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JP4761072B2 - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents

内燃機関の点火時期制御装置 Download PDF

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JP4761072B2 JP2007065491A JP2007065491A JP4761072B2 JP 4761072 B2 JP4761072 B2 JP 4761072B2 JP 2007065491 A JP2007065491 A JP 2007065491A JP 2007065491 A JP2007065491 A JP 2007065491A JP 4761072 B2 JP4761072 B2 JP 4761072B2
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Description

本発明は、燃焼行程における燃焼状態を表す燃焼状態量を取得し、その燃焼状態量に基づいて点火時期を制御する内燃機関の点火時期制御装置に関する。
従来より、筒内圧検出手段により検出される筒内圧(燃焼室内の圧力)に基づいて「燃焼状態」を表す量として燃焼割合MFB(Mass Fraction Burned)を算出し、所定のクランク角度における燃焼割合MFBが目標燃焼割合と一致するように点火時期(燃焼開始時期)を制御する内燃機関の制御装置が知られている。このような装置の一つは、例えば、圧縮上死点後のクランク角度8°における燃焼割合MFB8を求め、この燃焼割合MFB8が目標値(例えば50%)になるように点火時期SAを制御するようになっている。これにより、内燃機関に個体差がある場合でも、点火時期が個々の機関に応じて適切に制御される。その結果、燃焼効率が改善され、内燃機関の出力トルクを増大させることができる(例えば、特許文献1を参照)。燃焼割合MFB8は、燃焼行程における特定タイミング(圧縮上死点後のクランク角度8°)における燃焼状態量であり、8°燃焼割合とも称呼される。
ここで、燃焼割合MFBは図示熱量の割合と実質的に等価な値である。従って、図示熱量の割合も燃焼状態を表す量の一つである。図示熱量の割合は、一回の燃焼行程に関して、「燃焼室において燃焼した総ての燃料によって発生した熱のうちピストンに対する仕事に変換された熱の総量Qtotalに対する、所定のタイミングまでに同燃焼室において燃焼した燃料によって発生した熱のうちピストンに対する仕事に変換された熱の積算量Qsumの割合Qsum/Qtotal」と定義される。燃焼割合MFBは、「燃焼室において燃焼した総ての燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の総量に対する、所定のタイミングまでに同燃焼室において燃焼した燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の積算量の割合」と定義される。
特開2006−144645号公報
ところで、8°燃焼割合MFB8は燃焼行程における筒内圧センサの検出値に基いて求められる。従って、上記従来の装置において、次に到来する燃焼行程(今回の燃焼行程)に対する点火時期は、前回の燃焼行程における8°燃焼割合MFBが目標値に一致するようにフィードバック制御される。このため、燃焼状態が大きく変化する加速時等の過渡運転状態においては、点火時期を適切に制御することができないという問題がある。
本発明は、上記課題に対処するように為されたものである。即ち、本発明の目的は、今回の燃焼行程に対する燃焼状態量を事前に精度良く予測し、その予測された燃焼状態量(予測燃焼状態量)に基づいて点火時期を決定することにより、過渡運転状態においても適切に点火時期を制御することができる内燃機関の点火時期制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による点火時期制御装置は、燃焼状態検出センサと、実燃焼状態量取得手段と、運転状態量取得手段と、予測燃焼状態量取得手段と、予測燃焼状態量補正手段と、補正量算出手段と、点火時期制御手段と、を備える。
燃焼状態検出センサは、前記機関の燃焼室内における混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量を実際に検出する。燃焼状態検出センサの一例は筒内圧センサである。筒内圧センサは、燃焼室内における混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量として燃焼室内の圧力(筒内圧)を検出する。
実燃焼状態量取得手段は、前記燃焼状態検出センサによって検出された物理量に基いて燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を実燃焼状態量として取得するようになっている。この実燃焼状態量の一例は、上述した8°燃焼割合MFB8である。
このように、実燃焼状態量は燃焼状態検出センサによって実際に検出された物理量に基づいて取得される。従って、今回の燃焼行程に対する点火時期を決定する際に使用することができる最新の実燃焼状態量は、前回(直前)の燃焼行程における実燃焼状態量である。
運転状態量取得手段は、前記燃焼状態検出センサが検出する物理量と相違し且つ前記機関の運転状態を表す物理量である運転状態量を取得する。この運転状態量は燃焼状態に影響を及ぼす量であって、例えば、今回の燃焼行程に対する機関の負荷、今回の燃焼行程に対する機関回転速度及び今回の燃焼行程に対するVVT進角量等であり、これらに限定されない。VVTの進角量は、排気弁の開弁時期及び閉弁時期を一定とした場合での、吸気弁開弁時期が最も遅角側に設定されている場合を基準とした吸気弁開弁時期の進角量である。VVTの進角量が大きいほどオーバーラップ期間は長くなり、既燃ガス量(内部EGRガス量)が増大する。従って、VVT進角量に代えて、オーバーラップ期間又は内部EGRガス量を前記運転状態量の一つとして採用してもよい。なお、オーバーラップ期間とは、排気行程後期において吸気弁と排気弁とが共に開弁状態に維持される期間である。VVTの進角量、オーバーラップ期間又は内部EGRガス量等は、特に、オーバーラップ期間が変更されない場合、省略することができる。
予測燃焼状態量取得手段は、前記運転状態量と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量との関係を記述する燃焼状態モデルを含む。予測燃焼状態量取得手段は、前記運転状態量取得手段によって取得された運転状態量を燃焼状態モデルに適用することにより前記燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を予測燃焼状態量として取得する。燃焼状態モデルの一例は、運転状態量と燃焼割合MFBとの関係を記述する公知のWiebe関数である。
このように、予測燃焼状態量は燃焼状態モデルに基づいて取得される。従って、燃焼状態モデルに今回の燃焼行程における運転状態量を適用することにより今回の予測燃焼状態量を今回の燃焼行程前(点火時期前、点火時期決定前)に得ることができる。しかしながら、燃焼状態モデルを完璧なモデルとすることはできない。従って、予測燃焼状態量は、燃焼状態モデルが有するモデル誤差に基く予測誤差を含んでいる。この誤差は、以下に述べる予測燃焼状態量補正手段、補正量算出手段及び点火時期制御手段によって低減される。
予測燃焼状態量補正手段は、前記予測燃焼状態量を補正量によって補正することにより補正後予測燃焼状態量を取得する。この補正量は補正量算出手段により更新される。
補正量算出手段は、前記予測燃焼状態量取得手段と前記予測燃焼状態量補正手段とにより前回の燃焼行程に対して取得された補正後予測燃焼状態量と、前記実燃焼状態量取得手段により同前回の燃焼行程に対して取得された実燃焼状態量と、の差、に基づいて前記補正量を算出する。
実燃焼状態量の最新の値は前回の燃焼行程に対して取得された値である。そこで、補正量算出手段は、前回の燃焼行程に対する点火時期を決定する際に使用された前回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量と、前回の燃焼行程に対して取得された実燃焼状態量と、の差、に基づいて、その差を小さくするための前記補正量を算出する。
そして、点火時期制御手段は、算出された前記補正量により、前記予測燃焼状態量取得手段により取得される今回の燃焼行程に対する前記予測燃焼状態量を補正することにより取得される「今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量」に基づいて前記機関の点火時期を制御する。この場合、例えば、点火時期制御手段は、「今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量」と「所定の目標燃焼状態量」とが一致するように前記機関の点火時期をフィードバック制御することが望ましい。
これにより、今回の燃焼行程に対する点火時期を決定する際に使用される補正後予測燃焼状態量の精度が、前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量と前回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量とに基づいて向上される。その結果、機関の過渡運転状態においても、今回の燃焼行程に対する燃焼状態量が精度良く予測されるので、その予測された燃焼状態量に基づいて決定される点火時期は最適な点火時期に近づく。
この場合、前記予測燃焼状態量取得手段は、前記前回の燃焼行程に対する点火時期と前記運転状態量取得手段により取得された前記今回の燃焼行程に対する点火時期以外の運転状態量とを前記燃焼状態モデルに適用することにより、前記今回の燃焼行程に対する予測燃焼状態量を取得するように構成され得る。即ち、点火時期以外の運転状態量が変化した場合に今回の燃焼行程における燃焼状態量がどのようになるかを予測し、その予測値に基づいて今回の点火時期を修正する。この結果、点火時期を適切に制御することができる。
一方、本発明による他の点火時期制御装置は、燃焼状態検出センサと、実燃焼状態量取得手段と、運転状態量取得手段と、前回予測燃焼状態量取得手段と、モデル誤差量取得手段と、今回予測燃焼状態量取得手段と、モデル誤差補償手段と、点火時期制御手段と、を備える。
燃焼状態検出センサ、実燃焼状態量取得手段及び運転状態量取得手段は、前述した通りである。
前回予測燃焼状態量取得手段は、前記運転状態量と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量との関係を記述する燃焼状態モデルを含む。燃焼状態モデルの一例は、運転状態量と燃焼割合MFBとの関係を記述する前述した公知のWiebe関数である。更に、前回予測燃焼状態量取得手段は、前記運転状態量取得手段によって取得された前回の燃焼行程に対する運転状態量を燃焼状態モデルに適用することにより前回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を前回予測燃焼状態量として取得する。
モデル誤差量取得手段は、前記取得された前回予測燃焼状態量と、前記実燃焼状態量取得手段により取得された前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量と、の差をモデル誤差量として取得する。前回予測燃焼状態量は燃焼状態モデルに基いて得られる値に対して何らの補正も加えられていない値である。従って、前回予測燃焼状態量と前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量との差は、燃焼状態モデルに含まれるモデル誤差に基く誤差そのものを反映したモデル誤差量となる。
