以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1および図2において、11は循環式硬貨入出金機の機体で、この機体11の顧客が操作する前面(操作面)11aの上部域に入金口と出金口とを兼ねて入出金口シャッタ12で開閉される入出金口13が形成され、この入出金口13の内側に硬貨を受け入れる硬貨受部14が配設されている。この硬貨受部14には、上面を開口した受皿15が配置され、この受皿15に硬貨を受け入れるとともに受皿15の回動によって受け入れた硬貨を下方のシュート16に放出可能としている。硬貨受部14には、受皿15内の硬貨の有無を検知する図示しないセンサが配設されている。
機体11の前側下部にはシュート16を通じて硬貨受部14から放出される硬貨を受け入れる貯留繰出部18が配設されている。この貯留繰出部18は、鉛直方向に対して上側が機体11の左側面方向(図2の右側)へ所定角度傾いて軸支された傾斜円盤19、およびこの傾斜円盤19の表面側に配設されたホッパ20を有し、これら傾斜円盤19とホッパ20との間に送り込まれる硬貨を貯留する。
傾斜円盤19の表面周縁近傍には硬貨を掻き上げるための図示しない複数の突起が一定間隔で突設されており、傾斜円盤19の回転によりホッパ20内の硬貨を各突起で1枚ずつ掻き上げながら傾斜円盤19の上部から1枚ずつ繰り出す。
ホッパ20には、傾斜円盤19によってホッパ20内から繰り出されずに残留する異物を排出するために、ホッパ20の底部を開閉する開閉部21が開閉可能に配設されている。この開閉部21の下方には開閉部21の開放によって放出される異物を受け入れる異物用シュート22が配設されている。この異物用シュート22には、ホッパ20から放出される異物を2方向に振り分ける振分部23と各方向に振り分けられた異物をそれぞれ受け入れるシュート部24とシュート部25とが設けられており、一方のシュート部24は機体11の前面下部に開口形成された異物返却口26に異物を送り込み、他方のシュート部25は機体11内に着脱可能に配置された異物回収箱27に異物を送り込む。
また、傾斜円盤19の上部には、貯留繰出部18から1枚ずつ繰り出される硬貨を受け入れて搬送方向に1枚ずつ間隔をあけた分離状態で搬送する硬貨通路29の始端部が接続されている。この硬貨通路29は、貯留繰出部18の上部から機体11の背部方向へ向けて形成される第1の通路部30、この第1の通路部30の末端から上方に円弧状に折り返して機体11の前方へ向けて方向変換して形成される折返し通路部31、この折返し通路部31の上側末端から硬貨受部14の近傍位置まで形成される第2の通路部32を有しており、略U字形の通路形状に形成されている。
第1の通路部30には、貯留繰出部18の上部から機体11の背部側へ向かうに従い上昇傾斜する通路域30a、この通路域30aの末端から機体11の背部側へ向かうに従い通路域30aよりも緩やかな角度で上昇傾斜する通路域30bが形成されている。第2の通路部32には、第1の通路部30の通路域30bの末端側上方に平行に配置されて機体11の前側へ向かうに従い下降傾斜する通路域32aが形成されている。
硬貨通路29は、図3および図4に示すように、傾斜円盤19と同じ傾斜状態であって、硬貨を鉛直方向に対して上側が機体11の左側面方向(図2の右側、図3左側)へ所定角度傾いた傾斜状態で搬送する通路板33を有し、この通路板33の下縁には搬送する硬貨の周縁下部を支持する案内縁34a,34bが形成されている。
硬貨通路29上には、貯留繰出部18から1枚ずつ繰り出される硬貨を搬送方向に1枚ずつ間隔をあけた分離状態で搬送する搬送手段としての搬送ベルト35が配設されている。この搬送ベルト35は、無端状に設けられ、図示しない複数のプーリによって各通路部30〜32に沿って懸架されており、硬貨を通路板33に押し付けながら搬送する。搬送ベルト35には硬貨を搬送方向に1枚ずつ間隔をあけた分離状態で搬送する突起36が通路板33に対向する面に所定間隔毎に突設されている。
図1に示すように、硬貨通路29の第1の通路部30の通路域30aには、搬送する硬貨の適正、不適正、金種などを識別する材質センサやイメージセンサなどにて構成される硬貨識別部38が配設されている。
