以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の実施の形態における燃料電池スタックの構成を示す図、図3は本発明の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの構成を示す図、図4は本発明の実施の形態における燃料電池のセパレータの構成を示す第1の図、図5は本発明の実施の形態における燃料電池のセパレータの構成を示す第2の図、図6は本発明の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの構成を示す第1の拡大断面図、図7は本発明の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの構成を示す第2の拡大断面図、図8は本発明の実施の形態における燃料電池の単位セルの構成を示す拡大斜視図、図9は本発明の実施の形態における燃料電池の単位セルの構成を示す模式断面図である。
図2において、20は燃料電池(FC)としての燃料電池スタックであり、乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両用の動力源として使用される。ここで、前記車両は、照明装置、ラジオ、パワーウインドウ等の車両の停車中にも使用される電気を消費する補機類を多数備えており、また、走行パターンが多様であり動力源に要求される出力範囲が極めて広いので、動力源としての燃料電池スタック20と図示されない蓄電手段としての二次電池とを併用して使用することが望ましい。
そして、燃料電池スタック20は、アルカリ水溶液型(AFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)、直接型メタノール(DMFC)等のものであってもよいが、固体高分子型燃料電池(PEMFC)であることが望ましい。
なお、更に望ましくは、水素ガスを燃料とし、酸素又は空気を酸化剤とするPEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)型燃料電池、又は、PEM(Proton Exchange Membrane)型燃料電池と呼ばれるものである。ここで、該PEM型燃料電池は、一般的に、プロトン等のイオンを透過する電解質層としての固体高分子電解質膜の両側に触媒、電極及びセパレータを結合した燃料電池としてのセル(Fuel Cell)を複数及び直列に結合したスタック(Stack)から成る。
本実施の形態において、燃料電池スタック20は、図2に示されるように、複数のセルモジュール10を有する。なお、図2における矢印は、燃料ガスとしての水素ガスの流れを示している。そして、図3に示されるように、セルモジュール10は、燃料電池としての単位セル(MEA:Membrane Electrode Assembly)10Aと、該単位セル10A同士を電気的に接続するとともに、単位セル10Aに導入される水素ガスの流路と空気の流路とを分離するセパレータ10Bと、単位セル10A及びセパレータ10Bを支持する2種類のフレーム17及びフレーム18とを1セットとして、板厚方向に複数セット(図3に示される例では10セット)重ねて構成されている。なお、単位セル10Aは、フレーム18の内側に位置するため、図3には明確に表されていない。セルモジュール10は、単位セル10A同士が所定の間隙(げき)を隔てて配置されるように、単位セル10Aとセパレータ10Bとが、2種類のフレーム17及びフレーム18を交互にスペーサとして多段に重ねられて積層されている。そして、セルモジュール10の積層方向の一端(図3における上側端)は、図4に示されるように、セパレータ10Bの縦方向凸条形成面と一方のフレーム17の端面とで終端し、セルモジュール10の他端(図3における下側端)は、図5に示されるように、セパレータ10Bの横方向凸条形成面と他方のフレーム18の端面とで終端している。
図6及び7に拡大して断面構造を示すように、単位セル10Aは、電解質層としての固体高分子電解質膜11と、該固体高分子電解質膜11の一側に設けられた酸素極としての空気極12及び他側に設けられた燃料極13とで構成されている。なお、図6は、図4におけるB−B断面の一部を拡大した図であり、図7は、図4におけるA−A断面の一部を拡大した図である。前記空気極12及び燃料極13は、反応ガスを拡散しながら透過する導電性材料から成る拡散層と、該拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜11と接触させて支持される触媒物質を含む触媒層とから成る。これらの部材のうち、空気極12及び燃料極13は、それらの支持部材としてのフレーム18の開口部の幅より若干長い横方向寸法と、開口部の高さより若干短い縦方向寸法とを有するものとされている。また、固体高分子電解質膜11は、開口部の縦横方向寸法より一回り大きな縦横寸法とされている。
