(第1の実施の形態)
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る操舵装置10の概略が示されている。操舵装置10は、自動車等の車両に設けられている。
この操舵装置10は、円柱状のステアリングシャフト12Aを備えている。そして、ステアリングシャフト12Aは、その一端がステアリングホイール12に機械的に連結されている。ステアリングシャフト12Aは、車両に設けられた図示しない軸支部材によって自身の軸周りに回転可能に支持されている。すなわち、ステアリングホイール12は、車両に回転可能に設けられている。
また、ステアリングシャフト12Aには、ロータリーエンコーダ22が設けられている。ロータリーエンコーダ22は、ステアリングシャフト12A、すなわちステアリングホイール12の実際の回転位置を検知してこの回転位置に応じた信号を出力する。
またさらに、ステアリングシャフト12Aには、トルクセンサ24が設けられている。トルクセンサ24は、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクを検知してこのトルクに応じた信号を出力する。
トルクセンサ24には、操舵手段を構成するECU14が電気的に接続されている。ECU14は、トルクセンサ24から出力された検知結果(出力信号)に基づいて、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクを演算により求める。
また、このECU14には前述のロータリーエンコーダ22が電気的に接続されており、ECU14は、ロータリーエンコーダ22から出力された検知結果(出力信号)に基づいて、ステアリングシャフト12A(すなわち、ステアリングホイール12)の実際の回転位置を演算により求める。またさらに、ECU14は図示しないメモリを内部に備えており、ECU14は、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいて、ステアリングホイール12の回転位置に関する情報(ステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報、並びにステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との差異(ステアリングホイール12の実際の回転位置が上記の本来の回転位置からずれた量。以下、単に回転位置ずれ量ともいう)を示す情報)を記憶可能とされている。
また、ECU14にはイグニッションスイッチ26が電気的に接続されており、ECU14は、イグニッションスイッチ26から出力された信号に基づいて、イグニッションスイッチ26がオンであるのか、それともイグニッションスイッチ26がオフであるのかを判断する。
また、ECU14には車室内に設けられた例えば着座センサ等の人体センサ(図示省略)が電気的に接続されており、ECU14は、人体センサから出力された信号に基づいて、車室内に乗員が存在するか否かを判断する。
また、ECU14には、ECU14と共に操舵手段を構成するアクチュエータ16が電気的に接続されている。アクチュエータ16は、例えばブラシレスモータ等のモータ(操舵用モータ)を含んで構成されており、ECU14からの指示(出力信号)に応じて駆動される。
そして、アクチュエータ16には、ステアリングギヤ15が機械的に連結されている。ステアリングギヤ15は、例えばボールねじ機構等により構成されている。ステアリングギヤ15にはステアリングロッド17が機械的に連結されており、ステアリングギヤ15は、アクチュエータ16の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド17の直線運動に変換する。
ステアリングロッド17にはナックルアーム19を介して一対の操舵輪18が機械的に連結されており、このステアリングロッド17の動きがナックルアーム19を介して各操舵輪18に伝えられて、一対の操舵輪18の舵角が変更される。
すなわち、アクチュエータ16は、ECU14からの指示に応じて一対の操舵輪18の舵角を変更する。
本操舵装置10では、ECU14は、イグニッションスイッチ26がオンである場合に、ロータリーエンコーダ22の出力信号に応じてアクチュエータ16に操舵輪18の舵角を変更するための指示を出す。
また、ECU14には、モータ20が電気的に接続されている。このモータ20は例えばウォームギヤ等の駆動力伝達部材21を介してステアリングシャフト12Aに機械的に連結されており、モータ20は、駆動力伝達部材21を介して自身の駆動力をステアリングシャフト12Aの回転方向(すなわち、ステアリングホイール12の回転方向)に沿ってステアリングシャフト12Aに与える。
ここで、ECU14は、モータ20の駆動を制御する制御装置としても機能する。ECU14は、イグニッションスイッチ26がオン(エンジンが作動している状態)の場合には、ステアリングホイール12が回転させられたときに、仮想的な操舵反力をステアリングシャフト12A、ひいてはステアリングホイール12に与えるために、モータ20の駆動力をステアリングシャフト12Aの回転方向とは反対方向にステアリングシャフト12Aに与えるようにモータ20を駆動させる。また、ECU14は、イグニッションスイッチ26がオフ(エンジンが停止している状態)の場合には、自身の内部のメモリに記憶されているステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報に基づいて、操舵輪18の舵角(さらに言えば、操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置)とステアリングホイール12の実際の回転位置とを一致させるようにモータ20を駆動させる。