硬貨通路29の第1の通路部30の通路域30bには、上流側から順に、硬貨入金時のオーバーフロー硬貨を分岐するオーバーフロー硬貨分岐部39、硬貨入金時や硬貨補充時の正規硬貨を金種別に分岐する金種別硬貨分岐部40a〜40f(図には40aおよび40fのみを示す)、硬貨補充時のオーバーフロー硬貨である補充環流硬貨を分岐するとともに精査時(補充環流硬貨収納部94の精査時)に識別後の硬貨を分岐する補充環流硬貨分岐部41が配設されている。
硬貨通路29の第2の通路部32の通路域32aには、上流側から順に、回収硬貨、取忘れ硬貨、運用リジェクト硬貨、補充リジェクト硬貨のうち、第1グループとして回収硬貨および取忘れ硬貨を分岐する第1分岐部42、第2グループとして運用リジェクト硬貨および回収リジェクト硬貨を分岐する第2分岐部43が配設されている。
そして、金種別硬貨分岐部40a〜40fが金種別硬貨分岐部群40として構成され、また、補充環流硬貨分岐部41、第1分岐部42および第2分岐部43が非金種別硬貨分岐部群44として構成されている。
各分岐部39,40a〜40f,42,43は、略共通に構成されており、例えば図4に金種別硬貨分岐部40a〜40fの一部を示すように、通路板33に分岐孔45がそれぞれ開口形成されるとともに、これら分岐孔45を開閉する分岐部材46がそれぞれ配設されている。各分岐部材46は、硬貨通路29の上流側が開閉するように通路板33に回動自在に軸支されているとともに図示しないモータなどの駆動部にて開閉駆動される。各分岐部材46には、開口時に搬送ベルト35との干渉を避ける切欠部47が形成されている。
通路板33の各分岐部39,40a〜40f,42,43の上流側および下流側に、硬貨通路29内を搬送する硬貨を検知する図示しない硬貨検知センサが配設されている。そして、各分岐部39,40a〜40f,42,43の各分岐部材46は、硬貨識別部38での識別結果と硬貨検知センサとの両条件にて開放駆動され、該当硬貨のみを各種類別分岐部39,40a〜40f,42,43から分岐し、該当硬貨以外の硬貨を硬貨通路29の下流側へ通過させる。
また、図1に示すように、オーバーフロー硬貨分岐部39には、このオーバーフロー硬貨分岐部39で分岐されたオーバーフロー硬貨を受け入れて下方へ案内するオーバーフロー硬貨用シュート49が接続されている。図3および図4に示すように、各金種別硬貨分岐部40a〜40fには、各金種別硬貨分岐部40a〜40fで分岐された硬貨を受け入れて下方へ案内する金種別シュート50a〜50f(図には50aおよび50fのみを示す)が接続されている。
図1、図2および図5に示すように、補充環流硬貨分岐部41には、この補充環流硬貨分岐部41で分岐された補充環流硬貨を受け入れて下方へ案内する補充環流硬貨用シュート51が接続されている。第1分岐部42および第2分岐部43には、第1分岐部42および第2分岐部43で分岐された硬貨を受け入れて下方へ案内する第1の振分シュート52および第2の振分シュート53が接続されている。
第1の振分シュート52は、第1分岐部42で分岐された硬貨を2方向に振り分ける振分部54、この振分部54の下流の2個のシュート部として回収硬貨用シュート55および取忘れ硬貨用シュート56を有している。
第2の振分シュート53は、第2分岐部43で分岐された硬貨を2方向に振り分ける振分部57、この振分部57の下流の2個のシュート部として運用リジェクト硬貨用シュート58および補充リジェクト硬貨用シュート59を有している。
また、図1ないし図3に示すように、機体11内には、金種別硬貨分岐部40a〜40fの金種別シュート50a〜50fの下方に金種別硬貨一時保留部61a〜61f(図には61aおよび61fのみを示す)が配設され、この金種別硬貨一時保留部61a〜61fの下方に金種別硬貨収納投出部62a〜62f(図には62aおよび62fのみを示す)で構成される金種別硬貨収納投出部群62が配設され、この金種別硬貨収納投出部群62に対する機体幅方向一側域である右側域の底部に搬送コンベヤ63が配設され、機体11の背部位置で各シュート51,55,56,58,59の下方に硬貨カセットユニット64が配置されている。