今回予測燃焼状態量取得手段は、前回予測燃焼状態量取得手段が有する燃焼状態モデルと同じ燃焼状態モデルを含む。更に、今回予測燃焼状態量取得手段は、その燃焼状態モデルに運転状態量取得手段によって取得された今回の燃焼行程に対する運転状態量を適用することにより、今回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を今回予測燃焼状態量として取得する。
モデル誤差補償手段は、前記取得された今回予測燃焼状態量を前記モデル誤差量取得手段によって取得されたモデル誤差量によって補正することにより、今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量を取得する。
点火時期制御手段は、前記取得された今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量に基づいて前記機関の点火時期を制御する。この場合、例えば、点火時期制御手段は、「今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量」と「所定の目標燃焼状態量」とが一致するように前記機関の点火時期をフィードバック制御することが望ましい。
このように、前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量と前回予測燃焼状態量との差は、モデル誤差に基いて生じる誤差(モデル誤差量)そのものを反映した値である。従って、今回予測燃焼状態量をモデル誤差量によって補正することにより、今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量が精度良く求められる。その結果、機関の過渡運転状態においても、今回の燃焼行程に対する燃焼状態量が精度良く予測されるので、その予測された燃焼状態量に基づいて決定される点火時期は最適な点火時期に近づく。
より具体的には、
前記前回予測燃焼状態量取得手段は、前記前回の燃焼行程に対する点火時期と前記運転状態量取得手段により取得された前記前回の燃焼行程に対する点火時期以外の運転状態量とを前記燃焼状態モデルに適用することにより前記前回予測燃焼状態量を取得するように構成され、
前記今回予測燃焼状態量取得手段は、前記前回の燃焼行程に対する点火時期と前記運転状態量取得手段により取得された前記今回の燃焼行程に対する点火時期以外の運転状態量とを前記燃焼状態モデルに適用することにより前記今回予測燃焼状態量を取得するように構成され得る。
これによれば、前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量をもたらした点火時期及び運転状態量と、前回予測燃焼状態量の基礎となった点火時期及び運転状態量と、が一致するので、モデル誤差量を精度良く取得することができる。
前述したように、
前記燃焼状態検出センサは筒内圧センサであり、
前記実燃焼状態量取得手段は前記実燃焼状態量として前記燃焼室において燃焼した総ての燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の総量に対する前記特定タイミングまでに同燃焼室において燃焼した燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の積算量の割合である燃焼割合を取得するように構成され、
前記燃焼状態モデルは前記運転状態量と前記燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態としての燃焼割合との関係を記述するモデルであることが好適である。
これによれば、機関の効率を向上するように点火時期を定めるのに好適な燃焼割合が精度良く予測される。この結果、機関の燃費を改善し、及び/又は、機関のトルクを増大することができる。
更に、前記燃焼状態モデルは、圧縮上死点後のクランク角度θ(燃焼行程の所定のタイミング)における燃焼割合MFBθを、
MFBθ=1−exp{−c・((θ+αi)/αb)}
により近似するWiebe関数であり、
パラメータc及びパラメータdは一定値であり、パラメータαiは点火時期に基いて変化し、パラメータαbは吸気弁と排気弁とが同時に開弁するオーバーラップ期間に基いて変化するように構成されたモデルであることが望ましい。
発明者は、Wiebe関数のパラメータαiを変更した場合に算出される燃焼割合MFBθと点火時期を変更した場合の実際の燃焼割合MFBθとは非常に良く類似した変化を示すことを見出した。より具体的には、点火時期を変更した場合、実際の燃焼割合MFBθのクランク角度θに対する増大速度は殆ど変化しないが、実際の燃焼割合MFBθが増大を開始するクランク角度θが変化する。同様に、パラメータαiを変更した場合、計算によるMFBθのクランク角度θに対する増大速度は殆ど変化しないが、計算によるMFBθが増大を開始するクランク角度θが変化する。
更に、発明者は、Wiebe関数のパラメータαbを変更した場合に算出される燃焼割合MFBθとオーバーラップ期間を変更した場合の実際の燃焼割合MFBθとは非常に良く類似した変化を示すことを見出した。より具体的には、オーバーラップ期間(例えば、VVT進角量)を変更した場合、実際の燃焼割合MFBθが増大を開始するクランク角度θは殆ど変化しないが、実際の燃焼割合MFBθのクランク角度θに対する増大速度が変化する。同様に、パラメータαbを変更した場合、計算によるMFBθが増大を開始するクランク角度θは殆ど変化しないが、計算によるMFBθのクランク角度θに対する増大速度が変化する。
従って、上記のようにパラメータαi及びパラメータαbを定めることにより、燃焼割合をより精度良く求める燃焼状態モデルを提供することができる。
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の制御装置について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書において、圧縮上死点後のクランク角度X°を「ATDC X°、又は、ATDCX」と表記し、圧縮上死点前のクランク角度Y°を「BTDC Y°、又は、BTDCY」と表記する。
1.第1実施形態
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る点火時期制御装置をピストン往復動型の火花点火式多気筒(4気筒)4サイクル内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1は、特定の気筒の断面のみを図示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これによりクランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を開閉駆動する吸気弁制御装置33、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
吸気弁制御装置33は、インテークカムシャフトとインテークカム(図示せず)との相対回転角度(位相角度)を油圧により調整・制御する周知の構成を備え、吸気弁32の開弁時期(吸気弁開弁時期)を変更することができるようになっている。本例において、吸気弁の開弁期間(開弁クランク角度幅)は一定である。従って、吸気弁開弁時期が所定角度だけ進角又は遅角させられると、吸気弁閉弁時期も同所定角度だけ進角又は遅角させられる。また、排気弁35の開弁時期及び閉弁時期は一定である。従って、吸気弁制御装置33によって吸気弁開弁時期が変更されることに伴ってオーバーラップ期間が変化する。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43及びスロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52に配設された上流側の三元触媒53及びこの触媒53の下流のエキゾーストパイプ52に配設された下流側の三元触媒54を備えている。排気ポート34、エキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、各気筒に設けられた筒内圧センサ65、冷却水温センサ66、第1触媒53の上流の排気通路に配設された空燃比センサ67、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流の排気通路に配設された空燃比センサ68及びアクセル開度センサ69を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量を検出し、質量流量Gaを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。この信号はG2信号とも称呼される。クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10度回転する毎にパルスを出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。
筒内圧センサ65は、燃焼室25内の圧力である筒内圧を検出し、筒内圧Pcを表す信号を出力するようになっている。即ち、筒内圧センサ65は、燃焼室25内における混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量(筒内圧Pc)を実際に検出する燃焼状態検出センサとして機能する。
上流側空燃比センサ67及び下流側空燃比センサ68は、触媒53の上下流の空燃比を検出し、その上下流の空燃比を表す信号をそれぞれ出力するようになっている。アクセル開度センサ69は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜69と接続され、CPU71にセンサ61〜69からの信号を供給するようになっている。インターフェース75は、CPU71の指示に応じて吸気弁制御装置33、インジェクタ39及びスロットル弁アクチュエータ43aに駆動信号を送出するとともに、イグナイタ38に点火信号を送出するようになっている。
(制御)
次に、上記のように構成された内燃機関10の点火時期制御装置(以下、「第1制御装置」と称呼する。)により行われる、各種の制御内容について説明する。なお、本例において、燃焼状態量としての燃焼割合MFBは所定のタイミングを表すクランク角度θに対応して求められる。クランク角度θにおける燃焼割合MFBをMFBθと表す。このクランク角度θは圧縮上死点において0となり、圧縮上死点から圧縮上死点前に向って進角するほど絶対値が大きくなる負の値をとり、圧縮上死点から圧縮上死点後に向って遅角するほど絶対値が大きくなる正の値をとるように定義される。例えば、θ=−θ1°(θ1>0)であることは、クランク角度がBTDCθ1であることを示す。
<点火時期制御の概要>
図2は、点火時期SAと、8°燃焼割合MFB8と、機関10の発生トルクTRQと、の関係を示したグラフである。なお、本明細書において、点火時期がSAであるとは、点火時期がBTDC SA°(SA>0)であることを意味する。
図2から明らかなように、発生トルクTRQが最大となる8°燃焼割合MFB8は約60%(図2の領域Aを参照。)である。従って、第1制御装置は、8°燃焼割合MFB8の目標値MFB8tgt(以下、「目標燃焼割合MFB8tgt」という。)を60%と定めるとともに、今回の燃焼行程における8°燃焼割合MFB8を推定する。
