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JP4761917B2 - ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、型内発泡成形によって耐熱性及び機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
ポリ乳酸系樹脂は、天然に存在する乳酸を重合されて得られた樹脂であり、自然界に存在する微生物によって分解可能な生分解性樹脂であると共に、常温での機械的特性についても優れていることから注目を集めている。
ポリ乳酸系樹脂は、一般に、D−乳酸及び/又はL−乳酸を重合させるか、或いは、L−ラクチド、D−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって製造されている。
そして、得られるポリ乳酸系樹脂は、該ポリ乳酸系樹脂中に含有されるD体成分或いはL体成分の含有比率によって物性、特に結晶性が変化し、具体的には、D体成分或いはL体成分のうちの少ない方の光学異性体の割合が多くなるにしたがってポリ乳酸系樹脂の結晶性が低下し、やがて非結晶性となる。
又、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填し、水蒸気などの熱媒体によってポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を加熱して軟化させると共に発泡させ、予備発泡粒子の発泡圧によって予備発泡粒子同士を融着一体化させて所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法、所謂、型内発泡成形が提案されている。
具体的には、特許文献1には、L体とD体のモル比が95/5〜60/40、又は40/60〜5/95であるポリ乳酸にイソシアネート基≧2.0当量/モルのポリイソシアネート化合物を該ポリ乳酸に対して0.5〜5重量%配合し反応させた樹脂組成物を所定条件で熟成させてなる樹脂組成物が提案され、そして、上記樹脂組成物から粒子を製造し、この粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させ、得られた発泡性粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を金型に充填して発泡させて所望形状を有する成形体を成形することが開示されている。
しかしながら、上記ポリ乳酸系樹脂は、そのL体成分又はD体成分のうちの少ない方の光学異性体成分のモル比が5モル%以上であり、ポリ乳酸系樹脂は結晶性が低いか或いは非結晶性であって耐熱性に劣り、得られる成形体の耐熱性はせいぜい50℃程度であって、実用上の使用には問題点があった。
そこで、L体又はD体のうちの少ない方の光学異性体のモル比が5モル未満である結晶性の高いポリ乳酸系樹脂を用いることが考えられるが、粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子とし、この発泡性粒子を加熱して予備発泡させていることから、この発泡過程で加えられる熱によってポリ乳酸系樹脂の結晶化が進行してしまい、結晶化度の高い予備発泡粒子となり、その結果、得られる予備発泡粒子の融着性が低下してしまい、このような予備発泡粒子を用いて得られる成形体は、融着性が悪くて機械的強度が低いといった問題点があった。
特開2000−17037号公報
本発明は、型内発泡成形によって耐熱性及び機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法を提供する。
本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、ポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し押出発泡して押出発泡体を製造し、この押出発泡体を粒子状に切断して予備発泡粒子を製造するポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有していると共に、上記ポリ乳酸系樹脂における融点(mp)と動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとが下記式1を満たし、更に、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度が30%未満となるように調整することを特徴とする。
(ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃)
≦(交点における温度T)≦ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
上記ポリ乳酸系樹脂は下記化1で示され、D−乳酸及びL−乳酸をモノマーとして共重合させるか、D−乳酸又はL−乳酸の何れか一方をモノマーとして重合させるか、或いは、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって得ることができ、何れのポリ乳酸系樹脂であってもよい。
Figure 0004761917
そして、ポリ乳酸系樹脂を製造するに際して、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体若しくはL体のうちの少ない方の光学異性体の割合が5モル%未満である場合、又は、モノマーとしてD体若しくはL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを用いた場合、即ち、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有している場合は、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が高くなる一方、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体又はL体のうちの少ない方の割合が5モル%以上である時は、少ない方の光学異性体が増加するにしたがって、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が低くなり、やがて非結晶となる。
従って、本発明では、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂か、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を用いることによって、得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の耐熱性を高いものとしている。
更に、D体とL体をモノマーとして併用して重合させて得られたポリ乳酸系樹脂としては、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が4モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂が好ましく、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が3モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂がより好ましく、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が2モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂が特に好ましい。
即ち、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が4モル%未満であるポリ乳酸系樹脂が好ましく、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が3モル%未満であるポリ乳酸系樹脂がより好ましく、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が2モル%未満であるポリ乳酸系樹脂が更に好ましい。
そして、構成モノマー成分としてD体及びL体を含有するポリ乳酸系樹脂は、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が少なくなればなる程、ポリ乳酸系樹脂は、その結晶性のみならず融点も上昇する。よって、予備発泡粒子を金型内に充填して発泡させて得られる発泡成形体の耐熱性も向上し、発泡成形体は高い温度であってもその形態を維持することができ、発泡成形体を金型から高い温度のまま取り出すことが可能となって発泡成形体の金型内における冷却時間が短縮され、発泡成形体の生産効率を向上させることもできる。
