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JP4628007B2 - 炭素材料の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

炭素材料の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の負極に適した炭素材料、リチウムイオン二次電池用負極、および該負極を用いた放電容量、不可逆容量に優れたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は作動電圧が高いこと、電池容量が大きいことおよびサイクル寿命が長いなどの優れた特徴を有し、かつ環境汚染が少ないことから、従来主流であったニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池に代わって広範囲で用いられている。リチウムイオン二次電池が実用可能となったのは、負極材料として安全性に問題があったリチウム金属に代わり、リチウムイオンを層間挿入した炭素材料が安定した活物質となり得ることが発見され、リチウムイオン二次電池の実用化と性能向上に果たす炭素材料の役割が認識されたことに起因する。
近年の携帯電話やノートパソコンなどの携帯電子機器の高性能・高機能化に伴い消費電力が増加し、リチウムイオン二次電池のさらなる高容量化が求められている。リチウムイオン二次電池の容量は、特に負極用炭素材料の質量当りの放電容量が大きな支配要因であるが、質量当りの放電容量は炭素負極材料の中では高純度の天然黒鉛の理論容量372mAh/gが限界である。そのため、負極用炭素材料の放電容量をできるだけ天然黒鉛の理論容量に近づけることが試みられている。一方、リチウムイオン二次電池一本当りの放電容量を向上させるためには、体積当りの放電容量を向上させることも重要である。すなわち、負極板の電極密度を向上させ負極活物質をできるだけ多量に充填させることが重要である。しかし、質量当たりの放電容量が最も高いとされる天然黒鉛は、その鱗片状組織に由来し、電極密度を向上させようとすると、集電体に対して平行に配向するのでリチウムイオンの活物質内部への挿入が困難になる傾向があった。
それを解決すべく、繊維状炭化物または塊状炭化物などを高結晶化する試みが行われてきた。例えば、硼素を触媒として黒鉛化し結晶構造の歪を矯正し高結晶化する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、従来の硼素などの触媒を添加する方法は、触媒を炭化物あるいは炭化物前駆体に均一に混合するための制御が困難であることに加えて、触媒が高温熱処理時に酸化や窒化され、失活することを抑制する必要があった。それを回避するため、従来法では、過剰量の触媒を混合し、高温熱処理していた。しかし、高温熱処理後に、触媒が多量に残存し、得られた炭素材料を用いてなる負極では、リチウムイオン二次電池の電池特性に好ましくない影響を及ぼすという問題があった。
特開2003−77471公報
本発明は、微量の炭素を触媒として効果的に炭化物または炭化物前駆体に分散させることにより、高結晶性の炭素材料を製造し、得られた炭素材料を含有する負極を用いて、放電容量、不可逆容量などの充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることが目的である。
本発明は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、白金、硼素および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレンまたは人造黒鉛である微小炭素、ならびにメソカーボン小球体の炭化物を含み、該微小炭素が該メソカーボン小球体の炭化物より小さく、該元素の微小炭素に対する割合が0.1〜10質量%であり、微小炭素の該メソカーボン小球体の炭化物に対する割合が0.01〜30質量%である組成物を、2000℃以上で高温熱処理することを特徴とする炭素材料の製造方法である。
本発明の炭素材料の製造方法において、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、白金、硼素および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレンおよび人造黒鉛から選ばれる少なくとも一種の微小炭素に含まれて使用されるのが好ましい。
本発明の炭素材料の製造方法において、微小炭素が、メソカーボン小球体の炭化物の表面に分散していることが好ましい。
本発明の炭素材料の製造方法において、炭素材料が、リチウムイオン二次電池負極用炭素材料であることが好ましい。
また、本発明は、前記いずれかの炭素材料の製造方法により製造された炭素材料を含有するリチウムイオン二次電池用負極である。
また、本発明は、前記リチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池である。
