本発明は、減衰装置、燃焼器及びガスタービンに関するものである。特に、この発明は、音響性能を低下させることなくコンパクト化を図ることのできる減衰装置、及びこの減衰装置を備えた燃焼器並びにガスタービンに関するものである。
ガスタービンは、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを有しており、圧縮機では空気を取り込んで圧縮して高圧にし、高圧になった空気を燃焼器に送り込む。燃焼器では、高圧の空気に対して燃料を吹き出して燃料を燃焼させる。燃料が燃焼することにより発生する高温の燃焼ガスは、前記タービンに送られ、この高温の燃焼ガスがタービンを駆動する。このタービンの回転軸と前記圧縮機の回転軸とは一体となって回転するため、タービンがこのように駆動することにより、圧縮機も駆動し、上述したように空気を取り入れて圧縮をする。
このように作動するガスタービンは、上記のように燃料が燃焼する際に燃焼振動が発生する場合があり、この燃焼振動は、ガスタービン運転時の騒音や振動の原因となっていた。特に、近年のガスタービンでは、運転時の環境への影響を考慮して排出ガスの低NOx(窒素酸化物)化が図られているが、低NOx化を図るためには燃料の希薄燃焼が多用される。しかし、希薄燃焼は燃焼が不安定になり易く、このため燃焼振動が発生し易くなっていた。そこで、従来のガスタービンでは、振動の減衰装置を燃焼器の各部に装備することにより、燃焼振動を抑制していた。例えば、特許文献1では、尾筒に音響ライナを環装している。また、特許文献2では、バイパスダクトに音響ダンパを設けている。これらの減衰装置は共鳴空間を有しており、それぞれ特定周波数領域の振動を共鳴空間で共鳴させることにより、燃焼振動を減衰し抑制していた。
特開2002−174427号公報
特開2004−183943号公報
しかしながら、上記のガスタービンに設けられる音響ライナや音響ダンパなどの減衰装置は、それぞれ特定の周波数領域の振動を抑制する効果はあるが、それぞれ振動を抑制する効果のある周波数領域が限られている。一方、ガスタービンの運転中には複数の周波数領域での燃焼振動が発生する可能性があるが、それぞれの周波数領域の振動を抑制する効果のある減衰装置を複数設けると、減衰装置の占有スペースが大きくなってしまう虞があった。このように減速装置の占有スペースが大きくなると、メンテナンス性の低下を招く虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることのできる減衰装置、燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る減衰装置は、多孔板とハウジングとからなり、前記多孔板と前記ハウジングとによって構成される音響ライナ共鳴空間を有する音響ライナと、前記ハウジングに接続され、且つ、内側に前記音響ライナ共鳴空間と連通する音響ダンパ共鳴空間を有する音響部を備える音響ダンパと、前記音響部が有し、円形の配管によって形成された円形配管部と、前記音響部が有し、2つの接続部を有すると共に一方の前記接続部から他方の前記接続部に向かうに従って流路面積が漸次変化し、且つ、前記接続部のうち流路面積が小さい側の接続部である円形配管接続部は前記円形配管部に接続され、前記接続部のうち流路面積が大きい側の接続部である音響ライナ接続部は前記ハウジングに接続されているテーパ部と、前記音響ダンパ共鳴空間に設けられる流体抵抗部材と、前記音響ダンパに備えられると共に少なくとも前記流体抵抗部材の両端部の近傍に配設され、前記音響部を複数に分割可能な着脱部と、を具備することを特徴とする。
この発明では、多孔板との間に音響ライナ共鳴空間を有するハウジングに音響ダンパの音響部を接続することによって、音響ダンパ共鳴空間を音響ライナ共鳴空間に連通させている。これにより、音響ライナで共鳴する周波数領域の振動は音響ライナで減衰され、音響ダンパで共鳴する周波数領域の振動は、音響ライナ共鳴空間を介して音響ダンパ共鳴空間に伝えられるので、音響ダンパで減衰される。従って、音響ライナで減衰できる周波数領域の振動と、音響ダンパで減衰できる周波数領域の振動とを減衰することができる。また、音響ダンパを音響ライナに接続することにより、音響ライナや音響ダンパなどの減衰装置全体のコンパクト化を図ることができ、減衰装置の占有スペースを減少させることができる。これらの結果、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響ダンパは着脱部が備えられており、前記音響部は、前記着脱部によって少なくとも2以上に分割可能な分割構造で形成されていることを特徴とする。
この発明では、音響ダンパの音響部を分割構造で形成することにより、点検や部品の交換などの際に、分解することにより部分ごとに点検や交換を行うことができる。この結果、メンテナンス性を、さらに向上させることができる。また、音響部を分割構造にすることにより、共鳴させる振動の周波数領域を調整する際に、音響部を交換したり追加したりすることにより、音響ダンパ共鳴空間の容積を容易に変更することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響部は分岐部を有しており、前記音響部は、前記分岐部によって少なくとも2以上に分岐していることを特徴とする。
この発明では、音響部を分岐させることにより、音響部を、それぞれ異なる周波数領域の振動の減衰に効果のある複数の部分に分岐することができる。これにより、複数の周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響部は湾曲部を有していることを特徴とする。
この発明では、音響部に湾曲部を設けることにより、音響ダンパに可撓性を持たせることができる。これにより、当該減衰装置を装備するものが熱によって伸縮したり、振動等による動きが生じたりした場合でも、音響部は湾曲部で撓むことができるので、これらの作用による音響部への応力を緩和することができる。この結果、減衰装置の破損を抑制し、耐久性を向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響ダンパは流体抵抗部材を有しており、前記流体抵抗部材は、前記音響ダンパ共鳴空間に設けられていることを特徴とする。
この発明では、音響ダンパ共鳴空間に流体抵抗部材を設けることにより、この流体抵抗部材によっても減衰できる。また、減衰する振動の周波数領域を調整する際に、音響ダンパ共鳴空間の容積の変更のみでなく、流体抵抗部材による抵抗値を変更することによっても調整することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記流体抵抗部材は複数設けられており、前記複数の流体抵抗部材は、それぞれ離間していることを特徴とする。
この発明では、流体抵抗部材を複数設け、それぞれを離間させることにより、複数の周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響部は、円形の配管によって形成された円形配管部を有することを特徴とする。
この発明では、音響部を円形の配管によって形成することにより、市販の配管部材を使用することができる。これにより、容易に音響部を製造することができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響部は、2つの接続部を有すると共に一方の前記接続部から他方の前記接続部に向かうに従って流路面積が漸次変化するテーパ部を有しており、前記テーパ部の前記接続部のうち流路面積が小さい側の接続部である円形配管接続部は前記円形配管部に接続され、前記テーパ部の前記接続部のうち流路面積が大きい側の接続部である音響ライナ接続部は前記ハウジングに接続されていることを特徴とする。
この発明では、音響ライナのハウジングと前記円形配管部との間にテーパ部を設けることにより、音響ライナ共鳴空間に対する音響ダンパ共鳴空間の開口面積を広くすることができる。これにより、円形配管部の径が細い場合でも、より多くの振動を音響ダンパで減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響部は共鳴室を有しており、前記共鳴室は、前記円形配管部に接続されていることを特徴とする。
この発明では、音響部に共鳴室を設けることにより、当該共鳴室で低周波領域の振動を抑制することができる。これにより、減衰することのできる周波数領域を、低周波方向に広げることができる。この結果、減衰性能が、さらに向上する。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響ライナは、環状に形成されていることを特徴とする。
この発明では、音響ライナを環状に形成しているので、音響ライナの内側で発生する振動を、当該音響ライナの全周で受けることができる。従って、音響ライナの内側から全方向に向かって伝えられる振動を、より確実に減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響ダンパは、前記ハウジングの外周面に接続されていることを特徴とする。
