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JP4793252B2 - 車両 - Google Patents

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JP4793252B2 JP2006344587A JP2006344587A JP4793252B2 JP 4793252 B2 JP4793252 B2 JP 4793252B2 JP 2006344587 A JP2006344587 A JP 2006344587A JP 2006344587 A JP2006344587 A JP 2006344587A JP 4793252 B2 JP4793252 B2 JP 4793252B2
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Description

本発明は、一対の車輪によって車体を倒立振子状に支持しつつ走行する車両に関し、特に、乗員が望んだ車体姿勢を維持可能であり、かつ、車体の姿勢に関わらず、車両の前後方向加速度に対する対応範囲を一定にすることができる車両に関する。
近年、一対の車輪によって車体を倒立振子状に支持しつつ走行する車両(以下、「倒立姿勢車両」と称す。)が実用化されつつあり、この倒立姿勢車両における車体の倒立姿勢制御に関する種々の技術が提案されている。
例えば、次の特許文献1には、車体(乗員が乗車する筐体)の傾斜量に応じてバランサ(カウンタウェイト)を移動させることで、車体の重心を移動してバランスを取り、車体を倒立した姿勢に保つ技術が開示されている。
特開2004−129435号公報
ところで、通常の4輪車両などにおいて必ず備えられている構成として、リクライニング機構が有る。これは、安全に車両を運転操作するため、また、疲れない姿勢で運転するため、各自の体格に合わせてシート角度を調整する重要な機構である。このような機構は当然、上述のような倒立姿勢制御を行う車両においても必要な構成になり、そのためには、同様に搭乗部のシートにリクライニング機構をつけるか、もしくは、基準となる車体の角度を変更する構成とする必要がある。
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている技術では、車体の傾斜角度(搭乗部のシート傾斜を含む)を所望する傾斜角度に調節することはできたとしても、車体を所望する傾斜角度に調節した場合、加速度に対する対応可能範囲が変化してしまうという問題点があった。
この問題点について図10を参照して説明する。図10は、上述した問題点を説明するための図であり、図10(a)は車体110が基準姿勢、図10(b)は車体110が基準姿勢よりも前傾姿勢、図10(c)は車体110が基準姿勢よりも後傾姿勢にある状態を示している。
本出願人が提案する倒立姿勢車両としての車両100は、乗員Pが乗車する搭乗部Cを含む車体110と、その車体110を倒立振子状に支持する左右一対の車輪101と、車体110に対し相対的に移動するバランサ102と、そのバランサ102の移動範囲を規定するスライダ103とを備えている。
尚、図10(a)に示す基準姿勢とは車体110の傾斜角度が鉛直軸Avと一致している姿勢であり、図10(b)に示す前傾姿勢とは車体110の傾斜角度が鉛直軸Avよりも反時計回りにθ傾いた姿勢であり、図10(c)に示す後傾姿勢とは車体110の傾斜角度が鉛直軸Avよりも時計回りにθ傾いた姿勢である。
図10(a)に示す基準姿勢にある車体110を、図10(b)に示す前傾姿勢に調節する場合には、車体110が基準姿勢にある状態で車輪101に時計回りにトルクをかけ、車両100を後方に走行させると、車体110は加速度の影響を受けて前方に傾斜するので、その車体110が所望する傾斜角度θになるように、バランサ102を後方に移動させることで、車体110を所望する傾斜角度θに調節することができる。
同様に、図10(a)に示す基準姿勢にある車体110を、図10(c)に示すように後傾姿勢に調節する場合には、車体110が基準姿勢にある状態で車輪101に反時計回りにトルクをかけ、車両100を前方に走行させると、車体110は加速度の影響をを受けて後方に傾斜するので、その車体110が所望する傾斜角度θになるように、バランサ102を前方に移動させることで、車体110を所望する傾斜角度θに調節することができる。
一方、車体110を図10(a)に示す基準姿勢で走行させる場合、バランサ102はスライダ103の中心位置に位置しているので、バランサ102は更に前後に移動することができ、バランサ102を前後に移動させることで基準姿勢を維持したまま、更なる加速度を加えることができる。
しかしながら、車体110を図10(b)に示す前傾姿勢で走行させる場合、バランサ102は既にスライダ103の後端に位置しているので、バランサ102を、これ以上後方に移動させることができず、車体110に更なる加速度が加わった場合に、かかる前傾姿勢を維持することができない。
同様に、車体110を図10(c)に示す後傾姿勢で走行させる場合、バランサ102は既にスライダ103の前端に位置しているので、バランサ102を、これ以上前方に移動させることができず、車体110に更なる加速度が加わった場合に、かかる後前傾姿勢を維持することができない。
このように、バランサ102の位置を調節することで、車体110の傾斜角度を所望する傾斜角度に調節することはできたとしても、車体110を所望する傾斜角度に調節した場合における車両の前後方向加速度に対する対応可能範囲が、基準姿勢における車両の前後方向加速度に対する対応可能範囲から変化してしまうという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、乗員が望んだ車体姿勢を維持可能であり、かつ、車体の姿勢に関わらず、車両の前後方向加速度に対する対応範囲を一定にすることができる車両を提供することを目的としている。