次に、本発明の第1の実施の形態の作用について説明する。
図2には、操舵装置10の動作手順がフローチャートにて示されている。
例えば着座センサ等の人体センサによって乗員の存在が検知されると、操舵装置10が作動して、イグニッションスイッチ26がオンであるか否かがECU14によって判断される(ステップ100)。イグニッションスイッチ26がオンである場合(ステップ100で肯定判断の場合)にはステップ102に移行し、イグニッションスイッチ26がオフである場合(ステップ100で否定判断の場合)にはステップ114に移行する。
ステップ100においてイグニッションスイッチ26がオフであると判断された場合、ステップ114では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいて、操舵輪18の舵角に対応するステアリングホイール12の本来の回転位置に対してステアリングホイール12の実際の回転位置がずれているか否かがECU14によって判断される。ステアリングホイール12の実際の回転位置がずれている場合(ステップ114で肯定判断の場合)にはステップ116に進み、ステアリングホイール12の実際の回転位置がずれていない場合(ステップ114で否定判断の場合)にはステップ100に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ114においてステアリングホイール12の実際の回転位置がずれていると判断された場合、ステップ116では、後述のステップ112で前回の処理ルーチン実行時にECU14内部のメモリに記憶されたステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報(すなわち、イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わった時のステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報)を基にして、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量がECU14によって演算され、このステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報がECU14内部のメモリに記憶される。ステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報がECU14内部のメモリに記憶されると、ステップ118に移行する。
ステップ118では、ECU14によってモータ20が駆動させられ、モータ20の駆動力がロータリーエンコーダ22及びトルクセンサ24からの出力信号に応じてステアリングシャフト12Aに与えられる。モータ20の駆動力は、ステアリングシャフト12Aの回転方向(ステアリングシャフト12Aの実際の回転位置がその本来の回転位置からずれた方向)とは反対方向にステアリングシャフト12Aに与えられる。これにより、ステアリングシャフト12A、すなわちステアリングホイール12は、イグニッションスイッチ26がオフになった時のステアリングホイール12の実際の回転位置に対してステアリングホイール12が回転した方向(上記のずれた方向)とは反対方向に回転させられる。
このようにモータ20が駆動させられてステアリングホイール12が上記反対方向に回転させられると、ステップ120に移行する。
ステップ120では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいてステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になったか否かがECU14によって判断される。このステップ120では、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になった場合(ステップ120で肯定判断の場合)にはステップ122に進み、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になっていない場合(ステップ120で否定判断の場合)にはステップ118に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ120においてステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になったと判断された場合、ステップ122では、モータ20の駆動がECU14によって停止される。このように操舵装置10は、ステアリングホイール12の実際の回転位置を補正してステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との間のずれを解消できる。
本操舵装置10では、前述のステップ116乃至ステップ122で説明したような処理が実行されるので、モータ20の駆動力は、例えば、ステアリングホイール12に回転力が与えられた後にステアリングホイール12に与えられる。この場合、本操舵装置10は、ステアリングホイール12に回転力が与えられなくなった後に、ステアリングホイール12を本来の回転位置(例えば中立位置)に回転移動させることができる。
そして、ステップ122でモータ20の駆動がECU14によって停止されると、ステップ100に戻って前述した処理を繰り返す。
一方、前述のステップ100においてイグニッションスイッチ26がオンであると判断された場合、ステップ102では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいて、ステアリングホイール12の実際の回転位置が変化したか否かがECU14によって判断される。ステアリングホイール12の実際の回転位置が変化した場合(ステップ102で肯定判断の場合)にはステップ104に移行し、ステアリングホイール12の実際の回転位置が変化していない場合(ステップ102で否定判断の場合)にはステップ110に移行する。
