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JP4608062B2 - バニシングドリル - Google Patents

バニシングドリル Download PDF

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JP4608062B2
JP4608062B2 JP2000257588A JP2000257588A JP4608062B2 JP 4608062 B2 JP4608062 B2 JP 4608062B2 JP 2000257588 A JP2000257588 A JP 2000257588A JP 2000257588 A JP2000257588 A JP 2000257588A JP 4608062 B2 JP4608062 B2 JP 4608062B2
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和男 早川
康友 高橋
隆 前田
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ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ドリル本体の先端に半径方向に伸びた一対の主切刃が設けられると共に、この一対の主切刃によって切削された切屑を排出する一対の切屑排出溝がドリル本体の先端から後方に向けて設けられ、この一対の切屑排出溝に対してドリル本体の回転方向前方及び後方にそれぞれマージンが形成されたバニシングドリルに係り、特に、鋳物やアルミニウム材料等の被削材に対して、穴径の精度や穴の仕上面の面粗度等が良好な穴を安定して加工できるようにした点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より穴加工を行うにあたり、穴径の精度や穴の仕上面が良好な穴を加工するためにバニシングドリルが使用されていた。
【0003】
ここで、このようなバニシングドリルとして、従来においては、一般に鋼や超硬合金で、図1に示すように、ドリル本体10の先端に半径方向に伸びた一対の主切刃11a,11bを設けると共に、この一対の主切刃11a,11bによって切削された切屑を排出する一対の切屑排出溝12a,12bをドリル本体10の先端から後方に向けて設け、この一対の切屑排出溝12a,12bに対して、ドリル本体10の回転方向前方及び後方にそれぞれマージン13a,14a、13b,14bを形成したものが使用されていた。
【0004】
しかし、上記のように鋼や超硬合金で構成されたバニシングドリルを用いて鋳物やアルミニウム材料等の穴加工を行った場合、このバニシングドリルにおける主切刃11a,11bやマージン13a,14a、13b,14bの摩耗が早くなり、また高速で穴加工を行った場合に、切屑が主切刃11a,11bやマージン13a,14a、13b,14b等に溶着して、穴径の精度や仕上面の状態が悪くなり、長期にわたって安定した穴加工が行えないという問題があった。
【0005】
このため、近年においては、図2(A),(B)に示すように、各切屑排出溝12a,12bの先端部に、鋼や超硬合金で構成された基材15aにダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体15bを積層させたチップ15をロウ付けして、主切刃11a,11bの外周側の部分及びこの主切刃11a,11bの外周側におけるマージン14a,14bの先端側の部分をダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体15bで構成したバニシングドリルが用いられるようになった。
【0006】
しかし、このように切屑排出溝12a,12bの先端部にチップ15をロウ付けする場合、ドリル本体10の径が小さくなると、チップ15をロウ付けする面積が小さくなって、チップ15を切屑排出溝12a,12bの先端部に取り付ける強度が弱くなり、このチップ15がドリル本体10から外れたりするという問題があった。
【0007】
また、このようなバニシングドリルを長く使用すると、チップ15に設けた高硬度焼結体15bの部分と、鋼や超硬合金で構成されたドリル本体10の部分とにおける摩耗に差が生じて、チップ15を取り付けた部分に段差が生じ、この部分に切屑が詰まって、良好な切削が行えなくなったり、バニシングドリルが欠損する等の問題が生じた。
【0008】
さらに、切屑排出溝12a,12bとチップ15に設けた高硬度焼結体15bの部分とを揃えるようにダイヤモンドホイール等で切削する場合、ダイヤモンドホイールに目詰まりをおこし、高硬度焼結体15bの部分の面粗度が悪くなったり、高硬度焼結体15bで構成された主切刃11a,11bがだれて丸みを生じ、良好な切削が行えなくなる等の問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ドリル本体の先端に半径方向に伸びた一対の主切刃が設けられると共に、この一対の主切刃によって切削された切屑を排出する一対の切屑排出溝がドリル本体の先端から後方に向けて設けられ、この一対の切屑排出溝に対してドリル本体の回転方向前方及び後方にそれぞれマージンが形成されたバニシングドリルを用いて穴加工を行う場合における上記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
