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JP4744512B2 - ダイズの改良された形質転換法 - Google Patents

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JP4744512B2 JP2007513876A JP2007513876A JP4744512B2 JP 4744512 B2 JP4744512 B2 JP 4744512B2 JP 2007513876 A JP2007513876 A JP 2007513876A JP 2007513876 A JP2007513876 A JP 2007513876A JP 4744512 B2 JP4744512 B2 JP 4744512B2
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Description

本発明は、第一節又は第二節以上の葉節点の分裂組織細胞を標的組織として利用して、アグロバクテリウム媒介形質転換及びその後の形質転換細胞の全植物体への再生により、ダイズ(グリシン・マックス)植物のゲノムへDNAを組み込むための改良された方法に関する。
ダイズ(グリシン・マックス)は、マメ科(Fabaceae(Leguminosae))ファミリーに属する。この植物ファミリーは、その種子がマメ鞘(鞘)内で担持されるという特徴を持つ。ダイズは中国が起源であると考えられている。ダイズの野生型は天然ではツル植物であり、おそらくこれがダイスが初めて乾草作物としてアメリカに持ち込まれた主な理由である。中国、満州、韓国及び日本からの持込は、アメリカ用に品種開発をするために重要であった。より直立した成長、負荷の低減及び種子サイズの増大等の農業形質を改良するための近年の品種改良の試みは、ダイズを世界的に重要な作物にまで開発するための主な責任を負ってきた。穀物用に収穫される作物の耕地面積及び割合は着実に増え、今日、ダイズは世界的に主要な産物である。
栽培ダイズは、世界を通じて相当の商品価値を持つ。世界中で5000万ヘクタール以上が100メートルトンを超えるダイズの年間作物量を生産するのに使用されており、推定額は200億ドルを超える。従って、この作物の量及び質を改良するのに有用な科学的方法の開発は商業的関心からも大きな意義を持つ。
ダイズは、タンパク質、油、調味料及び化学原料の供与源として広く使用されている。栽培ダイズ種の質を改良するために、従来の植物品種改良により意義のある試みがなされており、いくつかの大成功が報告されている。しかし、従来の植物品種改良の方法は、一のダイズ品種から別の品種への遺伝子及び形質の移動に限定されていた。
近年の生物工学的研究及び開発により、植物遺伝子操作による農産物の改良のための有用な技術が提供されている。植物遺伝子工学は、1又は複数の所望の遺伝子を作物植物の遺伝性生殖細胞に導入して、これらの遺伝子を現代農業で使用されている選良品種中に又はその品種に組み込むことを含む。遺伝子導入技術により、病害抵抗性及び除草剤耐性が改良され、栄養価が高まった新しいクラスの選良作物品種の開発が可能となる。高速マイクロプロジェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、直接DNA取り込み、及びアグロバクテリウム媒介遺伝子形質転換を含む、遺伝子を植物組織に導入するための様々な方法が開発されている。
アグロバクテリウム媒介遺伝子形質転換は、植物において最も広く使用されている遺伝子導入技術である。この技術は、土壌細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の病原性を利用する。アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、T−DNAと呼ばれるそのDNAの一部を植物細胞のゲノムに導入し、それらの細胞を細菌の栄養摂取に有用な代謝産物を産生するように誘導する能力を自然に有する。アグロバクテリウム媒介形質転換は、アグロバクテリウムのT−DNAを外来遺伝子のセットと置き換えて、この細菌を、外来遺伝子を植物細胞のゲノムに導入可能なベクターにすることによって、この概念を利用している。典型的に、植物細胞に導入される外来遺伝子構築物は、化学選択化合物に対する耐性を植物細胞に付与する選択可能マーカーと結合した、植物の生殖細胞に導入されることが望ましい特定の目的遺伝子を含む。典型的に、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入は、カルス細胞として知られる、組織培養で培養された未分化細胞に対して行われるか、あるいは葉若しくは茎由来の分化植物細胞に対して導入が行われ、これをその後未分化カルス培養物になるように誘導する。
外来遺伝子をダイズ種に導入する方法の開発により、ダイズに付与することのできる形質の範囲が大いに向上した。ダイズへの有用な遺伝子導入系を得るために、いくつかの障害を克服しなければならない。これらとしては、標的組織の全植物体への再生の最適化、ダイズ細胞とアグロバクテリウム細胞との共存培養のための条件の確定(例えば、時間、細菌濃度及び培地)、並びに適切な選択プロトコールの確立が挙げられる。
しかし、パーティクルボンバードメント、エレクトロポレーション、又はアグロバクテリウム媒介送達を使用したダイズへのDNA送達は困難であることが分かっている。これは、一部には、ダイズにおいて全能性を有することが分かっている細胞が少数であることによるものである(Trickら(1997) Plant Tissue Cult Biotechnol 3:9-26)。DNA送達のためにアグロバクテリウム・ツメファシエンスを用いる方法は、ダイズ外植片とアグロバクテリウムとのあらゆる不適合を克服しなければならないというさらなる問題を抱えている。常套的に使用されている2つの方法は、子葉節の腋生分裂組織を標的とするアグロバクテリウムを用いる方法(Hincheeら(1988) Bio/Technology 6:915-922)、及び成熟接合胚のパーティクルボンバードメントを用いる方法(Finer及びMcMullen(1991) In Vitro Cell Dev Biol 27P:175-182)である。
体細胞胚発生に基づく方法が記載されている。すなわち、高レベルの2,4−D(40mg/L)に外植片を置くことによりダイズ未熟子葉から胚を誘導し、その後胚発生組織を誘導培地(Finer (1988) Plant Cell Rep 7:238-241)又は液体懸濁培養液(Finer及びNagasawa (1988) Plant Cell Tissue Organ Cult 15:125-136)において増殖させる。
接合性未熟子葉のアグロバクテリウム媒介形質転換に基づく方法がさらに記載されている(Parrottら(1989) Plant Cell Rep 7:615-617;Yanら(2000) Plant Cell Rep 19:1090-1097;Koら(2003) Theor Appl Genet 107:439-447)。しかし、Parrottらでは、作製された3つの植物は多細胞起源のキメラであり、導入遺伝子を次世代に伝達しなかった。Yanら(2000) Plant Cell Rep 19:1090-1097は、0.03%の低い形質転換頻度を報告している。作製された植物は導入遺伝子を次世代に伝達したが、これはおそらく形質転換された一次胚が二次胚の作製のために継続的に選択され、非キメラ植物を生じるためと思われる。最近、Koら(2003) Theor Appl Genet 107:439-447は、1.7%の形質転換頻度でのトランスジェニック植物の回収を報告しているが、この方法は、胚発生を促進するために機能的TR−DNA配列を有する部分的に安全化された(発癌性)アグロバクテリウムpKYRT株の使用に依存している(Koら(2004) Planta 218:536-541)。これらの方法は、未熟子葉を標的組織として使用し、その後固体培地上で増殖及び選択を行う。
ダイズ形質転換のための他の方法は、増殖性胚発生培養物のパーティクルボンバードメント形質転換に基づいている。稔性トランスジェニックダイズ植物が、パーティクルボンバードメントを用いて作製されている(Finer及びMcMullen(1991) In Vitro Cell Dev Biol 27P:175-182;Satoら(1993) Plant Cell Rep 12:408-413;Parrottら(1994) In Vitro Cell Dev Biol 30P:144-149;Hadiら(1996) Plant Cell Rep 15:500-505;Stewartら(1995) Plant Physiol 112:121-129;Maughanら(1999) In Vitro Cell Dev Biol-Plant 35:334-349)。これらの方法においては、液体及び固体培地の両方に由来する増殖性胚発生培養物をパーティクルボンバードメントに使用し、固体又は液体培地上にある間に即時に選択が行われる。
胚発生培養に基づく上記方法は、以下の欠点を1つ以上有する:
1.胚発生培養物の樹立及び胚発生の誘導のための未熟子葉を供給するために、温室で成長させた植物を継続的に供給する必要があること。
2.マイクロプロジェクタイルボンバードメントの場合は、ボンバードメントの前に固体又は液体培地上で少なくとも90日間にわたり体細胞胚の誘導を行う。ボンバードメント後、胚を選択培地に移し最長4週間又は胚が伸長するまで置く。生存している胚発生クラスターを成熟培地に移し、最低4週間置く。その後成熟胚を2〜7日間かけて乾燥させ、発芽培地上に3〜4週間播く。胚がシュート及び根を発育した後、それらをマゼンタボックスに移し2〜3週間おいた後、温室に移す。このプロセスは約9ヶ月から1年間かかる。
3.アグロバクテリウム感染の場合、未熟子葉を標的材料として使うことで、時間が3ヶ月短縮される。しかし、非キメラ植物を作製するためには、成熟胚を乾燥させて小植物体の発芽を誘導する前に、トランスジェニック一次胚から二次胚を作製する必要がある。
4.体細胞胚発生及びパーティクルボンバードメントの不稔性が問題である(Samoylovら(1998) Plant Cell Rep 18:49-54)。これは主に培養時間の長さによるものである(上記参照)。
5.体細胞胚の誘導及び増殖性胚発生培養物の形成は、遺伝子型に大きく依存する(Baileyら(1993) In Vitro Cell Dev Biol 29P:102-108;Baileyら(1993) Crop Sci 34:514-519;Simmonds及びDonaldson(2000) Plant Cell Rep 19:485-490)。
ダイズ形質転換の他の方法は、胚軸を標的組織として利用する。未熟胚軸のパーティクルボンバードメント形質転換の方法が開示されている(McCabeら(1988) Bio/Technology 6:923-926;Aragaoら(2000) Theor Appl Genet 101:1-6)。成熟不稔性種子の胚を切り出し、第一葉を取り除いて頂端分裂組織を露出させる。頂端分裂組織のボンバードメント後、外植片をシュート誘導培地に一晩移し、伸長シュートが出る前に外植片を回収/選択培地に2週間移す。3〜4週間後さらなるシュートが再生する。合計5〜7のシュートが再生し、Aragaoら(2000)では、これらのシュートの10%のみが伸長した。形質転換効率は0.1〜20.1%である。このグループはahas(アセトヒドロキシ酸シンターゼ)をトランスジェニック細胞の選択に使用したが、McCabeら(1988) Bio/Technology 6:923-926のプロトコールでは選択を適用していない。未熟胚軸のアグロバクテリウム媒介形質転換はさらに、1〜3%の形質転換効率でUS20030046733及び米国特許第6,384,301号に記載されている。プロトコールは上述のものと同様であるが、ボンバードメントの代わりにアグロバクテリウムを適用し、共存培養ステップを含んでいる。また、種子をホルモンで前処理することが記載されている。
子葉節の形質転換に関する他の方法は、例えばパーティクルボンバードメントによるものである(米国特許第5,322,783号)。子葉節は、水分吸収した種子から分裂組織を切除し、サイトカイニンで1日間前処理し、さらに1日間スクロース培地上で前培養した後に標的とされる。この特許では、形質転換植物は示されていない。おそらく、この方法では、細胞をパーティクルボンバードメントのために利用することが困難であると考えられる。形質転換植物は、子葉節のアグロバクテリウム・ツメファシエンス感染を利用することにより報告されている(Hincheeら(1988) Bio/Technology 6:915-922;Zhangら(1999) Plant Cell Tissue Organ Cult 56:37-46;Olhoft及びSomers(2001) Plant Cell Rep 20:706-711;Olhoftら(2003) Planta 216:723-735)。外植片を、5日齢の幼苗から調製し、アグロバクテリウム・ツメファシエンスに曝露する。共存培養の後、シュートを4週間にわたり選択条件下で誘導する。形質転換したシュートの伸長は、伸長培地上で早ければ4〜6週間で開始し、6ヶ月間続く。形質転換したシュートは、発根培地上で5〜7日間かけて発根させてから、温室に移す。
ダイズの形質転換に関連する問題のいくつかは当該分野で記載されている方法により克服されているが、それでもなお、これまでに公知の方法は全て低度から中度の形質転換(特に再生)効率しかないため改良の必要が有意にある。アグロバクテリウム媒介形質転換法の分野において有意な進歩はあったが、ダイズ植物の形質転換のためのこのような方法の容易性、迅速性及び効率を促進する改良された方法の必要性は残ったままである。従って、本発明の目的は、トランスジェニックダイズ植物の作出プロセスにおいて全体的な効率がより高い改良された方法を提供することである。この目的は本発明により解決される。
本発明は、主に第一節の葉節点、第二節以上の他の全ての葉節点に位置する分裂組織細胞へのT−DNA送達、及び成熟トランスジェニック植物への再生のために、アグロバクテリウム(アグロバクテリウム・ツメファシエンスを含む)を使用する。これらの標的組織には、幼苗段階でアグロバクテリウムを直接感染させる。
従って、本発明の第1の実施形態は、トランスジェニックダイズ植物の作製方法であって:
(a)ダイズ幼苗の第一節又は第二節以上の葉節点の腋生分裂組織を準備するステップ、
(b)該腋生分裂組織を、農学的に有用な形質についての少なくとも1つの植物発現カセットと任意により1以上の選択マーカー遺伝子を含むトランスジェニックT−DNAを含むアグロバクテリウムと共存培養するステップ、
(c)該共存培養した腋生分裂組織を、以下:
(i)該腋生分裂組織からの新たなシュート誘導を誘導するのに好適な濃度の少なくとも1つの植物成長因子、及び
(ii)任意により、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、組織若しくは植物体の同定及び/若しくは選択を可能にする1以上の選択化合物、及び/又は
(iii)任意により、アグロバクテリウム増殖を抑制するのに好適な1以上の抗生物質
を含むシュート誘導培地に移し、シュートが誘導され発育するまで上記共存培養した腋生分裂組織を培養し、該シュートを単離するステップ、並びに
(d)該単離したシュートを発根培地に移し、該シュートが根を形成するまで該発根培地で該シュートを栽培し、さらにそのようにして誘導された、農学的に有用な形質についての少なくとも1つの植物発現カセットと任意により少なくとも1つの選択マーカー遺伝子を含むT−DNAが挿入されたゲノムを有する小植物体を、成熟植物まで再生するステップ、
を含む方法に関する。
本発明の方法は、以下のステップ:
(a1)共存培養の前、その間又はその直後に外植片を傷つけるステップ、
(b1)ステップ(b)の後の共存培養した腋生分裂組織を、アグロバクテリウム増殖の抑制に好適な少なくとも1つの抗生物質及び任意により少なくとも1つの植物成長因子を含む培地に移すステップであって、該培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ、
(b2)ステップ(b)及び任意によりステップ(b1)の後の腋生分裂組織を、少なくとも1つの植物成長因子を含むシュート誘導培地(SIM)においてさらにインキュベートするステップであって、該シュート誘導培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ、
(c1)ステップ(c)の後のシュートを、以下:
(i)シュートが伸長するのに好適な濃度の少なくとも1つの植物成長因子、及び
(ii)任意により、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、組織又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする1以上の選択化合物
を含むシュート伸長培地に移し、該移したシュートを、少なくとも約2cmの長さに伸長するまで該シュート伸長培地で栽培するステップ、
からなる群より選択される1以上の追加ステップを含むことが好ましい。
第一節又は第二節以上の節の腋生分裂組織は、様々な形態で提供され得る。
(a)方法A:幼苗腋生分裂組織:幼苗全体又はその実質的な部分(根を欠損する幼苗、又は1若しくは両方の子葉を欠損する幼苗等)が利用でき、アグロバクテリウムを接種し、シュート誘導培地(SIM)に置く。実質的に幼苗全体とは以下の材料からなる群より選択されることが好ましい。すなわち、
(i)幼苗全体、
(ii)根を取り除いた幼苗、
(iii)1又は両方の子葉を取り除いた幼苗、
(iv)根、及び1又は両方の子葉を取り除いた幼苗、並びに
(v)根、両方の子葉及び上胚軸の一部を取り除き、上胚軸の一部に付いている腋生分裂組織が残っている幼苗。
(b)方法B:葉腋分裂組織:腋生分裂組織が葉の葉柄に付いて残るように第一葉又は第二葉以上の葉を切開し、アグロバクテリウム溶液に浸し、共存培養培地において共存培養し、シュート誘導培地(SIM)に置く。
(c)方法C:増殖させた腋生分裂組織:発芽した(好ましくは約)7日齢の各幼苗から、胚軸及び子葉の1つと半分又は両方の一部を取り除く。次いで、幼苗を増殖培地上に2〜4週間置く。1つのシュートを主要頂芽の成長から得、場合により1つを子葉節における各腋芽からの成長より得る。各シュートは約7cmの長さで成長し、短い節間を3〜6つ含み、そこから外植片が得られる(図3A)。第一節〜第四節の葉節点から腋生節(axillary node)を切除できる。各幼苗から平均3〜4の外植片が得られる。
上で明記した供与源(方法A、B、C)以外に、他の供与源も腋生分裂組織に適している可能性がある。これらの供与源は、例えば、上胚軸及び第一葉節のみ等、ダイズ幼苗からのより限定された外植片であり得る。明らかに、このような限定された(すなわち小さい)外植片は、第一節からだけでなく、それより上の節(例えば、第二節以上の節)からも得られる。
腋生分裂組織外植片作製の供与源をもたらすダイズ幼苗は、外植片を作製する前に約4〜10日間かけて発芽させることが好ましい。本発明は、アグロバクテリウム媒介形質転換をダイズ幼苗の第一節又は第二節以上の葉節点の腋生分裂組織細胞に対して直接用いてダイズの生殖細胞形質転換を行う新規かつ効率的な方法を提供する。形質転換された腋生分裂組織細胞から直接的にシュートを誘導することにより、生殖細胞トランスジェニック植物が生じる。全体的なプロセスは迅速かつ効率的である。本発明の特筆すべき特徴の1つは、ダイズ種子の前処理期間の短縮により、生存外植片のシュートの生成が改善され、温室に移すことが可能な植物を作製するのにかかる時間が短縮した。また、時間の短縮及び材料の低減により、使用者にとって経済的に有益な系が提供される。本発明は、(特に再生ステップにおいて)品種(cultivar)に高度に依存することが当該分野において知られているカルス培養のステップを必要としない。その結果、腋生分裂組織細胞は全てのダイズ品種に存在し事実上全てが同様の再生能力を有するため、本発明の方法は、あらゆるダイズ変種及び品種に対して使用できる。
様々なアグロバクテリウム菌株が利用できる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス及びアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の菌株を用いることができる。好適な実施形態では、「安全化(disarmed)」株(すなわち、腫瘍又は毛根表現型誘導遺伝子が欠失されたもの)が利用される。特に好適なアグロバクテリウム・リゾゲネス株は、安全化アグロバクテリウム・リゾゲネスK599株又はその誘導株である。このような株は、2004年9月2日に出願された米国仮出願第60/606789号に記載されている(参照により本明細書に全体的に援用する)。
本発明の好適な実施形態では、腋生分裂組織を、アグロバクテリウムでの接種の前に傷つける。
別の好適な実施形態では、ステップ(b)、(b1)、(b2)及び/又は(c)の少なくとも1つのステップの培地は、サイトカイニン(例えば、6−ベンジルアミノプリン(BAP)等)を含む。濃度は、約1μM〜約10μM 6−ベンジルアミノプリン(BAP)であることが好ましい。
さらに、ステップ(b)、(b1)、(b2)、(c)及び/又は(c1)の少なくとも1つのステップ、好ましくは少なくともステップ(b)及び(c1)の培地は、約0.1μM〜約2μMジベレリン酸(GA3)を含むことが特に好ましい。
別の好適な実施形態では、ステップ(b)、(b1)、(b2)及び(c)の少なくとも1つのステップ、好ましくは少なくともステップ(b)の培地は、少なくとも1つのチオール化合物(好ましくはチオ硫酸ナトリウム、ジチオトレイトール(DTT)及びシステインからなる群より選択される)を含む。濃度は約1mM〜10mMのL−システイン、0.1mM〜5mM DTT、及び/又は0.1mM〜5mMチオ硫酸ナトリウムであることが好ましい。
本発明の別の好適な実施形態では、ステップ(c1)及び/又は(d)の少なくとも1つのステップの培地は、約0.01mg/l〜約1μM mg/lインドール酢酸(IAA)、及び/又は約0.1μM〜約4μMジベレリン酸(GA3)、及び/又は約0.5μM〜約6μMゼアチンリボシド酸を含む。
本発明のその他の目的、利点及び特徴は、以下の説明から明らかになろう。
全般的な定義
