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JP4631348B2 - Ni−Zn−Cu系フェライト材料及びインダクタ素子 - Google Patents

Ni−Zn−Cu系フェライト材料及びインダクタ素子 Download PDF

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JP4631348B2 JP2004233668A JP2004233668A JP4631348B2 JP 4631348 B2 JP4631348 B2 JP 4631348B2 JP 2004233668 A JP2004233668 A JP 2004233668A JP 2004233668 A JP2004233668 A JP 2004233668A JP 4631348 B2 JP4631348 B2 JP 4631348B2
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Description

本発明は、Ni−Zn−Cu系フェライト材料及びインダクタ素子に関し、更に詳しくは、焼成温度による特性バラツキの少ない安定したNi−Zn−Cu系フェライト材料及びインダクタ素子に関するものである。
従来、Ni−Zn−Cu系のフェライト材料は、その磁気特性から磁芯の材料として、あるいは積層型チップコイル部品等のインダクタ素子の材料として用いられている。これらの磁芯やインダクタ素子は、種々の環境下で使用されるため、温度変化に対する初透磁率μの変化が少ない材料、即ち温度特性に優れた材料によって形成されていることが望ましい。
例えば特許文献1には飽和磁束密度が高く、初透磁率の温度係数の小さなフェライト焼結体及びその製造方法が提案されている。
特許文献1に記載のフェライト焼結体は、Fe、NiO、ZnO、CuOを主成分とし、この主成分100モル%に対し、PbO、HBOの少なくとも1種類を0.00211〜0.00528モル%、あるいはBiを0.00101〜0.00253モル%、およびSiO、Cr、Al、SnO、WOのうち少なくとも1種類を0.00392〜0.00982モル%添加するものである。
上記発明によれば、主成分に添加する副成分の種類及び添加量を特定することで、飽和磁束密度が高く、初透磁率の温度係数の小さなフェライト焼結体を製造することができる。
特開平9−306716
しかしながら、特許文献1に記載のNi-Zn−Cuフェライト焼結体は、飽和磁束密度が高く、初透磁率の温度係数が小さいが、その初透磁率は最大でも300程度と低く、実用上問題となる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、実用上問題とならない初透磁率(例えば、400以上)を得ることができると共に、初透磁率の焼成温度依存性を低減することができ、焼成温度が変化しても安定したフェライト特性を得ることができるNi−Zn−Cu系フェライト材料及びインダクタ素子を提供することを目的としている。
本発明の請求項1に記載のNi−Zn−Cu系フェライト材料は、Ni−Zn−Cuフェライト材料100重量部に対して、Biを0.05〜0.85重量部、及びB(ホウ素)化合物をB換算で0.003〜0.05重量部含有させてなることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項2に記載のインダクタ素子は、請求項1に記載のNi−Zn−Cu系フェライト材料からなる磁性体を備えることを特徴とするものである。
而して、本発明のNi−Zn−Cu系フェライト材料は、Fe、NiO、ZnO及びCuOからなるNi−Zn−Cuフェライト材料を主成分としている。Ni−Zn−Cuフェライト材料を構成する各金属酸化物の含有率は、フェライト材料として焼結できる範囲内であれば特に制限されるものではない。
また、本発明のNi−Zn−Cu系フェライト材料は、副成分としてBi及びB化合物の双方を上記範囲で含有している。B化合物としては、例えばBC、B、HBO、BNを挙げることができる。
