JP4639464B2 - 加工性に優れる高張力熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形加工を施して用いられる熱延鋼板に関し、とくに自動車ボディーのメンバー、フレーム、サスペンションなど、自動車用の構造部材や足まわり部品などの使途に好適な高張力熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車車体の軽量化を図るためには、高張力鋼板の適用が最も有効な方法の一つである。なかでも、ボディーの強度部材あるいはサスペンションなど、さほど優れた表面品質が要求されない部位には、冷延鋼板よりも安価な熱延鋼板が用いられるようになってきた。このような状況から、熱延高張力鋼板の使途もますます拡大されつつある。
従来から、引張強さが 490〜 780 MPa程度の高張力熱延鋼板の材質強化方法としては、1)マルテンサイト相、パーライト相あるいはベイナイト相などによる変態組織強化法と、2)Ti、Nb、Vなどの炭窒化物による析出強化法が利用されてきており、これらの強化方法は、鋼板の成形性あるいは部品として要求される特性に応じて選択されてきた。
例えば、安価な汎用の高張力熱延鋼板では析出強化されたフェライト相と、パーライト相あるいはベイナイト相組織の鋼板(HSLA:High Strength Low Alloy)が、また延性が要求される場合には、フェライト相とマルテンサイ相のDual Phase(DP)鋼が、また伸びフランジ成形性が要求される場合には、析出強化されたDual Phase鋼が選択されるといったものである。また、DP鋼と同様な特性を有しているものとして、TRIP鋼(transformation induced plasticity steel)も挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の強化方法を適用した鋼板は、いずれも、延性または伸びフランジ成形性のいずれか一方の特性は良好であっても、他方の特性が劣っていた。しかも、従来良好であるとされてきた伸びフランジ成形性のレベルでは、今日の厳しい加工に十分に耐えられない場合がしばしば生じていた。
そこで、本発明の目的は、特に伸びフランジ成形性(穴拡がり性)が従来レベルよりはるかに優れ、しかも延性も良好な、成形加工性に優れる高張力熱延鋼板を提供することにある。なお、本発明鋼板が目標とする具体的材質特性は、引張強さ:540MPa以上、伸び:30%以上であって、穴拡がり率:140%以上である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、Si、Mnを含有する低炭素鋼を基本として、成分組成、熱間圧延方法を適正化することにより、固溶強化をはかりながらアシキュラーフェライト単相の金属組織とし、かつ鋼中の硫化物を調整すれば、高穴拡がり率を具えた高張力熱延鋼板が得られることを知見し、本発明を完成するにいたった。
【0005】
こうして完成した本発明は、質量%で、C:0.06〜0.15%(ただし、0.04%以上0.07%未満は除く)、Si:0.50〜1.50%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.002%未満を含み、かつTi、Nb、V、Zrから選ばれる1種または2種以上を合計で0.005〜0.020%を含有して、さらにB、Caから選ばれる1種または2種を合計で0.0010〜0.0060%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、アシキュラーフェライト単相の組織からなることを特徴とする加工性に優れる高張力熱延鋼板である。
また、上記高張力熱延鋼板は、質量%で、C:0.06〜0.15%(ただし、0.04%以上0.07%未満は除く)、Si:0.50〜1.50%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.002%未満を含み、かつTi、Nb、V、Zrから選ばれる1種または2種以上を合計で0.005〜0.020%を含有して、さらにB、Caから選ばれる1種または2種を合計で0.0010〜0.0060%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱後、仕上げ温度:Ar3変態点以上として熱間圧延し、400〜600℃の温度範囲でコイルに巻き取ることにより有利に製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、成分組成および製造条件の限定理由について説明する。なお、本発明に用いる%は、とくにことわらない限り、質量%を意味するものとする。
C:0.06〜0.15%
Cは、その含有量が0.06%未満では、アシキュラーフェライト組織が形成されなくなり、良好な伸びフランジ成形性が得られなくなる。また、C含有量が0.15%を超えると、溶接熱影響部の硬さ上昇のために疲労特性が劣化する。よって、C含有量は、0.06〜0.15%の範囲とする。
【0007】
Si:0.50〜1.50%
Siは、固溶強化による強度向上に有効な元素である。その含有量が0.50%未満ではその効果が十分にあらわれず、1.50%を超えると、溶接性の劣化、とくに溶接熱影響部の硬度上昇による疲労特性の低下を招くほか、鋼板表面にファイアライトを形成して脱スケール性を低下させて表面性状を悪化させる。このため、Si含有量は、0.50〜1.50%の範囲とする。
【0008】
Mn:1.0 〜2.0 %
Mnは、Siと同様に、固溶強化による強度向上に有効な元素である。その含有量が1.0 %未満ではその効果が十分にあらわれず、一方2.0 %を超えると、溶接性の劣化、とくに溶接熱影響部の硬度上昇による疲労特性の低下を招くので、1.0〜2.0 %の含有範囲とする。
【0009】
S:0.002 %未満
Sは、延伸性の硫化物を生成するために、伸びフランジ成形性に有害な元素である。S量が0.002 %以上になると、本発明で目標とする穴広がり率が達成できなくなる。このため、S量は0.002 %未満に制限する。