この目的を解決するために請求項1記載の車両は、搭乗部を有する車体と、その車体に支持されると共に、その車体に対し相対移動するスライダと、そのスライダに支持されると共に、そのスライダに対し相対移動するバランサと、前記スライダを所定位置に保持したまま、そのスライダに対して基準位置にある前記バランサを加速度に応じて移動させながら前記車体を基準姿勢で走行させる場合から、前記基準姿勢とは姿勢が異なる変形姿勢で走行させることを指示する指示手段と、その指示手段によって指示された変形姿勢にするために、前記バランサは前記スライダに対して前記基準位置に保持したまま、前記スライダを前記所定位置から移動させるスライダ移動手段と、そのスライダ移動手段によって前記スライダを移動させて前記車体が前記変形姿勢になった後で、その変形姿勢における前記スライダの位置は保持したまま、前記スライダに対して前記基準位置にある前記バランサを加速度に応じて移動させるバランサ移動手段とを備えている。
請求項2記載の車両は、請求項1記載の車両において、前記指示手段は、前記車体の傾斜角度を指示することを特徴とする。
請求項3記載の車両は、請求項1又は2に記載の車両において、前記車体の重心位置と、前記バランサの重心位置と、前記スライダの重心位置とを重心位置情報として記憶する記憶手段と、前記搭乗部に乗車している乗員の重心位置を推定する推定手段とを備え、前記スライダ移動手段は、前記記憶手段に記憶されている重心位置情報と、前記推定手段によって推定された乗員の重心位置とに基づいて、前記スライダを移動させることを特徴とする。
請求項4記載の車両は、搭乗部を有する車体と、その車体に支持されると共に、その車体に対し相対移動するスライダと、前記スライダに支持されると共に、そのスライダに対し相対移動するバランサと、前記車体の基準姿勢を変形姿勢に変化させることを指示する指示手段と、その指示手段によって指示された変形姿勢に基づいて、前記基準姿勢における前記スライダに対する前記バランサの位置を保持したまま、前記スライダを移動させるスライダ移動手段と、前記車体の重心位置と、前記バランサの重心位置と、前記スライダの重心位置とを重心位置情報として記憶する記憶手段と、前記搭乗部に乗車している乗員の重心位置を推定する推定手段とを備え、前記スライダ移動手段は、前記記憶手段に記憶されている重心位置情報と、前記推定手段によって推定された乗員の重心位置とに基づいて、前記スライダを移動させる。
請求項1記載の車両によれば、スライダを所定位置に保持したまま、そのスライダに対して基準位置にあるバランサを加速度に応じて移動させながら車体を基準姿勢で走行させる場合から、基準姿勢とは姿勢が異なる変形姿勢で走行させることが指示手段によって指示される。その指示がされると、スライダ移動手段によって、バランサはスライダに対して基準位置に保持したままで、スライダを所定位置から移動させ、車体の姿勢を変形姿勢にする。そして、そのスライダ移動手段によってスライダを移動させて車体が変形姿勢になった後で、その変形姿勢におけるスライダの位置は保持したまま、バランサ移動手段によってスライダに対して基準位置にあるバランサを加速度に応じて移動させる。よって、車体を基準姿勢で走行させる場合でも、変形姿勢で走行させる場合でも、スライダに対して同じ基準位置にあるバランサを、加速度に応じて移動させながら走行できる。即ち、車体を基準姿勢で走行させる場合と、変形姿勢で走行させる場合とで、バランサの移動範囲を同じにできる。従って、基準姿勢を維持して走行させる場合と、変形姿勢を維持して走行させる場合とで、対応可能な加速度の範囲の差を小さくできるという効果がある。
請求項2記載の車両によれば、請求項1記載の車両の奏する効果に加え、指示手段は、車体の傾斜角度を指示するので、車体の姿勢として、車体の傾斜角度を調節することができるという効果がある。
請求項3記載の車両によれば、請求項1又は2に記載の車両の奏する効果に加え、スライダ移動手段は、記憶手段に記憶されている重心位置情報と、推定手段によって推定される乗員の重心位置とに基づいてスライダを移動させるので、搭乗部に乗車する乗員に応じてスライダを移動させることができるという効果がある。
請求項4記載の車両によれば、基準姿勢を維持して走行させる場合と、変形姿勢を維持して走行させる場合とで、対応可能な加速度の範囲の差を小さくできるという効果がある。また、搭乗部に乗車する乗員に応じてスライダを移動させることができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の車両1の正面図であり、図1(b)は、車両1の側面図である。なお、図1では、乗員Pが搭乗部11に乗車している状態を示している。また、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
車両1は、一対の車輪12L,12Rによって車体10を倒立振子状に保ちつつ走行するものであって、特に、車体10の姿勢に関わらず、加速度に対する対応可能範囲を一定にすることができるものである。
車両1は、一対の車輪12L,12Rと、その一対の車輪12L,12Rに対して倒立振子状に支持される車体10と、その車体10に対して相対的に移動して車体10のバランスをとるためのバランサ機構80とを備えている。
一対の車輪12L,12Rは、図示しない電動モータから伝達される駆動力によって回転可能に構成されている。図示しない電動モータは、インホイールモータとして車輪12LにLモータ52L(図3参照)、車輪12RにRモータ52R(図3参照)が、それぞれ配設されている。