ここで、ポリ乳酸系樹脂中におけるD体又はL体の含有量は以下の方法によって測定することができる。先ず、ポリ乳酸系樹脂をクロロホルムに溶解させて、ポリ乳酸系樹脂の濃度が10mg/ミリリットルのクロロホルム溶液を作製する。次に、旋光計を用いて25℃にて波長589nmの偏光をクロロホルム溶液に照射して、クロロホルム溶液の比旋光度を測定する。
一方、モノマーとしてD体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂、或いは、モノマーとしてL体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂について、上述と同様の要領で比旋光度を測定してもよいが、この比旋光度は、通常、既に測定されており、D体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂は+156°、モノマーとしてL体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂は−156°とされている。
そして、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂中におけるD体成分又はL体成分の量を算出することができる。
D体成分量(モル%)=100×{クロロホルム溶液の比旋光度−(−156)}
/{156−(−156)}
L体成分量(モル%)=100−(D体成分量)
ところが、本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、その結晶化速度が速いことから、その中から押出発泡に適したものを選択する必要があり、本発明では、ポリ乳酸系樹脂として、融点(mp)と、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとが下記式1を満たすポリ乳酸系樹脂を用いている。
(ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃)
≦(交点における温度T)≦ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
ここで、動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率は、粘弾性において弾性的な性質を示す指標であって、発泡過程における気泡膜の弾性の大小を示す指標であり、発泡過程において、気泡膜の収縮力に抗して気泡を膨張させるのに必要な発泡圧の大小を示す指標である。
即ち、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率が低いと、気泡膜が伸長された場合、気泡膜が伸長力に抗して収縮しようとする力が小さく、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造に必要とする発泡圧によって発泡膜が容易に伸長してしまう結果、気泡膜が過度に伸長してしまい破泡を生じる一方、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率が高いと、気泡膜に伸長力が加わった場合、伸長に抗する気泡膜の収縮力が大きく、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造に必要とする発泡圧で一旦、気泡が膨張したとしても、温度低下などに起因する経時的な発泡圧の低下に伴って気泡が収縮してしまう。
又、動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率は、粘弾性において粘性的な性質を示す指標であって、発泡過程における気泡膜の粘性を示す指標であり、発泡過程において、気泡膜をどの程度まで破れることなく伸長させることができるかの許容範囲を示す指標であると同時に、発泡圧によって所望大きさに気泡を膨張させた後、この膨張した気泡をその大きさに維持する能力を示す指標でもある。
即ち、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率が低いと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造に必要とする発泡圧によって気泡膜が伸長された場合、気泡膜が容易に破れてしまう一方、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率が高いと、発泡力が気泡膜によって熱エネルギーに変換されてしまい、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造時に気泡膜を円滑に伸長させることができず、気泡を膨張させることができない。
このように、ポリ乳酸系樹脂を発泡させてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を製造するにあたっては、発泡過程において、ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得るために必要とされる発泡圧によって気泡膜が破れることなく適度に伸長するための弾性力、即ち、貯蔵弾性率を有している必要があると共に、上記発泡圧によって気泡膜が破れることなく円滑に伸長し、所望大きさに膨張した気泡をその大きさに発泡圧の経時的な減少にかかわらず維持しておくための粘性力、即ち、損失弾性率を有している必要がある。
つまり、押出発泡工程において、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率及び損失弾性率の双方が押出発泡に適した値を有している必要があり、このような押出発泡に適した貯蔵弾性率及び損失弾性率を押出発泡工程においてポリ乳酸系樹脂に付与するために、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T(以下「貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T」ということがある)とポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが下記式1を満たすことが要求され、好ましくは式2を満たすように、より好ましくは式3を満たすように調整することによって、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率及び損失弾性率をそれらのバランスをとりながら押出発泡に適したものとしてポリ乳酸系樹脂の押出発泡性を良好なものとし、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を安定的に製造することができる。
〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃〕
≦交点における温度T≦ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−35℃〕
≦交点における温度T≦〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−10℃〕・・・式2
〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−30℃〕
≦交点における温度T≦〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−20℃〕・・・式3
更に、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが上記式1を満たすように調整する理由を下記に詳述する。
先ず、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tが、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)よりも40℃を越えて低い場合には、押出発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の損失弾性率が貯蔵弾性率に比して大き過ぎるために、損失弾性率と貯蔵弾性率とのバランスが崩れてしまう。