実際には、第1制御装置は、今回の燃焼行程に対する8°燃焼割合MFB8を今回の燃焼行程前の時点にて燃焼状態モデルを用いて予測するとともに、その予測された値を補正値により補正する。更に、第1制御装置は、その補正された8°燃焼割合MFB8が目標燃焼割合MFB8tgtと一致するように点火時期SAをフィードバック制御する。加えて、第1制御装置は、前回の燃焼行程に対して点火時期を決定する基礎となった予測及び補正された8°燃焼割合MFB8と検出された筒内圧に基いて取得された前回の燃焼行程に対する実際の8°燃焼割合MFB8とに基き前記補正値を算出する。この結果、加速時等の過渡運転状態においても、今回の燃焼行程に対する8°燃焼割合MFB8が精度良く得られる。
そして、第1制御装置は、推定及び補正された今回の燃焼行程に対する8°燃焼割合MFB8が目標燃焼割合MFB8tgtと一致するように今回の燃焼行程に対する点火時期SAを決定する。従って、機関10の発生トルクが増大し、燃焼効率も向上するので、機関10の燃費を改善することができる。また、特に過渡運転状態において、ノッキングの発生やエミッションの悪化を回避することが可能となる。
なお、本明細書において、変数の後に付与される記号(k)は、その変数がある特定の気筒において次に発生する燃焼行程(即ち、今回の燃焼行程)に対する変数であることを示す。従って、(k−1)が付与された変数は、その特定の気筒において前回の燃焼行程(既に終了した直前の燃焼行程、即ち、1回前の燃焼行程)に対する変数である。
<点火時期制御の詳細>
第1制御装置は、第1制御装置の機能ブロック図である図3に示した各手段を有する。以下、各ブロックの機能を順に説明する。
目標値設定手段A1は、目標燃焼割合MFB8tgtを出力するようになっている。目標燃焼割合MFB8tgtは本例において一定値(60%)である。なお、目標値設定手段A1は、機関10の負荷及び機関回転速度NE等の機関の運転状態を表す量を入力し、その運転状態を表す量に応じて目標燃焼割合MFB8tgtを変更するように構成されていてもよい。目標燃焼割合MFB8tgtは、機関の燃焼効率が良く、且つ、HCやCO等の排出量が低い値となり、且つ、ノッキング等によるトルク変動等が発生しないような値に設定される。
MFB計算モデルA2は燃焼状態モデルを含んでいる。この燃焼状態モデルについては後に詳述する。MFB計算モデルA2は、燃焼状態に影響を及ぼす運転状態量として、前回の燃焼行程における点火時期SA(k−1)、現時点の機関の負荷KL(k)、現時点の機関回転速度NE(k)及び現時点のVVT進角量VVT(k)を入力するようになっている。点火時期SA(k−1)は、点火時期データ遅延手段A3から取得される。点火時期データ遅延手段A3は、後述するフィードバックコントローラA6から出力された今回の燃焼行程に対する点火時期SA(k)をRAM73内に格納し、格納したデータの中から前回の燃焼行程に対する点火時期SA(k−1)を出力するようになっている。
MFB計算モデルA2は、次に到来しようとしている燃焼行程(今回の燃焼行程)が開始する直前の計算タイミングにて、入力した運転状態量を燃焼状態モデルに適用することにより、今回の燃焼行程中の特定タイミングであるATDC 8°における燃焼割合MFB8(k)を予測(計算)するようになっている。MFB計算モデルA2により予測される8°燃焼割合MFB8(k)を「計算燃焼割合MFB8cal(k)」と称呼する。
MFB計算モデルA2の計算タイミングは今回の燃焼行程の開始直前であるから、そのタイミングから今回の燃焼行程が終了するまでの間(又は、少なくともATDC 8°に至るまでの間)に機関の負荷KL、機関回転速度NE及びVVT進角量VVTは大きく変化しないとみなすことができる。従って、現時点の機関の負荷KL(k)、現時点の機関回転速度NE(k)及び現時点のVVT進角量VVT(k)は、それぞれ、今回の燃焼行程における機関の負荷KL(k)、今回の燃焼行程における機関回転速度NE(k)及び今回の燃焼行程におけるVVT進角量VVT(k)として扱われる。このように、点火時期SA(k−1)、機関の負荷KL(k)、機関回転速度NE(k)及びVVT進角量VVT(k)の運転状態量はMFB計算モデルA2に入力されるから、第1制御装置は実質的にこれらの運転状態量を取得する運転状態量取得手段(筒内圧センサ65が検出する物理量(筒内圧)と相違し且つ機関10の運転状態を表す物理量である運転状態量を取得する運転状態量取得手段)を備えていることになる。
なお、負荷KLは吸入された筒内空気重量に比例する値(充填率)でありエアフローメータ61の検出する質量流量Ga及び機関回転速度NEにより求められる。負荷KLは、空気の挙動を記述した周知の空気モデルにより取得されてもよい。VVT進角量は、上述したように、排気弁の開弁時期及び閉弁時期を一定とした場合での、吸気弁開弁時期が最も遅角側に設定されている場合を基準とした吸気弁開弁時期の進角量である。また、機関の負荷KL(k)、機関回転速度NE(k)及びVVT進角量VVT(k)の運転状態量は、現時点における各値等に基いて点火時期近傍の時点(例えば、BTDC 5°)の各値を予測・推定した値であってもよい。
MFB計算モデルA2により取得される計算燃焼割合MFB8cal(k)は、燃焼行程の所定のタイミングにおける燃焼状態を表す量である。従って、燃焼状態モデルは、前記運転状態量と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量との関係を記述するモデルであると言うことができる。更に、MFB計算モデルA2は、運転状態量を燃焼状態モデルに適用することにより燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量(計算燃焼割合MFB8cal(k))を予測燃焼状態量として取得する予測燃焼状態量取得手段であると言うことができる。
予測燃焼状態量補正手段A4は、前記予測燃焼状態量である計算燃焼割合MFB8cal(k)を補正量HMFBによって補正することにより補正後予測燃焼状態量である補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を取得するようになっている。より具体的に述べると、予測燃焼状態量補正手段A4は、計算燃焼割合MFB8cal(k)に補正量HMFBを加えることにより補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を取得する。補正量HMFBは後述するローパスフィルタA10から出力される。
フィードバック制御用偏差算出手段A5は、目標燃焼割合MFB8tgtから補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を減じることによってフィードバック制御用偏差dMFB8(=dMFB8(k))を算出する。
フィードバックコントローラA6は、フィードバック制御用偏差dMFB8が0になるように点火時期SA(k)を決定する。換言すると、フィードバック制御用偏差算出手段A5及びフィードバックコントローラA6は、今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量である補正後燃焼割合MFB8mfd(k)と所定の目標燃焼状態量である目標燃焼割合MFB8tgtとが一致するように機関10の点火時期SA(k)をフィードバック制御(比例・積分制御)する点火時期制御手段を構成している。
より具体的に述べると、フィードバックコントローラA6は、下記(1)式に基いて今回の燃焼行程に対する点火時期SA(k)を決定するとともに、決定した点火時期SA(k)にて点火を実行するようにイグナイタ38に点火指示信号を送出する。
Figure 0004761072
(1)式のKpは比例定数であり、Kiは積分定数である。SdMFB8(k)はフィードバック制御用偏差dMFB8(k)の積分値であり、下記(2)式に基いて求められる。
Figure 0004761072
実MFB算出手段A7は、前回の燃焼行程中のATDC 8°における燃焼割合MFB8(k−1)を少なくとも筒内圧センサ65によって検出された筒内圧Pc(θ)=PC(8°)に基いて算出するようになっている。実MFB算出手段A7により算出される8°燃焼割合MFB8(k−1)を「実燃焼割合MFB8act(k−1)」と称呼する。実燃焼割合MFB8act(k−1)は、前回の燃焼行程の特定タイミングにおける実際の燃焼状態を表す量(即ち、実燃焼状態量)である。
ところで、上述したように、燃焼割合MFBは図示熱量の割合Qsum/Qtotalを表す値として取得される。燃焼割合MFBを筒内圧センサ65によって検出された筒内圧Pcから求める手法の詳細は、例えば、特開2006−144645号公報に開示されているので、以下、その概略について述べる。
クランク角度θにおける燃焼割合MFBθは、下記の(3)式により推定される。(3)式において、クランク角度θs(θs<0)は、対象とする燃焼行程(膨張行程)に向う過程において吸気弁32及び排気弁35の両方が閉じた状態にあり且つ点火時期よりも十分に進角した時期(例えば、θs=−60°、即ち、BTDC 60°)であり、クランク角度θe(θe>0)は、対象とする燃焼行程における燃焼が実質的に終了する最も遅い時期よりも遅い所定の時期且つ排気弁開弁時期よりも進角した時期(例えば、θe=60°、即ち、ATDC 60°)である。
Figure 0004761072
この(3)式は、発生した熱のうちピストンに対する仕事に寄与した熱の積算量Qの変化パターンがPc(θ)V(θ)κの変化パターンと概ね一致するという知見に基いている。Pc(θ)はクランク角度θにおける筒内圧、V(θ)はクランク角度θにおける燃焼室25の容積、κは混合ガスの比熱比(例えば、1.32)である。
実MFB算出手段A7は、上記(3)式のθに8°を代入すること等により、前回の燃焼行程に対する実燃焼割合MFB8act(k−1)を求める。
燃焼割合データ遅延手段A8は、前述した補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を補正後燃焼割合MFB8mfd(k)が算出される毎にRAM73に格納し、格納したデータの中から前回の燃焼行程に対する補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)を出力するようになっている。
補正基本量算出手段A9は、実燃焼割合MFB8act(k−1)から補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)を減じることにより補正基本量eMDLを算出するようになっている。換言すると、補正基本量算出手段A9は、予測燃焼状態量取得手段としてのMFB計算モデルA2と予測燃焼状態量補正手段A4とにより前回の燃焼行程に対して取得された補正後予測燃焼状態量としての補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)と、実燃焼状態量取得手段としての実MFB算出手段A7により前回の燃焼行程に対して取得された実燃焼状態量としての実燃焼割合MFB8act(k−1)との差(補正基本量eMDL)を取得するようになっている。
ローパスフィルタA10は、補正基本量算出手段A9によって取得された補正基本量eMDLに対し周知のローパスフィルタ処理を施すことにより前述した補正量HMFBを算出するようになっている。このローパスフィルタ処理は、補正基本量eMDLを時間積分する処理と実質的に同じ処理である。