そして、セパレータ10Bは、単位セル10A間のガス遮断部材としてのセパレータ基板16と、該セパレータ基板16の一側に設けられ、単位セル10Aの空気極12側の電極拡散層に接触して集電するとともに空気と水との混合流を透過する多数の開口が形成された網状の集電体としての空気極側コレクタ14と、セパレータ基板16の他側に設けられ、単位セル10Aの燃料極13側の電極拡散層に接触して同じく電流を外部に導出するための網状の導電体としての燃料極側コレクタ15とで構成されている。そして、これらを単位セル10Aも含めて所定の位置関係に保持すべく、空気極側コレクタ14の左右両側に配置されたフレーム17(最外側のもののみが上下端を相互にバックアッププレート17a及びバックアッププレート17bで連結されて枠状(図4参照)をなす。)と、燃料極側コレクタ15及び単位セル10Aの周縁部に配置されたフレーム18とが設けられている。空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、本実施の形態においては、金属薄板、例えば、板厚が0.2〔mm〕程度のもので構成されている。また、セパレータ基板16は、板厚が更に薄い金属薄板で構成される。この構成金属としては、導電性と耐蝕(しょく)性を備えた金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金等に金メッキ等の耐蝕導電処理を施したものが挙げられる。また、フレーム17及びフレーム18は、適宜の絶縁材料で構成される。
また、空気極側コレクタ14は、図4に示されるように、全体形状を横長の矩(く)形(ただし、底辺だけが水切り効果の向上のために傾斜辺とされている。)とされ、図8に一部を拡大して詳細を示すように、開口率25〔%〕以上の網目状の開口143を有する(板面形状の参照を容易にすべく、一部のみに網目形状を表記)メタル板材から成り、プレス加工によって形成された細かい凸条141を有する波板とされている。前記凸条141は、板材の縦辺(図8に示される例における短辺)に平行に等間隔で、板面を完全に縦断する配置とされている。前記凸条141の断面形状は、大まかには矩形波状断面とされ、プレス加工の型抜きの関係から、根元側が若干裾(すそ)広がりの形状とされている。前記凸条141の高さは、フレーム17の厚さに実質上等しい高さとされ、それにより、積層状態で両側のフレーム17間を縦方向に貫通する所定の開口面積の空気流路を確保している。各凸条141の頂部142の平面は、空気極12側拡散層が接触する当接部となっており、凸条141間の谷部144は、セパレータ基板16との当接部とされている。
なお、空気極側コレクタ14には、親水性処理が施されている。処理方法としては、親水処理剤を、表面に塗布する方法が採られる。塗布される処理剤としては、ポリアクリルアミド、ポリウレタン系樹脂、酸化チタン(TiO2 )等が挙げられる。その他の親水性処理としては、金属表面の粗さを粗化する処理が挙げられる。例えば、プラズマ処理などがその例である。親水性処理は、最も温度が高くなる部位に施すことが好ましく、例えば、単位セル10Aに接触している凸部141の頂部142、特に空気流路側に施される。このように、親水性処理を施すことによって、空気極側コレクタ14と空気極12側拡散層との当接面の濡(ぬ)れが促進され、水の潜熱冷却による効果が向上する。また、これにより、網目の開口部に水が詰まり難くなるため、水が空気の供給を阻害する可能性も一層低くなる。
また、燃料極側コレクタ15は、空気極側コレクタ14と同様の寸法で網目状の開口153を有する(板面形状の参照を容易にすべく、一部のみに網目形状を表記)メタルの矩形の板材から成り、プレス加工によって、複数の凸条151が押し出し形成されている。前記凸条151は、頂部152が平坦(たん)で、断面形状も、先の凸条141の場合と同様に実質上矩形波状とされているが、この燃料極側コレクタ15の場合の凸条151は、横方向に板面を完全に横断して延びるものとして縦方向に一定のピッチで設けられている。これら凸条151の頂部152の平面は、燃料極13が接触する当接部となっており、凸条151間の谷部154がセパレータ基板16との当接部とされている。これら凸条151の断面形状も、大まかには矩形波状断面とされ、プレス加工の型抜きの関係から、根元側が若干裾広がりの形状とされている。これら凸条151の高さは、単位セル10Aの厚さと合わせてフレーム18の厚さに実質上相当する高さとされ、それにより、積層状態でフレーム18の内側を横方向に貫通する所定の開口面積の燃料ガス流路を確保している。
そして、前記空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、それぞれの凸条141及び凸条151がともに外側となるように、セパレータ基板16を間に挟んで配置される。このとき、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15のそれぞれの谷部144及び谷部154は、セパレータ基板16と当接した状態となり、相互に通電可能な状態となる。また、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15をセパレータ基板16と重ね合わせることによって、セパレータ基板16の一方側に空気流路が構成され、他方側に燃料ガス流路が構成されることになる。そして、この縦方向の空気流路から、単位セル10Aの空気極12に空気と水とが供給され、同様に、横方向の燃料ガス流路から単位セル10Aの燃料極13に水素が供給される。