ステップ102においてステアリングホイール12の実際の回転位置が変化したと判断された場合、ステップ104では、ECU14によってモータ20が駆動させられ、モータ20の駆動力がトルクセンサ24からの出力信号に応じてステアリングシャフト12Aに与えられる。モータ20の駆動力は、ステアリングシャフト12Aの回転方向とは反対方向にステアリングシャフト12Aに与えられる。これにより、ステアリングシャフト12A、すなわちステアリングホイール12に仮想的な操舵反力が与えられる。従って、操舵装置10は、ステアリングホイール12と操舵輪18とが機械的に連結されている従来の操舵装置と同様の操作感覚を得ることができる。
このようにモータ20が駆動させられると、ステップ106に移行する。ステップ106では、トルクセンサ24からの出力信号に基づいて、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0となったか否かがECU14によって判断される。このステップ106では、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0となった場合(ステップ106で肯定判断の場合)にはステップ108に進み、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0になっていない場合(ステップ106で否定判断の場合)にはステップ104に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ106においてステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0になった場合、ステップ108では、モータ20の駆動が停止される。モータ20の駆動が停止されると、ステップ110に移行する。
ステップ110では、イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わったか否かが判断される。イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わった場合(ステップ110で肯定判断の場合)にはステップ112に進み、イグニッションスイッチ26がオンのままである場合(ステップ110で否定判断の場合)にはステップ102に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ110においてイグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わったと判断された場合、ステップ112では、イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わった時のステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報が、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に応じてECU14内部のメモリに記憶される。ステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報がECU14内部のメモリに記憶されると、本処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る操舵装置10では、イグニッションスイッチ26がオフの場合、すなわちエンジンの起動以前(ここでは、エンジンの停止時)において、ECU14によってモータ20が駆動させられて、ステアリングホイール12には、前述の如くモータ20の駆動力が与えられる。これにより、ステアリングホイール12は操舵輪18の舵角に応じた回転位置に位置させられる(ここでは、ステアリングホイール12が操舵輪18の舵角に応じた回転位置まで移動させられる)。従って、本発明の第1の実施の形態に係る操舵装置10は、ステアリングシャフト12A(ひいてはステアリングホイール12、さらにはステアリングホイール12を握っている運転者)に仮想的な操舵反力を与えるモータ20の駆動力を利用するという簡単な構成で、イグニッションスイッチ26がオフの時においてステアリングホイール12を操舵輪18の舵角に合わせておくことができる(イグニッションスイッチ26がオフの時においてステアリングホイール12の回転位置と操舵輪18の舵角との位置関係が不適切なものにならないようにできる)。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、前述の本発明の第1の実施の形態と同一構成の箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る操舵装置10は、本発明の第1の実施の形態で説明した操舵装置10の処理ルーチンを変更したものである。本発明の第2の実施の形態に係る操舵装置10では、ECU14は、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合(エンジンの起動時)に、自身の内部のメモリに記憶されているステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報に基づいて、操舵輪18の舵角(さらに言えば、操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置)とステアリングホイール12の実際の回転位置とを一致させるようにモータ20を駆動させる。
以下、本発明の第2の実施の形態の作用について説明する。