略語:
BAP:6−ベンジルアミノプリン;2,4−D:2,4−ジクロロフェノキシ酢酸;MS:ムラシゲ・スクーグ培地(Murashige T及びSkoog F(1962) Physiol. Plant. 15, 472-497);NAA:1−ナフタレン酢酸;MES:2−(N−モルホリノ−エタンスルホン酸;IAA:インドール酢酸;IBA:インドール酪酸;Kan:硫酸カナマイシン;GA3:ジベレリン酸;TimentinTM:チカルシリン二ナトリウム(ticarcillin disodium)/クラブラン酸カリウム)。
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、細胞系、植物種又は属、構築物及び試薬に限定されないことが理解されよう。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されることが理解されよう。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する単数形の「不定冠詞(a)」、「及び/並びに(and)」、及び「定冠詞(the)」は、特に明記しない限り複数形も含むことに留意されたい。従って、例えば、「ベクター」への言及は、1つ以上のベクターを指し、当業者に公知の等価物を含み、その他も同様である。
本明細書において用いられる「約」という用語は、およそ、おおよそ、大体、又は辺りを意味する。「約」という用語が数値域と併用される場合、記載の数値の上下にその境界を広げることによって範囲が変更する。全般的に、本明細書で用いられる「約」という用語は、表記の数値を、その値の20%、好ましくは10%、より好ましくは5%の上下(高低)変動を含むように上下に変更する。
本明細書で使用する「若しくは/又は(or)」という用語は、特定の一覧の任意の1メンバーを意味し、その一覧のメンバーの任意の組合せも含む。
「核酸」という用語は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、それらのポリマー又はハイブリッド(一本鎖又は二本鎖、センス又はアンチセンスのいずれかの形態)を指す。特に明記しない限り、特定の核酸配列は、明確に表記する配列と共に、保存的に改変されたその変異体(例えば、縮重コドン置換物)、及び相補配列も暗に包含する。「核酸」という用語は、本明細書において、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」と互換的に使用される。
本明細書で使用する「核酸配列」という表現は、ヌクレオチドを表す略語、文字、符号又は言葉の連続したリストを指す。一実施形態では、核酸は、比較的短い(通常、100ヌクレオチド長未満の)核酸である「プローブ」であり得る。核酸プローブは約50ヌクレオチド長から約10ヌクレオチド長である場合が多い。核酸の「標的領域」は、対象となる部分と同定された核酸の部分である。核酸の「コード領域」は、適切な調節配列の制御下におかれた場合に、配列特異的に転写及び翻訳されて特定のポリペプチド又はタンパク質が生成される核酸の部分である。コード領域は、このようなポリペプチド又はタンパク質をコードするという。
「アンチセンス」という用語は、標的配列に相補的な配列を有する核酸を意味すると理解される(例えば、標的配列とのハイブリダイゼーションによりその発現が妨害され始めると考えられるメッセンジャーRNA(mRNA)配列)。
「センス」という用語は、標的配列と相同又は同一である配列を有する核酸を意味すると理解される(例えば、タンパク質転写因子に結合し、所与の遺伝子の発現に関与する配列)。好適な実施形態においては、核酸は、目的の遺伝子、及び該目的の遺伝子の発現を可能にするエレメントを含む。
「遺伝子」という用語は、何らかの方法でポリペプチドの発現を調節可能な適切な調節配列と機能的に結合したコード領域を指す。遺伝子は、コード領域(オープンリーディングフレーム、ORF)の前(上流)及び後(下流)にあるDNAの非翻訳調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー等)、並びに適用可能な場合には個々のコード領域(すなわちエキソン)の間に介在配列(すなわちイントロン)を含む。
本明細書で使用する「コード領域」という用語は、構造遺伝子に関して使われた場合には、mRNA分子の翻訳の結果生じる新生ポリペプチドにおいて見とめられるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を指す。コード領域は、真核生物では、開始メチオニンをコードする塩基トリプレット「ATG」により5’側を、及び終止コドンを特定する3つのトリプレット(すなわち、TAA、TAG、TGA)の1つにより3’側を挟まれる。イントロンの含有に加えて、遺伝子のゲノム形態は、RNA転写産物上に存在する配列の5’側及び3’側の両末端に位置する配列も含む。これらの配列は、「フランキング」配列又は領域と称される(これらのフランキング配列は、mRNA転写産物上に存在する非翻訳配列の5’又は3’側に位置する)。5’側フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するか又は影響を及ぼすプロモーター及びエンハンサー等の調節配列を含み得る。3’側フランキング領域は、転写の終止、転写後切断及びポリアデニル化を指示する配列を含み得る。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、「遺伝子産物」、「発現産物」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において連続したアミノ酸残基のポリマー又はオリゴマーを指すために互換的に使用される。
本明細書で使用する「単離された」という用語は、ある物質がその元来の環境から取り出されていることを意味する。例えば、生きた動物に存在する天然型ポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、自然系において共存する物質の一部又は全てから分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されたという。
このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であってよく、及び/又はこのようなポリヌクレオチド若しくはポリペプチドは組成物の一部であってもよく、このようなベクター又は組成物が元来の環境の一部とはならないように単離され得る。
「野生型」、「天然型」又は「天然由来」という用語は、生物、ポリペプチド又は核酸配列に関して、該生物が天然のものであること、又は変化、変異若しくは人為的に操作されていない少なくとも1つの天然の生物に存在することを意味する。
本明細書で(例えば、ダイズ細胞又は植物に関して)使用する「トランスジェニック」又は「組換え」という用語は、外因性遺伝子又はDNA配列、例えば限定されるものではないが、通常ではおそらく存在しない遺伝子若しくはDNA配列、所与の細胞型において通常では転写及び翻訳(「発現」)されない遺伝子、又は非形質転換細胞及び/若しくは植物に導入することが望ましい任意の他の遺伝子若しくはDNA配列(例えば、非形質転換細胞及び/又は植物に通常存在するが、発現の改変が望ましい遺伝子等)などを取り込んだ細胞及び/又は植物を指すことを意図する。本明細書において核酸に関して使用する「組換え」という用語は、核酸が、自然環境においては隣接しない核酸と共有結合及び隣接していることを意味することが好ましい。「組換え」ポリペプチド又はタンパク質は、組換えDNA技術により作製される(すなわち、所望のポリペプチド又はタンパク質をコードする外因性組換えDNA構築物により形質転換された細胞から作製される)ポリペプチド又はタンパク質を指す。組換え核酸及びポリペプチドはまた、自然ではそのように存在しないが改変、変化、変異又は人為的に操作された分子も含み得る。
「組換えポリペプチド」は、天然型ポリペプチドと、少なくとも1つのアミノ酸残基により配列が異なる非天然型ポリペプチドである。このような組換えポリペプチド及び/又は核酸を生成するための好ましい方法としては、特異的又は非特異的突然変異誘導、DNAシャフリング、又は再帰的組換え(recursive recombination)の他の方法が挙げられる。
「異種核酸配列」又は「異種DNA」という用語は、自然界ではライゲートしていないか、又は自然界では異なる位置においてライゲートしている核酸配列にライゲートしたヌクレオチド配列を指すために互換的に使用される。異種DNAは、導入先の細胞に対して内因性ではなく、別の細胞から得られるものである。一般的に、必ずしもそうではないが、このような異種DNAは、それが発現される先の細胞により通常は生成されないRNA及びタンパク質をコードする。
本明細書で使用する「形質転換の効率」又は「形質転換の頻度」とは、標準的な(すなわち、外来DNAと接触させる細胞の量、送達DNAの量、DNA送達の種類及び条件、全般的な培養条件等に関して標準化又は正規化された)実験条件下で回収される形質転換された細胞(又は個々の形質転換細胞から成長したトランスジェニック生物)の数により測定できる。例えば、単離した葉柄を形質転換の出発材料として使用した場合、形質転換の頻度は、接種した葉柄当たりに得られるトランスジェニックシュート(又は得られる植物系統)の数として表すことができる。
「(単数形の)細胞」という用語は、単一の細胞を指す。「(複数形の)細胞」という用語は、細胞の集合を指す。集合は、1つの細胞型を含む純粋な集合であり得る。同様に、集合は2つ以上の細胞型を含み得る。本発明では、細胞の集合が含み得る細胞型の数は限定されない。細胞は同調していても同調していなくてもよいが、好ましくは細胞は同調している。
「染色体DNA」又は「染色体DNA配列」という用語は、細胞周期状態とは無関係に細胞核のゲノムDNAであると理解される。従って、染色体DNAは、染色体又は染色分体において編成され、凝縮(condense)又はほどかれた状態(uncoil)であり得る。染色体DNAへの挿入は、当該分野で公知の様々な方法(例えば、PCR分析、サザンブロット分析、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、及びin situ PCR)により実証及び分析することができる。
本明細書で使用する「構造遺伝子」という用語は、mRNAに転写されて、その後特定のポリペプチドに特有のアミノ酸配列に翻訳されるDNA配列を意味することを意図する。
「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成を指す。例えば、構造遺伝子の場合、発現は構造遺伝子のmRNAへの転写、及び任意にその後1つ以上のポリペプチドへのmRNAの翻訳を伴う。
本明細書で使用する「発現カセット」又は「発現構築物」という用語は、プロモーター配列、並びに任意により該核酸配列の発現を促進する追加のエレメント(例えば、ターミネーター及び/又はポリアデニル化配列等)と機能的に連結された発現対象の核酸配列の組合せを意味することを意図する。
本明細書で使用する「プロモーター」という用語は、DNA配列(例えば、構造遺伝子)の転写を指令するDNA配列を意味することを意図する。典型的に、プロモーターは、遺伝子の5’側領域に、構造遺伝子の転写開始部位近くに配置されている。プロモーターが誘導性プロモーターである場合、誘導因子に応答して転写率は高くなる。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターである場合、転写率は誘導因子によって調節されない。また、プロモーターは、葉、根又は分裂組織等の特定の組織型の関連するコード領域を転写することのみに活性を有するように組織特異的又は組織選択的に調節され得る。
「機能的な結合」又は「機能的に結合した」という用語は、例えば、調節エレメント(例えば、プロモーター)と、発現対象の核酸配列(及び適切な場合にはさらなる調節エレメント(例えば、ターミネーター等))とが、各調節エレメントがその意図する機能を発揮して、該核酸配列の発現を可能にする、改変する、促進する又は影響を及ぼすように順次的に配置されることを意味すると理解される。発現は、センス又はアンチセンスRNAに対する核酸配列の配置に依存して生じ得る。この意味においては、化学的な意味での直接的な結合は必ずしも必要ではない。例えばエンハンサー配列等の遺伝子制御配列は、離れた位置から又は実際に他のDNA分子から、標的配列に対してそれらの機能を発揮することもできる。好ましい配置は、組換え発現させる核酸配列がプロモーターとして作用する配列の後ろに位置し、2つの配列が互いと共有結合しているものである。プロモーター配列と、組換え発現させる核酸配列との距離は、好ましくは200塩基対未満、特に好ましくは100塩基対未満、非常に好ましくは50塩基対未満である。機能的な結合及び発現カセットは、記載されている常套的な組換え及びクローニング技術により作製できる(例えば、Ausubel FMら (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience;Maniatis T, Fritsch EF及びSambrook J(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor(NY);Gelvinら(編)(1990) Plant Molecular Biology Manual;Kluwer Academic Publisher, Dordrecht, The Netherlands;Silhavy TJ, Berman ML及びEnquist LW(1984) Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor(NY))。しかし、例えば制限酵素のための特定の切断部位とのリンカーとして又はシグナルペプチドとして作用するさらなる配列を、2つの配列の間に配置させることもできる。配列の挿入もまた、融合タンパク質の発現を生じ得る。プロモーターと発現対象の核酸配列との連結から構成される発現カセットは、ベクター組込み形態で存在し、例えば形質転換により植物ゲノムに挿入されることが好ましい。
「形質転換」という用語は、好ましくは染色体組込み、及び減数分裂を介して安定した遺伝率を生じる、植物細胞への遺伝子物質の導入を含む。形質転換はまた、減数分裂安定性に対して可変的な性質を示し得る染色体外(epichromosomal)複製及び遺伝子発現を伴う、植物ウイルスベクターの形態での植物細胞への遺伝子物質の導入も含む。
「分裂組織(meristem)」又は「分裂組織細胞」又は「分裂組織(meristematic tissue)」という用語は、互換的に使用でき、茎又は根の先端で見とめられるような、継続的に分裂して新しい細胞を形成する未分化植物組織を意味することを意図し得る。
「節」又は「葉節点」という用語は、葉が付いているか又は付いていた茎上の点を意味することを意図する。「節間」という用語は、茎上の2つの節の間の領域又は部分を意味することを意図する。
「葉柄(petiole)」という用語は、葉と茎とをつなげる柄を意味することを意図し、葉の柄(leaf-stalk)とも呼ばれる。
「腋芽」という用語は、茎又は枝に沿ってある、場合によっては保護鱗片(protective scale)に囲まれ、未発達の芽、葉又は花を含む、側芽とも呼ばれる小さい隆起を意味することを意図する。
「胚軸」という用語は、子葉(双葉)と根との間にある茎の部分を意味することを意図する。
「葉腋」という用語は、葉とそれを有する茎との間の角を意味することを意図する。腋芽は葉腋において生じる。
「子葉」という用語は、発芽の際に種子内に残るか又は出現して大きくなり緑になる種子植物の胚の葉を意味することを意図する。双葉とも呼ばれる。ダイズ種子は、子葉又は双葉である2つの種子半体(seed halves)から構成される。2つの子葉は、幼苗が確立するまでそれに栄養分を与える食物及び栄養の蓄えを含む。発生中の鞘中では子葉の色は緑であるが、現存の穀物品種では植物が成熟するにつれて黄色に変化する。胚軸は子葉の間に位置し、珠孔に最も近い端部付近に付いている。
発芽プロセスは、種子が好適な環境(正しい温度、水及び酸素を含む)に曝された場合に開始される。幼根は、ダイズ発芽プロセスにおいて、通常一番最初に種皮を破る器官である。これは、ダイズ植物の一次根に発育する。幼根は、種皮から現れた後、主に下に向かって育ち、主根に発達する。側枝根(lateral branch root)は主根から発達する。ダイズ種子が発芽プロセスを開始した後は、下胚軸[幼根(若い一次根)と子葉との間の茎の一部]が伸長し、膨らんだ子葉を土の表面に向かって引っ張る。種皮は通常、子葉が土から現れる頃には抜け落ちている。子葉が現れて間もなく、胚軸は伸長を停止し、屈曲部(胚軸(hypocotyledonary)アーチ)がまっすぐになる。次いで、子葉が分裂し、上胚軸が露出し、成長し始める。上胚軸は、最初は2つの単小葉(1枚の小葉しかない葉)と、それらの間に位置する成長点から構成される。ダイズ植物の地上成長は上胚軸から始まる。
上胚軸から発育する茎は、植物の主要な支持及び輸送(translocating)構造である。主茎の節は速く形成し、全ての節の形成にたった4〜5週間しか要さない。節は、主茎からの葉又は枝の存在により識別することができる。節間(節の間の領域)の長さは遺伝的に制御されているが、光、水、栄養及び他の環境要因によっても改変され得る。腋芽からの分枝は、主茎先端がそれ以上芽の発育を抑制できなくなった場合に生じる。
主茎の子葉節及び第二節以外においては、ダイズ植物は、節のそれぞれにおいて、茎のそれぞれの側に交互に付いた単一の三小葉の葉(3枚の小葉を有する葉)を有する。2枚の単小葉の葉(葉柄及び単一の小葉から構成される)は、第二節において互いと対向して付いている。第1の三小葉の葉は第三節に付いている。葉柄は、葉を主茎又は枝につなげる。一対の槍形(lance-shaped)の変形葉(托葉)は、葉柄−茎接合部にある葉柄の基部に位置する。葉柄の基部及び各小葉の基部において、葉枕と呼ばれる細胞の大集団が存在する。葉枕の相対的膨張(turgidity)(水分含有量)の変化は、小葉と葉柄との間で異なる角度を形成する。
各葉腋(茎と枝又は葉との接合部)において、腋芽が存在する。この芽は、環境に応じて、枝や花房に発達するか又は発達に失敗し得る。
本発明は、様々な変種のダイズ(グリシン・マックス)の直接的な生殖細胞系遺伝子形質転換の方法である。この方法は、発芽ダイズの第一節又は第二節以上の節の腋生分裂組織における個々のダイズ細胞へのアグロバクテリウム媒介遺伝子送達に基づいている。その後、形質転換された細胞をシュートを形成するように誘導するが、これは高頻度で生殖細胞系ダイズ形質転換体であり、性的に成熟しかつ稔性のトランスジェニックダイズ植物体に栽培することができる。この方法は、カルス培養期間を伴わないため、種子からトランスジェニック種子までの全体的なプロセスの時間が著しく短くなる。
従って、本発明の第1の実施形態は、トランスジェニックダイズ植物の作製方法であって、
(a)ダイズ幼苗の第一節又は第二節以上の葉節点の腋生分裂組織を準備するステップ、
(b)該腋生分裂組織を、農学的に有用な形質についての少なくとも1つの植物発現カセットと任意により1以上の選択マーカー遺伝子を含むトランスジェニックT−DNAを含むアグロバクテリウムと共存培養するステップ、
(c)該共存培養した腋生分裂組織を、以下:
(i)該腋生分裂組織からの新たなシュート誘導を誘導するのに好適な濃度の少なくとも1つの植物成長因子、並びに
(ii)任意により、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、組織若しくは植物体の同定及び/若しくは選択を可能にする1以上の選択化合物、並びに/又は
(iii)任意により、アグロバクテリウム増殖を抑制するのに好適な1以上の抗生物質
を含むシュート誘導培地に移し、シュートが誘導され発育するまで上記共存培養した腋生分裂組織を培養し、該シュートを単離するステップ、
(d)該単離したシュートを発根培地に移し、該シュートが根を形成するまで該発根培地で該シュートを栽培し、さらにそのようにして誘導された、農学的に有用な形質についての少なくとも1つの植物発現カセットと任意により少なくとも1つの選択マーカー遺伝子を含むT−DNAが挿入されたゲノムを有する小植物体を、成熟植物まで再生するステップ、
を含む方法に関する。
本明細書に記載の方法は、第一節又は第二節以上の葉節点の腋生分裂組織における成長中の細胞へのアグロバクテリウム媒介遺伝子送達に基づく。本明細書に記載の方法は、カルス又は増殖期間を利用しない。その代わりに、アグロバクテリウム媒介遺伝子送達は、ダイズ幼苗の第一節又は第二節以上の節の腋生分裂組織の中の細胞に対して行われる。腋生分裂組織は、完全幼苗に含まれているときにアグロバクテリウムを接種されるか、又は外植片(例えば、切り出した葉柄若しくは葉)に付いているものであってもよい。その後、腋生分裂組織領域を、直接的にシュート形成を誘導するためにホルモンの存在下で培養する。選択マーカー(例えば、除草剤ホスフィノトリシン又はD−アミノ酸(例えばD−アラニン又はD−セリン等))の存在下で分裂組織を培養することが好ましい。このステップの結果、ダイズシュートの形成が誘導され、これは、形質転換された分裂組織細胞を含む小さい細胞クラスターから生じる。この方法に必要とされる時間は、他のアグロバクテリウム媒介形質転換プロトコールと比べて大幅に短縮される。実行可能な表現型について陽性を示すダイズシュートは、手順の開始から4〜6週間で回収できる。全体的なT(一次形質転換)植物ライフサイクルは、ダイズ植物が温室において成熟するまで成育するのに必要な最低期間より大幅に長くない。
本発明の方法は、従来技術で記載されている方法と比べて1つ以上の利点を提供する。
(1)腋生分裂組織方法については、約4〜10日齢、好ましくは約7日齢の発芽幼苗が必要となる。本発明の方法を使用すれば、胚発生培養に比べて培養物を樹立するための手順が簡素化される。
(2)本方法は時間効率的である。腋生分裂組織方法に基づく本発明の方法は、アグロバクテリウム感染後約2週間以内に新たなシュートを生成し、アグロバクテリウム感染の約3週間以内にトランスジェニックシュート原基が検出できる。アグロバクテリウム感染後の腋生分裂組織形質転換のプロセスは、シュート誘導培地上で3〜4週間、シュート伸長培地上で最短で2〜4週間、及び発根培地上で7日間である。