すなわち、この発明におけるバニシングドリルにおいては、鋳物やアルミニウム材料等の被削材に対して高速で穴加工を行う場合等において、穴径の精度や、穴の仕上面の面粗度が良好な穴が安定して加工できるようにすることを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明においては、上記のような課題を解決するため、ドリル本体10の先端に半径方向に伸びた一対の主切刃11a,11bが設けられると共に、この一対の主切刃11a,11bによって切削された切屑を排出する一対の切屑排出溝12a,12bがドリル本体10の先端から後方に向けて設けられ、この一対の切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方及び後方にそれぞれマージン13a,14a、13b,14bが形成されてなるバニシングドリルにおいて、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素から選択される高硬度焼結体20を、上記のドリル本体10の少なくとも先端部においてその中心を通るようにして直径方向に連続して設け、この高硬度焼結体20により上記の主切刃11a,11b全体及び主切刃11a,11bの外周側で切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側における各マージン14a,14bを構成すると共に、主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角が切屑排出溝12a,12bの軸方向の捩じれ角よりもマイナスになるようにしたのである。
【0012】
ここで、この発明におけるバニシングドリルのように、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素から選択される高硬度焼結体20を、ドリル本体10の少なくとも先端部においてその中心を通るようにして直径方向に連続して設け、この高硬度焼結体20により主切刃11a,11b全体及び主切刃11a,11bの外周側で切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側におけるマージン14a,14bを形成すると、鋼や超硬合金で構成された基材15aにダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体15bを積層させたチップ15を切屑排出溝12a,12bの先端部にロウ付けさせた従来のバニシングドリルのように、ドリル本体10の径が小さくなった場合に、チップ15の取付強度が低下して、チップ15が切屑排出溝12a,12bの外れるということがなく、高硬度焼結体20がドリル本体10に強固に保持されるようになる。
【0013】
また、この発明におけるバニシングドリルにおいては、高硬度焼結体20をドリル本体10の少なくとも先端部においてその中心を通るようにして直径方向に連続して設けているため、主切刃11a,11b全体及び主切刃11a,11bの外周側で切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側におけるマージン14a,14bが高硬度焼結体20で構成されると共に、チゼルの部分や切屑排出溝12a,12bの先端側の部分が高硬度焼結体20で構成されるようになる。
【0014】
そして、この発明のバニシングドリルを用いて鋳物やアルミニウム材料等の被削材に穴加工を行うようにした場合、主切刃11a,11bにおける切削性が高まると共に、切屑が詰まったりするのが抑制され、さらにこのバニシングドリルの各部分における摩耗も少なくなって、良好な穴加工が安定して行えるようになる。
【0015】
また、この発明におけるバニシングドリルのように、主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角を切屑排出溝12a,12bの軸方向の捩じれ角よりもマイナスになるようにすると、ドリル本体10における切屑排出溝12a,12bの研削加工とは別に高硬度焼結体20を研削加工することができ、高硬度焼結体20の部分の面粗度が悪くなったり、高硬度焼結体20で構成された主切刃11a,11bがだれるのが防止され、穴径の精度や穴の仕上面の面粗度が良好な穴が得られるようになる。
【0016】
また、この発明におけるバニシングドリルにおいて、さらに切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方側におけるマージン13a,13bの少なくとも先端部を高硬度焼結体20で構成すると、穴径の精度や穴の仕上面の面粗度がさらに向上される。
【0017】
また、この発明におけるバニシングドリルにおいて、上記の切屑排出溝12a,12bをドリル本体10の軸方向に沿って直線状に設けると共に、主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角を−10’〜−5°の範囲にすると、切屑排出溝12a,12bによってドリル本体10の剛性が低下するのが少なくなると共に、主切刃11a,11bにおける切削性が低下するのも抑制され、精度の良い穴加工がスムーズに行えるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施形態に係るバニシングドリルを添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0019】
この実施形態におけるバニシングドリルにおいては、図3(A)〜(C)に示すように、先端側が円錐状に形成される一方、後端側が中心に向かってテーパー状に切欠された超硬合金からなるブランクス10aにおいて、その円錐状になった先端側の中心を通るようにして直径方向に連続してダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体20を設けたものを用いるようにした。
