JP4788029B2 - 半導体単結晶の製造装置及びそれを用いた半導体単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法と称する。)により半導体単結晶を育成するための単結晶製造装置及びそれを用いた半導体単結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、CZ法により育成されたシリコン単結晶はシリコン半導体ウェーハに加工され、半導体素子の基板として数多く使用されている。しかし、この一方で半導体ウェーハに形成される集積回路は、集積回路の機能向上を目指し集積回路を構成する半導体素子の高密度化が進められ、集積回路の基板材料である半導体ウェーハ表層に形成される電子回路も微細化する一途をたどっている。また、このような基板ウェーハに形成させる電子回路の微細化に伴い、半導体素子を基板ウェーハ表層に形成する際に、ウェーハ表面に施される酸化膜は薄膜化する一方で、絶縁特性に優れリーク電流の少ないより高い信頼性を持った酸化膜を基板ウェーハ上に形成することが要求されるようになっている。そして、最近の研究によると、基板ウェーハに形成された酸化膜の電気的な耐圧特性(以下、酸化膜耐圧特性と称す)は、基板となる半導体単結晶の結晶育成時に形成、導入された結晶内の欠陥に大きく関係していることが判明している。
【0003】
CZ法により育成されたシリコン単結晶には、単結晶が育成された温度環境や引上速度等の育成条件の違いによって結晶内に取り込まれる欠陥に差異が生じ、形成される点欠陥が主として原子空孔(ベイキャンシー:Vacancy)となる領域(以下、V領域と称する。)と、同じく格子間シリコン原子(インタースティシアル・シリコン:Interstitial-Si)となる領域(以下、I領域と称する)とに大きく分けることができる。シリコン単結晶において、V領域は原子空孔、つまり結晶内のシリコン原子の不足により生じる凹部やボイド(穴)のようなものが多く存在する領域であり、これに対しI領域とは、格子間にシリコン原子が余分に存在することにより発生する転位や余分なシリコン原子のクラスターが多く存在する領域である。他方、V領域とI領域との間には、格子間に余分な原子や原子の不足がないか、あるいは極めて少ないニュートラル(Neutral)な領域(以下、N領域と称する)が存在する。
【0004】
そして、最近の研究によれば、結晶内のFPD(Flow Pattern Defect)、LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)、あるいはCOP(Crystal Originated Particle)等のグローンイン(Grown-in)欠陥は、あくまでも原子空孔や格子間シリコン原子が結晶内で過飽和な状態にある時に発生するものであり、多少の原子の偏りがあっても飽和以下であれば欠陥としては存在しないことがわかってきた。そして、この結晶に取り込まれる両点欠陥の濃度は、単結晶の引上速度(単結晶の成長速度)と育成単結晶と原料融液面の境界にあたる結晶成長界面近傍の温度勾配との関係から決まることが知られている。
【0005】
また、V領域とI領域の間に存在するN領域には、OSF(酸化誘起積層欠陥:Oxidation Induced Stacking Fault)と呼ばれる欠陥が高密度に発生する領域が存在することが確認されている。この酸化誘起積層欠陥が高密度に発生している領域は、引き上げられた単結晶をウェーハ状に加工した時にウェーハ面内にリング状に観察されることから、OSFリングあるいはOSFリング領域と呼ばれている。
【0006】
これら結晶成長起因の欠陥発生状況を、結晶成長速度を徐々に変化させて引き上げた単結晶について観察すると、例えば結晶成長速度が0.6mm/min程度以上の比較的速い引上げ条件の領域では、空孔タイプの点欠陥が集合したボイド起因とされるFPD、LSTD、COP等のグローンイン欠陥が結晶径方向の全面に高密度に存在するV領域となり、これら欠陥が原因となってシリコン半導体ウェーハの酸化膜耐圧特性を低下させることになる。また、結晶の成長速度が0.6mm/min程度以下の領域では結晶成長速度が低下するに従って格子間シリコン原子の発生が次第に優勢になり、またOSFリングが徐々に縮小する第一の遷移領域が現れる。この第一の遷移領域においてOSFリングの外側部分は低欠陥領域であるN領域であり、結晶成長速度が0.4mm/min前後以下に低下したところでOSFリングは結晶径方向の面内中心で凝集消滅し、OSFリングのないN領域となる。そして、さらに成長速度を遅くすると、そのN領域の外側において結晶の周辺部にI領域が形成される第二の遷移領域を経て結晶の軸断面全面がI領域となる。I領域は、転位ループ起因と考えられるLSEPD(Large Secco Etch Pit Defect)やLFPD(Large Flow Pattern Defect)等の、L/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号)と呼ばれる欠陥が低密度に存在する領域であり、このようなL/D欠陥が半導体素子形成領域に存在すると、これが原因となって電流のリーク不良等、素子特性に大きな影響をおよぼす不良を誘発することになる。
【0007】