副成分であるBi及びB化合物の含有量が本発明の範囲内(Biの含有量が0.05〜0.85重量部で、B化合物の含有量がB換算で0.003〜0.05重量部)であると、初透磁率μiが400以上を示し、その変化率も10%以下で、良好な焼結特性を示す。従って、焼成温度による特性のバラツキが少なく安定したNi−Zn−Cu系フェライト材料が得られ、延いては、歩留まりが向上し、チップコイル等のインダクタ素子を精度良く効率的に製造することができることができる。
Biは、低温焼成化を促進し、焼成時におけるフェライト結晶粒子の成長に関与する成分である。Ni−Zn−Cuフェライト材料100重量部に対するBiの含有量が0.05重量部未満であっても0.85重量部を超えても、焼成温度に対するフェライト結晶粒子の成長を適度に制御することができず、焼成温度に対する初透磁率μiの変化率が大きくなってフェライト特性にバラツキが生じやすい。特に、Biの含有量が0.85重量部を超えると、フェライト結晶粒子が異常粒成長し、Q値の劣化や信頼性の低下を招く虞がある。
B化合物は、Biと同様に焼成時におけるフェライト結晶粒子の成長に関与し、Biと協働して初透磁率μi及びその変化率に関与する成分である。Ni−Zn−Cuフェライト材料100重量部に対するB化合物の含有量が0.003重量部未満であっても0.05重量部を超えても、焼成温度に対する初透磁率μiの変化率が大きくなってフェライト特性にバラツキが生じ、実用上問題となる虞がある。尚、初透磁率μiの変化率は、実用上10%以下であることが好ましい。
また、Bi及びB化合物を含有しない場合には、Ni−Zn−Cuフェライト材料の焼成温度を高くしていくと初透磁率μiが上昇していき、初透磁率μiの変化率が大きく、焼成条件によるフェライト特性のバラツキが大きくなり、実用上問題となる。しかも、初透磁率μiが400以下と小さくなって、コイルのインダクタンスまたはインピーダンスを取得するためにはコイルの巻き数を増加させる必要を生じ、積層型チップコイル部品等の内部導体に高価なAgを用いてコイルを形成する場合には、大幅なコストアップになる虞がある。
本発明の請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、実用上問題とならない初透磁率(例えば、400以上)を得ることができると共に、初透磁率の焼成温度依存性を低減することができ、焼成温度が変化しても安定したフェライト特性を得ることができるNi−Zn−Cu系フェライト材料及びインダクタ素子を提供することができる。
以下、図1を参照しながら本発明のインダクタ素子の一実施形態について説明する。本実施形態ではインダクタ素子として積層型チップコイル部品を作製した。
本実施形態の積層型チップコイル部品10は、例えば図1に示すように、本発明のNi−Zn−Cu系フェライト材料からなる磁性体11と、この磁性体11内に形成されたコイル12と、このコイル12の上下の電極部12A、12Bに接続され且つ焼結体11の両端面を被覆する左右一対の外部電極13A、13Bとを備え、温度特性に優れたインダクタ素子である。コイル12は、水平方向に上下複数段に渡って形成されたコイル導体121と、上下のコイル導体121を電気的に接続するビアホール導体122とからなり、上下方向に延びる矩形の螺旋状として形成されている。
本実施形態の積層型チップコイル部品を作製する場合には、例えば以下に示すような製造方法を用いている。まず、本発明のフェライト原料を含むスラリーをドクターブレード法によってシート成形し、複数のセラミックグリーンシートを作製する。次いで、適宜のセラミックグリーンシートの所定位置に、ビアホールを形成した後、セラミックグリーンシートの上面に、Ag等の導電性金属粉を含む導電性ペーストを、スクリーン印刷法等を用いて印刷し、所定のコイルパターンを形成する。
所定のコイルパターンが形成されたセラミックグリーンシートを、必要枚数積層すると共に、その上下の両面にコイルパターンが形成されていないセラミックグリーンシートを積層した後、これを例えば98MPaの圧力で圧着して圧着ブロックを形成した。これにより、各層のコイルパターンがビアホールによって接続されて積層型のコイルを形成する。
