JP4606920B2 - 感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)繊維の重なった部分とフィルムが接する部分に接着剤が大量に(鳥の水掻き状に)集積し、その部分のサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなり、インキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(2)繊維自体がインキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(3)多孔性薄葉紙などが高価であり、また、ラミネート加工によるロスも大きく、マスターが高価となる。
(4)印刷された紙が重なると、インキがその重なった紙の裏面に付着する、いわゆる裏移りが発生する。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献5では、孔版印刷機の版胴周壁部にフィルムが切断されることなく長尺状のまま巻装され、印刷時には版胴の回転と共にフィルム全体も回転させる方法が提案されている。しかし、この方法ではフィルム及び着排版ユニットが印刷時には版胴の回転と共に回転するため、回転のモーメントが大きくなる。また、重力中心の回転軸からの変異が大きく、これらを解決するため、印刷機は重く、大きくなってしまうという問題がある。
また、特許文献7には、W/O(油中水滴)型エマルションを主体とした流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成した感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案の流動体は乾燥過程において水滴の部分が乾燥して孔を形成し、多孔性樹脂膜が熱可塑性樹脂フィルム上に形成される。
前記特許文献6及び7の感熱孔版印刷用マスターは、それまで知られたマスターに比べて優れており、普通の使用状態では殆ど問題は生じない。しかし、これらの感熱孔版印刷用マスターは和紙タイプの多孔性支持体を用いたマスターに比べて、曲げ剛度が弱く、また、湿度変化によるカールの発生を防ぐため、吸水率の低い樹脂を多孔性樹脂膜の材料として用いているので導電性が低いという欠点がある。このような低導電性は、印刷機内での搬送やドラムヘの巻装に不利な要因となる。実際に、低温低湿環境下において製版印刷を行った際、搬送時に発生した静電気のためにマスターが印刷機内壁面に貼りついて、スムーズな搬送、印刷ドラムヘの巻装が行えず、マスターがドラム上にシワのある状態で巻かれたり、又は巻装途中でジャムが発生し、印刷機が停止してしまうという問題がある。従来の低分子界面活性剤を帯電防止剤として熱可塑性樹脂フィルム面に設けた場合には、経時で該帯電防止剤が移動し、帯電防止性能が損なわれてしまうことが多い。
このような帯電防止性能の不安定性や、サーマルヘッドの腐食性の問題は、熱可塑性樹脂フィルム上に、流動体を塗布し、乾燥して成る多孔性樹脂膜を少なくとも有してなり、多孔性樹脂膜のフィルムと反対側に多孔性繊維膜を積層した感熱孔版印刷用マスターに限らず発生している。
<1> 熱熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性支持体を積層してなる積層体であって、該積層体の少なくとも一方の表面に導電性物質を固体状態で有してなることを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。該<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターは、積層体の少なくとも一方の面上、即ち、熱可塑性樹脂フィルム表面及び多孔性支持体の最外表面の少なくともどちらか一方に固体状態で導電性物質が存在すれば良く、また、該導電性物質が固体状態で付着しているので、ブリードが無く、帯電防止性能の経時安定性に優れる。また、固体状態であるので、ベタツキが無く、印刷機内での搬送中に印刷機搬送経路に存在する様々な部材に貼りついて搬送が妨げられることが無く、搬送性に優れる。
また、固体状体の導電性物質が、積層体の多孔性支持体側に設けられた場合には、導電性物質がサーマルヘッドに触れることがないので、導電性物質のサーマルヘッドに対する腐食性を考慮せずに、帯電防止効果の高い導電性材料を選定できる。また、導電性物質が熱可塑性樹脂フィルムの穿孔感度に影響することがないので、導電性物質を多量に用いることができる。
一方、導電性物質を積層体の熱可塑性樹脂フィルム側に設ける場合には、穿孔感度を損ねないように、導電性物質材料の使用量は限定されることがあるが、本発明の導電性物質は固体状態で付着しているので、液体の低分子界面活性剤と異なり、経時安定性に優れるため、初期に過剰に設ける必要が無く、効率的である。また、熱可塑性樹脂フィルムは、多孔性支持体に比べ平面性が高いので、導電性物質の塗布量に対する帯電防止効果が高く、穿孔感度を損ねるほどの量を設けなくても、所望の帯電防止効果が得られる。また、サーマルヘッドの腐食に関しては、固体状態の導電性物質はサーマルヘッド表面の保護層を貫通しないので、アルミ電極に接触することが無く、問題を生じない。