(3)アグロバクテリウム媒介方法を用いて作製される植物は、パーティクルボンバードメントに比べて、ゲノムへの導入DNAの複数コピー又は断片化コピーの組込みに関連する問題が少ない(Hadiら(1996) Plant Cell Rep 15:500-505;Trickら (1997) Plant Tissue Cult Biotechnol 3:9-26)。
(4)本発明の方法は、遺伝子型及び品種に高度に依存する。腋生分裂組織の発育は、幅広い遺伝子型において生じ易い。このプロセスにおけるダイズ組織操作は、従来の粒子媒介形質転換方法のものと類似しており、これは試験された全ての選良ダイズ変種に適用可能であることが証明されている。この方法は、選良ダイズ品種への直接的な遺伝子形質転換のために同等に適用され、従って、変種間の広範囲な異種交配の必要性が潜在的に回避できる。
(5)胚軸形質転換に基づく方法は、外植片当たり3〜7のシュートしか提供しない。腋生分裂組織形質転換に基づく本発明の方法の時間は、植物作製と同様である。利点は、複数のトランスジェニックシュートを生じて(培養物から温室への可能性を高める)、トランスジェニック細胞がシュート伸長のために選択される可能性を高める、多数(数百から数千)のシュート原基の増殖である。
(6)腋生分裂組織形質転換に基づく本発明の方法は、シュート誘導培地上で形成されるカルス/シュートパッド(callus/shoot pad)の組織量(tissue mass)が子葉節に比べて小さいため、より選択し易い。選択化合物の取込みに関与する下胚軸及び/又は上胚軸は、より硬く組織化された子葉と比べて改善された取込み特性を提供すると思われる。
(7)葉外植片及び増殖させた外植片の組織サイズが小さいため、本発明の方法は、培養プロセスほど培地、材料及び空間を必要としない。子葉節の場合には1プレートにつき5つの外植片しか培養できないが、増殖外植片及び葉外植片の場合には単一のプレート上で20まで培養することができる。
(8)増殖させた腋生分裂組織に基づく変種については、豊富な標的材料(すなわち、複数の外植片)が、3〜4週齢の増殖小植物体に由来する材料から得られるというさらなる利点がある。1つのシュートは、主要な頂芽の成長から誘導され、場合により子葉節にある各腋芽から成長する。各シュートは、約7cmの長さまで成長し、3〜6の短い節間を含み、外植片を得ることができる。小さいサイズの外植片は、アグロバクテリウム感染、選択及び再生において影響を受け易く、増殖させた腋生分裂組織は、驚くべきことに再生能が高いことが証明され、中間のカルス期無しに植物を作製する。小さいサイズの外植片及びシュートの活発な成長は、現在の形質転換法においては問題となっている形質転換細胞の選択に都合がよい。
形質転換プロセスのための出発材料はダイズ種子である。種子は、最初に滅菌し、任意により浸漬させて柔軟にする。種子を約3分間水吸収させた後、最長2時間かけて柔軟化させる。次に、種子を発芽培地上におき、約4〜10日間、好ましくは約5〜8日間、最も好ましくは約7日間かけて発芽させる。上胚軸はこの時点で、増殖腋生分裂組織及び葉腋分裂組織方法については約0.5cmであり、幼苗腋生分裂組織方法については概して0.5〜2cmであることが好ましい。発芽は、高光条件(>100μMm−2−1)下で25℃にて行うことが好ましい。
アグロバクテリウム媒介形質転換のために用いられる標的組織は、第一節又は第二節以上の葉節点に含まれる腋生分裂組織である。第一葉節点は、根から葉の方向に向かって、子葉節(すなわち、子葉が付くか又は付いている茎上にある点)の直後にある節(すなわち、葉が付いているか又は付いていた茎上にある点)である。それより上の葉節点は、第一葉節点に続く全ての葉節点、例えば、第二節、第三節、第四節の葉節点等である。第一葉節点の腋生分裂組織が好ましい。
第一節又は第二節以上の節の腋生分裂組織は、後で行うアグロバクテリウム共存培養ステップにおいて様々な形態で提供及び使用され得る。
(a)方法A:幼苗腋生分裂組織:幼苗全体又はその実質的な部分(根を欠損する幼苗、又は1若しくは両方の子葉を欠損する幼苗等)が利用でき、アグロバクテリウムを接種し、シュート誘導培地(SIM)におくことができる。実質的に幼苗全体とは以下の材料からなる群より選択されることが好ましい。すなわち、
(i)幼苗全体、
(ii)根を取り除いた幼苗、
(iii)1又は両方の子葉を取り除いた幼苗、
(iv)根、及び1又は両方の子葉を取り除いた幼苗、並びに
(v)根、両方の子葉及び上胚軸の一部を取り除き、上胚軸の一部に付いている腋生分裂組織が残っている幼苗。
(b)方法B:葉腋分裂組織:腋生分裂組織が葉の葉柄に付いて残るように第一葉又は第二葉以上の葉を切開し、アグロバクテリウム溶液に浸し(接種し)、共存培養培地において共存培養し、シュート誘導培地(SIM)に置く。小さいサイズの外植片及びシュートの活発な成長は、現在の形質転換法においては問題となっている形質転換細胞の選択に都合がよい。
(c)方法C:増殖させた腋生分裂組織:発芽した(好ましくは約)7日齢の各幼苗から、胚軸及び子葉の1つと半分又は両方の一部を取り除く。次いで、幼苗を増殖培地上に2〜4週間置く。幼苗は、分枝状のシュートを生成し、そこから外植片が得られる(図3A)。第一節〜第四節の葉節点の腋生節を切除できる。各幼苗から平均3〜4の外植片が得られる。
上で明記した供与源(方法A、B、C)以外に、他の供与源も腋生分裂組織に適している可能性がある。これらの供与源は、例えば、上胚軸及び第一葉節のみ等、ダイズ幼苗からのより限定された外植片であり得る。明らかに、このような限定された(すなわち小さい)外植片は、第一節からだけでなく、より上の節(例えば、第二節以上の節)からも得られる。
本発明の方法は、以下からなる群より選択される1以上の追加のステップを含むことが好ましい。すなわち、
(a1)共存培養の前、その間又はその直後に外植片を傷つけるステップ、
(b1)ステップ(b)の後の共存培養した腋生分裂組織を、アグロバクテリウム増殖の抑制に好適な少なくとも1つの抗生物質及び任意により少なくとも1つの植物成長因子を含む培地に移すステップであって、該培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ、
(b2)ステップ(b)及び任意によりステップ(b1)の後の腋生分裂組織を、少なくとも1つの植物成長因子を含むシュート誘導培地(SIM)においてさらにインキュベートするステップであって、該シュート誘導培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ、
(c1)ステップ(c)の後のシュートを、以下:
(i)シュートが伸長するのに好適な濃度の少なくとも1つの植物成長因子、及び
(ii)任意により、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、組織又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする1以上の選択化合物
を含むシュート伸長培地に移し、該移したシュートを、少なくとも約2cmの長さに伸長するまで該シュート伸長培地で栽培するステップ。
本発明の好適な実施形態では、腋生分裂組織を傷つける(ステップ(a1))。創傷は、本発明の方法に対して少なくとも2つの向上効果を有すると思われる。すなわち、
(i)創傷は、アグロバクテリウム感染及び遺伝子導入効率を促進する、
(ii)創傷は、おそらく分裂組織接合を破壊し、外植片組織から発育するシュートの数を有意に増やすことにより、新たなシュート誘導の効率を促進する。
創傷は、アグロバクテリウムによる接種(共存培養)の前、接種の間、又は接種の後に行うことができる。両方の有益な効果を得るために、創傷は、好ましくは共存培養の前又はその間、より好ましくは共存培養の前に行う。多くの創傷方法が使用でき、例えば、切断、摩擦、穿通、穴あけ、微粒子若しくは加圧流体での貫通、プラズマ創傷、高圧加圧、又は超音波処理が挙げられる。創傷は、メス、ハサミ、針、研磨物、エアブラシ、粒子、電子遺伝子銃、又は音波等(ただし、これらに限定されない)の物を用いて行うことができる。共存培養ステップの効率を向上させるための別の代替例は減圧浸潤法である(Bechtoldら(1998) Meth. Mol. Biol. 82, 259-266;Trieuら(2000) The Plant Journal 22(6), 531-541)。
T−DNAは、アグロバクテリウム媒介DNA導入によりダイズに導入される。本明細書で使用する「アグロバクテリウム」という用語は、アグロバクテリウムファミリーの全ての種(アグロバクテリウム・ツメファシエンス及びアグロバクテリウム・リゾゲネスを含む)を意味する。形質転換は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス又はアグロバクテリウム・リゾゲネスの菌株を用いて実現されることが好ましい。アグロバクテリウム媒介DNA導入による植物形質転換の原理は、当該分野で周知である(Horsch RBら(1985) Science 225:1229pp)。
アグロバクテリウム菌株は、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子と、任意により農学的に有用な形質についての追加の植物発現カセットを含むT−DNAを含むDNA構築物(例えば、プラスミド)を有しうる。アグロバクテリウム媒介導入の結果、該T−DNAは通常、形質転換及び再生の後には、植物組織の全て又は実質的に全ての細胞に存在することになる。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス及びA.リゾゲネスは、植物細胞を遺伝的に形質転換させる植物病原性土壌菌である。A.ツメファシエンス及びA.リゾゲネスそれぞれのTiプラスミド及びRiプラスミドは、植物の遺伝子形質転換に関与する遺伝子を含んでいる(Kado(1991) Crit Rev Plant Sci 10:1)。ベクターは、アグロバクテリウムTi又はRiプラスミドに基づき、植物ゲノムへのDNA導入の天然の系を利用する。この高度に発達した寄生物(parasitism)の一部として、アグロバクテリウムは、そのゲノム情報の所定の部分(左境界及び右境界と呼ばれる約25bpの繰返し配列に挟まれるT−DNA)を植物細胞の染色体DNAに導入する(Zupanら(2000) Plant J 23(1):11-28)。いわゆるvir遺伝子(元来のTiプラスミドの一部)の共同作用により、このDNA導入が媒介される。その天然の系を利用するために、元来ある腫瘍誘導遺伝子を欠損するTiプラスミド(「安全化ベクター」)が開発された。さらなる改良において、いわゆる「バイナリーベクター系」は、T−DNAを、シャトルベクターに組み込むことによって、Tiプラスミドの他の機能的エレメント(例えば、vir遺伝子)から物理的に分離し、扱い易くした(EP−A 120 516;米国特許第4,940,838号)。これらのバイナリーベクターは、(安全化T−DNA及びその境界配列以外に)アグロバクテリウム及び大腸菌(E.coli)の両方における複製のための原核生物配列を含む。アグロバクテリウム媒介形質転換の利点は、一般的に、境界に挟まれるDNAだけがゲノムに移入され、1コピーのみが優先的に挿入されることである。アグロバクテリウムベクター系及びアグロバクテリウム媒介遺伝子導入方法の説明は当該分野で公知である(Gruberら (1993) "Vectors for Plant Transformation", METHODS IN PLANT MOLECULAR BIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY;pp.89-119に掲載;Mikiら (1993) "Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants", METHODS IN PLANT MOLECULAR BIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY;pp.67-88に掲載;Moloneyら (1989) Plant Cell Reports 8:238)。
従って、アグロバクテリウム媒介形質転換のために、遺伝的構成(例えば、発現カセットなど)を特定のプラスミド(シャトルベクター若しくは中間ベクター、又はバイナリーベクターのいずれか)に組み入れる。Ti又はRiプラスミドを形質転換に使用する場合、Ti又はRiプラスミドT−DNAの少なくとも右側の境界(ただし、ほとんどの場合右側及び左側の境界)を、フランキング領域の形態で導入しようとする発現カセットに結合させる。バイナリーベクターを使用することが好ましい。バイナリーベクターは、大腸菌及びアグロバクテリウムの両方での複製が可能である。これらは、選択マーカー遺伝子、及びリンカー又はポリリンカー(例えば導入する発現カセットの挿入のため)を、右側及び左側T−DNA境界配列に挟まれるように含みうる。バイナリーベクターは、直接アグロバクテリウムに導入され得る(Holstersら(1978) Mol Gen Genet 163:181-187)。選択マーカー遺伝子は、形質転換されたアグロバクテリウムの選択を可能にし、例えば、カナマイシンに対する耐性を付与するnptIII遺伝子である。この場合には宿主生物として機能するアグロバクテリウムは、vir領域を有するプラスミドをすでに含んでいる必要がある。後者は、T−DNAを植物細胞に導入するために必要とされる。このように形質転換されたアグロバクテリウムは、植物細胞を形質転換するために使用できる。植物細胞を形質転換するためにT−DNAを使用することは、集中的に研究及び記載されている(EP120 516;Hoekema(1985) The Binary Plant Vector System, Offsetdrukkerij Kanters B.V., Alblasserdam, Chapter Vに掲載;Anら(1985) EMBO J 4:277-287)。
一般的なバイナリーベクターは、P型プラスミドRK2から誘導されるpRK252(Bevanら (1984) Nucl Acid Res 12:8711-8720)又はpTJS75(Watsonら(1985) EMBO J 4(2):277-284)等の「宿主範囲の広い」プラスミドに基づいている。これらのベクターのほとんどは、pBIN19の誘導体である(Bevanら (1984) Nucl Acid Res 12:8711-8720)。様々なバイナリーベクターが公知であり、それらの一部は、例えばpBI101.2又はpBIN19(Clontech Laboratories, Inc. USA)等、市販されている。さらなるベクターが、大きさ及び扱い易さに関して改良されている(例えば、pPZP;Hajdukiewiczら(1994) Plant Mol Biol 25:989-994)。改良型ベクター系は、WO02/00900号にも記載されている。
様々なアグロバクテリウム菌株を用いることができる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス及びアグロバクテリウム・リゾゲネスの菌株の両方が使用できる。好適な実施形態では、「安全化」株(すなわち、腫瘍又は毛根表現型誘導遺伝子が欠失したもの)が利用される。特に好ましいアグロバクテリウム・リゾゲネス菌株は、安全化アグロバクテリウム・リゾゲネスK599株である。かかる菌株は、2004年9月2日に出願された米国仮出願第60/606789号(参照により全体的に本明細書に援用する)に記載されている。本発明の方法において採用される好ましいアグロバクテリウム菌株としては、オクトピン株(例えばLBA4404)又はアグロピン株(例えばEHA101又はEHA105)が挙げられるがこれらに限定されない。DNA導入のためのA.ツメファシエンスの適切な菌株は、例えば、EHA101[pEHA101](Hoodら(1986) J Bacteriol 168:1291-1301)、EHA105[pEHA105](Li (1992) Plant Mol Biol 20:1037-1048)、LBA4404[pAL4404](Hoekemaら(1983) Nature 303:179-181)、C58C1[pMP90](Koncz及びSchell(1986) Mol Gen Genet 204:383-396)、及びC58C1[pGV2260](Deblaereら(1985) Nucl Acids Res 13:4777-4788)である。他の適切な菌株はアグロバクテリウム・ツメファシエンスC58、ノパリン株である。他の適切な菌株はA.ツメファシエンスC58C1(Van Laerebekeら(1974) Nature 252, 169-170)、A136(Watsonら(1975) J. Bacteriol 123, 255-264)、又はLBA4011(Klapwijkら(1980) J. Bacteriol., 141, 128-136)である。アグロバクテリウム菌株は、オクトピン型Tiプラスミド、好ましくは安全化されたもの(pAL4404等)を含み得る。一般的に、オクトピン型Tiプラスミド又はヘルパープラスミドを用いる場合、virF遺伝子が欠失又は不活性化されることが好ましい(Jarchowら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10426-10430)。さらなる適切な菌株は、C58C1[pGV2260]及びC58C1[pMP90]である。C58C1株[pGV2260]は「オクトピン型」株であり、C58C1[pMP90]は「ノパリン型」株である。両方の遺伝的バックグラウンドは、アグロバクテリウムC58株である。C58は、GV3101株の遺伝的バックグラウンドでもある。
本発明の方法はまた、特定のアグロバクテリウム菌株(変異型又はキメラvirA又はvirG遺伝子の存在によりvir遺伝子発現及び/又はその誘導が改変されたアグロバクテリウム菌株等)と組み合わせて、形質転換効率をさらに高めるために使用できる(例えば、Hansenら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7603-7607;Chen及びWinans(1991) J. Bacteriol. 173;1139-1144;Scheeren-Grootら(1994) J. Bacteriol 176:6418-6426)。可能性のあるのは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株(例えば、LBA4404;Hieiら(1994) Plant J 6:271-282)と、超毒(super-virulent)プラスミド(例えば、pTOK246に基づくベクター;Ishida Yら(1996) Nature Biotech 745-750)、いわゆる超毒菌株との組み合わせである。超毒菌株の一例は、スクシナムオパイン(succinamopine)EHA105株である。
バイナリーベクター又は他の任意のベクターは、一般的なDNA組換え技術により改変され、大腸菌において複製され、アグロバクテリウムに(例えば、エレクトロポレーション又は他の形質転換技術により)導入できる(Mozo及びHooykaas(1991) Plant Mol Biol 16:917-918)。
アグロバクテリウムは、当該分野で公知の手法により増殖させ、使用される。ベクターを含むアグロバクテリウム菌株は、例えば、適切な抗生物質(例えば、50mg/lスペクチノマイシン)を添加したYEP培地上で3日間培養することができる(実施例2を参照)。細菌を、ループを用いて固体培地から回収し、再懸濁する。本発明の好適な実施形態では、アグロバクテリウム培養は、−80℃に冷凍したアリコートを用いて開始する。様々なダイズ腋生分裂組織外植片の組織に対するアグロバクテリウム処理のために、細菌を共存培養培地(CCM)に再懸濁することが好ましい。
感染及び共存培養に使用するアグロバクテリウムの濃度は、異なる必要があるかもしれない。従って、一般的に、OD600が0.1〜3.0のアグロバクテリウム濃度範囲、及び数時間から7日間の共存培養期間範囲が使用できる。様々な腋生分裂組織外植片のために、以下のアグロバクテリウム懸濁液濃度が採用されることが好ましい:
(a)方法A(幼苗腋生分裂組織):OD600=約0.5〜約3、好ましくはOD600=約1〜2
(b)方法B(葉腋分裂組織):OD600=約0.1〜約1、好ましくはOD600=約0.125〜0.5
(c)方法C(増殖させた腋生分裂組織):OD600=約0.2〜約1.5、好ましくはOD600=約0.5〜0.8。
アグロバクテリウムと様々なダイズ腋生分裂組織外植片の組織との共存培養は、一般的に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株の場合には約1〜約6日間、好ましくは約3〜約5日間、アグロバクテリウム・リゾゲネス菌株の場合には約2〜約3日間行われる。
次いで、外植片にアグロバクテリウム培養物を、数分間から数時間、典型的に約10分間〜3時間、好ましくは約0.5時間〜1時間かけて接種する。余分な培地は捨て、アグロバクテリウムを分裂組織と、数日間、典型的に3〜5日間にわたり暗室で共存培養させる。このステップの間、アグロバクテリウムは、外来遺伝子構築物を、ダイズ腋生分裂組織中の一部の細胞に導入する。通常、このステップの間、選択化合物は存在しない。
必須ではないが、アグロバクテリウム共存培養の前又はその間に、培地において1以上のフェノール化合物を使用することが可能である。本発明の範囲内で適した「植物フェノール化合物」又は「植物フェノール成分」は、陽性の走化性反応を誘導可能な単離された置換型(substituted)フェノール分子、特に、Tiプラスミドを含むアグロバクテリウム・エスピー(特にTi−プラスミドを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス)において高いvir遺伝子発現を誘導可能なものである。好ましいのは、アセトシリンゴンである。さらに、浸透保護剤(osmoprotectant)(例えば、好ましくは約700mg/Lの濃度のL−プロリン、若しくはベタイン)、植物ホルモン(とりわけNAA)、オパイン又は糖類等の特定の化合物は、植物フェノール化合物と組み合わせて添加された場合には相乗的に作用することが期待される。植物フェノール化合物、特にアセトシリンゴンが、様々なダイズ腋生分裂組織外植片をアグロバクテリウムに(例えば、数時間から1日)接触させる前に、培地に添加することができる。培地中の植物フェノール化合物の可能な濃度は、約25μM〜700μMである。アグロバクテリウム・ツメファシエンスに特に適した誘導条件は記載されている(Vernadeら(1988) J.Bacteriol. 170:5822-5829)。アグロバクテリウムでの形質転換の効率は、当該分野で公知の多数の他の方法、例えば、減圧浸潤法(WO00/58484号)、ヒートショック及び/又は遠心分離、硝酸銀の添加、超音波処理等により向上させることができる。