そして、この圧着ブロックを所定サイズにカットして積層体を得た。次いで、この積層体を脱脂処理した後、脱脂後の積層体を900℃で焼成してフェライト焼結体(磁性体)を得る。そして、この磁性体の端面処理を行った後、その両端面に導電ペーストを塗布し、700℃で焼き付けて、外部電極をそれぞれ形成した。これにより、磁性体内にコイルを内蔵する積層型チップコイル部品を得る。
本実施形態の積層型チップコイル部品10において、磁性体11を形成するためのフェライト材料として、本発明のNi−Zn−Cu系フェライト材料が用いられる。
本実施形態では、積層型チップコイル部品10の磁性体として本発明のNi−Zn−Cu系フェライトを用いているため、高精度のチップコイル部品を歩留まり良く製造することができる。
次に、本発明のNi−Zn−Cu系フェライト材料及びその特性について本実施例に基づいて説明する。本実施例では、Ni−Zn−Cu系フェライト材料を用いてトロイダルリングを作製し、その初透磁率μiを測定すると共にその変化率を求めてフェライト材料を評価した。
実施例1
(1)フェライト材料の調製
まず、主成分の出発原料として、Fe、ZnO、NiO、CuOを用意し、Feが48モル%、ZnOが30モル%、NiOが14モル%、及びCuOが8モル%となるように、各原料を秤量した。更に、主成分として秤量したNi-Zn−Cuフェライト材料100重量部に対して、副成分であるBi及びBC(B化合物)が表1に示す含有量になるように秤量、配合し、調合物を得た。尚、BCはB換算で示してある。
(2)フェライト焼結体の調製
次いで、上記各調合物をそれぞれ直径0.05mmの部分安定化ジルコニア(PSZ)媒体を使用した媒体攪拌型ミルによって湿式混合した後、その混合物を乾燥して、混合乾燥物を得た。引き続き、各混合乾燥物を、焼成温度700℃でそれぞれ仮焼して仮焼物を得た。更に、これらの仮焼物を媒体攪拌型ミルによって湿式粉砕し、バインダーを加えてスラリーを形成、ドクターブレード法によりグリーンシートを所定枚数作製した。これらのグリーンシートを積層、圧着した後、外径20mm、内径10mm、厚み2mmのトロイダルリング状にカットした。その後、得られたトロイダルリング状の生積層体を、焼成温度870〜900℃の条件で2時間焼成し、表1に示す試料No.1〜12のトロイダルリング状のフェライト焼結体を得た。
(3)フェライト焼結体の評価
上記各トロイダルリング状のフェライト焼結体に軟銅線を、それぞれ40ターン巻き、LCRメーター(HP社製4263B)を用いて、周波数10kHzの条件でそれぞれのインダクタンスを測定し、その測定値に基づいて初透磁率μiを算出した。
次いで、各フェライト焼結体に関し、それぞれの焼成温度を870℃、880℃、890℃及び900℃とした時の初透磁率μiと、870℃焼成時の初透磁率μiと900℃焼成時の初透磁率μiとの間の変化率を下記計算式で算出し、その結果を表1に示した。
初透磁率の変化率(%)=100×(μi900−μi870)/μi870
μi900:焼成温度900℃で焼成した試料の初透磁率
μi870:焼成温度870℃で焼成した試料の初透磁率
Figure 0004631348
表1に示す結果によれば、副成分であるBi及びB化合物(B4C)の含有量が本発明の範囲内の試料No.3、4、No.7〜No.9のフェライト焼結体の場合には、いずれも、初透磁率μiが400以上であり、その変化率も10%以下で、良好な焼結特性を示すことが判った。この結果から、焼成温度による特性のバラツキが少なく安定したフェライト焼結体(材料)が得られることが判った。また、焼成温度による特性のバラツキが少なく安定したフェライト焼結体が得られることから、歩留まりが向上し、チップコイル等のインダクタ素子を精度良く効率的に製造することができることが判った。
これに対して、副成分であるBi及びB化合物のいずれも含有しない試料No.1のフェライト焼結体の場合には、焼成温度を高くしていくと初透磁率μiが上昇していき、初透磁率μiの変化率が46.5%と非常に大きく、焼成条件による特性バラツキが大きくなり、実用的でないことが判った。更に、このフェライト焼結体は、870℃で焼成する場合には初透磁率μiが400以下と小さくなって好ましくないことが判った。即ち、初透磁率μiが400以下と小さくなると、コイルのインダクタンスまたはインピーダンスを取得するためにはコイルの巻き数を増加させなくてはならない。特に、積層型チップコイル部品等の内部導体に高価な銀を用いてコイルを形成する場合には、大幅なコストアップになる虞がある。
