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JP4611451B1 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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JP4611451B1 JP2010132095A JP2010132095A JP4611451B1 JP 4611451 B1 JP4611451 B1 JP 4611451B1 JP 2010132095 A JP2010132095 A JP 2010132095A JP 2010132095 A JP2010132095 A JP 2010132095A JP 4611451 B1 JP4611451 B1 JP 4611451B1
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Abstract

【課題】通電性能を保持しながら偏摩耗の発生を抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッドゴム10が、非導電性のゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、非導電性のゴムで形成され且つキャップ部12のタイヤ径方向内側に配されるベース部11と、導電性のゴムで形成され且つ接地面からトレッドゴム10の側面又は底面に至る導電部13とを備え、キャップ部12のゴム硬度がベース部11のゴム硬度よりも高く、ベース部11がタイヤ幅方向に分断され、その分断箇所の窪みにキャップ部12を形成するゴムが充填されており、導電部13が、前記分断箇所のタイヤ径方向外側に設けられ且つ接地面からタイヤ径方向内側に延びる第1部分13aと、第1部分13aに連続して設けられ且つタイヤ幅方向に延びてトレッドゴム10の側面又は底面に至る第2部分13bとを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる空気入りタイヤに関する。
近年、車両の低燃費化と関係が深い転動抵抗の低減や、濡れた路面での制動性能(WET制動性能)の向上を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合とした空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるトレッドゴムは、カーボンブラック高配合としたものに比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズ等の不具合を生じ易いという問題があった。
そこで、シリカ等を配合した非導電性のトレッドゴムに、カーボンブラック等を配合した導電部を設けることで電気抵抗対策を講じた空気入りタイヤが開発されている。例えば下記特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、非導電性のトレッドゴムにタイヤ径方向に延びる導電部を設け、その導電部を通じて静電気を路面に放出するようにしている。この導電部は、接地面からトレッドゴムの内部を通って底面にまで到達し、静電気を放出するための導電経路を構成する。
下記特許文献2,3に記載の空気入りタイヤでは、ユニフォミティの悪化を防ぐことを目的として、非導電性のトレッドゴムにタイヤ幅方向に延びる導電部を設けている。この導電部は、リムと電気的に導通するサイドウォールゴム又はカーカスのトッピングゴムから、キャップ部とベース部との間をタイヤ幅方向に延び、タイヤ赤道の近傍で傾斜して接地面に露出する。ところが、この構造では、トレッドゴムの剛性の不均一化を引き起こし、偏摩耗を発生する傾向にあることが判明した。
即ち、上記のトレッドゴムでは、導電部が比較的密集し且つ接地面に近くなるタイヤ赤道の周辺部位が優先的に摩耗し、いわゆるセンター摩耗を生じやすいことが分かった。また、本出願人による下記特許文献4に記載の空気入りタイヤでは、摩耗の初期段階から通電性能を確実に発揮しうるように、導電部が枝分かれする構造を採用しており、かかる構造においては、導電部の密集する度合いが増すために偏摩耗の発生が顕著化する恐れがある。