このように、左右の車輪12L,12Rのそれぞれ回転駆動力を付与する構成にすることで、例えば、デファレンシャル装置を設けると共に、そのデファレンシャル装置と左右の車輪12L,12Rとを等速ジョイントで連結するといった複雑な構成を設けることなく、左右の車輪12L,12Rを差動させることができる。但し、デファレンシャル装置及び等速ジョイントを介して1のモータ装置と左右の車輪12L,12Rとを接続するように構成しても良い。
車体10は、一対の車輪12L,12Rの間に配設されているリンク機構30と、そのリンク機構30の上方(矢印U方向)に配設され乗員Pが乗車する搭乗部11と、その搭乗部11とリンク機構30とを連結する連結リンク40とを備えている。
リンク機構30は、一対の車輪12L,12Rを連動して作動させるものであり、上部リンク31と、その上部リンク31の下方に配設される下部リンク32とを備えている。上部リンク31の両端と、下部リンク32の両端とは、図示しないLモータ52L(図3参照)、図示しないRモータ52R(図3参照)とに軸支されており、リンク機構30は4節の平行リンクとして機能する。
そして、一対の車輪12L,12Rに対して斜めに配設されている伸縮式の電動アクチュエータであるリンクアクチュエータ53aが、図1(a)に示す状態から伸長し、車輪12Rを斜め右方に傾斜させると、それに連れて車輪12Lも斜め右方に傾斜し、車輪12L、12Rに右旋回用のキャンバー角が付与される。
一方、リンクアクチュエータ53aが、図1(a)に示す状態から収縮し、車輪12Rを斜め左方に傾斜させると、それに連れて車輪12Lも斜め左方に傾斜し、車輪12L、12Rに左旋回用のキャンバー角が付与される。
搭乗部11は、乗員Pの尻部を支持する座面部11aと、その座面部11aの後方側(矢印B側)から上方に延びて乗員Pの背中を支持する背面部11bと、座面部11aの左右両側(矢印L側および矢印R側)から上方に延びて乗員Pの上腕部を支持する一対のアームレスト11cと、座面部11aの前方側(矢印F側)から下方(矢印D方向)に延びて乗員Pの足部を支持するフットレスト11dとを備えている。
アームレスト11cの一方(矢印R側)には、ジョイスティック装置51が配設されており、乗員Pは、このジョイスティック装置51を操作して、車両1の走行状態(例えば、進行方向、走行速度、旋回方向、或いは、旋回半径など)を指示することができる。
アームレスト11cの他方(矢印L側)には、マンマシンインタフェース59と、そのマンマシンインタフェース59の手前側(矢印B側)に傾斜角度調節ダイヤル37とが配設され、乗員Pは、マンマシンインタフェース59を操作して、自身の身長を入力することができ、傾斜角度調節ダイヤル37を操作して、車体10の傾斜角度を調節することができる。
尚、背面部11bの後方には、後述する制御装置70(図3参照)、各種センサ装置(図示せず)或いはインバータ装置(図示せず)等を収納するためのケース11eが配設されている。
連結リンク40は、搭乗部11の下方であって搭乗部11の前方と後方とに配設されU字状に形成されている一対の搭乗部支持部材41と、その一対の搭乗部支持部材41を繋ぐ棒状の橋架部材42と、その橋架部材42から下方に延びてリンク機構30を構成する上部リンク31と下部リンク32との各々に軸支されている棒状の連結部材43とを備えている。
このように、連結リンク40は、連結部材43が上部リンク31及び上部リンク32に軸支されると共に、搭乗部支持部材42が搭乗部11を底面側から支持するので、リンク機構30の屈伸に伴って連結リンク40を傾斜させることができ、その結果、搭乗部11を旋回内輪側へ傾斜させることができる。
また、連結リンク40には、後述するバランサ機構80のスライダ82を矢印F方向と矢印B方向とに往復移動可能に支持するスライダ用移動機構95が配設されている。このスライダ用移動機構95と、バランサ機構80との具体的な構成について図2を参照して説明する。
図2は、連結リンク40と、スライダ用移動機構95と、分解した状態のバランサ機構80とを示す斜視図である。バランサ機構80は、バランサ81と、スライダ82とを備えている。
バランサ81は、車体10の傾斜角度に応じて車体10の重心を移動させるための重りであり、略直方体に構成されている。このバランサ81には螺旋状のめねじ81aが貫通して螺刻されており、バランサ81は、めねじ81aに対応する螺旋状のおねじ91aが螺刻された後述するスライダ82のねじ軸91に螺合されている。
スライダ82は、バランサ81を移動可能に支持すると共に、バランサ81の移動範囲を規定するものである。スライダ82は、連結リンク40の橋架部材42と略同等の長さに構成されている本体部83と、その本体部83の両端に立設する一対の支持ブロック92と、その一対の支持ブロック92に回転自在に軸支されているねじ軸91と、そのねじ軸91の一端側であって支持ブロック92に支持され、ねじ軸91を回転駆動させるバランサ用モータ54aとを備えている。
バランサ用モータ54aを駆動させると、ねじ軸91が回転し、そのねじ軸91を回転させる方向によって、ねじ軸91に螺合されているバランサ81をねじ軸91に沿って前後方向(矢印F方向および矢印B方向)に移動させることができる。尚、バランサ81の可動範囲はねじ軸91によって規定されている。
また、スライダ82は、本体部83の中央部であって、その下方面(矢印D側)から突出する支持ブロック84を備えている。支持ブロック84には、螺旋状のめねじ81aが貫通して螺刻されており、支持ブロック84は、めねじ84aに対応する螺旋状のおねじ96aが螺刻された後述するスライダ用移動機構95のねじ軸96に螺合されている。
スライダ用移動機構95は、連結リンク40の橋架部材42の両端に立設する一対の支持ブロック97と、その一対の支持ブロック92に軸支されているねじ軸96と、そのねじ軸96の一端側であって支持ブロック97に支持され、ねじ軸96を回転駆動させるスライダ用モータ54bとを備えている。
