に維持して蒸着を行うことで、磁石体試験片の表面に形成された被膜のビッカース硬度が25以上に維持されたので、被膜における突起物の生成を効果的に抑制することができ(例えば実施例1においては突起物が存在したがその高さの最大は30μm程度であった)、接着剤との間でも優れた接着強度を得ることができた。また、被膜自体の損傷も抑制され、形成された被膜は外観や耐食性においても優れたものであった。
一方、比較例1においては、実施例4における蒸着時間の2倍の蒸着時間をかけて被膜を形成したので、時間が長いだけ磁石体試験片が必要以上に加熱され、その温度が440℃を越えてしまった。これにより、磁石体試験片の表面に形成された被膜のビッカース硬度が25よりも小さくなり、軟化してしまって損傷しやすくなり、その結果、100μmを越える高さの突起物が多数生成してしまった。突起物が生成した磁石体試験片を接着剤を用いて鋳鉄製治具に接着しようとしても、通常の接着条件では接着剤が十分硬化せず、優れた接着強度を得ることはできなかった。また、被膜自体も損傷を受け、外観や耐食性において満足できるものではなかった。
【0036】
実施例5:
円筒形バレルが直径355mm×長さ1200mmのステンレス製で、メッシュの開口率が64%(開口部となる目開きが一辺が4mmの正方形で、線径が1mm)である図1で示した蒸着被膜形成装置を用いて以下の実験を行った。
磁石体試験片に対し、ショットブラスト加工を行い、前工程の表面加工で生じた試験片表面の酸化層を除去した。この酸化層が除去された磁石体試験片を2個の円筒形バレルの一方に5000個収容した。真空処理室内を1×10−3Pa以下に真空排気した後、回転シャフトを1.5rpmで回転させながら、Arガス圧1Pa、バイアス電圧−500Vの条件下、20分間スパッタリングして磁石体試験片表面を清浄化した。続いて、Arガス圧0.1Paの条件下、金属蒸着材料として亜鉛インゴットを用い、電子ビーム加熱法による真空蒸着法にて磁石体試験片表面に亜鉛蒸着被膜を形成した。なお蒸着は、15分毎にインゴットの加熱を停止し、10分間放置した後、加熱を再開するという操作を4回繰り返して、磁石の温度上昇を抑制しながら延べ1時間行った。放冷後、亜鉛蒸着被膜を有する磁石体試験片について以下の項目を評価した。
▲1▼ 蒸着終了時の磁石体試験片の温度(n=10の平均値)
▲2▼ 蒸着終了時の亜鉛蒸着被膜のビッカース硬度(n=3の平均値)
▲3▼ 形成された亜鉛蒸着被膜の膜厚(n=10の平均値)
▲4▼ 個々の磁石体試験片の外観
▲5▼ JIS B0601−1994における粗さ曲線の平均線より100μmを越える高さの突起物が1つ以上生成してしまった磁石体試験片の個数(突起不良数)(n=500)
なお、▲1▼の磁石体試験片の温度の測定は、▲2▼〜▲5▼の評価を行った蒸着被膜形成と同時に行わず、その蒸着被膜形成条件と同様の条件下で別途行った。具体的な方法は、各指示温度を示す複数のサーモクレヨン(日油技研工業株式会社製)を削ったものを亜鉛箔に包み、これを磁石体試験片に巻き付けて蒸着を行った後、どの温度に対応するサーモクレヨンが溶融したかを確認する方法を採った。また、▲2▼の蒸着終了時の亜鉛蒸着被膜のビッカース硬度は、実施例1に記載した方法と同様の方法によって測定した。また、▲5▼の突起不良数は、実施例1に記載した方法と同様の方法によって判定の上、求めた。
結果を表2に示す。
【0037】
比較例2:
実施例5において、加熱停止→放置→加熱再開という操作を行うことなく、連続的に1時間インゴットを加熱して蒸着を行い、磁石体試験片表面に亜鉛蒸着被膜を形成し、実施例5と同様の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0004715047
【0039】
表2から明らかなように、磁石体試験片の表面に亜鉛蒸着被膜を形成する場合、磁石体試験片の温度を、亜鉛のバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3以下、即ち、280℃以下に維持して蒸着を行うことで、磁石体試験片の表面に形成された被膜のビッカース硬度が25以上に維持されたので、被膜に突起物の生成がなく、被膜自体も外観において優れたものであった。一方、磁石体試験片の温度が280℃を超えると、被膜に100μmを越える高さの突起物が多数生成してしまい、また、被膜自体も損傷を受け、外観や耐食性において満足できるものではなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、真空処理室内に、蒸着材料の蒸発部と、被処理物を収容または保持するための収容部材または保持部材を備えた蒸着装置を用い、前記収容部材または保持部材を水平方向の回転軸線を中心に回転させながら、金属蒸着材料を被処理物の表面に蒸着させるに際し、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して蒸着を行うことで、被処理物の表面に形成された金属蒸着被膜が軟化し、被処理物同士の衝突や擦れ合い、被処理物とバレル壁面との衝突や擦れ合いにより、形成された被膜が損傷しやすくなることを抑制し、その結果として被膜に突起物が生成してしまうことを効果的に抑制することができる。