金種別硬貨一時保留部61a〜61fは、硬貨入金時に金種別硬貨分岐部40a〜40fで分岐されて金種別シュート50a〜50fで導かれる硬貨を受け入れるとともに所定枚数の硬貨を上下方向に重積して一時保留するもので、金種別に硬貨を上下方向に重積する筒状の開口を有する保留枠67、およびこの保留枠67の下面を開閉する投出板68などで構成されている。保留枠67は、図示しない駆動機構により、投出板68で下面開口が閉塞されていて金種別シュート50a〜50fから硬貨を受け入れるとともに重積状態で一時保留可能とする一時保留位置である定位置と、この定位置から機体幅方向一側である右側面側(図3の右側)の搬送コンベヤ63上に移動して投出板68に対して相対的に開放される下面開口から一時保留硬貨を放出する返却位置との間で移動する。
また、金種別硬貨収納投出部62a〜62fは、機体11内に着脱可能に装着される金種別の収納筒部71を有し、この収納筒部71の上方から硬貨の収納および投出を可能としている。収納筒部71の上方には投出板68が配設され、この投出板68は、図示しない駆動機構により、収納筒部71の上方の前進位置と、この前進位置より機体幅方向他側の左側面側(図3の左側)の後退位置との間で往復移動する。そして、投出板68が定位置にあるとき保留枠67の下面開口を閉塞して硬貨の一時保留を可能とし、この保留枠67に一時保留した硬貨の収納時に投出板68が後退位置に移動し、保留枠67内の硬貨を収納筒部71に収納させ、また、保留枠67が返却位置に移動した状態で、かつ収納筒部71内の硬貨を上昇させて最上位硬貨を保留枠67の下面で受け止めた状態において、投出板68の往復移動により、収納筒部71の最上位の硬貨から順に投出可能としている。
各収納筒部71内には重積硬貨を支承する支承部材72がそれぞれ上下動可能に配置され、これら各支承部材72が各収納筒部71に上下方向に形成された案内溝73を通じて収納筒部71に対し機体11の左側面側(図3の左側)に配置された駆動機構74に着脱可能に連結され、この駆動機構74によって各支承部材72がそれぞれ独立して上下動する。そして、収納筒部71内からの硬貨の投出時に支承部材72が上昇して最上位の硬貨を保留枠67の下面に押し付けるとともに、収納筒部71内への硬貨の収納時に支承部材72が下降して硬貨を収納可能としている。
なお、保留枠67の硬貨を収納筒部71へ収納させる場合は、支承部材72が上昇して支承部材72上の重積硬貨上面を投出板68の下面近傍に位置させ、次に投出板68の退避により一時保留硬貨が重積状収納硬貨の上に載り、支承部材72の下降で重積硬貨上面が投出板68の下部近傍へ下降されて停止され、次に投出板68が閉じられて一時保留硬貨の収納が終わる。
また、図1、図3および図6に示すように、搬送コンベヤ63は、金種別硬貨収納投出部62a〜62fの右側面域(図3の右側)に沿って機体11の底部に略水平状に配置される受収コンベヤ域77、この受収コンベヤ域77の前端から前方へ向けて上昇傾斜して貯留繰出部18に接続される送出コンベヤ域78を有し、受収コンベヤ域77および送出コンベヤ域78を通じて硬貨を貯留繰出部18に順次送り込み可能としている。
これらコンベヤ域77,78の両側には側壁部79,79が配設されるとともに、受収コンベヤ域77の後端側にはシュート部80が配設され、送出コンベヤ域78と側壁部79,79とシュート部80とで囲まれた空間に硬貨を受収する硬貨受収部81が形成されている。
搬送コンベヤ63の一端側である前端側にはオーバーフロー硬貨分岐部39で分岐されてオーバーフロー硬貨用シュート49で導かれる硬貨入金時のオーバーフロー硬貨を受け入れ、搬送コンベヤ63の一端側である前端側と他端側である背部側との間には硬貨入金時における入金非承認時に金種別硬貨一時保留部61a〜61fから放出される返却硬貨および硬貨出金時に金種別硬貨収納投出部62a〜62fから投出される出金硬貨を受け入れ、搬送コンベヤ63の他端側である背部側には硬貨カセットユニット64が備える補充環流硬貨収納部94から放出される硬貨を受け入れる。さらに詳しくいえば、搬送コンベヤ63の送出コンベヤ域78には、入金時のオーバーフロー硬貨、金種別硬貨一時保留部61a〜61fおよび金種別硬貨収納投出部62a〜62fのうちの硬貨通路29の上流側に対応して一端側に位置する金種別硬貨一時保留部61aから放出される返却硬貨および金種別硬貨収納投出部62aから投出される出金硬貨を受け入れる。