スライダモータ54bを駆動させると、ねじ軸96が回転するので、ねじ軸96を回転させる方向によって、ねじ軸96に螺合されている支持ブロック84(スライダ82)をねじ軸91に沿って前後方向(矢印F方向および矢印B方向)に移動させることができる。また、スライダ82をバランサ81とは独立して移動させることができる。
次に、図3を参照して、車両1における電気的構成について説明する。図3は、車両1の電気的構成を示したブロック図である。制御装置70は、車両1の各部を制御するための制御装置であり、CPU71、ROM72、RAM73及びEEPROM74を備え、それらがバスライン75を介して入出力ポート76にそれぞれ接続されている。
また、入出力ポート76には、ジョイスティック装置51、走行駆動装置52、旋回駆動装置53、バランサ機構駆動装置54、車両速度検出装置55、ジャイロセンサ装置56、バランサ機構位置検出装置57、傾斜角度調節ダイヤル37、乗員重量測定装置58、マンマシンインタフェース59及び他の入出力装置60等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン75により接続される各部を制御するための演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、傾斜角度調節プログラム72aが記憶されている。傾斜角度調節プログラム72aは、図6に示す傾斜角度調節処理を実行するためのプログラムであり、傾斜角度調節ダイヤル37が操作された場合に、CPU37によって実行されるプログラムである。RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
EEPROM74は、電源投入状態において、制御プログラム実行時の各種ワークデータやフラグ等を書き替え可能に記憶するためのメモリであると共に、電源遮断後においても、その内容を保持可能な不揮発性のメモリであり、車体情報メモリ74aが備えられている。車体情報メモリ74aには、搭乗部11に乗員が乗車していない状態における車体構成によって定まる車体10の重量、車体10の重心位置、バランサ81の重量、バランサ81の重心位置、スライダ82の重量、スライダ82の重量位置等が記憶されている。
ジョイスティック装置51は、上述したように、車両1を運転する際に乗員Pが操作する装置であり、乗員Pにより操作される操作レバー(図1参照)と、その操作レバーの操作状態を検出するための前後センサ51a及び左右センサ51bと、それら各センサ51a,51bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後センサ51aは、操作レバーの前後方向(矢印F−B方向、図1参照)への操作位置を検出するためのセンサであり、CPU71は、前後センサ51aの検出結果(操作レバーの前後操作位置)に基づいて、後述する走行駆動装置52の駆動状態を制御する。これにより、車両1は、乗員Pが指示した走行速度で走行する。
左右センサ51bは、操作レバーの左右方向(矢印L−R方向、図1参照)への操作位置を検出するためのセンサであり、CPU71は、左右センサ51bの検出結果(操作レバーの左右操作位置)に基づいて、後述する走行駆動装置52と旋回駆動装置53との駆動状態をそれぞれ制御する。これにより、車両1は、乗員Pが指示した旋回方向および旋回半径で旋回する。
具体的には、操作レバーが左右方向に操作されると、CPU71は、左右センサ51bの検出結果に基づいて、旋回方向と旋回半径とを判断し、左右の車輪12L,12Rにキャンバー角を付与するように、旋回駆動装置53の駆動状態を制御すると共に、旋回半径に応じて左右の車輪12L,12Rが差動するように、走行駆動装置52の駆動状態を制御する。
なお、このように、本実施の形態では、左右の車輪12L,12Rにキャンバー角を付与してキャンバースラストを発生させることで車両1を旋回させるので、左右の車輪12L,12Rの中心線は互いに平行に保持されており、左右に操舵されることはない。但し、操舵機構を設けても良い。
走行駆動装置52は、左右の車輪12L,12Rを回転駆動させるための駆動装置であり、左の車輪12Lに回転駆動力を付与するLモータ52Lと、右の車輪12Rに回転駆動力を付与するRモータ52Rと、それら各モータ52L,52RをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路及び駆動源(いずれも図示せず)とを備えている。
旋回駆動装置53は、リンク機構30を屈伸させるための駆動装置であり、リンクアクチュエータ53aと、そのリンクアクチュエータ53aをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路及び駆動源(いずれも図示せず)とを備えている。
バランサ機構駆動装置54は、バランサ機構80を移動させるための駆動装置であり、バランサ81を移動させるためのバランサモータ54aと、スライダ82を移動させるためのスライダモータ54bと、それら各モータ54a,54bをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路及び駆動源(いずれも図示せず)とを備えている。
車両速度検出装置55は、路面に対する車両1の速度(絶対値および進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71へ出力するための装置であり、前後加速度センサ55aと、左右加速度センサ55bと、それら各加速度センサの55a,55bの検出結果を処理してCPU71へ出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後加速度センサ55aは、車体10の前後方向(矢印F−B方向、図1参照)の加速度を検出するセンサであり、左右加速度センサ55bは、車体10の左右方向(矢印L−R方向、図1参照)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、各加速度センサ55a,55bが圧電素子を利用した圧電型センサとしてそれぞれ構成されている。