特開平10−81110号公報 特開2009−126291号公報 国際公開第2009/066605号 特開2009−161070号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通電性能を保持しながら偏摩耗の発生を抑制することができる空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部に配されるトレッドゴムが、非導電性のゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、非導電性のゴムで形成され且つ前記キャップ部のタイヤ径方向内側に配されるベース部と、導電性のゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの側面又は底面に至る導電部とを備え、前記キャップ部のゴム硬度が前記ベース部のゴム硬度よりも高く、前記ベース部がタイヤ幅方向に分断され、その分断箇所の窪みに前記キャップ部を形成するゴムが充填されており、前記導電部が、前記分断箇所のタイヤ径方向外側に設けられ且つ接地面からタイヤ径方向内側に延びる第1部分と、前記第1部分に連続して設けられ且つタイヤ幅方向に延びて前記トレッドゴムの側面又は底面に至る第2部分とを有するものである。
本発明の空気入りタイヤでは、接地面からトレッドゴムの側面又は底面に至る導電部を通じて、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる。しかも、導電部の第1部分のタイヤ径方向内側では、ベース部をタイヤ幅方向に分断させていて、その分断箇所の窪みに、ベース部よりもゴム硬度の高いキャップ部を形成するゴムを充填しているため、該部位での剛性を高めて早期の摩耗を抑制できる。これにより、通電性能を保持しながら、偏摩耗の発生を抑えて摩耗性能を確保することができる。
また、トレッドゴムの表面に金型を押し当ててトレッドパターンを形成する際には、溝底の周辺でキャップ部の厚みが小さくなり、圧迫された導電部の第2部分が断線する恐れがあるが、本発明では、キャップ部のゴム硬度をベース部のゴム硬度よりも高くしているため、そのような第2部分の断線を防ぎやすくなり、通電性能を保持するのに有利な構造となる。
本発明では、前記導電部の第1部分が、前記ベース部の外周面からタイヤ径方向外側に向かって延びるものが好ましい。かかる構成によれば、ベース部の分断箇所の窪みに導電部の第1部分が入り込みにくくなり、導電部を無駄に迂回させることなく導電経路を短く形成できるため、通電性能を保持するのに有利な構造となる。
本発明では、前記ベース部の分断幅が、前記第1部分の幅の±10mmの範囲内にあるものが好ましい。かかる構成によれば、導電部によって摩耗が促進される領域に、キャップ部を形成するゴムを的確に配して、偏摩耗を効果的に抑制することができる。
本発明では、前記トレッドゴムにタイヤ周方向に沿って延びる主溝が設けられ、前記主溝の形成箇所に対応して前記ベース部が分断されており、その分断箇所の窪みに前記キャップ部を形成するゴムが充填されているものでもよい。かかる構成によれば、パターン剛性が低下しがちな主溝の形成箇所に、キャップ部を形成する比較的硬質のゴムが多く配されるため、トレッドゴムの偏摩耗を抑制して摩耗性能を高めることができる。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図 図1の要部拡大図 トレッドパターンを形成する様子を示す要部拡大図 本発明の別実施形態に係る導電経路を示す要部拡大図 トレッドパターンを形成した後のトレッド部を示す断面図 トレッドゴムの単体を概略的に示す断面図 トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッド部を示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図 本発明の別実施形態に係るトレッドゴムを示す断面図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビード1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカス層7が配され、その端部がビード1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成され、該カーカスプライは、タイヤ赤道Cに対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内周には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配されている。
カーカス層7のビード部1外周には、不図示のリムに接するリムストリップゴム4が配されている。また、カーカス層7のサイドウォール部2外周には、サイドウォールゴム9が配されている。本実施形態では、カーカスプライのトッピングゴム、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9が、それぞれ導電性のゴムで形成されている。