搬送コンベヤ63は、無端状の搬送ベルト82を有し、この搬送ベルト82が複数のプーリ83に懸架されて各コンベヤ域77,78が形成されている。図6に示すように、搬送ベルト82は、無端状の平ベルトで構成され、硬貨を載せるベルト部位の下面がベルト支持板84によって摺動可能に支持されている。搬送ベルト82の表面には、その搬送方向に沿って処理する最大径硬貨の直径より広く最小径硬貨が径方向に2枚入らない所定のピッチ毎でかつベルト幅方向に複数個ずつ並んで図示しない複数の突起が形成されている。そして、搬送ベルト82の回転駆動により、突起に硬貨を引っ掛けて貯留繰出部18に搬送する。
両側の側壁部79,79の内面には硬貨受収部81内の硬貨が当接するガイド部85,85が設けられ、両側の側壁部79,79のガイド部85,85の下部と搬送ベルト82の表面の幅方向両側域との間には両側の側壁部79,79から搬送ベルト82の表面の幅方向両側域に突出して硬貨を搬送ベルト82上へ導くガイド部材86が配設されている。
これら各ガイド部材86の表面87には、搬送ベルト82の表面に向けて下降傾斜するガイド面87aが形成され、このガイド面87aの上端側にガイド部85の下部に嵌まり込む嵌合縁部87bが形成され、ガイド面87aの下端側に搬送ベルト82の表面に略垂直に臨むガイド縁部87cが形成されている。ガイド面87aは、硬貨が面接触しないように搬送ベルト82の幅方向に凸曲面に形成されている。
各ガイド部材86の下面には、ベルト支持板84との間に搬送ベルト82の幅方向両側縁を挟み込んだ状態で配置する溝部88が設けられているとともに、搬送ベルト82の幅方向両側縁をガイドするガイド部89が設けられている。
そして、両側の側壁部79,79のガイド部85,85の間隔L1は、処理する最大径硬貨の直径の2倍以上3倍未満に設けられ、両側のガイド部材86,86のガイド縁部87c,87cの間隔L2は、処理する最大径硬貨の直径より大きく最小径硬貨の直径の2枚分より小さく設けられている。したがって、両側のガイド部材86,86間から露出する搬送ベルト82の幅は、処理する最大径硬貨の直径より広く最小径硬貨が径方向に2枚入らない幅に形成されている。また、両側のガイド部材86,86の嵌合縁部87b,87bは、両側の側壁部79,79のガイド部85,85より硬貨受収部81の内方へ突出されており、つまり、ガイド面87a,87aの上端部が両側の側壁部79,79のガイド部85,85より硬貨受収部81の内方へ突出されている。なお、両側の側壁部79,79のガイド部85,85の間隔L1が処理する最大径硬貨の直径の2倍より小さいと、硬貨保留量を増加できず、また、3倍以上であると、ガイド部材86にもたれかかって載った硬貨が搬送ベルト82に接触せず、硬貨が搬送されずに残留しやすくなる。
また、図1、図2、図7(図7に示す硬貨カセットユニット64の左側が前面、右側が背面、上側が左側面、下側が右側面である)に示すように、硬貨カセットユニット64は、機体11の背部位置のカセット装着部91に対して、機体11の底部から背部側に引き出されるカセット搭載台92によって着脱可能に装着されている。すなわち、機体11の背部側から引き出したカセット搭載台92に対して硬貨カセットユニット64が上方から着脱可能とされ、硬貨カセットユニット64が搭載されたカセット搭載台92を機体11内に押し込むことにより硬貨カセットユニット64が機体11のカセット装着部91に装着される。
この硬貨カセットユニット64は、運搬可能な縦長箱状のカセット本体93を有し、このカセット本体93内には、補充環流硬貨用シュート51の下方に臨む上面に受収口94aを有する補充硬貨収納部としての補充環流硬貨収納部94、回収硬貨用シュート55の下方に臨む上面に受収口95aを有する回収硬貨収納部95、取忘れ硬貨用シュート56の下方に臨む上面に受収口96aを有する取忘れ硬貨収納部96、運用リジェクト硬貨用シュート58の下方に臨む上面に受収口97aを有する運用リジェクト硬貨収納部97、補充リジェクト硬貨用シュート59の下方に臨む上面に受収口98aを有する補充リジェクト硬貨収納部98が配置されている。
