JP4616509B2 - 位置決めマーカおよび位置決め装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体表面における観察および加工などの目標位置の位置決めに用いられる位置決めマーカおよび位置決め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今のエレクトロニクス分野における技術の進展には著しいものがあり、特にコンピュータに関する技術の高度化および複雑化は目覚しく、コンピュータ技術の進展は、微細加工技術の向上にともなう電子デバイスの高集積化および微細化によって実現されている。微細加工および微細加工後の品質評価などを行う際には、被加工物の全体を対象とする小さい倍率のマクロ領域から、被加工物の微細な局部を対象とする大きい倍率のミクロ領域までを観察する必要がある。
【0003】
微細加工に必要なミクロ領域を観察する倍率で、物体全体を観察しようとすると、分解能が大きく位置決めに必要とされるデータの量が膨大になり過ぎるので、データの処理時間が長くなりまた処理方法が複雑になる。同一の観察装置を用いた場合でも、観察倍率を変化させてマクロ領域からミクロ領域までの位置決めを行うと、装置の計測部が観察中に生じる温度ドリフト等の影響を受けて計測結果に変動が生じるので、一旦観察領域をミクロ領域からマクロ領域に移行し、再度マクロ領域からミクロ領域に移行して観察を行おうとしても同一の位置に戻ることが困難である。
【0004】
またミクロ領域での一つの位置における作業から、マクロ的なスケールで離反した別の位置における作業に移行するとき、分解能が大きいミクロ領域のまま移行しようとすると、ミクロ領域のスケールでの移動量が大きいので、正確に移動させることが困難となり、また移動に要する時間が多大になる。
【0005】
そこで、マクロ領域とミクロ領域との観察倍率に対応した複数の装置を用い、マクロ領域およびミクロ領域での物体の移動と位置決めとを、各装置によってそれぞれ分担することが行われている。しかしながら、装置が異なると物体の移動と位置決めという同一の作業を実施しても、装置間における物体を移動させる駆動系の相違および計測部の誤差等によって得られる位置情報が異なるので、ミクロ領域における物体の位置決めを正確に行うことができない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題点を解決するために、各倍率の観察領域ごとに位置決めの目標とするべくマーカを物体に形成することが行われている。しかしながら、従来のマーカには以下のような問題がある。
【0007】
従来の物体の位置決めに使用されているマーカは、倍率の小さいマクロ領域におけるマーカと、倍率の大きいミクロ領域におけるマーカとの間には何ら関連付けがなされていない。すなわちマクロ領域に形成されたマーカは、あくまでもマクロ領域内における位置決めの目印として使用されるのみであり、またミクロ領域に形成されたマーカはミクロ領域内における位置決めの目印として使用されるのみである。
【0008】
したがって、特に倍率の小さいマクロ領域においてマーカを目印として位置決めを行った後、倍率の大きいミクロ領域に移行して位置決めを行うとき、観察倍率が大きく1観察視野の面積が小さくなるので、観察領域の倍率を拡大した際に、ミクロ領域に形成されたマーカを観察視野内に捕捉することが難しい。ミクロ領域に形成されたマーカを観察視野内に捕捉することが難しいので、マーカの検索および捕捉に多大な時間を要するばかりでなく、マーカを捕捉することができずミクロ領域における位置決めを断念せざるを得ないという問題がある。
【0009】
またミクロ領域における観察視野内にマーカを捕捉することができたとしてもマーカは単なる目印に過ぎず、さらにマーカを目印として機械的に観察視野を移動して目標位置を検索しなければならないので、観察または加工などの目標位置の位置決めを完了するまでに長時間を要するという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、異なる倍率の観察領域間において相互に伝達することのできる座標位置と座標スケールとに関する情報を有し、倍率の大きな観察領域における高精度と倍率の小さい観察領域における高速性とを、位置決めに利用可能な位置決めマーカおよび位置決め装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、物体表面の観察すべき領域の倍率を変化して位置決めを行うために用いる位置決めマーカにおいて、
骨格マーカとデータマーカとが組合せて構成され、
骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在し、
骨格マーカは、4個の個別骨格マーカからなり、個別骨格マーカの重心を頂点とする仮想4角形における対向する個別骨格マーカの重心をそれぞれ結ぶ直線は交差し、これら2つの直線によって物体表面の2次元座標を構成し、
データマーカは、個別骨格マーカ相互間に形成される複数の個別データマーカからなり、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標の原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}と、現倍率における座標のスケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標のスケール情報(Sm)と、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標のスケール情報(SM)とを備えることを特徴とする位置決めマーカである。
【0012】
本発明に従えば、位置決めマーカは、現倍率の観察すべき領域に関する情報とともに隣接する倍率の観察すべき領域に関する情報も備えるので、位置決めマーカの備える情報に基づいて、隣接する倍率が異なる観察すべき領域の間を移行することができる。特に、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察すべき領域に移行するとき、観察すべき領域の視野が小さくなるけれども、位置決めマーカの備える情報に基づいて観察すべき領域を移行するので、小さい面積である観察すべき領域の視野を確実に捕捉して移行することができる。
【0013】
また位置決めマーカは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在するので、倍率が小さく視野の面積が大きな観察すべき領域では、視野を高速度で広範囲に移動し位置決めをすることができ、倍率が大きく視野の面積が小さな観察すべき領域では、位置決めマーカの位置情報に基づいて高精度で位置決めをすることができる。また物体表面に位置決めマーカが形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができる。
【0014】
また本発明は、物体表面の観察すべき領域の倍率を変化して位置決めを行うために用いる位置決めマーカにおいて、
骨格マーカとデータマーカとが組合せて構成され、
骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と隣接する小さい方の倍率とに対応して存在し、
骨格マーカは、4個の個別骨格マーカからなり、個別骨格マーカの重心を頂点とする仮想4角形における対向する個別骨格マーカの重心をそれぞれ結ぶ直線は交差し、これら2つの直線によって物体表面の2次元座標を構成し、
データマーカは、個別骨格マーカ相互間に形成される複数の個別データマーカからなり、現倍率における位置決めすべき目標位置に関する情報{Pc(x,y)}と、現倍率における座標のスケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標のスケール情報(SM)とを備えることを特徴とする位置決めマーカである。
【0015】
本発明に従えば、位置決めマーカが、物体表面に形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができ、位置決めマーカの備える情報に基づいて隣接する倍率の観察すべき領域の間を移行することができる。
また位置決めマーカのデータマーカに備わる位置情報は、現倍率における位置決めすべき目標位置に関する情報{Pc(x,y)}であり、スケール情報は、現倍率における座標スケ−ル情報(Sc)と隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標スケール情報(SM)とからなるので、目標とする最大倍率の観察すべき領域であることが認識可能であり、目標とする観察または加工などの高精度の位置決めをすることができる。
【0016】
また本発明は、物体表面の観察すべき領域の倍率を変化して位置決めを行うために用いる位置決めマーカにおいて、
骨格マーカとデータマーカとが組合せて構成され、
骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と隣接する大きい方の倍率とに対応して存在し、
骨格マーカは、4個の個別骨格マーカからなり、個別骨格マーカの重心を頂点とする仮想4角形における対向する個別骨格マーカの重心をそれぞれ結ぶ直線は交差し、これら2つの直線によって物体表面の2次元座標を構成し、
データマーカは、個別骨格マーカ相互間に形成される複数の個別データマーカからなり、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標の原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}と、現倍率における座標のスケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標のスケール情報(Sm)とを備えることを特徴とする位置決めマーカである。