この発明では、音響ダンパをハウジングの外周面に接続しているので、断面積が大きい音響ダンパを、容易に設けることができる。つまり、ハウジングの幅方向における音響ダンパの幅を、ハウジングの同方向における幅と同程度にすることにより、容易に音響ダンパの断面積を確保できる。これにより、音響ダンパでより確実に広い範囲の振動を受けることができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響ダンパは、1つの前記ハウジングに複数接続されていることを特徴とする。
この発明では、1つのハウジングに音響ダンパを複数接続することにより、複数の音響ダンパで振動を減衰できるので、より確実に減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、1つの前記ハウジングに接続される複数の前記音響ダンパは、互いに前記音響ダンパ共鳴空間の容積が異なっていることを特徴とする。
この発明では、複数設ける音響ダンパが有する音響ダンパ共鳴空間の容積が、互いに異なっているので、それぞれの音響ダンパで異なる周波数領域の振動の減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る減衰装置は、前記音響ライナ共鳴空間には、1つまたは複数の仕切板が配設されており、前記音響ライナ共鳴空間は、前記仕切板によって複数の空間に区画されていることを特徴とする。
この発明では、音響ライナ共鳴空間を仕切板で複数の空間に区画しているので、区画された空間ごとに減衰する周波数領域を明確に分けることができ、より確実にその周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、この発明に係る燃焼器は、車室と尾筒とを備え、前記音響ライナを前記尾筒に環装することにより上述した減衰装置を備えることを特徴とする。
この発明では、燃焼器に上述した減衰装置を備えることにより、燃焼器による燃料の燃焼時の燃焼振動のうち、複数の周波数領域の振動を減衰することできる。また、音響ダンパが接続された音響ライナを燃焼器の尾筒に環装することにより、燃焼器の火炎付近の燃焼振動を音響ライナ及び音響ダンパで減衰できる。これにより、より効果的に燃焼振動を減衰することができる。さらに、燃焼器に装備する減衰装置として上述した減衰装置を装備することにより、燃焼器周辺の減衰装置の占有スペースを減少させることができる。これらの結果、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができる。
また、この発明に係る燃焼器は、前記音響部の一部が前記車室外に位置していることを特徴とする。
この発明では、音響部の一部を車室外に露出させることにより、当該露出している部分のメンテナンスを、車室の外から行うことができる。この結果、メンテナンス性を、さらに向上させることができる。
また、この発明に係る燃焼器は、前記音響部のうち、前記車室内に位置する部分に複数のパージ孔が形成されていることを特徴とする。
この発明では、音響部の車室内に位置する部分にパージ孔を形成することにより、音響ダンパ共鳴空間をパージすることができる。即ち、燃焼器の燃焼室の内圧と車室の内圧とを比較すると、車室の内圧の方が高いため、燃焼室に連通している音響ライナ共鳴空間や音響ダンパ共鳴空間の内圧は車室の内圧よりも低い。このため、音響部にパージ孔を形成することにより、車室内の空気がパージ孔から音響部の音響ダンパ共鳴空間に流れ込み、音響ダンパ共鳴空間をパージすることができる。これにより、音響ダンパ共鳴空間や音響ライナ共鳴空間に燃焼室から入り込んだ高温の空気や未燃焼の燃料を、燃焼室の方向に押し戻すことができる。従って、音響ダンパ共鳴空間や音響ライナ共鳴空間を綺麗な状態に維持できる。この結果、燃料の燃焼時の燃焼振動を安定して減衰させることができる。
また、この発明に係るガスタービンは、前記燃焼器を備えることを特徴とする。
この発明では、ガスタービンに上述した燃焼器を備えることにより、ガスタービン運転時の燃焼振動のうち、複数の周波数領域の振動を減衰することができる。また、音響装置全体のコンパクト化を図ることができるので、音響装置とその周辺に位置する機器の双方のメンテナンス性の向上を図ることができる。これらの結果、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができ、高品質なガスタービンを得ることができる。
本発明にかかる減衰装置、燃焼器及びガスタービンは、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明にかかる減衰装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例1に係る減衰装置を備えるガスタービンの断面図である。同図に示すガスタービン1には、空気の流れの上流側から下流側に向かって空気取入口2、圧縮機3、燃焼器10及びタービン4が設けられている。前記空気取入口2から取り込まれた空気は圧縮機3によって圧縮され、高温・高圧の圧縮空気となって燃焼器10へ送り込まれる。燃焼器10では、この圧縮空気に天然ガス等のガス燃料、或いは軽油や軽重油等の液体燃料を供給して燃料を燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスを生成させる。この高温・高圧の燃焼ガスは、後述する尾筒15内を通過した後、タービン4に噴射される。
図2は、図1に示す燃焼器の詳細図である。前記燃焼器10は、外筒11や車室ハウジング12の内側に内筒13や尾筒15などが設けられている。外筒11の内側には内筒13が設けられており、内筒13には、略円筒形に形成される当該内筒13の軸方向の端部の一方からパイロットノズル16やメインノズル17が配設されている。また、内筒13の軸方向の端部のうち、メインノズル17等が設けられている側の端部の反対側の端部には、尾筒15が接続されている。この尾筒15は筒状の形状で形成され、内側は後述する燃焼室19として形成されている。また尾筒15は、内筒13に接続されている側の反対側の端部に向かうに従って断面積が小さくなりつつ湾曲している。尾筒15は、この断面積が大きい方、つまり、内筒13側が、上述したように圧縮機3から送られてきた空気の流れの上流側となっており、断面積が小さくなりつつ湾曲している方が下流側となっている。また、車室ハウジング12の内側は車室18として形成されており、尾筒15は、この車室18に設けられている。
図3は、図2のA−A断面図である。前記尾筒15には、減衰装置20が設けられている。減衰装置20は音響ライナ21と音響ダンパ30とからなり、音響ライナ21が前記尾筒15の前記内筒13近傍の周囲に環装されている。この音響ライナ21は、複数の吸音孔23が形成され、円筒形の形状に形成された多孔板22と、この多孔板22の周囲に形成されたハウジング24とによって構成されている。なお、多孔板22に対する吸音孔23の開口率は、10%以下であるのが好ましい。また、多孔板22の内側、或いは音響ライナ21の内側は、尾筒15の内部の空間の一部となっており、この尾筒15の内部の空間は燃焼室19として形成されている。また、多孔板22はハウジング24によって外部から遮断されており、多孔板22とハウジング24との間の空間は、音響ライナ共鳴空間25として形成されている。
また、前記音響ダンパ30は音響ライナ21のハウジング24に接続されている。音響ダンパ30が接続されている方向は、音響ライナ21に対して音響ダンパ30が、尾筒15の下流側に位置する方向に接続されている。また、音響ダンパ30は内部に空間を有する音響部31を有しており、音響部31の内部の空間は音響ダンパ共鳴空間32として形成されている。また、この音響ダンパ共鳴空間32は、音響ダンパ30が上記のように音響ライナ21のハウジング24に接続されることにより、音響ライナ共鳴空間25と連通している。
図4は、図2のB−B矢視図である。前記音響ダンパ30の音響部31は、それぞれ内側に音響ダンパ共鳴空間32を有する、円形配管部33とテーパ部40とによって形成されている。円形配管部33は円筒形の形状で形成されている。また、テーパ部40は円形配管部33と前記ハウジング24との間に位置しており、音響ダンパ30はテーパ部40がハウジング24に接続されることによって、ハウジング24に接続されている。このテーパ部40は、音響ダンパ共鳴空間32を流れる空気の流通方向における両端部が接続部41となっており、一方は前記ハウジング24に接続され、他方は円形配管部33に接続されている。
接続部41のうち、ハウジング24に接続されている側の接続部41は音響ライナ接続部42として形成されており、音響ライナ接続部42がハウジング24に接続されることにより、音響ダンパ30は音響ライナ21に接続されている。このテーパ部40が接続される位置は、前記ハウジング24における、尾筒15の下流側に面している側の面に接続されている。また、円形配管部33に接続されている側の接続部41は円形配管接続部43として形成されており、この円形配管接続部43は円形配管部33の断面形状と同形状、即ち、円形の形状で形成されている。この円形配管接続部43は、前記音響ライナ接続部42よりも、尾筒15の下流方向に位置している。