カーカス層7のトレッド部3外周には、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6が配されている。各ベルトプライは、タイヤ赤道Cに対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト層6の外周には、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆してなるベルト補強層8を配しているが、必要に応じて省略しても構わない。
トレッド部3に配されるトレッドゴム10は、非導電性のゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、非導電性のゴムで形成され且つキャップ部12のタイヤ径方向内側に配されるベース部11と、導電性のゴムで形成され且つ接地面からトレッドゴム10の底面に至る導電部13とを備える。本実施形態では、トレッドゴム10の両端部にサイドウォールゴム9の端部を載せた、いわゆるサイドオントレッド構造を採用している。
ここで、導電性のゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm未満であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。また、非導電性のゴムとは、体積抵抗率が10Ω・cm以上であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合することにより作製される。
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
導電部13を形成する導電性のゴムは、導電部13の耐久性を高めて通電性能を向上する観点から、窒素吸着比表面積:NSA(m/g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1900以上、好ましくは2000以上であって、且つ、ジブチルフタレート吸油量:DBP(ml/100g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1500以上、好ましくは1700以上を満たす配合であることが好ましい。NSAはASTM D3037−89に、DBPはASTM D2414−90に準拠して求められる。
このタイヤTでは、ベース部11とキャップ部12の両方を非導電性のゴムで形成しているため、非導電性のトレッドゴムを使用することによる改善効果(トレッドゴム10をシリカ高配合とした場合には燃費性能やWET制動性能の向上効果)を良好に高められる。導電部13は、タイヤ赤道Cの近傍で傾斜して接地面に露出するとともに、キャップ部12とベース部11との間をタイヤ幅方向に延びてカーカス層4に接している。車体やタイヤで発生した静電気は、リム、リムストリップゴム4、サイドウォールゴム9、カーカスプライのトッピングゴム及び導電部13を介した導電経路を通じて路面に放出される。
キャップ部12のゴム硬度Hcはベース部11のゴム硬度Hbよりも高く、ゴム硬度Hcは67±5°、ゴム硬度Hbは57±5°が例示される。これらの硬度差Hc−Hbは、1〜20°の範囲内にあることが好ましく、3〜15°の範囲内にあることがより好ましい。この硬度差が1°未満であると、後述する摩耗性能の改善効果が小さくなる傾向にあり、この硬度差が20°を超えると、キャップ部12が硬過ぎて又はベース部11が軟らか過ぎて他のタイヤ性能を損なう恐れがある。上記ゴム硬度の数値は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した値である。
このトレッドゴム10では、図2に拡大して示すように、ベース部11がタイヤ幅方向に分断され、その分断箇所の窪み14にキャップ部12を形成するゴムが充填されている。導電部13は、その分断箇所のタイヤ径方向外側に設けられ且つ接地面からタイヤ径方向内側に延びる第1部分13aと、その第1部分13aに連続して設けられ且つタイヤ幅方向に延びてトレッドゴム10の底面に至る第2部分13bとを有する。
かかる構成により、第1部分13aが比較的密集し且つ接地面に近くなるタイヤ赤道Cの周辺部位に、キャップ部12を形成するゴム硬度の高いゴムが多く配され、該部位での剛性を高めて早期の摩耗を抑制できる。つまり、このトレッドゴム10は、キャップ部12の局所的なボリューム増によって、第1部分13aによる剛性低下を相殺するものであり、それによりトレッドゴム10の剛性を均一化して、偏摩耗の発生を抑制することができる。同時に、キャップ部12のボリューム増によりコーナリングパワーが増すため、乾燥路面での操縦安定性能の向上にも資する。
また、図3に示すように、トレッドゴム10の表面に金型40を押し当ててトレッドパターンを形成するに際しては、溝底の周辺でキャップ部12の厚みが小さくなるものの、このトレッドゴム10では、キャップ部12が硬いために第2部分13bの断線を防ぎやすくなり、通電性能を良好に保持することができる。