本発明によれば、微量の金属元素、硼素および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を効果的に炭化物または炭化物前駆体に分散させることができるので、それら微量成分の黒鉛化物の高結晶化触媒としての作用を十分に発揮でき、高結晶性の炭素材料を得ることができる。該炭素材料を含む負極を用いると、放電容量、不可逆容量などの充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
(繊維状、球状または塊状の炭素)
本発明の炭素材料は、金属元素、硼素および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素である微量成分、繊維状、球状または塊状の炭素と、メソカーボン小球体などの炭化物またはその前駆体とを高温熱処理した組成物である。
繊維状、球状または塊状の炭素は、カーボンナノチューブなどの繊維状黒鉛化物、カーボンブラック、フラーレンなどの球状黒鉛化物、または人造黒鉛などの塊状黒鉛化物である。該黒鉛化物は、炭化物または炭化物前駆体に対する割合が小さくても最大限の効果を発揮できるように、微小であることが好ましく(以後、微小炭素とも称す)、後述する炭化物または炭化物前駆体の大きさより小さいことが好ましい。該炭素の最大長は、好ましくは20μm以下、より好ましくは50nm〜20μm、さらに好ましくは100nm〜20μmである。微小炭素の大きさが20μmを超えると、炭化物または炭化物前駆体の黒鉛化物の表面に十分に融合しない場合がある。その形状は、繊維状、球状、塊状でなければならない。それ以外の形状の場合には、炭化物または炭化物前駆体に対する分散が十分でなく、期待する触媒作用が十分に発揮されない。
前記炭素の炭化物および/またはその前駆体の合計に対する配合割合は0.01〜30質量%、好ましくは0.01〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜7質量%である。0.01〜30質量%にすることにより、後述する金属元素、硼素または珪素を含有する微小炭素が、炭化物および/またはその前駆体の表面に適度に分散し、高温熱処理の際に、炭化物の高結晶化が促進され、これを用いたリチウムイオン二次電池用負極を高容量化できる。
カーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維などの微小炭素は、その生成過程で使用され、残存する金属元素や硼素、珪素などを微量含有しているので、本発明の原料として好都合である。特に好ましいのは、金属元素などを確実に微量含有する、精製前のカーボンブラックやカーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維である。
(金属元素、硼素、珪素)
金属元素や硼素、珪素などの微量成分は、炭化物または炭化物前駆体を高温熱処理して黒鉛化する際に、炭化物または黒鉛化物の高結晶化に触媒的に作用し、高温熱処理後は、揮発するので、該微量成分を含有する炭素材料から作製したリチウムイオン二次電池用負極であっても、Li合金化、すなわち、リチウムイオンの吸蔵・脱離に影響することはない。そして、黒鉛化物が高結晶性であると、黒鉛化物の結晶構造に歪がなく、リチウムイオンが黒鉛構造に入り込むことができるので、放電容量の増大に貢献する。金属元素などの微量成分は、微小炭素と併用することにより、該微量成分が、炭化物またはその前駆体に良好に分散する。
金属元素としては鉄、コバルト、ニッケル、マンガンなどの遷移金属や白金が好ましく、特に鉄とコバルトが好ましい。金属元素は2種以上を併用することもできる。金属元素と硼素および/または珪素を併用することもできる。その組成割合は問わない。
金属元素などの微量成分の微小炭素に対する割合は0.1〜10質量%、好ましくは1〜10質量%である。
金属元素や硼素、珪素などの微量成分は、前述した該微量成分を含有する微小炭素を、炭化物および/または炭化物前駆体に混合する方法、または該微量成分を微小炭素、炭化物および/または炭化物前駆体に混合する方法によって、本発明の組成物を調製する。これらの微量成分の配合効果を最大限に活かすためには、該微量成分を含む微小炭素を用いることが好ましい。
(炭化物および/またはその前駆体)
本発明の炭素材料の主原料となる炭化物および/または炭化物前駆体としては、塊状、繊維状の炭化物および/またはその前駆体が好ましく用いられる。鱗片状の物質や、光学顕微鏡で観察される流れ組織を有しない物質は好ましくない。炭化物および/または炭化物前駆体としては、炭素繊維、ピッチコークス、メソカーボン小球体炭化物などの炭化物、メソカーボン小球体などの炭化物前駆体が例示されるが、好適例は炭素繊維、メソカーボン小球体などの炭化物である。炭化物またはその前駆体の大きさ(長さ)は、前記の微小炭素より大きいことが好ましく、10〜100μmが好ましく、15〜70μmがより好ましく、20〜70μmであることがさらに好ましい。
(炭素材料)
本発明の炭素材料は、金属元素、硼素および珪素からなる群から選ばれる微量成分、微小炭素と、炭化物またはその前駆体を混合し、ろ過分離し、高温熱処理して製造される。本発明の炭素材料は、炭化物またはその前駆体に基づく黒鉛化物の粒子の周辺に、微小炭素に基づく黒鉛化物が融合しており、従来の微小炭素を含む炭化物からの炭素材料とは構造的に相違する。金属元素、硼素または珪素は揮発して、炭素材料には事実上残存しない。