このカセット本体93の上面には、各受収口94a〜98aを一体に開閉する図示しない受収口シャッタがカセット本体93内で開閉可能に配設されている。この受収口シャッタは、硬貨カセットユニット64を機体11の背部側からカセット装着部91内に装着することにより機体11内に配置された図示しないシャッタ開放部によって自動的にロックが解除されて開放され、硬貨カセットユニット64を機体11内のカセット装着部91から背部側へ引き出すことにより自動的に閉塞されてロックされる。
また、補充環流硬貨収納部94の内部は、受収口94aから受収する硬貨を収納する収納空間部94bを有し、この収納空間部94bの前面下部には収納空間部94b内の硬貨を機体11内の搬送コンベヤ63に放出する放出口94cが形成され、収納空間部94bの底部には硬貨を自重で放出口94cから放出させるシュート状の傾斜底面94dが形成されている。傾斜底面94dは、放出口94cへ向けて下降傾斜するとともに傾斜方向と交差する方向の断面が円弧状に形成され、収納空間部94b内の硬貨が傾斜底面94dに貼り付くのを防止して確実に放出可能としている。
放出口94cには、この放出口94cを開閉する放出口シャッタ101が上下方向に開閉可能に配設されている。また、カセット装着部91には、補充環流硬貨収納部94の放出口94cが臨む受入口102が形成され、この受入口102を開閉する受入口シャッタ103が上下方向に開閉可能に配設されている。そして、硬貨カセットユニット64を機体11の背部側からカセット装着部91内に装着することにより放出口シャッタ101と受入口シャッタ103とが一体に連結され、機体11内に配設される図示しないシャッタ開閉機構によって一体に開閉駆動される。
次に、本実施の形態の作用を説明する。
まず、初期補充処理について参照して説明する。
循環式硬貨入出金機の外部で初期補充硬貨を補充環流硬貨収納部94に収納した硬貨カセットユニット64を、循環式硬貨入出金機の機体11内のカセット装着部91に装着する。硬貨カセットユニット64の装着により、硬貨カセットユニット64の上面の受収口シャッタを開放し、放出口シャッタ101が受入口シャッタ103と係合して一体に開閉可能とする。
係員が図示しない操作部で初期補充モードを指定し、スタートを指令することにより、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63の駆動を開始し、放出口シャッタ101および受入口シャッタ103を一体に開放移動させ、放出口94cおよび受入口102を開放する。これにより、補充環流硬貨収納部94に収納していた補充硬貨を傾斜底面94dの傾斜によって自重で放出口94cから全量放出させ、受入口102を通じて、搬送コンベヤ63の受収コンベヤ域77上、つまり硬貨受収部81に全量受収させる。
補充環流硬貨収納部94に収納していた補充硬貨を全量放出したことを図示しないセンサで検知することにより、放出口シャッタ101および受入口シャッタ103を一体に閉鎖移動させ、放出口94cおよび受入口102を閉鎖する。これにより、補充環流硬貨収納部94に硬貨の受収が可能な状態とする。
搬送コンベヤ63の搬送ベルト82の回転駆動により、受収コンベヤ域77上の補充硬貨を送出コンベヤ域78を通じて貯留繰出部18に順次送り込む。貯留繰出部18では傾斜円盤19が回転し、搬送コンベヤ63から送り込まれた補充硬貨を1枚ずつ硬貨通路29に繰り出す。硬貨通路29では貯留繰出部18から繰り出される補充硬貨を受け入れて1枚ずつ間隔をあけた分離状態で搬送し、補充硬貨の搬送途上で硬貨識別部38により識別する。
硬貨識別部38での識別の結果、正規の補充硬貨は金種別硬貨分岐部40a〜40fで金種別に分岐し、金種別シュート50a〜50fおよび金種別硬貨一時保留部61a〜61fの保留枠67を通じて、金種別硬貨収納投出部62a〜62fの収納筒部71に収納する。金種別硬貨一時保留部61a〜61fの保留枠67は投出板68が後退位置(図3に示す位置より左方向に移動した位置)に移動して底面が開口された状態にあり、金種別シュート50a〜50fから保留枠67に送り込まれた補充硬貨を収納筒部71に直接収納する。このとき、収納筒部71内の重積硬貨の上面を収納筒部71の上端近傍に位置させておくことにより、補充硬貨の落下距離を少なくし、硬貨立ちなどが発生するのを防止できる。収納筒部71内に補充硬貨を1枚受け入れる度に支承部材72とともに重積硬貨を1枚分下降させ、次の補充硬貨の収納を許容する。