これらの状態で音響ライナ21と円形配管部33との双方に接続されるテーパ部40の形状は、音響ダンパ共鳴空間32を流れる空気の流通方向と直交する方向における長さ、つまり、テーパ部40の幅は、音響ライナ接続部42から円形配管接続部43に向かうに従って狭くなっている。このため、テーパ部40の内側の音響ダンパ共鳴空間32の断面積、即ち、流路面積は漸次変化しており、流路面積は音響ライナ接続部42から円形配管接続部43に向かうに従って小さくなっている。これにより、音響ダンパ30は、円形配管部33の流路面積よりも大きい流路面積で音響ライナ21に対して開口している。
前記円形配管部33は、上述したように円筒形の形状で形成されており、例えば、市販の配管部材などが使用されている。前記テーパ部40は、円形配管接続部43が音響ライナ接続部42よりも尾筒15の下流側に位置しているため、円形配管接続部43に接続されるこの円形配管部33は、尾筒15の下流方向に向かって形成されている。さらに、円形配管部33は途中で湾曲しており、当該円形配管部33が形成している向きが変わっている。この湾曲している部分は湾曲部34となっており、湾曲部34は、尾筒15の方向に凸となるように円形配管部33が曲げられることにより形成されている。この湾曲部34により、尾筒15に沿って形成されている円形配管部33は、尾筒15から離れる方向に曲げられている。また、このように形成される円形配管部33の先端部35は半球状の形状となって閉塞している。
図5は、図4のC部詳細図である。また、この円形配管部33は複数に分割可能に形成されており、分割された各円形配管部33の接続部分には、着脱部の一部となる着脱フランジ36が形成されている。この着脱フランジ36は、各円形配管部33の端部においてフランジ状の形状で形成されている。分割された各円形配管部33は、着脱フランジ36同士を合わせ、双方の着脱フランジ36を一体で挟み込むと共に着脱部の一部である着脱カップリング37によって着脱フランジ36同士を挟み込むことにより、着脱可能に固定される。この着脱フランジ36及び着脱カップリング37により、複数に分割された円形配管部33は着脱可能となり、円形配管部33は複数に分割可能な分割構造で形成されている。また、円形配管部33は、支持部38によって車室18内に固定されており、減衰装置20は、尾筒15に環装される音響ライナ21と、支持部38で車室18内に固定される音響ダンパ30とによって固定され、車室18内に設けられている(図2)。
この実施例1に係る減衰装置は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記ガスタービン1を作動させると、圧縮機3が作動することによって圧縮された高温・高圧の空気が前記燃焼器10に送り込まれ、この圧縮空気に対してパイロットノズル16やメインノズル17から燃料を噴射することにより、前記燃焼室19で燃料が燃焼する。燃焼室19で燃料が燃焼すると、その燃焼により燃焼振動が発生する場合がある。特に、排出ガスの低NOx化を図るため燃料を希薄燃焼させると、燃焼が不安定になり易く、燃焼振動が発生し易くなる。
このように燃焼振動が発生すると、燃焼振動による空気振動(圧力波)は音響ライナ21が有する多孔板22の吸音孔23に入る。前記音響ライナ21は音響ライナ共鳴空間25を有し、音響ライナ共鳴空間25と燃焼室19との間に、複数の吸音孔23が形成された多孔板22が設けられているが、音響ライナ共鳴空間25内の空気と吸音孔23内の空気とは、音響ライナ共鳴空間25内の空気がバネとして機能することにより共鳴系を構成している。このため、多孔板22の内側で発生した燃焼振動による空気振動、或いは音のうち、音響ライナ共鳴空間25の容積や吸音孔23の全長に応じた周波数領域の音に対して吸音孔23内の空気が激しく振動し、共鳴するので、その際の摩擦によって、この共鳴周波数の音を吸音する。これにより、燃焼振動の振幅が減衰されて燃焼振動による音が低減する。
また、音響ライナ21には前記音響ダンパ30が接続されており、音響ライナ共鳴空間25と音響ダンパ共鳴空間32とは接続されている。このため、燃焼室19で発生した燃焼振動は、音響ライナ共鳴空間25を介して音響ダンパ共鳴空間32に伝達される。この音響ダンパ30は、尾筒15の下流方向に伸びているため、音響ダンパ共鳴空間32は音響ライナ共鳴空間25よりも大きな容積を有している。このため、音響ダンパ共鳴空間32では、音響ライナ共鳴空間25で減衰する振動の波長よりも長い波長の振動、即ち、音響ライナ共鳴空間25で減衰することのできる振動の周波数領域よりも低い周波数領域の振動を減衰することができる。
以上の減衰装置は、音響ライナ21に音響ダンパ30を接続し、音響ライナ共鳴空間25に音響ダンパ共鳴空間32を連通させている。音響ライナ21と音響ダンパ30とは、双方とも振動を減衰する作用を有するが、音響ライナ21は比較的高い周波数領域の振動を減衰し、音響ダンパ30は比較的低い周波数領域の振動を減衰する。このため、音響ライナ共鳴空間25と音響ダンパ共鳴空間32とを連通させることにより、それぞれ減衰することのできる周波数領域の振動を減衰することができる。つまり、音響ライナ21と音響ダンパ30とを接続することにより、複数の周波数領域の振動を減衰することができる、或いは、広い周波数領域の振動を減衰することができる。また、音響ダンパ30を音響ライナ21に接続することにより、音響ダンパ30と音響ライナ21とをそれぞれ別個で設けた場合と比較して、減衰装置20の占有スペースを減少させることができる。これにより、減衰装置20周辺の空間が増加し、整備などの作業性の向上を図ることができる。これらの結果、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができる。
また、音響ダンパ30の音響部31は、円筒形の形状で形成された円形配管部33を有している。これにより、音響ダンパ30を製造する際に、市販の配管部材を使用することができ、容易に音響ダンパ30の音響部31を製造することができる。この結果、減衰装置20製造時の製造コストの低減を図ることができる。
また、円形配管部33、即ち音響部31を分割構造とし、接合部分に着脱フランジ36を設け、着脱カップリング37を使用することにより、円形配管部33の分解、組立てを容易に行うことができる。これにより、減衰装置20を点検したり部品の交換をしたりする際に、着脱フランジ36の部分で分解することにより、部分ごとに点検などを行うことができる。この結果、メンテナンス性を、さらに向上させることができる。また、音響部31を分割構造とすることにより、音響ダンパ共鳴空間32で共鳴させる振動の周波数領域を調整する際に、音響部31の部材を追加したり交換したりして音響ダンパ共鳴空間32の容積を容易に変更することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、音響ライナ21のハウジング24と前記円形配管部33との間に、テーパ部40を設けている。このテーパ部40は、音響ライナ接続部42から円形配管接続部43に向かうに従って流路面積が狭くなっており、このため、音響ライナ21に対しては、円形配管部33の流路面積よりも大きい流路面積で開口している。これにより、より多くの振動を音響ダンパ30で減衰することができる。また、円形配管部33は径が大きい方が振動を減衰させ易いが、減衰装置20のコンパクト化を図るため円形配管部33の径を小さくした場合でも、テーパ部40の音響ライナ接続部42が音響ライナ21に対して大きい流路面積で開口しているため、多くの振動を音響ダンパ30で減衰することができる。これらの結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、円形配管部33に湾曲部34を形成することにより、音響ダンパ30に可撓性を持たせることができる。このため、減衰装置20を燃焼器10に設け、燃焼器10が運転時の熱により伸縮した場合でも、音響ダンパ30は湾曲部34で撓むことができるので、燃焼器10の伸縮に起因する音響部31への応力を緩和することができる。この結果、減衰装置20の破損を抑制し、耐久性を向上させることができる。
また、音響ダンパ30を音響ライナ21に接続することによって減衰装置20を構成し、この減衰装置20の音響ライナ21を燃焼器10が有する尾筒15に環装することにより、減衰装置20を燃焼器10に設けている。これにより、燃焼器10での燃料の燃焼時に生じる燃焼振動のうち、複数の周波数領域の振動を減衰装置20で減衰することができる。また、音響ライナ21を尾筒15に環装する際に、尾筒15の前記内筒13近傍に環装している。これにより、燃料の燃焼時の火炎付近の燃焼振動が音響ライナ21に伝わり、さらに、音響ダンパ30に伝わることにより、この火炎付近の燃焼振動を減衰することができる。これにより、より効果的に燃焼振動を減衰することができる。また、燃焼器10に装備する減衰装置として、前記減衰装置20を装備することにより、音響ライナと音響ダンパとを別々に装備した場合と比較して、燃焼器10周辺の減衰装置20の占有スペースを減少させることができる。これらの結果、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができる。
また、ガスタービン1に前記減衰装置20を備えることにより、ガスタービン1の運転時の燃焼振動のうち、複数の周波数領域の振動を減衰できる。また、減衰装置20の占有スペースの減少を図ることができるため、車室18の作業スペースが増加し、点検などの作業性の向上を図ることができる。これらの結果、ガスタービン1運転時の減衰性能の向上と、燃焼器10近傍のメンテナンス性の向上との両立を図ることができる。また、ガスタービン1に前記減衰装置20を備えた燃焼器10を設けることにより、減衰性能に優れ、メンテナンス性が良好な高品質のガスタービン1を得ることができる。