【0017】
本発明に従えば、位置決めマーカが、物体表面に形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができ、位置決めマーカの備える情報に基づいて隣接する倍率の観察すべき領域の間を移行することができる。また位置決めマーカのデータマーカにおける位置情報は、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}であり、スケール情報は、現倍率における座標スケ−ル情報(Sc)と隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標スケール情報(Sm)とからなるので、目標とする最小倍率の観察すべき領域であることが認識可能であり、観察すべき領域の視野を高速度で広範囲に移動し位置決めをすることができる。
【0018】
また本発明は、4個の個別骨格マーカのうち、1個が残余の3個の個別骨格マーカとは異なって形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、4個の個別骨格マーカのうち1個が残余の3個の個別骨格マーカとは異なって形成されるので、骨格マーカによって形成される2次元座標のXおよびY軸を容易に決定することができ、またXおよびY軸における正および負の方向を容易に決定することができる。
【0020】
また本発明は、前記データマーカは、2値データによって形成されることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、データマーカは、2値データによって形成される。このことによって、簡易な手段によってデータマーカの認識が可能になるので、たとえば画像処理装置などによってデータマーカの情報を読取ることができ、またたとえばバーコード形成装置などの汎用化されている装置をデータマーカの形成に利用することができる。
【0022】
また本発明は、骨格マーカとデータマーカとは、
隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察すべき領域の視野を内包する現倍率の観察すべき領域の視野内に複数個存在することを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、現倍率の観察すべき領域の視野内には、現倍率の位置決めマーカと、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察すべき領域に形成される位置決めマーカとが含まれる。このことによって、倍率の大きい観察すべき領域における位置情報を、倍率の小さい観察すべき領域から容易に検索することが可能になる。
【0024】
また本発明は、骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在し、
個別骨格マーカと個別骨格マーカ相互間に形成される個別データマーカとの相対的な配置が、現倍率と各隣接する倍率とにおいて共通であることを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、個別骨格マーカと個別データマーカとの相対的な配置が、現倍率と隣接する倍率とにおいて共通である。したがって、位置決めマーカの形態が、すべての倍率の観察領域において共通になるので、観察領域において位置決めマーカを認識して画像処理するアルゴリズムを同一にすることができる。
【0026】
また本発明は、前記いずれか1つの位置決めマーカを、物体表面の観察すべき領域に形成するマーキング手段と、
物体を移動させる移動手段と、
物体表面の観察すべき領域を倍率可変に観察する観察手段と、
前記位置決めマーカを読取る読取手段と、
読取手段の出力に応答し、移動手段を駆動して物体を移動し、観察手段の観察倍率を拡大または縮小する制御手段とを含むことを特徴とする位置決め装置である。
【0027】
本発明に従えば、位置決め装置は、マーキング手段を含むので、順次的に異なる倍率に設定される物体表面の観察すべき領域に位置決めマーカを形成することができる。また物体表面の観察すべき領域に形成された位置決めマーカを読取手段によって読取り、読取手段の出力に応答する制御手段によって、観察手段の観察倍率を拡大または縮小し、移動手段を駆動して物体を移動することができる。このことによって、倍率の小さい観察すべき領域においては物体を広範囲に高速度で移動させることが可能であり、倍率の大きい観察すべき領域においては物体を高精度で移動して目的とする位置決めをすることができる。
【0028】
また本発明は、前記の位置決め装置と、
位置決め装置によって位置決めされる物体を加工する加工手段とを含むことを特徴とする補修装置である。
【0029】
本発明に従えば、補修装置は、位置決め装置に加えてさらに加工手段を含むので、たとえば半導体デバイスの微細部品などの製造時に生じた不具合部分を正確に位置決めし、加工手段によって補修することができる。このことによって、製造歩留を向上して製造コストを低減し、資源節減の社会的要請に応えることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態である位置決めマーカ1の構成を簡略化して示す平面図であり、図2は図1に示す位置決めマーカ1の分解平面図である。物体表面の観察すべき領域(以後、観察領域と略称する)の倍率を変化して位置決めを行うために用いる本実施の形態の位置決めマーカ1は、骨格マーカ2とデータマーカ3とが組合せて構成され、骨格マーカ2とデータマーカ3とは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在する。ここで倍率とは、物体表面における単位長さをL1とし、単位長さL1が観察装置に備わる表示手段上に表示される長さをL2とするとき、長さの比 L2/L1を意味する。
【0031】
位置決めマーカ1を構成する骨格マーカ2は、4個の個別骨格マーカ4,5,6,7からなり、個別骨格マーカの重心4a,5a,6a,7aを頂点とする仮想4角形8における対向する個別骨格マーカの重心5a,7a,4a,6aをそれぞれ結ぶ直線9,10は交差し、これら2つの直線、ここではX軸9およびY軸10によって物体表面の2次元座標を構成する。
【0032】
本実施の形態の骨格マーカ2においては、4個の個別骨格マーカ4,5,6,7のうち、1個の個別骨格マーカ4の濃度が、残余の3個の個別骨格マーカ5,6,7の濃度よりも薄く形成される。このことによって、骨格マーカ2をたとえば画像処理装置において認識するとき、1個の個別骨格マーカ4と残余の3個の個別骨格マーカ5,6,7とを容易に識別することができる。濃度の薄い個別骨格マーカ4の重心4aと、前記仮想4角形8において対向する個別骨格マーカ6の重心6aとを結ぶ直線をY軸10と定め、個別骨格マーカ4の存在する方向をY軸10の正方向と定めることができる。残る個別骨格マーカ5,7の重心5a,7aを結ぶ直線をX軸9と定め、前記Y軸10の正方向を時計まわりに90度角変位させた方向にX軸9の正方向を定めることができる。X軸9とY軸10との交点が2次元座標系の原点である。このように、1個の個別骨格マーカ4と残余の3個の個別骨格マーカ5,6,7とが、異なるように形成することによって、骨格マーカ2によって形成される2次元座標のX軸9およびY軸10を容易に決定することができ、またX軸9およびY軸10における正および負の方向を容易に決定することができる。
【0033】
データマーカ3は、個別骨格マーカ4,5,6,7相互間に形成される複数の個別データマーカ11からなり、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}と、現倍率における座標スケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標スケール情報(Sm)と、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標スケール情報(SM)とを備える。
【0034】
本実施の形態では、データマーカ3は、2値データによって形成される。すなわち前述の座標原点の位置情報Pm(x,y)および座標スケール情報Sc,Sm,SMを2値データによって表し、2値データによる情報は個別データマーカ11の有無を用いて物体表面に形成される。仮想4角形8の個別骨格マーカ4および5の間にある1辺には、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}が形成され、個別骨格マーカ7および4の間にある1辺には、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標スケール情報(Sm)が形成される。また仮想4角形8の個別骨格マーカ5および6の間にある1辺には、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標スケール情報(SM)が形成され、個別骨格マーカ6および7の間にある1辺には、現倍率における座標スケ−ル情報(Sc)が形成される。
【0035】
データマーカ3が2値データで表されることによって、簡易な手段でデータマーカ3を認識することが可能になるので、たとえば画像処理装置などによってデータマーカ3の情報を読取ることができ、またたとえばバーコード形成装置などの汎用化されている装置をデータマーカ3の形成に利用することができる。
【0036】