副成分であるB化合物を含まず、Biのみを0.25重量部含有する試料No.2のフェライト焼結体の場合には、初透磁率μiの変化率が8.1%と良好であったが、全ての焼成温度(870〜900℃)において400以下の初透磁率μiしか得られないことが判った。
一方、副成分であるBiを含まず、B化合物のみを0.01重量部含有する試料No.6のフェライト焼結体の場合には、初透磁率μiの変化率が40.7%であり、20%を大きく超えることが判った。
また、副成分であるBi及びB化合物の双方を含有するが、B化合物の含有量がB換算で本発明の範囲外の0.1重量部である試料No.10、11のフェライト焼結体の場合には、Biの含有量に依らず初透磁率μiの変化率が20%を超えることが判った。
更に、副成分であるBi及びB化合物の双方を含有するが、Biの含有量が本発明の範囲外の1重量部である試料No.5、12のフェライト焼結体の場合には、890℃の焼成温度において初透磁率μiが急激に上昇し、初透磁率μiの変化率が54.3%、66.3%と大きいことが判った。このように初透磁率μiが急激に上昇する理由としては、前述したようにフェライト結晶粒子が異常粒成長を起こすためと推定される。
実施例2
本実施例では複数種のB化合物を用いて、B化合物の種類の違いによる影響を観た。
まず、実施例1と同様に、主成分の出発原料として、Fe、ZnO、NiO、CuOを用意し、Feを48モル%、ZnOを30モル%、NiOを14モル%、及びCuOを8モル%となるように、各原料を秤量した。更に、上記主成分のNi-Zn−Cuフェライト材料100重量部に対し、副成分としてBiを0.25重量部、及びB化合物をB換算で0.01重量部含有されるように秤量、配合し、調合物を得た。ここで、B化合物としてはB4C、B、HBO、BNを用いた。
上記各調合物を実施例1と同様の処理を行い、試料No.13〜15のフェライト焼結体を得た。
これらのフェライト焼結体について、実施例1と同様の方法で初透磁率μiを測定し、μiの変化率を実施例1と同様に求めて各フェライト焼結体を評価した。尚、副成分B4Cを含むフェライト焼結体は実施例1の試料No.7と同一であるため、表2には試料No.7として示した。
Figure 0004631348
表2に示す結果によれば、試料No.7、13、14、15いずれのフェライト焼結体も、初透磁率μiが400以上と大きく、初透磁率μiの変化率も10%以下と小さく、実施例1と同様に良好な焼結特性を示していることが判った。従って、B化合物の化合物種に関係なく、焼成温度による特性のバラツキが少なく安定したフェライト焼結体が得られ、歩留まりが向上し、チップコイル等の電子部品を精度良く効率的に製造することができることが判った。
尚、本発明は上記実施例に何等制限されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限り、本発明に包含される。例えば、特性変更に使用されるB化合物の形態は必要に応じて適宜変更することが可能である。
本発明は、例えば携帯電話等の電子機器に使用される積層型チップコイル部品等のインダクタ素子に好適に用いることができる。
本発明のインダクタ素子の一実施形態を示す透視斜視図である。
符号の説明
10 積層型チップコイル部品(インダクタ素子)
11 磁性体

Claims (2)

  1. Ni−Zn−Cuフェライト材料100重量部に対して、Biを0.05〜0.85重量部、及びB化合物をB換算で0.003〜0.05重量部含有させてなることを特徴とするNi−Zn−Cu系フェライト材料。
  2. 請求項1に記載のNi−Zn−Cu系フェライト材料からなる磁性体を備えたことを特徴とするインダクタ素子。
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