循環式硬貨入出金機の図示しない制御部では硬貨識別部38での識別結果から金種別硬貨収納投出部62a〜62fに収納する補充硬貨の枚数をカウントし、カウント値が予め設定された満杯量に達した金種については、それ以降に硬貨識別部38で識別される正規の補充硬貨をオーバーフロー硬貨として取り扱う。この補充時のオーバーフロー硬貨は、該当する金種の金種別硬貨分岐部40a〜40fで分岐せずに下流側の補充環流硬貨分岐部41で分岐し、補充環流硬貨用シュート51を通じて硬貨カセットユニット64の補充環流硬貨収納部94に収納させる。このとき、補充環流硬貨収納部94の放出口94cは放出口シャッタ101によって既に閉塞されているため、補充環流硬貨収納部94に収納した補充硬貨は放出されることなく収納状態に保たれる。
硬貨識別部38での識別の結果、不適正と判断されたリジェクト硬貨は、第2分岐部43で分岐し、第2の振分シュート53の振分部57および補充リジェクト硬貨用シュート59を通じて硬貨カセットユニット64の補充リジェクト硬貨収納部98に収納させる。
そして、硬貨識別部38で初期補充硬貨の識別が所定時間以上なくなれば、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63の駆動を停止し、初期補充処理を完了する。
次に、入金処理について参照して説明する。
顧客が図示しない操作部で入金を指令することにより、入出金口13の入出金口シャッタ12を開放し、さらに、顧客が入金硬貨を入出金口13を通じて硬貨受部14に投入することにより、硬貨受部14の受皿15上の入金硬貨を図示しないセンサで検知して入出金口シャッタ12を閉鎖する。貯留繰出部18および硬貨通路29の駆動を開始し、硬貨受部14の受皿15の回動によって投入された入金硬貨をシュート16に放出し、このシュート16を通じて貯留繰出部18に送り込む。硬貨受部14では入金硬貨の放出後に受皿15を戻して硬貨の受収を可能な状態とする。
貯留繰出部18に送り込んだ入金硬貨は、貯留繰出部18から硬貨通路29に1枚ずつ送り込み、硬貨識別部38で識別する。
硬貨識別部38での識別の結果、正規の入金硬貨は金種別硬貨分岐部40a〜40fで金種別に分岐し、金種別シュート50a〜50fを通じて金種別硬貨一時保留部61a〜61fに金種別に一時保留する。金種別硬貨一時保留部61a〜61fでは、図3に示すように、保留枠67の底面を投出板68で閉塞しており、保留枠67に受け入れた入金硬貨を上下方向に重積状態で一時保留する。
図示しない制御部では硬貨識別部38での識別結果から金種別硬貨一時保留部61a〜61fに一時保留する入金硬貨の枚数および金種別硬貨収納投出部62a〜62fに収納した硬貨収納枚数をカウントし、これらカウント値が予め設定された満杯量に達した金種については、それ以降に硬貨識別部38で識別される正規の入金硬貨をオーバーフロー硬貨として取り扱う。このオーバーフロー硬貨は、硬貨識別部38の直後のオーバーフロー硬貨分岐部39で分岐し、オーバーフロー硬貨用シュート49を通じて搬送コンベヤ63の前側の送出コンベヤ域78に送り込む。一部のオーバーフロー硬貨は送出コンベヤ域78で搬送ベルト82の突起に引っ掛かって一時保留し、残りは送出コンベヤ域78と受収コンベヤ域77との接続部分近傍に一時保留する。
硬貨識別部38での識別の結果、不適正と判断されたリジェクト硬貨は、硬貨通路29の第2の通路部32の末端まで搬送し、硬貨受部14に送り込む。このとき、硬貨受部14の受皿15はリジェクト硬貨を受収可能な状態にある。入出金口13の入出金口シャッタ12を開放し、顧客が硬貨受部14からリジェクト硬貨を取り出すことによって入出金口シャッタ12を閉鎖する。
そして、貯留繰出部18で硬貨を検知せず、硬貨識別部38で硬貨の識別が所定時間以上なくなれば、貯留繰出部18および硬貨通路29を停止して入金送り込み動作を完了し、その後、入金硬貨の識別結果を顧客に対して表示し、入金の確認をとる。