図3は位置決めマーカ1,1aが異なる倍率に設定される観察領域の現倍率と隣接する倍率のうち大きい方の倍率とに対応して存在する状態を示す平面図であり、図4は順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域の概略を示す斜視図であり、図5は順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域に形成される位置決めマーカ1の階層構造の概略を示す図である。図3および図4に示すように、ここでは倍率が小さく視野面積が広範囲におよぶ観察領域をマクロ領域と呼ぶことがあり、マクロ領域に比較して相対的に倍率が大きく視野面積の小さい観察領域をミクロ領域と呼ぶことがある。
【0037】
位置決めマーカ1は、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在する。たとえば図3に示すように現倍率であるFieldAと、隣接する倍率のうち大きい方の倍率であるFieldBとにおいて位置決めマーカ1および位置決めマーカ1aが形成される。図3に示す例では、現倍率であるFieldAと隣接する倍率のうち大きい方の倍率であるFieldBとの2つの隣接する倍率の観察領域のみを示すけれども、肉眼または数倍程度の倍率で観察視野面積が広範囲に及ぶマクロ領域から、たとえば走査型トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)を観察手段として用いるような原子レベルの分解能で観察視野面積が極小であるミクロ領域までを、わずかに2つの観察領域を利用することによって高精度に位置決めすることは困難である。
【0038】
したがって、たとえば図4に示すように、最小倍率のマクロ領域であるFieldIの観察領域と、最大倍率のミクロ領域であるFieldVの観察領域との間に、中間の倍率の観察領域が複数設けられる。図4に示す例では、中間にFieldII〜IVの3つの観察領域が設けられ、最小倍率の観察領域であるFieldIから、最大倍率であり位置決めの目標とする観察領域であるFieldVまで、この例の場合は5つの段階の倍率を有するが、実際には使用環境に応じて必要な段階を用意する。
【0039】
位置決めマーカ1を構成する骨格マーカ2とデータマーカ3とは、隣接する大きい方の倍率の観察領域の視野を内包する現倍率の観察領域の視野内に複数個存在するように形成される。複数個存在するとは、現倍率の観察領域の視野内に、現倍率の位置決めマーカ1と隣接する倍率のうち大きい方の倍率の位置決めマーカ1aとが存在してもよく、また位置決めマーカ1と複数の位置決めマーカ1aとが存在してもよいことを意味する。すなわち、順次的に相互に異なる倍率に設定される位置決めマーカの構造は、図5に示すように、観察領域が隣接する倍率のうち大きい方の倍率に移行するのにともなって、形成される位置決めマーカの数が複数に増加する階層構造であってもよい。このことによって、倍率の大きい観察領域における位置決めマーカが備える情報を、倍率の小さい観察領域から容易に検索することが可能になる。
【0040】
図6は、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域に位置決めマーカがそれぞれ形成される状態を示す平面図である。図6に示すように、位置決めマーカ1は、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域の現倍率と隣接する倍率とに対応して位置決めマーカ1a,1bのように形成され、個別骨格マーカ4,5,6,7と個別骨格マーカ4,5,6,7相互間に形成される個別データマーカ11との相対的な配置は、各倍率の観察領域において共通に形成される。
【0041】
データマーカ3は、個別データマーカ11の有無という2値データによって情報を表す。したがって、データマーカ3が備える情報の内容にともなって個々の個別データマーカ11の形成される位置が異なるので、厳密には倍率が異なる相互の観察領域におけるデータマーカ3の形態はわずかに相違する。しかしながら、複数の個別データマーカ11が集合した個別データマーカ群として見るとき、すなわち隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標原点の位置情報Pm(x,y)および各座標スケール情報Sc,Sm,SMを表す個別データマーカ群として見るとき、個別データマーカ群同志の形態は極めて類似しているので、個別骨格データ4,5,6,7との相対的な配置によって得られる位置決めマーカ1の全体的な形態は、各隣接する倍率の観察領域において共通と言ってよい。
【0042】
このように倍率の異なる各観察領域に形成される位置決めマーカ1は、特徴的長さを持たない自己相似性(フラクタル)を有する図形として共通の形態で形成されることが好ましい。このことによって、観察領域において位置決めマーカ1を認識して画像処理するアルゴリズムを同一にすることができる。
【0043】
図3に戻って、現倍率の観察領域であるFieldAから隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域であるFieldBへの移行について説明する。現倍率であるFieldAから、隣接する倍率のうち大きい方の倍率のFieldBへ移行するとき、現倍率の観察領域内にある位置決めマーカ1から、FieldBに形成される位置決めマーカ1aの座標原点12aのX軸9とY軸10とからなる2次元座標系における位置情報Pm(x,y)およびFieldBの座標スケール情報Smを読取り、読取った位置決めマーカ1の情報に基づいて、物体を移動させて観察視野を位置決めマーカ1aを含む位置に移動し観察倍率を拡大する。逆にFieldBから隣接する倍率のうち小さい方の倍率のFieldAへ移行するとき、FieldB内にある位置決めマーカ1aから、FieldAの座標スケール情報SMbを読取り、読取った座標スケール情報SMbに基づいて観察倍率を縮小し、FieldAに形成された位置決めマーカ1を検索する。
【0044】
このように、位置決めマーカ1,1aは、現倍率の観察領域に関する情報とともに隣接する倍率の観察領域に関する情報も備えるので、位置決めマーカ1,1aの備える情報に基づいて、隣接する倍率の異なる観察領域の間を移行することができる。特に、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に移行するとき、観察領域の視野は小さくなるけれども、位置決めマーカ1の備える情報に基づいて観察領域を移行するので、小さい面積である観察領域の視野を確実に捕捉して移行することができる。
【0045】
また位置決めマーカ1は、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在するので、倍率が小さく視野の面積が大きな観察領域では、視野を高速度で広範囲に移動し位置決めをすることができ、倍率が大きく視野の面積が小さな観察領域では、位置決めマーカ1の座標位置情報に基づいて高精度で位置決めをすることができる。また物体表面に位置決めマーカ1が形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができる。
【0046】
図7は、本発明の第2の実施の形態である位置決めマーカ21の構成を簡略化して示す平面図である。本実施の形態の位置決めマーカ21は、実施の第1形態の位置決めマーカ1と類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施の形態の位置決めマーカ21は、たとえば図4に示す最大倍率の観察領域であるFieldV、すなわち目標とする位置決めをすべき観察領域に形成される。
【0047】
実施の第1形態の位置決めマーカ1と比較して注目すべきは、前記座標原点の位置情報Pm(x,y)の代わりに、現倍率において位置決めすべき目標とする座標位置情報Pc(x,y)を備えることであり、また隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標スケール情報Smを含まないことである。位置決めマーカ21は、目標とする位置決めをすべき最大倍率の観察領域に形成されるので、隣接する大きい方の倍率の座標におけるスケール情報を備える必要がない。また位置決めマーカ21は、現倍率における座標スケール情報Scと、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標スケール情報SMとを備える。
【0048】
データマーカ3が隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標スケール情報Smを含まないので、位置決めマーカ21の形成された現倍率の観察領域が、目標とする最大倍率の観察領域であることの認識可能であり、目標とする観察または加工などの高精度の位置決めをすることができる。また位置決めマーカ21には、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標におけるスケール情報SMが備わるので、このスケール情報SMに基づいて隣接する倍率のうち小さい方の倍率の観察領域に移行することができる。
【0049】
図8は、本発明の第3の実施の形態である位置決めマーカ22の構成を簡略化して示す平面図である。本実施の形態の位置決めマーカ22は、実施の第1形態の位置決めマーカ1と類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施の形態の位置決めマーカ21は、たとえば図4に示す最小倍率の観察領域であるFieldI、すなわち視野面積が広範囲に及び物体の観察視野の移動に高速性を要求される観察領域に形成される。実施の第1形態の位置決めマーカ1と比較して注目すべきは、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標におけるスケール情報SMを含まないことである。位置決めマーカ22は、最小倍率の観察領域に形成されるので、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標におけるスケール情報を備える必要がない。