この減衰装置は、実施例1に係る減衰装置と略同様の構成であるが、音響ダンパ共鳴空間に流体抵抗部材を設けている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図6は、本発明の実施例2に係る減衰装置の音響部の要部断面図である。同図に示す減衰装置50の円形配管部33の内側、つまり、音響ダンパ共鳴空間32には、流体抵抗部材となる多孔質金属51が設けられている。この多孔質金属51は、ポーラス状の金属、即ち、小さな孔が多数形成されている金属からなり、この多孔質金属51が、円形配管部33の一部に、当該円形配管部33の内部空間の形状とほぼ同形状となって音響ダンパ共鳴空間32に設けられている。
また、多孔質金属51が形成されている部分の円形配管部33は、円形配管部33の中心軸の形成方向における当該多孔質金属51両端部の近傍に、着脱フランジ36が形成されている。これにより、多孔質金属51が形成されている部分の円形配管部33は、両端に着脱フランジ36が形成された短配管部52として形成されている。また、このように短配管部52には着脱フランジ36が形成されているため、短配管部52は、着脱カップリング37によって当該短配管部52の両端に位置する円形配管部33に着脱可能に固定されている。
この実施例2に係る減衰装置50は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記多孔質金属51は、音響ダンパ共鳴空間32に形成されており、多孔質金属51には無数の小さな孔が形成されているため、実施例1の減衰装置20と同様な経路で音響ダンパ共鳴空間32に伝えられたガスタービン1運転時の燃焼振動は、多孔質金属51の孔を通過する。その際に、燃焼振動を伝達する空気と多孔質金属51の孔の壁面との摩擦により、振動は熱に変換されて減衰する。
以上の減衰装置50は、音響ダンパ共鳴空間32に多孔質金属51を設けることにより、ガスタービン1運転時の燃焼振動を、音響ダンパ共鳴空間32の容積によるもののみでなく、多孔質金属51によっても減衰できる。この結果、減衰性能を、さらに向上させることができる。
また、減衰する振動の周波数領域を変更する際に、音響ダンパ共鳴空間32の容積の変更のみでなく、多孔質金属51の大きさや多孔質金属51に形成される孔の大きさ、密度などを変更することによっても調整することができる。即ち、多孔質金属51の抵抗値を変更することによって、音響ダンパ30で減衰する振動の周波数領域を調整することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、多孔質金属51を短配管部52に設けることにより、多孔質金属51の抵抗値を変更する際に短配管部52を、異なる抵抗値を有する多孔質金属51が形成されている短配管部52と交換することにより、容易に多孔質金属51の抵抗値を変更することができる。また、多孔質金属51が形成されていない音響ダンパ30が有する円形配管部33の一組の着脱フランジ36間に、短配管部52を接続して着脱カップリング37で固定することにより、容易に新たに多孔質金属51を設けることができる。これらの結果、減衰性能を、容易に向上させることができる。
この減衰装置は、実施例1に係る減衰装置と略同様の構成であるが、円形配管部が分岐している点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図7は、本発明の実施例3に係る減衰装置の平面図である。同図に示す減衰装置60は、音響部31が分岐部61を有しており、この分岐部61によって円形配管部33が2方向に分岐している。分岐部61は、直線状に形成される円形配管部33に他の円形配管部33が交差する、或いは接続するように形成されている。分岐部61によって他の円形配管部33が交差している円形配管部33は第1円形配管部62として形成されており、この第1円形配管部62に分岐部61によって交差している円形配管部33は第2円形配管部63として形成されている。この第1円形配管部62と第2円形配管部63とは、分岐部61からの長さが異なっており、第1円形配管部62の方が第2円形配管部63よりも長くなっている。
また、分岐部61が形成されている部分の円形配管部33は、円形配管部33の中心軸の形成方向における当該分岐部61両端部の近傍に、着脱フランジ36が形成されている。これにより、分岐部61が形成されている部分の円形配管部33は、両端に着脱フランジ36が形成された短配管部64として形成されている。このため、分岐部61が形成された短配管部64は、着脱カップリング37によって、当該短配管部64の両端に位置する円形配管部33に着脱可能に固定されている。
この実施例3に係る減衰装置60は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記音響部31には分岐部61が形成され、分岐部61によって円形配管部33が分岐している。また、分岐している円形配管部33には、それぞれ長さが異なる第1円形配管部62と第2円形配管部63とが形成されている。当該減衰装置60の音響ダンパ30は、音響ダンパ共鳴空間32の容積によって減衰できる振動の周波数領域が異なる。具体的には、音響ダンパ共鳴空間32の容積が大きくなるにつれて減衰できる振動の周波数領域が低くなり、音響ダンパ共鳴空間32の容積が小さくなるにつれて減衰できる振動の周波数領域が高くなる。
音響ダンパ30はこのような特性を有しているが、前記第1円形配管部62と前記第2円形配管部63とは、長さが異なっており、第1円形配管部62の長さの方が第2円形配管部63の長さよりも長いため、第1円形配管部62の音響ダンパ共鳴空間32よりも第2円形配管部63の音響ダンパ共鳴空間32の方が容積が大きくなっている。このため、第1円形配管部62と第2円形配管部63とでは、減衰できる振動の周波数領域が異なっており、第1円形配管部62の方が第2円形配管部63よりも低い周波数領域の振動を減衰できる。
以上の減衰装置は、音響部31に分岐部61を設けることにより、それぞれ異なる周波数領域の振動の減衰に効果のある複数の円形配管部33を設けることができる。また、円形配管部33を分岐部61で第1円形配管部62と第2円形配管部63とに分岐し、第1円形配管部62と第2円形配管部63との長さを異ならせることにより、それぞれ異なる周波数領域の振動を減衰できる、或いは、広い周波数領域の振動を減衰できる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、分岐部61を短配管部64に設け、短配管部64と第2円形配管部63とを一体に形成することにより、実施例2の減衰装置50の短配管部52と同様に、短配管部64を、異なる長さの第2円形配管部63が形成された他の短配管部64と交換して容易に第2円形配管部63の長さを変更できる。また、円形配管部33が分岐していない音響ダンパ30が有する円形配管部33の一組の着脱フランジ36間に、短配管部64を接続して着脱カップリング37で固定することにより、容易に円形配管部33を分岐させることができる。これらの結果、減衰性能を、容易に向上させることができる。
なお、前記円形配管部33は、分岐部61によって第1円形配管部62と第2円形配管部63との2方向に分岐させているのみであるが、円形配管部33は3方向に分岐させてもよい。3方向以上の複数の方向に分岐させ、分岐させた円形配管部33のそれぞれの長さを異ならせることにより、減衰することのできる周波数領域を、さらに増加させることができる。この結果、減衰性能を、さらに向上させることができる。
この減衰装置は、実施例1に係る減衰装置と略同様の構成であるが、音響部に共鳴室が形成されている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図8は、本発明の実施例4に係る減衰装置の平面図である。同図に示す減衰装置70は、円形配管部33の端部に共鳴室71が設けられている。この共鳴室71は、縦、横、高さが共に円形配管部33の外径よりも大きい長さの直方体で形成されており、内側に空間を有している。この共鳴室71は、円形配管部33の端部に、共鳴室71と円形配管部33との双方の内側の空間が連通するように接続されているので、共鳴室71の内側の空間も音響ダンパ共鳴空間32の一部として形成されている。
この実施例4に係る減衰装置70は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記円形配管部33の先端には円形配管部33の外径よりも大きい寸法で形成される共鳴室71が接続されており、円形配管部33の内側の空間と共鳴室の内側の空間とは連通し、一体に形成されている。これにより、音響ダンパ共鳴空間32は飛躍的に容積が大きく形成されている。音響ダンパ30は、音響ダンパ共鳴空間32の容積が大きい場合には周波数領域の低い振動を減衰できるので、円形配管部33に共鳴室71を接続して、音響ダンパ共鳴空間32の容積を飛躍的に大きくすることにより、減衰できる周波数領域が飛躍的に低くなる。