このようなCZ法で育成されたシリコン単結晶の特性に配慮して、単結晶の育成時に結晶に取り込まれる欠陥を制御して酸化膜耐圧特性に優れた単結晶を育成するための方法が、特開平11−79889号公報に開示されている。この単結晶育成方法は、通常は結晶の生産性やOSFの発生を考えてV領域が優勢となる育成条件を選択し結晶成長を行なうのに対し、V領域またはI領域のいずれでもない前記したN領域となるように単結晶の引上げを行なう。そして、このように単結晶をN領域となるように育成することによって、V領域またはI領域のどちらの欠陥も優勢ではない中間領域で単結晶が育成されることになり、結晶に欠陥が存在しないあるいは極力欠陥が抑制された極低欠陥の単結晶を得ることができ、ひいては、電流リークや酸化膜耐圧等の電気特性に優れた半導体ウェーハを得ることができる、というものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、結晶の略全体がN領域で形成されるようにシリコン単結晶を育成するには、単結晶の育成速度を0.5mm/min以下として結晶を引き上げる必要があり、通常の単結晶引上速度が1.0mm/min程度であることを考えれば成長速度の低下が著しく、生産性の低下ひいては製造コストの高騰が必至である。
【0009】
他方、特開2000−34192号公報には、引き上げられた単結晶の周囲を取り囲むように冷却筒を設けて雰囲気温度を制御するとともに結晶の冷却効果を高め、高速で単結晶育成を行なう装置が開示されている。しかし、該単結晶育成装置は、結晶成長速度の高速化には確かに効果を有しているが、低欠陥結晶を育成するのに必要な単結晶の引上軸方向の温度勾配をより適切に効率よく形成するには問題が残されていた。特に、V領域とI領域の中間領域であるN領域で単結晶を引き上げるためには、単結晶の成長条件がV領域やI領域で結晶を引き上げる場合に比べて厳しく、精密に育成環境を整える必要があった。また、N領域となるように単結晶を引き上げる場合にはOSFリングの発生にも配慮する必要があり、結晶にOSFリングが現れないで結晶の略全体にわたってN領域となるように結晶を引き上げるには、結晶引上軸方向の温度勾配を引上速度に合わせ所望の値に整えて結晶成長を行なうことが要求され、引上速度を高速化するに従って結晶周囲の温度条件をどのように整えるかが重要なポイントとなる。上記公報の技術では、冷却筒と融液表面との間に、円錐状の放熱抑制部材を2段に挿入されており、結晶半径方向の温度勾配の低減が図られているが、結晶引上軸方向の温度勾配制御効果は不十分と見られる。
【0010】
本発明の課題は、CZ法による半導体単結晶の育成において、原料融液より引き上げられた単結晶を冷却するにあたり、単結晶からの輻射熱を効率的に結晶育成炉の外部へ移送するとともに、単結晶の成長条件に合ったより好ましい冷却雰囲気を形成し、高い生産性で所望の品質を有する半導体単結晶を製造するための装置及び方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明は、半導体単結晶の育成炉内においてルツボに収容した原料融液から、チョクラルスキー法により半導体単結晶を引き上げるようにした半導体単結晶の製造装置に係り、上記の課題を解決するため、その第一の態様は、
内部にルツボが配置される育成炉本体と、
該育成炉本体の上部に連通形態にて一体形成され、半導体単結晶の回収空間を形成する回収空間形成部と、
原料融液より引き上げられた半導体単結晶を囲繞するように配置された円筒状または円錐状の形状を有する結晶冷却筒と、
回収空間形成部に冷却媒体を還流することにより、該回収空間形成部を強制的に冷却する強制冷却機構とを有し、
結晶冷却筒は上部が回収空間形成部の下部に熱伝達可能に接続され、引き上げられた半導体単結晶の冷却により該結晶冷却筒の吸収した熱が、強制冷却機構により強制冷却される該回収空間形成部を経て育成炉外に排出されるとともに、該結晶冷却筒の原料融液直上に位置する下部側を黒鉛製冷却部とし、回収空間形成部に接続される上部側を金属製冷却部とし、
結晶冷却筒は、半導体単結晶の引上げ方向において、金属製冷却部の長さが黒鉛製冷却部の長さと等しいかあるいはそれよりも長いことを特徴とする。
【0012】
結晶冷却筒は、CZ法により半導体単結晶を育成するための単結晶製造装置に配設されるものであり、全体として円筒状または円錐状の形状を有し育成単結晶を囲繞するように配置されている。そして、上記本発明の第一の構成において結晶冷却筒は、引き上げられた単結晶からの輻射熱を効率よく育成炉外へ移送するために、冷却筒の上方は熱伝導率の高い金属製冷却部となし、原料融液面に近接する下部は黒鉛製冷却部となす。結晶冷却筒をこのような構造とすれば、結晶温度がある程度低下した、結晶成長界面から遠い位置では冷却速度が大きくなり、効率よく冷却が図られるのに対し、結晶成長界面付近では前記冷却温度勾配が小さい徐冷となり、結晶成長界面の方向の温度が安定するため結晶成長速度の高速化を図ることができる。また、強制冷却により冷却速度が相当大きくなる育成炉の回収空間形成部と、冷却速度の比較的小さい黒鉛製冷却部との間に、それらの中間の冷却速度となる金属製冷却部を配することで、結晶引上方向の温度勾配が最適化され、結晶内に取り込まれる欠陥濃度を適切に調整することができるため、安定して所望の品質を有する単結晶を育成することが可能となる。
【0013】
なお、結晶冷却筒の金属製冷却部の上部は、冷却筒金属部からの熱を確実に育成炉へ伝えるために、回収空間形成部あるいは原料融液を収容している育成炉本体上部(以下、育成炉側係合部という)に対し、密接係合していることが望ましい。特に、冷却筒側係合部と育成炉と育成炉側係合部とは、より効率的に熱の伝達を行なうことができるよう、面接触で密着していることが望まれる。育成炉と冷却筒金属部を面接触で密着させておけば、冷却筒が育成結晶から吸収した熱を速やかに育成炉壁に伝達することができるようになり、結晶冷却筒の冷却効果が一層高められる。
【0014】