【0050】
データマーカ3が隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標スケール情報SMを含まないので、目標とする最小倍率の観察領域であることの認識可能であり、観察領域の視野を高速度で広範囲に移動し位置決めをすることができる。
また位置決めマーカ22には、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の座標におけるスケール情報Smが備わるので、このスケール情報Smに基づいて隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に移行することができる。
【0051】
前述の順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域に形成される位置決めマーカ1,21,22のデータマーカ3が備える情報を倍率ごとにまとめた結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
図9は、本発明のもう1つの実施の形態である位置決め装置26の構成を簡略化して示す概略系統図である。位置決め装置26は、前述の位置決めマーカ1,21,22を位置決めすべき物体27の表面27aに形成するマーキング手段28と、物体27を移動させる移動手段29と、物体表面27aの観察領域を倍率可変に観察する観察手段30と、前記位置決めマーカ1,21,22を読取る読取手段31と、読取手段31の出力に応答し、移動手段29を駆動して物体27すなわち観察視野を移動し、観察手段30の観察倍率を拡大または縮小する制御手段32とを含む。
【0054】
観察手段30は、観察領域の観察倍率に適合する種々の装置が用いられる。ここでは、第1および第2CCDカメラ33,34、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)35およびSTM36を観察手段30として使用した。観察倍率の範囲は、第1および第2CCDカメラ33,34が最も小さく、SEM35、STM36の順に大きくなる。第1および第2CCDカメラ33,34は、2次元受光素子を構成する多数のセルを有し、各セルは電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)によって形成される観察装置である。観察手段30を構成する各装置における観察倍率変更手段として、第1および第2CCDカメラ33,34には第1および第2CCDズーム系レンズ駆動手段37,38、SEM35にはSEM電磁レンズ39、STM36には、表面の凹凸をトレースするための圧電素子の変位量のサンプリング周波数の変更およびスキャン範囲を変更するSTM周波数・スキャン範囲変更手段40が、それぞれ備えられる。
【0055】
観察領域の視野内に形成される位置決めマーカ1の寸法は、観察領域の視野寸法に対して適当な大きさがあり、視野寸法の5分の1程度の大きさが適している。したがって、マーキング手段28は、一種類の装置によって広範囲の倍率におよぶ観察領域のすべてに対応することは困難であり、観察領域の視野寸法、すなわち物体表面27aに形成される位置決めマーカ1の寸法に対応して複数の装置から適宜選択して使用される。
【0056】
第1および第2CCDカメラ33,34による観察倍率では、インク噴射装置41がマーキング手段28として用いられる。インク噴射装置41では、インク噴射の有無によって個別データマーカ11による2値データを形成し、噴射するインクの色の変化によって1個の個別骨格マーカ4と残余の3個の個別骨格マーカ5,6,7との相違を形成する。
【0057】
SEM35による観察倍率では、レーザ加工器42がマーキング手段28として用いられる。レーザ加工器42では、レーザ照射の有無によって個別データマーカ11による2値データを形成し、レーザの発振出力の変化によって1個の個別骨格マーカ4と残余の3個の個別骨格マーカ5,6,7との相違を形成する。
【0058】
STM36による観察倍率では、STM36をマーキング手段28として用いる。STM36では、STM探針放電加工手段43によって、探針に観察電圧を超える高い電圧を印加して物体表面27aとの間で放電加工し、放電加工の有無によって個別データマーカ11による2値データを形成する。また探針へ印加する電圧の変化によって1個の個別骨格マーカ4と残余の3個の個別骨格マーカ5,6,7との相違を形成する。
【0059】
移動手段29は、図示しない電動機によってXYZの3軸方向に移動可能なステージであり、位置決め精度に対応して駆動するステージが3種類設けられる。第2CCDカメラ34に対応する比較的小さい倍率の観察領域に対しては、X1−Y1座標系において駆動する第1ステージ44が設けられる。第1ステージ44の駆動は、ボールねじ駆動でありその精度は10〜100μmの範囲である。SEM35に対応する倍率の観察領域に対しては、X2−Y2座標系において駆動する第2ステージ45が設けられる。第2ステージ45の駆動は、リニアスケール駆動でありその精度は0.1〜1μmの範囲である。STM36に対応する倍率の観察領域に対しては、X3−Y3−Z3座標系において3軸方向に駆動する第3ステージ46が設けられる。第3ステージ46の駆動は、圧電素子駆動でありその精度は0.1〜10nmの範囲である。
【0060】
第1および第2CCDカメラ33,34、SEM35およびSTM36からなる観察手段30に対応して、前述の第1〜第3ステージ44,45,46からなる移動手段29が設けられることによって、分解能がナノメートルからセンチメートルまでの広範囲の観察倍率における物体の位置決めに、位置決め装置26を使用することができる。
【0061】
本実施の形態では、観察手段30としてSEM35およびSTM36を用いている。SEM35およびSTM36は、観察環境として真空であることを必要とするので、SEM35およびSTM36によって観察するとき、位置決めすべき物体27は真空容器である第1容器47内に収容される。
【0062】
SEM35およびSTM36の観察倍率に対応するマーキング手段28としては、真空環境にほとんど影響を及ぼすことがないレーザ加工器42およびSTM探針放電加工手段43が使用される。観察倍率がSEM35およびSTM36に比べて小さいCCDカメラの観察領域においては、マーキング手段28として前記インク噴射装置41が使用される。インク噴射装置41は簡便であり安価なマーキング手段28であるけれども、インク噴射装置41によってインクが容器内に噴射されると、真空環境に好ましくない影響を及ぼすので、第1CCDカメラ33とインク噴射装置41とは、第1容器47とは異なる第2容器48に設けられる。第2容器48内に収容された位置決めすべき物体27は、第1CCDカメラ33によって観察され、インク噴射装置41によって位置決めマーカ1が形成される。このことによって、インク噴射装置41による位置決めマーカ1形成のためのインク噴射が、第1容器47内の真空度を低下することを防止する。
【0063】
インク噴射装置41によって位置決めマーカ1が形成された物体27は、第2容器48から第1容器47内に移動され移動手段29上に載置される。物体27の第2容器48から第1容器47への移動は、第1および第2容器47,48を開放し、物体27を手動で移動することによって実現される。逆に第1容器47から第2容器48へ物体27を移動する場合も同様である。
【0064】
第1容器47内において、インク噴射装置41によって物体27表面に形成された位置決めマーカ1は、第1CCDカメラ33と観察倍率が類似の範囲にある第2CCDカメラ34によって検索される。このとき位置決めすべき物体27は、第2容器48から第1容器47内の移動手段29上へと大きく移動され、観察手段30は第1CCDカメラ33から第2CCDカメラ34へと変更されているけれども、第2CCDカメラ34によって物体表面27aに形成された位置決めマーカ1を検出したとき、位置決めマーカ1の備える情報に基づいて、座標系の原点位置と座標スケールとを較正するキャリブレーションを行うので、第1CCDカメラ33と第2CCDカメラ34との観察装置の相違に基づく計測誤差の発生が防止される。SEM35による観察と&レーザ加工器42による位置決めマーカ1の形成およびSTM36による観察と位置決めマーカ1の形成は、いずれも物体27が第1容器47内の移動手段29上に載置されたまま実施される。なお、観察領域における座標系のキャリブレーションは、第2CCDカメラ34とSEM35との観察手段30の変更およびSEM35とSTM36との観察手段30の変更時においても実施されるので、観察装置の相違に基づく計測誤差の発生が防止される。
【0065】
図10は図9に示す位置決め装置26の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。マイクロコンピュータなどによって実現される制御手段32である処理回路には、入力手段49が接続される。入力手段49は、たとえばキーボードなどによって実現され、後述する位置決めすべき対象の物体27において予め定められる観察領域の最大および最小の倍率で形成される座標スケール情報を入力する。また処理回路32には、第1および第2CCDカメラ33,34、SEM35、STM36および位置決めマーカ1を読取る読取手段31である画像処理装置が接続される。観察手段30である第1および第2CCDカメラ33,34、SEM35およびSTM36は、画像処理装置31にも接続されるので、画像処理装置31には観察手段30からの画像情報の読取出力が与えられる。
【0066】