以上の減衰装置70は、円形配管部33に共鳴室71を設けることにより、音響ダンパ共鳴空間32の容積を大きくしている。これにより、音響ダンパ共鳴空間32に伝えられる振動のうち、低周波領域の振動を減衰することができる。これにより、減衰することのできる周波数領域を、低周波方向に広げることができる。この結果、減衰性能が、さらに向上する。
この減衰装置は、実施例4に係る減衰装置と略同様の構成であるが、音響部の一部が車室の外に配置されている点に特徴がある。他の構成は実施例4と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図9は、本発明の実施例5に係る減衰装置を備える燃焼器の詳細図である。同図に示す減衰装置80は、音響部31の一部が車室18の外に形成されている。前記実施例1〜4の各減衰装置が有する音響部31は、尾筒15の上流側から下流方向に向かって形成されているが、本実施例5に形成される音響部31は、音響ライナ21との接続部分から車室ハウジング81の方向に向かって形成されている。この車室ハウジング81には円形配管部33の外径とほぼ同じ直径の貫通孔82が形成されており、円形配管部33がこの貫通孔82から車室18の外に突出している。つまり、円形配管部33は、車室ハウジング81を貫通した状態となって形成されている。車室ハウジング81を貫通した円形配管部33の端部には共鳴室71が設けられており、この共鳴室71は、円形配管部33が車室ハウジング81を貫通していることにより、車室18の外に配置されている。また、貫通孔82と、当該貫通孔82内に位置する円形配管部33との隙間は、シール材などにより密閉されている。
この実施例5に係る減衰装置80は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車室ハウジング81に貫通孔82を形成し、この貫通孔82に円形配管部33を貫通させて共鳴室71を車室18の外に配設することにより、共鳴室71を外部から視認することができる。
以上の減衰装置80は、音響部31の一部、即ち共鳴室71と円形配管部33の一部を車室18外に露出させることにより、この露出している共鳴室71などを車室18の外から行うことができる。減衰装置80の点検などのメンテナンスは、従来の減衰装置では車室18の中で行われるが、音響部31の一部を車室18の外に配設することにより、この部分のメンテナンスを車室18の外から容易に行うことができる。この結果、メンテナンス性を、さらに向上させることができる。
この減衰装置は、実施例1に係る減衰装置と略同様の構成であるが、音響ダンパがハウジングの外周面に接続されている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図10は、本発明の実施例6に係る減衰装置を備える燃焼器の詳細図である。同図に示す減衰装置100は、音響ダンパ101が音響ライナ110のハウジング111の外周面113に接続されている。即ち、実施例1〜5の各減衰装置が有する音響ダンパは、音響ライナ21に対して尾筒15の下流側に位置する方向に接続されているが、本実施例6に係る減衰装置100が有する音響ダンパ101は、音響ライナ110に対して、尾筒15内を流れる空気の流れ方向に直交する方向に設けられている。また、この音響ダンパ101にはテーパ部40(図4参照)が設けられておらず、円筒形の形状となる部材により形成されている。
具体的には、音響ダンパ101は、音響ライナ110のハウジング111に接続されている部分である音響ダンパベース部102と、円形配管部33とからなり、これらは共に断面形状が円形である配管部材によって形成されている。この音響ダンパベース部102と円形配管部33とは、着脱カップリング37によって接続されており、円形配管部33における音響ダンパベース部102側の端部の反対側の端部は、閉塞されている。また、音響ダンパ101を形成する円形の配管部材の直径は、尾筒15内を流れる空気の流れ方向における幅と同程度の径になっている。
また、音響ダンパ101は、音響ライナ110に対して、尾筒15内を流れる空気の流れ方向に直交する方向に設けられているため、音響ダンパ101は音響ライナ110から車室ハウジング12の方向に向けて設けられている。また、この方向に設けられる音響ダンパ101は、車室ハウジング12の近傍で車室ハウジング12の内側の形状に沿って曲げられており、詳しくは、音響ダンパベース部102が、車室ハウジング12の内側の形状に沿って曲げられている。また、このように形成される音響ダンパベース部102に接続される円形配管部33は、支持部118によって車室ハウジング12の内側の面に固定されている。
図11は、図10のD−D断面図である。音響ライナ110は、環状の形状で、全周に渡って形成されている。即ち、複数の吸音孔23が形成された多孔板22は円筒形の形状で形成されており、この多孔板22の周囲にハウジング111が形成されている。多孔板22はハウジング111によって外部から遮断され、多孔板22とハウジング111との間の空間は、音響ライナ共鳴空間115として形成されている。また、ハウジング111は、このように多孔板22の周囲に形成されているため、当該ハウジング111において、円筒形の形状で形成された多孔板22の径方向における外端には、円筒形の形状で形成された外壁部112を有している。前記音響ダンパ101は、この外壁部112の外側の面である外周面113に接続されており、即ち、音響ダンパベース部102がハウジング111の外周面113に接続されている。また、ハウジング111の外壁部112には、音響ダンパ101が接続される部分に音響ダンパ101の内径と同等の径の孔である開口孔114が形成されており、この開口孔114によって音響ダンパ101は、内側部分の空間である音響ダンパ共鳴空間103が音響ライナ共鳴空間115に連通している。
この実施例6に係る減衰装置100は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。音響ライナ110が環状に形成されているので、尾筒15の燃焼室19内で発生した燃焼振動は、円筒形に形成された多孔板22の吸音孔23から音響ライナ共鳴空間115に伝えられる。音響ライナ共鳴空間115に伝えられた燃焼振動は、音響ライナ110が環状に形成されていることにより、均等に減衰される。
以上の減衰装置100は、音響ライナ110を環状に形成しているので、音響ライナ110の内側で発生する燃焼振動を、当該音響ライナ110の全周で受けることができる。従って、音響ライナ110の内側から全方向に向かって伝えられる燃焼振動を、より確実に減衰することができる。即ち、音響ライナ110の内側で発生し、音響ライナ110の径方向外方における全ての方向に向けて伝えられる燃焼振動を、音響ライナ共鳴空間115で受けることができ、燃焼振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、音響ダンパ101をハウジング111の外周面113に接続しているので、断面積が大きい音響ダンパ101を、容易に設けることができる。つまり、ハウジング111の幅方向における音響ダンパ101の幅を、ハウジング111の同方向における幅と同程度にすることにより、容易に音響ダンパ101の断面積を確保できる。これにより、音響ダンパ101でより確実に広い範囲の振動を受けることができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、音響ダンパ101を、共に配管部材からなる音響ダンパベース部102と円形配管部33とから形成することにより、より容易に音響ダンパ101を設けることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
また、音響ダンパ101を音響ライナ110のハウジング111の外周面113に接続するので、音響ダンパ101を設ける際の自由度を向上させることができる。つまり、音響ライナ110に対して音響ダンパ101を設ける方向が決められていないので、減衰装置100を配設する周囲の形状に合わせて音響ダンパ101を曲げることにより、音響ダンパ101を設ける際のレイアウトの自由度を向上させることができる。この結果、より容易に減衰装置100を設けることができる。
この減衰装置は、実施例6に係る減衰装置と略同様の構成であるが、音響ダンパを複数設けている点に特徴がある。他の構成は実施例6と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図12は、本発明の実施例7に係る減衰装置の音響部の要部断面図である。同図に示す減衰装置120は、音響ライナ110が環状に形成されており、この音響ライナ110のハウジング111の外周面113に2つの音響ダンパが接続されている。詳しくは、1つのハウジング111の外周面113に、実施例6に係る減衰装置100が有する音響ダンパ101と同等の形状で形成された音響ダンパである第1音響ダンパ121が接続され、さらに、この第1音響ダンパ121とは異なる音響ダンパである第2音響ダンパ125が外周面113に接続されている。この第2音響ダンパ125は、第1音響ダンパ121と同様に円筒形の形状の部材、即ち、断面形状が円形の配管部材により形成されており、ハウジング111の外周面113に接続されている側の端部の反対側の端部は閉塞されている。また、この第2音響ダンパ125は、第1音響ダンパ121よりも全長が短くなっている。このため、第1音響ダンパ121の内側に位置する音響ダンパ共鳴空間である第1音響ダンパ共鳴空間122と、第2音響ダンパ125の内側に位置する音響ダンパ共鳴空間である第2音響ダンパ共鳴空間126とでは容積が異なっており、第2音響ダンパ共鳴空間126の方が、第1音響ダンパ共鳴空間122よりも容積が小さくなっている。