ベース部11は、タイヤのユニフォミティを確保する観点から、本実施形態のようにタイヤ赤道Cを含む中央域にて分断され、該中央域に導電部13の第1部分13aが設けられることが好ましい。同じくユニフォミティを高めるうえでは、ベース部11の分断が左右均等に、具体的には、分断したベース部11の端部から窪み14までの左右の幅寸法の比率11WL/11WRが1.0±0.2となることが好ましい。
ベース部11の分断幅14Wは、トレッドゴム10の幅10Wの2〜10%であることが好ましく、これが2%未満であると、偏摩耗の抑制効果が小さくなる傾向にあり、10%を超えると、第1部分13aが過度に幅広になると共に、転がり抵抗が大きくなる傾向にある。また、偏摩耗を的確に抑制するうえで、分断幅14Wは、第1部分13aの幅13Wの±10mmの範囲内にあることが好ましい。この幅13Wは、ベース部11の外周面から接地面に至るまでの区間で計測され、本実施形態では第1部分13aが傾斜する区間となる。
本実施形態では、第1部分13aがベース部11の外周面からタイヤ径方向外側に向かって延びているため、窪み14に第1部分13aが入り込みにくくなり、導電部13を無駄に迂回させることなく導電経路を短く形成できる。これに対し、図4のように、第1部分13aが窪み14の上方からタイヤ径方向外側に延びていると、特にトレッドパターンを形成する際に第1部分13aが窪み14に入り込むことがあり、導電部13が無駄に遠回りして導電経路が複雑になる。
本実施形態では、第1部分13aが窪み14よりも幅広で、即ち幅13Wが分断幅14Wよりも大きく、窪み14ではなくベース部11のタイヤ径方向外側にて導電部13が接地面に露出する。導電部13は、第1部分13aの幅13Wを適度に有しながら、その先端部をタイヤ幅方向に延ばしており、接地面上での露出頻度を確保してパターンデザインの自由度を高めている。それでいて、第1部分13aは、導電経路が冗長にならないよう、ベース部11の分断箇所のタイヤ径方向外側で直線状に傾斜して延びている。
導電部13が露出する接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド部の表面を指す。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"となる。
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用である場合には内圧180KPaの対応荷重の85%とする。
導電部13は、リム又はリムから通電可能なゴムに接続されるように設けられ、静電気を路面に放出するための導電経路を構成する。このタイヤTにおいて、カーカスプライのトッピングゴム、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9のうち、何れか又は全てを非導電性のゴムで形成することも可能であり、その場合には、サイドウォールゴム9、リムストリップゴム4、或いはリムに接触するリムストリップゴム4の外壁面にまで導電部13を延長させればよい。また、ベルト層6やベルト補強層8のトッピングゴムを非導電性のゴムで形成することも可能である。
トレッドゴム10の表面には、図3のように金型40が押し当てられ、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じた各種のトレッドパターンが形成される。図5に示すように、トレッドパターンを形成したトレッドゴム10には、タイヤ周方向に沿って延びる主溝15が設けられる。第1部分13aが無駄に迂回しないように、主溝15の形成箇所は、ベース部11の分断箇所のタイヤ径方向外側を避け、分断幅14Wの区間から外れていることが好ましく、幅13Wの区間よりもタイヤ幅方向外側に位置することがより好ましい。
空気入りタイヤTを製造する方法の一例について、図6,7を参照しながら簡単に説明する。図6は、トレッドゴム10を単体で示した断面図である。記載を省略しているが、実際にはトレッドゴム10の内周にベルト層6とベルト補強層8が配設されている。このトレッドゴム10を、カーカス層7やサイドウォールゴム9など他のタイヤ構成部材と組み合わせることにより、図1に示した空気入りタイヤTが製造できる。このタイヤTは、トレッドゴム10に関する点を除けば、従来のタイヤ製造工程と同様にして製造できるため、トレッドゴムの成形工程を中心に説明する。
まず、図7(A)に示すように、成形ドラムの外周面などで構成される成形面41に非導電性のゴムを貼り付け、タイヤ幅方向に分断されたベース部11を成形する。このベース部11の成形は、押出成形法やリボン巻き工法により行うことができる。押出成形法とは、所定の断面形状を有する帯状ゴム部材を押出成形し、その端部同士をジョイントして環状に成形する工法であり、リボン巻き工法とは、小幅のゴムリボンをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けて所望の断面形状を成形する工法である。