処理回路32の出力によって、詳細を後述する第1および第2CCDズーム系レンズ駆動手段37,38、SEM電磁レンズ39およびSTM周波数・スキャン範囲変更手段40の動作が制御され、またインク噴射装置41、レーザ加工器42およびSTM探針放電加工手段43からなるマーキング手段28と位置決めすべき物体27を載置した移動手段29との動作が制御される。
【0067】
図11は、図9に示す処理回路32の動作を説明するフローチャートである。
図11を参照し、位置決め装置26において、ミクロ領域からマクロ領域までの倍率が異なる観察領域に位置決めマーカ1,21,22を形成する動作と、形成された位置決めマーカ1,21,22に基づいてマクロ領域からミクロ領域に向って位置決めする動作について説明する。図12は位置決めの目標とする最大倍率の観察領域における位置決めマーカ21を示す平面図であり、図13は中間倍率の観察領域における位置決めマーカ1を示す平面図であり、図14は最小倍率の観察領域における位置決めマーカ22を示す平面図である。
【0068】
ステップa1では、位置決めすべき物体27について、対象とする観察領域の最大倍率と最小倍率とにおける座標スケール情報を、入力手段49によって処理回路32へ入力する。このとき観察領域の最小および最大倍率が予め定められ、最大倍率の観察領域における位置決めすべき物体表面27aには、図12(a)に示すように目標とする位置を加工するなどして観察位置50が予め定められているものとする。
【0069】
ステップa2では、図12に示すように最大倍率である現倍率の観察領域に骨格マーカ2を形成する。骨格マーカ2は、前記観察位置50が骨格マーカ2の内方に位置するように形成される。骨格マーカ2およびデータマーカ3は、相互に異なる倍率の観察領域にそれぞれ形成されるので、倍率が異なる観察領域間の骨格マーカ2およびデータマーカ3を混同する恐れがある。したがって、骨格マーカ2とデータマーカ3との参照符号の末尾に最大倍率ではuを添付し、中間倍率ではvを添付し、最小倍率ではwを添付して区別する。
【0070】
STM36によって観察される現倍率の観察領域には、4個の個別骨格マーカ4u,5u,6u,7uが、STM探針放電加工手段43に電圧が印加され物体表面27aと探針との間で放電加工することによって形成される。1個の個別骨格マーカ4uを放電加工によって形成する際、STM放電加工手段43に印加する電圧を、残余の3個の個別骨格マーカ5u,6,7uを形成する場合よりも小さくする。このことによって、個別骨格マーカ4uの濃度が、残余の3個の個別骨格マーカ5u,6,7uとは異なって形成されるので、個別骨格マーカ4uを残余の3個の個別骨格マーカ5u,6,7uと区別して画像処理装置31によって読取ることができる。
【0071】
ステップa3では、骨格マーカ2uを基準にデータマーカ3uを形成する。画像処理装置31によって読取られた読取出力は、処理回路32に入力される。処理回路32にはCPU(Central Processing Unit)が備わり、画像処理装置31の読取出力に基づいて、4個の個別骨格マーカの重心4ua,5ua,6ua,7uaを頂点とする仮想4角形8uが求められる。前述のように1個の個別骨格マーカ4uが、残余の3個の個別骨格マーカ5u,6u,7uとは容易に識別されるので、1個の個別骨格マーカの重心4uaと、仮想4角形8uにおいて対向する個別骨格マーカの重心6uaとを結ぶ直線をY軸10uと定め、個別骨格マーカ4uの存在する方向をY軸10uの正方向と定めることができる。
【0072】
また残る個別骨格マーカの重心5ua,7uaを結ぶ直線をX軸9uと定め、前記Y軸10uの正方向を時計まわりに90度角変位させた方向にX軸9uの正方向を定め、2次元座標系が構成される。このように定められるX軸9uとY軸10uとの交点から2次元座標系の原点位置が求められる。観察領域の現倍率から2次元座標のスケール情報Scuが定められる。前記2次元座標系とそのスケール情報Scuとが定められることによって、目標とする観察位置50の2次元座標系における位置情報Pc(x,y)が求められる。
【0073】
ステップa4では、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標に関するスケール情報SMuが定められる。スケール情報SMuは、たとえば前記ステップa1において入力した観察領域の最大倍率と最小倍率との比に基づいて、観察領域を設ける階層の数を定めるアルゴリズムをCPUに予め付与しておくことによって定めることができる。なおステップa4では、ステップa3からステップa4に直接進行して場合には、座標スケール情報SMuが定められ、後述するステップa8からステップa4に戻った場合には、座標スケール情報SMvが定められるロジックが与えられている。
【0074】
観察位置50の位置情報Pc(x,y)および各座標スケール情報Scu,SMuは2値データに変換され、処理回路32からSTM放電加工手段43と移動手段29とに出力が与えられる。位置情報およびスケール情報の2値データへの変換は、汎用の2値データ変換器を処理回路32に設けることによって実現できる。処理回路32からの出力に従って、移動手段29は物体27を移動し、STM放電加工手段43は前述の放電加工によってデータマーカ3uを観察領域に形成する。観察位置50の座標位置情報Pc(x,y)は個別骨格マーカ4uおよび5uの間に形成され、現倍率の座標スケール情報Scuは個別骨格マーカ6uおよび7uの間に形成され、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標スケール情報SMuは個別骨格マーカ5uおよび6uの間に形成されて、位置決めマーカ21が形成される。現倍率は最大倍率であるので、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の座標スケール情報は形成されない。
【0075】
ステップa5では、座標スケール情報SMuに基づいて、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の観察領域に移行する。観察領域の移行は、画像処理装置31によって座標スケール情報SMuを読取り、読取出力に基づく処理回路32の出力に応答し、たとえばSTM周波数・スキャン範囲変更手段40によってSTM36の観察倍率を縮小するか、または観察手段30をSTM36からSEM35に切換えることによって実現される。
【0076】
ステップa6では、図13に示すように移行後の倍率の観察領域に骨格マーカ2vが形成される。移行後の観察領域の倍率がSTM36よりも小さいSEM35で対応できる場合、骨格マーカ2vとデータマーカ3vとは、たとえばレーザ加工器42による物体27表面へのレーザ照射によって形成される。骨格マーカ4vがレーザ加工器42によって形成されるとき、1個の個別骨格マーカ4vをレーザ照射によって形成する際のレーザ発振出力を残余の3個の個別骨格マーカ5v,6v,7vを形成する場合よりも小さくする。このことによって、個別骨格マーカ4vの濃度が、残余の3個の個別骨格マーカ5v,6v,7vとは異なって形成されるので、個別骨格マーカ4vを残余の3個の個別骨格マーカ5v,6v,7vと識別して画像処理装置31によって読取ることができる。また移行前の倍率の観察領域に形成された位置決めマーカ21が、4個の個別骨格マーカ4v,5v,6v,7vの内方に存在するように骨格マーカ4vが形成される。
【0077】
ステップa7では、骨格マーカ2vを基準としてデータマーカ3vを形成する。移行前の倍率の観察領域と同様、画像処理装置31によって骨格マーカ2vの読取出力が処理回路32に入力され、読取出力に基づく処理回路32の演算によって、Y軸10vとY軸10vの正方向とを定め、X軸9vとX軸9vの正方向とを定めて2次元座標系が構成される。観察領域の倍率から座標スケール情報Scvが定められる。2次元座標系とそのスケール情報Scvとが定められることによって、移行前の倍率の観察領域に形成された位置決めマーカ21の座標原点51が、移行後の観察領域のX軸9vとY軸10vとによって定められる2次元座標系において有する位置情報Pmv(x,y)が求められる。
【0078】
隣接する倍率のうち大きい方の倍率の座標スケール情報Smvは、移行前の倍率における座標スケール情報ScuをSmvに置換えることによって求められる。座標原点51の位置情報Pmv(x,y)および各座標のスケール情報Scv,SMv,Smvが、2値データに変換されて処理回路32からの出力としてレーザ加工器42と移動手段29とに与えられる。処理回路32からの出力に従って、移動手段29は物体27を移動し、レーザ加工器42はレーザ照射によってデータマーカ3vを観察領域に形成する。座標位置情報Pmv(x,y)、座標スケール情報Scv,SMvは、ステップa3およびステップa4において述べたのと同様の位置に形成され、座標スケール情報Smvは、個別骨格マーカ4uおよび7uの間に形成され、位置決めマーカ1が形成される。
【0079】
ステップa8では、現倍率の座標スケール情報Scが、ステップa1において入力した最小倍率の座標スケール情報と同一であるか否かが判断される。この判断が否定で、座標スケール情報Scが、最小倍率の座標スケール情報よりも大きければステップa4に戻り、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標スケール情報SMvが形成され、以降のステップを進行する。
【0080】
すなわち図14に示すように、移行後の倍率の観察領域に骨格マーカ2wを形成する。移行後の観察領域の倍率がSEM35よりも小さいCCDカメラで対応できる場合、物体27は第1容器47から第2容器48に移動される。第2容器48内において、第1CCDカメラ33によって物体表面27aが観察され、骨格マーカ2wおよびデータマーカ3wは、処理回路32からの出力に応答しインク噴射装置41から物体表面27aへインク噴射することによって形成される。