植物防御応答(フェノール酸化等)により組織壊死を低下させることができる抗酸化剤(例えば、ジチオトレイトール)又はチオール化合物(例えば、L−システイン、Olhoft PM及びDA Somers(2001) Plants Cell Reports 20:706-711;US2001034888)の共存培養培地への添加により、アグロバクテリウム媒介形質転換の効率がさらに向上し得る。
上記細菌との共存培養の後(例えば、洗浄ステップによる)。共存培養ステップの後に採用される培地(例えば、ステップ(b1)、(c)及び/又は(c1)で採用される培地)は、殺菌剤(抗生物質)を含むことが好ましい。このステップは、非形質転換細胞の成長を停止させるか又は少なくとも遅らせ、残ったアグロバクテリウム細胞を死滅させる。従って、本発明の方法は、以下のステップを含むことが好ましい。すなわち、
(b1)ステップ(b)の後の共存培養した腋生分裂組織を、アグロバクテリウム増殖の抑制に好適な少なくとも1つの抗生物質及び任意により少なくとも1つの植物成長因子を含む培地に移すステップであって、該培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ。
採用するのに好ましい抗生物質は、例えば、カルベニシリン(500mg/L若しくは好ましくは100mg/L)、又はTimentinTM(GlaxoSmithKline;約250〜500mg/Lの濃度で使用されることが好ましい;TimentinTMは、チカルシリン二ナトリウム(ticarcillin disodium)及びクラブラン酸カリウムの混合物である;0.8g TimentinTMは50mgクラブラン酸及び750mgチカルシリンを含む。化学的には、チカルシリン二ナトリウムは、N−(2−カルボキシ−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル)−3−チオ−フェンマロンアミノ酸二ナトリウム塩)である。化学的に、クラブラン酸カリウムは、カリウム(Z)−(2R,5R)−3−(2−ヒドロキシエチリデン)−7−オキソ−4−オキサ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシレート)である。
共存培養ステップの後、共存培養した外植片を、少なくとも1つの植物成長因子を含むシュート誘導培地上でインキュベートする。このシュート誘導培地上でのインキュベーションは、共存培養ステップ直後(すなわち、アグロバクテリウム増殖を抑制するステップ(b1)と並行して)、又はステップ(b1)(アグロバクテリウム増殖の抑制)及び/若しくは(b2)(選択化合物を用いない再生;以下参照)等の他の中間ステップの後に開始することができる。
これらの培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に植物細胞の同定及び/又は選択を可能にする少なくとも1つの化合物(例えば、選択化合物)をさらに含み得る。しかし、外植片を、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損する培地上での共存培養ステップ(b)の後に約4〜約7日間の特定の時間にわたりインキュベートすることが好ましい。上記選択化合物に対する信頼できる耐性レベルの確立は、選択化合物による形質転換細胞及び組織に対する意図しない損傷を防ぐためにいくらかの時間を必要とする。従って、本発明の方法は、共存培養と選択との間に選択化合物を用いないで行われるステップを含み得る。このステップは、ステップ(b1)及び/又は特定の追加のステップであり得る:
(b2)ステップ(b)及び任意によりステップ(b1)の後の腋生分裂組織を、少なくとも1つの植物成長因子を含むシュート誘導培地(SIM)においてさらにインキュベートするステップであって、該シュート誘導培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ。
本発明の方法においてシュート誘導(及び/又はシュート伸長)のために採用する培地は、任意により、例えばサイトカイニン化合物(例えば、6−ベンジルアミノプリン)及び/又はオーキシン化合物(例えば、2,4−D)等の1つ以上の植物成長調節因子をさらに含んでもよい。本明細書で使用する「植物成長調節因子」(PGR)という用語は、植物成長及び発達を調節しうる天然又は合成(天然ではない)の化合物を意味する。PGRは、単独で、又は互いと若しくは他の化合物(例えば、糖類、アミノ酸)と調和して作用し得る。「オーキシン」又は「オーキシン化合物」という用語は、細胞伸長及び分裂、管組織の分化、果実発達、不定根の形成、エチレンの生成を刺激し、高濃度では脱分化(カルス形成)を誘導する化合物を含む。最も一般的な天然型オーキシンは、根及び茎に極方向に輸送されるインドール酢酸(IAA)である。合成オーキシンは、現代の農業において広範囲に使用されている。合成オーキシン化合物としては、インドール−3−酪酸(IBA)、ナフチル酢酸(NAA)、及び2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)が挙げられる。シュート形成を誘導する化合物としては、IAA、NAA、IBA、サイトカイニン、オーキシン、カイネチン、グリホセート及びチアジアズロン(thiadiazuron)が挙げられるがこれらに限定されない。
「サイトカイニン」又は「サイトカイニン化合物」という用語は、細胞分裂、子葉の拡張、及び側芽の成長を刺激する化合物を含む。これらは、分離した葉の老化を遅らせ、オーキシン(例えば、IAA)と組み合わさって、根及びシュートの形成に影響を及ぼし得る。サイトカイニン化合物は、例えば、6−イソペンテニルアデニン(IPA)及び6−ベンジルアデニン/6−ベンジルアミノプリン(BAP)を含む。
別の好適な実施形態では、ステップ(b)、(b1)、(b2)及び/又は(c)の少なくとも1つのステップの培地は、サイトカイニン(例えば、6−ベンジルアミノプリン(BAP)等)を含む。濃度は、約1μM〜約10μM 6−ベンジルアミノプリン(BAP)であることが好ましい。シュート誘導培地のためには、約1〜約3μMのBAP濃度が好ましい。BAP濃度は、5μMを超えないことが好ましい。
さらに、ステップ(b)、(b1)、(b2)、(c)及び/又は(c1)の少なくとも1つのステップ、好ましくは少なくともステップ(b)及び(c1)の培地は、約0.1μM〜約2μMジベレリン酸(GA3)を含むことが特に好ましい。
別の好適な実施形態では、ステップ(b)、(b1)、(b2)及び/又は(c)の少なくとも1つのステップの培地は、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、ジチオトレイトール(DTT)及びシステインからなる群より選択される少なくとも1つのチオール化合物を含む。濃度は、約1mM〜10mMのL−システイン、0.1mM〜5mM DTT、及び/又は0.1mM〜5mMチオ硫酸ナトリウムであることが好ましい。
外植片を、上記シュート誘導培地上で、シュートが発育するまでインキュベートする。形成されるシュート原基は、通常、0.3cmの長さもない。シュート原基の形成は、シュート誘導培地上で約1週間で始まり、平均で、このようなシュート開始は、約3〜4週間続いて、最大の大きさに到達する。従って、共存培養した外植片を、上記シュート誘導培地上で約2〜6週間、好ましくは約3〜4週間インキュベートする。
アグロバクテリウム媒介技術は、典型的に、標的組織中の限定された数の細胞への遺伝子送達を生じ得る。従って、本発明の好適な実施形態では、選択化合物を形質転換後に適用して、標的組織中の形質転換されていない全ての細胞を殺すか、又は選択的優位性によって形質転換細胞を同定する。培養の長さは、部分的に、非形質転換細胞に対する選択化合物の毒性に依存する。上記選択又はスクリーニングに使用する選択マーカー遺伝子及び対応する選択化合物は、抗生物質、除草剤、又はD−アミノ酸等の多様な周知の選択化合物のいずれでもあり得る(詳細については以下参照)。この培養ステップの長さは可変的であり(選択化合物及びその濃度、選択マーカー遺伝子に依存する)、1日から約180日間にわたる。
選択及び/又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子の挿入は、本発明の方法の範囲内に含まれる。これは、例えば、除草剤耐性形質としてその後の用途のために好都合であり得る。多様な選択マーカー遺伝子及び対応する選択化合物が、当該分野で公知である。さらに、リポーター遺伝子を用いて可視的なスクリーニングを行うことができ、これは(リポーター遺伝子の種類に応じて)選択化合物として基質の添加を必要とするか又は必要としない。
様々な時間スキームが、様々な選択マーカー遺伝子のために採用できる。(例えば、除草剤又はD−アミノ酸に対する)耐性遺伝子の場合、選択は通常、シュート開始の間、つまり約4週間以上、シュート伸長まで少なくとも4週間にわたり行われる。このような選択スキームは、カナマイシンを含む全ての選択手法に適用され得る。発根を含む再生スキーム全体にわたり選択を維持することも(はっきりと好ましいというわけではないが)さらに可能である。
例えば、カナマイシン耐性遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、NPTII)を選択マーカーとする場合、カナマイシンは約3〜200mg/lの濃度で培地に含まれ得る。選択のための典型的な濃度は5〜50mg/lである。組織はこの培地上で、約1〜約4週間、好ましくは約7日間にわたり、シュートが発育するまで成長させる。シュートの形成は、処理及び共存培養条件に応じて約1〜約2週間で開始する。
例えば、ホスフィノトリシン耐性遺伝子(bar)を選択マーカーとする場合、ホスフィノトリシンは約1〜50mg/lの濃度で培地に含まれ得る。選択のための典型的な濃度は約1〜約15mg/lである。組織はこの培地上で、約1〜約4週間、好ましくは約7日間にわたり、シュートが発育するまで成長させる。シュートの形成は、処理及び共存培養条件に応じて約1〜2週間で開始する。
例えば、dao1遺伝子を選択マーカーとする場合、D−セリン又はD−アラニンが約3〜100mMの濃度で培地に含まれ得る。約10〜約70mM(又は約1〜約7.5g/L)のD−セリン濃度が使用されることが好ましい。選択のための典型的な濃度は約10mM〜約50mM(又は約1〜5.3g/l)である。組織はこの培地上で、約1〜約4週間、好ましくは約7日間にわたり、シュートが発育するまで成長させる。シュートの形成は、処理及び共存培養条件に応じて約1〜約2週間で開始する。
好適な実施形態では、形質転換前に形成された全てのシュートが、共存培養後約2週間までに除去されて、分裂組織からの新しい成長を刺激する。これにより、一次形質転換体におけるキメラ現象が低減し、トランスジェニック分裂組織細胞の増殖が高まる。この間、外植片を、より小さい切片に切断(すなわち、上胚軸を切断することにより外植片から節を分離)してもよいし又はしなくてもよい。
(好ましくは選択を用いる)SIM培地上で2〜4週間後(又はシュートの塊が形成されるまで)、外植片を、(シュート原基の)シュート伸長を刺激するシュート伸長(SEM)培地に移す。この培地は、選択化合物を含んでいても又はいなくてもよいが、選択化合物を含むことが好ましい。伸長するシュートの頻度及び長さは、SIM中のホルモンレベル、特にBAPに影響される(実施例9)。
本発明の別の好適な実施形態では、ステップ(c1)及び/又は(d)の少なくとも1つのステップの培地は、約0.01mg/l(0.057M)〜約1mg/l(5.7μM)インドール酢酸(IAA)、及び/又は約0.1μM〜約4μMジベレリン酸(GA3)、及び/又は約0.5μM〜約6μMトランスゼアチンリボシド酸を含む。
2〜3週間ごとに、死滅した組織を注意深く除去した後に、外植片を新鮮なSEM培地(選択化合物を含むことが好ましい)に移すことが好ましい。外植片はまとまり、細かく断片化することなく、多少なりとも健康のままである。外植片が死滅するか又はシュートが伸長するまで、外植片の移動を続ける。
伸長したシュートは、シュート伸長培地に移して約4〜8週間後に回収の状態になる。表現型の規則性及び健康についてシュートを評価し、伸長した茎(約1インチ又は2cm)及び完全な三小葉形成を有するシュートのみを回収する。
回収したシュートを、発根培地上において、根形成を誘導する。根形成は、約1〜4週間かかり、その後植物を土壌に移して、完全に成熟するまで成長させることができる。発根培地はまた(はっきりと好ましいわけではないが)選択化合物を含み得る。好ましくは、伸長した(3cmを上回る長さの)シュートを取り除き、発根培地(RM)に約1週間(方法B)又は品種に応じて約2〜4週間(方法C)置くと、根が形成し始める。根を有する外植片の場合、土壌に直接移す。発根したシュートを土壌に移し、成育チャンバー内で2〜3週間かけて頑強にした後に、温室に移す。この方法を用いて得られる再生植物は、稔性で、1植物当たり平均500の種子を生成した。
この技術により作製されたT植物は、トランスジェニック植物であり、相応な収率で定期的に回収された。方法Cの場合、増殖腋生分裂組織プロトコールを用いたダイズ小植物体の平均再生時間は、外植片接種から14週間である。従って、この方法は、稔性で健康なダイズ植物をもたらす再生の時間が速い。
マーカー遺伝子を発現する形質転換された植物材料(例えば、細胞、組織又は小植物体)は、非形質転換野生型組織の成長を抑制するある濃度の対応の選択化合物(例えば、抗生物質又は除草剤)の存在下で発育可能である。得られる植物は、従来の様式で育種及び雑種交配できる。2世代以上を育てて、ゲノム組込みが確実に安定かつ遺伝性であるようにする。
本発明の他の重要な態様は、開示している方法により調製されたトランスジェニック植物の子孫、そのような子孫から誘導される細胞、及びそのような子孫から得られる種子を含む。
本発明のT−DNAの構成
他のアグロバクテリウム媒介方法と同様に、ダイズゲノムに挿入される外来遺伝的構築物又は導入遺伝子は、組換えDNA操作の通常の技術によりin vitroで作製される。次いで、遺伝的構築物をアグロバクテリウム菌株に形質転換し、ダイズ細胞に送達する。アグロバクテリウムは非発癌性であり、このような菌株のいくつかは現在広く利用可能である。
標的ダイズ植物のゲノムに挿入されるT−DNAは、例えば選択マーカー遺伝子、形質遺伝子、アンチセンスRNA又は二本鎖RNAの発現を促進し得る、少なくとも1つの発現カセットを含むことが好ましい。この発現カセットは、発現されると形質転換植物に都合のよい表現型を付与する核酸配列と機能的に結合した形で植物細胞において機能的なプロモーター配列を含むことが好ましい。当業者は、この目的のため(例えば食物及び飼料の品質を高めるため、化学品、精密化学品又は医薬品を製造するため(例えば、ビタミン、油、炭水化物;Dunwell(2000) J Exp Bot 51 Spec No:487-96)、除草剤に対する耐性を付与するか又は雄性不稔を付与するため)に利用できる多数の配列を承知している。さらに、成長、収率、及び非生物又は生物ストレス因子(例えば、真菌、ウイルス又は昆虫)に対する抵抗性が向上され得る。都合の良い性質は、例えば、対応するアンチセンス(Sheehyら(1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:8805-8809;米国特許第4,801,340号;Mol JNら(1990) FEBS Lett 268(2):427-430)又は二本鎖RNA(Matzke MAら(2000) Plant Mol Biol 43:401-415;Fire A.ら(1998) Nature 391:806-811;Waterhouse PMら(1998) Proc Natl Acad Sci USA 95:13959-13964;WO99/32619号;WO99/53050号;WO00/68374号;WO00/44914号;WO00/44895号;WO00/49035号;WO00/63364号)を発現させることによって、タンパク質を過剰発現させるか、又は内因性タンパク質の発現を低減させることにより付与され得る。
植物における発現のためには、植物特異的プロモーターが好ましい。「植物特異的プロモーター」という用語は、原則として、植物又は植物の部分、植物細胞、植物組織若しくは植物培養物において、遺伝子(特に外来遺伝子)の発現を支配可能な任意のプロモーターを意味すると理解される。この目的のために、発現は、例えば、構成的、誘導性、又は発育依存性であり得る。以下のものが好ましい。
(a)構成的プロモーター
「構成的」プロモーターは、植物発育の実質的な期間にわたり(好ましくは植物発育中常時)、多数の(好ましくは全ての)組織における発現を確実にするプロモーターを指す。植物プロモーター、又は植物ウイルスに由来するプロモーターが特に好ましく使用される。CaMV(カリフラワーモザイクウイルス)35S転写産物のプロモーター(Franckら(1980) Cell 21:285-294;Shewmakerら(1985) Virology 140:281-288;Gardnerら(1986) Plant Mol Biol 6:211-228;Odellら(1985) Nature 313:810-812)、又は19S CaMVプロモーター(米国特許第5,352,605号;WO84/02913号;Benfeyら(1989) EMBO J 8:2195-2202)が特に好ましい。別の好適な構成的プロモーターは、イネアクチンプロモーター(McElroyら(1990) Plant Cell 2:163-171)、ルビスコ小サブユニット(SSU)プロモーター(米国特許第4,962,028号)、レグミンBプロモーター(GenBankアクセッション番号X03677)、アグロバクテリウム由来ノパリンシンターゼプロモーター、TRデュアルプロモーター、アグロバクテリウム由来OCS(オクトピンシンターゼ)プロモーター、ユビキチンプロモーター(Holtorfら(1995) Plant Mol Biol 29:637-649)、ユビキチン1プロモーター(Christensenら(1989) Plant Mol. Biol. 12:619-632;Christensenら(1992) Plant Mol Biol 18:675-689;Bruceら(1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:9692-9696)、Smasプロモーター、シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(米国特許第5,683,439号)、液胞ATPアーゼサブユニットプロモーター、pEMUプロモーター(Last DIら(1991) Theor. Appl. Genet. 81, 581-588);MASプロモーター(Veltenら(1984) EMBO J. 3(12):2723-2730)、及びトウモロコシH3ヒストンプロモーター(Lepetitら(1992) Mol Gen Genet 231:276-285;Atanassovaら(1992) Plant J 2(3):291-300)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ニトリラーゼ−1遺伝子プロモーター(GenBankアクセッション番号U38846、ヌクレオチド3862〜5325又は5342)、又はコムギ由来の高プロリンタンパク質のプロモーター(WO91/13991号)、植物において構成的発現される遺伝子のさらなるプロモーターである。
(b)組織特異的又は組織選択的プロモーター
さらに好ましいのは、種子に対して特異性を有するプロモーターであり、例えば、ファセオリンプロモーター(米国特許第5,504,200号;Bustosら(1989) Plant Cell 1(9):839-53;Muraiら, Science 23:476-482(1983);Sengupta-Gopalanら(1985) Proc. Natl Acad. Sci. USA 82:3320-3324)、2Sアルブミン遺伝子プロモーター(Joseffsonら(1987) J Biol Chem 262:12196-12201)、レグミンプロモーター(Shirsatら(1989) Mol Gen Genet 215:326-331)、USP(未知種子タンパク質)プロモーター(Baumleinら(1991a) Mol Gen Genet 225(3):459-467)、ナピン遺伝子プロモーター(米国特許第5,608,152号;Stalbergら(1996) Planta 199:515-519)、スクロース結合タンパク質のプロモーター(WO00/26388号)、又はレグミンB4プロモーター(LeB4;Baumleinら(1991b) Mol Gen Genet 225:121-128;Beckerら(1992) Plant Mol. Biol. 20:49)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)オレオシンプロモーター(WO98/45461号)、及びアブラナ(Brassica)Bce4プロモーター(WO91/13980号)等である。さらに好ましいのは、葉特異的及び光誘導性プロモーター、例えばcab又はルビスコ由来のもの等(Simpsonら(1985) EMBO J 4:2723-2729;Timkoら(1985) Nature 318:579-582);葯特異的プロモーター、例えばLAT52に由来するもの等(Twellら(1989b) Mol Gen Genet 217:240-245);花粉特異的プロモーター、例えばZml3に由来するもの等(Guerreroら(1993) Mol Gen Genet 224:161-168);及び小胞子選択的プロモーター、例えばapgに由来するもの等(Twellら(1983) Sex. Plant Reprod. 6:217-224)である。
(c)化学誘導性プロモーター