次に、図7(B)に示すように、非導電性のゴムによりキャップ部12の半分12Lを成形する。このとき、キャップ部12を形成するゴムを窪み14に充填するとともに、後工程で導電部13を載せるための斜面16を、ベース部11の分断箇所のタイヤ径方向外側に形成する。斜面16は、分断されたベース部11の片方の外周面から他方のタイヤ径方向外側にまで延びる。キャップ部12の成形は、押出成形法又はリボン巻き工法により行うことができる。
続いて、図7(C)に示すように、導電性のゴムにより導電部13を成形する。導電部13は、接地面から斜面16とベース部11の上を通ってトレッドゴム10の底面に至るように延在し、第1部分13aが斜面16に載り、それに連続する第2部分13bがベース部11に載る。導電部13の成形は、シート状ゴム部材の配置により、若しくはリボン巻き工法により行われ、それらを併用することも可能である。
導電部13を形成した後は、図7(D)に示すように、非導電性のゴムでキャップ部12の残り半分12Rを成形することにより、図6に示したトレッドゴム10が得られる。この例では、第2部分13bがトレッドゴム10の底面に到達しているが、キャップ部12の端部をベース部11の端部に合わせて、第2部分13bをトレッドゴム10の側面に露出させ、そのうえでサイドウォールゴム9などに接触させるようにしても構わない。
図8に示すように、本発明の別実施形態に係るトレッドゴム10では、主溝15の形成箇所に対応してベース部11が分断されており、その分断箇所の窪み17にキャップ部12を形成するゴムが充填されている。主溝15の形成箇所では、パターン剛性が低下して摩耗が早まる傾向にあるが、このようにキャップ部12を形成する硬質のゴムを多く配することにより、トレッドゴム10の摩耗の均一化を促して偏摩耗の発生を抑制できる。このトレッドゴム10を成形する際には、ベース部11の成形後であって導電部13の成形前に、キャップ部12を形成するゴムを窪み17に充填すればよい。
また、図8の例では、主溝15の溝底の周辺にキャップ部12を形成するゴムが多く配されるため、図3のようにトレッドパターンを形成するに際し、金型40による圧迫に抗して第2部分13bの断線を効果的に防止でき、通電性能を保持するのに有利な構造となる。更に、主溝15の溝底にてキャップ部12の厚みを確保できることから、経年劣化により溝底に生じるクラック(オゾンクラック)を抑制するうえでも有効である。かかる作用効果を確実に奏するうえで、主溝15下におけるベース部11の分断幅17Wは、主溝15の溝幅15Wと同等以上であることが好ましい。
[別実施形態]
(1)前述の実施形態では、タイヤ赤道Cを含む中央域にてベース部11を分断し、その中央域に導電部13の第1部分13aを設けた例を示したが、本発明では、図9に示すように中央域からオフセットした箇所でベース部11を分断し、その分断箇所のタイヤ径方向外側に第1部分13aを設けても構わない。
(2)本発明では、図10に示すように、導電部13がタイヤ径方向外側に延びる枝部分13cを有する構造でもよい。かかる場合には、密集した導電部13により偏摩耗の発生が顕著化する恐れがあるため、本発明の構造が特に有用となる。第1部分13aから延びる枝部分13cは、接地面に少なくとも1本が露出することが好ましく、それによって摩耗の初期段階から導電部13が接地面に露出しやすくなり、通電性能を有効に確保できる。第2部分13bから延びる枝部分13cは、キャップ部12の内部で終端しているものの、トレッドゴム10の摩耗に伴って接地面に露出し、導電部13と路面との接触頻度を確保して通電性能を摩耗末期まで維持しやすくなる。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。評価に供したタイヤのサイズは245/55R19であり、トレッドゴムを構成するキャップ部のゴム硬度Hcは67°、ベース部のゴム硬度Hbは57°である。但し、比較例3では、ゴム硬度Hc,Hbをそれぞれ62°としている。
(1)通電性能
リムに装着したタイヤに所定の荷重を負荷し、リムを支持する軸からタイヤが接地する金属板に印加電圧(500V)をかけて電気抵抗値を測定した。
(2)摩耗性能
12000kmの距離を走行後、タイヤ幅方向の中央側と外側とで主溝の摩耗量を測定し、それらの比(外側/中央側)を評価した。数値が1.0に近いほど摩耗が均一化され、摩耗性能に優れていることを示す。
(3)ユニフォミティ(UF)