このように、燃焼割合データ遅延手段A8、補正基本量算出手段A9及びローパスフィルタA10は、前回の燃焼行程に対して取得された補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)と、前回の燃焼行程に対して取得された実燃焼割合MFB8act(k−1)と、の差、に基づいて補正量HMFBを算出する補正量算出手段を構成している。
<燃焼状態モデル>
次に、MFB計算モデルA2が備える燃焼状態モデルについて説明する。この燃焼状態モデルは、Wiebe関数と称呼される燃焼割合MFBを求めるためのモデルであり、下記(4)式により表される。
Figure 0004761072
本実施形態において、上記(4)式における変数(パラメータ)αi及び変数αbは下記(5)式及び(6)式に従って求められる。上記MFB計算モデルA2は、(5)式の点火時期SAにSA(k−1)を代入し、(5)式及び(6)式の負荷KL、機関回転速度NE及びVVT進角量VVTに、KL(k)、NE(k)及びVVT(k)をそれぞれ代入することにより、変数αi及び変数αbを求める。そして、上記MFB計算モデルA2は、上記(4)式に求めた変数αi及び変数αbを代入するとともに、上記(4)式のθに8°を代入することによって、今回の燃焼行程に対する計算燃焼割合MFB8cal(k)を算出する。従って、燃焼状態モデルは、運転状態量(SA(k−1)、KL(k)、NE(k)、VVT(k))と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量である計算燃焼割合MFB8cal(k)との関係を記述するモデルであるということができる。なお、k1〜k7は適合定数である。
Figure 0004761072
Figure 0004761072
上述したWiebe関数は一般に下記(7)式により表される。Wiebe関数自体は、燃焼割合の変化の様子を模擬した近似関数モデルとして知られている。この関数においてパラメータc,dはパラメータαi,αbと相互に干渉する。従って、パラメータc,dは固定値とすることが推奨されている。そこで、発明者は、パラメータc及びパラメータdを上述のように「5」及び「4」にそれぞれ設定した。
しかし、パラメータαi及びαbを適切に設定しなければ、近似精度を向上することができない。そこで、発明者は以下に述べる検討を行った。その結果、発明者は、パラメータαi及びパラメータαbを上記(5)式及び上記(6)式に従って設定することが好適であることを見い出した。
Figure 0004761072
先ず、発明者は、点火時期SAをBTDC 22°、BTDC 28°及びBTDC 32°に設定した場合における実際の燃焼割合MFBのクランク角度θに対する変化を測定した。図4はその結果を示すグラフである。一方、図5は、上記(7)式におけるパラメータαiを変化させ、他のパラメータc、d、及びαbを一定値としたときの変数xに対するyの変化を示すグラフである。
発明者は、図4及び図5を比較することにより、点火時期SAとパラメータαiとは非常に相関が強いこと(即ち、点火時期SAを変更した場合の実際の燃焼割合MFBの変化と、パラメータαiを変更した場合の計算値yの変化とが類似すること)を見いだした。より具体的には、図4に示したように、点火時期SAを変更した場合、実際の燃焼割合MFBのクランク角度θに対する増大速度は殆ど変化しないが、実際の燃焼割合MFBが増大を開始するクランク角度θが変化する。同様に、図5に示したように、パラメータαiを変更した場合、計算値yのxに対する傾き(増大速度)は殆ど変化しないが、計算値yが増大を開始するxの値が変化する。
次に、発明者は、VVT進角量VVTを0°、20°及び40°に設定した場合における実際の燃焼割合MFBのクランク角度θに対する変化を測定した。図6はその結果を示すグラフである。一方、図7は、上記(7)式におけるパラメータαbを変化させ、他のパラメータc、d、及びαiを一定値としたときの変数xに対するyの変化を示すグラフである。
発明者は、図6及び図7を比較することにより、VVT進角量VVT(即ち、オーバーラップ期間)とパラメータαbとは非常に相関が強いことを見いだした。換言すると、VVT進角量VVTを変更した場合の実際の燃焼割合MFBの変化と、パラメータαbを変更した場合の計算値yの変化とが類似することを見いだした。より具体的には、図6に示したように、VVT進角量VVTを変更した場合、実際の燃焼割合MFBが増大を開始するクランク角度θは殆ど変化しないが、実際の燃焼割合MFBの増大速度が変化する。同様に、図7に示したように、パラメータαbを変更した場合、計算値yが増大を開始するxの値は殆ど変化しないが、計算値yのxに対する傾き(増大速度)が変化する。
以上のことから、発明者は、パラメータαiは点火時期SAの一次式により表されること(少なくとも、パラメータαiは点火時期SAを変数とする関数により表されること)が好適であると判断し(上記(5)式を参照。)、パラメータαbはVVT進角量VVTの一次式により表されること(少なくとも、パラメータαbはVVT進角量VVTを変数とする関数により表されること)が好適であると判断した(上記(6)式を参照。)。更に、負荷KLが大きくなるほど且つNEが小さくなるほどクランク角度θに対する燃焼速度(クランク角度θに対する燃焼割合の増加速度)は大きくなるから、パラメータαb(パラメータαbを求める(6)式)に変数KL/NEを導入した。即ち、パラメータαbは変数KL/NEの一次式により表されることが好適であると判断した。そして、パラメータαbに変数KL/NEを導入したことに対する調整として、パラメータαiに変数KL/NE及び変数NEを導入した(上記(5)式を参照。)。
図8は、加速時における点火時期SA、負荷KL、VVT進角量VVT、実際の8°燃焼割合MFB8(実測値)及び上記(4)〜(6)式により表された燃焼状態モデルによって計算された計算8°燃焼割合MFB8(モデル値)の変化の様子を示したグラフである。この図から明らかなように、実測値とモデル値との間にモデル誤差による誤差Δは存在するものの、実測値の変化のタイミングとモデル値の変化のタイミングは非常に近いことが理解される。更に、誤差Δは上記(5)式及び(6)式の適合定数k1〜k7を厳密に適合することにより低減可能である。即ち、上記(5)式及び(6)式のようにパラメータαi及びパラメータαbを決定すれば、8°燃焼割合MFB8を燃焼状態モデルを用いて精度良く推定することができる。
なお、パラメータαiを点火時期SA(上死点前の点火時期の進角度を正とする)に関して単調増加する関数により表し、パラメータαbをVVT進角量VVTに関して単調増加する関数により表しても良い。
以上、説明したように、第1制御装置は、燃焼状態モデルを用いて今回の燃焼行程(爆発行程、膨張行程)に対する8°燃焼割合MFB8を予測しているので、加速時のような過渡運転状態においても点火時期を精度良く制御することができる。更に、何れも前回の燃焼行程に対する値である補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)と実燃焼割合MFB8act(k−1)の差に基づいて今回の燃焼行程に対して予測される計算燃焼割合MFB8cal(k)を補正することにより、点火時期制御に用いられる補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を求めているので、補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を精度良く求めることができる。その結果、燃焼状態モデルにモデル誤差が含まれていても、点火時期が最適値に近づくので、機関10のトルク及び燃費等を改善することができる。
図9は、VVT進角量を急変させたときの従来の制御装置と第1制御装置とにおける各値の挙動を表したグラフである。図9において、細い破線C1は点火時期を変更しない場合における実際の8°燃焼割合を示し、太い破線C2は今回の燃焼行程に対する点火時期の制御に従来の実燃焼割合MFB8act(k−1)を用いた場合における実際の8°燃焼割合の挙動を示している。一方、細い実線C3は点火時期を変更しない場合における補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を示し、太い実線C4は今回の燃焼行程に対する点火時期の制御に補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を用いた場合における実際の8°燃焼割合の挙動を示している。
この図からも理解されるように、点火時期の制御に従来の実燃焼割合MFB8act(k−1)を用いると、VVT進角量が急変した場合、VVT進角量に伴う8°燃焼割合のズレ分が1サイクルずつ遅れて修正されてゆく。このため、8°燃焼割合と目標値との差が大きくなり且つ8°燃焼割合が目標値に収束するまでに長い時間を要する(曲線C2を参照。)。これに対し、第1制御装置のように、点火時期の制御に補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を用いると、VVT進角量の急変に伴う8°燃焼割合の急変が予測されるので、その8°燃焼割合の急変分を抑制するように点火時期が制御される。その結果、VVT進角量に伴う8°燃焼割合の目標値からのズレ分を速やかに小さくすることができる(曲線C4を参照。)。また、図9において、「err」は燃焼状態モデルによる誤差を表すが、第1制御装置によればこの誤差を補正値HMFBによって小さくすることができるので、より一層、点火時期を適正値に近づけることができる。
(実際の作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。なお、以下に説明するルーチンは電気制御装置70のCPU71が特定気筒に対して実行するルーチンである。CPU71は他の気筒に対しても同様なルーチンを実行するようになっている。
CPU71は、図示しない筒内圧取得ルーチンを所定の微小クランク角度が経過する毎に実行し、そのルーチンが実行された時点のクランク角度θと筒内圧Pc(θ)とをRAM73に格納している。
更に、CPU71は図10に示したルーチンを、クランク角度が「燃焼行程が実質的に終了した後の所定クランク角度(例えば、ATDC 160°)」に一致する毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図10のルーチンの処理をステップ1000から開始し、ステップ1010〜ステップ1060にて以下の処理を行い、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1010:CPU71は、筒内圧取得ルーチンによって取得した各クランク角度θに対する筒内圧Pc(θ)と、クランク角度θに対応する燃焼室容積V(θ)を上記(3)式に代入することにより、各クランク角度θに対する燃焼割合MFBθを算出する。ここで算出される各燃焼割合MFBθは、前回の燃焼行程における実燃焼割合MFBθact(k−1)である。算出される実燃焼割合MFBθact(k−1)にはATDC8°における実燃焼割合MFB8act(k−1)が含まれている。
ステップ1020:CPU71は、ステップ1010にて算出された実燃焼割合MFBθact(k−1)を用いてN°(ここではクランク角度15°)幅における実燃焼割合MFBθact(k−1)の変化量ΔMFBを、前記所定の微小クランク角度毎に算出する。即ち、ΔMFB=MFBθact(k−1)−MFBθbact(k−1)(但し、θb=θ−N)に従って変化量ΔMFBが計算される。