【0010】
Ti、Nb、V、Zr:合計で0.005 〜0.020 %
Ti、Nb、V、Zrは、いずれも炭窒化物を形成して、スラブ加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、微細なアシキュラーフェライトを形成するのに有用な元素である。これら元素の合計量が0.005 %に満たないと前記の効果が十分には現れず、一方0.020 %を超えて含有すると、炭窒化物の析出量が過多となり、かえって伸びフランジ成形性が低下する。このため、Ti、Nb、V、Zrの含有量は、合計で0.005 〜0.020 %の範囲とする。
【0011】
B、Ca:合計で0.0010〜0.0060%
B、Caは、硫化物を難延伸性のものに変化させ、伸びフランジ成形性を向上させる元素である。伸びフランジ成形性を大幅に向上させるためには、S量の制限とともに、これらの元素を所定の範囲で含有させることが必要である。B、Caの含有量が合計で0.0010%に満たないと前記効果に乏しく、一方0.0060%を超えて含有すると熱延鋼板の耐食性が低下する。よって、B、Caの含有量は合計で0.0010〜0.0060%の範囲とする。
【0012】
金属組織
本発明の目指す特性を達成するには、硫化物の調整とともに、熱間圧延後の金属組織をアシキュラーフェライト単相の組織とすることが必要である。とくに、軟質なフェライトと硬質な第2相からなる、硬度差の大きい組織では、伸びフランジ成形性の低下が避けられなくなる。そこで、本発明においては、熱延鋼板の金属組織をアシキュラーフェライト単相にすることによって、極めて良好な伸びフランジ成形性が得られるようにする。
【0013】
製造方法
上述した熱延鋼板の製造方法について説明する。鋼素材の加熱はとくに定めないが、1100〜1280℃の温度範囲で行うのが好適である。余りに高温で加熱することは、炭窒化物の溶解、オーステナイト粒の粗大化を招くので好ましくはない。加熱後の熱間圧延においては、アシキュラーフェライト単相の金属組織を形成して、目標とする強度、伸び、穴広がり率(伸びフランジ成形性)を達成するために、仕上げ温度をAr3変態点以上とし、400 〜600 ℃の温度範囲でコイルに巻き取る。Ar3変態点以上で圧延を終了するのは、フェライトの生成を防止するためである。なお、熱間圧延終了から巻き取るまでの冷却はとくに条件を定めないが、Ar3変態点の上から、30〜80℃/sの範囲で行うのが好ましい。
図1は、本発明範囲にある成分組成の鋼スラブを熱間圧延したときの巻取温度(CT)が、引張強さ(TS)、伸び(El)、穴広がり率(λ)に及ぼす影響を示したものである。図1から、400 〜600 ℃の温度範囲で巻き取ることにより、これら全ての特性が目標値を満足することがわかる。
【0014】
【実施例】
表1に示す種々の化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造スラブとした。このスラブを表2に示す各製造条件で、加熱、熱間圧延し、冷却した後、コイルに巻取り、板厚2.9mmの熱延鋼板を製造した。
得られた、熱延鋼板のコイルの1/4W (幅方向エッジとセンターの中間) 位置で、金属組織観察、引張試験、伸びフランジ試験を行った。ここに、引張試験には、JIS5号試験片を用いた。また、伸びフランジ試験は、一辺100 mmの正方形試験片の中央に10mm(d0)の穴をあけ、先端角度60°の円錐ポンチでこの穴を拡げ、穴の縁にクラックが発生する限界の穴径(d)から次式:
λ=(d−d0)×100 /d0
により、穴広がり率λを求めて評価した。
その結果を表2に併せて示す。これらの結果から、発明例は、良好な伸びフランジ成形性と伸び−強度特性を具えており、加工性に優れていることがわかる。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、鋼板の化学組成、熱間圧延および巻き取りの条件を適正化することによって、格段に優れた伸びフランジ成形性を具えた、高張力熱延鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】巻取温度(CT)と引張強さ、伸びおよび穴広がり性との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.06〜0.15%(ただし、0.04%以上0.07%未満は除く)、Si:0.50〜1.50%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.002%未満を含み、かつTi、Nb、V、Zrから選ばれる1種または2種以上を合計で0.005〜0.020%を含有して、さらにB、Caから選ばれる1種または2種を合計で0.0010〜0.0060%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、アシキュラーフェライト単相の組織からなることを特徴とする加工性に優れる高張力熱延鋼板。
- 質量%で、C:0.06〜0.15%(ただし、0.04%以上0.07%未満は除く)、Si:0.50〜1.50%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.002%未満を含み、かつTi、Nb、V、Zrから選ばれる1種または2種以上を合計で0.005〜0.020%を含有して、さらにB、Caから選ばれる1種または2種を合計で0.0010〜0.0060%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱後、仕上げ温度:Ar3変態点以上として熱間圧延し、400〜600℃の温度範囲でコイルに巻き取ることを特徴とする加工性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
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