なお、CZ法による単結晶育成に用いられる単結晶製造装置の育成炉には、加熱ヒータ等から放射された輻射熱から育成炉壁を保護し一定温度に保つために単結晶育成炉の壁を二重構造とし、その隙間に水等による冷却媒体を還流させている構造を採用したものが多い。この構造によると、結晶冷却筒から伝達された熱は、製造装置の回収空間形成部あるいは育成炉本体の金属製の炉壁を介して炉壁を冷やすための冷却媒体に伝えられ、速やかに育成炉外部へと運ばれる。そして、育成炉の回収空間形成部が、そのような強制冷却構造を採用している場合、強制冷却機構を有さない上記構成の結晶冷却筒を追加装備するだけで、結晶内の欠陥が抑制された低欠陥結晶を高速で引き上げるための適切な冷却雰囲気を形成する機能を容易に付加することができる。該結晶冷却筒そのものは構造が比較的単純であり、製造装置への装着や取り外しが容易であるため、結晶製造装置の装備を、育成する単結晶の品質に適した装備へと速やかに変更することができ、ひいては効率的な製造装置運用を図ることが可能である。
【0015】
次に、本発明に関連する半導体単結晶の製造装置は、
半導体単結晶の育成炉内においてルツボに収容した原料融液から、チョクラルスキー法により半導体単結晶を引き上げるようにした半導体単結晶の製造装置において、
内部にルツボが配置される育成炉本体と、
該育成炉本体の上部に連通形態にて一体形成され、半導体単結晶の回収空間を形成する回収空間形成部と、
円筒状または円錐状の形状をなし、原料融液より引き上げられた半導体単結晶を囲繞するように配置されるとともに上部が回収空間形成部に係合され、さらに、回収空間形成部に係合される上部が、引き上げられた半導体単結晶からの輻射熱を強制的に育成炉外へ移送するために内部に冷却媒体を還流する構造の強制冷却部とされ、また、原料融液直上に位置する下部が黒鉛製冷却部とされ、さらに、強制冷却部と黒鉛製冷却部との間に金属製冷却部を配した結晶冷却筒と、
を備えたことが想定される。
【0016】
この構成では、第一の態様と異なり、回収空間形成部に係合される結晶冷却筒の上部そのものが強制冷却部とされている。そして、この場合においても、高温の原料融液からの冷却筒の保護と、結晶の引上軸方向に望ましい温度勾配を形成する観点において、冷却媒体を用いた強制冷却部の下方に熱伝導率の高い金属製冷却部を設け、さらに、その金属冷却部の下方には黒鉛から成る黒鉛製冷却部を設けるようにすることで、結晶内に欠陥の存在しないあるいは極力欠陥を抑えた単結晶を育成するのに望ましい結晶冷却温度雰囲気を、育成結晶周囲に形成することが可能となる。
【0017】
従来、冷却筒は、全体がステンレス等の金属により、冷却媒体還流による一体の強制冷却部とされていることが多いが、シリコン融液の付着等により冷却筒下部が溶損すると、高価な強制冷却部の全体の交換を強いられるために不経済であった。そこで、この対応として冷却筒の下端に保護部材を設けたり、冷却筒と融液の距離を大きく取ることで冷却筒に原料融液が付着したり、あるいは融液に冷却筒が浸漬するのを防止してきたが、反面、冷却筒が結晶の成長界面から遠くなることでその効果を十分に発揮することができず、特に欠陥を抑制した高品質結晶の育成では結晶成長界面付近の温度分布を適切にコントロールする必要があり新たな冷却装置の検討が加えられていた。
【0018】
これに対し上記本発明の結晶冷却筒は、原料融液面近くであっても効率よく最大限結晶からの輻射熱を吸収できるよう、強制冷却部の下部に金属製冷却部を配置して、その熱を強制冷却部へ移送する構造としているので、金属冷却部の冷却効果は衰えることなく、結晶育成全般にわたって安定した冷却効果を得ることが可能である。また、金属製冷却部の下には融液面直上に配置されている形で黒鉛製冷却部が設けられる。この黒鉛製冷却部は、金属製の冷却部に比べ融液あるいは育成結晶からの輻射熱を除去する効果が小さく、結晶周囲の融液温度の変化を小さく保ち結晶の育成を安定させると同時に、成長界面に近い結晶部位を必要以上に冷却することがないので、特に低欠陥結晶を育成する場合に適切な温度雰囲気を形成することが可能となる。
【0019】
一方、黒鉛製冷却部の上端は、熱伝導の良好な金属製冷却部に接しているので、黒鉛製冷却部の温度が上がった場合でもその熱を速やかに金属製冷却部へ伝達することができ、ひいては安定した冷却効果を持続することができる。さらに、該結晶冷却筒は、上部に冷却媒体を用いて強制的に冷却を行なう強制冷却部、その下に密接に金属製冷却部、そして最下端に黒鉛製冷却部を有する三層から構成されており、冷却能力は冷却筒下方で低く上方に行くに従って徐々に冷却効果が高まる機構となっている。このような構造とすることにより、結晶引上軸方向の温度勾配に急激な温度変化を持った個所がなくなり、滑らかな引上軸方向の温度勾配を形成することでき、ひいては結晶に不要な熱的なストレスを加えることなく単結晶の育成を行なうことができるようになる。
【0020】
さらに、結晶冷却筒の上部のみが強制冷却部とされ、その下側が金属製冷却部あるいは黒鉛製冷却部の配置により保護されているから、シリコン融液等の飛散・付着により高価な強制冷却部が破損する惧れがほとんどない。また、シリコン融液の付着しやすい結晶冷却筒の融液面直上部分はいわば消耗品的に取り扱うことができる安価な黒鉛製なので、万一破損しても経済的な損害はそれほど深刻とはならない。
【0021】
なお、本発明の第1の態様及び第2の態様のいずれにおいても、結晶冷却筒の内表面には、溝あるいは凹凸を設け冷却筒内表面の面積を大きくして、冷却効果を高めることが可能である。冷却筒の内側表面に溝あるいは凹凸を付けることによって結晶からの輻射熱を受け取る面積を広くすれば、より冷却筒により育成炉の外部へ移送せされる熱量が大きくなり、育成単結晶の冷却効果を高めることができる。
【0022】