図3には、本発明の第2の実施の形態に係る操舵装置10の動作手順がフローチャートにて示されている。
例えば着座センサ等の人体センサによって乗員の存在が検知されると、操舵装置10が作動して、イグニッションスイッチ26がオンであるか否かがECU14によって判断される(ステップ140)。ここでは、イグニッションスイッチ26がオンである場合(ステップ140で肯定判断の場合)にのみ次のステップ154に進む。
ステップ140においてイグニッションスイッチ26がオンであると判断された場合、ステップ154では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいて、操舵輪18の舵角に対応するステアリングホイール12の本来の回転位置に対してステアリングホイール12の実際の回転位置がずれているか否かがECU14によって判断される。ステアリングホイール12の実際の回転位置がずれている場合(ステップ154で肯定判断の場合)にはステップ158に移行し、ステアリングホイール12の実際の回転位置がずれていない場合(ステップ154で否定判断の場合)にはステップ142に移行する。
ステップ154においてステアリングホイール12の実際の回転位置がずれていると判断された場合、ステップ158では、後述のステップ152で前回の処理ルーチン実行時にECU14内部のメモリに記憶されたステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報(すなわち、イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わった時のステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報)を基にして、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量がECU14によって演算され、このステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報がECU14内部のメモリに記憶される。ステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報がECU14内部のメモリに記憶されると、ステップ160に移行する。
ステップ160では、ECU14によってモータ20が駆動させられ、モータ20の駆動力がロータリーエンコーダ22及びトルクセンサ24からの出力信号に応じてステアリングシャフト12Aに与えられる。モータ20の駆動力は、ステアリングシャフト12Aの回転方向(ステアリングシャフト12Aの実際の回転位置がその本来の回転位置からずれた方向)とは反対方向にステアリングシャフト12Aに与えられる。これにより、ステアリングシャフト12A、すなわちステアリングホイール12は、イグニッションスイッチ26がオフになった時のステアリングホイール12の実際の回転位置に対してステアリングホイール12が回転した方向(上記のずれた方向)とは反対方向に回転させられる。
このようにモータ20が駆動させられてステアリングホイール12が上記反対方向に回転させられると、ステップ162に移行する。
ステップ162では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいてステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になったか否かがECU14によって判断される。このステップ162では、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になった場合(ステップ162で肯定判断の場合)にはステップ164に進み、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になっていない場合(ステップ162で否定判断の場合)にはステップ160に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ162においてステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になったと判断された場合、ステップ164では、モータ20の駆動がECU14によって停止される。このように操舵装置10は、ステアリングホイール12の実際の回転位置を補正してステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との間のずれを解消できる。
本操舵装置10では、前述のステップ156乃至ステップ164で説明したような処理が実行されるので、モータ20の駆動力は、例えば、ステアリングホイール12に回転力が与えられた後にステアリングホイール12に与えられる。この場合、本操舵装置10は、ステアリングホイール12に回転力が与えられなくなった後に、ステアリングホイール12を本来の回転位置(例えば中立位置)に回転移動させることができる。
