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JP4792571B2 - Pvdコーティング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空にすることができるチャンバを含むPVDコーティング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記装置は、少なくとも一つのガス供給接続部を備え、スパッタリング・プロセスを受ける、少なくとも一つのターゲット・カソードと、少なくとも一つのアノードと、少なくとも一つの基板を保持するためのものであって、保持されている各基板に電気的接続している少なくとも一つの基板ホルダーが配置されていて、基板が配置された状態でプラズマを形成するために、上記ターゲット・カソードに、アノードに対して負の電位を供給するために、第一の電圧を供給するように接続している第一の電圧出力を持つ制御装置を含み、更にアノードに、チャンバ壁部に対して正の電位を供給するために、第二の電圧を供給するように接続している第二の電圧出力を持つ。
本発明はまたコーティング済みの基板を製造するためのPVDコーティング方法に関する。EP0434797が上記PVDコーティング装置を開示している。
通常、周知のPVDコーティング装置は、表面を機能的にし、できれば美しくするためにあらゆる種類の工具および部品をコーティングするために使用される。工具の場合には、例えば、TiAlNのような、金属を含む成分を用いたコーティングが非常に頻繁に行われる。
コーティングを行うための周知技術の一つは、気相から凝収物を堆積する方法である。この技術の場合には、多様な装置が使用されるが、各装置は特定の方法に対して最適化される。コーティングが、プラズマから大きな割合で得られるイオン化された原子で行われる装置は、上記コーティングを行う際に特に有利である。
プラズマ内で大きな割合の金属原子が生成されるコーティング装置においては、通常、金属材料がターゲット・カソードから蒸発し、大きな割合で蒸発した材料がイオン化される。このタイプの装置においては、ターゲット・カソードの材料は、最初融解し、それから気化する。蒸発した原料がイオン化される割合は高い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ターゲット・カソードの材料が融解するこのタイプの周知装置の場合には、合金が気相で蒸発している間、微粒子が形成され、気相が均質にならないという欠点があることが分かっている。従って、凝縮したコーティング材は、いわゆる微粒子を含み、および/またはコーティングの組成物が均質でなくなる。
他の周知のコーティング装置は、ターゲット・カソード材料を蒸発させるため、イオン化効率を向上させる目的で、マグネトロンの磁界を使用して、カソード・スパッタリングを行うように構成される。この場合、原料は、溶融状態を経ないで、固体から蒸気に直接変化する。
しかし、カソード・スパッタリング装置は、蒸発した材料が、少ししかイオン化しないという欠点がある。プラズマは、非常に大きな割合の蒸発した中性の粒子(イオン化率約5%)と、ターゲット原子およびイオンをたたき出すため及びプラズマを形成するために用いる、作用ガスからのイオン化ガス粒子や、ターゲット・カソード材料と結合する反応性ガスからのイオン化ガス粒子とからなる。技術的に見て表面が粗面である場合には、特に、研摩または研削された粗面の場合には、これらプラズマから蒸着したコーティングは、接着性、硬度、構造および表面の形状(平滑さおよび色)という特性の面で欠点がある。このような基板表面の場合には、平滑な面を持ち密度が高く緻密な構造を特徴とする、いわゆる小さな波模様(dimple)を持つ面コーティングを形成することは現在まで不可能であった。
WO91/00374は、アーク放電蒸着およびカソード蒸着の両方を使用して基板をコーティングするためのプロセスおよび装置を開示している。この場合、アーク放電蒸着は、カソード蒸着の前に行われる。WO91/00374の回路は、カソードとチャンバとの間に接続している電圧源、カソードとアノードとの間に接続している電圧源、および基板にバイアス電圧を供給するための電圧源を含む。EP0558061A1がほぼ同じ装置を開示している。
EP0677595A1は、アーク放電蒸着だけを行う装置を開示している。この装置は、カソードが持続的に電圧源に接続していて、好ましくは、アノードおよび基板が、電圧源の残りの電極に接続している一つの電圧源を含むことができる。
【0004】