顧客が図示しない操作部によって入金承認の操作をした場合で、オーバーフロー硬貨がなかった場合には、金種別硬貨一時保留部61a〜61fの投出板68を後退位置(図3に示す位置より左方向に移動した位置)に移動させ、保留枠67の底面を開口させ、重積状態に一時保留させていた一時保留硬貨を金種別硬貨収納投出部62a〜62fの収納筒部71に収納する。
また、顧客が図示しない操作部によって入金承認の操作をした場合で、オーバーフロー硬貨があった場合には、金種別硬貨一時保留部61a〜61fに一時保留していた一時保留硬貨は、上述したように投出板68の後退位置への移動によって金種別硬貨収納投出部62a〜62fの収納筒部71に収納する。
搬送コンベヤ63に一括一時保留していたオーバーフロー硬貨は、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63の駆動により、搬送コンベヤ63から貯留繰出部18を通じて硬貨通路29に送り込み、硬貨通路29の補充環流硬貨分岐部41で分岐し、補充環流硬貨用シュート51を通じて硬貨カセットユニット64の補充環流硬貨収納部94に収納する。このとき、搬送コンベヤ63の前側に入金時のオーバーフロー硬貨を受け入れているため、搬送コンベヤ63の前側から貯留繰出部18にオーバーフロー硬貨を直ぐに送り込むことができ、オーバーフロー硬貨の収納処理を迅速にできることになる。
硬貨識別部38でオーバーフロー硬貨の識別が所定時間以上なくなれば、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63を停止し、入金送り込み動作から入金収納動作までの一連の入金処理を完了する。
また、顧客が図示しない操作部によって入金不承認の操作をした場合には、金種別硬貨一時保留部61a〜61fの保留枠67を搬送コンベヤ63の受収コンベヤ域77の上方の返却位置に移動させ、保留枠67に一時保留していた全ての硬貨を搬送コンベヤ63に放出する。このとき、搬送コンベヤ63にオーバーフロー硬貨を一時保留していた場合には、保留枠67から放出される硬貨と一緒になる。
搬送コンベヤ63の受収コンベヤ域77上の返却硬貨は、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63の駆動により、搬送コンベヤ63から貯留繰出部18を通じて硬貨通路29に送り込み、硬貨通路29の末端まで搬送して硬貨受部14の受皿15に送り込む。全ての返却硬貨を硬貨受部14の受皿15に送り込んだら、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63を停止し、入出金口13の入出金口シャッタ12を開放し、顧客が硬貨受部14の受皿15から返却硬貨を取り出すことによって入出金口シャッタ12を閉鎖する。これにより、入金送り込み動作から入金返却動作までの一連の処理を完了する。
次に、出金処理について説明する。
顧客が図示しない操作部によって出金貨幣値(金額または金種と枚数)を入力し、スタートを指令することにより、金種別硬貨収納投出部62a〜62fの出金金種に該当する収納筒部71において、収納されている重積硬貨を支承部材72によって上昇させ、収納筒部71の上部を閉塞する位置に位置される保留枠67の下面に重積硬貨を当接させ、往復移動させる投出板68によって最上位の重積硬貨つまり出金硬貨を収納筒部71から搬送コンベヤ63に投出する。続けて投出する金種がある場合には、同様に重積硬貨を上昇させ投出板68によって投出する。出金金種に該当しない金種および出金枚数分を投出し終えた金種については、重積硬貨を下降させ、硬貨の投出を停止する。
搬送コンベヤ63に投出された出金硬貨は、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63の駆動により、搬送コンベヤ63から貯留繰出部18を通じて硬貨通路29に送り込み、硬貨識別部38で識別する。
硬貨識別部38での識別の結果、正規の出金硬貨は硬貨通路29の第2の通路部32の末端まで搬送して硬貨受部14に送り込む。
不適正と判断されたリジェクト硬貨は第2分岐部43で分岐し、第2の振分シュート53の振分部57および運用リジェクト硬貨用シュート58を通じて硬貨カセットユニット64の運用リジェクト硬貨収納部97に収納させる。リジェクト硬貨が発生した場合には、出金貨幣値に不足する金種硬貨を金種別硬貨収納投出部62a〜62fから再投出させる。