該混合時、微小炭素および微量成分は、炭化物および/または炭化物前駆体に均一に分散していることが好ましい。そのため、通常、アセトン、トルエン、タール中油などの有機溶媒中で、微小炭素、微量成分、ならびに炭化物および/または炭化物前駆体を攪拌混合し、均一分散させた後、有機溶媒から固体をろ過分離することにより炭素材料を製造する方法が有効である。攪拌混合時に、100〜300℃に加熱して、ろ過後、炭化物および/またはその前駆体を焼成してもよい。焼成により有機溶媒などからなる揮発分の含有量を適度に調整することができる。
微小炭素、微量成分、ならびに炭化物および/または炭化物前駆体の混合比率は、前述した通り微小炭素の炭化物および/または炭化物前駆体との合計に対する割合を0.01〜30質量%、金属元素などの微量成分の微小炭素に対する割合を0.1〜10質量%とすることが好ましい。
均一分散液からろ過により、固体である炭素材料を分離する。得られた炭素材料を金属元素、硼素または珪素が酸化しない程度の温度、例えば50〜120℃で真空乾燥または窒素雰囲気で熱風乾燥すれば、次の高温熱処理に供することができる。
前記乾燥後の炭素材料の高温熱処理は、真空、窒素雰囲気またはアルゴン雰囲気などの非酸化性雰囲気中で実施することが好ましい。例えば、タンマン炉またはアチソン炉により2000℃以上の高温で加熱することが好ましく、より好ましくは2800℃以上、最も好ましくは3000℃近辺で加熱する。高温熱処理により、炭化物および/またはその前駆体から高結晶性の黒鉛化物が得られる。その際、金属元素などの微量成分が触媒として作用する。微小炭素は高温熱処理により結晶性の高い黒鉛化物になる。
高温熱処理により得られた炭素材料は、下記する方法により、負極合剤ペーストに調製され、さらに、負極、リチウムオン二次電池が作製される。
リチウムイオン二次電池は、本質的に、充放電時にはリチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極から脱離する電池機構である。リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極および非水電解質を主たる電池構成要素とし、正・負極はそれぞれリチウムイオンの担持体からなり、充放電過程における非水溶媒の出入りは層間で行われる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極材料として前記高結晶性炭素材料を用いること以外は特に限定されず、他の電池構成要素については一般的なリチウムイオン二次電池の要素に準ずる。リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極および非水電解質を主たる電池構成要素とする。
前記炭素材料からの負極の作製は、通常の作製方法に準じて行うことができるが、炭素材料の性能を十分に引出し、かつ粉末に対する成形性が高く、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる方法であれば何ら制限されない。
負極作製時には、炭素材料に結合剤を加えた負極合剤を用いることができる。結合剤としては、電解質に対して化学的安定性、電気化学的安定性を有するものを用いることが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバーなどが用いられる。これらを併用することもできる。
なお本発明では、負極材料に前記炭素材料を用いることにより、有機溶媒に溶解または分散する有機溶媒系結合剤はもちろんのこと、水溶性および/または水分散性の水系結合剤を用いても優れた充放電特性を発現する負極を得ることができる。
中でも、本発明の目的を達成し、効果を最大限に活かす上で、ポリフッ化ビニリデンなどの有機溶媒系結合剤を用いることが好ましい。
結合剤は、通常、負極合剤全量中0.5〜20質量%程度の量で用いることが好ましい。具体的には、例えば、炭素材料を分級等によって適当な粒径に調整し、結合剤と混合することによって負極合剤を調整し、この負極合剤を、通常、集電体の片面あるいは両面に塗布することで負極合剤層を形成することができる。
この際、通常の溶媒を用いることができ、負極合剤を溶媒中に分散させ、ペースト状とした後、集電体に塗布、乾燥すれば、負極合剤層が均一かつ強固に集電体に接着される。より具体的には、例えば、炭素材料と、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂粉末とを、イソプロピルアルコールなどの溶媒中で混合・混練した後、塗布すればよい。また炭素材料と、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、またはカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバーなどを、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、水、アルコール等の溶媒と混合してスラリーとした後、塗布することができる。
ペーストは、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌することにより調製することができる。
炭素材料と結合剤の混合物を集電体に塗布する際の塗布厚は10〜200μmとするのが適当である。負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行うと、負極合剤層と集電体との接着強度をさらに高めることができる。
また、本発明の炭素材料と、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末とを乾式混合し、金型内でホットプレス成形して、負極を作製することもできる。
負極に用いる集電体の形状としては、特に限定されないが、箔状、あるいはメッシュ、エキスパンドメタルなどの網状のものなどが挙がられる。集電体としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケルなどを挙げることができる。集電体の厚みは、箔状の場合、5〜20μm程度が好適である。
正極の材料(正極活物質)としては、充分量のリチウムを吸蔵・脱離しうるものを選択することが好ましい。そのような正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物(V2O5、V6O13、V2O4、V3O8など)およびリチウム化合物などのリチウム含有化合物、一般式MXMo6S8-Y(式中Xは0≦X≦4、Yは0≦Y≦1の範囲の数値であり、Mは遷移金属などの金属を表す)で表されるシェブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維などを用いることができる。
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属との複合酸化物であり、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM(1)1-XM(2)XO2(式中Xは0≦X≦1の範囲の数値であり、M(1)、M(2)は少なくとも一種類の遷移金属を表す)またはLIM(1)2-YM(2)YO4(式中Yは0≦Y≦1の範囲の数値であり、M(1)、M(2)は少なくとも一種の遷移金属を表す)で示される。
前記のMで示される遷移金属元素としては、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどが挙げられ、好ましくはCo、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Alが挙げられる。
リチウム含有遷移金属酸化物としては、より具体的に、LiCoO2、LiXNiYM1-YO2(MはNiを除く遷移金属元素、好ましくはCo、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Alから選ばれる少なくとも一種、0.05≦X≦1.10、0.5≦Y≦1.0である)で示されるリチウム複合酸化物、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4などが挙げられる。
前記のようなリチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、Li、遷移金属の酸化物または塩類を出発原料とし、これら出発原料を組成に応じて混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度範囲で焼成することにより得ることができる。なお、出発原料は酸化物または塩類に限定されず、水酸化物などからも合成可能である。
本発明では、正極活物質は、前記化合物を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。例えば、正極中には、炭酸リチウムなどの炭素塩を添加することもできる。
このような正極材料によって正極を形成するには、例えば、正極材料と結合剤および電極に導電性を付与するための導電剤よりなる正極合剤を集電体の両面に塗布することで正極合剤層を形成する。結合剤としては、負極で例示したものがいずれも使用可能である。導電剤としては、例えば、黒鉛質粒子が用いられる。
集電体の形状は特に限定されず、箔状またはメッシュ、エキスパンドメタルなどの網状などのものが用いられる。例えば、集電体としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケルなどを挙げることができる。その厚さとしては、10〜40μmのものが好適である。
また正極の場合も負極と同様に、正極合剤を溶剤中に分散させることでペースト状にし、このペースト状の正極合剤を集電体に塗布、乾燥することによって正極合剤層を形成してもよく、正極合剤を形成した後、さらにプレス加圧などの圧着を行ってもよい。これにより正極合剤層が均一かつ強固に集電体に接着される。
以上のような負極および正極を形成するに際しては、従来公知の導電剤や結着剤などの各種添加剤を適宜使用することができる。
本発明に用いられる電解質としては通常の非水電解液に使用されている電解質塩を用いることができ、例えばLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN[(CF3)2CHOSO22、LiB[C6H3(CF3)2]、LiAlCl4、LiSiF6などのリチウム塩を用いることができる。特に、LiPF6、LiBrF4が酸化安定性の点から好ましく用いられる。
