JP4741816B2 - 冷間圧延潤滑油 - Google Patents
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そこで、かかる問題に対処すべく、種々の潤滑油が開発されている(特許文献1〜6参照)。これら潤滑油を用いることにより、高純アルミニウムでのロールコーティングを抑制することができる。
該潤滑油は、油性剤と、アミン誘導体と、基油とからなり、
上記油性剤は、ラウリルアルコール及び/又はオレイルアルコールからなる高級アルコール0.1〜15重量部、炭素数12〜18の高級脂肪酸0.01〜3重量部、及び炭素数13〜22の高級脂肪酸エステル0.1〜15重量部から選ばれる1種以上からなり、その合計量は0.01〜33重量部であり、
上記アミン誘導体は、炭素数4〜20であり、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上からなり、その合計量は0.01〜5重量部であり、
上記基油は、ポリイソブチレン、炭素数12〜18のα−オレフィン、及び鉱油から選ばれる1種以上からなり、その合計量は99.98〜62重量部であることを特徴とする冷間圧延潤滑油にある(請求項1)。
そのため、上記冷間圧延潤滑油は、高純アルミニウムだけでなく、工業用純アルミニウム及びアルミニウム合金の冷間圧延にも用いることができ、いずれの材料に対しても優れた圧延潤滑性を発揮することができる。なお、本発明においては、高純アルミニウム、工業用純アルミニウム及びアルミニウム合金を総称して以下適宜「アルミニウム」という。
さらに、上記冷間潤滑油においては、金属石鹸等の副生成物の発生が抑制される。そのため、アルミニウム板等の圧延後のアルミニウム製品に汚染やオイルステインが発生することを抑制できる。それ故、上記冷間圧延潤滑油をアルミニウムの圧延に用いると、表面の品質に優れたアルミニウム製品を製造することができる。
本発明の冷間圧延潤滑油(請求項1)は、上記油性剤と、上記アミン誘導体と上記基油とを含有する。
まず、上記油性剤について説明する。
上記冷間圧延潤滑油は、上記油性剤を0.01〜33重量部含有し、該油性剤は、炭素数11〜15の高級アルコール0.1〜15重量部、炭素数12〜18の高級脂肪酸0.01〜3重量部、及び炭素数13〜22の高級脂肪酸エステル0.1〜15重量部から選ばれる1種以上からなる。
R1−OH ・・・(1)
(R1は、炭素数11〜15のアルキル基である。)
R1の炭素数が11〜15とする理由は、上記の高級アルコールの炭素数を11〜15の範囲に限定する理由と同様である。
上記一般式(1)で表されるアルコールの具体例としては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチンアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等がある。これらは、いずれか1種を用いることもできるが2種以上を混合して用いることもできる。より好ましくは、ラウリルアルコール又は/及びオレイルアルコールがよい。
R2−COOH ・・・(2)
(R2は、炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基である。)
上記一般式(2)において、R2の炭素数を11〜17とする理由は、上記の高級脂肪酸の炭素数を12〜18の範囲に限定する理由と同様である。即ち、上記一般式(2)におけるR2の炭素数が11未満の場合には、境界潤滑性が劣化するおそれがあり、17を超える場合には、低温環境下において凝固しやすくなる。
より好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等がよい。
この場合には、上記冷間圧延潤滑油の潤滑性や長期安定性をより向上させることができる。さらに、低温環境下においてより凝固し難いものにすることができ、上記冷間圧延潤滑油の取り扱いをより容易にすることができる。
R3−COO−R4 ・・・(3)
(R3は、炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基、R4は炭素数1〜4のアルキル基である。)
上記一般式(3)において、R3の炭素数が11未満の場合には、上記冷間圧延潤滑油の潤滑性が劣化したり、ロールコーティングが発生し易くなるおそれがある。また、上記冷間圧延潤滑油の臭いがきつくなり、作業環境が悪化するおそれがある。一方、上記一般式(3)におけるR3の炭素数が17を超える場合、又はR4の炭素数が4を超える場合には、圧延後のアルミニウム板等のアルミニウム製品に残留し、後工程における焼鈍でオイルステインが発生し易くなるおそれがある。またこの場合には、上記冷間圧延潤滑油の融点が高くなるため常温で凝固し易くなり、上記冷間圧延潤滑油を加熱するための加熱設備が必要になるおそれがある。
上記冷間圧延潤滑油は、上記アミン誘導体を0.01〜5重量部含有する。