また、本発明の結晶冷却筒の効果を高める方法として、冷却媒体を還流する強制冷却部や円筒あるいあは円錐形状の金属製の冷却筒部分の内表面に、黒鉛を塗布する等して表面を黒色化する黒化処理を施せば、さらに育成結晶と対峙する冷却筒の金属部分からの輻射熱の吸収効果が高まり、より速やかに結晶の熱を除去することが可能となる。
【0023】
本発明の半導体単結晶の製造方法は、上記の半導体単結晶の製造装置を用い、ルツボに収容した原料融液から、チョクラルスキー法により半導体単結晶を引き上げて製造することを特徴とする。これによると、効率良く所望の育成単結晶を冷却する温度雰囲気を形成することができるとともに、結晶冷却筒の冷却効果もより一層高いものとなり単結晶育成時の引上速度の高速化を図ることが可能となる。また、本発明の結晶冷却筒を用いることにより結晶品質に合った適切な冷却温度雰囲気を形成することができるため、安定した品質の単結晶を容易に育成可能なものとなる。これによって、これまで製造の難しかった高品質結晶、特に育成時に導入される結晶欠陥を低密度に抑制した単結晶を高速で引き上げることが可能となり、低欠陥結晶の製造コストを低減が図られた。さらには、既存の単結晶製造装置であっても、育成単結晶を冷却するための複雑な結晶冷却機構を設けることなく効率の高い結晶冷却雰囲気を形成できるので、設備導入が容易になると同時に製造装置の装備変更も簡単であるため、製造装置の稼動率と作業性の向上に寄与することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、CZ法によるシリコン半導体単結晶製造に適用した場合を例にとり、図面を参照しながら説明する。図1の単結晶製造装置1は、本発明の第二の態様に係る一例を示すものであり、その育成炉は、原料融液14を内部に収容し、単結晶23を引上育成するための育成炉本体2と、育成された単結晶を保持し取り出すための回収空間形成部4とから構成されている。そして、育成炉本体2と回収空間形成部4との各壁部は、単結晶育成時の加熱による高温から炉壁を保護するために、外壁2a,4aと内壁2b,4bとの二重構造とされ、両者の隙間には、冷却媒体を還流させて炉壁の温度が一定以上に上昇しないように保護するための強制冷却機構3が設けられている。本発明の単結晶製造装置では、比熱やコスト、取扱い易さ等を考えて冷却媒体として水を使用した。また、本実施形態において強制冷却機構3は、還流経路を銅パイプ等の金属パイプにて構成し、その一端側に冷却媒体入口3aを、他端側に冷却媒体出口3bを形成している。なお、図1では強制冷却機構3は育成炉本体2にのみ設けているように描いているが、回収空間形成部4にも同様の構成の強制冷却機構を設けることができる。
【0025】
育成炉本体2の中央部には、支持軸13を介して内側が石英ルツボ12b、外側が黒鉛ルツボ12aとされたルツボ12が配置され、支持軸13の下端に取り付けられた非図示のルツボ駆動機構によって回転動かつ上下動自在とされている。また、ルツボ12の外側周囲には、ルツボに充填された多結晶原料を融解し融液として保持するための加熱ヒータ15が設けられている。さらに、その外側には黒鉛製の断熱材16が置かれており、育成炉内の保温と加熱ヒータ15からの高温の輻射熱から育成炉炉壁を保護する役目を果たしている。
【0026】
一方、回収空間形成部4の上端には単結晶を引き上げるための非図示のワイヤー巻出し巻取り機構が取り付けられ、そこから巻き出されたワイヤー22の先端には種結晶21を保持するための種ホルダー20が取り付けられている。この種ホルダー20は、該ワイヤー巻出し巻取り機構によって回転及び上下動自在とされ、その先端には種結晶21が取り付けられている。上記ワイヤー巻出し巻取り機構を駆動することによってワイヤー22を巻き出し、種結晶21を原料融液14に浸漬する。そして、原料融液14と種結晶21の温度が安定したら、ワイヤー22を回転させながら静かに巻き取ることで、種結晶21の下方に単結晶23を育成することができる。
【0027】
なお、大直径あるいは長尺の単結晶棒を育成する場合は、図6に示すように、磁場発生装置31,31によって原料融液14に磁場を印加することにより、ルツボ12内での原料融液14の対流を抑制することが有効である(いわゆるMCZ法(Magnetic Field Applied Czochralski Method))。なお、図1と共通の部分には同一の符号を付与して詳細な説明を省略している(以降に説明する図7、図8、図9、図10及び図11についても同様)。
【0028】
回収空間形成部4の下方には、育成炉本体2の原料融液面14aに向かって延伸する結晶冷却筒25が装備されている。結晶冷却筒25は、原料融液14から引き上げられた単結晶23を囲繞し、育成単結晶が適切な冷却速度で冷却されるよう、結晶周囲の温度雰囲気を所望の値とする働きをなす。この結晶冷却筒25は、回収空間形成部4に接する上部が冷却媒体を還流して強制冷却する強制冷却部5とされ、強制冷却部5の下方には金属から成る金属製冷却部8が、さらに金属製冷却部8の下方に黒鉛製の黒鉛冷却部10が配置された構造を有する。このうような構造を用いることによって冷却筒25の冷却能力が高められ、引上速度を高速に保つとともに、所望の品質、特に低欠陥結晶の育成に必要とされる冷却温度雰囲気が形成される。なお、黒鉛製冷却部10には原料融液14の温度安定を図るために、その先端に板状の反射リング11(例えば等方性黒鉛製である)を設けている。
【0029】