【0081】
骨格マーカ4wがインク噴射装置41によって形成されるとき、1個の個別骨格マーカ4wを形成するインクの色を残余の3個の個別骨格マーカ5w,6w,7wを形成するインクの色と異なるものとする。このことによって、個別骨格マーカ4wを残余の3個の個別骨格マーカ5w,6w,7wと識別して画像処理装置31によって読取ることができる。
【0082】
形成された個別骨格マーカ4wを基準として、Y軸10wとY軸10wの正方向とを定め、X軸9wとX軸9wの正方向とを定めて2次元座標系を構成する。観察領域の倍率から2次元座標のスケール情報Scwを定め、2次元座標とそのスケール情報Scwとによって、移行前の観察領域に形成された位置決めマーカ1の座標原点52が、移行後の観察領域の座標系において有する位置情報Pmw(x,y)を求める。また移行前の観察倍率における座標スケール情報Scvを、移行後の隣接する倍率のうち大きい方の倍率の座標スケール情報Smwに置換える。
【0083】
座標原点52の位置情報Pmw(x,y)および各座標スケール情報Scw,Smwが、2値データに変換され処理回路32からの出力としてインク噴射装置41と移動手段29とに与えられる。処理回路32からの出力に従って、座標位置情報Pmw(x,y)、座標スケール情報Scw,Smwは、個別骨格マーカ相互間に形成されて位置決めマーカ22が形成される。なお現倍率の座標スケール情報Scwが、ステップa1において入力した最小倍率の座標スケール情報と同一であるときは、ステップ8の判断に従って後述のステップa9へ進むので、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標スケール情報は形成されない。
【0084】
ステップa8における判断が肯定であり、座標スケール情報Scwが、ステップa1において入力した最小倍率の座標スケール情報と同一であるとき、ステップa9に進む。ステップa9では、ミクロ領域からマクロ領域までの観察領域に対応する位置決めマーカ21,1,22の形成が完了する。
【0085】
次のステップa10以降では、マクロ領域からミクロ領域に向って倍率の異なる観察領域を移行しながら位置決めを行う。図15は、マクロ領域からミクロ領域に向って位置決めする状態を示す平面図である。ステップa10では、図15(a)に示す最小倍率の観察領域の視野内から画像処理装置31によって位置決めマーカ22を読取り、読取出力を処理回路32に入力する。なお第2容器48内において、最小倍率でインク噴射装置41によって位置決めマーカ22が形成された物体27は、マクロ領域からミクロ領域に向って位置決めするに先だって第2容器48から第1容器47へと移動される。
【0086】
ステップa11では、位置決めマーカ22を構成する骨格マーカ2wの読取出力に基づき、処理回路32において2次元座標を決定する。2次元座標の決定は、前述の位置決めマーカ22の形成と同様にして行われる。画像形成装置31は、1個の個別骨格マーカ4wと残余の3個の個別骨格マーカ5w,6w,7wとを色の相違によって識別して読取る。処理回路32は、画像形成装置31の読取出力に応答し、個別骨格マーカ4wを基準として、Y軸10wとY軸10wの正方向とを定め、X軸9wとX軸9wの正方向とを定めて2次元座標系を定める。
【0087】
ステップa12では、位置決めマーカ22を構成するデータマーカ3wの読取出力に基づき、処理回路32において、現倍率の観察領域から座標スケール情報Scwを定め、2次元座標とそのスケール情報Scwとによって、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に形成された位置決めマーカ1の座標原点52が、現観察領域の2次元座標系において有する位置情報Pmw(x,y)を求める。また隣接する倍率のうち大きい方の倍率の座標スケール情報Smwを求める。
【0088】
ステップa13では、前記座標原点52の座標位置Pmw(x,y)に基づく処理回路32からの出力に応答し、座標原点52が移行後の観察領域の視野内に含まれるように、移動手段29が駆動されて物体27すなわち観察視野が移動される。ステップa14では、処理回路32の出力に応答し、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に移行する。隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域への移行は、たとえば第2CCDカメラ34の第2CCDズーム系レンズ駆動手段38が駆動されて観察倍率が拡大されるか、または観察手段30が第2CCDカメラ34からSEM35に切換えられることによって実現される。
【0089】
ステップa15では、処理回路32において、移行前の観察領域における座標スケール情報Smwを、移行後の観察領域の座標スケール情報Scvに置換え、座標スケール情報Scvがステップa1において入力した最大倍率の座標スケール情報と同一であるか否かが判断される。この判断が否定であり、座標スケール情報Scvが、最大倍率の座標スケール情報よりも小さければ、ステップa10に戻り以降のステップが繰返し実行される。
【0090】
すなわち図15(b)に示す中間の倍率を有する観察領域に形成された位置決めマーカ1を、画像処理装置31によって読取り、読取出力を処理回路32に入力する。処理回路32では、骨格マーカ2vに基づいてX軸9v−Y軸10vからなる2次元座標系を定め、データマーカ3vに基づき、現倍率の座標スケール情報Scv、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の座標スケール情報Smvおよび隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標スケール情報SMvを定め、さらに隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に形成された位置決めマーカの座標原点が、現倍率の観察領域の2次元座標系において有する位置情報Pmv(x,y)を求める。前記座標原点の座標位置Pmv(x,y)に基づく処理回路32からの出力に応答し、座標原点が移行後の観察領域の視野内に含まれるように、移動手段29が駆動されて物体27が移動される。
【0091】
物体27が移動された後、処理回路32の出力に応答し、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に移行する。さらなる隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域への移行は、たとえばSEM35の電磁レンズ39を制御して観察倍率が拡大されるか、または観察手段30がSEM35からSTM36に切換えられることによって実現される。
【0092】
ステップa15における判断が肯定であり、現倍率の観察領域の座標スケール情報Scが、ステップa1において入力した最大倍率の座標スケール情報と同一であるとき、ステップa16に進む。すなわち図15(c)および図15(d)に示す最大倍率の観察領域における位置決め動作が実行される。
【0093】
ステップa16では、画像処理装置31によって位置決めマーカ21を読取り、読取出力を処理回路32に入力する。ステップa17では、読取出力に応答し処理回路32において、位置決めマーカ21を構成する骨格マーカ2uに基づき2次元座標系を決定する。2次元座標系の決定は、前述のように1個の個別骨格マーカ4uと残余の3個の個別骨格マーカ5u,6u,7uとを濃度の相違によって識別して読取り、個別骨格マーカ4uを基準として、X軸9u−Y軸10uからなる2次元座標系を定める。
【0094】
ステップa18では、位置決めマーカ21を構成するデータマーカ3uに基づき、処理回路32において、現観察領域の倍率から座標スケール情報Scuを定め、2次元座標とそのスケール情報Scuとによって、現倍率の観察領域に形成された位置決めマーカ21の観察位置50の位置情報Pmc(x,y)を求め、位置決めを行う。ステップa19では、一連の位置決め動作が完了し、位置決めされた観察位置50に対して観察または加工などの作業が実行される。
【0095】
図16は、 図10に示す処理回路32のもう1つの動作を説明するためのフローチャートである。図16に示す処理回路32のもう1つの動作は、前記図11に示す処理回路32の動作に類似するので、処理回路32内における情報の詳細な処理動作と、処理回路32の出力に応答する観察手段30、マーキング手段28および移動手段29の動作とについては説明を省略する。図16に示すフローチャートは、観察倍率の小さいマクロ領域から観察倍率の大きいミクロ領域に向って位置決めマーカを形成しながら位置決めを実行し、さらに位置決めを行ったミクロ領域からマクロ領域に向って充足すべき位置決めマーカを形成する動作を示す。
【0096】
ステップb1では、位置決めすべき物体27について、対象とする観察領域の最大倍率と最小倍率とにおける座標スケール情報を、入力手段49によって処理回路32へ入力する。ステップb2では、位置決めすべき目標位置が、観察領域の視野内に含まれるように移動手段29を駆動して物体27すなわち観察視野を移動する。
【0097】
ステップb3では、現倍率の観察領域に骨格マーカ2wおよびデータマーカ3wを、たとえばインク噴射装置41によって形成する。ここで形成されるデータマーカ3は、現倍率の座標スケール情報Scwのみである。現倍率は最小倍率であるので、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標スケール情報は形成されない。また隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に形成される位置決めマーカの座標位置Pmw(x,y)は定まっていないので形成されない。