該<2>に記載の感熱孔版印刷用マスターは、低分子界面活性剤そのものを導電性物質として用いた場合には、ブリードの懸念がある他、何らかの理由でマスター表面から低分子界面活性剤が除去された場合、その帯電防止機能は半永久的に損なわれるが、本発明では低分子界面活性剤とバインダー樹脂との混合物であるから、ブリードの懸念が無く、また、導電性物質表面の低分子界面活性剤が何らかの理由で失われたとしても、バインダー樹脂内から低分子界面活性剤が染み出してきて帯電防止能が回復できる。
<3> 導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂から選択される少なくとも1種を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<3>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質が電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂であり、塗工時には液体であるために塗布が容易であり、電子線や紫外線の照射により架橋し、固化するため、移動による帯電防止性能の低下がなく、経時安定性に優れる。
また、得られる多孔性樹脂膜の形状が樹脂の溶解度に依存しないので、温度や湿度の影響を受けにくく、形成される膜形状の再現性が高い点で優れる。更に、処方の自由度が高く、多孔性樹脂膜の形成できる範囲が広いので、油相水相の比率や樹脂濃度、樹脂分子量などで塗布液の粘度を調整できる範囲が大きい点で優れる。
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性支持体が積層されてなる積層体であって、該積層体の少なくとも一方の表面に導電性物質が固体状態で有してなるものである。導電性物質は、熱可塑性樹脂フィルム側の面に有してもよいし、多孔性支持体側の面に有してもよいし、両面に有してもよい。
図2に示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、多孔性樹脂膜5からなる多孔性支持体3が積層されて、積層体4が構成されている。
図3に示すマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、多孔性樹脂膜5及び多孔性繊維膜2をこの順に有する多孔性支持体3が積層されて、積層体4が構成されている。
前記積層体の少なくとも一方の表面、即ち、熱可塑性樹脂フィルム側の面及び多孔性支持体側の面の少なくともいずれか一方に導電性物質を有してなる。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、材料、厚み、大きさ、形状などに特に制限はなく、感熱孔版印刷用マスターに通常使用されている公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。前記材料としては、熱可塑性樹脂が好適であり、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、二軸延伸した樹脂フィルムが特に好ましく、例えば、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムなどが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さとしては、0.5〜10μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。前記厚さが、0.5μm未満であると、薄すぎて後述の多孔性樹脂層塗布液の塗布が困難となることがあり、10μmを超えると、サーマルヘッドでの穿孔が困難となることがある。
前記熱可塑性樹脂フィルム上に積層される前記多孔性支持体としては、前述のように、多孔性樹脂膜であってもよいし、多孔性繊維膜であってもよい。また、熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなるものであってもよい。また、前記熱可塑性樹脂フィルム上に積層される前記多孔性支持体は、単層でもよいし、複数積層されていてもよい。
前記多孔性支持体は、熱可塑性樹脂フィルム単体では不足する強度を補って、マスターの搬送性や耐刷性を向上させたり、印刷時にマスターを通過するインキを均一に分散させ、画像品質を向上させたりする効果がある。
また、前記多孔性支持体を複数積層する場合には、層数やその順序に特に制限はないが、熱可塑性樹脂フィルムと、該熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、多孔性繊維膜に導電性物質を含有する感熱孔版印刷用マスターの場合には、導電性物質が多孔性繊維膜に含有されるので、フィルム穿孔性やインキ通過性への影響が著しく小さく、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜の間の多孔性樹脂膜が導電性物質のフィルムへの接触を防止すると共に、インキ通過量を均一化し、良好な印刷品質が得られる。
また、多孔性繊維膜に導電性物質を含ませる場合には、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与える恐れがないため、導電性物質を多く使用することができ、優れた帯電防止効果を発揮することができ、特に好ましい。