CPU71は、車両速度検出装置55から入力された各加速度センサ55a,55bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向の速度成分を合成することで、車両1の速度を得ることができる。
ジャイロセンサ装置56は、車体10の傾斜角度を検出すると共に、その検出結果をCPU71へ出力するための装置であり、車体10の傾斜角度を検出するジャイロセンサ(図示せず)と、そのジャイロセンサの検出結果を処理してCPU71へ出力する処理回路(図示せず)とを備えている。なお、本実施の形態でいう車体10の傾斜角度とは、鉛直軸Avと、背面部11bとがなす角度であり、車体10が車両1の前方(矢印F方向、図1参照)へ傾斜する場合、即ち、前傾姿勢となる場合に正の値で検出され、車体10が車両1の後方(矢印B方向、図1参照)へ傾斜する場合、即ち、後傾姿勢となる場合に負の値で検出される。
バランサ機構位置検出装置57は、バランサ機構80の位置を検出すると共に、その検出結果をCPU71へ出力するための装置であり、バランサ81の位置を検出するバランサ位置センサ57aと、スライダ82の位置を検出するスライダ位置センサ57bと、それら各位置センサ57a,57bの検出結果を処理してCPU71へ出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
本実施の形態では、バランサ位置センサ57aと、スライダ位置センサ57bとは、回転運動が直線運動に変換される際の回転数を検出する非接触式の回転角度センサとして構成されている。この回転数は、バランサ81及びスライダ82の移動量に比例するので、CPU71は、バランサ機構位置検出装置57から入力された検出結果(回転数)に基づいて、バランサ81及びスライダ82の位置をそれぞれ得ることができる。
尚バランサ位置センサ57aにより検出されるバランサ81の位置とは、スライダ82に対する相対位置であり、バランサ81がスライダ82の略中央部に位置する場合に0で検出され、バランサ81がスライダ82に対して車両1の前方(矢印F方向、図1参照)に位置する場合に正の値で検出される一方、バランサ81がスライダ82に対して車両1の後方(矢印B方向、図1参照)に位置する場合に負の値で検出される。
また、スライダ位置センサ57bにより検出されるスライダ82の位置とは、車体10に対する相対位置であり、スライダ82が車体10の略中央部に位置する場合に0で検出され、スライダ82が車体10に対して車両1の前方(矢印F方向、図1参照)に位置する場合に正の値で検出される一方、スライダ82が車体10に対して車両1の後方(矢印B方向、図1参照)に位置する場合に負の値で検出される。
傾斜角度調節ダイヤル37は、乗員Pが車体10の傾斜角度を所望する傾斜角度に設定するように指示するものである。本実施の形態では、鉛直軸Avと、背面部11bとのなす角度が0度の場合を基準として、車体10を前方(矢印F方向、図1参照)へ傾斜させる場合には、ダイヤルを反時計回り、車体10を後方(矢印B方向、図1参照)へ傾斜させる場合には、ダイヤルを時計回りに回して操作される。傾斜量は、ダイヤルの操作量によって検出される。
乗員重量測定装置58は、乗員Pの重量を測定すると共に、その測定結果をCPU71へ出力するための装置であり、座面部11aに内蔵され、その座面部11aに着座した乗員Pの重量を検出する荷重センサ(図示せず)と、その荷重センサの検出結果を処理してCPU71へ出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
荷重センサは、座面部11aの前方(矢印F方向)の端部の中心位置と後方(矢印B方向)の端部の中心位置とに2つ設けられており、各荷重センサの検出結果に基づいて乗員Pの平面的な重心位置が算出される。尚、高さ方向の重心位置は、乗員Pがマンマシンインタフェース59を介して入力する身長に基づき推定、算出される。ただし、荷重センサで検出される乗員Pの体重から推測される平均身長に基づいて高さ方向の重心位置を推定、算出するように構成しても良い。
CPU71は、乗員重量測定装置58から入力された乗員Pの重量と予め記憶されている車体10の重量とを合算することで、乗員Pを含む車体10の総重量を得ることができる。
マンマシンインタフェース59は、上述したように、乗員Pの身長を入力するための装置であり、乗員Pにより操作されるタッチパネル式の操作スイッチ(図示せず)と、その操作スイッチの操作結果を視覚的に表示する表示装置としてのLCD(図1参照)と、操作スイッチの操作結果を処理してCPU71へ出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
次に、図4を参照して、本発明の作用、効果の概略について説明する。図4は、本発明の作用、効果の概略を説明するための模式図であり、図4(a)は車体が基準姿勢にある状態、図4(b)は車体が基準姿勢よりも前傾姿勢にある状態、図4(c)は車体が基準姿勢よりも後傾姿勢にある状態を示している。
具体的に、図4(a)に示す基準姿勢とは車体10の傾斜角度0度(背面部11bと鉛直軸Avとが並行な状態)の姿勢であり、図4(b)に示す前傾姿勢とは車体10の傾斜角度が鉛直軸Avよりも反時計回りにθ傾いた姿勢であり、図4(c)に示す後傾姿勢とは車体10の傾斜角度が鉛直軸Avよりも時計回りにθ傾いた姿勢である。