被処理物の表面に金属蒸着被膜を形成した後、連続的にその表面にAlやTiNなどのセラミック被膜を形成する場合、金属蒸着被膜に突起物が生成してしまうと、その後に形成されるセラミック被膜の接着剤との接着信頼性や寸法精度に影響を及ぼしてしまうが、本発明によれば、このような悪影響についても回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に適用される蒸着装置の一例の真空処理室の内部の模式的正面図(一部透視図)。
【図2】 本発明に適用される蒸着装置のその他の例の真空処理室の内部の模式的正面図(一部透視図)。
【図3】 その支持部材に支持された円筒形バレルの模式的斜視図。
【図4】 本発明に適用される蒸着装置の更なるその他の例の真空処理室の内部の模式的正面図(一部透視図)。
【図5】 その内部が分割された円筒形バレルの模式的斜視図。
【図6】 本発明に適用される蒸着装置の更なるその他の例に使用される治具の模式的斜視図。
【符号の説明】
1、51、101 真空処理室
2、52、102 ボート(蒸発部)
5、55、105 円筒形バレル
6、56、106、156 回転シャフト
57、157 支持部材
58 支持軸
59、109 アルミニウムワイヤー
30、80、130 希土類系永久磁石
160 保持部材(吊り下げ部材)
190 リング状磁石

Claims (10)

  1. 真空処理室内に、蒸着材料の蒸発部と、被処理物を収容するための収容部材を備えた蒸着装置を用い、複数個の被処理物を収容した収容部材を水平方向の回転軸線を中心に回転させながら、金属蒸着材料としてアルミニウムを被処理物の表面に蒸着させるに際し、収容部材に収容された被処理物の温度を350℃以下に維持することによってアルミニウムのバルクにおける融点(Tm)(℃)の2/3以下に維持し、被処理物の表面に形成された被膜のビッカース硬度を25以上に維持して被処理物同士の衝突や擦れ合いによる被膜の損傷を抑制しながら蒸着を行うことを特徴とするアルミニウム蒸着被膜における突起物生成の抑制方法。
  2. 蒸着を真空蒸着法またはイオンプレーティング法によって行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記収容部材が着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記収容部材がメッシュで形成された筒型バレルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記筒型バレルが水平方向の回転軸線を中心に回転自在とした支持部材の回転軸線の周方向の外方に公転自在に支持されており、支持部材を回転させることにより、支持部材の回転軸線を中心に公転運動することを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 前記筒型バレルおよび/または前記筒型バレルを支持する支持部材が着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 前記筒型バレルが支持部材の回転軸線の周方向の外方に環状に複数個支持されていることを特徴とする請求項5記載の方法。
  8. 前記筒型バレルの内部が分割されて2以上の収容部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の方法。
  9. 前記筒型バレルの内部が回転軸線から放射状に分割されて2以上の収容部が形成されていることを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 前記被処理物が希土類系永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の方法
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