前記多孔性樹脂膜の構造は、不定形の棒状、球状、又は枝状に連結した(和紙のような短い構成単位が絡み合っているものではなく、印刷などで形成される単純な形状の組み合わせでもない)複雑な三次元構造を有するもの、いわゆる糸瓜に似た構造、ハニカム状構造、蜂の巣状構造などが好適に挙げられる。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノライト、石膏繊維などの鉱物系針状フィラー;非酸化物系針状ウイスカ、複酸化物系ウイスカなどの人工鉱物系針状フィラー;マイカ、ガラスフレーク、タルクなどの板状フィラー;カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などの天然又は合成の繊維状フィラーなどが挙げられる。
前記顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂などからなる有機ポリマー粒子;カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカなどの無機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フィラーの添加量は、前記樹脂100質量部に対し5〜200質量部が好ましい。前記フィラーの添加量が、5質量部未満であると、カールが発生し易くなることがあり、200質量部を超えると、多孔性樹脂膜の強度が低下することがある。
前記多孔性繊維膜としては、材料、大きさ、構造などについては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、前記材料としては、例えば、ガラス、セピオライト、各種金属などの鉱物繊維;羊毛、絹などの動物繊維;綿、マニラ麻、コウゾ、ミツマタ、パルプなどの天然繊維;スフ、レーヨンなどの再生繊維;ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成繊維;カーボンファイバーなどの半合成繊維;ウィスカ構造を有する無機繊維などの薄葉紙が挙げられる。これらの中でも、天然繊維と合成繊維の混抄の多孔性繊維膜、合成繊維のみからなる多孔性繊維膜が好適に挙げられる。前記天然繊維と合成繊維の混抄の多孔性繊維膜は比較的安価で、良好なインキ通過性や曲げ剛度が得られる。前記合成繊維のみからなる多孔性繊維膜は、機械的強度や帯電特性などの環境依存性が小さく好ましい上に、天然繊維よりも細い繊維が入手可能で、インキに均一通過性に有利である。
前記繊維状物質の直径(太さ)としては、20μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。前記直径が、1μm未満であると引張り強度が弱くなることがあり、20μmを超えるとインキ通過が妨げられて繊維による白抜け画像が生じることがある。
前記繊維状物質の長さとしては、0.1〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましい。前記繊維状物質の長さが、0.1mm未満であると、引張り強度が弱くなることがあり、10mmを超えると、分散を均一に行うのが困難になることがある。
この場合、前記接着剤として溶剤型接着剤を使用すると多孔性樹脂膜が侵され、孔を閉塞してしまうため、少なくとも多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜とが積層される時点において溶剤はない方が好ましく、この点から、無溶剤型接着剤、水性又はエマルション型接着剤が好適に用いられる。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、オフセットグラビアコーティング法、キスコーティング法、バーコーティング法などが好適に挙げられる。
前記接着剤を塗布する面としては、多孔性樹脂膜、及び多孔性繊維膜のいずれに塗布してもよいが、多孔性樹脂膜の開口部を閉塞しないためには、多孔性繊維膜に塗工した方が好ましい。
前記接着強度が、1.4N/m未満であると、ハンドリング及び搬送時に多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜との膜剥離が発生し、シワの原因となるばかりでなく、耐刷時にマスターの伸び、ハガレ、破れといった問題を引き起こすことがある。なお、前記接着強度の上限はインキ通過が阻害されなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、両端がアクリレートであるポリオキシエチレンジアクリレートはさらに反応性が高い長所が有るものの、ポリオキシエチレンモノアクリレートの方が帯電防止性能が高い。また、アクリレート部分がメタクリレートであってもよいが、モノアクリレートの方が反応性がよく、硬化不良を生じにくい点で優れる。このように硬化が十分であるので、帯電防止性能が十分に発揮され、経時での帯電防止性能、繊維脱落防止効果に優れる。したがって、上述したようにポリオキシエチレンモノアクリレートが好適である。