そこで、ポリ乳酸系樹脂の損失弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の粘性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の弾性力にとっては発泡力が大き過ぎてしまい、気泡膜が破れて破泡を生じて良好なポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができず、逆に、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の弾性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の粘性力にとっては発泡力が小さく、ポリ乳酸系樹脂が発泡しにくくなり、やはり良好なポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができない。
又、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tが、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)よりも高いと、押出発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率が損失弾性率に比して大き過ぎるために、上述と同様に損失弾性率と貯蔵弾性率とのバランスが崩れてしまう。
そこで、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の弾性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の粘性力にとっては発泡力が大き過ぎてしまい、気泡膜が破れて破泡を生じ良好なポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができず、逆に、ポリ乳酸系樹脂の損失弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の粘性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の弾性力にとっては発泡力が小さく、ポリ乳酸系樹脂が発泡力で一旦、発泡したとしても、経時的な発泡力の低下に伴って気泡が収縮してしまって、やはり良好なポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができない。
そして、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tと、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが上記式1を満たすように調整する方法としては、ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量が高くなるにしたがって、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tが高くなることから、ポリ乳酸系樹脂の重合時に反応時間或いは反応温度を調整することによって、得られるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を調整する方法、押出発泡前に或いは押出発泡時にポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を増粘剤や架橋剤を用いて調整する方法が挙げられる。
このような観点から、ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、140,000〜300,000が好ましく、150,000〜270,000がより好ましく、160,000〜250,000が特に好ましい。更に、ポリ乳酸系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、3.2〜10が好ましく、3.4〜9がより好ましく、3.6〜8が特に好ましい。
この他に、L体の比率がD体の比率に比して大きいモノマーから得られたポリ乳酸系樹脂の場合、D体の比率が増加するにつれてポリ乳酸系樹脂の融点(mp)が低下することから、モノマー中のD体の比率を調整することによってポリ乳酸系樹脂の融点(mp)を調整し、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tと、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが上記式1を満たすように調整する方法が挙げられる。
ここで、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、JIS K7121:1987に準拠してポリ乳酸系樹脂の示差走査熱量分析を行い、得られたDSC曲線における融解ピークの温度をポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とする。なお、融解ピークの温度が複数個ある場合には、最も高い温度とする。
又、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tは下記の要領で測定されたものをいう。即ち、ポリ乳酸系樹脂を9.33×104 Paの減圧下にて80℃で3時間に亘って乾燥する。このポリ乳酸系樹脂を該ポリ乳酸系樹脂の融点よりも40〜50℃だけ高い温度に加熱した測定プレート上に載置して窒素雰囲気下にて5分間に亘って放置し溶融させる。
次に、直径が25mmの平面円形状の押圧板を用意し、この押圧板を用いて測定プレート上のポリ乳酸系樹脂を押圧板と測定プレートとの対向面間の間隔が1mmとなるまで上下方向に押圧する。そして、押圧板の外周縁からはみ出したポリ乳酸系樹脂を除去した後、5分間に亘って放置する。
しかる後、歪み5%、周波数1rad/秒、降温速度2℃/分、測定間隔30秒の条件下にて、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定を行って貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定する。次に、横軸を温度とし、縦軸を貯蔵弾性率及び損失弾性率として、貯蔵弾性率曲線及び損失弾性率曲線を描く。なお、貯蔵弾性率曲線及び損失弾性率曲線を描くにあたっては、測定温度を基準として互いに隣接する測定値同士を直線で結ぶ。
そして、得られた貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tを上記グラフから読み取ることによって得ることができる。なお、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線とが複数箇所において互いに交差する場合は、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との複数の交点における温度のうち最も高い温度を、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとする。
又、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tは、Reologica Instruments A.B 社から商品名「DynAlyser DAR-100」 にて市販されている動的粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tでの弾性率、即ち、貯蔵弾性率又は損失弾性率は、低いと、発泡中のポリ乳酸系樹脂の粘弾性が低くなり、気泡膜が発泡圧によって破れて破泡を生じることがある一方、高いと、発泡圧によって気泡膜を伸長させて気泡を所望大きさに膨張させることができず、発泡が不安定になることがあるので、1.0×103 〜1.0×105 Paが好ましく、5.0×103 〜9.0×104 Paがより好ましく、1.0×104 〜8.0×104 Paが特に好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tでの弾性率(貯蔵弾性率又は損失弾性率)は、ポリ乳酸系樹脂の重合時に反応時間或いは反応温度を調整することによって、ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を調整する方法、押出発泡前に或いは押出発泡時にポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を増粘剤や架橋剤を用いて調整する方法が挙げられる。