【0098】
ステップb4では、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に移行する。このとき観察手段30を第1CCDカメラ33からSEM35に切換える場合には、物体27を第2容器48から第1容器47の移動手段29上へ移動した後、SEM35に変更する。ステップb5では、移行後の観察領域に骨格マーカ2vおよびデータマーカ3vを、たとえばレーザ加工器42によって形成する。ここで形成されるデータマーカ3vは、現倍率の座標スケール情報Scvである。ステップb6では、移行前の観察領域である隣接する倍率のうち小さい方の倍率の座標スケール情報SMvに関するデータマーカ3を形成する。
【0099】
ステップb7では、現倍率の座標スケール情報Scvが、ステップb1において入力した最大倍率の座標スケール情報と同一であるか否かが判断される。この判断が否定であり、座標スケール情報Scvが、最大倍率の座標スケール情報よりも小さければ、ステップb4に戻り以降のステップが繰返し実行される。
【0100】
ステップb7における判断が肯定であり、現倍率の観察領域の座標スケール情報Scが、ステップb1において入力した最大倍率の座標スケール情報と同一であるとき、ステップb8に進む。ステップb8では、位置決めの目標とする最大倍率の観察領域において位置決めが行われ、位置決めされた物体27の目標位置に対して観察または加工などの作業が実行される。
【0101】
ステップb9では、観察領域に形成されている骨格マーカ2uに基づいて
2次元座標系が決定される。ステップb10では、2次元座標系と現倍率の座標スケール情報Scuとに基づいて、前記目標位置に関する座標位置Pc(x,y)を定め、座標位置情報Pc(x,y)に関するデータマーカ3uを形成する。
【0102】
ステップb11では、位置決めマーカ21を画像処理装置31によって読取り、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の観察領域における座標スケール情報SMuを求める。ステップb12では、座標スケール情報SMuに基づいて、隣接する倍率のうち小さい方の倍率の観察領域に移行する。ステップb13では、移行後の観察領域に形成された位置決めマーカ1を画像処理装置31によって読取り、読取り出力を処理回路32に入力する。
【0103】
ステップb14では、骨格マーカ2vに基づき2次元座標系を定める。ステップb15では、移行前の観察領域である隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域における座標スケール情報Smvおよび座標原点の位置情報Pmv(x,y)を定め、データマーカ3vを形成する。
【0104】
ステップb16では、現倍率の座標スケール情報Scがステップb1において入力した最小倍率の座標スケール情報と同一であるか否かが判断される。この判断が否定であり、座標スケール情報Scが、最小倍率の座標スケール情報よりも大きければ、ステップb11に戻り以降のステップが繰返し実行される。ステップb16の判断が肯定であり、座標スケール情報Scが、最小倍率の座標スケール情報と同一であれば、ステップb17に進む。ステップb17では、位置決めマーカの形成と位置決めに関する一連の動作を完了する。
【0105】
以上のように、位置決め装置26は、種々の装置によって構成されるマーキング手段28を含むので、順次的に異なる倍率に設定される物体表面27aの観察領域に位置決めマーカ1,21,22を形成することができる。また物体表面27aの観察領域に形成された位置決めマーカ1,21,22を画像処理装置31によって読取り、画像処理装置31の出力に応答する処理回路32からの出力によって、観察手段30の観察倍率を拡大または縮小し、移動手段29を駆動して物体27を移動することができる。このことによって、倍率の小さい観察領域においては物体27を広範囲に高速度で移動させることが可能であり、倍率の大きい観察領域においては物体27を高精度で移動して目的とする位置決めをすることができる。
【0106】
また本実施の形態の位置決め装置26は、前述のように物体27の位置決めをすることができるとともに、位置決めされる物体27を加工する加工手段であるレーザ加工器42を含むので、たとえば半導体デバイスの微細部品などの製造時に生じた不具合部分を正確に位置決めし、レーザ加工器42によって補修する補修装置としても用いることができる。微細部品の不具合部分を高精度に位置決めし補修可能にすることによって、製造歩留を向上して製造コストを低減し、資源節減の社会的要請に応えることができる。さらに本位置決め装置26は、物体27の極微細な観察位置を一度観察した後、物体27の他の観察位置または異なる物体の観察をし、再び同物体27の前記観察位置を高精度で位置決めして観察するための再観察装置としても有用である。
【0107】
以上に述べたように、本実施の形態では、個別骨格マーカ4,5,6,7および個別データマーカ11の形態は、円形であるけれども、これに限定されることなく、3角形または方形など円形以外の形態であってもよい。またデータマーカ3の座標位置情報または座標スケール情報は、仮想4角形8の1辺に1つが形成されるけれども、これに限定されることなく、座標位置情報または座標スケール情報は前記1辺に2つ以上が形成されてもよい。また隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察領域に形成される位置決めマーカは、現倍率の観察領域に形成される骨格マーカ2の内方に形成されるけれども、これに限定されることなく、骨格データ2の外方に形成されてもよい。
【0108】
またデータマーカ3は、2値データによって形成されるけれども、これに限定されることなく、その他の手法によって処理されたデータによって形成されてもよい。また位置決めマーカ1は、異なる倍率の観察領域において相互にフラクタルな特性を有して形成されるけれども、これに限定されることなく、倍率の異なる観察領域において相互に異なる形態に形成されてもよい。また補修装置に設けられる加工手段は、レーザ加工器42であるけれども、これに限定されることなく、ボンディング装置などであってもよい。また観察領域の最大または最小倍率の判断は、座標スケール情報を比較することによって行う構成であるけれども、これに限定されることなく、隣接する倍率の座標スケール情報Sm,SMがデータマーカ3内に存在するか否かによって行う構成であってもよい。
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、位置決めマーカは、現倍率の観察すべき領域に関する情報とともに隣接する倍率の観察すべき領域に関する情報も備えるので、位置決めマーカの備える情報に基づいて、隣接する倍率が異なる観察すべき領域の間を移行することができる。特に、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察すべき領域に移行するとき、観察すべき領域の視野が小さくなるけれども、位置決めマーカの備える情報に基づいて観察すべき領域を移行するので、小さい面積である観察すべき領域の視野を確実に捕捉して移行することができる。
【0110】
また位置決めマーカは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在するので、倍率が小さく視野の面積が大きな観察すべき領域では、視野を高速度で広範囲に移動し位置決めをすることができ、倍率が大きく視野の面積が小さな観察すべき領域では、位置決めマーカの位置情報に基づいて高精度で位置決めをすることができる。また物体表面に位置決めマーカが形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができる。
【0111】
また本発明によれば、位置決めマーカが、物体表面に形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができ、位置決めマーカの備える情報に基づいて隣接する倍率の観察すべき領域の間を移行することができる。また位置決めマーカのデータマーカに備わる位置情報は、現倍率における位置決めすべき目標位置に関する情報{Pc(x,y)}であり、スケール情報は、現倍率における座標スケ−ル情報(Sc)と隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標スケール情報(SM)とからなるので、目標とする最大倍率の観察すべき領域であることが認識可能であり、目標とする観察または加工などの高精度の位置決めをすることができる。
【0112】
また本発明によれば、位置決めマーカが、物体表面に形成されるので、相異なる複数の観察装置によって位置決めする場合であっても、装置間の位置情報に誤差が生じることがなく精度のよい位置決めをすることができ、位置決めマーカの備える情報に基づいて隣接する倍率の観察すべき領域の間を移行することができる。また位置決めマーカのデータマーカにおける位置情報は、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}であり、スケール情報は、現倍率における座標スケ−ル情報(Sc)と隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標スケール情報(Sm)とからなるので、目標とする最小倍率の観察すべき領域であることが認識可能であり、観察すべき領域の視野を高速度で広範囲に移動し位置決めをすることができる。
【0113】
また本発明によれば、4個の個別骨格マーカのうち1個が残余の3個の個別骨格マーカとは異なって形成されるので、骨格マーカによって形成される2次元座標のX軸およびY軸を容易に決定することができ、またX軸およびY軸における正および負の方向を容易に決定することができる。