また、前記セパレータ10Bの外側には、フレーム17及びフレーム18がそれぞれ配置される。図6及び7に示されるように、空気極側コレクタ14を囲むフレーム17は、外端(図6において最上部、図7において左端)のものを除き、空気極側コレクタ14の短辺に沿う両側を囲う縦枠部171のみを備えるものとされ、該縦枠部171を板厚方向に貫通する長孔(あな)172が燃料ガス流路形成のために設けられている。フレーム17の板厚は、波板状とされた空気極側コレクタ14の厚みに匹敵する厚さとされている。したがって、フレーム17が空気極側コレクタ14に組み合わされた状態では、該空気極側コレクタ14の凸条141は、単位セル10Aの空気極12に接触し、谷部144はセパレータ基板16を介して燃料極側コレクタ15に接触する位置関係となる。なお、セパレータ基板16は、フレーム17の高さと全体幅に相当する外形寸法とされ、フレーム17の前記長孔172と重なる位置に同様の長孔162を備える構成とされている。これにより、フレーム17の両縦枠部171の間には、単位セル10Aの空気極12面とセパレータ基板16とで囲われた縦方向に全通する空気流路が画定される。
燃料極側コレクタ15と単位セル10Aとを囲むフレーム18は、フレーム17と同じ大きさに構成されているが、該フレーム17とは異なり、左右縦枠部(図6では記載範囲より更に右外側に位置するため示されていないが、フレーム17の両縦枠部171の左右両側端と同じ位置に両側端を有する横方向幅が上下横枠部の略同じ枠部)と上下横棒部182を備える完金な棒状とされている。そして、フレーム18は、外端(図3において最下部、図5に示す面)のものを除き、左右縦棒部と平行に延び、燃料極側コレクタ15の左右端に重なる薄板状のバックアッププレート18aと厚板状のバックアッププレート18bを備えるものとされ、前記バックアッププレート18aと縦棒部とで囲われる空間が前記フレーム17を板厚方向に貫通する長孔172と整列する燃料ガス流路形成のための空間を構成している。フレーム18の板厚は、前述のように波板状とされた燃料極側コレクタ15の厚みと単位セル10Aの厚みとにほぼ匹敵する厚さとされている。したがって、フレーム18が燃料極側コレクタ15に組み合わされた状態では、該燃料極側コレクタ15の凸条151は、単位セル10Aの燃料極13に接触し、谷部154はセパレータ基板16を介して空気極側コレクタ14に接触する位置関係となる。これにより、フレーム18の両縦棒部とバックアッププレート18aとの間には、フレーム17の縦枠部171の長孔172と整列するフレーム積層方向の燃料ガス流路が形成され、かつ、個々のフレーム18の内部において、燃料極側コレクタ15の波形によってセパレータ基板16とバックアッププレート18aとに挟まれる横方向流路としての燃料ガス流路が画定される。
このように構成されたフレーム17及びフレーム18によって、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15並びにセパレータ基板16を保持してセパレータ10Bが構成される。そして、セパレータ10Bと単位セル10Aとを交互に積層して、セルモジュール10が構成される。このように積層された該セルモジュール10には、図3に示されるように、フレーム18で挟まれる間の部分に、セルモジュール10の上面から縦方向に該セルモジュール10の下面まで全通するスリット状の空気流路が形成される。
そして、単位セル10Aにおいては、図9に示されるように、水が移動する。図9において、48は燃料ガス流路としての燃料室であり、49は空気流路としての酸素室である。この場合、燃料極側コレクタ15の燃料室48内に燃料ガスとして水素ガスを供給すると、水素が水素イオン(プロトン)と電子とに分解され、水素イオンがプロトン同伴水を伴って、固体高分子電解質膜11を透過する。また、前記空気極12をカソード極とし、酸素室49内に酸化剤としての空気を供給すると、空気中の酸素と、前記水素イオン及び電子が結合して、水が生成される。なお、水分が逆拡散水として固体高分子電解質膜11を透過し、燃料極側コレクタ15の燃料室48内に移動する。ここで、逆拡散水とは、酸素室49において生成される水が固体高分子電解質膜11内に拡散し、該固体高分子電解質膜11内を前記水素イオンと逆方向に透過して燃料室48にまで浸透したものである。
次に、燃料電池システムの全体構成について説明する。
図1は本発明の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図である。
図1において、燃料電池スタック20に燃料ガスとしての水素ガス及び酸化剤としての空気を供給する装置が示される。なお、図示されない改質装置によってメタノール、ガソリン等を改質して取り出した燃料である水素ガスを燃料電池スタック20に直接供給することもできるが、車両の高負荷運転時にも安定して十分な量の水素ガスを供給することができるようにするためには、燃料貯蔵手段73に貯蔵した水素ガスを供給することが望ましい。これにより、水素ガスがほぼ一定の圧力で、常に、十分に供給されるので、前記燃料電池スタック20は車両の負荷の変動に遅れることなく追随して、必要な電流を供給することができる。この場合、前記燃料電池スタック20の出力インピーダンスは極めて低く、0に近似することが可能である。