上記ポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後、押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させる。この押出発泡させて得られた押出発泡体の形態は、特に限定されず、ストランド状、シート状などが挙げられるが、ストランド状が好ましい。
なお、上記押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられ、タンデム型の押出機が好ましい。
又、上記発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。
そして、押出機に供給される発泡剤量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある一方、多いと、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態のポリ乳酸系樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好なポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができなかったり或いはポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率が高過ぎる場合があるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
なお、押出機には気泡調整剤が添加されることが好ましいが、気泡調整剤の多くは、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶核剤として作用するため、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進しない気泡調整剤を用いることが好ましく、このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
又、押出機に供給される気泡調整剤の量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の気泡が粗大となり、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観が低下することがある一方、多いと、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させる際に破泡を生じてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率が低下することがあるので、ポリ乳酸ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。
押出機に取り付ける金型としては、特に限定されないが、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させて均一微細な気泡を形成できる金型が好ましく、このような金型としては、ノズル金型が好ましく、ノズルを複数有するマルチノズル金型がより好ましい。
マルチノズル金型のノズルの出口直径は、小さいと、押出圧力が高くなりすぎて押出発泡が困難となることがある一方、大きいと、ポリ乳酸径樹脂予備発泡粒子の径が大きくなって金型への充填性が低下するので、0.2〜2mmが好ましく、0.3〜1.6mmがより好ましく、0.4〜1.2mmが特に好ましい。
そして、ノズル金型のノズルの口金出口部分におけるポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率が低下し或いはポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の気泡が粗大となることがある一方、大きいと、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがあるので、1000〜30000sec-1が好ましく、2000〜25000sec-1がより好ましく、3000〜20000sec-1が特に好ましい。
なお、ノズル金型のノズルの口金出口部分における剪断速度は、下記式に基づいて算出されたものをいう。
剪断速度(sec-1)=4×Q/(πr3
但し、Qは、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量(cm3 /sec)であり(Qを質量押出量(g/sec)から算出する場合は、ポリ乳酸系樹脂の密度は1.0g/cm3 とする)、rは、ノズルの半径(cm)である。
又、フラクチャーを低減させるために、ノズル金型のランド部の長さは、ノズル金型のノズルの出口直径の4〜30倍が好ましく、ノズル金型のノズルの出口直径の5〜20倍がより好ましい。これは、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口直径に比較して小さいと、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがある一方、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口直径に比較して大きいと、ノズル金型に大きな圧力が加わり過ぎて押出発泡ができない場合があるからである。
更に、押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させる際のポリ乳酸系樹脂の樹脂温度は、下記式4を満たすことが好ましく、下記式5を満たすことがより好ましい。
(貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T+40℃)≦樹脂温度
≦(貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T+90℃)・・・式4
(貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T+50℃)≦樹脂温度
≦(貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T+80℃)・・・式5
これは、ポリ乳酸系樹脂の樹脂温度が低いと、フラクチャーが発生してポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の外観性が低下し或いは押出負荷が大きくなり過ぎて押出機から押出発泡させることが困難となることがある一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度が低くなり過ぎて良好なポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができないことがあるからである。
そして、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を冷却して、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶化が進行するのを抑制し、このポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断して得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度が30%未満となるように、好ましくは3〜28%となるように、より好ましくは5〜26%となるように調整する。
ここで、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に記載の測定方法に準拠して10℃/分の昇温速度にて昇温しながら測定された1mg当たりの冷結晶化熱量及び1mg当たりの融解熱量に基づいて下記式により算出することができる。
Figure 0004761917
このように、得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度を30%未満に調整することによって、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の融着性を確保し、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性を良好なものとすることができる。又、型内発泡成形途上において、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度を上昇させて、ポリ乳酸系樹脂の耐熱性を向上させることができ、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、優れた融着性及び耐熱性を有している。