発現カセットはまた、化学誘導性プロモーター(概要文献:Gatzら(1997) Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 48:89-108)を含んでもよく、これにより植物中の外因性遺伝子の発現が特定の時点に制御できる。例えば、PRP1プロモーター(Wardら(1993) Plant Mol Biol 22:361-366)、サリチル酸誘導性プロモーター(WO95/19443号)、ベンゼンスルホンアミド誘導性プロモーター(EP0 388 186)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatzら(1991) Mol Gen Genetics 227:229-237;Gatzら(1992) Plant J 2:397-404)、アブシジン酸誘導性プロモーター(EP0 335 528)、又はエタノール−シクロヘキサノン誘導性プロモーター(WO93/21334号)等のプロモーターも同様に使用できる。同じく適しているのは、グルタチオン−SトランスフェラーゼイソフォームII遺伝子のプロモーター(GST−II−27)であり、これは例えばN,N−ジアリル−2,2−ジクロロアセトアミド(WO93/01294号)等の外因的に適用される安全化剤により活性化することができ、単子葉及び双子葉の両方の多数の組織において作用可能である。本発明で利用可能な誘導性プロモーターの更なる例としては、銅に応答するACE1系に由来するもの(Mettら(1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:4567-4571);又はベンゼンスルホンアミド除草剤安全化剤に応答するトウモロコシ由来のIn2プロモーター(Hersheyら(1991) Mol Gen Genetics 227:229-237;Gatzら(1994) Mol Gen Genetics 243:32-38)が挙げられる。通常は植物が応答しない誘導剤に応答するプロモーターを利用することができる。誘導性プロモーターの例は、ステロイドホルモン遺伝子由来の誘導性プロモーターであり、この転写活性は糖質コルチコステロイドホルモンにより誘導される(Schenaら(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:10421)。
特に好ましいのは構成的プロモーターである。さらに、プロモーターは、発現対象の核酸配列と機能的に結合して、更なる植物組織又は他の生物(例えば、大腸菌等)における発現を可能にするものでありうる。適切な植物プロモーターは、原則として、上記プロモーター全てである。
遺伝エレメント及び/又は発現カセットは、プロモーターに加えてさらなる遺伝子制御配列を含み得る。「遺伝子制御配列」という用語は、広い意味で理解されるものであり、本発明の発現カセットの実現化又は機能に効果を有する配列を全て指す。例えば、遺伝子制御配列は、原核生物又は真核生物における転写及び翻訳を改変する。本発明の発現カセットは、組換え発現させようとする対象の核酸配列の5’側上流かつターミネーター配列の3’側下流において、植物において機能的なプロモーターを追加の遺伝子制御配列として、そして適切であればさらなる従来の調節エレメントを包含することが好ましい(いずれの場合も組換え発現させようとする核酸配列と機能的に結合している)。
遺伝子制御配列はさらに、例えばアクチン−1イントロン又はAdh1−Sイントロン1、2及び6等、遺伝子の5’非翻訳領域、イントロン又は非コード3’領域をも含む(概要文献:The Maize Handbook, Chapter 116, Freeling及びWalbot編, Springer, New York (1994))。これらは、遺伝子発現の調節において重要な役割を果たし得ることが実証されている。従って、5’非翻訳配列が、異種遺伝子の一過性発現を増強できることが実証されている。例示することができる翻訳エンハンサーの例としては、タバコモザイクウイルス5’リーダー配列(Gallieら(1987) Nucl Acids Res 15:8693-8711)等がある。さらに、これらは組織特異性を促進し得る(Rouster Jら(1988) Plant J 15:435-440)。
発現カセットは、核酸配列の組換え発現を増大することができる、プロモーターと機能的に結合した1つ以上のエンハンサー配列を都合よく含み得る。追加の都合の良い配列、例えばさらなる調節エレメント又はターミネーター等も、組換え発現しようとする核酸配列の3’末端に挿入され得る。制御配列として好適なポリアデニル化シグナルは、植物ポリアデニル化シグナル、好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンスからのT−DNAポリアデニル化シグナルに本質的に対応するもの、特にOCS(オクトピンシンターゼ)ターミネーター及びNOS(ノパリンシンターゼ)ターミネーターである。
制御配列は、挿入配列をゲノムから除去させるものとしてさらに理解される。cre/loxに基づく方法(Sauer(1998) Methods 14(4):381-92;Odellら(1990) Mol Gen Genet 223:369-378;Dale及びOw(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:10558-10562)、FLP/FRT(Lysnik (1993) Nucl Acid Res 21:969-975)、又はAc/Ds系(Waderら(1987) TOMATO TECHNOLOGY 189-198(Alan R. Liss, Inc.);米国特許第5,225,341号;Bakerら(1987)EMBO J 6:1547-1554;Lawsonら(1994) Mol Gen Genet 245:608-615)は、宿主生物のゲノムからの特定のDNA配列の除去、適当な場合には組織特異的及び/又は誘導可能な除去を可能にする。制御配列は、この目的においては、その後の(例えば、creリコンビナーゼによる)除去を可能にする特異的なフランキング配列(例えば、lox配列)を意味し得る。
本発明の遺伝エレメント及び/又は発現カセットは、さらなる機能的エレメントを含み得る。機能的エレメントという用語は、広い意味で理解されるべきであり、本発明による遺伝エレメント、発現カセット又は組換え生物の作製、増幅又は機能に対して影響を有する全てのエレメントを含む。機能的エレメントは、例えば、以下を含み得る(ただし、これらに限定されない。
1.選択マーカー遺伝子
選択マーカー遺伝子は、形質転換が成功した細胞又は相同組換え細胞を選択及び分離するのに有用である。本発明の方法においては、一方のマーカーを原核宿主における選択のために採用し、他方のマーカーを真核宿主(特に植物種宿主)における選択のために採用することが好ましい。マーカーは、抗生物質、毒素、重金属等の殺生物剤に対する防御であってもよいし、又は相補(complementation)により機能して、栄養要求性宿主に原栄養(prototrophy)を与えるものであってもよい。植物のための好ましい選択マーカー遺伝子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない。
1.1 陰性選択マーカー
陰性選択マーカーは、代謝阻害剤(例えば、2−デオキシグルコース−6−リン酸、WO98/45456号)、抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、若しくはハイグロマイシン)、又は除草剤(例えば、ホスフィノトリシン若しくはグリホセート)等の殺生物性化合物に対する耐性を付与する。特に好ましい陰性選択マーカーは、除草剤に対する耐性を付与するものである。例示することができる例は以下のとおりである:
−ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT;BialophosTM耐性とも呼ばれる;bar;De Blockら(1987) Plant Physiol 91:694-701;EP 0 333 033;米国特許第4,975,374号)、
−グリホセートTM(N−(ホスホノメチル)グリシン)に対する耐性を付与する、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSPS;米国特許第5,633,435号)又はグリホセート酸化還元酵素遺伝子(米国特許第5,463,175号)(Shahら(1986) Science 233:478)、
−グリホセートTM分解酵素(グリホセートTM酸化還元酵素;gox)、
−DalaponTM不活性化脱ハロゲン酵素(deh)、
−スルホニル尿素及びイミダゾリノン不活性化アセト乳酸シンターゼ(例えば、S4及び/又はHra突然変異を有するALS突然変異体)、
−ブロモキシニルTM分解ニトリラーゼ(bxn)、
−例えばネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするカナマイシン又はG418耐性遺伝子(NPTII;NPTI)(Fraleyら(1983) Proc Natl Acad Sci USA 80:4803)(これらは、抗生物質カナマイシン、並びに関連抗生物質であるネオマイシン、パロモマイシン、ゲンタマイシン及びG418に対する耐性を付与する酵素を発現する)、
−2−デスオキシグルコースに対する耐性を付与する2−デオキシグルコース−6−リン酸ホスファターゼ(DOGR1遺伝子産物;WO98/45456号;EP0 807 836)(Randez-Gilら(1995)Yeast 11:1233-1240)、
−ハイグロマイシンに対する耐性を媒介するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)(Vanden Elzenら(1985) Plant Mol Biol. 5:299)、
−ジヒドロ葉酸還元酵素(Eichholtzら(1987)Somatic Cell and Molecular Genetics 13:67-76)。
抗生物質に対する耐性を付与する細菌由来の追加の陰性選択マーカー遺伝子としては、抗生物質スペクチノマイシンに対する耐性を付与するaadA遺伝子、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ、ストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ(SPT)、アミノグリコシド−3−アデニルトランスフェラーゼ、及びブレオマイシン耐性決定基が挙げられる(Hayfordら(1988) Plant Physiol. 86:1216;Jonesら(1987) Mol. Gen. Genet., 210:86;Svabら(1990) Plant Mol. Biol. 14:197;Hilleら(1986) Plant Mol. Biol. 7:171)。
特に好ましいのは、D−アミノ酸(例えば、D−アラニン及びD−セリン)によって現れる毒性作用に対する耐性を付与する陰性選択マーカーである(WO03/060133)。この関連で陰性選択マーカーとして特に好ましいのは、酵母ロドトルラ・グラシリス(Rhodotorula gracilis)(ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides))由来のdaoI遺伝子(EC:1.4.3.3:GenBankアクセッション番号:U60066)、及び大腸菌遺伝子dsdA(D−セリンデヒドラターゼ(D−セリンデアミナーゼ[EC:4.3.1.18;GenBankアクセッション番号:J01603]))である。
1.2 陽性選択マーカー
陽性選択マーカーは、非形質転換のものと比べて、形質転換された植物に成長的利点を付与する。アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ(株:PO22;GenBankアクセッション番号:AB025109)等の遺伝子は、サイトカイニン生合成の主要な酵素として、(例えば、サイトカイニンを含まない培地上での選択により)形質転換された植物の再生を促す。対応する選択方法は記載されている(Ebinumaら(2000) Proc Natl Acad Sci USA 94:2117-2121;Ebinumaら(2000) Selection of Marker-free transgenic plants using the oncogenes (ipt, rol A, B, C) of Agrobacterium as selectable markers, Molecular Biology of Woody Plant, Kluwer Academic Publishersに掲載)。非形質転換のものと比べて、形質転換された植物に成長的利点を付与する追加的な陽性選択マーカーは、例えばEP−A 0 601 092に記載されている。成長刺激選択マーカーとしては、βグルクロニダーゼ(例えば、サイトカイニングルクロニドとの組合せ)、マンノース−6−リン酸イソメラーゼ(マンノースとの組合せ)、UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ(例えば、ガラクトースとの組合せ)があり(ただし、これらに限定されない)、マンノース−6−リン酸イソメラーゼとマンノースとの組合せが特に好ましい。
1.3 対抗(counter)選択マーカー
対抗選択マーカーは、該マーカーを含む特定の欠失配列を有する生物を選択するのに特に適している(Koprekら(1999) Plant J 19:719-726)。陰性選択マーカーの例としては、チミジンキナーゼ(TK)、シトシンデアミナーゼ(Gleaveら(1999) Plant Mol Biol. 40(2):223-35;Pereraら(1993) Plant Mol. Biol 23:793-799;Stougaard(1993) Plant J 3:755-761)、シトクロムP450タンパク質(Koprekら(1999) Plant J 19:719-726)、ハロアルカン脱ハロゲン酵素(Naested(1999) Plant J 18:571-576)、iaaH遺伝子産物(Sundaresanら 1995)、シトシンデアミナーゼcodA(Schlaman及びHooykaas(1997) Plant J 11:1377-1385)、又はtms2遺伝子産物(Fedoroff及びSmith(1993)Plant J 3:273-289)が挙げられる。
2.レポーター遺伝子
さらに、選択マーカー遺伝子という用語は、形質転換された細胞又は生物の同定及び/又は選択を可能にする他の遺伝子、例えばそのような形質転換された細胞の可視的なスクリーニング及び同定を(植物毒性化合物を適用することなく)可能にするレポーター遺伝子などをさらに含み得る。上記レポーター遺伝子の一部は、同定のための基質の添加を必要としうるが(GUS遺伝子等)、その他はそのような基質がなくても機能する(GFP等)。
レポーター遺伝子は、容易に定量可能なタンパク質をコードし、それらの色又は酵素活性を介して、形質転換有効性、発現の部位、又は発現時間の評価を可能にする。この目的のために特にとても好ましいのは、緑色蛍光タンパク質(GFP)(Sheenら(1995) Plant J 8(5):777-784;Haseloffら(1997) Proc Natl Acad Sci USA 94(6):2122-2127;Reichelら(1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(12):5888-5893;Tianら(1997) Plant Cell Rep 16:267-271;WO97/41228号;Chuiら(1996) Curr Biol 6:325-330;Leffelら(1997) Biotechniques 23(5):912-8)、サンゴ礁タンパク質(Wenckら(2003) Plant Cell Reporter 22:241-251)、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ(Owら(1986) Science 234:856-859;Millarら(1992) Plant Mol Biol Rep 10:324-414)、エクオリン遺伝子(Prasherら(1985) Biochem Biophys Res Commun 126(3):1259-1268)、β−ガラクトシダーゼ、R遺伝子座の遺伝子(植物組織中でのアントシアニン色素(赤色)の生成を調節することで、さらなる補助的物質又は発色基質を添加すること無しにプロモーター活性の直接的な分析を可能にするタンパク質をコードする)(Dellaportaら(1988):Chromosome Structure and Function: Impact of New Concepts, 18th Stadler Genetics Symposium, 11:263-282に掲載;Ludwigら(1990) Science 247:449)等のレポータータンパク質(Schenborn, Groskreutz (1999) Mol Biotechnol 13(1):29-44)をコードする遺伝子であり、β−グルクロニダーゼ(GUS)が特にとても好ましい(Jefferson(1987b) Plant Mol. Bio. Rep., 5:387-405;Jeffersonら(1987a) EMBO J 6:3901-3907)。β−グルクロニダーゼ(GUS)発現は、組織と5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸とのインキュベーションの際の青い色により検出され、細菌ルシフェラーゼ(LUX)発現は発光により検出され、ホタルルシフェラーゼ(LUC)発現はルシフェリンとのインキュベーション後の発光により検出され、ガラクトシダーゼ発現は組織を5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドで染色した後の明るい青色により検出される。レポーター遺伝子はまた、抗生物質耐性マーカーの代替物として、スコア可能なマーカーとしても用いることができる。このようなマーカーは、導入遺伝子の発現の存在を検出するため又は発現レベルを測定するために使用される。遺伝子的に改変された細胞を同定又は標識するために植物においてスコア可能なマーカーを使用するのは、細胞の改変効率が高い場合にのみうまく作用する。
3.例えば大腸菌における本発明の発現カセット又はベクターの増幅を確実にする複製起点
例示することができる例は、ORI(DNA複製起点)、pBR322 ori又はP15A oriである(Maniatis 1989)。大腸菌において機能的な複製系のさらなる例は、ColE1、pSC101、pACYC184等である。大腸菌複製系に加えて又はその代わりに、P−1不適合プラスミドの複製系(例えば、pRK290)等の宿主範囲の広い複製系が採用できる。これらのプラスミドは、T−DNAを植物種宿主に導入するための毒性(armed)及び安全化Ti−プラスミドで特に有効である。
4.例えば、T−DNA又はvir領域の右側及び/又は任意により左側の境界配列等のアグロバクテリウム媒介植物形質転換に必要なエレメント。
本明細書で開示する及び特許請求の範囲に記載する組成物及び方法は全て、本開示を踏まえて過度の実験を必要とせずに構成及び実行できる。本発明の組成物及び方法は、好適な実施形態について記載してきたが、当業者には、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物、方法、方法のステップ、又は方法のステップの順序に変更を加えることが可能であることが明らかであろう。さらには、化学的かつ生理学的に関連する特定の物質が、本明細書に記載の物質に置き換わることができ、同じ又は同様の結果が得られることが明らかであろう。当業者に明らかなこのような同様の代替及び変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神、範囲及び概念の内にあるとみなされる。本明細書中で言及する全ての刊行物及び特許出願は、本発明が属する技術分野の当業者の技術レベルを示す。全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願を具体的かつ個別に参照により本明細書に援用するのと同じ意味合いで、参照により本明細書に援用する。
実施例
特に明記しない限り、全ての化学物質はMallinckrodt Baker, Inc.(Phillipsburg, NJ, USA)、Phytotechnology Laboratories(Shawnee Mission, KS, USA)、EMD Chemicals, Inc.(Gibbstown, NJ, USA)、及びSigma(St. Louis, MO, USA)から入手した。
A.培地中で使用するストック
1.B5主要塩(major salts)
a. 0.25M KNO(硝酸カリウム)
b. 0.01M CaCl 2HO(塩化カルシウム)
c. 0.01M MgSO 7HO(硫酸マグネシウム)
d. 0.01M(NHSO(硫酸アンモニウム)
e. 0.01M NaHPO O(リン酸ナトリウム)。
2.B5副次塩(minor salts)
a. 5mM HBO(ホウ酸)
b. 10mM MnSO O(硫酸マンガン)
c. 0.7mM ZnSO 7HO(硫酸亜鉛)
d. 0.45mM Kl(ヨウ化カリウム)
e. 0.1mM NaMoO 2HO(モリブデン酸)
f. 0.01mM CuSO 5HO(硫酸銅)
g. 0.01mM CoCl 6HO(塩化コバルト)。
3.B5ビタミン
a. 0.055M Myo−イノシトール
b. 0.8mM ニコチン酸
c. 0.5mM ピリドキシン−HCl
d. 3mM チアミン−HCl。
4.MS主要塩
a. 0.2M NHNO(硝酸アンモニウム)
b. 0.2M KNO(硝酸カリウム)
c. 30mM CaCl 2HO(塩化カルシウム)
d. 15mM MgSO 7HO(硫酸マグネシウム)
e. 12.5mM KHPO(リン酸カリウム)。
5.MS副次塩
a. 10mM HBO(ホウ酸)
b. 13mM MnSO O(硫酸マンガン)
c. 3mM ZnSO 7HO(硫酸亜鉛)
d. 0.5mM KI(ヨウ化カリウム)
e. 0.1mM NaMoO 2HO(モリブデン酸)
f. 0.01mM CuSO 5HO(硫酸銅)