水素ガスは、水素吸蔵合金を収納した容器、デカリンのような水素吸蔵液体を収納した容器、水素ガスボンベ等の燃料貯蔵手段73から、燃料供給管路としての第1燃料供給管路21、及び、該第1燃料供給管路21に接続された燃料供給管路としての第2燃料供給管路33を通って、燃料電池スタック20の燃料ガス流路の入口に供給される。そして、前記第1燃料供給管路21には、燃料貯蔵手段元開閉弁24、圧力センサ27、第1燃料圧力調整弁25a、第2燃料圧力調整弁25b及び燃料供給電磁弁26が配設される。また、前記第2燃料供給管路33には、安全弁33a及び前記燃料ガス流路内の圧力を検出する圧力センサ78が配設される。なお、前記第1燃料供給管路21には、燃料電池スタック20の起動時に前記第2燃料圧力調整弁25bをバイパスして水素ガスを供給するための起動用バイパス管路22が接続され、該起動用バイパス管路22には起動用燃料供給電磁弁23が配設される。また、前記燃料貯蔵手段73は、十分に大きな容量を有し、常に、十分に高い圧力の水素ガスを供給することができる能力を有するものである。なお、図1に示される例においては、燃料貯蔵手段73が複数、例えば、3つ配設され、また、第1燃料供給管路21は、各燃料貯蔵手段73に接続される部分で複数本に分岐され、途中で合流して1本になっている。しかし、燃料貯蔵手段73は、単数であってもよいし、また、複数であってもよいし、複数の場合にはいくつであってもよい。
そして、燃料電池スタック20の燃料ガス流路の出口から未反応成分として排出される水素ガスは、燃料排出管路31を通って燃料電池スタック20の外部に排出される。前記燃料排出管路31には、回収容器としての水回収ドレインタンク60が配設されている。そして、該水回収ドレインタンク60には水と分離された水素ガスとを排出する燃料排出管路30が接続され、該燃料排出管路30にはポンプとしての吸引循環ポンプ36が配設されている。また、前記燃料排出管路30には水素循環電磁弁34が配設されている。また、前記燃料排出管路30における水回収ドレインタンク60と反対側の端部は、第2燃料供給管路33に接続されている。これにより、燃料電池スタック20の外部に導出された水素ガスを回収し、燃料電池スタック20の燃料ガス流路に供給して再利用することができる。
また、前記水回収ドレインタンク60には、起動用燃料排出管路56が接続され、該起動用燃料排出管路56には水素起動排気電磁弁62が配設され、燃料電池スタック20の起動時に燃料ガス流路から排出される水素ガスを大気中に排出することができるようになっている。なお、起動用燃料排出管路56の出口端は後述される排気マニホールド71に接続されている。さらに、起動用燃料排出管路56は途中から分岐し、分岐部分が吸引循環ポンプ36と水素循環電磁弁34との間において燃料排出管路30に接続されている。また、前記分岐部分には水素起動停止電磁弁56aが配設されている。
なお、起動用燃料排出管路56に、必要に応じて水素燃焼器を配設することもできる。該水素燃焼器によって排出される水素ガスを燃焼させ、水にしてから大気中に排出することができる。
さらに、前記燃料排出管路30における第2燃料供給管路33と水素循環電磁弁34との間には、外気導入管路28が接続されている。そして、該外気導入管路28には、外気導入用電磁弁28a及びエアフィルタ28bが配設され、燃料電池スタック20の運転終了時に外気を燃料ガス流路に導入することができるようになっている。
ここで、前記第1燃料圧力調整弁25a及び第2燃料圧力調整弁25bは、バタフライバルブ、レギュレータバルブ、ダイヤフラム式バルブ、マスフローコントローラ、シーケンスバルブ等のものであるが、前記第1燃料圧力調整弁25a及び第2燃料圧力調整弁25bの出口から流出する水素ガスの圧力をあらかじめ設定した圧力に調整することができるものであれば、いかなる種類のものであってもよい。なお、前記圧力の調整は、手動によってなされてもよいが、電気モータ、パルスモータ、電磁石等から成るアクチュエータによってなされることが望ましい。
また、前記起動用燃料供給電磁弁23、燃料供給電磁弁26、外気導入用電磁弁28a、水素循環電磁弁34、水素起動停止電磁弁56a及び水素起動排気電磁弁62は、いわゆる、オン−オフ式のものであり、電気モータ、パルスモータ、電磁石等から成るアクチュエータによって作動させられる。なお、前記燃料貯蔵手段元開閉弁24は手動又は電磁弁を用いて自動的に作動させられる。さらに、前記吸引循環ポンプ36は、水素ガスとともに逆拡散水を強制的に排出し、燃料ガス流路内を負圧の状態にすることができるポンプであれば、いかなる種類のものであってもよい。なお、前記エアフィルタ28bは、空気に含まれる塵埃(じんあい)、不純物、有害ガス等を除去する。
一方、酸化剤としての空気は、空気供給ファン、空気ボンベ、空気タンク等の酸化剤供給源75から、酸化剤供給管路77及び吸気マニホールド74を通って、燃料電池スタック20の空気流路に供給される。なお、酸化剤として、空気に代えて酸素を使用することもできる。そして、空気流路から排出される空気は、排気マニホールド71及び凝縮器72を通って大気中へ排出される。
また、前記酸化剤供給管路77には、水をスプレーして、燃料電池スタック20の空気極(カソード極)12を湿潤な状態に維持するための水供給ノズル76が配設される。また、スプレーされた水によって前記空気極12及び燃料極13を冷却することができる。さらに、前記排気マニホールド71の端部に配設された凝縮器72は、前記燃料電池スタック20から排出される空気に含まれる水分を凝縮して除去するためのもので、前記凝縮器72によって凝縮された水は凝縮水排出管路79を通って水タンク52に回収される。なお、前記凝縮水排出管路79には排水ポンプ51が配設され、前記水タンク52にはレベルゲージ(水位計)52aが配設されている。
そして、前記水タンク52内の水は、給水管路53を通って水供給ノズル76に供給される。なお、前記給水管路53には、給水ポンプ54及び水フィルタ55が配設されている。ここで、前記排水ポンプ51及び給水ポンプ54は、水を吸引して吐出することができるポンプであれば、いかなる種類のものであってもよい。また、前記水フィルタ55は、水に含まれる塵埃、不純物等を除去するものであれば、いかなる種類のものであってもよい。