そして、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却方法としては、押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶化度の上昇を速やかに停止できる方法が好ましく、具体的には、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を水面に浮かせて冷却する方法、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体に水などを霧状に吹き付ける方法、低温に温度調節された冷却板上に、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を接触させることによって冷却させる方法、押出機から押出発泡された押出発泡体に冷風などの冷却された気体を吹き付ける方法などが挙げられる。なお、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を水面に浮かせて冷却する場合は、水温は0〜45℃に調整することが好ましい。
次に、上述のようにして冷却されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断することによってポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得ることができる。ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断する切断機としては、ペレタイザーやホットカット機などが挙げられ、又、切断機の切断方法としては、ドラムカッタ式やファンカッタ式があるが、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の切断時にポリ乳酸系樹脂押出発泡体に割れや欠けが発生しにくいことから、ファンカッタ式の切断方法を用いることが好ましい。なお、上記では、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却後に、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を切断する場合を説明したが、押出機から押出発泡させると同時にポリ乳酸系樹脂押出発泡体を切断して粒子状とした後に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を冷却するようにしてもよい。
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形における発泡時にポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子に必要な発泡力を付与することができない虞れがある一方、大きいと、得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の発泡性が不充分となることがあるので、0.03〜0.5g/cm3 が好ましく、0.05〜0.4g/cm3 がより好ましく、0.07〜0.3g/cm3 が特に好ましい。
そして、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の連続気泡率は、高いと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子が殆ど発泡せず、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子同士の融着性が低くなって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるので、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の連続気泡率の調整は、押出発泡温度及び発泡剤量を調整することによって行われる。
ここで、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の連続気泡率は下記の要領で測定される。先ず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量のポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の全重量A(g)を測定する。次に、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子全体の体積B(cm3 )を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
そして、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の見掛け体積E(cm3 )を算出し、この見掛け体積Eと上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子全体の体積B(cm3 )に基づいて下記式によりポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の連続気泡率を算出することができる。なお、水1gの体積を1cm3 とした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
又、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の粒径は、小さいと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の発泡性が低下することがある一方、大きいと、型内発泡成形時に金型内へのポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の充填性が低下することがあるので、1.0〜5.0mmが好ましい。そして、押出発泡体がストランド状であり、このストランド状の押出発泡体をその長さ方向に所定間隔毎に切断してポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を製造した場合、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子における切断面に直交する方向の長さは、5mm以下が好ましい。
ここで、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の粒径は、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の直径を直接、ノギスを用いて測定することができる。なお、押出発泡体がストランド状であり、このストランド状の押出発泡体をその長さ方向に所定間隔毎に切断してポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を製造した場合には、各ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の切断面における最も長い直径(長径)及び最も短い直径(短径)を測定すると共に、各ポリ乳酸径樹脂予備発泡粒子における切断面に直交する方向の長さを測定し、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の長径、短径及び長さの相加平均値をポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の粒径とする。
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させることによって、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに融着一体化させると共にポリ乳酸系樹脂の結晶化度を上昇させて、融着性及び耐熱性に優れた所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