【0020】
そして、このブランクス10aのテーパー状に切欠された後端側を超硬合金からなるシャフト10bの先端側にロウ付けした後、これに対してダイヤモンドホイール等を用いて研削加工し、この実施形態のバニシングドリルを作製した。
【0021】
ここで、この実施形態のバニシングドリルにおいては、図4(A),(B)に示すように、シャフト10bにブランクス10aがロウ付けされたドリル本体10の先端に上記の高硬度焼結体20が存在し、このドリル本体10の先端において半径方向に伸びた一対の主切刃11a,11bを設け、この一対の主切刃11a,11b全体を高硬度焼結体20で構成した。
【0022】
また、この一対の主切刃11a,11bによって切削された切屑を排出する一対の切屑排出溝12a,12bを、捩じれ角がほぼ0°になるようにドリル本体10の軸方向に沿ってその先端から後方に向けて真っすぐに設け、この一対の切屑排出溝12a,12bの先端側において上記の高硬度焼結体20が露出するようにした。
【0023】
また、この一対の切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方及び後方にそれぞれマージン13a,14a、13b,14bを形成し、上記の主切刃11a,11bの外周側で切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側におけるマージン14a,14bの先端側の部分を上記の高硬度焼結体20で構成した。
【0024】
そして、このようなバニシングドリルを研削加工して作製するにあたっては、ドリル本体10の軸方向に沿ってダイヤモンドホイールにより、上記のシャフト10b及びブランクス10aの超硬合金の部分に上記の切屑排出溝12a,12bの溝加工を行い、ブランクス10aにおける上記の高硬度焼結体20の面が現れた時点で、ドリル本体10の先端側からダイヤモンドホイールにより高硬度焼結体20を研削して、ドリル本体10の先端に上記の主切刃11a,11bを形成すると共に、図5に示すように、捩じれ角がほぼ0度になった切屑排出溝12a,12bに対して、主切刃11a,11bの軸方向のすくい角θがマイナスになるようにした。
【0025】
ここで、このように捩じれ角がほぼ0度になった切屑排出溝12a,12bに対して、主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角θがマイナスになるようにすると、高硬度焼結体20がドリル本体10と共削りされるのを防止することができ、主切刃11a,11bがだれるのが防止されて、シャープな主切刃11a,11bが形成されるようになると共に、切屑排出溝12a,12bと連続する高硬度焼結体20の部分の面粗度も良くなった。
【0026】
また、この主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角θを−10’〜−5°の範囲にすると、主切刃11a,11bの切削性が低下するのも抑制され、穴径の精度や穴の仕上面の面粗度が良好な穴が得られるようになった。
【0027】
また、この実施形態のバニシングドリルにおいて、上記のように主切刃11a,11bを設けるにあたり、主切刃11a,11bのオフセット量aが小さすぎると、ドリル先端中心部が欠損しやすくなり、またバニシングドリルの芯厚が薄くなって剛性が不足し、穴加工の精度が悪くなる一方、オフセット量aが大きすぎると、切屑排出溝12a,12bが小さくなって切屑の排出が悪くなり、切削された穴の面粗度が低下すると共に、切削抵抗も大きくなって、穴加工の精度が悪くなるため、図6に示すように、主切刃11a,11bのオフセット量aをドリル本体10の直径Dの0.5〜5.0%の範囲にすることが好ましかった。
【0028】
また、この実施形態のバニシングドリルにおいて、その先端部分にシンニングを行うにあたり、シンニング部分の芯越え量Eが小さすぎると、切屑の排出性が悪くなり、切削された穴の面粗度が低下する一方、シンニング部分の芯越え量Eが大きすぎると、バニシングドリルの剛性が不足して、穴加工の精度が悪くなるため、シンニング部分の芯越え量Eをドリル本体10の直径Dの3〜20%の範囲にすることが好ましかった。
【0029】
さらに、この実施形態のバニシングドリルにおいて、上記の各切屑排出溝12a,12bの開き角γが大きくなりすぎると、バニシングドリルの剛性が不足して、穴加工の精度が悪くなる一方、開き角γが小さくなりすぎると、切屑の排出性が悪くなり、切削された穴の面粗度が低下するため、各切屑排出溝12a,12bの開き角γを85〜110°の範囲にすることが好ましかった。
【0030】
なお、この実施形態のバニシングドリルにおいては、前記の図3(A)〜(C)に示すように、円錐状になった先端側の中心を通るようにして直径方向に連続してダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体20を設けただけのブランクス10aを用い、主切刃11a,11bの外周側で切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側におけるマージン14a,14bの先端側の部分だけを高硬度焼結体20で構成するようにしたが、図8に示すように、切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方側におけるマージン13a,13bの先端側の部分も高硬度焼結体20で構成することも可能である。
【0031】