また、前記蓄電手段としての二次電池は、いわゆる、バッテリ(蓄電池)であり、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が一般的である。なお、前記蓄電手段は、必ずしもバッテリでなくてもよく、電気二重層キャパシタのようなキャパシタ(コンデンサ)、フライホイール、超伝導コイル、蓄圧器等のように、エネルギを電気的に蓄積し放出する機能を有するものであれば、いかなる形態のものであってもよい。さらに、これらの中のいずれかを単独で使用してもよいし、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
また、前記燃料電池スタック20は図示されない負荷に接続され、発生した電流を前記負荷に供給する。ここで、該負荷は、一般的には、駆動制御装置であるインバータ装置であり、前記燃料電池スタック20又は蓄電手段からの直流電流を交流電流に変換して、車両の車輪を回転させる駆動モータに供給する。ここで、該駆動モータは発電機としても機能するものであり、車両の減速運転時には、いわゆる、回生電流を発生する。この場合、前記駆動モータは車輪によって回転させられて発電するので、前記車輪にブレーキをかける、すなわち、車両の制動装置(ブレーキ)として機能する。そして、前記回生電流が蓄電手段に供給されて該蓄電手段が充電される。
なお、本実施の形態において、燃料電池システムは図示されない制御手段を有する。該制御手段は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、各種のセンサから燃料電池スタック20の燃料ガス流路及び空気流路に供給される水素、酸素、空気等の流量、温度、出力電圧等を検出して、前記酸化剤供給源75、第1燃料圧力調整弁25a、第2燃料圧力調整弁25b、起動用燃料供給電磁弁23、燃料供給電磁弁26、外気導入用電磁弁28a、水素循環電磁弁34、吸引循環ポンプ36、排水ポンプ51、給水ポンプ54、水素起動停止電磁弁56a、水素起動排気電磁弁62等の動作を制御する。さらに、前記制御手段は、他のセンサ及び他の制御装置と連携して、燃料電池スタック20に燃料及び酸化剤を供給するすべての装置の動作を統括的に制御する。
次に、前記水回収ドレインタンク60の構成について詳細に説明する。
図10は本発明の実施の形態における水回収ドレインタンクの構成を示す図である。
本実施の形態において、水回収ドレインタンク60は、図10に示されるような構成を有している。ドレインタンク容器64は有底筒状の形状を有し、開放している上部は容器カバー66によって気密に塞(ふさ)がれている。なお、該容器カバー66はドレインタンク容器64に対してボルト等の固着部材66aによって固着され、また、容器カバー66の下面とドレインタンク容器64の上端面との間には、O−リング等のシール部材が配設され、気密性を維持している。そして、燃料排出管路31及び燃料排出管路30は、ドレインタンク容器64上部の側壁に、互いに離れた位置で接続されている。
また、前記ドレインタンク容器64の容量は、燃料電池スタック20の燃料ガス流路から排出される水素ガスから回収される水分の量よりも十分に大きくなるように設定されている。すなわち、前記燃料電池スタック20を搭載した車両が、一度燃料である水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填(てん)してから走行を行って、次回に水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填するまでの間に燃料ガス流路から排出される水素ガスから回収される逆拡散水量よりも、前記ドレインタンク容器64の容量は大きくなるように設定されている。
ところで、本実施の形態における燃料電池システムでは、特許文献1に示されるような従来の燃料電池のように、アノード極側に水を供給するようにはなっていない。すなわち、燃料電池スタック20は、燃料ガス流路に水を供給する機構を備えておらず、また、前記燃料ガス流路内に燃料として供給される水素ガスも加湿されていない。本実施の形態における燃料電池システムでは、逆拡散水によって燃料極13を加湿するようになっている。このように、燃料ガス流路に水を供給する機構を備えていないので、燃料電池スタック20の構成は簡素であり、かつ、小型になっている。また、水素ガスに水分を加えて加湿する必要もないので、第1燃料供給管路21や第2燃料供給管路33に水を導入するための配管や制御弁を配設する必要がなく、構成が簡素であり、燃料電池システムのコストを抑制することができる。
そして、燃料電池スタック20の燃料ガス流路内においては、余剰となった前記逆拡散水が余剰となった水素ガスと混合して、気液混合物となる。該気液混合物は、吸引循環ポンプ36によって吸引され、燃料排出管路31を通って燃料電池スタック20の外部に導出される。そして、前記気液混合物は、水回収ドレインタンク60の上部からドレインタンク容器64内に導入される。そして、前記気液混合物は、ドレインタンク容器64内において水素ガスと水分としての逆拡散水とに分離し、すなわち、気液分離した水素ガスは燃料排出管路30からドレインタンク容器64外に排出される。また、分離された逆拡散水はドレインタンク容器64内の下部に貯留水65として貯留する。なお、ドレインタンク容器64の下部には、水素起動排気電磁弁62が配設された水排出管路としての起動用燃料排出管路56が接続されている。本実施の形態においては、逆拡散水によって燃料極13を加湿するようになっていて、燃料ガス流路に水を供給する機構を備えていないので、燃料ガス流路から排出される水素ガスに含まれる水分の量が少なくなる。そのため、前記水素ガスから回収される水分の量が少なくなり、ドレインタンク容器64の容量を小さくすることができる。