なお、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風などが挙げられる。水蒸気の圧力は、低いと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度を充分に上昇させることができず、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下することがある一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の温度上昇が急激なものとなり、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度の上昇がポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の溶融速度に追いつかず、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子が溶けてしまい、発泡圧が不足して、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性が低下し或いは得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体に収縮が生じることがあるので、適宜調整される。
そして、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下する一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体が脆くなることがあるので、好ましくは30〜60%、より好ましくは32〜59%、特に好ましくは34〜58%となるように型内発泡成形条件を調整するのがよい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度は、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度の測定方法と同様であるのでその説明を省略する。
又、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を折り曲げて所定箇所から切断する。そして、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の切断面に露出している発泡粒子の全粒子数N1 を目視により数えると共に、材料破壊した発泡粒子、即ち、分割された発泡粒子の粒子数N2 を目視により数え、下記式に基づいて融着率を算出することができる。
融着率(%)=100×材料破壊した発泡粒子の粒子数N2 /発泡粒子の全粒子数N1
更に、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子に更に不活性ガスを常温にて含浸させて、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。このようにポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の発泡力を向上させることにより、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性が向上し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、上記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウムなどが挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法では、ポリ乳酸系樹脂として、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂か、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を用いていることから、得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子は、その結晶化性が高くて耐熱性に優れている。
そして、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法では、結晶性が高いポリ乳酸系樹脂のうち、動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tと融点(mp)とが所定関係にあるポリ乳酸系樹脂を用いて押出発泡に適したものとし、押出発泡によってポリ乳酸系樹脂を発泡させており、従来のようにポリ乳酸系樹脂粒子を一旦、作製し、このポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて予備発泡させる場合と異なり、粒子状にしてから熱を加えることはなく、よって、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度の上昇を防止し、得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の融着性を良好に維持することができる。
更に、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法で得られるポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子は、その結晶化度が30%未満となるように調整されていることから、型内発泡時における融着性に優れていると共に、この型内発泡時に加えられる熱によってポリ乳酸系樹脂粒子の結晶化度を、該ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性を阻害させないように上昇させて、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体に優れた耐熱性を付与することができ、よって、本発明のポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を用いて得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた耐熱性及び機械的強度を有する。
本発明においてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度及びポリ乳酸系樹脂発泡成形体の見掛け密度は下記の要領によって測定されたものをいう。
(ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度)
ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度を測定した。
ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕
/〔メスシリンダーの容量(cm3 )〕
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の見掛け密度)
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の見掛け密度は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法で測定されたものをいう。
(実施例1)
一段目となる口径50mmの単軸押出機と二段目となる口径65mmの単軸押出機とを接続管を介して接続してなるタンデム型の押出機を用意した。
そして、上記タンデム型の押出機の一段目の押出機に、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC TE−6100」、融点:167.8℃、D体比率:1.5重量%、L体比率:98.5重量%、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T:140.3℃、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点の温度Tにおける弾性率(貯蔵弾性率又は損失弾性率):5.37×104 Pa)100重量部及び気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子社製 商品名「フルオンL169J」)0.1重量部を供給して始めは190℃にて溶融混練した後に220℃まで徐々に昇温させながら溶融混練した。なお、図1に、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線及び損失弾性率曲線を示した。
続いて、第一押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.8重量部となるように溶融状態のポリ乳酸系樹脂に圧入して、ポリ乳酸系樹脂中に均一に分散させた。