前記導電性物質塗布液を塗布し、電子線照射又は紫外線照射して硬化させた多孔性繊維膜はドライヤーなどにより乾燥する。該乾燥の温度としては40〜70℃が好ましい。前記乾燥の温度が、70℃を超えると、前記熱可塑性樹脂フィルムが収縮してしまうおそれがあり、40℃未満であると、前記熱可塑性樹脂フィルムの乾燥に時間がかかることがある。
該バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線硬化樹脂、又は紫外線硬化樹脂などのように、積層体への付与時には液体で、その後、電子線照射や紫外線照射などで固化するものが好ましい。前記電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂としては、上述したものの中から目的応じて適宜選択することができる。なお、前記バインダー樹脂は導電性を有していなくてもよいが、帯電防止効果が高まる点で、導電性を有しているのが好ましい。
前記低分子界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セスキオレイン酸ソルビタン、アルキルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、アルキルリン酸エステルモノエタノールアミン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、などが挙げられる。
該イオン性高分子化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、不飽和モノマー・酸共重合物アルカリ金属塩であるのが好ましい。前記不飽和モノマーとしては、イソプレン、オレフィン、などが挙げられ、酸共重合物としては、スルホン酸、マレイン酸、などが挙げられ、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、などが挙げられる。
前記イオン性高分子化合物の具体例としては、例えば、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩、アクリルスルホン酸ナトリウム塩などのアニオン系高分子化合物;4級アンモニウムイオン変性アクリル樹脂、4級アンモニウムイオン変性ウレタン樹脂などのカチオン系高分子化合物、などが挙げられる。これらの中でも、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩が、特に帯電防止効果が高い点で好ましい。また、これらの中でも、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩が、特に優れた帯電防止効果と曲げ剛度向上の効果が期待できる点から、特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、アニオン系高分子化合物のなかでもカルボン酸塩に比べて、帯電防止性能が高く、使用に好ましいものである。
前記スティック防止層におけるスティック防止剤としては、特に制限はなく、従来の感熱孔版印刷用マスターで一般に使用されているものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。なお、前記スティック防止層には、静電気の発生を防止するため、帯電防止剤を添加することもできる。
本発明の感熱孔版印刷用マスターの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体を積層して積層体を形成する積層体形成工程と、該積層体の少なくとも一面に、少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する導電性物質塗布工程とを含んでなり、更に必要に応じて、その他の工程を含んでなる。
前記積層体形成工程は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少なくともいずれかを含む多孔性支持体を積層して積層体を形成する工程である。この工程は、樹脂膜形成工程及び多孔性繊維膜形成工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含んでなる。
前記多孔性樹脂膜形成工程は、熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する工程である。
前記多孔性樹脂膜塗布液は、少なくとも樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなり、油中水型のものが好ましい。
また、得られる多孔性樹脂膜の形状が樹脂の溶解度に依存しないので、温度や湿度の影響を受けにくく、形成される膜形状の再現性が高い点で優れる。更に、処方の自由度が高く、多孔性樹脂膜の形成できる範囲が広いので、油相水相の比率や樹脂濃度、樹脂分子量などで塗布液の粘度を調整できる範囲が大きい点で優れる。
前記多孔性繊維膜形成工程は、前記多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する工程である。
前記繊維状物質からなる多孔性繊維膜の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述したように、短繊維を湿式抄紙した抄造紙であってもよいし、不織布や織物であってもよいし、スクリーン紗などであってもよく、生産性、コスト面などの観点から、抄造紙が好ましく用いられる。