次に、前記ドレインタンク容器64の容量を決定する方法について説明する。
図11は本発明の実施の形態における水回収ドレインタンクの水回収量の変化を示す図、図12は本発明の実施の形態における固体高分子電解質膜が湿潤した場合の水回収ドレインタンクの水回収量の変化を示す図、図13は本発明の実施の形態における消費水素量に対する逆拡散水の量の変化を示す図である。
まず、実験によって、燃料電池スタック20から回収される逆拡散水の量の時間的変化を計測したところ、図11に示される結果を得ることができた。なお、図11においては、縦軸に逆拡散水の回収量〔ml〕を採り、横軸に時間〔分〕を採ってある。ここで、横軸は燃料電池システムの運転を開始した時からの時間を示し、時間0分は燃料電池システムの運転を開始した時である。
ここで、逆拡散水の回収量は、燃料電池スタック20の総電極面積、燃料電池スタック20の電流密度、固体高分子電解質膜11の膜厚、燃料極13及び空気極12を構成するガス拡散電極の水分の透過しやすさ、燃料ガス流路内の湿度、空気流路内の湿度、燃料ガス流路内の圧力、空気流路内の圧力、燃料ガス流路内の温度、空気流路内の温度等の関数として表すことができる。なお、実験に使用した燃料電池スタック20の総電極面積は22500〔cm2 〕である。
そこで、図11においては、燃料電池スタック20の電流密度毎に、逆拡散水の量の時間的変化を計測した結果が示されている。なお、前記電流密度は、燃料電池スタック20の出力する電流値を燃料電池スタック20の総電極面積で除した値であって、〔A/cm2 〕で表される。図11において、曲線81は電流密度が0.1〔A/cm2 〕の場合における逆拡散水の回収量の時間的変化、曲線82は電流密度が0.2〔A/cm2 〕の場合における逆拡散水の回収量の時間的変化、曲線83は電流密度が0.3〔A/cm2 〕の場合における逆拡散水の回収量の時間的変化、曲線84は電流密度が0.4〔A/cm2 〕の場合における逆拡散水の回収量の時間的変化、曲線85は電流密度が0.5〔A/cm2 〕の場合における逆拡散水の回収量の時間的変化を示している。このことから、電流密度が増加するほど逆拡散水の量が増加することが分かる。
また、燃料電池システムの運転を開始した直後の時間帯においては、逆拡散水の量がほとんど増加していないことが分かる。これは、燃料電池システムの運転を開始した直後の時間帯においては、固体高分子電解質膜11が乾燥しているので、逆拡散水が燃料ガス流路にまで浸透しないためであると考えることができる。そして、燃料電池システムの運転を開始してから、しばらく時間が経過すると、固体高分子電解質膜11が逆拡散水によって湿潤した状態となる。すると、逆拡散水が燃料ガス流路にまで浸透し、余剰となった逆拡散水が燃料ガス流路に供給されて余剰となった水素ガスと混合して、気液混合物となって燃料電池スタック20の外部に導出され、ドレインタンク容器64内に貯留水65として回収される。したがって、逆拡散水の回収量は、ドレインタンク容器64内の貯留水65の量を計測することによって計測される。
そして、図11に示される結果に基づいて、固体高分子電解質膜11が湿潤した後の逆拡散水の回収量と電流密度との関係を得ることができる。ここでは、図12に示される結果を得ることができた。なお、図12においては、縦軸に逆拡散水の回収量〔ml〕を採り、横軸に電流密度〔A/cm2 〕を採ってある。
図12において、折れ線88は、図11に示される結果に基づいて求めた固体高分子電解質膜11が湿潤した後の逆拡散水の回収量と電流密度との関係を示す点を結ぶ線であり、直線89は前記折れ線88の近似直線である。前記直線89は、次の式(1)によって表すことができる。
Q1=aI ・・・式(1)
ここで、Q1は単位時間当たりの逆拡散水の回収量としての単位時間当回収量〔ml〕、Iは電流密度の平均値〔A/cm2 〕である。また、aは、前記直線89を描くための定数であり、例えば、a=0.19775という値とすることによって、前記直線89を描くことができた。なお、前記折れ線88を近似すると、多項式で表される曲線となるが、2次以上の高次の項が無視し得るほど小さい値なので省略し、前記式(1)で表される直線89とした。
また、図13には、消費された水素の量と逆拡散水の回収量、すなわち、発生した逆拡散水の量との関係を計測した結果が示されている。なお、図13においては、縦軸に発生した逆拡散水の量〔ml〕を採り、横軸に消費された水素の量〔l〕を採ってある。
図13において、折れ線86は、計測された消費された水素の量と発生した逆拡散水の量との関係を示し、直線87は前記折れ線86の近似直線である。また、縦軸に平行な直線91は、車両に搭載された燃料貯蔵手段73に充填されている水素ガスの量、すなわち、搭載水素消費量を示している。図13は、搭載水素消費量が2000〔l〕である例を示している。そして、直線87と直線91との交点を通過する横軸に平行な直線92は、燃料電池スタック20が車両に搭載された燃料貯蔵手段73に充填されている水素ガスをすべて消費した場合に発生される逆拡散水の量、すなわち、予想逆拡散水量を示している。