そして、ステップ164でモータ20の駆動がECU14によって停止されると、本操舵装置10は、以後、ステップ142乃至ステップ152の各処理を行う。このステップ142乃至ステップ152の各処理については、前述の本発明の第1の実施の形態のフローチャート(図2参照)のステップ102乃至ステップ112と同じであるため、その説明を省略する。そして、ステップ152でステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報がECU14内部のメモリに記憶されると、本処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る操舵装置10では、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合、すなわちエンジンの起動以前(ここでは、エンジンの起動時)において、ECU14によってモータ20が駆動させられて、ステアリングホイール12には、前述の如くモータ20の駆動力が与えられる。これにより、ステアリングホイール12は操舵輪18の舵角に応じた回転位置に位置させられる(ここでは、ステアリングホイール12が操舵輪18の舵角に応じた回転位置まで移動させられる)。従って、本発明の第2の実施の形態に係る操舵装置10は、ステアリングシャフト12A(ひいてはステアリングホイール12、さらにはステアリングホイール12を握っている運転者)に仮想的な操舵反力を与えるモータ20の駆動力を利用するという簡単な構成で、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった時にステアリングホイール12を操舵輪18の舵角に合わせることができる(イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった時にステアリングホイール12の回転位置と操舵輪18の舵角との位置関係を適切なものにしておくことができる)。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、前述の本発明の第1の実施の形態と同一構成の箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
本発明の第3の実施の形態に係る操舵装置10は、本発明の第1の実施の形態で説明した操舵装置10の処理ルーチンを変更したものである。本発明の第3の実施の形態に係る操舵装置10では、ECU14は、イグニッションスイッチ26がオフ(エンジンの停止時)の場合であってステアリングホイール12に回転力が与えられたときに、この回転力をモータ20の駆動力で相殺する(打ち消す)ようにモータ20を駆動させる。
以下、本発明の第3の実施の形態の作用について説明する。
図4には、本発明の第3の実施の形態に係る操舵装置10の動作手順がフローチャートにて示されている。
例えば着座センサ等の人体センサによって乗員の存在が検知されると、操舵装置10が作動して、イグニッションスイッチ26がオンであるか否かがECU14によって判断される(ステップ220)。イグニッションスイッチ26がオフである場合(ステップ220で否定判断の場合)にはステップ232に移行し、イグニッションスイッチ26がオンである場合(ステップ220で肯定判断の場合)にはステップ222に移行する。
ステップ220においてイグニッションスイッチ26がオフであると判断された場合、ステップ232では、トルクセンサ24からの出力信号に基づいて、ステアリングホイール12が回転操作されることでステアリングシャフト12Aにトルクがかかったか否か(すなわち、ステアリングホイール12に回転力が与えられたか否か)がECU14によって判断される。ステアリングシャフト12Aにトルクがかかった場合(ステップ232で肯定判断の場合)にはステップ234に移行し、ステアリングシャフト12Aにトルクがかかっていない場合(ステップ232で否定判断の場合)には本処理ルーチンを終了する。
ステップ232においてステアリングシャフト12Aにトルクがかかったと判断された場合、ステップ234では、ECU14によってモータ20が駆動させられ、モータ20の駆動力がトルクセンサ24からの出力信号に応じてステアリングシャフト12Aに与えられる。モータ20の駆動力は、ステアリングシャフト12Aにトルクがかかった方向(ステアリングホイール12に回転力が与えられた方向)とは反対方向にステアリングシャフト12Aに与えられる。
ここで、ステアリングシャフト12Aに与えられるモータ20の駆動力の強さがステアリングシャフト12Aにかかったトルク(ステアリングホイール12に与えられた回転力)を相殺する強さとなるようにモータ20が駆動される。これにより、ステアリングシャフト12Aにかかったトルク(ステアリングホイール12に与えられた回転力)がモータ20の駆動力によって相殺される。このため、ステアリングシャフト12A、すなわちステアリングホイール12は回転しない。従って、例えばステアリングロック装置のようなステアリングホイール12の回転を規制する回転規制装置が無くても、ステアリングホイール12を操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置に留めておくことができる。
このようにモータ20が駆動させられてステアリングホイール12が上記の如く回転規制されると、ステップ236に移行する。
ステップ236では、トルクセンサ24からの出力信号に基づいてステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0になったか否かがECU14によって判断される。このステップ236では、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0になった場合(ステップ236で肯定判断の場合)にはステップ238に進み、ステアリングシャフト12Aにかかるトルクが0になっていない場合(ステップ236で否定判断の場合)にはステップ234に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ238では、モータ20の駆動がECU14によって停止される。モータ20の駆動がECU14によって停止されると、本処理ルーチンを終了する。