しかる後、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を一段目の押出機から接続管を介して二段目の押出機に連続的に供給した。溶融状態のポリ乳酸系樹脂を二段目の押出機にて樹脂温度202℃に冷却した後、二段目の押出機の先端に取り付けたマルチノズル金型の各ノズルから剪断速度5659sec-1で押出発泡させてストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を製造した。
続いて、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を、マルチノズル金型の各ノズル先端から60cmの距離に亘って空冷により冷却し、続いて、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を2mの距離に亘って冷却水槽内の水面上に浮かせて冷却した。なお、冷却水槽内の水温は、30℃であった。
なお、マルチノズル金型は、出口直径が1.0mmのノズルが15個、配設されており、ランド部の長さは7mmであった。又、マルチノズル金型のノズルから押出発泡させた際の樹脂温度は、二段目の押出機の先端部と金型との間にブレーカープレートを挿入し、このブレーカープレートの中心部に熱電対を挿入することによって測定した。
そして、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を充分に水切りした後、このポリ乳酸系樹脂押出発泡体をファンカッタ式のペレタイザーを用いて2.3mm毎に円柱状に切断してポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得た。なお、得られたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子は、その嵩密度が0.17g/cm3 で、粒径が1.7〜2.3mmで、結晶化度は25.5%で、連続気泡率は27.8%であった。
次に、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に二酸化炭素を0.49MPaの圧力にて圧入して常温にて24時間に亘って放置してポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子に二酸化炭素を含浸させた。
続いて、上記ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填して型締めし、この金型内にゲージ圧0.018MPaの水蒸気を20秒間に亘って供給して、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を加熱、発泡させて、このポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士を融着一体化させ、更に、この状態にて120秒間に亘って保温した後に水冷して、縦300mm×横400mm×高さ20mmの直方体形状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。なお、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、その見掛け密度が0.18g/cm3 で、融着率は70%であった。
(実施例2)
ポリ乳酸系樹脂として、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC HV−6200」、融点:167.4℃、D体比率:1.5重量%、L体比率:98.5重量%、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T:139.5℃、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点の温度Tにおける弾性率(貯蔵弾性率又は損失弾性率):4.23×104 Pa)を用いたこと、二段目の押出機にてポリ乳酸系樹脂を200℃に冷却したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得た。
なお、得られたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子は、その嵩密度が0.18g/cm3 で、粒径が1.7〜2.3mmで、結晶化度は22.8%で、連続気泡率は22.2%であった。又、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、その見掛け密度が0.18g/cm3 で、融着率は80%であった。
(比較例1)
ポリ乳酸系樹脂として、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC TE−4000」、融点:170.3℃、D体比率:1.4重量%、L体比率:98.6重量%、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T:105.0℃、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点の温度Tにおける弾性率(貯蔵弾性率又は損失弾性率):1.17×104 Pa)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得た。
しかしながら、押出機から押出発泡させて得られたストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体に、破泡に伴うガスの抜け穴が断続的に発生し、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を安定的に製造することができなかった。
(比較例2)
マルチノズル金型の各ノズル先端から押出発泡させたストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体の空冷距離を60cmの代わりに1.5mとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子を得た。
なお、得られたポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子は、その嵩密度が0.17g/cm3 で、粒径が1.7〜2.3mmで、結晶化度は30.5%で、連続気泡率は28.1%であった。又、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、その見掛け密度が0.18g/cm3 で、融着率は10%であった。
Figure 0004761917
実施例1で用いられたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線及び損失弾性率曲線を示したグラフである。

Claims (2)

  1. ポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し押出発泡して押出発泡体を製造し、この押出発泡体を粒子状に切断して予備発泡粒子を製造する型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有していると共に、上記ポリ乳酸系樹脂における融点(mp)と動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとが下記式1を満たし、更に、ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の結晶化度が30%未満となるように調整することを特徴とする型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
    (ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃)
    ≦(交点における温度T)≦ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
  2. ポリ乳酸系樹脂における動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tでのポリ乳酸系樹脂の弾性率が1.0×103 〜1.0×105 Paであることを特徴とする請求項1に記載の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
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