ここで、該予想逆拡散水量は、一度燃料である水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填してから走行を行って、次回に水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填するまでの間に燃料ガス流路から排出される水素ガスから回収される水分の量の最大値である。そのため、ドレインタンク容器64の容量を予想逆拡散水量より大きくなるように設定すれば、燃料電池スタック20を搭載した車両が、一度燃料である水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填してから走行を行って、次回に水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填するまでの間に水回収ドレインタンク60から水分を排出する必要がない。
次に、前記構成の燃料電池システムの動作について説明する。
図14は本発明の実施の形態における燃料電池システムの動作を説明する第1の図、図15は本発明の実施の形態における燃料電池システムの動作を説明する第2の図、図16は本発明の実施の形態における燃料電池システムの動作を説明する第3の図である。なお、図14〜16では、燃料電池システムにおいて動作の説明と関係する部分の構成のみが模式的に示されている。
まず、定常運転における動作について説明する。本実施の形態の燃料電池システムにおける定常運転時には、第1燃料圧力調整弁25a及び第2燃料圧力調整弁25bの出口から流出する水素ガスの圧力をあらかじめ設定した一定の圧力に調整した後、前記第1燃料圧力調整弁25a及び第2燃料圧力調整弁25bは燃料電池システムの運転中には調整されることがなく、そのままの状態が保持される。また、酸化剤供給源75は常に一定量の空気を燃料電池スタック20の空気流路に供給するように作動する。この場合、供給される空気の量は、燃料電池スタック20の出力が最大となるために必要な空気の量よりも十分に多い量である。
そして、燃料電池スタック20が運転を開始すると、該燃料電池スタック20を構成する各単位セル10Aにおいて逆拡散水が発生し、該逆拡散水が固体高分子電解質膜11を透過して燃料ガス流路にまで浸透して、前記固体高分子電解質膜11の燃料極13側を加湿する。これにより、該固体高分子電解質膜11の燃料極13側は湿潤な状態となり、電気化学反応によって水素から生成された水素イオンが固体高分子電解質膜11内をスムーズに移動することができる。
また、前記燃料ガス流路に供給されて余剰となった未反応成分としての水素ガスは、前記燃料ガス流路にまで浸透して余剰となった逆拡散水と混合して、気液混合物となる。該気液混合物となった水素ガスは、吸引循環ポンプ36によって吸引され、燃料電池スタック20に接続された燃料排出管路31を通って前記燃料電池スタック20の外部に導出される。そして、前記気液混合物は、燃料排出管路31を通過して水回収ドレインタンク60内に導入される。そして、比較的広い空間を備える前記水回収ドレインタンク60内に滞留することによって、重量物である水分が重力によって下方に落下し、水素ガスから逆拡散水が分離する。該逆拡散水が分離して乾燥した状態の水素ガスは、燃料排出管路30から水回収ドレインタンク60外に排出される。
そして、定常運転においては、図14に示されるように、前記燃料排出管路30から排出された水素ガスは、開いた状態になっている水素循環電磁弁34を通過して、第2燃料供給管路33に導入され、再び、燃料電池スタック20の燃料ガス流路に供給されて再利用される。なお、水素起動停止電磁弁56aが閉じた状態となっているので、吸引循環ポンプ36から排出された水素ガスは、起動用燃料排出管路56を通って大気中に排出されることなく、第2燃料供給管路33に導入される。また、外気導入用電磁弁28aも閉じた状態となっているので、大気が第2燃料供給管路33に導入されることもない。
ここで、前記燃料排出管路30は、ドレインタンク容器64上部の側壁に接続されているので、逆拡散水が分離して軽量となった乾燥した状態の水素ガスだけが、燃料排出管路30から排出され、水分が排出されることがない。また、燃料排出管路31と燃料排出管路30とは、互いに離れた位置でドレインタンク容器64上部の側壁に接続されているので、燃料排出管路31からドレインタンク容器64内に導入された気液混合物が、そのまま燃料排出管路30から流出してしまうこともない。これにより、燃料ガス流路に浸透して余剰となった逆拡散水を適切にトラップすることができ、余剰となった水素ガスを乾燥した状態で回収して、再利用することができる。
一方、前記気液混合物から分離して落下した逆拡散水は、ドレインタンク容器64内の下部に貯留水65として貯留する。そして、前記ドレインタンク容器64の容量は、予想逆拡散水量より大きくなるように設定されているので、燃料電池スタック20を搭載した車両が、一度燃料である水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填してから走行を行って、次回に水素ガスを燃料貯蔵手段73に充填するまでの間に、水回収ドレインタンク60から水分を排出する必要がない。
次に、燃料電池システムの運転を停止する際の動作について説明する。この場合、制御手段は、まず、図15に示されるように、燃料供給電磁弁26及び水素循環電磁弁34を閉じて、燃料ガス流路への水素ガスの供給を遮断する。そして、水素起動停止電磁弁56aを開いて、燃料ガス流路内の水素ガスを起動用燃料排出管路56から大気中に排出させる。これにより、水回収ドレインタンク60内に貯留された貯留水65も排出される。