【課題を解決する為の手段】
本発明の目的は、この従来技術に基づいて、ターゲット・カソード材料が、溶融状態を経ないで、固体からの蒸発を用いる通常のタイプでかつ、工具である基板のコーティングに用いるPVDコーティング装置をさらに開発することである。この場合には、大きな割合の原料が、高い接着力で工具である基板上に凝集し、又技術的に見て、特に研削またはジェット研摩により粗面化した表面を有する基板にも適用できる。
上記目的は、制御装置が、基板に対してアノードの電位よりもっと負の電位を供給する、第三の電圧を印加するために接続している第三の電圧出力を持つ通常タイプの装置により達成される。
そうすることによる効果は、チャンバ内において、PVDコーティング装置の動作中、もう一つの電極、すなわち、基板が、プラズマ内において特定の電位になることである。この電極は、プラズマ内に配置され、チャンバ内に有利な電位プロファイルを確実に形成する。より詳細に説明すると、第二の電圧、すなわち、アノード電圧により、基板を流れる電流を設定することができる様になる一方、第三の電圧、すなわち、基板電圧またはバイアス電圧を一定に維持することができる。それ故、基板上のコーティング状態を非常に簡単に最適化することができる。
この電気接続構成は、チャンバ内の電子密度分布にも決定的な影響を持つ。基板の電位が、アノードの電位より負であるので、プラズマを維持するために、電子の軌道がターゲット・カソードからアノードへ延び、またターゲット・カソードから放出される金属原子のイオン化を促進するために、ターゲット・カソードから基板に優勢に延びるという結果になる。イオン化が促進されるのは、ターゲット・カソードから基板への金属原子の移動経路が上記電子軌道の後の部分と一致するためである。
チャンバ内において、本発明により設定された電位プロファイルにより、放出されたターゲット金属原子に対して50%以上のイオン化効率を達成することができる。その結果、このコーティング装置を使用したスパッタリング方法により、例えば、研削またはジェット研摩処理のために基板表面が粗面になっている場合でも、基板上に小さな波模様の表面を持つ蒸着層の形成に適する程度のイオン化を行うことができる。ターゲット・カソードのところで、最高45W/cm2の電力密度を達成することができ、従来技術と比較すると、放電電流がかなり増大する。
チャンバ内の電位プロファイルも、基板周辺のターゲット・カソードとアノード間に発生したプラズマの電位が、基本的には、基板の電位より正であるというもう一つの結果をもたらす。この効果は、例えば、チャンバのこの領域内のプラズマからのイオンが、基板の方向に高い確率で移動し、そこで蒸着することができることである。
チャンバ壁部への電子の到着はさらに阻害され、そのためそこの金属原子をイオン化する力がなくなる。この目的で、ターゲット材料をイオン化する様に電子を基板の方向に引き寄せる為に、基板がターゲット・カソードと同じ電位を持つか、またはターゲット・カソードに対して正にバイアスされることが好ましい。但し、ターゲット・カソードの電位を基板の電位よりもっと正にすることもできる。
また、コーティング・プロセス中、基板がプラズマ内に位置するように、対称的な配置で複数のアノードおよびターゲット・カソードを設定することもできる。
例えば、基板は切断工具であり、硬質の材料がコーティングされる。
好適には、チャンバ壁部に対するアノードの正の電位が、基板に対するアノードの正の電位より少なくして、基板をターゲット・カソードの近傍に配置できるように、第二および第三の電圧を設定することが好ましい。
本発明の実施形態の場合には、ターゲット・カソードの前面におけるチャンバ内の電子密度分布の最適化は、特に効率的に行われる。アノードに対する基板の負バイアス電圧のためと、またターゲット・カソードと基板とが近接しているためとで、基板に到達する電子軌道の割合はさらに増大し、そのため、ターゲット・カソードからの金属原子のイオン化が改善される。
好適には、第一、第二および第三の電圧を適切に設定して、基板が置かれた領域内でターゲット・カソードとアノードとの間にプラズマが発生した時、フローティング電位が基板の電位より高い、約40〜400ボルト、好適には、130ボルトになることが好ましい。
これにより、確実に、基板領域内のプラズマから非常に大きな割合のイオンが基板方向に流れ、コーティングを形成するために基板上に堆積することができる。それ故、チャンバ壁部上でのイオンの再結合によるイオンの損失は最小限ですむ。