JISD4233に規定する試験方法に基づいて、LFV(ラテラルフォースバリエーション)を測定し、タイヤのユニフォミティを評価した。具体的には、空気圧200kPaとしたタイヤを荷重640Nが負荷されるように回転ドラムに押し付け、両軸間隔を一定に保持しながらタイヤを回転させたときに発生するタイヤ横方向の力の変動量を測定した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が大きいほどユニフォミティに優れていることを示す。
(4)コーナリングパワー(CP)
フラットベルト式コーナリング試験機を用いてコーナリングパワーを測定した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が大きいほどコーナリングパワーが高いことを示す。
(5)操縦安定性能(Dry)
実車に装着して乾燥路面を走行し、ドライバーの官能試験により評価した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が大きいほど操縦安定性能に優れていることを示す。
(6)転がり抵抗(RR)
転がり抵抗試験機により転がり抵抗を測定し、その逆数にて評価した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が大きいほど転がり抵抗に優れていることを示す。
ベースを分断しないトレッドゴムにおいて、導電部を備えないものを比較例1、図6のような導電部を備えたものを比較例2とした。更に、トレッドゴムのゴム硬度以外は実施例1と同じであるものを比較例3とした。また、ベース部を分断したトレッドゴムにおいて、図6のような導電部を備えたものを実施例1,2、図4のような導電部を備えたものを実施例3、図9のように導電部をオフセットしたものを実施例4、図8のように主溝下でベース部を分断したものを実施例5とした。分断幅14Wは、比較例3及び実施例1,2,4,5で15mm、実施例3で30mmとした。幅13Wは、比較例2,3及び実施例1,3,4,5で25mm、実施例2で45mmとした。評価結果を表1に示す。
Figure 0004611451
表1に示すように、導電部を備えていない比較例1では、通電性能が付与されていない。また、ベース部を分断していない比較例2や、キャップ部がベース部と同じゴム硬度である比較例3では、通電性能が付与されているものの、センター摩耗を生じて摩耗性能が損なわれている。これらに対し、実施例1〜5では、通電性能を保持しながら偏摩耗の発生を抑制することができている。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 リムストリップゴム
7 カーカス層
9 サイドウォールゴム
10 トレッドゴム
11 ベース部
12 キャップ部
13 導電部
13a 第1部分
13b 第2部分
13W 第1部分の幅
14 窪み
14W ベース部の分断幅
15 主溝
17 窪み

Claims (4)

  1. 一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッド部に配されるトレッドゴムが、非導電性のゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、非導電性のゴムで形成され且つ前記キャップ部のタイヤ径方向内側に配されるベース部と、導電性のゴムで形成され且つ接地面から前記トレッドゴムの側面又は底面に至る導電部とを備え、
    前記キャップ部のゴム硬度が前記ベース部のゴム硬度よりも高く、前記ベース部がタイヤ幅方向に分断され、その分断箇所の窪みに前記キャップ部を形成するゴムが充填されており、
    前記導電部が、前記分断箇所のタイヤ径方向外側に設けられ且つ接地面からタイヤ径方向内側に延びる第1部分と、前記第1部分に連続して設けられ且つタイヤ幅方向に延びて前記トレッドゴムの側面又は底面に至る第2部分とを有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記導電部の第1部分が、前記ベース部の外周面からタイヤ径方向外側に向かって延びる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ベース部の分断幅が、前記第1部分の幅の±10mmの範囲内にある請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記トレッドゴムにタイヤ周方向に沿って延びる主溝が設けられ、前記主溝の形成箇所に対応して前記ベース部が分断されており、その分断箇所の窪みに前記キャップ部を形成するゴムが充填されている請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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