電解液中の電解質濃度は、0.1〜5mol/Lが好ましく、0.5〜3.0mol/Lがより好ましい。
上記非水電解質は、液系の非水電解液としてもよいし、固体電解質またはゲル電解質などの高分子電解質としてもよい。前者の場合、非水系電解質電池は、いわゆるリチウムイオン電池として構成され、後者の場合、非水電解質電池は、高分子固体電解質電池、高分子ゲル電解質電池などの高分子電解質電池として構成される。
液系の非水電解液とする場合には、溶媒として、エチレカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,1-または1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルタトラヒドロフラン、γ-ブチルラクトン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3-メチル-2-オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイト等の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
非水電解質を高分子固体電解質、高分子電解質などの高分子電解質とする場合には、可塑剤(非水電解液)でゲル化されたマトリクス高分子化合物を含むが、このマトリクス高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレート系高分子化合物、ポリアクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物などを単独、もしくは混合して用いることができる。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物を用いることが好ましい。
これら高分子固体電解質、高分子ゲル電解質に含有される可塑剤を構成する電解質塩や非水系溶媒としては、前述のものがいずれも使用可能である。ゲル電解質の場合、可塑剤である非水電解液中の電解質塩濃度は、0.1〜5mol/Lが好ましく、0.5〜2.0mol/Lがより好ましい。
このような固体電解質の作製方法としては特に制限はないが、例えば、マトリックスを形成する高分子化合物、リチウム塩および溶媒を混合し、加熱して溶融する方法、適当な混合用の有機溶媒に高分子化合物、リチウム塩および溶媒を溶解させた後、混合用の有機溶剤を蒸発させる方法、ならびにモノマー、リチウム塩および溶媒を混合し、それに紫外線、電子線または分子線などを照射してポリマーを形成させる方法などを挙げることができる。
また、前記固体電解質中の溶媒の添加割合は、10〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは、30〜80質量%である。10〜90質量%であると、導電率が高く、かつ機械的強度が高く、フィルム化しやすい。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、セパレーターを使用することもできる。
セパレーターとしては、特に限定されるものではないが、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。特に合成樹脂製多孔膜が好適に用いられるが、その中でもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜などである。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、初期充放電効率が高いことから、ゲル電解質を用いることも可能である。
ゲル電解質二次電池は、炭素材料を含有する負極と、正極およびゲル電解質を、例えば、負極、ゲル電解質、正極の順で積層し、電池外装材内に収容することで構成される。なお、これに加えてさらに負極と正極の外側にゲル電解質を配するようにしてもよい。このような炭素材料を負極に用いるゲル電解質二次電池では、ゲル電解質にプロピレンカーボネートが含有され、また炭素材料粉末としてインピーダンスを十分に低くできる程度に小粒径のものを用いた場合でも、不可逆容量が小さく抑えられる。したがって、大きな放電容量が得られるとともに高い初期充放電効率が得られる。
さらに、本発明に係るリチウムイオン二次電池の構造は任意であり、その形状、形態について特に限定されるものではなく、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの中から任意に選択することができる。より安全性の高い密閉型非水電解液電池を得るためには、過充電などの異常時に電池内圧上昇を感知して電流を遮断させる手段を備えたものであることが好ましい。高分子固体電解質電池や高分子ゲル電解質電池の場合には、ラミネートフィルムに封入した構造とすることもできる。
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また以下の実施例および比較例では、炭素材料を図1に示すような構成の評価用ボタン型二次電池を作製して評価したが、実電池は、本発明の概念に基づき、公知の方法に準じて作製することができる。
(実施例1)