この実施例7に係る減衰装置120は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。1つのハウジング111の外周面113に第1音響ダンパ121と第2音響ダンパ125とが接続されており、これらの内側の空間である第1音響ダンパ共鳴空間122と第2音響ダンパ共鳴空間126とは、第1音響ダンパ共鳴空間122の容積よりも第2音響ダンパ共鳴空間126の容積の方が小さくなっている。このため、第1音響ダンパ共鳴空間122と第2音響ダンパ共鳴空間126とでは、減衰できる振動の周波数が異なっており、第1音響ダンパ共鳴空間122よりも第2音響ダンパ共鳴空間126の方が、減衰できる振動の周波数領域が高くなっている。
以上の減衰装置120は、1つのハウジング111に第1音響ダンパ121と第2音響ダンパ125とを接続することにより、2つの音響ダンパで振動を減衰できるので、より確実に燃焼振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、第1音響ダンパ121が有する第1音響ダンパ共鳴空間122の容積と、第2音響ダンパ125が有する第2音響ダンパ共鳴空間126の容積とが互いに異なっているので、それぞれの音響ダンパで異なる周波数領域の振動の減衰することができる。具体的には、第1音響ダンパ共鳴空間122の容積よりも第2音響ダンパ共鳴空間126の容積の方が小さくなっているので、双方を比較した場合に、第1音響ダンパ共鳴空間122は相対的に低めの周波数領域の振動を減衰することができ、第2音響ダンパ共鳴空間126は相対的に高めの周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
この減衰装置は、実施例6に係る減衰装置と略同様の構成であるが、音響ライナ共鳴空間に仕切板を設けている点に特徴がある。他の構成は実施例6と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図13は、本発明の実施例8に係る減衰装置の音響部の要部断面図である。同図に示す減衰装置130は、音響ライナ110が環状に形成されており、この音響ライナ110の内側に位置する空間である音響ライナ共鳴空間115には、当該音響ライナ共鳴空間115を複数の空間に区画する仕切板135が配設されている。この仕切板135は、音響ライナ共鳴空間115に2つ配設されており、その位置は、環状に形成される音響ライナ110において音響ダンパ101が接続されている位置から、ほぼ均等な位置になるように振り分けられた位置に配設されている。
このように配設される仕切板135は、音響ライナ110のハウジング111と多孔板22とに接続された板状の形状で形成されている。このため、仕切板135が設けられている位置では、音響ライナ共鳴空間115は閉塞されている。従って、音響ライナ共鳴空間115は仕切板135によって仕切られており、2つの仕切板135によって音響ライナ共鳴空間は2つの空間に区画されている。ハウジング111に接続される音響ダンパ101が有する音響ダンパ共鳴空間103は、この2つの空間のうちの一方の空間に連通しており、2つの空間のうち音響ダンパ共鳴空間103が連通している側の空間は連通側音響ライナ共鳴空間131となっており、他方の空間は非連通側音響ライナ共鳴空間132となっている。また、これらの連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とでは、連通側音響ライナ共鳴空間131よりも、非連通側音響ライナ共鳴空間132の方が容積が大きくなっている。
この実施例8に係る減衰装置130は以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。音響ライナ共鳴空間115は、2つの仕切板135により連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とに区画されている。このため、音響ライナ共鳴空間115では、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とで、それぞれ独立して燃焼振動を減衰することができる。また、音響ダンパ共鳴空間103は、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とのうちの連通側音響ライナ共鳴空間131に対して連通している。これにより、連通側音響ライナ共鳴空間131のみでは非連通側音響ライナ共鳴空間132の容積よりも小さいが、連通側音響ライナ共鳴空間131と音響ダンパ共鳴空間103とを合わせた容積は、非連通側音響ライナ共鳴空間132の容積よりも大きくなっている。このため、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とでは減衰できる振動の周波数が異なっており、非連通側音響ライナ共鳴空間132よりも連通側音響ライナ共鳴空間131の方が、減衰できる振動の周波数領域が低くなっている。
以上の減衰装置130は、音響ライナ共鳴空間115を2つの仕切板135で2つの空間に区画しているので、区画された空間ごとに減衰する周波数領域を明確に分けることができる。つまり、2つの仕切板135によって音響ライナ共鳴空間115を連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とに区画しているため、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とで、それぞれ独立して燃焼振動を減衰することができる。これにより、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とで、減衰する周波数領域を明確に分けることができ、より確実にその周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、音響ダンパ共鳴空間103は連通側音響ライナ共鳴空間131にのみ連通させているので、連通側音響ライナ共鳴空間131と音響ダンパ共鳴空間103とを合わせた容積を、非連通側音響ライナ共鳴空間132の容積よりも、明確に大きくすることができる。これにより、連通側音響ライナ共鳴空間131は、相対的に低めの周波数領域の振動を減衰することができ、非連通側音響ライナ共鳴空間132は、相対的に高めの周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、複数の周波数領域の振動を、より確実に減衰することができる。
また、音響ライナ共鳴空間115に仕切板135を設け、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とで異なる周波数領域の振動を減衰させることにより、連通側音響ライナ共鳴空間131及び非連通側音響ライナ共鳴空間132を、それぞれの空間で減衰する周波数領域の振動の減衰に適した形状にすることができる。これにより、音響ライナ110を設計する際に、連通側音響ライナ共鳴空間131と非連通側音響ライナ共鳴空間132とで、独立して設計することができるので、設計し易くなる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
図14は、実施例1の変形例に係る減衰措置の音響部の要部詳細図である。なお、実施例1に係る減衰装置20が有する音響ダンパ30の音響部31は、音響ライナ21にのみ開口し、他の部分は密閉した状態で形成されているが、音響部31にはパージ孔90を形成してもよい。例えば、図14に示すように、円形配管部33に複数のパージ孔90を形成してもよい。このように円形配管部33にパージ孔90を形成することにより、音響ダンパ共鳴空間32をパージすることができる。具体的には、前記圧縮機3から圧縮された空気が車室18に送られ、車室18から燃焼室19の方向にこの空気が流れるため、燃焼室19の内圧よりも車室18の内圧の方が高くなっており、このため、燃焼室19に連通している音響ライナ共鳴空間25や音響ダンパ共鳴空間32の内圧は、車室18の内圧よりも低い。これにより、円形配管部33にパージ孔90を形成することにより、車室18内の空気がパージ孔90から音響ダンパ共鳴空間32に流れ込み、音響ダンパ共鳴空間32をパージすることができる。
この音響ダンパ共鳴空間32や音響ライナ共鳴空間25には、燃焼室19から高温の空気や未燃焼の燃料が入り込む場合があるが、その場合でも、音響ダンパ共鳴空間32をパージすることにより、これらを燃焼室19の方向に押し戻すことができる。従って、音響ダンパ共鳴空間32や音響ライナ共鳴空間25を綺麗な状態に維持できる。この結果、燃料の燃焼時の燃焼振動を安定して減衰させることができる。なお、このパージ孔90は、円形配管部33以外の部分に形成されていてもよい。例えば、前記テーパ部40や、実施例4に係る減衰装置70に形成される共鳴室71など、音響部31のうち車室18内に位置する部分であれば、どこに形成されていてもよい。また、このパージ孔90は、車室18の空気を音響ダンパ共鳴空間32に流すことによって音響ダンパ共鳴空間32をパージすることができるので、実施例5に係る減衰装置80のように音響部31の一部が車室18の外に配設されている場合には、パージ孔90は、車室18内に位置する音響部31に形成しなければならない。