本操舵装置10では、前述のステップ234乃至ステップ238で説明したような処理が実行されるので、モータ20の駆動力は、ステアリングホイール12に回転力が与えられた時にステアリングシャフト12A、ひいてはステアリングホイール12に与えられる。この結果、ステアリングホイール12は、回転しない。この場合、本操舵装置10は、例えばステアリングロック装置のようなステアリングホイール12の回転を規制する回転規制装置が無くても、ステアリングホイール12を操舵輪18の舵角に応じた位置(操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置)に留めておくことができる。
一方、前述のステップ220においてイグニッションスイッチ26がオンであると判断された場合には、以後、ステップ222乃至ステップ230の各処理を行う。このステップ222乃至ステップ230の各処理については、前述の本発明の第1の実施の形態のフローチャート(図2参照)のステップ102乃至ステップ110と同じであるため、その説明を省略する。そして、ステップ230でイグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わったか否かが判断されて、イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わった場合(ステップ230で肯定判断の場合)には本処理ルーチンを終了し、イグニッションスイッチ26がオンのままである場合(ステップ230で否定判断の場合)にはステップ222に戻って前述した処理を繰り返す。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係る操舵装置10では、イグニッションスイッチ26がオフの場合、すなわちエンジンの起動以前(ここでは、エンジンの停止時)において、ECU14によってモータ20が駆動させられて、ステアリングホイール12には、前述の如くモータ20の駆動力が与えられる。これにより、ステアリングホイール12は操舵輪18の舵角に応じた回転位置に位置させられる(ここでは、ステアリングホイール12が操舵輪18の舵角に応じた回転位置に留められる)。従って、本発明の第3の実施の形態に係る操舵装置10は、ステアリングシャフト12A(ひいてはステアリングホイール12、さらにはステアリングホイール12を握っている運転者)に仮想的な操舵反力を与えるモータ20の駆動力を利用するという簡単な構成で、イグニッションスイッチ26がオフの時においてステアリングホイール12を操舵輪18の舵角に合わせておくことができる(イグニッションスイッチ26がオフの時においてステアリングホイール12の回転位置と操舵輪18の舵角との位置関係を適切な位置関係のまま維持できる)。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、前述の本発明の第1の実施の形態と同一構成の箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
図5には、本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10の概略が示されている。本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10は、本発明の第1の実施の形態で説明した操舵装置10にリセットスイッチ28を設けて、リセットスイッチ28が操作された場合に、ステアリングホイール12の実際の回転位置を、操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置に一致させるものである。
リセットスイッチ28は、例えば車室内の運転席付近に設けられており、ECU14に電気的に接続されている。イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合(エンジンの起動時)であってリセットスイッチ28が操作されたとき(リセットスイッチ28がオンとされたとき)には、ECU14は、モータ20を駆動させてステアリングホイール12の実際の回転位置を操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置に合わせる処理を実行する。
以下、本発明の第4の実施の形態の作用について説明する。
図6には、本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10の動作手順がフローチャートにて示されている。
例えば着座センサ等の人体センサによって乗員の存在が検知されると、操舵装置10が作動して、イグニッションスイッチ26がオンであるか否かがECU14によって判断される(ステップ180)。後述するように本処理ルーチンはイグニッションスイッチ26がオフの状態で終了するため、このステップ180では、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わったか否かが判断されることになる。イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合(ステップ180で肯定判断の場合)にのみ次のステップ182に進む。
ステップ180においてイグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わったと判断された場合、ステップ182では、リセットスイッチ28からの出力信号に基づいてリセットスイッチ28がオンであるか否かがECU14によって判断される。リセットスイッチ28がオンである場合(ステップ182で肯定判断の場合)にはステップ196に移行し、リセットスイッチ28がオフである場合(ステップ182で否定判断の場合)にはステップ184に移行する。