好適な実施形態の場合には、第一の電圧は、アノードが、ターゲット・カソードの電位より、最高で約800ボルトまで高い電位になるように設定される。第二の電圧は、アノードが、チャンバ壁部の電位より約50〜250ボルトだけ正になるような電位に設定される。一方、第三の電圧は、アノードが、基板の電位より800ボルト以内、特に100〜200ボルト正になるように設定することが好ましい。
アノード、ターゲット・カソード、チャンバ壁部および基板との間における電位差の上記数値の範囲は、実験的に非常に好ましい数値であることが分かっている。電位、特にアノードとカソード間の電位を設定する場合には、ターゲット材料の各特性を考慮に入れなければならない。特に、その磁気特性を考慮に入れなければならない。
ターゲット・カソードとアノードとの間の距離に対するターゲット・カソードと基板との間の距離の比は、約1:5であることが好ましい。
この距離の比により、電極、ターゲット・カソード、基板、チャンバ壁部およびアノードの幾何学的関係が決まる。その特徴は、電荷キャリヤの軌道特に電子密度分布を決定する等電位ラインの特に好ましいプロファイルにある。
例えば、基板ホルダーは、基板がターゲット・カソードからほぼ40ミリの距離となる様にに配置され、ターゲット・カソードとアノードとの間の距離が、250ミリの範囲内にある様に、配置することができる。
この方法により、PVDコーティング・システムを特に小型にすることができる。より詳細に説明すると、ターゲット・カソードから基板までの距離が短いので、基板のコーティング速度が非常に速くなる。このように速度が速くなるので、コーティング・コストが安くなる。
好適には、制御装置は、三つの各電圧に割り当てられる電圧源を持つ。第一の電圧源は、アノードとターゲット・カソードとの間に接続され、第二の電圧源は、アノードとチャンバ壁部との間に接続され、第三の電圧源は、アノードと基板との間に接続される。この場合、第二の電圧源を使用してプラズマに働きかけることにより基板の電流が設定される一方、第三の電圧源の設定を保持することにより、第二の電圧源の設定が変化し、且そのため基板電流が変化しても、基板とアノードとの間の電位差は維持される。
この場合、起こる可能性のあるアノード電位のいかなる変動も、アノードとターゲット・カソードとの間の電圧差、アノードと基板との間の電圧差に絶対に影響を与えないようにすることができ、そのため、PVDコーティング装置の動作をより安定なものにすることができる。
つの電圧源を持つ上記実施形態の別の例の場合では、制御装置の電圧源を、アノードとターゲット・カソードとの間に第一の電荷を供給する一つの電圧源だけにすることができ、第二および第三の電圧用として、上記電圧源に並列に接続している各可変抵抗を使用することができる。上記可変抵抗は、アノードおよび基板に対して必要な電位が、それぞれのタップに表れるように設定される。
それでもやはり、本発明にとって重要なことは、電気接続方法がどうであれ、チャンバ内の上記電位プロファイルが維持されることである。
【0005】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を以下にさらに詳細に説明するが、これはあくまでも例示としてのものに過ぎない。図1は、PVDコーティング装置の電気供給源の模式的な回路図である。図2は、図1に示した電気供給源の変形を示す模式的な回路図である。
図1は、PVDコーティング装置の電気供給源を示す模式的な回路図である。この図に示した実施形態のPVDコーティング装置は、コーティング・チャンバ1を持つ。コーティング・プロセス中、作用ガスは、ガス接続部(図示せず)を通して、このチャンバ1に供給される。
作用ガスとしては、例えば、アルゴンのような希ガスを使用することができる。
さらに、反応性ガスが、ガス接続部(図示せず)を通して、チャンバ1内に供給される。反応性ガスとしては、窒化物、炭化物および炭素窒化物を形成するために使用することができる、窒素や、CH4、C22またはC26のような炭素を含むガスを使用することができる。
コーティング・プロセスの最初のところで、作用ガス/反応性ガスの混合気体内でプラズマ(P)が発生する。そのため、コーティング装置は、二つのアノード2および四つのターゲット・カソード3を持ち、ターゲット・カソード3は、対向するペアの形で配置されていて、アノード2は、本質的には相互に向き合う形で、相互に対向するターゲット・カソード3間の中間のスペースに対して横向きに配置されている。