この場合、吸引循環ポンプ36が作動しているので、燃料電池スタック20、ドレインタンク容器64、第2燃料供給管路33、燃料排出管路30及び燃料排出管路31に残留している水素ガスは、吸引循環ポンプ36によって吸引され、起動用燃料排出管路56から大気中に排出される。そして、燃料ガス流路の内部が負圧となるので、燃料ガス流路内から水素ガスが確実に速やかに除去されて排出される。なお、起動用燃料排出管路56に水素燃焼器が配設されている場合、大気中に排出される水素ガスは、燃焼させられ、酸素と結合して水になって排出される。
また、前記燃料ガス流路内の水素ガスの圧力は、圧力センサ78によって検出される。この場合、水素ガスの流れる経路において燃料供給電磁弁26から吸引循環ポンプ36までの範囲では水素ガスの圧力は同一であると考えることができるので、圧力センサ78が前記範囲内に配設されていれば、該圧力センサ78の検出する圧力は、燃料電池スタック20の燃料ガス流路の圧力に等しい。
続いて、この状態で該燃料ガス流路内の水素ガスの圧力が所定圧力、例えば、0.01〔MPa abs〕以下となるか、前記圧力が所定圧力となるまでの時間である所定時間、例えば、40秒が経過する。この場合、前記所定圧力は、相当の負圧であるので、前記燃料ガス流路内の燃料通路に水素ガスが実質的に残留していない状態である。
なお、前記所定時間は、燃料ガス流路内の水素ガスの圧力が前記所定圧力となるまでの時間である。そして、前記所定時間及び所定電圧は、あらかじめ、実験によって求められる。
そして、燃料ガス流路内の水素ガスの圧力が前記所定圧力以下となるか、又は、前記所定時間が経過すると、図16に示されるように、前記制御手段は外気導入用電磁弁28aを開き、空気を燃料ガス流路内へ導入する。この場合、燃料供給電磁弁26は閉じた状態であるので、導入された空気が燃料貯蔵手段73の方へ流入することはない。これにより、燃料電池スタック20の燃料ガス流路内には空気が充満する。なお、前記空気はエアフィルタ28bを通過して濾(ろ)過された空気なので、大気中に存在する塵埃、不純物、有害ガス等を含んでいない。したがって、前記燃料ガス流路における触媒等の部材が前記塵埃、不純物、有害ガス等によって汚染されたり変質させられることがない。
本実施の形態においては、燃料電池スタック20にドレインタンク容器64が接続されているので、燃料電池スタック20に空気が導入されると、該燃料電池スタック20の燃料ガス流路内に残留していた水素ガスは、急速にドレインタンク容器64内に追いやられる。そのため、燃料電池スタック20に空気が導入される時点において、燃料電池スタック20の燃料ガス流路内が真空になっていなくても、該燃料ガス流路内において残留している水素ガスが導入された空気中の酸素と混合状態になることがない。したがって、単位セル10A内において電位シフトが発生することがないので、触媒粒子が溶出したり、燃料電池スタック20の性能が低下したりすることがない。
続いて、この状態で燃料電池スタック20の出力が所定電圧、例えば、5〔V〕以下となるか、又は、前記出力が所定電圧となるまでの時間である所定時間、例えば、10秒が経過するまで待機する。ここで、前記所定電圧は、燃料ガス流路に水素ガスが残留しておらず、空気が充満しており、燃料極13と空気極12との間に実質的に電位差が生じていない状態に対応する出力電圧である。
そして、燃料電池スタック20の出力が前記所定電圧以下となるか、又は、前記所定時間が経過すると、前記制御手段は吸引循環ポンプ36を停止させ、外気導入用電磁弁28aを閉じ、最後に酸化剤供給源75を停止させる。これにより、燃料電池スタック20の出力が停止された状態となる。
このように、本実施の形態においては、燃料ガス流路内で余剰となった逆拡散水と水素ガスとの気液混合物が、吸引循環ポンプ36によって吸引され燃料電池スタック20の外部に排出されるようになっている。そのため、燃料ガス流路内における水素ガスの流通が余剰となった逆拡散水によって妨げられる水詰まりを防止することができ、燃料極13の表面に燃料としての水素ガスを安定的に供給することができる。
また、余剰となった逆拡散水を水回収ドレインタンク60によって水素ガスから分離し、水タンク52に回収するので、有効に再利用することができる。これにより、燃料電池スタック20の空気極12を加湿するためにスプレーする水の不足を補うことができ、水タンク52を小型軽量化することができる。
さらに、余剰となった水素ガスと混合していた逆拡散水を水回収ドレインタンク60によって分離するので、余剰となった水素ガスを回収して再利用することができる。これにより、燃料電池スタック20の燃料消費量を抑制することができる。
さらに、水回収ドレインタンク60のドレインタンク容器64の容量が車両の燃料搭載量に基づいて推測される逆拡散水の発生量よりも大きく設定されている。そのため、ドレインタンク容器64内に貯留される貯留水65の水位を検出したり制御したりする必要がないので、水回収ドレインタンク60の構成を簡素化することができ、コストを低くすることができる。しかも、車両の通常運転時における水回収ドレインタンク60からの水素の大気中への排出を不要とすることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。