ステップ182においてリセットスイッチ28がオンであると判断された場合、ステップ196では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいて、操舵輪18の舵角に対応する本来の回転位置に対してステアリングホイール12の実際の回転位置がずれているか否かがECU14によって判断される。ステアリングホイール12の実際の回転位置がずれている場合(ステップ196で肯定判断の場合)にはステップ198に移行し、ステアリングホイール12の実際の回転位置がずれていない場合(ステップ196で否定判断の場合)にはステップ192に移行する(結合子1参照)。
ステップ196においてステアリングホイール12の実際の回転位置がずれていると判断された場合、ステップ198では、後述のステップ194で前回の処理ルーチン実行時にECU14内部のメモリに記憶されたステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報(すなわち、イグニッションスイッチ26がオンからオフに切り替わった時のステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報)を基にして、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量がECU14によって演算され、このステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報がECU14内部のメモリに記憶される。ステアリングホイール12の回転位置ずれ量を示す情報がECU14内部のメモリに記憶されると、ステップ200に移行する。
ステップ200では、ECU14によってモータ20が駆動させられ、モータ20の駆動力がロータリーエンコーダ22及びトルクセンサ24からの出力信号に応じてステアリングシャフト12Aに与えられる。モータ20の駆動力は、ステアリングシャフト12Aの回転方向(ステアリングシャフト12Aの実際の回転位置がその本来の回転位置からずれた方向)とは反対方向にステアリングシャフト12Aに与えられる。これにより、ステアリングシャフト12A、すなわちステアリングホイール12は、イグニッションスイッチ26がオフになった時のステアリングホイール12の実際の回転位置に対してステアリングホイール12が回転した方向(上記のずれた方向)とは反対方向に回転させられる。
このようにモータ20が駆動させられてステアリングホイール12が上記反対方向に回転させられると、ステップ202に移行する。
ステップ202では、ロータリーエンコーダ22からの出力信号に基づいてステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になったか否かがECU14によって判断される。このステップ202では、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になった場合(ステップ202で肯定判断の場合)にはステップ204に進み、ステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になっていない場合(ステップ202で否定判断の場合)にはステップ200に戻って前述した処理を繰り返す。
ステップ202においてステアリングホイール12の回転位置ずれ量が0になったと判断された場合、ステップ204では、モータ20の駆動がECU14によって停止される。このように、操舵装置10では、リセットスイッチ28がオフからオンに切り替わった場合であってリセットスイッチ28がオンとされたときに、ステアリングホイール12の実際の回転位置が補正されてステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置とが一致させられる。このため、操作者によるリセットスイッチ28の操作に応じて(ここでは、操作者がリセットスイッチ28を操作したタイミングで)ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置とのずれを解消できる。
本操舵装置10では、前述のステップ198乃至ステップ204で説明したような処理が実行されるので、モータ20の駆動力は、例えば、ステアリングホイール12に回転力が与えられた後にステアリングホイール12に与えられる。この場合、本操舵装置10は、ステアリングホイール12に回転力が与えられなくなった後に、ステアリングホイール12を本来の回転位置(例えば中立位置)に回転移動させることができる。
そして、ステップ204でモータ20の駆動がECU14によって停止されると、ステップ184に移行する。
ステップ204でモータ20の駆動が停止された場合、あるいは前述のステップ182においてリセットスイッチ28がオフであると判断された場合には、以後、ステップ184乃至ステップ194の各処理を行う。このステップ184乃至ステップ194の各処理については、前述の本発明の第1の実施の形態のフローチャート(図2参照)のステップ102乃至ステップ112と同じであるため、その説明を省略する。そしてステップ194でステアリングホイール12の実際の回転位置を示す情報がECU14内部のメモリに記憶されると、本処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10では、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合、すなわちエンジンの起動以前(ここでは、エンジンの起動時)において、リセットスイッチ28が操作されたとき(リセットスイッチ28がオンになったとき)には、ECU14によってモータ20が駆動させられて、ステアリングホイール12には、前述の如くモータ20の駆動力が与えられる。これにより、ステアリングホイール12は操舵輪18の舵角に応じた回転位置に位置させられる(ここでは、ステアリングホイール12が操舵輪18の舵角に応じた回転位置まで移動させられる)。従って、本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10は、ステアリングシャフト12A(ひいてはステアリングホイール12、さらにはステアリングホイール12を握っている運転者)に仮想的な操舵反力を与えるモータ20の駆動力を利用するという簡単な構成で、エンジンの起動時においてリセットスイッチ28が操作されたときにステアリングホイール12を操舵輪18の舵角に合わせることができる(エンジンの起動時においてリセットスイッチ28が操作されたときにステアリングホイール12の回転位置と操舵輪18の舵角との位置関係が不適切なものにならないようにできる)。