上記アミン誘導体の含有量が0.01重量部未満の場合には、ロールコーティングが発生し易くなるおそれがある。一方、5重量部を超える場合には、アミンが過剰になり、上記アミン誘導体が上記油性剤よりも速く金属に吸着することにより、上記油性剤の効果を阻害するおそれがある。その結果、上記冷間圧延潤滑油の圧延潤滑性が低下するおそれがある。より好ましくは0.1重量部〜1重量部がよい。
付加されるアルキレンオキシドの重合形態としては、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等がある。
アルキレンオキシド付加物においては、付加されるアルキレンオキシドのモル数は、アミン類1モルに対して1〜6モルであることが好ましい。6モルを超える場合には、基油への溶解性が低下するおそれがある。
即ち、脂肪族アミンとしては、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等がある。
芳香族アミンとしては、例えばアニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等がある。
脂環式アミンとしては、例えばN−シクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジ(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(4−ブロモ−シクロヘキシル)アミン等がある。
上記冷間圧延潤滑油は、上記基油を99.98〜62重量部含有する。
上記基油の含有量が99.98を超える場合には、相対的に、上記冷間圧延潤滑油中の上記油性剤や上記アミン誘導体の量が少なくなる。そのため、境界潤滑性が低下し、焼き付きが発生し、圧延後のアルミニウム板等のアルミニウム製品の表面に傷が生じるおそれがある。また、この場合には、ロールコーティングが発生しやすくなるおそれがある。
一方、62重量部未満の場合には、圧延後のアルミニウム製品を焼鈍した際に、オイルステインが発生しやすくなるおそれがある。また、圧延潤滑性が低下するおそれがある。
上記鉱油としては、パラフィン系又は/及びナフテン系の鉱油を用いることができる。
また、環境保護の観点からアロマ成分の含有量が2%以下の鉱油が好ましい。
α−オレフィンの炭素数が12未満の場合には、上記冷間圧延潤滑油の境界潤滑性が劣化するおそれがある。一方、炭素数が18を超える場合には、冬季や寒冷地等の低温環境下において上記冷間圧延潤滑油が凝固し易くなり、取り扱いが困難になるおそれがある。
また、上記基油としてのα−オレフィンは、比較的粘度が低いため、例えば厳しい圧延潤滑性が要求され、かつオイルピットが嫌われる場合等に、好適に使用することができる。
この場合には、上記冷間圧延潤滑油の潤滑性をより向上させることができる。特に好ましくは、1−ヘキサデセンと1−オクタデセンとを略等量ずつ混合した混合物がよい。
したがって、上記ポリイソブチレンは、厳しい圧延潤滑性が要求され、かつオイルステインの発生が懸念される場合等に、好適に使用することができる。
粘度が1mm2/s未満の場合には、圧延時にロールバイトに供給される上記冷間圧延潤滑油の量が少なくなり、潤滑不良を引き起こし、圧延後のアルミニウム製品の表面品質が劣化するおそれがある。一方、20mm2/sを超える場合には、圧延時に圧延機のロールとアルミニウム材料との間でスリップが発生したり、オイルピットが発生し易くなる他、圧延後にオイルステインが発生し易くなるおそれがある。より好ましくは、1.2〜6.0mm2/sがよい。
上記冷間圧延潤滑油の粘度は、基油と、該基油に添加する上記油性剤やアミン誘導体等の配合割合で決定することができる。
このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤、消泡剤等がある。酸化防止剤としては,DBPC(2,6−ジターシャリーブチル−P−クレゾール)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの部分エステル、リン酸エステル及びその誘導体などがある。腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール等、消泡剤としてはシリコン系のもの等を用いることができる。
次に、本発明の実施例につき説明する。
本例では、組成の異なる複数の冷間圧延潤滑油を準備し、これらの特性を調べた。
本例の冷間圧延潤滑油は、アルミニウムの冷間圧延に用いる潤滑油である。該潤滑油は、油性剤0.01〜33重量部と、アミン誘導体0.01〜5重量部と、基油99.98〜62重量部とからなる。油性剤は、炭素数11〜15の高級アルコール0.1〜15重量部、炭素数12〜18の高級脂肪酸0.01〜3重量部、及び炭素数13〜22の高級脂肪酸エステル0.1〜15重量部から選ばれる1種以上からなる。アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上からなる。基油は、ポリイソブチレン、炭素数12〜18のα−オレフィン、及び鉱油から選ばれる1種以上からなる。