金属冷却部8は、鉄、ニッケル、クロム、銅、チタン、モリブデン及びタングステンのいずれかを主成分とする金属(単体金属及び合金のいずれか)にて構成することができる。これらの金属は融点が高く熱伝導率も良好であるため、吸収した熱を速やかに育成炉や強制冷却部に伝え、単結晶の育成全般にわたり安定した高い除熱効果を維持できる。また、これら金属は機械的な強度も高く、さらには育成炉内の高温にも十分に耐えるので、変形や変質することなく長時間にわたって安全に使用することがきるものである。なお、耐久性の高い金属冷却部8をより安価に構成するには、鉄、ニッケル、クロム及び銅のいずれかを主成分とする金属からなる基材の表面を、チタン、モリブデン、タングステン及び白金族金属のいずれかを主成分とするライニング層で覆った構成とすることも有効である。例えば、鉄は高強度で安価であるが、耐食性には若干劣る。しかし、チタン、モリブデン、タングステンあるいは白金族金属からなる耐食性ライニングを施すことで、耐食性を補うことが可能となる。また、基材を銅で構成することは、熱伝達特性を高める上でより望ましい。
【0030】
次に、強制冷却部5は、具体的には冷却媒体を還流するための強制冷却機構6を備えている。強制冷却機構6は、ここでも還流経路を銅パイプ等の金属パイプにて構成し、その一端側に冷却媒体入口6aを、他端側に冷却媒体出口6bを形成している。なお、強制冷却機構6における冷却媒体の流通経路は、上記のように内壁と外壁との空間に別途金属パイプを配置して形成する態様のほか、内壁/外壁間の空間そのものを流通経路として使用するウォータージャケット型のものを採用してもよい。この場合、空間内に配置した仕切り板により適切な流通経路を画成することが可能である。また、回収空間形成部4に強制冷却機構を組み込む場合にも、同様にウォータージャケット型のものを採用することが可能である。
【0031】
なお、単結晶育成時は育成炉内をアルゴン(以下、Arと称する)ガス等の不活性で満たして操業が行なわれる。そこで、回収空間形成部4の上方にはガス導入管19が設けられており、回収空間形成部4から不活性ガスが炉内に導入され、育成炉本体2の下部にある排ガス管17から育成炉外へ排出される。育成炉内に流す不活性ガスの量と炉内の圧力は、ガス導入管19に設けられた非図示のガス流量制御装置と、排ガス管17上のコンダクタンスバルブ18を用いて適宜調整される。
【0032】
また、結晶冷却筒25の内面側には、冷却筒内表面の面積を大きくし引き上げられ半導体単結晶からの輻射熱を効率よく吸収するための、溝及び/又は凹凸を1箇所以上設けることができる。結晶冷却筒25の内部に形成する溝あるいは凹凸の数や形状は、必要とする冷却筒の冷却効果を検討して決めればよい。図2は、強制冷却部5及び金属製冷却部8に溝ないし凹凸を形成するいくつかの例を示すものである(いずれか一方のみに設けてもよいし、双方に設けてもいずれでもよい)。図2(a)は、筒状の強制冷却部5(金属製冷却部8)の内周面に、周方向の溝7(67)を軸線方向に所定の間隔で複数刻設した態様を示す。図2(b)は、同じく軸線方向の溝57(77)を周方向に所定の間隔で複数刻設した態様を示す。図2(c)は、島状、例えば半球状の凸部67(87)を複数分散形成した態様を、同図(d)は同じく凹部77(97)を複数分散形成した態様を示す。当然、(a)〜(d)の2以上を組み合わせた方法でも問題はなく、例えば(a)及び(b)を組み合わせた格子状の溝を刻設してもよい。また、図3に示すように、冷却筒の内周面に凸部として1又は複数のフィンを形成してもよい。図3(a)は、金属製冷却部8の内周面に沿うリング状のフィン9を、各々溶接部9aにより軸線方向に所定の間隔で複数形成した例を示す。
【0033】
なお、より大きな冷却効果を得る必要があれば、上記のような溝や凹凸を増やし、冷却筒内表面の面積を可能な限り大きなものとすればよい。例えば、図7の装置100においては、金属製冷却部8の内周面に形成したフィン9の数を、図1の装置1よりも大きくしている。他方、それ程の効果を必要としない場合は、図10の装置250のように、溝や凹凸を付けなくとも十分な効果を得ることができる。
【0034】
また、上記以外に結晶冷却筒25の効果を高める方法として、輻射熱を効率よく吸収するために、半導体結晶に向けた熱反射を抑制する熱反射抑制部を形成することができる。熱反射抑制部は、具体的には、領域の色調を黒色化させる黒化処理、及び半導体結晶からの輻射熱を乱反射させるために領域表面を粗化する表面粗化処理の少なくともいずれかを施して形成することができる。図3(a)は、金属製冷却部8の内面(フィン9を含む)に黒鉛塗布層8b,9bを形成する黒化処理を施した例を、同図(c)は、表面粗化処理としてショットブラストを施し、面粗し部8c,9cを施した例を示す。
【0035】
結晶冷却筒25の金属製冷却部8と強制冷却部5、あるいは金属製冷却部8と黒鉛製冷却部10とは、各々接続面が密着形態にて配置されていることが、金属製冷却部8から強制冷却部5への熱伝達効率を向上させる観点において望ましい。図4は、金属製冷却部8と強制冷却部5との接続形態のいくつかの例を示すものである。図4(a)では、強制冷却部5の下端面と金属製冷却部8の上端面とを突き合わせ(突き合わせ面は、密着性を高めるため研磨により平坦化しておくことが望ましい)、その突き合わせ縁を溶接部8e,8fにより接続した例である。なお、突き合わせ面間にろう付け層8fを形成することも可能である。また、図4(b)では、金属製冷却部8の上端縁から側方に延びる鍔状の接続部8cを形成して強制冷却部5の接合面に重ね合わせ、接続部8cを貫通する形で強制冷却部5側にボルト40をねじ込んで締結した例である。さらに、図4(c)は、強制冷却部5の下面側に開口する溝41を形成し、ここに筒状の金属製冷却部8の上端部を圧入もしくは焼きバメ挿入した例である。
【0036】