g. 0.01mM CoCl 6HO(塩化コバルト)。
6.MSIII鉄
a. 10mM FeSO 7HO(硫酸第一鉄)
b. 10mM C1014Na 2HO(NaEDTA)。
B.培地の組成
特に以下に明記しない限り、培地は、本発明の方法のための3つの好適な外植片組織全てに採用できる。3つの方法は以下の通り省略する:
a)方法A:幼苗腋生分裂組織−幼苗全体を用いる
b)方法B:葉腋分裂組織−腋生分裂組織が葉の葉柄に付いたままとなるように、第一葉又は第二葉以上の葉を切る
c)方法C:増殖させた腋生分裂組織(詳細については上記及び以下を参照)。
1.25×100mmペトリ皿又はPlantconTM(Sigma)培養ボックスに入った発芽培地GM(固体):
a.1×B5主要塩、
b.1×B5副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.2%スクロース、
e.1×B5ビタミン、
f.5uM BAP(任意)、
g.0.8%精製寒天(Sigma);
h.pH5.8。
2.エルレンマイヤーフラスコ又は15×100mmペトリ皿に入ったYEP培地(固体及び液体):
a.10gLバクトペプトン(Difco; Becton Dickinson & Co., Cockeysville, MD, USA)、
b.5g/L 酵母抽出物(Difco)、
c.5g/L NaCl、
d.選択に適した抗生物質、
e.1.2%粒状寒天(Difco)固体のみ;
f.pH7.0。
3.25×100mmペトリ皿に入った増殖培地MODPROP(固体):(方法C)
a.1×MS主要塩、
b.1×MS副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.1×B5ビタミン、
e.3%スクロース、
f.0.22〜1.12mg/L(1μM〜5μM)BAP(好ましく約1μM)、
g.0.8%精製寒天(Sigma);
h.pH5.8。
4.共存培養培地CCM(液体):
a.1/10×B5主要塩、
b.1/10×B5副次塩、
c.1/10×MSIII鉄、
d.1×B5ビタミン、
e.3%スクロース、
f.20mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES;M=213.26g/Mol)、
g.200μMアセトシリンゴン(AS)、
h.0.72μM〜1.44μM GA(ジベレリン酸;M=346.38g/Mol)、
i.BAP(6−ベンジルアミノプリン;M=225.25g/mol):7.5μM、
j.方法Cのみ:400mg/L L−システイン(3.3mM)(Sigma);
k.pH5.4。
5.15×100mmペトリ皿に入った共存培養培地CCM(固体):
a.1/10×B5主要塩、
b.1/10×B5副次塩、
c.1/10×MSIII鉄、
d.1×B5ビタミン、
e.3%スクロース、
f.20mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、
g.200μMアセトシリンゴン(AS)、
h.0.72μM〜1.44μM GA(ジベレリン酸;M=346.38g/Mol)、
i.BAP(6−ベンジルアミノプリン;M=225.25g/mol):7.5μM、
j.チオール化合物、
(i)100〜1000g/L L−システイン(M=121.16g/Mol;Sigma);好ましくは:方法B及びC:400mg/L L−システイン(3.3mM);方法A:1g/l(8.25mM)L−システイン、
(ii)0〜1mM又は154.2mg/L DTT(Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ, USA)、
(iii)0〜1mMチオ硫酸ナトリウム無水物(158.1mg/L)又はチオ硫酸ナトリウム五水和物245mg/L(Mallinckrodt, Paris, KY, USA)、方法A:1mMジチオトレイトール、1mMチオ硫酸ナトリウム、
k.0.5%精製寒天;
l.pH5.4。
6.洗浄培地Modwash(液体):(方法C)
a.1×B5主要塩、
b.1×B5副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.3%スクロース、
e.1×B5ビタミン、
f.30mM MES、
g.350mg/L TimentinTM
h.pH5.6。
6.シュート誘導培地SIM(液体):(方法A及びB)
a.1×B5主要塩、
b.1×B5副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.1×B5ビタミン、
e.3%スクロース、
f.3mM MES、
g.2.5μM BAP(方法B)、1μM〜7.5μM(好ましくは1μM)BAP(方法A)、
h.5μMカイネチン(方法Bのみ)、
i.250mg/L TimentinTM
j.0.8%精製寒天;
k.pH5.6。
5.20×100mmペトリ皿に入ったシュート誘導培地SIM(固体):
a.1×B5主要塩、
b.1×B5副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.1×B5ビタミン、
e.3%スクロース、
f.3mM MES、
g.1μM〜7.5μM(好ましくは約1μM)BAP(方法A);2.5μM BAP(方法B)、5.0μM BAP(方法C)、
h.5μMカイネチン(方法A及びBのみ)、
i.250mg/L TimentinTM
j.適切であれば選択化合物、
k.0.8%精製寒天;
l.pH5.6。
7.20×100mmペトリ皿に入ったシュート伸長培地SEM(固体):
a.1×MS主要塩、
b.1×MS副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.1×B5ビタミン、
e.3%スクロース、
f.3mM MES、
g.50mg/L L−アスパラギン(0.378mM)、
h.100mg/L L−ピログルタミン酸(0.775mM)、
i.0.1mg/L IAA(0.57μM)、
j.0.5mg/L GA3(1.44μM)、
k.1mg/Lトランスゼアチンリボシド(2.85μM)、
l.250mg/L TimentinTM
m.適切であれば選択化合物、
n.0.8%精製寒天;
o.pH5.6。
7.25×100mm PYREX培養管(Corning Inc., New York, NY, USA)に入った発根培地RM(固体):
a.1/2×B5主要塩、
b.1/2×B5副次塩、
c.1×MSIII鉄、
d.2%スクロース、
e.3mM MES、
f.1mg/L(5μM)インドール−ブチル酸(IBA,M=203.24g/Mol)(方法A及びB)、5μM〜12.5μM(好ましくは約5μM)IBA(方法C)、
g.0.8%精製寒天;方法Cのみ:250mg/L Timentin;
h.pH5.6。
ダイズ種子の滅菌及び発芽
本発明の方法においては、実質的にあらゆるダイズ変種のあらゆる種子を用いることができる。種々のダイズ品種(Jack、Williams82及びResnikを含む)がダイズ形質転換に好適である。ダイズ種子は、ぴったり閉まる蓋を有するデシケーター中で3.5mlの12N HClを100mlの漂白剤(5.25%次亜塩素酸ナトリウム)に滴下することにより発生する塩素ガスを用いてチャンバー内で滅菌した。チャンバー内で24〜48時間後、種子を取り出し、約18〜20の種子を25×100mmペトリ皿において5μM 6−ベンジル−アミノプリン(BAP)を含む又は含まない固形GM培地上に播く。BAPを用いない場合の幼苗はより長く伸長し、根が発達するが、特に二次根及び側根の形成が生じる。BAPは、低く頑丈な幼苗の形成により幼苗を強化する。
明条件(>100μM/m2s)下で25℃にて成長させた7日齢幼苗を3種の外植片のための外植片材料に用いる(図2)。このとき、種皮が割れ、単葉の葉を有する上胚軸が少なくとも子葉の長さまで成長している。子葉節組織を回避するため、上胚軸は少なくとも0.5cmである必要がある(ダイズ品種及び種地は発育時期が多様であるため、発芽段階の説明は特定の発芽時間よりも正確である)。
方法Cについては、各幼苗から、胚軸と、両方の子葉の一方及び半分又は一部を取り除く。続いて幼苗を2〜4週間にわたり増殖培地(propagating medium)上に置く。幼苗はいくつかの分枝シュートを生じ、そこから外植片を得る(図3A)。外植片の大部分は頂芽から成長する小植物体に由来する。これらの外植片を標的組織として用いることが好ましい。
このようにして、幼苗を、幼苗全体(方法A)又は葉外植片(方法B)の接種について形質転換の準備を整える(図5及び8)。
アグロバクテリウムの増殖及び培養液の調製
アグロバクテリウム培養液は、所望のバイナリーベクターを有するアグロバクテリウム(例えばA.ツメファシエンス又はA.リゾゲネス)を固形YEP成長培地(growth medium)上に画線し、コロニーが出現するまで(約2日間)25℃にてインキュベートすることにより調製する。Ti又はRiプラスミドに存在する選択マーカー遺伝子、バイナリーベクター及び細菌染色体に応じて、異なる選択化合物をYEP固形及び液体培地におけるA.ツメファシエンス及びリゾゲネス選択のために用いうる。種々のアグロバクテリウム菌株を形質転換法に用いることができる(上記及び下記実施例7参照)。
約2日後、単一コロニーを(滅菌楊枝を用いて)拾い、50mlの液体YEPに抗生物質を接種し、175rpm(25℃)でOD600が0.8〜1.0に達するまで(約2日)振とうする。形質転換用の加工グリセロールストック(15%)を調製し、1mlのアグロバクテリウムストックを1.5mlエッペンドルフチューブに分注した後、−80℃で保存する。
外植片接種の前日に、500mlエーレンマイヤーフラスコにおいて200mlのYEPに5μl〜3mlの加工アグロバクテリウムストックを接種する。フラスコを一晩25℃にてOD600が0.8〜1.0となるまで振とうする。ダイズ外植片を調製する前に、アグロバクテリウムを5,500×gで20℃にて10分間遠心することによりペレットにする。そのペレットを液体CCM中に所望の密度(OD6000.5〜0.8)で再懸濁し、使用前に室温で少なくとも30分間放置する。
外植片の調製及び共存培養(接種)
3.1 方法A:形質転換当日における外植片の調製
この時点の幼苗は、上胚軸が少なくとも0.5cm伸長しているが、一般的には0.5〜2cmである。長さが最大4cmまで伸長した上胚軸を用いることができる。続いて、外植片を、以下を用いて調製する:
(i)ある程度の根を有する又は有しない
(ii)部分的、一方又は両方の子葉を有する。既に形成された葉は頂端分裂組織を含めて全て取り除き、最初の葉群に位置する節を、鋭いメスを用いていくつか切り込みを入れて損傷させる(図5参照)。
節におけるこの切り込みは、アグロバクテリウム感染を誘導するだけではなく、腋生分裂組織細胞を分布させ、既に形成されたシュートに損傷を与える。損傷及び調製の後、外植片をペトリ皿中に取り、続いてCCM/アグロバクテリウム液体混合物と共に30分間共存培養する。次に、外植片を液体培地から取り出し、固形共存培養培地を含む15×100mmペトリ皿上の滅菌ろ紙の上に置く。損傷した標的組織は、それらが培地と直接接触するように配置する。
3.2 方法Aの変法:上胚軸外植片の調製
4〜8日齢の幼苗から調製したダイズ上胚軸部分を再生及び形質転換のための外植片として用いた。ダイズ品種L00106CN、93−41131及びJackの種子を、サイトカイニンを含む又は含まない1/10MS塩又は同様の組成の培地において4〜8日かけて発芽させた。上胚軸外植片は、茎部から子葉節及び茎節を除去することにより調製した。上胚軸を2〜5の部分に切断した。腋生分裂組織を含む第一節又は第二節以上の節に付いた部分が特に好ましい。
外植片をアグロバクテリウム感染に用いた。GUSマーカー遺伝子及びAHAS、bar又はdsdA選択マーカー遺伝子を有するプラスミドを保持するアグロバクテリウムAGL1を、適当な抗生物質を含むLB培地中で一晩培養し、回収し、アセトシリンゴンを含む接種培地に再懸濁した。新たに調製した上胚軸部分をアグロバクテリウム懸濁液に30〜60分間浸漬した後、外植片を滅菌ろ紙でふき取って乾燥させた。続いて接種した外植片を、L−システイン及びTTD、並びにT−DNA送達を増強するための他の化学物質(アセトシリンゴンなど)を含む共存培養培地において2〜4日間培養した。次に、感染した上胚軸外植片を、イマザピル(AHAS遺伝子のため)、グルホシネート(bar遺伝子のため)又はD−セリン(dsdA遺伝子のため)などの選択薬物を含むシュート誘導培地に置いた。再生したシュートを選択薬物を含む伸長培地上で継代培養した。
トランスジェニック植物の再生のために、次に上記部分をシュート誘導のためのサイトカイニン(BAP、TDZ及び/又はカイネチンなど)を含む培地において培養した。4〜8週間後、培養した組織を、シュート伸長のための低濃度のサイトカイニンを含む培地に移した。伸長したシュートを、根発達及び植物発育のためのオーキシンを含む培地に移した。複数のシュートが再生した。
強いGUS発現を示す多くの安定に形質転換された部分を回収した。上胚軸外植片からダイズ植物が再生した。効率的なT−DNA送達及び安定に形質転換された部分が証明された。
3.3 方法B:葉外植片
葉外植片の調製の詳細を図8に示す。最初に、子葉を胚軸から取り出す。子葉をそれぞれ分離し、上胚軸を除去する。薄膜、葉柄及び托葉からなる第一葉を、腋生分裂組織が外植片に含まれるように托葉の基部で注意深く切断して上胚軸から取り出す。外植片を傷付け、かつ新たなシュート形成を刺激するために、予め形成されているシュートを全て取り除き、托葉の間の領域を鋭いメスで3〜5回切断する。
外植片の調製の直後に、外植片をアグロバクテリウム懸濁液に完全に浸漬するか又は傷付けた葉柄の末端をアグロバクテリウム懸濁液に浸した。接種後、外植片を滅菌ろ紙でぬぐって過剰のアグロバクテリウム培養液を取り除き、損傷側を有する外植片を、固形CCM培地に載せた7cmの円形Whatmanろ紙と接触させる(上記参照)。このろ紙はダイズ外植片におけるA.ツメファシエンスの過剰増殖を防止する。5つの皿をParafilmTM「M」(American National Can, Chicago, Illinois, USA)で包み、25℃にて暗条件又は明条件にて3〜5日間インキュベートする。
3.4 方法C:増殖させた腋生分裂組織
増殖腋生分裂組織外植片の調製は図3(B〜E)に詳細に示す。増殖させた3〜4週齢の小植物体を用いて、腋生分裂組織外植片を第一節から第四節まで調製しうる。各幼苗から平均3〜4の外植片が得られる。節間の腋生節より0.5〜1.0cm下を切断し、外植片から葉柄及び葉を取り除くことにより、小植物体から外植片を調製する。腋生分裂組織が存在する先端を外科用メスで切断することにより、新たなシュート成長(shoot growth)を誘導し、標的細胞がアグロバクテリウムへと接触可能なようにした。従って、0.5cmの外植片は茎と芽を含む。
切断直後に外植片をアグロバクテリウム懸濁液に20〜30分間入れる。接種後、外植片を滅菌ろ紙でぬぐって過剰なアグロバクテリウム培養液を取り除き、その後、アグロバクテリウム菌株に応じて、固形CCM中にほぼ完全に浸漬させるか、又は固形CCMを積層した7cmの円形ろ紙の上に置く。このろ紙はダイズ外植片におけるアグロバクテリウムの過剰増殖を防止する。皿をParafilmTM「M」(American National Can, Chicago, Illinois, USA)で包み、25℃にて暗条件にて2〜3日間インキュベートする。
シュート誘導
25℃にて暗条件下で3〜5日間共存培養した後、外植片を液体SIM培地(過剰のアグロバクテリウムを除去するため)又はModwash培地(方法C)ですすぎ、滅菌ろ紙でぬぐって乾燥させた(特に薄膜への損傷を防ぐため)後、固形SIM培地に入れる。約5の外植片(方法A)又は10〜20の外植片(方法B及びC)を、標的組織が培地と直接接触するように配置した。最初の2週間では、外植片を選択培地を用いて又は用いないで培養することができる。好ましくは、外植片を1週間にわたり選択を行わないSIMに移す。
葉外植片(方法B)については、外植片を、培地の表面に対し垂直となり、葉柄が培地内に埋め込まれ、薄膜は培地の外となるように培地に配置する必要がある。
増殖させた腋生分裂組織(方法C)については、外植片を、培地の表面に対し平行となり(求底性)、外植片が部分的に培地内に埋め込まれるように培地に配置する。
皿をScotch394通気テープ(3M, St. Paul, Minnesota, USA)で包み、平均25℃の温度で70〜100μE/msで18時間明/6時間暗の周期にて2週間にわたり成育チャンバー(growth chamber)に配置する。種々の光強度及び波長、選択手法、並びにSIMをこの外植片について試験した(実施例9)。外植片は、新たなシュート成長が標的領域(例えば、上胚軸より上にある第一節における腋生分裂組織)において生じるまで、選択あり又はなしのSIM培地上に残るだろう。この時点で新たな培地への移動を行ってもよい。約1週間後に、外植片を、選択あり又はなしのSIMから選択ありのSIMへと移す。この時点で、種々のSIMにおける葉外植片の葉柄の基部に(方法B、図9)、幼苗外植片の第一節に(方法A、図7)、そして増殖させた外植片の腋生節に(方法C、図4)、顕著な新たなシュートが発育する。
好ましくは、形質転換前に形成される全てのシュートを共存培養後2週間までに取り除き、分裂組織からの新たな成長を刺激する。これにより、一次形質転換体におけるキメラ現象が低減し、トランスジェニック分裂組織細胞の増幅が高まることになる。この時点において、外植片は、より小さな切片へと切断してもよいし又はしなくてもよい(すなわち、上胚軸の切断により外植片から節を分離する)。
シュート伸長
SIM培地(好ましくは選択あり)で2〜4週間(又はシュートの塊が形成されるまで)後、外植片を、シュート原基のシュート伸長を誘導しうるSEM培地に移す。この培地は、選択化合物を含んでもよいし又は含まなくてもよい。伸長するシュートの頻度及び長さは、SIM中のホルモンレベル、特にBAPによって影響を受ける(実施例9)。
2〜3週間毎に、死滅組織を注意深く除去した後に外植片を新たなSEM培地(好ましくは選択を含む)に移す。外植片は、一緒に保持される必要があり、切片に断片化されず、ある程度健常のままである。外植片は、外植片が死滅するか又はシュートを伸長するまで移動を継続する。3cmを超えて伸長したシュートを取り出し、RM培地に、約1週間(方法A及びB)、又は品種に応じて約2〜4週間(方法C)にわたり配置し、その時点で根が生成し始める。根を有する外植片の場合には、直接土壌に移す。発根したシュートは土壌に移し、成育チャンバーにおいて2〜3週間かけて頑強にした後、温室に移す。この方法を用いて得られる再生植物は生殖能力を有し、植物当たり平均500個の種子を産生する。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスとの共存培養の5日後の一過性GUS発現は、幼苗の腋生分裂組織外植片において広範囲に及び、特に外植片調製過程の損傷領域にあらわれる(方法A、図6、10)。外植片を選択を行わないシュート誘導培地に入れ、シュート誘導及び再生に対して第一節がどのように応答するかを観察した。ここまでは、70%を超える外植片がこの領域において新たなシュートを形成した(図7)。GUS遺伝子の発現は、SIM上で14日後も安定であり、このことはT−DNAのダイズゲノムへの組込みを示している。さらに、予備実験によって、SIM上で3週間後にGUS陽性シュート形成が生じるという結果が得られた(図7)。
方法Cについては、増殖させた腋生分裂組織のプロトコールを用いた場合のダイズ小植物体の平均再生時間は、外植片接種から14時間である。従って、この方法は、生殖能力のある健常なダイズ植物を得るために再生時間が短いものである。
葉外植片におけるシュート再生についての遺伝子型のスクリーニング
種子及び外植片を上述のように調製した。合計17の異なる品種(Soygeneticsから9種及びDairylandから8種)を、5μMカイネチン及び2.5μM BAPを含むSIM上での2週間の後にシュート誘導及び再生についてスクリーニングした。GM上で8日の後、6種の異なる品種について20の葉外植片を調製した。1皿当たり10の外植片として外植片をすぐにSIM培地上に入れた。実験は3回反復実施した。外植片を、カルス/シュートパッドを形成した外植片の割合について3週間目に評価した。全ての品種が高い割合でカルス/シュートパッドを誘導した。それは、3週間後にシュートパッドを形成する全ての外植片の85%〜100%であった。これらの品種は、再生率が95%を超えた。このことは、葉外植片の葉柄でのカルス/シュートパッドの再生は、この実験に用いたダイズ品種について独立性が高いことを示している。全ての品種が、調製した外植片の85%を超えてカルス/シュートパッドを発育し、一部の品種は全ての反復実験において全ての外植片でカルス/シュートパッドを発育した。
葉外植片におけるA.ツメファシエンス及びA.リゾゲネスの感染能の評価
ダイズのアグロバクテリウム感染への感受性は、強力なダイズ形質転換系の開発において最も重要なステップの1つである。外植片の切除及び調製時における遺伝子型、発育段階、ホルモンバランス及び環境条件は全て、アグロバクテリウムが特定のダイズ組織に感染する能力に影響を及ぼす。A.ツメファシエンスAGL1株を用いて、子葉節における腋生分裂組織細胞を標的とすることによりダイズ形質転換の成功が収められている(Olhoft及びSomers (2001) Plants Cell Reports 20:706-711)。A.リゾゲネスK599株は、毛状根形成の誘導に非常に有効であり、感染子葉の54〜95%が種々のダイズ品種から毛状根を発育したことが示されている(Choら(2000) Planta 210:195-204)。この研究には、新しい安全化形態のA.リゾゲネスK599株が使用されていた。本研究においては、A.ツメファシエンス及びリゾゲネスが葉外植片に感染する能力を、一過性GUS発現の分析によって評価した。