図4(a)に示す基準姿勢にある車体10を、図4(b)に示す前傾姿勢に調節する場合、乗員Pによって傾斜角度調節ダイヤル37が反時計回りにθだけ回転される。これを受けて、車両1を後方(矢印B方向)に走行させる。車両1が後方に走行を開始すると、車体10は加速度の影響を受けて車体10は前方(矢印F方向)に傾斜するので、車体10の傾斜角度が設定された傾斜角度θになるように、バランサ81のスライダ82に対する位置は図4(a)に示す位置に固定したまま、スライダ82を後方に移動させる。
このように、スライダ82を移動させることで、車体の傾斜角度を所望の傾斜角度θに設定することができると共に、バランサ81のスライダ82に対する位置は図4(a)に示す位置から固定したままなので、車体10の姿勢が図4(a)に示す基準姿勢の場合であっても、図4(b)に示す前傾姿勢の場合であっても、スライダ82に対するバランサ81の可動範囲は同じである。よって、図4(a)、図4(b)に示すどちらの姿勢を保持したまま車両100を走行させる場合であっても、加速度に対する対応可能範囲を一定にすることができる。
一方、図4(a)に示す基準姿勢にある車体10を、図4(c)に示す後傾姿勢に調節する場合、乗員によって車体角度調節ダイヤル37が時計回りにθだけ回転される。これを受けて、車両1を前方(矢印F方向)に走行させる。車両1が前方に走行を開始すると、車体10は加速度の影響を受けて車体10は後方(矢印B方向)に傾斜するので、車体10の傾斜角度が設定された傾斜角度θになるように、バランサ81のスライダ82に対する位置は図4(a)に示す位置に固定したまま、スライダ82を前方に移動させる。
このように、スライダ82を移動させることで、車体10の傾斜角度を所望の傾斜角度θに設定することができると共に、バランサ81のスライダ82に対する位置は図4(a)に示す位置から固定したままなので、車体10の姿勢が図4(a)に示す基準姿勢の場合であっても、図4(c)に示す後傾姿勢の場合であっても、スライダ82に対するバランサ81の可動範囲は同じである。よって、図4(a)、図4(c)に示すどちらの姿勢を保持したまま車両100を走行させる場合であっても、加速度に対する対応可能範囲を一定にすることができる。
次に、図5を参照して、車体10の傾斜角度を調節する場合におけるスライダ82の移動量の算出原理について説明する。図5では、車体10が図4(a)に示す基準姿勢の状態にあり、乗員Pから車体10の傾斜角度をθ0に設定する指示があった場合について説明する。尚、前提として、既に乗員Pの重心位置が算出され、車体10の重心位置には、乗員Pの重心位置が加味されているものとする。
尚、図5では、車輪12Lの回転中心をP0、車体10の重量をM1、車体10の重心位置をP1、車体10の重心位置P1の傾斜角度をθ1、車輪12Lの回転中心P0から車体10の重心位置P1までの距離をR1、バランサ81の重量をM2、バランサ81の重心位置をP2、バランサ81の重心位置P2の傾斜角度をθ2、車輪12Lの回転中心P0からバランサ81の重心位置P2までの距離をR2、車体10が基準姿勢にある場合におけるバランサ81の基準位置をC2、車輪12Lの回転中心P0からバランサ81の基準位置C2までの距離をRh2、バランサ81の基準位置C2からバランサ81の重心位置P2までの距離をλ2、スライダ82の重量をM3、スライダ82の重心位置をP3、スライダ81の重心位置P3の傾斜角度をθ3、車輪12Lの回転中心P0からスライダ83の重心位置P3までの距離をR3、車体10が基準姿勢にある場合におけるスライダ82の基準位置をC3、車輪12Lの回転中心P0からスライダ82の基準位置C3までの距離をRh3、スライダ82の基準位置C3からスライダ82の重心位置P3までの距離をλ3、重力加速度をg、鉛直軸をAvとして図示している。
図5において、車体10の重心P1に作用する車輪12の回転中心P0を中心とする回転モーメントT1は、次式(1)で表される。
(1)T1=M1×g×sinθ1×R1
一方、バランサ81の重心P2に作用する車輪12の回転中心P0を中心とする回転モーメントT2は、次式(2)で表される。
(2)T2=M2×g×sinθ2×R2
また、スライダ82の重心P3に作用する車輪12の回転中心P0を中心とする回転モーメントT3は、次式(3)で表される。
(3)T3=M3×g×sinθ3×R3
よって、車体10を倒立した姿勢に保つようにバランスを取るためには、次式(4)が成り立たなければならない。
(4)T1=T2+T3
ここで、車輪12の回転中心P0からバランサ81の重心P2までの距離R2は、次式(5)で表される。
(5)R2=√(Rh2+λ2
また、車輪12の回転中心P0からスライダ82の重心P3までの距離R3は、次式(6)で表される。
(6)R3=√(Rh3+λ3
また、鉛直軸Avと、バランサ81の重心P2と車輪12の回転中心P0とのなす角度であるθ2は、次式(7)で表される。
(7)θ2=atan(λ2/Rh2)+θ1
また、鉛直軸Avと、スライダ82の重心P3と車輪12の回転中心P0とのなす角度であるθ3は、次式(8)で表される。
(8)θ3=atan(λ3/Rh3)+θ1
上述した(4)式に(1)〜(3)式を代入し、更に、その代入した式に(5)〜(8)式を代入して、右辺のθ2,R2,θ3,R3を消去する。また、車体10の傾斜角度を調節する場合には、バランサ81はスライダ82に固定したまま、スライダ82を移動させるので、λ2はλ3と同等とみなす。これにより、車体10が図4(a)に示す基準姿勢の状態にあり、乗員Pから車体10の傾斜角度をθ0に設定する指示があった場合に移動させるスライダ82の移動量λ3を算出することができる。
次に、図6を参照して、制御装置70で実行される傾斜角度調節処理について説明する。図6は、傾斜角度調節処理を示すフローチャートである。傾斜角度調節処理は、車体の傾斜角度を、乗員Pが傾斜角度調節ダイヤル37を介して指示した車体の傾斜角度に調節する処理であり、CPU71において実行される処理である。尚、この処理が実行される前提として、既に乗員Pの重心位置が算出され、車体10の重心位置には、乗員Pの重心位置が加味されているものとする。