ここで、図8に示すように、切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方側におけるマージン13a,13bの先端側の部分も高硬度焼結体20で構成するにあたっては、例えば、図7(A),(B)に示すように、円錐状になった先端側の中心を通るようにして直径方向に連続してダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体20を設けると共に、この直径方向に連続した高硬度焼結体20と直交する直径方向の外周部にも部分的に高硬度焼結体20を設けたブランクス10aを用いるようにしたり、また切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方側におけるマージン13a,13bの先端側の部分に高硬度焼結体20をロウ付けさせるようにすることができる。
【0032】
そして、このように切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方側及び後方側における各マージン13a,13b、14a,14bを高硬度焼結体20で構成すると、さらに高精度で面粗度のよい穴加工が行えるようになる。
【0033】
また、図9(A),(B)に示すように、ドリル本体10の軸方向に貫通した2つの案内穴16を設け、切削時に各案内穴16を通して油等の冷却用媒体を供給させることも可能である。なお、このようにドリル本体10の軸方向に貫通した案内穴16を設けるにあたっては、例えば、案内穴16が設けられたシャフト10bの先端側にブランクス10aをロウ付けした後、このブランクス10aの部分に、細穴放電加工によりシャフト10bに設けられた案内穴16と連続するようにして案内穴16を設けるようにすることができる。
【0034】
【実施例】
次に、この発明の実施例におけるバニシングドリルを用いて穴加工を行った場合に、穴径の精度や穴の面粗度のよい穴の加工が安定して行えることを比較例を挙げて明らかにする。
【0035】
(実施例1)
実施例1のバニシングドリルにおいては、上記の実施形態のバニシングドリルにおいて、図3(A)〜(C)に示すブランクス10aにおいて、円錐状になった先端側の中心を通るようにして直径方向に連続してダイヤモンドからなる高硬度焼結体20を設けるにあたり、この高硬度焼結体20の幅を0.65mmにした。
【0036】
そして、上記の実施形態に示すように、このブランクス10aを超硬合金からなるシャフト10bの先端側にロウ付けした後、ダイヤモンドホイールを用いて研削加工してバニシングドリルを作製した。
【0037】
ここで、この実施例1のバニシングドリルにおいては、ドリル本体10の外径Dが8.00mm、各切屑排出溝12a,12bの捩じれ角が0°、各主切刃11a,11bのすくい角θが−1°になるようにし、各主切刃11a,11b及び切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側におけるマージン14a,14bの先端側の部分をダイヤモンドからなる高硬度焼結体20で構成した。
【0038】
また、主切刃11a,11bのオフセット量aをドリル本体10の直径Dの1.9%の0.15mmに、シンニング部分の芯越え量Eをドリル本体10の直径Dの10%の0.8mmに、各切屑排出溝12a,12bの開き角γを90°にした。
【0039】
(比較例1)
比較例1においては、上記の実施例1のバニシングドリルにおいて、ダイヤモンドホイールを用いて研削加工するにあたり、ドリル本体10における切屑排出溝12a,12bとダイヤモンドからなる高硬度焼結体20とを共削りして、各主切刃11a,11bのすくい角θが各切屑排出溝12a,12bの捩じれ角と同じ0°になるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、バニシングドリルを作製した。
【0040】
ここで、このようにして比較例1のバニシングドリルを作製する場合、ダイヤモンドホイールを用いて正確に研削加工することが困難であり、またダイヤモンドからなる高硬度焼結体20で構成された主切刃11a,11bがだれて丸みをおびると共に、各主切刃11a,11bの刃裏となる高硬度焼結体20の部分の面粗度も悪くなった。
【0041】
(比較例2)
比較例2においては、前記の図2(A),(B)に示す従来のバニシングドリルように、各切屑排出溝12a,12bの先端部に、超硬合金で構成された基材15aにダイヤモンドからなる高硬度焼結体15bを積層させたチップ15をロウ付けして、主切刃11a,11bの外周側の部分及びこの主切刃11a,11bの外周側におけるマージン14a,14bの先端側の部分をダイヤモンドからなる高硬度焼結体15bで構成した。
【0042】
なお、この比較例2のバニシングドリルにおいては、上記のように各切屑排出溝12a,12bの先端部に取り付けたチップ15における高硬度焼結体15bの面を、切屑排出溝12a,12bの面より0.2mm下げるようにしてロウ付けした。
【0043】
次に、上記の実施例1及び比較例1,2の各バニシングドリルを使用して、AC4Bからなるアルミニウム材に穴加工を行った。
【0044】
穴加工の条件としては、切削速度を125m/min、送り速度を0.2mm/rev、加工深さを24mmにして、外部から水溶性切削液をかけながら、100穴の穴加工を行い、100穴目における穴径拡大代と穴の面粗度とを調べ、その結果を下記の表1に示した。
【0045】
【表1】
Figure 0004608062
【0046】