鉄を4.0質量%および珪素を0.3質量%含有する直径100〜300nmおよび長さが2〜20μmの炭素繊維を、平均粒径32μmのメソカーボン小球体の炭化物95.5質量部に対して4.5質量部混合した。なお、用いたメソカーボン小球体炭化物は高温熱処理したときに黒鉛化が促進される易黒鉛化性炭素材料であるコールタールピッチから製造されるものを300〜500℃で焼成したものである。この混合物100gに対しタール軽油を200mL滴下し、超音波洗浄器を用いて20分間分散させた。その後、メンブランフィルターを設置した吸引ろ過器を用いてタール中油と混合物とを分離した。得られた混合物を、真空乾燥機を用いて60℃で2時間乾燥した。原料の組成を表1に示した。
乾燥した混合物を黒鉛るつぼに充填し、タンマン炉を用いて2800℃で5時間高温処理して、炭素材料を得た。該炭素材料の結晶性を知るためにX線回折による格子面間隔d002を測定した。
なお、平均粒径はレーザー回折式粒度分布計により測定した粒度分布の累積度数が体積百分率で50%となる粒子径とした。
X線回折による格子面間隔d002は、X線としてCuKα線を用い、高純度シリコンを標準物質に使用して炭素材料の(002)回折ピークを測定し、そのピークの位置より算出する。算出方法は、学振法(日本学術振興会第17委員会が定めた測定法)に従うものであり、具体的には、「炭素繊維」(大谷杉郎、733−742頁(1986年)、近代編集社)などに記載された方法によって測定した値である。
真密度はJIS R7222−1997の6.真比重の測定方法により求めた。
上記のようにして作製した炭素材料90質量部と、結合剤としてのポリフッ化ビニリデン10質量部とを、N−メチルピロリドンを溶媒として混合し、ホモミキサーを用いて500rpmで5分間攪拌し、有機溶媒系負極合剤ペーストを調製した。
上記負極合剤ペーストを、銅箔(集電体7b)上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中において90℃で溶剤を揮発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をローラープレスによって加圧し、さらに直径15.5mmの円形状に打ち抜くことで、集電体に密着した負極合剤層からなる作用電極2を作製した。
対極4は、リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直系15.5mmの円形状に打ち抜いて、ニッケルネットからなる集電体(7a)と、当該集電体に密着したリチウム金属箔からなる対極4を作製した。
エチレンカーボネート33質量部、メチルエチルカーボネート67質量部の割合で混合してなる溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体に含浸させ、電解質液が含浸されたセパレーター5を作製した。
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。
評価電池は、外装カップ1と外装缶3とが、その周辺部において絶縁ガスケット6を介してかしめられた密閉構造を有し、その内部に、外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円盤状の作用電極2および銅箔からなる集電体7bが積層された電池系である。
評価電池とは、電解質溶液を含浸させたセパレーター5を、集電体7bに密着した作用電極2と、集電体7aに密着した対極4との間に挟んで積層した後、作用電極2を外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合わせ外装カップ1と外装缶3との周辺部を、絶縁ガスケット6を介してかしめ密閉して作製した。
この評価電池は、実電池において負極活物質として使用可能な黒鉛質粒子を含有する作用電極2と、リチウム金属箔からなる対極4とから構成される電池である。
上記のようにして作製された評価電池について、25℃の温度下で下記のような充放電試験を行った。
0.9mAの電流値で回路電圧が0mVに達するまで定電流充電を行い、回路電圧が0mVに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から充電容量を求めた。その後、120分間休止した。
次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流充電を行い、その間の通電量から放電容量を求めた。この第1サイクルにおける通電量から充電容量と放電容量を求め、次式から不可逆容量と初期充放電効率を計算した。
不可逆容量=充電容量−放電容量
初期充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100
なお、この試験では、リチウムイオンを炭素材料中に吸蔵する過程を充電、炭素材料から脱離する過程を放電とした。
上記炭素材料の真密度(g/cm3)および格子面間隔d002(nm)と、上記炭素材料1g当りの放電容量(mAh/g)、不可逆容量(mAh/g)および初期充放電効率(%)を表2に示した。
(実施例2)
実施例1において、メソカーボン小球体炭化物に添加する炭素繊維の代わりに、鉄を3.5質量%含有する直径100〜300nmの未精製カーボンブラックを用いる以外は、実施例1と同様な方法と条件で、分散液の調製、ろ過分離、焼成、高温処理、負極合剤ペースト、作用電極の作製を行った。原料の組成は表1に示した。引続き、実施例1と同様に、評価電池の作製、充放電特性の試験を行った。その評価結果を表2に示した。