ステップ1030:CPU71は、ステップ1020にて算出された複数の燃焼割合変化量ΔMFBの中から最大値(燃焼割合最大変化速度)ΔMFBmaxを取得する(図11を参照。)。更に、CPU71は、その燃焼割合最大変化速度ΔMFBmaxに対するクランク角度θをクランク角度CAmaxとして取得するとともに、クランク角度CAmaxにおける実燃焼割合MFBθact(k−1)をMFBcamaxとして取得する。
ステップ1040:CPU71は、ステップ1030にて求めた各値と直前の燃焼行程に対する点火時期SA(=SA(k−1))を下記(8)式に適用することにより、図11に示した全燃焼対応期間CPを推定(算出)する。全燃焼対応期間CPはクランク角度の幅(クランク角度の大きさ、単位(°))によって表される。
Figure 0004761072
上記(8)式により求められる全燃焼対応期間CPは、点火時期SA(k−1)から燃焼終了時期CAeまでの期間である。燃焼終了時期CAeは燃焼室内の混合ガスの燃焼が実質的に終了する時期である。燃焼終了時期CAeは以下の手法により求められるから、上記(8)式が得られる。
(1)図11に示したように、実燃焼割合MFBθact(k−1)の変化を近似する直線(外挿線)Lextを引く。直線Lextは、ステップ1030にて得られた燃焼割合変化量ΔMFBの最大値ΔMFBmax(燃焼割合最大変化速度)に対応するクランク角度CAmaxと、そのクランク角度CAmaxにおける実燃焼割合MFBcamaxと、によって定まる点Pmaxを通る。直線Lextの傾きはΔMFBmax/Nである。
(2)直線Lextが燃焼割合100%に到達した点Peに対応するクランク角度CAeを燃焼終了時期CAeとして求める。なお、燃焼割合100%は、クランク角度θs(BTDC 60°)からクランク角度θe(ATDC 60°)までに燃焼室において燃焼した総ての燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の総量に対応する値であり、(3)式の分母に相当する値である。
ステップ1050:CPU71は、ATDC8°における実燃焼割合MFB8act(k−1)から補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)を減じることにより補正基本量eMDLを算出する。補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)は、後述する図15に示したルーチンのステップ1570にて求められている。
ステップ1060:CPU71は、ステップ1050にて取得された補正基本量eMDLに対しローパスフィルタ処理を施すことにより前述した補正量HMFBを算出する。このローパスフィルタ処理は、例えば、簡易的に下記(9)式に基いて行われる。(9)式における値nは、0より大きく1より小さい所定の定数である。
Figure 0004761072
加えて、CPU71は図12に示したVVT進角量を制御するためのルーチンを、クランク角度が所定のクランク角度(例えば、燃焼行程が実質的に終了した後の所定クランク角度(例えば、BTDC180°)に一致する毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図12のルーチンの処理をステップ1200から開始してステップ1210に進み、先に説明したステップ1040にて求めた全燃焼対応期間CPが目標全燃焼対応期間CPtgtより大きいか否かを判定する。
目標全燃焼対応期間CPtgtは、HC及びCOの排出量が増加しない範囲内であって最も長いオーバーラップ期間(最も進角側のVVT進角量)に対応する全燃焼対応期間CPとなるように予め定められている。なお、オーバーラップ期間が長くなると、燃焼室から吸気ポートに排出され且つその後に燃焼室に再び吸入される既燃ガス(「内部EGRガス」又は「自己EGRガス」とも称呼される。)の量が増大する。その結果、燃焼速度が小さくなるので全燃焼対応期間CPは長くなる。反対に、オーバーラップ期間が短くなると、内部EGRガスの量が減少する。その結果、燃焼速度が大きくなるので全燃焼対応期間CPは短くなる。
ステップ1210の判定時点において、全燃焼対応期間CPが目標全燃焼対応期間CPtgtより大きければ、燃焼速度が小さすぎる(既燃ガス量が過大である)ことを意味する。従って、CPU71はステップ1220に進んでオーバーラップ期間を短くして燃焼速度が増大するように吸気弁開弁時期IOを所定角度ΔIOだけ遅角する。即ち、VVT進角量を減少する。一方、全燃焼対応期間CPが目標全燃焼対応期間CPtgtより小さければ、燃焼速度が大きすぎる(既燃ガス量が過小である)ことを意味する。従って、CPU71はステップ1230に進んでオーバーラップ期間を長くして燃焼速度が減少するように吸気弁開弁時期IOを所定角度ΔIOだけ進角する。即ち、VVT進角量を増大する。
なお、本例において、吸気弁開弁時期IOは、吸気上死点(排気上死点)から吸気上死点前に向って進角するほど絶対値が大きくなる正の値をとり、吸気上死点から吸気上死点後に向って遅角するほど絶対値が大きくなる負の値をとるクランク角度により表される。
その後、CPU71はステップ1240に進み、上記ステップ1220又はステップ1230にて決定された吸気弁開弁時期IOにて吸気弁32が開弁するように、吸気弁開弁時期IOを設定する。この結果、吸気弁制御装置33が吸気弁32を設定された吸気弁開弁時期IOにて開弁させる。なお、吸気弁制御装置33は、吸気弁開示弁時期IOに一定の吸気弁開弁角度IOθを加えた時期が吸気弁閉弁時期ICとなるように、吸気弁32を閉弁させる。
次いで、CPU71はステップ1250に進み、吸気弁開弁時期IOから吸気弁開弁基準時期IOintを減じた値を今回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k)として格納する。吸気弁開弁基準時期IOintは、吸気弁開弁時期が変更され得る範囲内において最も遅角側に設定された場合の吸気弁開弁時期IOである。その後、CPU71はステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ところで、図13は、VVT進角量に対し、CO及びHCの排出量並びに全燃焼対応期間CPがどのように変化するかについての測定結果を表している。この測定において、点火時期SAは8°燃焼割合MFB8が、20、30、40及び50%となるように変化させられた。
図13から理解されるように、点火時期SAが変動しても、VVT進角量と全燃焼対応期間CPとは実質的に1:1の関係を維持する。換言すると、VVT進角量(オーバーラップ期間、既燃ガス量)がある一定値であれば、点火時期SAが変化しても、全燃焼対応期間CPは殆ど変化しない。従って、領域Aにより示したように、CO及びHCの排出量が増大しない範囲(COの排出量が減少せず且つHCの排出量が増大しない範囲)においてVVT進角量が出来るだけ大きくなる(オーバーラップ期間が最長となって、既燃ガス量が最大となる)ようにVVT進角量を制御するには、全燃焼対応期間CPが領域Aにおける全燃焼対応期間CP(図13の例ではCP=70°)と一致するようにVVT進角量を制御すれば良い。
そこで、第1制御装置は、全燃焼対応期間CPが予め定められた目標全燃焼対応期間CPtgtと一致するようにVVT進角量を制御する。目標全燃焼対応期間CPtgtは、CO及びHCの排出量が増大しない範囲においてオーバーラップ期間ができるだけ長くなる期間に設定される。従って、第1制御装置は、HC及びCOの排出量の増大を招くことなくNOxの排出量を低減し、且つ、ポンピングロスを低減することができる。その結果、排ガスの排出量が小さく、且つ、優れた燃費の内燃機関が提供される。
なお、図13は、VVT進角量に対する、実質燃焼期間CPaとCO及びHCの排出量の関係も示している。実質燃焼期間CPaは、図11に示したように、直線Lextにより近似された燃焼割合が0から100%に到達するまでのクランク角度幅である。図13の領域Aに対する領域Bに示したように、CO及びHCの排出量が増大を開始するVVT進角量に対応する実質燃焼期間CPaは、点火時期SAが変化すると変動する。従って、実質燃焼期間CPaよりも上述した全燃焼対応期間CPをVVT進角量のフィードバック制御に使用する方が好ましいということが理解される。
図14は、別の機関10について、実質燃焼期間CPaとHC排出量との関係、及び、全燃焼対応期間CPとHC排出量との関係を測定した結果を示すグラフである。この測定において、点火時期SAは、8°燃焼割合MFB8が、20、30、40及び50%となるように変化させられた。
図14の(A)によれば、8°燃焼割合MFB8が、20、30、40及び50%であるとき、HCの排出量が増大しない範囲における実質燃焼期間CPaの最適値は、直線L1、L2、L3及びL4により示したように、点火時期SAに依存して変化し、ある幅Wを有するように存在している。換言すると、ある点火時期にて点火が行われている状態において実質燃焼期間CPaを最適な目標燃焼期間に一致させるようにVVT進角量をフィードバック制御しても、点火時期が変化した場合にはそのVVT進角量が過大又は過小になってしまうので、HC及びCOの排出量の増大を招くか、又は、NOxの排出量の増大及びポンピングロスの低減幅が減少してしまう場合が生じる。
図14の(B)によれば、8°燃焼割合MFB8が、20、30、40及び50%に一致するように点火時期SAが変更されても、HCの排出量が増大し始める全燃焼対応期間CPは直線Loptにて示した一点のみとなる。従って、直線Loptにより示される全燃焼対応期間CPを目標全燃焼対応期間CPtgtに設定し、実際に推定される全燃焼対応期間CPがこの目標全燃焼対応期間CPtgtと一致するようにVVT進角量を制御すれば、点火時期SAに関わらずHCの排出量(従って、COの排出量)が増大しない範囲においてオーバーラップ期間をできるだけ長く(既燃ガス量をできるだけ多く)設定することができ、以って、NOxの排出量が低減でき且つポンピングロスを低減できる。
以上の説明から理解されるように、第1制御装置は、全燃焼対応期間CPを用いてVVT進角量を制御しているので、オーバーラップ量が適切となり、既燃ガス量が適量となる。この結果、第1制御装置は、HC及びCOの排出量の増大を招くことなく、NOxの排出量を低減し、且つ、ポンピングロスを低減することができる。
一方、CPU71は図15に示したルーチンを、クランク角度が燃焼行程開始直前の所定のクランク角度(例えば、BTDC90°)に一致する毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図15のルーチンの処理をステップ1500から開始し、ステップ1510〜ステップ1560にて以下の処理を行った後、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1510:CPU71は、燃焼状態に影響を及ぼす運転状態量として、現時点の機関回転速度NE(k)、現時点の機関の負荷KL(k)、現時点のVVT進角量VVT(k)及び前回の燃焼行程における点火時期SA(k−1)を入力し、それらを機関回転速度NE、負荷KL、VVT進角量VVT及び点火時期SAとして格納する。
ステップ1520:CPU71は、ステップ1510にて格納した運転状態量(NE,KL,VVT及びSA)を上記(4)式乃至(6)式により表された燃焼状態モデル(Wiebe関数)に適用するとともに、(4)式のクランク角度θに8°を代入することにより、計算燃焼割合MFB8cal(k)を算出する。
ステップ1530:CPU71は、ステップ1520にて求められた計算燃焼割合MFB8cal(k)に補正値HMFBを加えた値を補正後燃焼割合MFB8mfd(k)として格納する。補正値HMFBは、図10のステップ1060にて求められている。