図15は、実施例1の変形例に係る減衰装置の平面図である。また、実施例1に係る減衰装置20が有する円形配管部33に形成される湾曲部34は、1箇所にのみ形成されているが、湾曲部は複数形成されていてもよい。例えば、図15に示すように、複数の湾曲部95を設け、これらの湾曲部95の湾曲している方向が、それぞれ順番に反対側に凸になるように湾曲させ、円形配管部33が蛇行するように形成してもよい。これにより、可撓性を有する湾曲部95を複数形成することができるので、円形配管部33は、より伸縮し易くなり、燃焼器10の運転時の熱による伸縮が大きい場合でも、燃焼器10の伸縮に起因する音響部31への応力を、より確実に緩和することができる。この結果、減衰装置20の破損を抑制し、耐久性をさらに向上させることができる。
また、湾曲部95を複数設けて円形配管部33を蛇行するように形成することにより、円形配管部33の全長を長くすることができる。これにより、音響ダンパ共鳴空間32の容積を大きくすることができる。このため、音響ダンパ30で減衰することのできる周波数領域を、低周波方向に広げることができる。また、円形配管部33を蛇行させることにより、音響ダンパ共鳴空間32の容積を大きくしつつ、減衰装置20全体のコンパクト化を図ることができる。これらの結果、減衰性能の向上とメンテナンス性の向上との両立を図ることができる。
図16は、実施例2の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。また、実施例2に係る減衰装置50が有する音響ダンパ共鳴空間32には、流体抵抗部材となる多孔質金属51は1つ設けられているのみであるが、多孔質金属51は複数設けられていてもよい。例えば、図16に示すように、多孔質金属51が設けられている短配管部52を円形配管部33に2つ接続し、さらに、2つの多孔質金属51が離間するように設けてもよい。上述した燃焼器10による燃料の燃焼振動は、複数の周波数領域の振動が含まれているが、このように多孔質金属51を複数設け、それぞれ離間させることにより、複数の周波数領域の振動を減衰することができる。或いは、減衰することのできる振動の周波数領域を広げることができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。なお、音響ダンパ共鳴空間32に設ける多孔質金属51は2つでなく、3つ、或いはそれ以上設けてもよい。多孔質金属51を複数設けることにより、設けられている多孔質金属51の数に応じた周波数領域の振動を減衰できるので、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
図17は、実施例1の変形例に係る減衰装置を備える燃焼器の詳細図である。また、実施例1に係る減衰装置20は、1つの燃焼器10に対して1つの減衰装置20が備えられているが、減衰装置20は、1つの燃焼器10に複数備えてもよい。例えば、図17に示すように、1つの尾筒15に対して2つの減衰装置20を設けてもよい。この場合、一方の減衰装置20が尾筒15に設けられていることにより、他方の減衰装置20の音響ライナ21が尾筒15に対して1周に渡って環装できない場合には、この音響ライナ21は尾筒に対して1周に渡って環装しなくてもよい。また、これらの音響ライナ21が有する音響ライナ共鳴空間25の容積は、それぞれ異なった大きさでもよい。また、2つの減衰装置20のそれぞれの音響ダンパ30が有する円形配管部33の長さは、それぞれ異なる長さで形成してもよい。これらにより、2つの減衰装置20のそれぞれの音響ライナ共鳴空間25及び音響ダンパ共鳴空間32を全て合わせた容積は、1つの減衰装置20の音響ライナ共鳴空間25及び音響ダンパ共鳴空間32を合わせた容積よりも大きくなるので、より多くの振動を減衰することができる。
また、2つの減衰装置20のそれぞれの音響ライナ共鳴空間25及び音響ダンパ共鳴空間32の容積は、それぞれ異なる大きさで形成されているため、それぞれ異なる周波数領域の振動を減衰することができる。これにより、減衰することのできる周波数領域を広げることができる。これらの結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。なお、このように1つの燃焼器10に減衰装置20を複数備える場合には、減衰装置20は2つでなく、3つ、或いはそれ以上設けてもよい。1つの燃焼器10に減衰装置20を複数備えることにより、音響ライナ共鳴空間25と音響ダンパ共鳴空間32とを合わせた容積が大きくなり、また、音響ライナ共鳴空間25の容積、及び音響ダンパ共鳴空間32の容積を、それぞれ異なる大きさで複数形成することができるので、複数の周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、飛躍的に向上させることができる。
図18は、実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。また、実施例6に係る減衰装置100が有する音響ライナ110は、環状の形状で全周に渡って形成されているが、音響ライナは全周に渡って形成されていなくてもよい。例えば、図18に示すように、音響ライナ140は環状の周方向における所定の範囲に形成されていてもよい。即ち、多孔板142は、断面形状が円弧状になる形状で形成して、尾筒15を形成する尾筒本体板148に接続する。また、音響ライナ140のハウジング141は、環状の周方向において設けられている範囲が、円弧状に形成された多孔板142が設けられている範囲と同程度の範囲になるように形成して、多孔板142、または尾筒本体板148に接続する。これにより、ハウジング141及び多孔板142によって設けられる音響ライナ共鳴空間145も、周方向における範囲が多孔板142、またはハウジング141と同じ範囲になる。
音響ライナ140で減衰する振動の周波数領域が、音響ライナ140を全周に渡って形成しなくても減衰できる周波数領域である場合には、音響ライナ140は必ずしも全周に渡って形成する必要はなく、減衰する振動の周波数領域に適した範囲で音響ライナ140を設けてもよい。これにより、減衰する必要がある周波数領域の振動を、より確実に減衰できると共に、音響ライナ140を設ける範囲が少なくなるので、製造コストの低減を図ることができる。この結果、減衰性能の向上と製造コストの低減とを両立することができる。
図19は、実施例7の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。また、実施例7に係る減衰装置120では、1つの音響ライナ110に、音響ダンパとして第1音響ダンパ121と第2音響ダンパ125とが接続されているが、このように第1音響ダンパ121と第2音響ダンパ125とが接続される音響ライナ110に、実施例8に係る減衰装置130と同様に仕切板135を設けてもよい。例えば、図19に示すように、音響ライナ110が有する音響ライナ共鳴空間115に3つの仕切板135を配設し、音響ライナ共鳴空間115を3つの空間に区画してもよい。この3つの空間は、第1音響ダンパ共鳴空間122が連通している空間は第1音響ライナ共鳴空間151となっており、第2音響ダンパ共鳴空間126が連通している空間は第2音響ライナ共鳴空間152となっており、第1音響ダンパ共鳴空間122及び第2音響ダンパ共鳴空間126が共に連通していない空間は第3音響ライナ共鳴空間153となっている。
このため、これらの音響ライナ共鳴空間115の3つの空間と音響ダンパとを合わせた容積を比較すると、第1音響ダンパ共鳴空間122と第1音響ライナ共鳴空間151とを合わせた容積が最も大きくなっており、第2音響ダンパ共鳴空間126と第2音響ライナ共鳴空間152とを合わせた容積が次に大きくなっており、第1音響ダンパ共鳴空間122及び第2音響ダンパ共鳴空間126が共に連通していない第3音響ライナ共鳴空間153は、容積が最も小さくなっている。このため、第1音響ライナ共鳴空間151と第2音響ライナ共鳴空間152と第3音響ライナ共鳴空間153とでは減衰できる振動の周波数が異なっており、減衰できる振動の周波数領域は、第1音響ライナ共鳴空間151が最も低く、第2音響ライナ共鳴空間152、第3音響ライナ共鳴空間153の順で、減衰できる振動の周波数領域が高くなっている。
音響ライナ110に、互いに内部の容積が異なる第1音響ダンパ121と第2音響ダンパ125とを接続した場合でも、音響ライナ共鳴空間115内に仕切板135を設けて音響ライナ共鳴空間115を3つの空間に区画することにより、より確実に任意の周波数領域の振動を減衰することができる。即ち、音響ライナ共鳴空間115は、第1音響ライナ共鳴空間151、第2音響ライナ共鳴空間152、第3音響ライナ共鳴空間153の順で減衰できる振動の周波数領域が高くなっているが、これらは仕切板135によって区画されているので、減衰する振動の周波数領域を明確に分けることができる。これにより、より確実に、その周波数領域の振動を減衰することができ、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