基油としては、下記の3種類の基油A〜Cを用いた。
(基油)
基油A:温度40℃における粘度4.09mm2/sの鉱油(パラフィン30容量%、ナフテン70容量%)
基油B:直鎖オレフィン(1−ヘキサデセンと1−オクタデセンの等量混合物)
基油C:温度40℃における粘度12.1mm2/sのポリイソブチレン
油性剤A:ラウリルアルコール
油性剤B:ステアリン酸ブチル
油性剤C:オレイン酸
また、アミン誘導体としては下記の3種類のアミン誘導体A〜Cを用いた。
アミン誘導体A:オレイルアミン
アミン誘導体B:N,N−ジシクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物
アミン誘導体C:N−エチルイソプロパノールアミン
試料E2〜試料E15の圧延試験及びロールコーティング量試験においては、材料Aを用いて行った。また、試料E1については、材料A及び材料Bをそれぞれ用いて行った。
材料Aは、Alの他に、Siを0.1重量%、Feを0.27重量%含有する工業用純アルミニウム(JIS
A1050H−18)からなるアルミニウム板(幅40mm、長さ450mm、厚さ2.0mm)である。
材料Bは、Alの他に、Feを0.25重量%、Mnを0.35重量%、及びMgを4.5重量%含有するアルミニウム合金(JIS
A5182−H18)からなるアルミニウム板(幅40mm、長さ450mm、厚さ2.0mm)である。
アルミニウム材料(圧延材)1枚毎にロールギャップを0.4mmから0.05mm間隔で減少させながら圧延材の圧延を繰り返し行った。圧延は、焼き付きやヘリングボーンが発生して圧延ができなくなるまで繰り返し行い、圧延不能となった一つ前の圧延における圧下率(限界圧下率)を測定した。その結果を表1に示す。なお、圧延は、ロール径155mm、ロール表面粗度0.4μmの圧延ロールを有する圧延機を用いて、圧延速度34m/minで行った。
まず、30枚の圧延材を圧下率50%で圧延した。その後、圧延機の圧延ロールの表面に付着しているロールコーティングを水酸化ナトリウム水溶液によって溶解し、脱脂綿で回収した。脱脂綿中のアルミニウム溶解液を純水で抽出し、原子吸光法によりアルミニウム量を定量した。その結果を表1に示す。
したがって、限界圧下率が65%以上で、かつロールコーティング量が420mg/m2である上記試料E1〜試料E15冷間圧延潤滑油は、工業用純アルミニウムの高速圧延や高圧下圧延に用いることができる。
Claims (7)
- アルミニウムの冷間圧延に用いる潤滑油であって、
該潤滑油は、油性剤と、アミン誘導体と、基油とからなり、
上記油性剤は、ラウリルアルコール及び/又はオレイルアルコールからなる高級アルコール0.1〜15重量部、炭素数12〜18の高級脂肪酸0.01〜3重量部、及び炭素数13〜22の高級脂肪酸エステル0.1〜15重量部から選ばれる1種以上からなり、その合計量は0.01〜33重量部であり、
上記アミン誘導体は、炭素数4〜20であり、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上からなり、その合計量は0.01〜5重量部であり、
上記基油は、ポリイソブチレン、炭素数12〜18のα−オレフィン、及び鉱油から選ばれる1種以上からなり、その合計量は99.98〜62重量部であることを特徴とする冷間圧延潤滑油。 - 請求項1において、上記高級アルコールは、ミリスチルアルコールをさらに含有することを特徴とする冷間圧延潤滑油。
- 請求項1又は2において、上記高級脂肪酸は、下記の一般式(2)で表される脂肪酸からなることを特徴とする冷間圧延潤滑油。
R2−COOH ・・・(2)
(R2は、炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基である。) - 請求項1〜3のいずれか一項において、上記高級脂肪酸エステルは、下記の一般式(3)で表される脂肪酸エステルからなることを特徴とする冷間圧延潤滑油。
R3−COO−R4 ・・・(3)
(R3は、炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基、R4は炭素数1〜4のアルキル基である。) - 請求項1〜4のいずれか一項において、上記基油としてのα−オレフィンは、1−ドデセン、1−テトラセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンから選ばれる1種以上からなることを特徴とする冷間圧延潤滑油。
- 請求項6において、上記式(4)で表される上記ポリイソブチレンは、水素添加されていることを特徴とする冷間圧延潤滑油。
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