ステップ1540:CPU71は、8°目標燃焼割合MFB8tgtを決定する。ここでは、目標燃焼割合MFB8tgtは一定値である。なお、目標燃焼割合決定用の機関10の運転状態を表すパラメータに基づいて8°目標燃焼割合MFB8tgtを変更してもよい。目標燃焼割合決定用の運転状態を表すパラメータは、負荷KL及び機関回転速度NEである。この運転状態を表すパラメータとして、冷却水温THW等の他のパラメータを加えてもよい。
ステップ1550:CPU71は、目標燃焼割合MFB8tgtから補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を減じることによってフィードバック制御用偏差dMFB8(k)を算出する。
ステップ1560:CPU71は、フィードバック制御用偏差dMFB8(k)の値が「0」となるように点火時期をフィードバック制御(比例・積分制御)する。
ステップ1570:CPU71は、図10のステップ1050にて使用される補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)にステップ1530にて算出された補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を格納する。
以上、説明したように、第1実施形態に係る点火時期制御装置によれば、ATDC8°における実燃焼割合MFB8act(k−1)から補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)を減じることにより補正基本量eMDLを算出し(図10のステップ1050)、補正基本量eMDLをローパスフィルタ処理した補正量HMFBを算出する(ステップ1060)。そして、この点火時期制御装置は、計算燃焼割合MFB8cal(k)に補正値HMFBを加えた値を補正後燃焼割合MFB8mfd(k)として求め(図15のステップ1530)、その補正後燃焼割合MFB8mfd(k)が目標燃焼割合MFB8tgtと一致するように今回の点火時期SAを決定する(ステップ1540〜ステップ1560)。
従って、燃焼行程開始前(点火時期計算前)において補正後燃焼割合MFB8mfd(k)が精度良く求められるので、加速時のような過渡運転状態においても点火時期を精度良く制御することができる。また、VVT進角量がHC及びCOの排出量が増大しない範囲において大きくなる(オーバーラップ期間が長くなる)ので、機関10のトルク及び燃費を改善することができる。なお、第1実施形態に係る点火時期制御装置は、「外乱オブザーバ」手法により補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を求めている装置ということもできる。
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る点火時期制御装置(以下、「第2制御装置」と称呼する。)について説明する。第2制御装置は、電気制御装置70の機能(作動)のみが上記第1制御装置と相違している。従って、以下、第1制御装置との相違点について説明する。
<点火時期制御の概要>
第2制御装置は、第1制御装置と同様、今回の燃焼行程に対する8°燃焼割合MFB8を今回の燃焼行程前の時点にて燃焼状態モデルを用いて予測するとともに、その予測された値を補正値により補正する。そして、その補正された8°燃焼割合が目標燃焼割合MFB8tgtと一致するように点火時期SAをフィードバック制御する。但し、第2制御装置は、第1制御装置と同様に推定された今回の燃焼行程に対する8°燃焼割合MFB8を第1制御装置とは異なる方法により補正する。
第1制御装置において、補正後燃焼割合MFB8mfd(k)は前回の燃焼行程における点火時期SA(k−1)に基いて決定される。従って、燃焼状態モデルの有する誤差を補償することを目的として実燃焼割合MFB8act(k−1)と比較される補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)は、前々回(2回前)の点火時期SA(k−2)に基いて決定されていることになる。一方、実燃焼割合MFB8act(k−1)は前回(1回前)の点火時期SA(k−1)にて点火及び燃焼が行われた結果として得られる値である。つまり、実燃焼割合MFB8act(k−1)と補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)とは、その基本となっている点火時期SAが相違している。このため、実燃焼割合MFB8act(k−1)と補正後燃焼割合MFB8mfd(k−1)との差である補正基本量eMDLは、燃焼状態モデルが有する誤差そのものを表す値とはならないので、ローパスフィルタ処理を行って補正値HMFBを求める必要があり、補正が遅れる場合があった。
<点火時期制御の詳細>
第2制御装置は、上述した第1制御装置が有する課題に着目した装置であり、その機能ブロック図である図16に示した各手段を有する。以下、各ブロックの機能を順に説明する。
目標値設定手段B1は、上記目標値設定手段A1と同一の手段である。即ち、目標値設定手段B1は、目標燃焼割合MFB8tgtを出力するようになっている。
第1MFB計算モデルB2は、上記MFB計算モデルA2と同一の手段である。即ち、第1MFB計算モデルB2は、上記MFB計算モデルA2が備える燃焼状態モデル(即ち、上記(4)式乃至(6)式により表されたWiebe関数)を含んでいる。第1MFB計算モデルB2は、燃焼状態に影響を及ぼす運転状態量として、前回の燃焼行程における点火時期SA(k−1)、今回の燃焼行程に対する(現時点の)機関の負荷KL(k)、今回の燃焼行程に対する機関回転速度NE(k)及び今回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k)を入力するようになっている。点火時期SA(k−1)は、点火時期データ遅延手段A3と同一の手段である点火時期データ遅延手段B3から取得される。
第1MFB計算モデルB2は、次に到来しようとしている燃焼行程(今回の燃焼行程)が開始する直前の計算タイミングにて、前記入力した運転状態量(SA(k−1)、KL(k)、NE(k)及びVVT(k))を前記燃焼状態モデルに適用することにより、今回の燃焼行程中の所定タイミングであるATDC 8°における燃焼割合MFB8(k)(即ち、計算燃焼割合MFB8cal(k))を予測(算出)するようになっている。
予測燃焼状態量補正手段B4は、予測燃焼状態量である計算燃焼割合MFB8cal(k)をモデル誤差量GosaMDL(補正量)によって補正することにより補正後予測燃焼状態量である補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を取得するようになっている。より具体的に述べると、予測燃焼状態量補正手段B4は、計算燃焼割合MFB8cal(k)にモデル誤差量GosaMDLを加えることにより補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を取得する。モデル誤差量GosaMDLは後述するモデル誤差量算出手段B10から出力される。
フィードバック制御用偏差算出手段B5は、上記フィードバック制御用偏差算出手段A5と同一の手段である。即ち、フィードバック制御用偏差算出手段B5は、目標燃焼割合MFB8tgtから補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を減じることによってフィードバック制御用偏差dMFB8(=dMFB8(k))を算出する。
フィードバックコントローラB6は、上記フィードバックコントローラA6と同一の手段である。即ち、フィードバックコントローラB6は、フィードバック制御用偏差dMFB8(k)が0になるように点火時期SA(k)を決定する。換言すると、フィードバック制御用偏差算出手段B5及びフィードバックコントローラB6は、今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量である補正後燃焼割合MFB8mfd(k)と所定の目標燃焼状態量である目標燃焼割合MFB8tgtとが一致するように機関10の点火時期SA(k)をフィードバック制御(比例・積分制御)する点火時期制御手段を構成している。
実MFB算出手段B7は、上記実MFB算出手段A7と同一の手段である。即ち、実MFB算出手段B7は、前回の燃焼行程中のATDC 8°における燃焼割合MFB8(k−1)である「実燃焼割合MFB8act(k−1)」を、上記(3)式のθに8°を代入すること等により算出するようになっている。
運転状態量遅延手段B8は、燃焼状態に影響を及ぼす運転状態量である今回の燃焼行程に対する機関の負荷KL(k)、今回の燃焼行程に対する機関回転速度NE(k)及び今回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k)を入力するようになっている。運転状態量遅延手段B8は、これらのデータをRAM73内に格納し、格納したデータの中から前回の燃焼行程に対する機関の負荷KL(k−1)、前回の燃焼行程に対する機関回転速度NE(k−1)及び前回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k−1)を出力するようになっている。
第2MFB計算モデルB9は、上記MFB計算モデルA2及び上記第1MFB計算モデルB2が備える燃焼状態モデルと同一の燃焼状態モデル(即ち、上記(4)式乃至(6)式により表されたWiebe関数)を備えている。第2MFB計算モデルB9は、点火時期データ遅延手段B3から出力される点火時期SA(k−1)を入力するとともに、運転状態量遅延手段B8から出力される運転状態量(負荷KL(k−1)、NE(k−1)及びVVT(k−1))を入力するようになっている。
更に、第2MFB計算モデルB9は、前記入力した運転状態量(SA(k−1)、KL(k−1)、NE(k−1)及びVVT(k−1))を前記燃焼状態モデルに適用することにより、前回の燃焼行程中の所定タイミングであるATDC 8°における燃焼割合MFB8(k−1)(即ち、計算燃焼割合MFB8cal(k−1))を予測(算出)するようになっている。
モデル誤差量算出手段B10は、実燃焼割合MFB8act(k−1)から計算燃焼割合MFB8cal(k−1)を減じることによりモデル誤差量GosaMDLを算出するようになっている。
以上の各手段により、第2制御装置は、モデル誤差量GosaMDLを、実燃焼割合MFB8act(k−1)から計算燃焼割合MFB8cal(k−1)を減じることにより取得する。この実燃焼割合MFB8act(k−1)と計算燃焼割合MFB8cal(k−1)とは、互いに同じ点火時期SA(k−1)及び運転状態量(KL(k−1)、NE(k−1)及びVVT(k−1))によりもたらされた値である。しかも、計算燃焼割合MFB8cal(k−1)は、燃焼状態モデルに基づいて算出された値に何らの補正も加えられていない値である。
従って、モデル誤差量GosaMDLは、燃焼状態モデルが有するモデル誤差を直接的に反映した値となるので、モデル誤差量GosaMDLにより今回の燃焼行程に対して予測された計算燃焼割合MFB8cal(k)を補正する第2制御装置は、より直接的に燃焼状態モデルが有するモデル誤差を補償することができる。その結果、点火時期制御に使用される補正後燃焼割合MFB8mfd(k)が迅速且つより精度良く推定されるので、過渡運転状態を含めて機関の点火時期をより適正値に近づけることができる。