例示としての実施形態の場合には、アノード2は、欧州特許第0434797号が開示している高イオン化アノードである。イオン化プロセスに効果のあるアノード領域を設定ターゲット・カソード電力と整合させるために、アノードは部分的にダイヤフラムでカバーされているが、上記ダイヤフラムは導電性のものである。このダイヤフラムは、チャンバ壁部8と同じ電位を持つ。このようなアノード2は、プラズマ(P)の高いイオン化に特に適している。しかし、基本的には、アノード内部に能動アノード領域が形成されていれば十分である。
なお、ターゲット・カソードは、いわゆる不平衡マグネトロンであることが好ましい。
アノード2は、ターゲット・カソード3に対して正のバイアスが印加される。そのため、各ターゲット・カソード3は、それぞれ、カソード電圧源4に接続している。電圧源4は、それぞれ、約500ボルトの第一の電圧UKを供給する。この数値は、コーティング・プロセス中、すなわち、プラズマ(P)の発生後維持される。
プラズマ(P)が発生すると、チャンバ1内にプラズマの雲ができる。このプラズマの雲は、とりわけ、作用ガスのイオンを含んでいる。これらの作用ガスイオンは、アノード2とターゲット・カソード3との間の電界により、特にプラズマの雲とターゲット・カソード3との間の電位勾配によりターゲット・カソードの方向に加速される。
ターゲット・カソード3は、ターゲット材料5を含んでいるが、図の実施形態の場合には、このターゲット材料は、チタン/アルミニウム混合ターゲット5a、5bである。しかし、銅、プラチナ、クローム、ニッケルまたは他の金属を含むターゲット、およびセラミック材料のような非導体材料も使用することができる。その場合には、プラズマ(P)を維持するために、交流電界が必要になる。
このターゲット材料5には、作用ガスイオンが衝突する。すなわち、スパッタリング・プロセスが行われる。このプロセスにより、ターゲット材料5が、ターゲット・カソード3から原子の形またはイオンの形で遊離する。その場合、ターゲット・カソードを離れた直後で、イオン化されているターゲット材料の割合は約5%になる。
このタイプはイオンの量が少ないので、平滑な表面構造を有する高い密度と緻密さを特徴とするコーティング構造体を形成することはできない。
イオン化の程度を増大するために、コーティング装置は、最大12キロワットの電力で、500ボルトのカソード/アノード電圧で動作するカソード電圧源の他に、さらに二つの電圧源6、7を持つ。その設定電圧は、ターゲット材料のイオン化の程度を必要なだけ増大させるのに決定的な影響を持つ。これらの電圧源6、7は、最高6キロワットの電力で動作する。すべての電圧源4、6および7は、コーティング・プロセスを精密に最適化することができるように調整することができる。
電圧源6は、アノード2に特定の電位、すなわち、チャンバ1の壁部8に対して正のアノード電位を供給する。電圧源6は、50〜250ボルトの第二の電圧UAnを供給する。それ故、アノード2は、第二の電圧UAnにより、接地されているチャンバ壁部8に対して正にバイアスされる。
電圧源7は、第三の電圧UBi、いわゆるバイアス電圧を供給するが、その正の電極は、アノード2に接続している。この電圧源7の負の電極は、基板テーブル9に接続される。基板テーブル9は、一組の基板10がターゲット材料3から約40ミリ離れた場所に配置されるように、また、ターゲット・カソード3とアノード2との間の距離が250ミリの範囲内になるように、チャンバ1内に配置される。
基板テーブル9は、基板10のセットに電気的に接続している。コーティング・プロセスを行うためには、アノード電位が基板電位に対してより正の電圧になる必要がある。それ故、負の電圧を供給する電圧源7は、上記一組の基板10の電位が、アノード2の電位より、もっと負の最高で800ボルトとなるように設定される。
この場合、電圧源6および7の両方を対称的に動作させることができる。その場合、チャンバ壁部8の電位と上記一組の基板10の電位とは同じである。これら二つの電圧源6、7が非対称的な動作をする場合には、アノード電位は、基板の電位よりさらに高い正の電位を持つ。そして、基板電位に対してチャンバ電位をもっと正の電位にすることが好ましい。これにより、ターゲット・イオンは、基板の方向に引き寄せられ、チャンバ壁部8上で再結合しない。しかし、チャンバの電位を基板の電位に対して負にすることもできる。
それ故、基準電位ゼロに接地されているチャンバ1に対する通常の電位の数値は、アノード2の場合は、+50ボルトから+250ボルトであり、ターゲット・カソード3の場合には、−350ボルトから−750ボルトであり、基板テーブル9/基板10の電位は、+200ボルトから−1,000ボルトである。この場合、満足させなければならない条件は、基板10の電位がアノード2の電位より、もっと負の電位でなければならないことと、アノード2とターゲット・カソード3との間の電位差を各コーティング・プロセス(材料に依存する)に対して最適化させなければならないことであり、特に各プラズマを維持するために最適化させなければならないことである。