2種のアグロバクテリウム株を用いた。すなわち、AGL0の誘導株であるA.ツメファシエンスAGL1株(recA::bla pTIBo542ΔMop+CBR)(Lazo (1991) Bio/Technology 9:963-967)、及びA.リゾゲネスK599株の安全化株(SHA016)(pRi2659)TetR NCPPB 2659(BASF Plant Sciences LLC, 2004)である。両方のアグロバクテリウム株が、強化型masプロモーター(SuperP:pIV2GUS:nosT)の制御下にuidA遺伝子を有するバイナリーベクターpBPSMM192bを含んだ。外植片接種の前日に、一晩培養物を以下の通り調製した。すなわち、枝付き三角フラスコにおいて適当な抗生物質を含む30mlのYEP液体培地に10〜80μlのアグロバクテリウムワーキングストックを接種し、150rpmにて28℃で10〜12時間にわたりオービットシェイカーで振とうした。培養物のOD600が0.5〜0.8に達した後、50mlファルコンチューブにおいて3,500rpmにて10分間遠心することにより細胞をペレット化した。細胞を液体CCMに再懸濁した。
ダイズ品種(例えばJack)の種子を滅菌し、上述したように幼苗を発芽させた。葉外植片を調製し、アグロバクテリウム/CCM懸濁液中に10〜20秒間浸漬させ、滅菌ろ紙でぬぐって乾燥させ、400mg/L L−システイン(3.3mM)を含む固形CCM上のろ紙の上部に配置した。2日間共存培養した後、葉外植片を液体SIMですすぎ、続いて2.5μM BAP及び5.0μMカイネチンを含む固形SIM上に3日間置いた。この時間の後、一過性GUS発現を外植片組織において評価した。2つの実験を実施した。最初の実験では、合計30の外植片を用いて2回の反復実験を準備し、それにAGL1を接種した。2つ目の実験では、反復は1回であり、40の外植片にAGL1又はSHA016を接種し、接種の5日後にGUS発現についてアッセイした。
最初の実験は、AGL1が葉外植片に感染する能力を評価した。全ての組織を接種の5日後に一過性発現についてGUS染色した。外植片の60%は、腋生分裂組織が位置している葉柄の切断端においてGUS(+)巣を有した(表1)。さらに、薄膜を含む外植片の他の領域もまたGUS+巣を示した。
Figure 0004744512
2つ目の実験においては、A.ツメファシエンスAGL1株及び安全化A.リゾゲネスK599株(SHA016)の両方が、T−DNAの葉外植片の葉柄への移入に成功した。AGL1を感染させた外植片の40%が標的領域においてGUS(+)巣を示したが、SHA016は標的領域の4%においてGUS(+)巣を示した(表2)。SHA016を感染させた外植片における一過性GUS発現の低減は、主に共存培養過程の組織死の結果であった。
Figure 0004744512
これらの結果は、安全化アグロバクテリウム・ツメファシエンス及びリゾゲネスの菌株が、葉外植片における標的領域における細胞又はその付近に位置する細胞にT−DNAを首尾よく送達する能力を示している。
外植片の再生及びアグロバクテリウム感染についての共存培養条件の最適化
アグロバクテリウム媒介形質転換法において、共存培養条件の最適化はトランスジェニック植物取得の際の大きな要因である。好適なアグロバクテリウム増殖条件と植物の健常な成育条件のバランスが一致する必要がある。試験対象の一般的な条件としては、光条件、インキュベーションの長さ、温度、アグロバクテリウム細胞密度、及び培地成分が挙げられる。本研究では、光条件、チオール化合物のCCMへの添加(Olhoft及びSomers (2001) Plants Cell Reports 20:706-711)、インキュベーション日数、及び接種方法について全て検討する。
両方の実験において、ダイズ品種(例えばJack)及びバイナリープラスミドpBPSEW008(配列番号1)を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスAGL1株を用いた。バイナリープラスミドは、nosP−bar−nosT及びpUBI−gusINT−nosTを含む。前述のように葉外植片及びアグロバクテリウムを調製した。全ての実験に用いた最終的なアグロバクテリウムのOD600は0.5とした。最初の実験においては、以下の条件について2回の反復実験で試験を行った:
(1)5種のチオールの組み合わせの1つをCCMに添加する(チオールなし、100mg/L L−システイン(0.825mM)、400mg/L L−システイン(3.3mM)、1000mg/L L−システイン(8.25mM)、又は1mMチオ硫酸ナトリウム+1mM DTT+1000mg/L L−システイン(8.25mM))、
(2)25℃にて、3日、4日又は5日の共存培養、並びに
(3)暗条件、又は16時間明/8時間暗の光周期で100μE/m2s白色光下でインキュベーションする。
各実験のために10の外植片を調製した。外植片はSIM培地上で2週間成長させ、その後の時点でカルス/シュートパッドを発育する外植片の割合を記録した。
2つ目の実験においては、外植片を調製した後、全ての葉外植片を5日間共存培養し、外植片全体をアグロバクテリウム/CCM懸濁液中に10分間浸漬するか又は外植片の切断葉柄端を浸す以外は、上記の実験を行った。10の外植片を処理毎に全体を浸漬させ、4の外植片の端を処理毎に浸した。全ての外植片を共存培養直後にGUS染色した。
実験1において、カルス/シュートパッドの再生は、CCM中のL−システインのレベルによって有意な影響を受けたが、共存培養の光条件又はインキュベーションの日数によっては影響を受けなかった(図14参照)。チオール化合物を含まないCCM又は100mg/L L−システイン(0.825mM)を含むCCMで共存培養した外植片の80〜100%は、試験した他の要因に関係なく、葉柄上にカルス/シュートパッドを発育した。しかしながら、400mg/L(3.3mM)を超えるL−システインレベルでは、一貫した結果として薄膜及び葉柄の切断端の漂白によって観察された組織死となった。実験2においては、異なる共存培養条件での外植片におけるGUS染色によって、400mg/L L−システイン(3.3mM)を超えるチオール条件でのCCMが最適なT−DNA送達にとって好ましいことが明らかとなった(表3参照)。
Figure 0004744512
1000mg/L L−システインに供した外植片は有意な漂白を受けたため、これらの外植片上にはGUS(+)巣がより少なく観察されたことを説明している。この予備実験はまた、光条件がダイズ細胞へのT−DNA送達には大きな役割を果たしていないことを示唆している。
この一連の実験において再生及びGUS一過性発現の両方に影響を及ぼす主な処理は、CCMへのチオール化合物の添加であった。試験した他の共存培養条件は、これらの実験で用いた数では再生又はGUS一過性発現に大きな影響を及ぼさなかった。従って、L−システインの最適濃度は400mg/L又は3.3mMであることがわかった。
葉外植片からのシュートの再生に対するシュート開始培地(SIM)の影響
塩、ホルモン、及び光質を含む培養条件は全て植物における再生に対する植物の応答に影響を及ぼす。葉外植片におけるシュートの開始及び再生に対するシュート誘導の過程における無機塩及びホルモンの影響を比較する試験は、キマメ(pigeonpea)で行われている(Dayalら(2003) Plant Cell Rep. 21:1072-1079)。この一連の実験においては、無機塩MS及びB5、サイトカイニンであるBAP及びカイネチンのレベル、並びに種々の光質について、これらの要因が、葉外植片におけるシュート形成及び伸長にどのように影響を及ぼすかを観察するために試験した。
葉外植片は、上述したようにSoygenetics品種31(93−41131)からの7日齢幼苗から調製した。外植片を、MS塩又はB5塩のいずれかと、カイネチン及びBAPの8つの組み合わせのうち1つを含む16の異なるSIM培地(基本培地:B5塩又はMS塩、B5ビタミン、MS III鉄、3mM MES、3%スクロース、0.8%精製寒天、及び250〜500mg/L Timentin)に無作為に配置した。
Figure 0004744512
実験1において、各反復実験当たり160の外植片を調製し(詳細は上述の通り)、10の外植片を無作為に16の異なるSIM処理のそれぞれに播いて、3回の反復実験を行った。1人の研究者が3回の反復実験全てを準備した。外植片をSIM上で2週間成長させた後、反復実験2から5つの外植片と反復実験3から5つの外植片をSEM[1×MS主要塩、1×MS副次塩、1×MSIII鉄、1×B5ビタミン、3%スクロース、3mM MES、50mg/L L−アスパラギン(0.378mM)、100mg/L L−ピログルタミン酸(0.775mM)、0.1mg/l IAA(0.57μM)、0.5mg/l GA3(1.44μM)、1mg/l ZR(2.85μM)、250〜500mg/Lチカルシリン、0.8%精製寒天;pH5.6]に移して、シュート伸長を誘導した。この実験における外植片は、平均温度25℃で、白色電球を用いて100μE/m2sを超える光強度で18時間明/6時間暗周期の下でパーシバルチャンバーにおいて成長させた。実験2は、外植片を3人の異なる研究者が調製する3回の反復実験から構成された。各研究者は、160の外植片を切断し、10の外植片を16の処理それぞれに無作為に配置した。外植片をそれぞれのSIMにおいて2週間成長させた後、全ての外植片をSEMに移した。外植片は、白色ランプ及びGroLuxランプの構成で67μE/m2sを超える光強度にて16時間明/8時間暗の光周期で成育チャンバーにおいて成長させた。
SIMでの成長の2週間後にカルス/シュートパッドを含む外植片の数を記録した。この時点で、両方の実験について、各研究者が、カルス/シュートパッドの発育から観察されるようにSIM培地に対する外植片の最良の応答の主観的解析を行った。シュート伸長に対するSIMの影響もまたSEMにおいて18日後及び36日後に測定した。外植片は、外植片当たりの有意に伸長したシュートの平均数、及び各外植片について最大シュートの平均長について評価した。
各処理について、シュート原基又は器官形成性カルスの形態の腋生細胞の増殖を示す外植片の数を数えた。2つの実験における全ての反復実験において、平均して、外植片の98.6%が、腋生細胞が葉柄に含まれるように切断したものだった(表5)。
Figure 0004744512
処理間で、特にB5塩及びMS塩の基礎培地の間で、カルス/シュートパッド発育に明らかな差異があった。MS上で成長させた外植片は、深緑色の有意なカルス成長を示したが、B5上で成長させた外植片は、有意ではないカルス成長を示す淡緑色のシュート原基を主に生じた。SIM上で2週間後、各研究者は、最大で最も健常なシュートパッド発育について最良の培地を選択した。外植片でのシュート原基の誘導に最良の培地は、実験1における反復実験2及び3と実験2における3つ全ての反復実験において、3人の研究者全ての観察結果を考慮して選択した。最良の培地は「1」と評価した。いずれの研究者によっても選択されなかった処理はダッシュ記号(−)で示した(表6参照)。
Figure 0004744512
この主観解析から、低濃度のBAPを含むSIM(特にC2B、C3B、C3M)における外植片が、2週間後により大きくより健常なカルス/シュートパッドを発育した。さらに、B5塩において成長させた外植片もまた外植片でのシュート誘導において良好に応答した。この研究で用いた光の強度及び波長は、SIMでの2週間後におけるカルス/シュートパッドの形成に影響を及ぼさなかった。
外植片当たりの最大シュートの長さ及び外植片当たりの伸長シュートの平均数に対するSIM中のホルモンの影響は、シュート伸長培地における18日後の2つの実験でも類似していた(図12A、B)。両方の実験において、BAPレベルが高くなると、伸長開始するシュートの数が増大する傾向があった。しかし、これらのシュートは一般的には伸長しなかった。最大シュートの長さは、光波長の混合及び低光強度を用いた実験2において、BAPが培地に存在した場合には全体的にはるかに短く、BAPが培地中に存在しない場合には長かった(図12A)。SIM培地中のBAP濃度は、外植片当たりのシュート数にわずかに影響を及ぼしたが、最大シュートの長さほど有意ではなかった。代わりに、任意の濃度のBAPを含むB5基礎培地において広いスペクトルの低光条件下で成長させた外植片は、他の条件及び処理よりも、外植片あたりのシュートが多くなる傾向にあった(図12B)。これらの外植片におけるシュート伸長の傾向は、SEM上での36日後には処理毎に有意な変化はなかったが、全ての処理について、外植片当たりの最大シュートの平均長は予想通り増大した(図13C)。理想的なSIMは、外植片当たり多数の伸長シュートをもたらし、そしてこれらのシュートを迅速かつ頑強に伸長させるだろう。これらの結果から、シュート伸長を促進するための最良のSIMは、BAPを含まない又はBAPを低レベルで含む培地、例えばC2M、C4M、C8M、C1B、C4B及びC8Bと、実験1のように高光条件である。
種々のシュート誘導培地を試験し、葉外植片におけるシュート形成及び再生に対するその影響を測定した。試験対象の処理と共にMS無機塩上で栽培した外植片は、多量の暗緑色だが壊れやすいカルスを成長させたが、B5無機塩上の外植片は、カルス成長がほどんどない淡色のシュートを形成した。低レベルのBAP、B5塩を含む培地、及び両方の光計画が、SIMにおいて2週間後に葉外植片に健常かつ大きなシュートパッドを形成するのに最も好適な条件であった。光レベルはSEMにおいて18日後に外植片におけるシュート伸長及び形成に有意に影響を及ぼさず、広いスペクトルであるが低い光レベルでBAP上で栽培した外植片は、外植片当たりの伸長シュートがより多かったが、これらのシュートは試験した他の条件よりも一般的に短かった。従って、シュート誘導過程で低レベルのBAP及びB5無機塩と全体にわたる高光条件において栽培した葉外植片は、大きなサイズに伸長した、外植片当たり多数のシュートを迅速に生成する大きく健常なカルス/シュートパッドの形成の点で、再生にとって最良であった。
増殖腋生分裂組織外植片のための2つの異なるドナー材料の評価
温室ドナー植物及びin vitro成育植物から得られる外植片材料の比較を、各外植片からのシュート再生を測定することにより行った。外植片材料は、第一節〜第四節からの基部節間組織が付いた増殖腋生分裂組織からなるものとした。
試験した成長条件の両方で品種Jackを用いた。in vitroドナー材料については、滅菌種子を1/2 MS塩及び2%スクロース、pH5.7を含むPlantconTM(SIGMA)に播いた。幼苗を25℃にて、16/8時間(明/暗)光周期で、40〜70μMm−2−1の光強度で維持した。温室ドナー植物については、種子をMetromixTMに播き、温室内で25℃にて16時間の光周期で成長させた。3週間後に温室の組織を植物から切除した。温室材料については、組織を、5%Tween20を含有する溶液に浸漬し、続いて70%(v/v)エタノール中に2分間浸漬した後、3.5%(v/v)次亜塩素酸ナトリウム溶液中で10分間洗浄し、最後に滅菌水で3回すすぐことによって表面を滅菌した。in vitroドナー材料については、さらなる滅菌は必要なかった。腋生分裂組織の外植片を、5μM BAP又は2mg/L(9.1μM)TDZのいずれかを添加した最大限のMS塩及びBGamborgビタミンを含むシュート開始培地に求底性で配置した。シュート誘導培地での3週間後に外植片当たり0.3mmを超えるシュートの数を計数することにより、評価を行った。
両方のドナー植物(in vitro及び温室)からの腋生分裂組織を含有する外植片は、BAP又はTDZのいずれかにより複数のシュート誘導に対し陽性反応を示した(表7)。より高い再生能はin vitro成育ドナー材料からの腋生分裂組織外植片で観察された。使用したサイトカイニンのうち、BAPはTDZよりも高いシュート誘導能を示した。両方のドナー材料から、TDZ上で培養した外植片は大量のカルスと小さなシュートを発生した。温室成育植物に由来する外植片には汚染の問題もあった。
Figure 0004744512
増殖させた腋生分裂組織の形質転換法のための外植片材料は、これがin vitro成育植物に由来し、シュート誘導時にBAPに暴露された場合に最高のシュート誘導能を示した。
in vitro成育植物からの外植片に対するシュート誘導能に影響を及ぼす因子
11.1.ダイズの腋生分裂組織の再生能に対する培養容器の種類の影響
異なる培養容器がin vitro小植物体から得られた腋生分裂組織外植片の再生に影響を及ぼすか否かを確認するために評価を行った。Wrightら(1987)は、同じ環境成育条件下でプラスチック製ペトリ皿又はガラス製培養管において培養したダイズ組織がシュート再生及び表現型発現に差異を生じることを示した。
品種Jackの種子を、最初に70%(v/v)エタノールで6分間洗浄することにより表面滅菌した。続いて種子を25%市販漂白剤(NaOCl)及び0.1%Tween20を含む溶液に浸漬し、200rpmで20分間攪拌した。種子を滅菌再蒸留水で4回すすいだ。16/8時間(明/暗)の光周期で光(40〜70μMm−2−1)をあてて発芽を行った。滅菌種子を、発芽培地を含む3つの異なる培養容器、すなわち(1)ペトリ皿(150×20mm)、(2)連結マゼンタボックス、及び(3)PlantconTM(SIGMA)に分配した。発芽培地において3週間後、腋生分裂組織外植片を上述の通り調製し、続いて5μM BAPを含むように修正した最大限のMS塩及びBGamborgビタミンを含むシュート開始培地に求底性に配置した。シュート誘導において4週間後に、外植片当たり3mmを超えるシュートの平均数を測定することで再生能を評価した。
3つの異なる培養容器において発芽した小植物体からの腋生分裂組織外植片は、異なる再生能を有する。最大の再生能はプラスチック製ペトリ皿において発芽させた腋生分裂組織外植片において観察され、連結マゼンタボックスで発芽させた種子では外植片当たり平均0.3のシュートが、プラスチック製ペトリ皿では平均0.81のシュートが、Plantconでは平均0.1のシュートが発育した。さらに、連結マゼンタ及びPlantconTM(SIGMA)に由来する外植片は、おそらくリグニン含量の増大のために小植物体から取り出し、傷付けることがより困難であった。
11.2.増殖させた腋生分裂組織におけるシュート開始に対する発芽培地及び/又はシュート開始培地におけるBAP濃度の影響
理想的なドナー植物は、再生能が高い腋生分裂組織外植片を生成し、小植物体当たり多数の外植片を生じる能力を有している必要がある。種子をホルモン不含培地において成育させ、直接外植片材料に用いた場合には、腋生分裂組織外植片をほとんど調製することができないことが観察された。さらに、これらの容器における多数の根の成長のために小植物体形成のための部屋及び栄養物質が非常に限定された。従って、増殖ステップの付加、及び発芽培地へのBAPの添加後に根の成長を低減してシュートを再生する外植片の能力を試験した。BAPがシュートの再生能力に影響を及ぼすことも知られているため、発芽及び増殖を通じて複数の濃度のBAPに暴露した外植片の再生能を測定するための実験を設計した。
上述の通り、BAP濃度0、0.36、1.25、2.5又は5μMを用いて種子を発芽させた。7日後、根、胚軸及び1枚の子葉を取り除き、残りの組織をペトリ皿(150×20mm)に注ぎ入れた増殖培地(MS塩、3%スクロース、Bビタミン、0.8%phytagar、及び適量のBAP)に入れた。各BAP濃度からの幼苗を増殖の間に5つの全ての濃度に移した。4週間後、腋生分裂組織外植片を調製し、100×20mm皿におけるシュート誘導培地(MS塩、3%スクロース、Bビタミン、5μM BAP、0.8%phytagar)に移した。1週間後、材料を伸長培地(MS塩、3%スクロース、Bビタミン、0.36μM BAP、0.8%phytagar)に移して4週間おいた後、シュート伸長(0.3mmを超えるシュート)について評価した。
外植片調製の前に根を除去し、増殖培地に小植物体を置くことによって、増殖した小植物体当たり外植片をより多く調製することができ、平均4〜6の腋生分裂組織外植片を得た。さらに、追加の切除ステップ及び増殖ステップは外植片のシュート誘導能に影響を及ぼさなかった。発芽培地へのBAPの添加もまた、特に2.5μMの濃度において伸長シュートを生成する外植片の割合(%)を増大させる傾向にあった(図15、灰色のバー)。腋生分裂組織プロトコールの増殖期の過程で高濃度のBAPと接触させた外植片は、BAPと接触させない外植片よりもあまり伸長していないシュートを生成するという全般的傾向が観察された(図15参照)。
発芽培地へのBAP(0.36〜5μM)の添加は、シュート再生に悪影響を及ぼすことはなかった。それよりも、2.5μM BAPにおいて発芽した種子においてはシュート再生の増大の全般的傾向が観察された。増殖培地におけるBAPレベルの増大は、外植片におけるシュート再生に悪影響を及ぼした。
11.3.増殖させた腋生分裂組織外植片の発芽、増殖及びシュート誘導についての、2つの無機塩(MS及びB )の影響の評価
培養培地中の塩の組成は、ダイズ植物の健康及び発育に非常に重要である。発芽、増殖及びシュート誘導の過程でMS無機塩又はB無機塩から構成される培地上で成長させた場合に、シュートを開始する外植片の能力の応答を比較するために実験を行った(比較については上記[A]の部分を参照)。3つの異なる品種、すなわちJack、Westag97及びL00106CNを再生試験に用いた。種子の滅菌、増殖及びシュート誘導は上述の通り実施した。無機塩に加えて、3つの培地全てに5μM BAPを添加した。2回反復実験を行った。シュート開始能に対する無機塩の影響は品種に依存的であった。無機塩をMSからB5に変更したところ、品種L00106CN及びJackについては外植片当たりのシュート数が増大した(表8)。品種Westag97を用いた場合には、MS又はB5塩で培養した外植片におけるシュート形成に有意な差は見い出されなかった。
Figure 0004744512
培地中の無機塩の変更により、ダイズPAMの外植片におけるシュートの開始に影響があった。Jack及びWestag97品種については、発芽培地、増殖培地及びシュート誘導培地中のB5無機塩によって、外植片当たりの生成したシュートの数が有意に増大した。
増殖させた腋生分裂組織外植片を用いた種々の公共ダイズ品種の再生能の評価