また、図5は、金属製冷却部8と黒鉛製冷却部10との接続形態のいくつかの例を示す。いずれも、金属製冷却部8と黒鉛製冷却部10とにそれぞれ面接触係合部8h及び10hを形成し、各係合面8i,10iにてそれらを面接触させつつ、係合保持手段により該面接触状態に保持させた構成を有する。図5(a)の構成では、金属製冷却部8の下端部に側方に突出する面接触係合部8hを形成する一方、黒鉛製冷却部10の上端部に同じく側方に突出する面接触係合部10hを形成し、黒鉛製冷却部10側の面接触係合部10hを金属製冷却部8側の面接触係合部8hに懸架させ、黒鉛製冷却部10の自重により両係合部8h、10hの係合状態を維持する構成である。ここでは、面接触係合部8hは、金属製冷却部8の開口内縁にて周方向内向きに突出する鍔状に形成され、その上面が係合面8iとされる。また、面接触係合部10hは黒鉛製冷却部10の外周面上端部に外向きに突出する鍔状に形成され、その下面が係合面10iとされている。組みつけの際には、黒鉛製冷却部10を金属製冷却部8の内部に上部開口側から軸線方向に挿入し、面接触係合部10h,8hを係合面10i,8iにて面接触係合させる形とする。
【0037】
一方、図5(b)においては、金属製冷却部8の下端部と黒鉛製冷却部10の上端部とをそれぞれ面接触係合部8h,10hとなし、それらの一方を他方の内側に軸線方向に挿入して、その接触周面をそれぞれ係合面8i,10iとするとともに、その状態で両者を締結部材にて締結した構造としている。この実施例では、締結部材は、面接触係合部8h,10hを半径方向に貫通するボルト45と、これに螺合するナット46とにより構成している。
【0038】
次に、単結晶23の引上げ方向において、金属製冷却部8の長さLmと黒鉛製冷却部10の長さLcとは、例えば図8に示す装置150のように、金属製冷却部8の長さのほうを短くすることも可能であるが、原料融液面14aと育成炉本体の天井面との間の空間は限られおり、狭い育成炉内で効率的に結晶の冷却を行なうには、冷却能力の高い金属製冷却部8の面積を大きくすることが高い結晶冷却能力を得る上で有利である。従って、図1のように、金属製冷却部8の長さLmは黒鉛製冷却部10の長さLcと等しいかそれ以上とすことが望ましい。黒鉛製冷却部10の長さLcは結晶成長界面近傍の温度を安定させるため程度に留めておくのがよく、黒鉛製冷却部10の長さLcに対し金属製冷却部8の長さLmを同じかあるいはそれ以上長くすることによって、より冷却能力の高い結晶冷却筒25が得られるのである。
【0039】
なお、図9に示すように、黒鉛製冷却部10の先端側には、原料融液14の保温と炉内のヒータ15からの加熱によって原料融液14に生ずる熱対流を安定させ、結晶成長界面付近での融液温度の変化をより安定的なものとするために、熱遮蔽リング30を設けることができる。熱遮蔽リング30は、図9(b)に示すように、多孔質あるいは繊維質の断熱材からなる断熱層30bを含んで構成される。これにより、原料融液14からの輻射熱をより効果的に遮蔽し、融液の保温効果を高めて融液14の温度変動をより小さくすることができる。特に、断熱層30bを、カーボンファイバー製の繊維質断熱材等、断熱効果の高い材質にて構成すれば、より大きな保温効果が得られ、一層安定した結晶成長を行なうことができる。本実施例では、熱遮蔽リング30の融液面14aに面する側を前述の反射リングと同様の等方性黒鉛板30aとなし、残部(すなわち、黒鉛製冷却部10と等方性黒鉛板30aとの間に挟まれる部分)を、断熱層30bとして構成している。
【0040】
次に、図11の単結晶製造装置300は、本発明の第一の態様に係る一例を示すものである。単結晶製造装置300においては、回収空間形成部4及び育成炉本体2とも、図1の単結晶製造装置と同様に壁部が二重構造となっており、回収空間形成部4にも強制冷却機構6が設けられている。また、結晶冷却筒25からは強制冷却部が廃止されるとともに、その金属製冷却部8は回収空間形成部4の下部に熱伝達可能に接続されている。その接続形態は、図4に示す強制冷却部5との接続形態と同様のものが採用できる。これによる作用・効果は、図1の装置1と略同様である。なお、金属製冷却部8の上端を育成炉本体2の天井部に密接に係合しても同様の効果を得ることができる。また、結晶冷却筒25の下部は図1と同様に黒鉛製冷却部10とされている。このような構造とすることによって結晶成長界面近傍の雰囲気温度は安定し、融液の温度変動も小さく抑えることができるようになるので、結晶成長を妨げることなく順調な結晶育成を行なうことができる。さらに、黒鉛製冷却部10の先端には、図9と同様の断熱リング30が取り付けられている。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の単結晶製造装置によるシリコン単結晶の育成を実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0042】
(実施例1)
まず、結晶欠陥の少ないシリコン単結晶をできるだけ速い速度で引き上げるためにはどのような製造装置の構造とすべきか検討するために、単結晶製造装置の装備をいくつか変更しシリコン単結晶の育成を行なった。
【0043】
単結晶の育成は、単結晶製造装置に下記A〜Dのそれぞれ違った装備を施して、口径60cmの石英製ルツボにシリコン単結晶の原料である多結晶シリコンを100kg充填しヒータを加熱して融解した後に、一定の直径を有する結晶定径部の直径が200mmのシリコン結晶を引き上げた。単結晶を育成するにあたっては、ルツボ回転や炉内に流すArガスの量等の操業条件を調整し育成単結晶の酸素濃度が19〜20ppma(ASTM’79規格による測定値)となるように調整を図り、結晶の引上速度を0.8mm/minの速度から単結晶の成長が進むに従って0.4mm/minまで次第に引上速度を遅くして、結晶のどの位置でOSFリングが消え、無欠陥あるいは極めて欠陥密度の低いN領域となる部位が現れるかを確認した。単結晶製造装置は、育成単結晶の冷却雰囲気を形成する結晶冷却筒をA〜Dのような構造とした以外は、いずれも同じ構造の単結晶製造を用いて結晶の引上げを行なった。装備A〜Dの詳細は、次の通りである。