図20は、実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。また、実施例6に係る減衰装置100では、音響ライナ110の外周面113に、断面形状が円形の配管部材からなる音響ダンパ101を接続しているが、この音響ダンパ101には、さらに配管部材以外のものを接続してもよい。例えば、図20に示すように、音響ライナ110のハウジング111の外周面113に接続される音響ダンパ101に、実施例4に係る減衰装置70と同様に共鳴室160を接続してもよい。即ち、音響ダンパ101における音響ライナ110に接続されている側の端部の反対側の端部に、縦、横、高さの全てが音響ダンパ101の外径よりも大きい長さとなった直方体で形成され、内側に空間を有する共鳴室160を接続してもよい。この共鳴室160の内側の空間は、実施例4に係る減衰装置70と同様に音響ダンパ101の内側の空間と接続されており、音響ダンパ共鳴空間103の一部として形成されている。これにより、音響ダンパ共鳴空間103は飛躍的に容積が大きくなり、減衰できる周波数領域が飛躍的に低くなる。従って、音響ダンパ共鳴空間103に伝えられる振動のうち、低周波領域の振動を減衰することができ、減衰することのできる周波数領域を、低周波方向に広げることができる。この結果、減衰性能が、さらに向上する。
図21、図22は、実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。また、音響ダンパ101を音響ライナ110のハウジング111の外周面113に接続した場合でも、実施例2に係る減衰装置50と同様に、多孔質金属51を設けてもよい。例えば、図21に示すように、音響ライナ110のハウジング111の外周面113に接続された音響ダンパ101が有する音響ダンパ共鳴空間103に多孔質金属51を設けてもよい。また、図22に示すように、音響ダンパ101に共鳴室160を接続した場合でも、音響ダンパ共鳴空間103に多孔質金属51を設けてもよい。
これらのように、音響ダンパ共鳴空間103に多孔質金属51を設けることにより、音響ダンパ共鳴空間103に伝えられた燃焼振動は、多孔質金属51の孔を通過する。即ち、多孔質金属51には小さな孔が多数形成されているため、音響ダンパ共鳴空間103に伝えられた燃焼振動は、この小さな孔を通過する。その際に、燃焼振動を伝達する空気と多孔質金属51の孔の壁面との摩擦により、振動は熱に変換されて減衰する。これにより、燃焼振動を、音響ダンパ共鳴空間103の容積によるもののみでなく、多孔質金属51によっても減衰でき、減衰性能を向上させることができる。また、多孔質金属51を配設することにより、減衰する必要のある周波数領域の振動を、より確実に減衰することができ、振動の周波数に対するロバスト性の向上を図ることができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
なお、前記円形配管部33同士を接続する着脱部は、複数に分割された円形配管部33同士を確実に接続し、且つ、容易に着脱可能にするものであれば、着脱フランジ36及び着脱カップリング37以外でもよく、着脱部は着脱フランジ36及び着脱カップリング37以外からなる構造でもよい。
また、実施例7に係る減衰装置120では、音響ライナ110のハウジング111に第1音響ダンパ121と第2音響ダンパ125の2つの音響ダンパが接続されているが、1つのハウジング111に接続される音響ダンパは、3つ以上でもよい。1つのハウジングに音響ダンパを複数接続し、それぞれの音響ダンパが有する音響ダンパ共鳴空間の容積を互いに異ならせることにより、各音響ダンパで異なる周波数領域の振動を減衰できる。このため、減衰する必要のある振動の周波数領域の数に応じて音響ダンパを設けることにより、より確実に振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、実施例8に係る減衰装置130では、音響ライナ共鳴空間115に仕切板135を2つ配設し、その変形例では仕切板135を3つ配設しているが、仕切板135の数はこれら以外でもよい。仕切板135は、減衰装置130で減衰する必要がある振動の周波数領域の数に合わせて音響ライナ共鳴空間115を区画するのが好ましいため、減衰装置130の使用状況に応じて設定するのが好ましい。このため、仕切板130の数は、2つや3つ以外でもよい。
また、上述した減衰装置では、音響ライナが有する多孔板22に形成される吸音孔23は、多孔板22に対する開口率が10%以下となっているが、多孔板22に対する吸音孔23の開口率は10%よりも大きくてもよい。この吸音孔23による音の吸音は、吸音孔23の径が小さい方が吸音し易くなり、径が大きくなるに従って吸音し難くなる。このため、吸音孔23の径を大きくした場合には吸音孔23による吸音の効果は低減し、具体的には、多孔板22に対する吸音孔23の開口率が30%以上の場合には、吸音孔23ではあまり吸音せず、音響ライナによる振動の減衰は主に音響ライナ共鳴空間によるものとなる。従って、音響ライナは、吸音孔23の径、或いは多孔板22に対する吸音孔23の開口率と、音響ライナ共鳴空間の容積との兼ね合いで振動を減衰するので、双方を合わせて調整することにより、より確実に所望の周波数領域の振動を減衰することができる。この結果、減衰性能を、より確実に向上させることができる。
また、実施例1〜8、及び上述した各変形例は、単独でなく、それぞれ組み合わせてもよい。例えば、実施例2の減衰装置50と実施例4の減衰装置70を組合せて、多孔質金属51が設けられている円形配管部33に共鳴室71を接続したり、実施例3の減衰装置60と上記変形例の減衰装置を組み合わせて第1円形配管部62と第2円形配管部63との双方にパージ孔90を形成したりしてもよい。上述した各減衰装置を組み合わせることにより、より確実に減衰性能を向上させ、メンテナンス性を向上させることができる。
以上のように、本発明にかかる減衰装置、燃焼器及びガスタービンは、燃焼器を有するガスタービンに有用であり、特に、燃焼器での燃料の燃焼時の振動を減衰する場合に適している。
本発明の実施例1に係る減衰装置を備えるガスタービンの断面図である。
図1に示す燃焼器の詳細図である。
図2のA−A断面図である。
図2のB−B矢視図である。
図4のC部詳細図である。
本発明の実施例2に係る減衰装置の音響部の要部断面図である。
本発明の実施例3に係る減衰装置の平面図である。
本発明の実施例4に係る減衰装置の平面図である。
本発明の実施例5に係る減衰装置を備える燃焼器の詳細図である。
本発明の実施例6に係る減衰装置を備える燃焼器の詳細図である。
図10のD−D断面図である。
本発明の実施例7に係る減衰装置の音響部の要部断面図である。
本発明の実施例8に係る減衰装置の音響部の要部断面図である。
実施例1の変形例に係る減衰措置の音響部の要部詳細図である。
実施例1の変形例に係る減衰装置の平面図である。
実施例2の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。
実施例1の変形例に係る減衰装置を備える燃焼器の詳細図である。
実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。
実施例7の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。
実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。
実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。
実施例6の変形例に係る減衰装置の要部断面図である。
符号の説明
1 ガスタービン
2 空気取入口
3 圧縮機
4 タービン
10 燃焼器
11 外筒
12、81 車室ハウジング
13 内筒
15 尾筒
16 パイロットノズル
17 メインノズル
18 車室
19 燃焼室
20、50、60、70、80、100、120、130 減衰装置
21、110、140 音響ライナ
22、142 多孔板
23 吸音孔
24 ハウジング
25、115、145 音響ライナ共鳴空間
30、101 音響ダンパ
31 音響部
32、103 音響ダンパ共鳴空間
33 円形配管部
34、95 湾曲部
35 先端部
36 着脱フランジ
37 着脱カップリング
38、118 支持部
40 テーパ部
41 接続部
42 音響ライナ接続部
43 円形配管接続部
51 多孔質金属
52、64 短配管部
61 分岐部
62 第1円形配管部
63 第2円形配管部
71、160 共鳴室
82 貫通孔
90 パージ孔
102 音響ダンパベース部
111、141 ハウジング
112 外壁部
113 外周面
114 開口孔
121 第1音響ダンパ
122 第1音響ダンパ共鳴空間
125 第2音響ダンパ
126 第2音響ダンパ共鳴空間
131 連通側音響ライナ共鳴空間
132 非連通側音響ライナ共鳴空間
135 仕切板
148 尾筒本体板
151 第1音響ライナ共鳴空間
152 第2音響ライナ共鳴空間
153 第3音響ライナ共鳴空間