種々のダイズ品種の再生能の評価は、強力なダイズ形質転換及び再生系の開発にとって重要な要素である。再生能が高い系統の同定によって、それらの起源に応じて形質の発達がよりフレキシブルとなる。2つの実験に用いた品種は、3のUS変種、6のカナダ変種、及び27のSoygenetics品種とした。この最初の評価に含まれる品種は、USダイズ公共系統からのJack、Resnik、Williams82と、University of Guelph OAC(Ontario Agricultural College)からのRCAT Staples、Westag97、RCAT Bobcat、OAC Prudence、OAC Woodstock、OAC9908であった。70%(v/v)エタノールに6分間暴露することにより種子の表面を滅菌した。続いて、種子を25%市販漂白剤(NaOCl)及び0.1%Tween20を含む溶液に浸漬し、200rpmで20分間振とうした。種子を滅菌再蒸留水で4回すすいだ。5〜7日間かけて暗条件下で発芽を行った。発芽後、根及び各子葉の半分を取り除き、残りの組織を5μM BAを含むMSB5培地で増殖させた。25℃にて40〜70μMm−2−1の光強度で16/8時間(明/暗)の光周期の成育チャンバー条件に皿を置いた。3週間後、腋生分裂組織外植片を実施例3.3に記載のように調製し、次に最大濃度のMS塩、BGamborgビタミン及び5μM BAを含むシュート開始培地に求底性に配置した。4週間後に、増殖腋生分裂組織外植片当たりの0.3mmを超えるシュートの総数の評価を行った。
上述のように種子及び外植片を調製した。評価には完全に無作為化された設計を用いた。2回の反復実験を行って、2人の異なる研究者が外植片を調製した。品種当たり合計40の増殖腋生分裂組織を評価に用いた。増殖腋生分裂組織当たり0.3mmを超えるシュートの総数をシュート誘導での4週間の後に実施し、本評価で研究した主な変数とした。一元配置分散分析を行った。最小二乗平均及びデータを、PROC GLM(SAS Institute, Cary, NC)を用いて分析した。Jackを対照として用いて複数の平均比較についてダネット−スウ検定(P>0.05における)を用いた。剰余の分析もまた行って、分析の仮定が一致するかどうかを確認した。
3つのUS変種及び6つのカナダ変種について増殖させた外植片当たりのシュートの平均数を表9に示す。試験した7品種のうち、5つが複数のシュート誘導に対して応答した。Westag97品種は、外植片当たりのシュートをJackよりも多く発育させた。異なる成熟群からのいくつかのダイズ品種、特にWestag97は、複数のシュートを多数生成することが可能であった。この形質転換法は、広範なダイズ品種に好適でありうる。
Figure 0004744512
共存培養条件
13.1 L−システイン効果
Olhoft及びSomers (2001)(Plants Cell Reports 20:706-711)は、共存培養培地へのチオール化合物(L−システイン、チオ硫酸ナトリウム及びジチオトレイトール(dithiolthreitol))の添加によって、アグロバクテリウム媒介子葉節形質転換法を用いた場合にダイズ品種Bertの一過性かつ安定な形質転換が増強されたことを示している(Olhoftら(2003) Planta 216:723-735も参照)。従って、固形共存培養培地へのL−システインの添加によって、増殖させた腋生分裂組織外植片へのT−DNA送達及び組込みが増大することが可能か否かを評価するための実験を設計した。
外植片調製:
Jack変種の種子を、70%エタノールに6分間暴露し、続いて25%市販漂白剤(NaOCl)及び0.1%Tween20を含む溶液に浸漬し、200rpmで20分攪拌することにより表面滅菌した。種子を滅菌水で4回すすいだ。25℃にて暗条件下で7日間かけて発芽を行った。根及び両方の子葉の半分を7日齢幼苗から取り出し、150×20mmペトリ皿上の増殖培地に埋め込んだ。皿をParafilmTMで包埋し、25℃にて明条件で2〜5週間培養室に置いた。
A.ツメファシエンスの調製及び外植片への接種:
バイナリーベクターpBPSMM192b[LB−pSuper−gusINT−NOSt::AtAhast−AtAhas−pAtAhas−RB](配列番号2)を有するA.ツメファシエンスAGL1株を用いた。単一のコロニーを適当な抗生物質を含む25〜30mlのLB培地への接種に用いた。フラスコを28℃にて24〜36時間にわたりオービットシェイカー(220rpm)で振とうしたところ、OD600が0.8〜1.0に達した。3500rpmにて8〜10分遠心することによりアグロバクテリウムをペレットにした。細菌細胞を200μMアセトシリンゴンを含む液体共存培養培地に再懸濁した。切断後すぐに増殖腋生分裂組織外植片をA.ツメファシエンス懸濁液に浸漬し、30分間放置した。続いて、感染した組織を真空チャンバー(25〜30mmHg)に5分間移すか、又は共存培養培地上に直接置いた。培養培地に移す前に、外植片を滅菌ろ紙でぬぐって乾燥させた。固形共存培養培地への0、400又は800mg/L L−システインの添加(それぞれ0、3.3又は6.6mM)の処理について試験した。25℃にて暗条件で3日間にわたり共存培養を実施した。減圧浸潤によって、システインを添加せずに行ったプロトコールにおける形質転換効率が増大したが、システインを添加して行ったプロトコールには有意な影響はなかった。
GUS組織化学的アッセイ:
A.ツメファシエンスAGL1株を感染させた増殖腋生分裂組織外植片を3日後に共存培養培地から取り出し、37℃で一晩かけてGUSで染色した。残りの外植片は500mg/L TimentinTMを含有するシュート誘導培地に移した。GUS組織化学的アッセイはまた接種の10日及び45日後に実施した。
結果:
3日間の共存培養後、GUS+巣を有する外植片の頻度は、2.5%から、固形共存培養培地への800mg/L(6.6mM)又は400mg/L(3.3mM)L−システインの添加によりそれぞれ45%及び63%に増大した。L−システインに暴露した外植片は、L−システインに暴露していない外植片よりも褐変及び組織壊死が少なかった。GUS染色の増大はまた共存培養の10日及び45日後にも観察された(表10)。
Figure 0004744512
チオール化合物、すなわちL−システインを固形共存培養培地に添加することは、T−DNA送達及び組込み、並びに共存培養中及び共存培養後の増殖分裂組織外植片の生存力に対して有益な効果を有する。
13.2 A.ツメファシエンス株及びバイナリーベクターの比較
効率的なT−DNA送達及び組込みを可能にするA.ツメファシエンス株とバイナリーベクターとの最良の組み合わせを見い出すことが望ましい。A.ツメファシエンスの3つの菌株を、2つのダイズ品種Jack及びL00106CNの増殖腋生分裂組織外植片に感染する能力について比較した。さらに、3つの異なるバイナリーベクターの1つを保持するA.ツメファシエンスAGL1株の感染能を試験する第2の実験を実施した。
種子の発芽、増殖、A.ツメファシエンス及び腋生分裂組織外植片の調製、並びに接種は既に記載した通りに実施した。最初の実験においては、バイナリーベクターpBPSMM192b(配列番号2)を含有するA.ツメファシエンスの3つの菌株、すなわちMP90株、LBA4404株及びAGL1株を比較した。3つのA.ツメファシエンス菌株を感染させた増殖腋生分裂組織を、3日後に共存培養培地から取り出し、接種の10日後にGUS染色を行った。
別の実験において、バイナリーベクターpBPSLM003[LB−OCSt−bar−pMAS::pSuper−gusINT−NOSt−RB](配列番号3)、pBPSMM192a[LB−NOSt−gusINT−pSuper::AtAhast−AtAhas−pAtAhas−RB]、又はpBPSMM192b[LB−pSuper−gusINT−NOSt::AtAhast−AtAhas−pAtAhas−RB](配列番号2)を含有するアグロバクテリウムAGL1株の感染の10日後に、品種L00106CNからの外植片においてGUS発現を評価した。pBPSLM003の骨格配列(配列番号3)はpBPSMM192a及びbの骨格配列(配列番号2)とは異なっている。ベクターpBPSMM192a[LB−NOSt−gusINT−pSuper::AtAhast−AtAhas−pAtAhas−RB]は、ベクターpBPSMM192b(配列番号2)とは、pSuper−gusINT−NOSt発現カセットの配向とは逆配向である点で区別される。
外植片は、固形共存培養培地において400mg/L(3.3mM)L−システインと共に又はそれなしで共存培養した外植片におけるGUS発現についても評価した。各処理について、各反復実験(本実験では合計2回の反復実験を行った)のために20の外植片を調製した。GUS発現は最初の感染の10日後に評価した。
標的領域におけるGUS+巣の数を10日齢の外植片において数えた。品種Jackについては、LBA4404を接種した外植片がGUS+領域の最高頻度(60%)を示し、AGL1及びMP90がそれに続いた。品種L00106CNからの外植片は、AGL1株を接種した場合にGUS+領域の最高頻度(55%)を示した。MP90株は、感染可能であったが、両方の品種においてGUS陽性領域の最低頻度を示した(図16参照)。
本研究では、gusAを駆動するスーパープロモーターを有する種々の構築物を、T−DNAに対する遺伝子の配向又は骨格配列が接種された外植片におけるGUS発現に影響を及ぼすか否かを判定するために試験した。3つのバイナリーベクターのうち1つを含有するAGL1と共存培養した外植片の平均頻度を表11に示す。用いたバイナリーベクターの種類、及び外植片の標的組織におけるGUS発現のレベルに有意な影響はなかった。しかしながら、400mg/L又は3.3mM L−システインと共存培養した外植片においては、GUS発現における有意な増大が明らかである。
Figure 0004744512
この形質転換法で用いられる外植片は種々のアグロバクテリウム菌株、特にLBA4404株及びAGL1株を用いた感染に感受性を示す。L−システインは、バイナリーベクターの配向又は骨格配列よりもT−DNA送達に対して大きな影響を及ぼしたことが見出された。
増殖腋生分裂組織法における再生プロセス
強力なダイズ形質転換系には、組織培養に制限時間のある迅速な再生があり、それによりソマクローナル変異に関連する問題が低減する。
増殖腋生分裂組織法について上記の通り概説した形質転換法を用いた場合、アグロバクテリウム接種から温室における植物の確立までの平均再生時間は約100日であった。シュート誘導ステップを第0日とした場合、伸長したシュートは、平均57〜65日で得られ、続いて根の発生及び温室への移動には3〜4週間の期間であった(図17)。アグロバクテリウム接種から温室での樹立まで記載されている形質転換法は、平均約130日である。
V2期のダイズ植物の図解。子葉、単小葉、及びその上の三小葉の位置を示す。腋芽は、子葉と上胚軸との接合部、及び各葉柄と上胚軸との接合部において見とめられる。 発芽の約7日後の品種Jackの発芽ダイズ。 増殖させた腋生分裂組織外植片を用いたダイズ形質転換方法;外植片調製物。7日齢の幼苗を使用して、根及び子葉の一部を除去し、5μM BAPを含む増殖培地に置いて、増殖外植片を作製する(A)。外植片は、元のダイズ幼苗から発育した新しい小植物体から調製する(B)。増殖培地上で2〜3週間後(C)、節間上の腋生節(D)の0.5〜1.0cm下を切断して腋生分裂組織外植片を小植物体から調製し、腋生分裂組織が存在する先端をメスで切断して新しいシュート成長を誘導し、標的細胞をアグロバクテリウムと接触可能にする(E)。 増殖させた腋生分裂組織外植片を用いたダイズ形質転換方法;シュート再生。3日間の共存培養の後、外植片をシュート誘導培地に35日間置くと、大きいカルス/シュートパッドが形成される(A、B)。GUS陽性シュートが、シュート誘導培地で4週間後に見とめられた(C)。その後、複数のシュートを有する外植片を、シュート伸長培地に移して、平均57〜65日間おいた。これらの外植片上の伸長中のシュート(D)を取り、発根培地上に1〜2週間置いて根を発達させ、成育チャンバー中に2〜3週間おいて頑強にした後に、温室に移す(E)。 幼苗腋生分裂組織に基づく方法。7日齢の幼苗(図5−1)を、単一の子葉、根(任意)、第二節上の上胚軸(単小葉節)、及び単小葉を取り除いて、形質転換のために調製する。この外植片を、アグロバクテリウムと5日間共存培養させてから、シュート誘導培地に置く。シュート誘導培地上で1週間の調製した外植片の一例を示す(図5−2)。 チオール化合物を添加した固体共存培養培地上でのアグロバクテリウム・ツメファシエンスとの共存培養後の幼苗腋生分裂組織外植片における一過性発現。 シュート開始培地上で2週間後の幼苗外植片上の第一節における新しいシュート生成を上部パネルに示す。幼苗外植片上で発達しているGUS陽性シュート原基を下部左側パネルに示す。シュート開始培地上で4週間後、外植片をシュート伸長培地に移し、移してから4週間後にシュートが伸長し始める(下部右側パネル)。 葉腋分裂組織外植片の調製。子葉及び上胚軸組織を、子葉節の2〜4mm下の下胚軸から除去する(1)。葉外植片を利用するために、1枚の子葉を取り(2)、その後子葉節の上で上胚軸を切断する(3)。上胚軸を二等分して、2つの対称的な葉外植片を単離する(4)。腋生分裂組織細胞から新しいシュート生成を誘導するために、全ての予め形成されたシュートを葉柄の端部において注意深く取り(5)、腋生分裂組織細胞がある托葉の間の領域を鋭いメスで3〜5回切る(6)。 シュート誘導で2週間後の葉腋分裂組織外植片上の葉柄の基部で生じる新しいシュート生成を上部パネルに示す。3〜4週間後、外植片をシュート伸長培地に移し、そこではたった18〜36日後に有意な伸長がはっきりとわかる(下部パネル)。 アグロバクテリウムと5日間共存培養させた後の幼苗腋生分裂組織外植片上での一過性GUS発現。 シュート誘導培地上で4週間後の幼苗腋生分裂組織外植片上での安定したGUS発現。新しく形成したシュート原基及び大きいシュートが、GUS陽性部分と共に示されている。 シュート伸長培地上で18日間培養された葉外植片について、外植片当たりの最大シュートの長さ(A)及び外植片当たりの伸長シュート数(B)に対する、シュート開始培地中の様々な濃度のカイネチン及びBAPの影響。 シュート伸長培地上で36日間培養された葉外植片について、外植片当たりの最大シュートの長さ及び外植片当たりの伸長シュート数に対する、シュート開始培地中の様々な濃度のカイネチン及びBAPの影響。 A.ツメファシエンスAGL1/pBPSEW008株及び様々な共存培養条件で接種した後にカルスシュートパッドを発育した、SIM上で2週間後の葉外植片の割合(%)(2回反復試験)。(0=0mg/L L−システイン;100=100mg/L L−システイン(0.825mM);400=400mg/L L−システイン(3.3mM);1000=1000mg/L L−システイン(8.25mM);NDC=1mMチオ硫酸ナトリウム、1mM DTT、1000mg/L L−システイン(8.25mM))。 増殖させた腋生分裂組織外植片と、GM及び増殖培地中のBAPに対する応答との表。発芽及び増殖中に様々なBAP濃度に曝された場合の、伸長培地上で4週間後に伸長したシュートを生成した外植片の割合(%)。 品種Jack及びL00106CNのPAM外植片を感染させる、3つの異なるA.ツメファシエンス菌株の感染能の評価。GUS+巣が標的組織にある外植片の数を、感染10日後に数えた。 増殖させた腋生分裂組織方法を用いたダイズ形質転換プロセス。7日齢幼苗(A)を使用して、根及び子葉の一部を取り、5μM BAP含有増殖培地上に置いて、増殖させた小植物体を作製する。2〜3週間後(B)、付いている葉を除去し、節の領域を露出させ(C)、アグロバクテリウムと3日間共存培養し、シュート誘導培地に35日間置くことで(D)、小植物体から腋生分裂組織外植片を調製する。次いで、複数のシュート外植片(E、F)をシュート伸長培地に移し、そこで平均で57〜65日間そのままにする。これらの外植片上の伸長シュート(G)を取り、発根培地に1〜2週間置いて、根を発達させ(H)、成育チャンバー中で2〜3週間かけて頑強にした後、温室に移す(I)。
配列番号1:ベクターpBPSEW008をコードするヌクレオチド配列
[LB−pNOS−bar−NOSt−::pPcUBI−gusINT−NOSt−RB]
配列番号2:ベクターpBPSMM192bをコードするヌクレオチド配列
[LB−pSuper−gusINT−NOSt::AtAhast−AtAhas−pAtAhas−RB]
配列番号3:ベクターpBPSLM003をコードするヌクレオチド配列
[LB−OCSt−bar−pMAS::pSuper−gusINT−NOSt−RB]。

Claims (12)

  1. トランスジェニックダイズ植物の作製方法であって、以下のステップ:
    (a)ダイズ幼苗の第一節又は第二節以上の葉節点の腋生分裂組織を準備するステップ、
    (b)該腋生分裂組織を、農学的に有用な形質についての少なくとも1つの植物発現カセットと任意により1以上の選択マーカー遺伝子を含むトランスジェニックT−DNAを含むアグロバクテリウムと共存培養するステップ、
    (c)該共存培養した腋生分裂組織を、以下:
    (i)該腋生分裂組織からの新たなシュート誘導を誘導するのに好適な濃度の少なくとも1つの植物成長因子、並びに
    (ii)任意により、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、組織若しくは植物体の同定及び/若しくは選択を可能にする1以上の選択化合物、並びに/又は
    (iii)任意により、アグロバクテリウム増殖を抑制するのに好適な1以上の抗生物質
    を含むシュート誘導培地に移し、シュートが誘導され発育するまで上記共存培養した腋生分裂組織を培養し、該シュートを単離するステップ、並びに
    (d)該単離したシュートを発根培地に移し、該シュートが根を形成するまで該発根培地で該シュートを栽培し、さらにそのようにして誘導された、農学的に有用な形質についての少なくとも1つの植物発現カセットと任意により少なくとも1つの選択マーカー遺伝子を含むT−DNAが挿入されたゲノムを有する小植物体を、成熟植物まで再生するステップ
    を含み、前記腋生分裂組織を、前記共存培養の前又は共存培養の間に傷つける、上記方法。
  2. 以下のステップ:
    (a1)共存培養の前、その間又はその直後に外植片を傷つけるステップ、
    (b1)ステップ(b)の後の共存培養した腋生分裂組織を、アグロバクテリウム増殖の抑制に好適な少なくとも1つの抗生物質及び任意により少なくとも1つの植物成長因子を含む培地に移すステップであって、該培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ、
    (b2)ステップ(b)及び任意によりステップ(b1)の後の腋生分裂組織を、少なくとも1つの植物成長因子を含むシュート誘導培地(SIM)においてさらにインキュベートするステップであって、該シュート誘導培地は、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、器官又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする選択化合物を欠損することが好ましい、上記ステップ、
    (c1)ステップ(c)の後のシュートを、以下:
    (i)シュートが伸長するのに好適な濃度の少なくとも1つの植物成長因子、及び
    (ii)任意により、ステップ(b)の選択マーカー遺伝子と組み合わせた場合に該選択マーカー遺伝子を含む植物細胞、組織又は植物体の同定及び/又は選択を可能にする1以上の選択化合物
    を含むシュート伸長培地に移し、該移したシュートを、少なくとも約2cmの長さに伸長するまで該シュート伸長培地で栽培するステップ
    からなる群より選択される1以上の追加ステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. 第一節又は第二節以上の節の腋生分裂組織が、以下:
    (a)実質的に幼苗全体として準備される幼苗腋生分裂組織、及び
    (b)腋生分裂組織が葉の葉柄に付いて残るように、第一葉又は第二葉以上の葉を切開することにより準備される葉腋分裂組織、及び
    (c)増殖させた腋生分裂組織
    からなる群より選択される形態で準備される、請求項1又は2記載の方法。
  4. 実質的に幼苗全体が、以下:
    (a)幼苗全体、
    (b)根を取り除いた幼苗、
    (c)1又は両方の子葉を取り除いた幼苗、
    (d)根及び1又は両方の子葉を取り除いた幼苗、
    (e)根、両方の子葉及び上胚軸の一部を取り除き、上胚軸の一部に付いている腋生分裂組織が残っている幼苗
    からなる材料群より選択される、請求項3記載の方法。
  5. ダイズ幼苗を外植片作製の約4〜10日前に発芽させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ステップ(b)、(b1)、(b2)及び/又は(c)の少なくとも1つのステップの培地がサイトカイニンを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. サイトカイニンが、約1μM〜約10μMの濃度の6−ベンジルアミノプリンである、請求項6記載の方法。
  8. ステップ(b)、(b1)、(b2)、(c)及び/又は(c1)の少なくとも1つのステップの培地、好ましくは少なくともステップ(b)及び(c1)の培地が、約0.1μM〜約2μMジベレリン酸(GA3)を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. ステップ(b)、(b1)、(b2)及び(c)の少なくとも1つのステップの培地が少なくとも1つのチオール化合物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. チオール化合物が、約1mM〜10mMの濃度のL−システイン、約0.1mM〜5mMの濃度のジチオトレイトール、及び/又は0.1mM〜5mMの濃度のチオ硫酸ナトリウム(sodium thiolsulfate)である、請求項9記載の方法。
  11. ステップ(c1)及び/又は(d)の少なくとも1つのステップの培地が、約0.01mg/l〜約1μM mg/lインドール酢酸(IAA)、及び/又は約0.1μM〜約4μMジベレリン酸(GA3)、及び/又は約0.5μM〜約6μMゼアチンリボシド酸を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. アグロバクテリウムが、アグロバクテリウム・ツメファシエンス及びアグロバクテリウム・リゾゲネスの安全化菌株を含む群より選択される菌株である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
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