出金貨幣値分の出金硬貨を硬貨受部14に送り込んだら、貯留繰出部18、硬貨通路29および搬送コンベヤ63を停止し、入出金口13の入出金口シャッタ12を開放し、顧客が硬貨受部14の受皿15から出金硬貨を取り出すことによって入出金口シャッタ12を閉鎖する。これにより、出金処理を完了する。
なお、出金処理によって金種別硬貨収納投出部62a〜62fの金種別の硬貨の収納量が所定量以下に低下した場合には、補充環流硬貨収納部94に収納されたオーバーフロー硬貨を補充硬貨として補充処理できる。この補充処理は、初期補充処理と同様である。
以上のように構成された循環式硬貨入出金機では、1つの搬送コンベヤ63により、入金時のオーバーフロー硬貨、金種別硬貨一時保留部61a〜61fからの返却硬貨、金種別硬貨収納投出部62a〜62fからの出金硬貨、補充環流硬貨収納部94からの補充硬貨を受け入れ、これら硬貨を一端側に搬送して貯留繰出部18に送り込むことができるので、各処理に1つの搬送コンベヤ63を共通に使用できる。しかも、搬送コンベヤ63の一端側に入金時のオーバーフロー硬貨を受け入れることにより、オーバーフロー硬貨の収納処理時に、搬送コンベヤ63の一端側から貯留繰出部18にオーバーフロー硬貨を直ぐに送り込んで、迅速に処理できる。
また、搬送コンベヤ63が、機体11の底部域に配置される受収コンベヤ域77およびこの受収コンベヤ域77の一端から貯留繰出部18に向かって上昇傾斜する送出コンベヤ域78を有しており、この搬送コンベヤ63の送出コンベヤ域78に、硬貨通路29のオーバーフロー硬貨分岐部39で分岐された入金時のオーバーフロー硬貨、金種別硬貨一時保留部61a〜61fおよび金種別硬貨収納投出部62a〜62fのうちの硬貨通路29の上流側に対応して一端側に位置する金種別硬貨一時保留部61aから放出される返却硬貨および金種別硬貨収納投出部62aから投出される出金硬貨を受け入れる構成とするので、搬送コンベヤ63を小形にでき、そのため、機体11全体も小形にできる。
また、図6に示すように、搬送コンベヤ63の両側の側壁部79,79から搬送ベルト82の表面の幅方向両側域に突出して硬貨を搬送ベルト82上へ導くガイド部材86,86のガイド面87a,87aを搬送ベルト82の幅方向に凸曲面に形成したので、ガイド面87a,87aにもたれかかった硬貨C1,C2はガイド面87a,87aに面接触することがなく、硬貨が組み合ったブリッジ状態で搬送できなくなる搬送不良が発生するのを防止できる。例えば、両側のガイド部材86,86のガイド面87a,87aに硬貨C1,C2がもたれかかって逆ハの字になる状態で、搬送ベルト82の表面に面接触して搬送してきた硬貨C3で押したとき、ガイド面87a,87aに硬貨C1,C2が面接触している場合にはこれら硬貨C1,C2が突っ張って搬送ベルト82がロックするおそれがあるが、凸曲面のガイド面87a,87aに硬貨C1,C2が面接触しない場合にはこれら硬貨C1,C2が容易に動き側壁部79,79に沿って上方に逃げやすく搬送ベルト82がロックするのを防止できる。そのため、ガイド面87a,87aにもたれかかった硬貨C1,C2が搬送ベルト82で搬送する硬貨C3と側壁部79,79との間でブリッジ状態となって詰まるのを防止でき、したがって、搬送コンベヤ63の硬貨保留容量を増加しても、硬貨を貯留繰出部18に確実に送り込むことができる。
さらに、ガイド面87a,87aの上端部が両側の側壁部79,79のガイド部85,85より硬貨受収部81の内方へ突出しているので、ガイド面87a,87aにもたれかかった硬貨C1,C2の周縁部がガイド部材86,86と側壁部79,79のガイド部85,85との合わせ目に引っ掛かることがなく、硬貨がブリッジ状態となるのを防止できる。
また、両側のガイド部材86,86の間隔を処理する最大径硬貨の直径より大きく最小径硬貨の直径の2枚分より小さく設け、両側の側壁部79,79の間隔を処理する最大径硬貨の直径の2倍以上3倍未満に設けたので、搬送コンベヤ63の硬貨保留容量を増加でき、硬貨を貯留繰出部18に確実に送り込むことができる。