(実施例3)
実施例1において、メソカーボン小球体の炭化物に添加する炭素繊維4.5質量部の代わりに、珪素を5.5質量%含有する直径2〜5μmの塊状人造黒鉛6.0質量部とメソカーボン小球体94.0質量部を用いる以外は、実施例1と同様な方法と条件で、分散液の調製、ろ過分離、焼成、高温処理、負極合剤ペースト、作用電極の作製を行った。原料の組成は表1に示した。引続き、実施例1と同様に、評価電池の作製、充放電特性の試験を行った。その評価結果を表2に示した。
(比較例1)
実施例1において、炭素繊維を用いることなく、実施例1と同様な方法と条件で、高温処理、負極合剤ペースト、作用電極の作製を行った。原料の組成は表1に示した。引続き、実施例1と同様に、評価電池の作製、充放電特性の試験を行った。その評価結果を表2に示した。
(比較例2)
実施例1において、メソカーボン小球体の炭化物に添加する炭素繊維の代わりに、鉄を3.8質量%含有する直径3〜6μmの鱗片状天然黒鉛4.5質量部を用いる以外は、実施例1と同様な方法と条件で、分散液の調製、ろ過分離、焼成、高温処理、負極合剤ペースト、作用電極の作製を行った。原料の組成は表1に示した。引続き、実施例1と同様に、評価電池の作製、充放電特性の試験を行った。その評価結果を表2に示した。
(比較例3) 実施例1において、メソカーボン小球体の炭化物に添加する炭素繊維4.5質量部の代わりに、炭素繊維40質量部を用いる以外は、実施例1と同様な方法と条件で、分散液の調製、ろ過分離、焼成、高温処理、負極合剤ペースト、作用電極の作製を行った。原料の組成は表1に示した。引続き、実施例1と同様に、評価電池の作製、充放電特性の試験を行った。その評価結果を表2に示した。
実施例1と比較例1とから、鉄および珪素を含む微小炭素繊維が、放電容量の向上に寄与したことが明確である。これは、鉄および珪素が、負極活物質の原料であるメソカーボン小球体の黒鉛化物との分散性が良好であることから、該黒鉛化物の結晶性向上作用した結果と推定される。また、実施例2および実施例3と比較例1とから、同様に、鉄または珪素を含む微小炭素の添加の放電容量への効果が明らかである。さらに微小炭素が鱗片状黒鉛であったり(比較例2)、微小炭素の配合量が30質量%を超えて多い場合(比較例3)には、不可逆容量が大きく、初期充放電効率が劣る。特に、微小炭素の配合量が多いと、放電容量が低下する。
Figure 0004628007
Figure 0004628007
本発明にかかる炭素材料は、その特徴を活かして負極以外の用途に転用することもできるが、特に上記したリチウムイオン二次電池の負極として好適である。したがって本発明では、さらにこの炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池負極、さらにはリチウムイオン二次電池が提供される。
炭素材料の特性を評価するための評価電池を示す断面図である。
符号の説明
1 外装カップ
2 作用電極
3 外装缶
4 対極
5 電解質溶液含浸セパレーター
6 絶縁ガスケット
7a、7b 集電体

Claims (6)

  1. 鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、白金、硼素および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、
    炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレンまたは人造黒鉛である微小炭素、
    ならびにメソカーボン小球体の炭化物を含み、
    該微小炭素が該メソカーボン小球体の炭化物より小さく、
    該元素の微小炭素に対する割合が0.1〜10質量%であり、
    微小炭素の該メソカーボン小球体の炭化物に対する割合が0.01〜30質量%である組成物を、2000℃以上で高温熱処理することを特徴とする炭素材料の製造方法。
  2. 前記した鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、白金、硼素および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレンおよび人造黒鉛から選ばれる少なくとも一種の微小炭素に含まれる請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
  3. 前記微小炭素が、前記メソカーボン小球体の炭化物の表面に分散している請求項2に記載の炭素材料の製造方法。
  4. 前記炭素材料が、リチウムイオン二次電池負極用炭素材料である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素材料の製造方法で製造した炭素材料を含有するリチウムイオン二次電池用負極。
  6. 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池。
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