この結果から明らかなように、実施例1のバニシングドリルを使用した場合、100穴目における穴径拡大代や穴の面粗度は、比較例1,2のバニシングドリルを用いた場合に比べて著しく向上していた。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明におけるバニシングドリルにおいては、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素から選択される高硬度焼結体を、ドリル本体の少なくとも先端部においてその中心を通るようにして直径方向に連続して設け、この高硬度焼結体により主切刃全体及び主切刃の外周側で切屑排出溝に対してドリル本体の回転方向後方側におけるマージンを形成したため、鋼や超硬合金で構成された基材にダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体を積層させたチップを切屑排出溝の先端部にロウ付けさせた従来のバニシングドリルのように、ドリル本体の径が小さくなった場合にチップが外れるということがなく、高硬度焼結体がドリル本体に強固に保持されるようになった。
【0048】
また、この発明におけるバニシングドリルにおいては、上記のように主切刃全体及び主切刃の外周側で切屑排出溝に対してドリル本体の回転方向後方側におけるマージンが高硬度焼結体で形成されると共に、チゼルの部分や切屑排出溝の先端側の部分も高硬度焼結体で構成されるようになるため、このバニシングドリルを用いて鋳物やアルミニウム材料等の被削材に穴加工を行うようにした場合、主切刃の切削性が高まると共に、切屑が詰まったりするのが抑制され、さらに摩耗も少なくなって、良好な穴加工が安定して行えるようになった。
【0049】
また、この発明におけるバニシングドリルのように、主切刃における軸方向のすくい角を切屑排出溝の軸方向の捩じれ角よりもマイナスになるようにすると、ドリル本体における切屑排出溝の研削加工とは別に高硬度焼結体を研削加工することができ、高硬度焼結体の部分の面粗度が悪くなったり、高硬度焼結体で構成された主切刃がだれるのが防止され、穴径の精度や穴の仕上面の面粗度が良好な穴が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼や超硬合金で構成した従来のバニシングドリルの概略正面図である。
【図2】切屑排出溝の先端部に、鋼や超硬合金で構成された基材にダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる高硬度焼結体を積層させたチップをロウ付けした従来のバニシングドリルの概略正面図及び部分側面図である。
【図3】この発明の一実施形態に係るバニシングドリルを製造するのに用いたブランクスの正面図、側面図及び平面図である。
【図4】同実施形態に係るバニシングドリルの概略正面図及び部分側面図である。
【図5】同実施形態に係るバニシングドリルにおいて、切屑排出溝の捩じれ角に対して主切刃のすくい角がマイナスになっている状態を示した部分説明図である。
【図6】同実施形態に係るバニシングドリルにおいて、主切刃のオフセット量a、シンニング部分の芯越え量E、切屑排出溝の開き角γ等を示した説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態に係るバニシングドリルを製造するのに用いたブランクスの正面図及び側面図である。
【図8】図7に示すブランクスを用いて製造したこの発明の他の実施形態に係るバニシングドリルの正面図である。
【図9】ドリル本体の軸方向に貫通した2つの案内穴が設けられたこの発明の他の実施形態に係るバニシングドリルの正面図及び部分側面図である。
【符号の説明】
10 ドリル本体
11a,11b 主切刃
12a,12b 切屑排出溝
13a,14a,13b,14b マージン
20 高硬度焼結体

Claims (3)

  1. ドリル本体10の先端に半径方向に伸びた一対の主切刃11a,11bが設けられると共に、この一対の主切刃11a,11bによって切削された切屑を排出する一対の切屑排出溝12a,12bがドリル本体10の先端から後方に向けて設けられ、この一対の切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方及び後方にそれぞれマージン13a,14a、13b,14bが形成されてなるバニシングドリルにおいて、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素から選択される高硬度焼結体20を、上記のドリル本体10の少なくとも先端部においてその中心を通るようにして直径方向に連続して設け、この高硬度焼結体20により上記の主切刃11a,11b全体及び主切刃11a,11bの外周側で切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向後方側におけるマージン14a,14bを形成すると共に、主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角が切屑排出溝12a,12bの軸方向の捩じれ角よりもマイナスになるようにしたことを特徴とするバニシングドリル。
  2. 請求項1に記載したバニシングドリルにおいて、上記の切屑排出溝12a,12bに対してドリル本体10の回転方向前方側におけるマージン13a,13bの少なくとも先端側を高硬度焼結体20で構成したことを特徴とするバニシングドリル。
  3. 請求項1又は2に記載したバニシングドリルにおいて、上記の切屑排出溝12a,12bをドリル本体10の軸方向に沿った直線状に設けると共に、上記の主切刃11a,11bにおける軸方向のすくい角を−10’〜−5°の範囲にしたことを特徴とするバニシングドリル。
JP2000257588A 2000-08-28 2000-08-28 バニシングドリル Expired - Lifetime JP4608062B2 (ja)

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