【0044】
1)装備A(図10に対応): 回収空間形成部4から冷却水により強制冷却する強制冷却部5を下垂し、その下方に円筒状のステンレス製金属製冷却部8を取り付け、さらに、その金属製冷却部8の下には高純度黒鉛を用いて作成した黒鉛製冷却部10を設けた。なお、黒鉛製冷却部10には反射リング11を設けた。
2)装備B(図1に対応): 装備Aと同じ構成の結晶冷却筒25であるが、強制冷却部5と金属製冷却部8に、図2(b)のような縦溝を刻み冷却筒内部25の面積を増やし、さらに金属製冷却部8/強制冷却部5の輻射熱の反射を減らすために、各々内面に表面粗化処理を施した結晶冷却筒25とした。
3)装備C(図7に対応): 装備Bに準ずるが、金属製冷却部8の長さLmを黒鉛製冷却部10の長さLcの2倍にして冷却筒25の冷却効率の向上を図った。
4)装備D(図9に対応): 装備Cに準ずるが、黒鉛製冷却部10の先端に配置されていた反射リング11を、さらに断熱効果の高い熱遮蔽リング30に替え、融液の保温効果を高める構造とた。
【0045】
以上の装備の単結晶装置を用いて育成した結晶を、結晶の引上軸中心に沿って縦割りにし、図12に示すように、OSFリング結晶内の軸中心に向かって消滅している位置が結晶のどの位置にあるかを調べた。OSFリングの評価方法は、次の方法を用いて評価を行い、発生位置を確認した。
1)単結晶を引上軸方向に10cm毎に切断した後にそれぞれを径中心から縦に割り、縦に割った面を結晶引上軸に沿ってスライスして厚さが2mm前後の観察用ウェーハを得た。
2)この観察用ウェーハに、窒素雰囲気および酸素雰囲気中で熱処理を加えた後に薬液で表面の酸化膜を除去し、X線トポグラフを用いてウェーハ表面を観察しOSFの発生領域の確認を行なった。
3)この観察結果を元に、種結晶側の結晶先端10cmを除きOSFリングが結晶中心に向かって消滅している位置を調べ、その結晶部位での引上速度を対比したところ表1に示す結果が得られた。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の結果から、装備Dを用いた単結晶製造装置で引上速度が0.65mm/minとなった時にOSFリングが消滅していることから、この装備を用いて引上速度が0.65mm前後となるように単結晶の育成を行なえば、欠陥の極めて少ない結晶を高速で引き上げられることを確認した。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同様に、口径60cmの石英ルツボに多結晶シリコンを100kg充填し溶解した後に、定径部の直径が200mmのシリコン単結晶を引き上げた。この時の単結晶製造装置には装備Dの結晶冷却筒を取り付けた製造装置を用い、単結晶の引上速度が結晶定径部前半の10cm位置で0.64mm/min、結晶成長が進むに従って徐々に引上速度を下げ、定径部の後半では0.60mm/minの引上速度となるように操業条件を整えて単結晶を育成した(図13:実線)。
【0049】
育成されたシリコン単結晶には変形等を生じることもなく、略円柱状の単結晶を形成することができた。この単結晶をウェーハ状に加工して1cm単位で抜き取り、OSFの発生の有無と酸化膜耐圧特性の評価を行なった。この結果、結晶内にOSFは観察されず、またCモード酸化膜耐圧測定条件により酸化膜耐圧特性を評価したとこと良品率は100%であり良好な結果を得ることができた。
【0050】
なお、Cモード酸化膜耐圧測定条件は次の通りである。
1)酸化膜 : 25nm 2)測定電極: リンドープポリシリコン
3)電極面積: 8mm2 3)判定電流: 1mA/cm2
4)8MV/cm以上の電圧を印加したときに、電流リークが発生しなかったものを良品と判定した。
【0051】
(比較例)
次に、装備Dにおいて、結晶冷却筒25を、全体が黒鉛にて構成された同じ寸法のものに替えて、シリコン単結晶の育成を行なった。単結晶の育成は、実施例と同様に口径60cmの石英ルツボに多結晶シリコンを100kg充填し溶解した後で、原料融液から定径部の直径が200mmのシリコン単結晶の引き上げた。この単結晶製造装置の装備では、低欠陥結晶を0.60mm/min以上の高速で引き上げることは不可能であり、この装置によりOSFリングの発生のない低欠陥結晶を育成できたのは、単結晶の結晶定径部前半の10cm位置の引上速度を0.47mm/minとし、それ以降、結晶成長が進むに従って徐々に引上速度を下げ定径部の後半で0.43mm/minの引上速度となるように操業条件を整えて単結晶を育成時であった(図13:破線)。この結果、本発明の装置を用いることにより引上速度が高められ、結晶定径部の製造時間を27%も短縮できることを確認できた。
【0052】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。上記の実施の形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様の効果を奏するものはいかなるものであっても、本発明の技術的範囲に包含されることは無論である。
【0053】