【0114】
また本発明によれば、データマーカは、2値データによって形成される。このことによって、簡易な手段によってデータマーカの認識が可能になるので、たとえば画像処理装置などによってデータマーカの情報を読取ることができ、またたとえばバーコード形成装置などの汎用化されている装置をデータマーカの形成に利用することができる。
【0115】
また本発明によれば、現倍率の観察すべき領域の視野内には、現倍率の位置決めマーカと、隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察すべき領域に形成される位置決めマーカとが含まれる。このことによって、倍率の大きい観察すべき領域における位置情報を、倍率の小さい観察すべき領域から容易に検索することが可能になる。
【0116】
また本発明によれば、個別骨格マーカと個別データマーカとの相対的な配置が、現倍率と隣接する倍率とにおいて共通である。したがって、位置決めマーカの形態が、すべての倍率の観察領域において共通になるので、観察領域において位置決めマーカを認識して画像処理するアルゴリズムを同一にすることができる。
【0117】
また本発明によれば、位置決め装置は、マーキング手段を含むので、順次的に異なる倍率に設定される物体表面の観察すべき領域に位置決めマーカを形成することができる。また物体表面の観察すべき領域に形成された位置決めマーカを読取手段によって読取り、読取手段の出力に応答する制御手段によって、観察手段の観察倍率を拡大または縮小し、移動手段を駆動して物体を移動することができる。このことによって、倍率の小さい観察すべき領域においては物体を広範囲に高速度で移動させることが可能であり、倍率の大きい観察すべき領域においては物体を高精度で移動して目的とする位置決めをすることができる。
【0118】
また本発明によれば、補修装置は、位置決め装置に加えてさらに加工手段を含むので、たとえば半導体デバイスの微細部品などの製造時に生じた不具合部分を正確に位置決めし、加工手段によって補修することができる。このことによって、製造歩留を向上して製造コストを低減し、資源節減の社会的要請に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である位置決めマーカ1の構成を簡略化して示す平面図である。
【図2】図1に示す位置決めマーカ1の分解平面図である。
【図3】位置決めマーカ1,1aが異なる倍率に設定される観察領域の現倍率と隣接する倍率のうち大きい方の倍率とに対応して存在する状態を示す平面図である。
【図4】順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域の概略を示す斜視図である。
【図5】順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域に形成される位置決めマーカ1の階層構造の概略を示す図である。
【図6】順次的に相互に異なる倍率に設定される観察領域に位置決めマーカがそれぞれ形成される状態を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態である位置決めマーカ21の構成を簡略化して示す平面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態である位置決めマーカ22の構成を簡略化して示す平面図である。
【図9】本発明のもう1つの実施の形態である位置決め装置26の構成を簡略化して示す概略系統図である。
【図10】図9に示す位置決め装置26の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。
【図11】図10に示す処理回路32の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】位置決めの目標とする最大倍率の観察領域における位置決めマーカ21を示す平面図である。
【図13】中間倍率の観察領域における位置決めマーカ1を示す平面図である。
【図14】最小倍率の観察領域における位置決めマーカ22を示す平面図である。
【図15】マクロ領域からミクロ領域に向って位置決めする状態を示す平面図である。
【図16】図10に示す処理回路32のもう1つの動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1,21,22 位置決めマーカ
2 骨格マーカ
3 データマーカ
4,5,6,7 個別骨格マーカ
11 個別データマーカ
26 位置決め装置
27 物体
28 マーキング手段
29 移動手段
30 観察手段
31 読取手段
32 制御手段
Claims (9)
- 物体表面の観察すべき領域の倍率を変化して位置決めを行うために用いる位置決めマーカにおいて、
骨格マーカとデータマーカとが組合せて構成され、
骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在し、
骨格マーカは、4個の個別骨格マーカからなり、個別骨格マーカの重心を頂点とする仮想4角形における対向する個別骨格マーカの重心をそれぞれ結ぶ直線は交差し、これら2つの直線によって物体表面の2次元座標を構成し、
データマーカは、個別骨格マーカ相互間に形成される複数の個別データマーカからなり、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標の原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}と、現倍率における座標のスケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標のスケール情報(Sm)と、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標のスケール情報(SM)とを備えることを特徴とする位置決めマーカ。 - 物体表面の観察すべき領域の倍率を変化して位置決めを行うために用いる位置決めマーカにおいて、
骨格マーカとデータマーカとが組合せて構成され、
骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と隣接する小さい方の倍率とに対応して存在し、
骨格マーカは、4個の個別骨格マーカからなり、個別骨格マーカの重心を頂点とする仮想4角形における対向する個別骨格マーカの重心をそれぞれ結ぶ直線は交差し、これら2つの直線によって物体表面の2次元座標を構成し、
データマーカは、個別骨格マーカ相互間に形成される複数の個別データマーカからなり、現倍率における位置決めすべき目標位置に関する情報{Pc(x,y)}と、現倍率における座標のスケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち小さい方の倍率における座標のスケール情報(SM)とを備えることを特徴とする位置決めマーカ。 - 物体表面の観察すべき領域の倍率を変化して位置決めを行うために用いる位置決めマーカにおいて、
骨格マーカとデータマーカとが組合せて構成され、
骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と隣接する大きい方の倍率とに対応して存在し、
骨格マーカは、4個の個別骨格マーカからなり、個別骨格マーカの重心を頂点とする仮想4角形における対向する個別骨格マーカの重心をそれぞれ結ぶ直線は交差し、これら2つの直線によって物体表面の2次元座標を構成し、
データマーカは、個別骨格マーカ相互間に形成される複数の個別データマーカからなり、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標の原点の位置に関する情報{Pm(x,y)}と、現倍率における座標のスケ−ル情報(Sc)と、隣接する倍率のうち大きい方の倍率における座標のスケール情報(Sm)とを備えることを特徴とする位置決めマーカ。 - 4個の個別骨格マーカのうち、1個が残余の3個の個別骨格マーカとは異なって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位置決めマーカ。
- 前記データマーカは、2値データによって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位置決めマーカ。
- 骨格マーカとデータマーカとは、
隣接する倍率のうち大きい方の倍率の観察すべき領域の視野を内包する現倍率の観察すべき領域の視野内に複数個存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の位置決めマーカ。 - 骨格マーカとデータマーカとは、順次的に相互に異なる倍率に設定される観察すべき領域の現倍率と各隣接する倍率とに対応して存在し、
個別骨格マーカと個別骨格マーカ相互間に形成される個別データマーカとの相対的な配置が、現倍率と各隣接する倍率とにおいて共通であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置決めマーカ。 - 請求項1〜7のうちの1つに記載の位置決めマーカを、物体表面の観察すべき領域に形成するマーキング手段と、
物体を移動させる移動手段と、
物体表面の観察すべき領域を倍率可変に観察する観察手段と、
前記位置決めマーカを読取る読取手段と、
読取手段の出力に応答し、移動手段を駆動して物体を移動し、観察手段の観察倍率を拡大または縮小する制御手段とを含むことを特徴とする位置決め装置。 - 請求項8記載の位置決め装置と、
位置決め装置によって位置決めされる物体を加工する加工手段とを含むことを特徴とする補修装置。
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