電圧源6および7を非対称的に動作させ、且チタン/アルミニウム混合ターゲット5a、5bを含む図示の実施形態の場合には、アノード電位は+180ボルトであり、基板電位は−20ボルトであり、チャンバ電位は0ボルトであり、カソード電位は−320ボルトである。
上記一組の基板10は、ターゲット・カソード3とアノード2との間に形成されたプラズマの雲の中に配置される。このプラズマの雲の特徴は、供給電圧UK、UAnおよびUBiにより、基板10に対して約+130ボルトの電位となっていることである。プラズマの雲のこの電位は、通常、ターゲット材料のイオンが、蒸着用のプラズマ(P)から上記一組の基板10へ移動するような数値でなければならない。
例示としての実施形態は、0ボルトから130ボルトの領域内に、四つのターゲット・カソード3と、二つのアノード2とを持つ。この場合、全カソードの最高電力は32キロワットであり、最高バイアス電流は30アンペアであり、最高アンペア電流は45アンペアに設定される。
基板10のタイプが何であれ、本発明の電気接続により、大きな割合のターゲット材料イオンが発生するように、チャンバ1内に電位降下が起こる。電圧源6、7の動作により、そうでない場合には、チャンバ壁部8上で、イオン、プラズマ(P)からの準安定粒子および電子を再結合化する大きな割合の電荷キャリヤが、カソード3から基板10へ移動中に、ターゲット材料の原子をイオン化するために供給される。アノード2とターゲット・カソード3との間の上記電気的接続により、ターゲット・カソード3の前面の電荷キャリヤ密度が濃くなり、上記一組の基板10に移動している間に、スパッタリングされたターゲット・カソード材料がイオン化される。スパッタリングされたターゲット・カソード材料の大きな割合のイオンにより、またチャンバ1内の上記電位プロファイルにより、基板10が三次元のものであっても、上記一組の基板10上において、基板10のジェット研摩又は研削された面上に、密度が高く緻密な層構造体、いわゆる小さな波模様の構造体を形成することができる。
上記層構造体は、反応性ガスを使用した場合には、ターゲット材料と反応性ガスとの間の化学反応による、チャンバ1内の雰囲気に含まれる材料からなる。例を挙げて説明すると、上記一組の基板10のTiAlNを含むコーティングの場合には、化学反応が、チャンバ1内で、ターゲット材料であるチタンおよびアルミニウムと反応性ガスである窒素との間で起こる。
層構造体の特性を最大限度に均一なものにするために、基板10を、ターゲット・カソード3の間で最大四本の回転軸を中心にして回転することができる。
図2は、図1に示した電源の変形例の模式的な回路図である。
図1と比較すると、図2は、さらに、電圧源7と基板テーブル9との間に接続しているパルス装置11を含む。上記パルス装置11は、例えば、350ボルトの最大バイアス電圧が基板テーブル9に供給され、基板テーブル9とプラズマ(P)との間の平均電位差が、図1の実施形態の場合のように、約130ボルトになるように設定される。
パルス装置11を設置することにより、基板10の縁部に対する平均イオン電流が大きくなるので、縁部のコーティングを抑制する周知の再スパッタリング効果を打ち消すことにより、良好なコーティングを行うことができる。
図2の構造の残りの部分は、図1の構造と同じである。より詳細に説明すると、アノード電位UAnも同じである。
パルス装置11を含むPVDコーティング装置のもう一つの実施形態(図示せず)は、アノード2の電位がパルス状に変化するように構成されている。この場合、パルス装置11は、図1の電気的接続を維持しながら、電圧源6とアノード2との間に接続している。上記一組の基板10上では、電圧UBiに対して、図1の電気的接続に従って選択される数値のオフセット電位が発生する。
パルス装置を含む両方の実施形態の場合、パルス動作の周波数は、0.5〜1MHz、好適には、0.1〜10Hzの領域である。
上記説明を補足すると、イオン化の程度を増大するために、アーク蒸発装置、低電圧アーク、中空電極、イオン源等を、PVDコーティング装置で、蒸発装置またはイオン源として使用することができる(ハイブリッド方法)。
PVDコーティング装置用の上記各実施形態を使用すれば、下記のステップを含むPVDコーティング方法を行うことができる。