例えば、本発明の装置では磁場を印加しないで単結晶を育成するCZ法の単結晶製造装置を例に挙げて説明したが、原料融液に磁場を印加しながら単結晶を育成するMCZ法を用いた単結晶製造においても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、本発明をシリコン以外の半導体単結晶の成長に利用可能なことは当然であり、CZ法を用いた例えばGaAs結晶等の化合物半導体の育成に適用した場合でもその効果を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第二の態様に係る半導体単結晶の製造装置の一例を示す断面模式図。
【図2】結晶冷却筒に溝あるいは凹凸を施すいくつかの例を示す説明図。
【図3】金属製冷却部の内面にフィンを設ける例と、同じく黒化処理あるいは表面粗化処理を施す例を示す説明図。
【図4】金属製冷却部と強制冷却部との接続形態をいくつか例示して示す断面図。
【図5】金属製冷却部と黒鉛製冷却部との接続形態の一例を示す断面図。
【図6】図1の半導体単結晶の製造装置の第一変形例を示す断面模式図。
【図7】図1の半導体単結晶の製造装置の第二変形例を示す断面模式図。
【図8】図1の半導体単結晶の製造装置の第三変形例を示す断面模式図。
【図9】図1の半導体単結晶の製造装置の第四変形例を示す断面模式図。
【図10】図1の半導体単結晶の製造装置の第五変形例を示す断面模式図。
【図11】本発明の第一の態様に係る半導体単結晶の製造装置の一例を示す断面模式図。
【図12】実施例1及び実施例2において、引上速度を徐々に低下させ、結晶のN領域が現れる位置の引上速度を求める方法を模式的に表した図。
【図13】実施例2において、実施例と比較例との引上速度プロファイルを比較して示す図。
【符号の説明】
1,100,150,200,250,300 半導体単結晶の製造装置
2 育成炉本体
3 強制冷却機構
4 回収空間形成部
5 強制冷却部
6 強制冷却機構
7 溝部
8 金属製冷却部
9 フィン(凸部)
10 黒鉛製冷却部
12 ルツボ
14 原料融液
25 結晶冷却筒
30 熱遮蔽リング
Claims (9)
- 半導体単結晶の育成炉内においてルツボに収容した原料融液から、チョクラルスキー法により半導体単結晶を引き上げるようにした半導体単結晶の製造装置において、
内部に前記ルツボが配置される育成炉本体と、
該育成炉本体の上部に連通形態にて一体形成され、前記半導体単結晶の回収空間を形成する回収空間形成部と、
原料融液より引き上げられた半導体単結晶を囲繞するように配置された円筒状または円錐状の形状を有する結晶冷却筒と、
前記回収空間形成部に冷却媒体を還流することにより、該回収空間形成部を強制的に冷却する強制冷却機構とを有し、
前記結晶冷却筒は上部が前記回収空間形成部の下部に熱伝達可能に接続され、引き上げられた半導体単結晶の冷却により該結晶冷却筒の吸収した熱が、前記強制冷却機構により強制冷却される該回収空間形成部を経て育成炉外に排出されるとともに、該結晶冷却筒の前記原料融液直上に位置する下部側を黒鉛製冷却部とし、前記回収空間形成部に接続される上部側を金属製冷却部とし、
前記結晶冷却筒は、前記半導体単結晶の引上げ方向において、前記金属製冷却部の長さが前記黒鉛製冷却部の長さと等しいかあるいはそれよりも長いことを特徴とする半導体単結晶の製造装置。 - 前記結晶冷却筒の前記金属製冷却部と育成炉側との接続部において、金属製冷却部側の接続面と育成炉側の接続面とが密着形態にて配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記結晶冷却筒の内面側に、冷却筒内表面の面積を大きくし引き上げられた前記半導体単結晶からの輻射熱を効率よく吸収するための、溝及び/又は凹凸を1箇所以上設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記金属製冷却部が、鉄、ニッケル、クロム、銅、チタン、モリブデン及びタングステンのいずれかを主成分とする金属にて構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記金属製冷却部は、鉄、ニッケル、クロム及び銅のいずれかを主成分とする金属からなる基材と、該基材表面を覆うとともに、チタン、モリブデン、タングステン及び白金族金属のいずれかを主成分とするライニング層とを有することを特徴とする請求項4記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記金属製冷却部の内表面の、少なくとも引き上げられた前記半導体単結晶と対向する領域に、前記半導体単結晶に向けた熱反射を抑制する熱反射抑制部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記熱反射抑制部は、前記領域の色調を黒色化させる黒化処理、及び前記半導体結晶からの輻射熱を乱反射させるために前記領域表面を粗化する表面粗化処理の少なくともいずれかを施して形成されたものであることを特徴とする請求項6記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記原料融液面の直上に位置する前記黒鉛製冷却部の下端に、該原料融液面からの輻射熱を反射して結晶成長界面とその近傍の原料融液を保温するために熱遮蔽リングを設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体単結晶の製造装置。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載の半導体単結晶の製造装置を用い、前記ルツボに収容した原料融液から、チョクラルスキー法により半導体単結晶を引き上げて製造することを特徴とする半導体単結晶の製造方法。
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