なお、本実施の形態に係る操舵装置10では、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との差異を無くすようにモータ20が駆動させられるものとしたが、本発明はこれに限らない。本発明は、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との差異を無くすようにモータ20だけでなくアクチュエータ16も駆動させられるものであってもよい。
この場合、仮にステアリングホイール12の実際の回転位置が操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置からずれてしまっても、ステアリングホイール12の実際の回転位置及び操舵輪18の舵角の双方を補正してステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との間のずれを解消できる。
例えば、操舵装置10は、リセットスイッチ28が操作された場合に、ステアリングホイール12をモータ20の駆動力で中立位置に回転させると共に一対の操舵輪18をアクチュエータ16の駆動力で車両の直進方向へ向かせることで、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置との間のずれを解消できる。
また、本実施の形態に係る操舵装置10は、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合においてリセットスイッチ28がオンになったときに、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角(さらに言えば、操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置)とを合わせるものとしたが、本発明はこれに限らない。本発明は、イグニッションスイッチ26のオン・オフに拘わらずリセットスイッチ28がオンになったときに、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角とを合わせるようにしてもよい。
また、本実施の形態に係る操舵装置10では、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角(さらに言えば、操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置)とを合わせる処理を、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わった場合においてリセットスイッチ28がオンとなったときに実行するものとしたが、本発明はこれに限らない。本発明は、リセットスイッチ28を備えずに、イグニッションスイッチ26にリセットスイッチ28の機能を持たせて、イグニッションスイッチ26がオフからオンに切り替わったときに、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角とを合わせる処理を実行するようにしてもよい。
(変形例)
図7には、本発明の第1乃至第3の実施の形態に係る操舵装置10の変形例の概略が図示されている。本変形例に係る操舵装置10は、本発明の第1乃至第3の実施の形態に係る操舵装置10に補助モータ30を備えたものである。
そして、図8には、本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10の変形例の概略が図示されている。本変形例に係る操舵装置10は、本発明の第4の実施の形態に係る操舵装置10に補助モータ30を備えたものである。
図7、図8に示される補助モータ30は、ステアリングシャフト12Aに機械的に連結されており、自身の駆動力をステアリングホイール12のステアリングシャフト12Aの回転方向に沿って与える。
この補助モータ30は前述のECU14に電気的に接続されており、補助モータ30は、ECU14からの指示に応じて、モータ20と共にステアリングホイール12の回転方向とは反対方向に自身の駆動力を与える。
これらの変形例では、ステアリングホイール12の実際の回転位置はモータ20及び補助モータ30の双方の駆動力で制御され、ステアリングホイール12の実際の回転位置と操舵輪18の舵角に応じたステアリングホイール12の本来の回転位置とが合わせられる。これにより、ステアリングホイール12の実際の回転位置をより一層確実かつ容易に制御できる。
ここで、補助モータ30はステアリングシャフト12A(さらに言えば、ステアリングホイール12)をその本来の回転位置に位置させる(ここでは、回転移動させる、あるいは留める)のに使用されるものであるため、補助モータ30は、ステアリングシャフト12Aを本来の回転位置に位置させるのにモータ20の駆動力だけでは不足してしまう時に駆動させられるようにしてもよく、また、ステアリングシャフト12Aを本来の回転位置に位置させる時には常にモータ20と共に駆動させられるようにしてもよい。