真空にすることができるチャンバ内にスパッタリング・プロセスが行われる少なくとも一つのターゲット・カソードと、少なくとも一つのアノードおよび基板と、基板に電気的に接続している基板ホルダーとを配置するステップと、
少なくとも一つのガス供給接続部を通して、上記チャンバを作用ガスおよび/または反応性ガスで充填するステップと、
基板が配置された状態でプラズマを発生するため、ターゲット・カソードに、アノードに対して負の電位を供給するために、第一の電圧を供給するステップと、
アノードに、チャンバ壁部に対して正の電位を供給するために、第二の電圧を供給するステップと、
基板に、アノードよりさらに負の電位を供給する第三の電圧を供給するステップと、
予め定めたコーティング時間が経過した後で、チャンバから基板を取り出すステップ。
この方法は、非常に優れた層特性(小さな波模様の表面)を持つコーティング基板を製造する為に使用することができる。上記コーティング・プロセスを実行するには約8時間かかる。8ミリの孔部を有する基板材料を用いて最大860個分を同時にコーティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】PVDコーティング装置の電気供給源の模式的な回路図である。
【図2】図1に示した電気供給源の変形を示す模式的な回路図である。

Claims (5)

  1. 真空排気可能なチャンバ(1)を含むPVDコーティング装置であって、
    少なくとも一つのガス供給接続部を備え、
    スパッタリング・プロセスを受ける少なくとも一つのターゲット・カソード(3)と、少なくとも一つのアノード(2)と、少なくとも一つの、工具である基板(10)を保持するためのものであって、保持されている工具である各基板(10)に電気的に接続している少なくとも一つの工具用の基板ホルダー(9)が配置されていて、
    前記工具である少なくとも一つの基板(10)が配置された状態でプラズマ(P)を形成するために、前記少なくとも一つのターゲット・カソード(3)に、前記少なくとも一つのアノード(2)に対して負の電位を供給するため第一の電圧を制御するように、前記少なくとも一つのターゲット・カソード(3)と前記少なくとも一つのアノード(2)との間に接続している装置(4)を含み、
    前記少なくとも一つのアノード(2)に、チャンバ壁部(8)に対して正の電位を供給するため第二の電圧を制御するように、前記少なくとも一つのアノード(2)と前記チャンバ壁部(8)との間に接続している装置(6)を持ち、
    記少なくとも一つの基板(10)前記少なくとも一つのアノード(2)との間に接続した装置(7)を持ち、前記装置(7)は前記少なくとも一つの基板(10)に、前記少なくとも一つのアノード(2)の電位より負の電位を供給する第三の電圧を制御し、
    前記第二の電圧を変化させて基板(10)を流れる電流を変えることができる一方、前記第三の電圧を保持することにより基板(10)とアノード(2)との間の電位差を維持することができ、
    以って、工具である基板のコーティングに用いることを特徴とするPVDコーティング装置。
  2. 請求項1に記載のPVDコーティング装置において、前記装置(7)が、前記基板(10)に前記ターゲット・カソード(3)の電位よりも高い電位を供給するように設定されていることを特徴とするPVDコーティング装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のPVDコーティング装置において、前記ターゲット・カソード(3)と前記基板(10)との間の距離と、前記ターゲット・カソード(3)と前記アノード(2)との間の距離の比が、1:5であることを特徴とするPVDコーティング装置。
  4. 請求項3に記載のPVDコーティング装置において、前記基板ホルダー(9)を配置することにより、前記基板(10)が、前記ターゲット・カソード(3)から40ミリの距離のところに位置し、前記ターゲット・カソード(3)と前記アノード(2)との間の距離が、250ミリの範囲内にあることを特徴とするPVDコーティング装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のPVDコーティング装置において、前記第一の電圧を供給する一つの電圧源を持ち、第二および第三の電圧用として、前記電圧源に並列に接続している各可変抵抗を備えることを特徴とするPVDコーティング装置。
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