図17は、負荷KL及びVVT進角量VVTが変化した場合における各値の変化を測定した結果を示したタイムチャートである。図17において実線Daは第2制御装置における点火時期、破線Dbは従来の装置における点火時期を示している。また、実線Eaは第2制御装置における8°燃焼割合MFB8、破線Ebは従来の装置(実燃焼割合MFB8act(k−1)によって点火時期を定める装置)における8°燃焼割合MFB8を示している。なお、この例において目標燃焼割合MFB8tgtは60%である。
図17から明らかなように、従来の装置による8°燃焼割合MFB8は負荷KL及びVVT進角量VVTが変化してから収束するまでに長い時間Tbを要し、且つ、8°燃焼割合MFB8の変動幅もWbと大きくなっている。これに対し、第2制御装置による8°燃焼割合MFB8は負荷KL及びVVT進角量VVTが変化してから短時間Taにて収束し、且つ、8°燃焼割合MFB8の変動幅もWaと小さくなっている。従って、第2制御装置によれば、過渡運転状態においても点火時期SAが適切に制御され、その結果、8°燃焼割合MFB8が目標燃焼割合MFB8tgtから大きく偏移することがないことが確認された。
(実際の作動)
次に、第2制御装置の実際の作動について説明する。なお、以下に説明するルーチンは電気制御装置70のCPU71が特定気筒に対して実行するルーチンである。CPU71は他の気筒に対しても同様なルーチンを実行するようになっている。
CPU71は、第1実施形態と同様、図示しない筒内圧取得ルーチンを微小クランク角度が経過する毎に実行し、そのルーチンが実行された時点のクランク角度θと筒内圧Pc(θ)とをRAM73に格納している。
更に、CPU71は図18に示したルーチンを、クランク角度が「燃焼行程が実質的に終了した後の所定クランク角度(例えば、ATDC 160°)」に一致する毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図18のルーチンの処理をステップ1800から開始し、ステップ1810〜ステップ1840にて以下の処理を行う。
ステップ1810:CPU71は、ステップ1010と同様に、上記(3)式を用いて各クランク角度θに対する実燃焼割合MFBθact(k−1)を算出する。算出される実燃焼割合MFBθact(k−1)には実燃焼割合MFB8act(k−1)が含まれている。
ステップ1820:CPU71は、ステップ1020と同様に、N°(ここではクランク角度15°)幅における実燃焼割合MFBθact(k−1)の変化量ΔMFBを、前記所定の微小クランク角度毎に算出する。
ステップ1830:CPU71は、ステップ1030と同様に、ステップ1820にて算出された燃焼割合変化量ΔMFBの中から最大値(燃焼割合最大変化速度)ΔMFBmaxを取得する。更に、CPU71は、その燃焼割合最大変化速度ΔMFBmaxに対するクランク角度θをクランク角度CAmaxとして取得するとともに、クランク角度CAmaxにおける実燃焼割合MFBθact(k−1)をMFBcamaxとして取得する。
ステップ1840:CPU71は、ステップ1040と同様に、ステップ1830にて求めた各値と直前の燃焼に対する点火時期SA(k−1)を上記(8)式に適用することにより全燃焼対応期間CPを推定(算出)する。
次に、CPU71は上述したステップ1210乃至ステップ1240の処理を実行する。これにより、全燃焼対応期間CPが目標全燃焼対応期間CPtgtと一致するようにVVT進角量が制御される。次いで、CPU71はステップ1850に進み、この時点において今回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k)として格納されている値を前回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k−1)として格納する。
次いで、CPU71はステップ1250に進み、吸気弁開弁時期IOから吸気弁開弁基準時期IOintを減じた値を今回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k)として格納する。吸気弁開弁基準時期IOintは、吸気弁開弁時期が変更され得る範囲内において最も遅角側に設定された場合の吸気弁開弁時期IOである。その後、CPU71はステップ1895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPU71は図19に示したルーチンを、クランク角度が所定のクランク角度(例えば、BTDC 90°)に一致する毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図19のルーチンの処理をステップ1900から開始し、ステップ1910〜ステップ1990の以下に述べる処理を行った後、ステップ1995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1910:CPU71は、燃焼状態に影響を及ぼす運転状態量として、前回の燃焼行程に対する運転状態量、即ち、前回の燃焼行程に対する機関回転速度NE(k−1)、前回の燃焼行程に対する機関の負荷KL(k−1)、前回の燃焼行程に対するVVT進角量VVT(k−1)及び前回の燃焼行程に対する点火時期SA(k−1)を入力し、それらを機関回転速度NE、負荷KL、VVT進角量VVT及び点火時期SAとして格納する。
ステップ1920:CPU71は、ステップ1910にて格納した運転状態量(NE,KL,VVT及びSA)を上記(4)式乃至(6)式により表された燃焼状態モデル(Wiebe関数)に適用するとともに、(4)式のクランク角度θに8°を代入すること等により、計算燃焼割合MFB8cal(k−1)を算出する。計算燃焼割合MFB8cal(k−1)は、前回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態の予測量(前回予測燃焼状態量)である。
ステップ1930:CPU71は、図18のステップ1810にて求められている実燃焼割合MFB8act(k−1)から図19のステップ1920にて求められた計算燃焼割合MFB8cal(k−1)を減じることによってモデル誤差量GosaMDL(補正値)を算出する。
ステップ1940:CPU71は、燃焼状態に影響を及ぼす運転状態量として、今回の燃焼行程に対する(現時点の)機関回転速度NE(k)、今回の燃焼行程に対する(現時点の)機関の負荷KL(k)、今回の燃焼行程に対する(現時点の)VVT進角量VVT(k)及び前回の燃焼行程における点火時期SA(k−1)を入力し、それらを機関回転速度NE、負荷KL、VVT進角量VVT及び点火時期SAとして格納する。
ステップ1950:CPU71は、ステップ1940にて格納した運転状態量(NE,KL,VVT及びSA)を上記(4)式乃至(6)式により表された燃焼状態モデル(Wiebe関数)に適用するとともに、(4)式のクランク角度θに8°を代入することにより、計算燃焼割合MFB8cal(k)を算出する。計算燃焼割合MFB8cal(k)は、今回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を今回予測燃焼状態量である。
ステップ1960:CPU71は、ステップ1950にて求められた計算燃焼割合MFB8cal(k)にステップ1930にて求められたモデル誤差量GosaMDLを加えた値を補正後燃焼割合MFB8mfd(k)として格納する。
ステップ1970:CPU71は、ステップ1540と同様に、目標燃焼割合MFB8tgtを決定する。ここでは、目標燃焼割合MFB8tgtは一定値である。
ステップ1980:CPU71は、目標燃焼割合MFB8tgtから補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を減じることによりフィードバック制御用偏差dMFB8(=dMFB8(k))を算出する。
ステップ1990:CPU71は、フィードバック制御用偏差dMFB8(k)の値が「0」となるように点火時期をフィードバック制御(比例・積分制御)する。
以上、説明したように、第2制御装置によれば、燃焼状態モデルが有するモデル誤差を直接的に反映したモデル誤差量GosaMDLが求められ、そのモデル誤差量GosaMDLにより今回の燃焼行程に対して予測された計算燃焼割合MFB8cal(k)が補正される。その結果、点火時期制御に使用される補正後燃焼割合MFB8mfd(k)が遅れなく、且つ、より一層精度良く推定されるので、過渡運転状態を含めて機関の点火時期をより適正値に近づけることができる。
なお、上記第2装置において、筒内圧センサ65は、燃焼室内における混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量を実際に検出する燃焼状態検出センサに相当する。実MFB算出手段B7は、前記燃焼状態検出センサによって検出された物理量に基いて燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を実燃焼状態量(実燃焼割合MFB8act(k−1))として取得する実燃焼状態量取得手段に相当する。
第2MFB計算モデルB9は、運転状態量と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量との関係を記述する燃焼状態モデルを含むとともに前回の燃焼行程に対する運転状態量を同燃焼状態モデルに適用することにより前回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を前回予測燃焼状態量(計算燃焼割合MFB8cal(k−1))として取得する前回予測燃焼状態量取得手段に相当している。
モデル誤差量算出手段B10は、前記取得された前回予測燃焼状態量(計算燃焼割合MFB8cal(k−1))と、前記実燃焼状態量取得手段により取得された前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量(実燃焼割合MFB8act(k−1))と、の差をモデル誤差量(GosaMDL)として取得するモデル誤差量取得手段に相当している。
第1MFB計算モデルB2は、燃焼状態モデルを含むとともに今回の燃焼行程に対する運転状態量を同燃焼状態モデルに適用することにより今回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を今回予測燃焼状態量(計算燃焼割合MFB8cal(k))として取得する今回予測燃焼状態量取得手段に相当している。
予測燃焼状態量補正手段B4は、前記取得された今回予測燃焼状態量(計算燃焼割合MFB8cal(k))を前記モデル誤差量取得手段によって取得されたモデル誤差量(GosaMDL)によって補正して同今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量(補正後燃焼割合MFB8mfd(k))を取得するモデル誤差補償手段に相当している。なお、第2実施形態に係る点火時期制御装置は、「スミス予測器」により補正後燃焼割合MFB8mfd(k)を求めている装置ということもできる。
以上、本発明による点火時期制御装置の各実施形態について説明した。本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態においては、吸気弁制御装置33は吸気弁32の開弁時期及び閉弁時期のみを調整するように構成されているが、更に吸気弁32の開弁期間における最大リフト量を調整できるように構成されていてもよい。また、吸気弁制御装置33は、吸気弁32の開弁時期及び閉弁時期を互いに独立して調整することができるように構成されていてもよい。更に、上記実施形態において、吸気弁制御装置33に加え、排気弁35の閉弁時期、開弁時期、開弁期間中のリフト量等を独立して調整する排気弁制御装置が備えられてもよい。