この処理では、まず、傾斜角度調節ダイヤル37が乗員Pによって操作されたかを判断する(S601)。尚、操作されていない場合には(S601:No)、本処理を終了する。一方、操作されたと判断した場合には(S601:Yes)、その操作量から目標傾斜角度を取得する(S602)。目標傾斜角度を取得すると、図7に示すような傾斜角度−スライダ位置の対応マップを作成する(S603)。この対応マップは、図5で説明した原理に基づいて作成することができる。
そして、この作成したマップに従って、スライダ82を移動させる(S604)。具体的には、ジャイロセンサ装置56によって所定の間隔で車体10の傾斜角度を検出し、その検出された車体の傾斜角度に応じて、バランサ81をスライダ82に固定したまま、スライダ82を図7に示すマップに従って移動させる。この処理を、車体の傾斜角度が目標傾斜角度になるまで繰り返し、車体の傾斜角度が目標傾斜角度になった時点で本処理を終了する。
次に、図8を参照して、第2実施の形態について説明する。尚、第2実施の形態においては、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図8は、第2実施の形態において、車体10の傾斜角度を調節する場合におけるスライダ82の移動量の算出原理について説明するための図である。
図8は、図5に対応する図であり、車体10が図4(a)に示す基準姿勢の状態にあり、乗員Pから車体10の傾斜角度をθ1に設定する指示があった場合について説明する。尚、前提として、既に乗員Pの重心位置が算出され、車体10の重心位置には、乗員Pの重心位置が加味されているものとする。
第1実施の形態では、静的な状態における運動方程式から、スライダ82の移動量を算出する原理について説明したが、この第2実施の形態は、動的な状態、即ち、車両1が所定の速度で走行している動的な状態における運動方程式から、車体10が傾斜することで車輪12L,12Rに発生する偏心トルクτeを求め、この偏心トルクτeを打ち消すように、スライダ82を移動させる移動量を算出するものである。
尚、図8では、車輪12Lの角速度をθw’、車輪12Lに付与されるトルクをτw、車輪12Lの半径をRw、車輪12Lの粘性抵抗D、車体10の重量をM1、車体10の車軸周りの慣性モーメントをI1、車輪12Lの回転中間から車体10の重心位置までの距離をL1、バランサ81とスライダ82との重量をM2、バランサ81とスライダ82とを一体とした車軸周りの慣性モーメントI2、車輪12Lの回転中間からバランサ81とスライダ82とを一体とした重心位置までの距離をL2として図示してある。また、図8では、時計と反対周りの方向を正として設定する。
車体10がθ1傾くことに伴い車体10とスライダ82(バランサ81)とに発生する慣性力T1は次式(1)で与えられる。尚、θ1’’はジャイロセンサ装置57で検出される傾斜角度θ1を2回微分することで与えられる。
(1)T1=(I1+I2)θ1’’
スライダ82(バランサ81)がλ2移動することに伴いスライダ82(バランサ81)に発生する反力T2は次式(2)で与えられる。尚、λ2’’はバランサ機構位置検出装置57で検出される移動量λ2を2回微分することで与えられる。
(2)T2=−M2×L2×λ2’’
車両1が並進加速することに伴い車体10とスライダ82(バランサ81)と発生する慣性力T3は次式(3)で与えられる。尚、θw’’は車両速度検出装置55で検出される車両速度θw’を1回微分することで与えられる。
(3)T3=(M1×L1+M2×L2)×Rw×θw’’
車体10がθ1傾くことに伴い車体10とスライダ82(バランサ81)とに発生する重力に基づく回転モーメントT4は次式(4)で与えられる。尚、ジャイロセンサ装置57で検出される傾斜角度θ1から与えられる。
(4)T4=−(M1×L1+M2×L2)×g×θ1
スライダ82(バランサ81)がλ2移動することに伴いスライダ82(バランサ81)に発生する重力に基づく回転モーメントT5は次式(5)で与えられる。尚、λ2はバランサ機構位置検出装置57で検出される移動量λ2から与えられる。
(5)T5=(M2×g×λ2)
車体10の傾斜に伴い車輪12Lに発生する粘性抵抗力T6は次式(6)で表される。尚、θ1’はジャイロセンサ装置57で検出される傾斜角度θ1を1回微分することで与えられる。
(6)T6=D1×θ1’
車輪12Lに発生するトルク反力T7は次式(7)で表される。
(7)T7=τw
上述した(1)〜(7)式を加算することで、車輪12Lに発生する偏心トルクτeを求めることができ、この偏心トルクτeを打ち消すように、スライダ82の移動量を設定するのである。
次に、図9を参照して、第2実施の形態において、制御装置70で実行される傾斜角度調節処理について説明する。図9は、第2実施の形態における傾斜角度調節処理を示すフローチャートである。傾斜角度調節処理は、車体の傾斜角度を、乗員Pが傾斜角度調節ダイヤル37を介して指示した車体の傾斜角度に調節する処理であり、CPU71において実行される処理である。尚、この処理が実行される前提として、既に乗員Pの重心位置が算出され、車体10の重心位置には、乗員Pの重心位置が加味されているものとする。