また、上記実施形態において、燃焼速度に影響を与えるパラメータとして、燃料噴射量TAU、冷却水温THW及び空燃比A/Fを採用し、これらと下記(10)式乃至(13)式に基いて全燃焼対応期間CPを修正し、得られた修正値CPmfdを上記全燃焼対応期間に代えて使用することによりVVT進角量(吸気弁開弁時期IO)を制御してもよい。もちろん、これらの何れか一つ、又は、これらのうちの任意の二つの組み合わせによって全燃焼対応期間CPを修正してもよい。
Figure 0004761072
Figure 0004761072
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また、VVT進角量は、圧縮上死点からATDC15°までの燃焼割合MFBact(k−1)の変化量が一定の目標変化量となるように制御されてもよい。更に、上記各実施形態における「燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量」は、8°燃焼割合MFB8に限定されることはなく、例えば、7°燃焼割合MFB7や9°燃焼割合MFB9であってもよい。更に、吸気弁制御装置を備えない内燃機関に本発明を適用することもできる。この場合、8°燃焼割合MFB8を求める際に使用される上記VVT進角量VVTを一定値に置換しておけばよい。
本発明の第1実施形態に係る点火時期制御装置を適用した内燃機関の概略図である。 点火時期と8°燃焼割合と機関の発生トルクとの関係を示したグラフである。 図1に示した電気制御装置(点火時期制御装置)の機能ブロック図である。 点火時期を変更した場合における実際の燃焼割合のクランク角度に対する変化を示したグラフである。 Wiebe関数におけるパラメータαiを変化させ、他のパラメータc、d、及びαbを一定値としたときの変数xに対するyの変化を示したグラフである。 VVT進角量を変更した場合における実際の燃焼割合のクランク角度に対する変化を示したグラフである。 Wiebe関数におけるパラメータαbを変化させ、他のパラメータc、d、及びαiを一定値としたときの変数xに対するyの変化を示したグラフである。 加速時における点火時期、負荷、VVT進角量、実際の8°燃焼割合及び改良された燃焼状態モデルによって計算された計算8°燃焼割合MFB8の変化の様子を示したグラフである。 従来の制御装置と図1に示した点火時期制御装置とにおける各値の挙動を表したグラフである。 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 膨張行程(燃焼行程)における燃焼割合のクランク角度に対する変化の様子を示したグラフである。 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 点火時期を変化させた場合における、CO排出量、HC排出量、実質燃焼期間及び全燃焼対応期間のVVT進角量に対する変化の様子を示したグラフである。 図14の(A)は実質燃焼期間に対するHCの排出量を点火時期別に示したグラフであり、図14の(B)は全燃焼対応期間に対するHCの排出量を点火時期別に示したグラフである。 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る電気制御装置(点火時期制御装置)の機能ブロック図である。 負荷及びVVT進角量が変化した場合における各値の変化を示したタイムチャートである。 本発明の第2実施形態に係る電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
符号の説明
25…燃焼室、37…点火プラグ、38…イグナイタ、39…インジェクタ、65…筒内圧センサ、70…電気制御装置、A1…目標値設定手段、A2…MFB計算モデル、A3…点火時期データ遅延手段、A4…予測燃焼状態量補正手段、A5…フィードバック制御用偏差算出手段、A6…フィードバックコントローラ、A7…実MFB算出手段、A9…補正基本量算出手段、A10…ローパスフィルタ、B1…目標値設定手段、B2…第1MFB計算モデル、B3…点火時期データ遅延手段、B4…予測燃焼状態量補正手段、B5…フィードバック制御用偏差算出手段、B6…フィードバックコントローラ、B7…実MFB算出手段、B8…運転状態量遅延手段、B9…第2MFB計算モデル、B10…モデル誤差量算出手段。

Claims (6)

  1. 内燃機関の点火時期制御装置であって、
    前記機関の燃焼室内における混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量を実際に検出する燃焼状態検出センサと、
    前記燃焼状態検出センサによって検出された物理量に基いて燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を実燃焼状態量として取得する実燃焼状態量取得手段と、
    前記燃焼状態検出センサが検出する物理量と相違し且つ前記機関の運転状態を表す物理量である運転状態量を取得する運転状態量取得手段と、
    前記運転状態量と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量との関係を記述する燃焼状態モデルを含むとともに前記運転状態量取得手段によって取得された運転状態量を同燃焼状態モデルに適用することにより前記燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を予測燃焼状態量として取得する予測燃焼状態量取得手段と、
    前記予測燃焼状態量を補正量によって補正することにより補正後予測燃焼状態量を取得する予測燃焼状態量補正手段と、
    前記予測燃焼状態量取得手段と前記予測燃焼状態量補正手段とにより前回の燃焼行程に対して取得された補正後予測燃焼状態量と、前記実燃焼状態量取得手段により同前回の燃焼行程に対して取得された実燃焼状態量と、の差、に基づいて前記補正量を算出する補正量算出手段と、
    前記予測燃焼状態量補正手段が前記補正量算出手段により算出された補正量によって前記予測燃焼状態量取得手段により取得される今回の燃焼行程に対する前記予測燃焼状態量を補正することにより取得される同今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量に基づいて前記機関の点火時期を制御する点火時期制手段と、
    を備えた点火時期制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記予測燃焼状態量取得手段は、前記前回の燃焼行程に対する点火時期と前記運転状態量取得手段により取得された前記今回の燃焼行程に対する点火時期以外の運転状態量とを前記燃焼状態モデルに適用することにより、前記今回の燃焼行程に対する予測燃焼状態量を取得するように構成された点火時期制御装置。
  3. 内燃機関の点火時期制御装置であって、
    前記機関の燃焼室内における混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量を実際に検出する燃焼状態検出センサと、
    前記燃焼状態検出センサによって検出された物理量に基いて燃焼行程の特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を実燃焼状態量として取得する実燃焼状態量取得手段と、
    前記燃焼状態検出センサが検出する物理量と相違し且つ前記機関の運転状態を表す物理量である運転状態量を取得する運転状態量取得手段と、
    前記運転状態量と燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量との関係を記述する燃焼状態モデルを含むとともに前記運転状態量取得手段によって取得された前回の燃焼行程に対する運転状態量を同燃焼状態モデルに適用することにより前回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を前回予測燃焼状態量として取得する前回予測燃焼状態量取得手段と、
    前記取得された前回予測燃焼状態量と、前記実燃焼状態量取得手段により取得された前回の燃焼行程に対する実燃焼状態量と、の差をモデル誤差量として取得するモデル誤差量取得手段と、
    前記燃焼状態モデルを含むとともに前記運転状態量取得手段によって取得された今回の燃焼行程に対する運転状態量を同燃焼状態モデルに適用することにより今回の燃焼行程の前記特定タイミングにおける燃焼状態を表す量を今回予測燃焼状態量として取得する今回予測燃焼状態量取得手段と、
    前記取得された今回予測燃焼状態量を前記モデル誤差量取得手段によって取得されたモデル誤差量によって補正して同今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量を取得するモデル誤差補償手段と、
    前記取得された今回の燃焼行程に対する補正後予測燃焼状態量に基づいて前記機関の点火時期を制御する点火時期制御手段と、
    を備えた点火時期制御装置。
  4. 請求項3に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記前回予測燃焼状態量取得手段は、前記前回の燃焼行程に対する点火時期と前記運転状態量取得手段により取得された前記前回の燃焼行程に対する点火時期以外の運転状態量とを前記燃焼状態モデルに適用することにより前記前回予測燃焼状態量を取得するように構成され、
    前記今回予測燃焼状態量取得手段は、前記前回の燃焼行程に対する点火時期と前記運転状態量取得手段により取得された前記今回の燃焼行程に対する点火時期以外の運転状態量とを前記燃焼状態モデルに適用することにより前記今回予測燃焼状態量を取得するように構成された点火時期制御装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記燃焼状態検出センサは前記混合気の燃焼状態に応じて変化する物理量として前記燃焼室内の圧力である筒内圧を検出する筒内圧センサであり、
    前記実燃焼状態量取得手段は前記実燃焼状態量として前記燃焼室において燃焼した総ての燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の総量に対する前記特定タイミングまでに同燃焼室において燃焼した燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の積算量の割合である燃焼割合を取得するように構成され、
    前記燃焼状態モデルは前記運転状態量と前記燃焼行程の所定タイミングにおける燃焼状態を表す量としての燃焼割合との関係を記述してなる点火時期制御装置。
  6. 請求項5に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
    前記燃焼状態モデルは、圧縮上死点後のクランク角度θにおける燃焼割合MFBθを、
    MFBθ=1−exp{−c・((θ+αi)/αb)d}
    により近似するWiebe関数であり、
    パラメータc及びパラメータdは一定値であり、パラメータαiは点火時期に基いて変化し、パラメータαbは吸気弁と排気弁とが同時に開弁するオーバーラップ期間に基いて変化するように構成されたモデルである点火時期制御装置。
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