この処理では、まず、傾斜角度調節ダイヤル37が乗員Pによって操作されたかを判断する(S901)。操作されていない場合には(S901:No)、本処理を終了する。一方、操作されたと判断した場合には(S901:Yes)、その操作量から目標傾斜角度を取得する(S902)。そして、取得した目標傾斜角度に応じて、前方又は後方に車両1を走行させ、車体10を傾斜させる(S903)。そして、図8で説明したように、車輪12L,12Rに発生する偏心トルクτeを算出し(S904)、その算出した偏心トルクτeを打ち消すように、バランサ81は固定したままスライダ82を移動させ(S905)、本処理を終了する。この第2実施の形態によれば、実際の走行状況、車体の傾斜状況に応じてスライダ82を移動させることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上述した実施の形態では、説明を簡易にする為、車体全体の傾斜に対するもので説明したが、車体の傾斜ではなく、搭乗部のシートの角度(シートのリクライニング角度)によっても同様に制御可能である。
また、上述した実施の形態では、上記各実施の形態では、バランサ81が1のスライダ82に支持される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、スライダ82を相対移動可能に支持すると共に、車体10に対し相対移動する第2のスライダを設けることで、バランサ81がスライダ82と第2のスライダとによって2のスライダに支持されるように構成しても良く、或いは、3以上のスライダに支持されるように構成しても良い。この場合には、車体の重心を移動可能な許容量の更なる拡大を図ることができる。
また、上記各実施の形態では、バランサ81及びスライダ82をねじ機構により移動させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の機構を利用することは当然可能である。他の機構としては、例えば、ラック・ピニオン機構(電動モータによるピニオンの回転運動をラックに伝達し、ラックを直線運動させる機構)、或いは、リニアモータ機構(磁界中に置かれた導体に電流を流し、導体を直線運動させる機構)等が例示される。
(a)は、本発明の第1実施の形態における車両の正面図であり、(b)は、車両の側面図である。 連結リンクと、スライダ用移動機構と、分解した状態のバランサ機構とを示す斜視図である。 車両の電気的構成を示したブロック図である。 本発明の作用、効果の概略を説明するための模式図である。 車体の傾斜角度を調節する場合におけるスライダの移動量の算出原理について説明するための図である。 傾斜角度調節処理を示すフローチャートである。 傾斜角度−スライダ位置の対応マップを示す図である。 車体の傾斜角度を調節する場合におけるスライダの移動量の算出原理について説明するための図である。 第2実施の形態における傾斜角度調節処理を示すフローチャートである。 従来の問題点を説明するための図である。
1 車両
10 車体
11 搭乗部
12L 車輪
12R 車輪
37 傾斜角度調節ダイヤル(指示手段)
54a バランサモータ
54b スライダモータ
56 ジャイロセンサ装置
58 乗員重量測定装置
59 マンマシンインタフェース
81 バランサ
82 スライダ
95 スライダ用移動機構(スライダ移動手段の一部)
P 乗員
S602 スライダ移動手段の一部
S603 スライダ移動手段の一部
S604 スライダ移動手段の一部

Claims (4)

  1. 搭乗部を有する車体と、
    その車体に支持されると共に、その車体に対し相対移動するスライダと、
    そのスライダに支持されると共に、そのスライダに対し相対移動するバランサと、
    前記スライダを所定位置に保持したまま、そのスライダに対して基準位置にある前記バランサを加速度に応じて移動させながら前記車体を基準姿勢で走行させる場合から、前記基準姿勢とは姿勢が異なる変形姿勢で走行させることを指示する指示手段と、
    その指示手段によって指示された変形姿勢にするために、前記バランサは前記スライダに対して前記基準位置に保持したまま、前記スライダを前記所定位置から移動させるスライダ移動手段と
    そのスライダ移動手段によって前記スライダを移動させて前記車体が前記変形姿勢になった後で、その変形姿勢における前記スライダの位置は保持したまま、前記スライダに対して前記基準位置にある前記バランサを加速度に応じて移動させるバランサ移動手段とを備えていることを特徴とする車両。
  2. 前記指示手段は、前記車体の傾斜角度を指示することを特徴とする請求項1に記載の車両。
  3. 前記車体の重心位置と、前記バランサの重心位置と、前記スライダの重心位置とを重心位置情報として記憶する記憶手段と、
    前記搭乗部に乗車している乗員の重心位置を推定する推定手段とを備え、
    前記スライダ移動手段は、前記記憶手段に記憶されている重心位置情報と、前記推定手段によって推定された乗員の重心位置とに基づいて、前記スライダを移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
  4. 搭乗部を有する車体と、
    その車体に支持されると共に、その車体に対し相対移動するスライダと、
    前記スライダに支持されると共に、そのスライダに対し相対移動するバランサと、
    前記車体の基準姿勢を変形姿勢に変化させることを指示する指示手段と、
    その指示手段によって指示された変形姿勢に基づいて、前記基準姿勢における前記スライダに対する前記バランサの位置を保持したまま、前記スライダを移動させるスライダ移動手段と、
    前記車体の重心位置と、前記バランサの重心位置と、前記スライダの重心位置とを重心位置情報として記憶する記憶手段と、
    前記搭乗部に乗車している乗員の重心位置を推定する推定手段とを備え、
    前記スライダ移動手段は、前記記憶手段に記憶されている重心位置情報と、前記推定手段によって推定された乗員の重心位置とに基づいて、前記スライダを移動させることを特徴とする車両。
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