前記導電性物質塗布工程は、前記積層体の少なくとも一方の表面に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する工程である。
前記導電性物質としては、上述したように、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、低分子界面活性剤とバインダー樹脂との混合物、導電性粉体、並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一方、前記塗布液粘度が、100cPを超えると、塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックにより、前記多孔性繊維膜の繊維が引き抜かれ、塗工ロール上に蓄積し、塗布ムラの原因になるほか、蓄積した繊維が脱落し、多孔性繊維膜に付着すると、その部分が画像白抜けになることがある。また、塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックが強いと、塗工時にマスター又は前記多孔性繊維膜が引っ張られシワや塗布ムラが発生することがある。塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックを抑えるにはラインスピードを下げることが有効であるが、生産性が低下する。
繊度0.2デニール、繊維長3mmの未延伸ポリエステル繊維(テイジン株式会社製、テピルスTK08PN)40質量部と、繊度1.5デニール、繊維長5mmのポリエステルバインダー繊維(鞘成分:低融点PET、熱溶融温度110℃、芯成分:PET/ユニチカ株式会社製、メルティ4080)60質量部とを混合し、円網抄紙機により多孔性繊維膜を作製した。
得られた多孔性繊維膜の坪量は8.0g/m2であり、厚みは30μmであった。
<多孔性樹脂被膜形成用塗布液の調製>
タルク(日本タルク株式会社製、ミクロエースL−G)1質量部を酢酸エチル30質量部中に撹拌分散した後、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、エスレックKS1)3質量部を溶解した。該溶液にソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ株式会社製、SO−15)0.1質量部、変性シリコーンオイル(信超化学工業株式会社製、KF6012)0.1質量部、及びアクリル系ポリマーO/W型エマルション(ジョンソンポリマー株式会社製、Joncryl−711)0.2質量部を撹拌して溶解した。この溶液を撹拌しながらヒドロキシエチルセルロース(HEC)1質量%水溶液(和光純薬工業株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース使用)25質量部を滴下して、油中水型エマルションを作製した。この油中水型エマルションを、多孔性樹脂被膜形成用塗布液とした。
ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)50質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)50質量部を約80℃で溶融混合して、電子線硬化性接着剤を調製した。
シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422)1質量部、及びトルエン99質量部からなるスティック防止層塗布液を調製した。
<導電性物質塗布液1>
酸化スズ粉末(三菱マテリアル社製、T−1)30質量部、ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40%)50質量部、及び水20質量部とを混合し、ボールミルで分散して、導電性物質塗布液1を調製した。得られた導電性物質塗布液1の固形分濃度は50%であった。
25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記導電性物質塗布液1を前記多孔性繊維膜に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後の導電性物質塗布液1の不揮発分の総塗布量は、1.1g/m2であった。なお、導電性物質塗布液の前記多孔性繊維膜における不揮発分総塗布量、後述する多孔性樹脂被膜における不揮発分総塗布量、及び熱可塑性樹脂フィルムにおける不揮発分総塗布量は、以下のようにして測定した。
<導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量の測定>
導電性物質塗布液を塗布した多孔性繊維膜25cm×25cmと、塗布していない多孔性繊維膜25cm×25cmとの質量差を求め、g/m2に換算したものを前記不揮発分総塗布量とした。多孔性樹脂被膜及び熱可塑性樹脂フィルムにおいても、同様の方法で不揮発分総塗布量を求めた。結果を表1に示す。
更に、ロールコーターを用いて、上記電子線硬化性接着剤を付着量が0.4g/m2となるように、上記多孔性繊維膜の導電性物質を塗布した面とは反対側に塗布した。該電子線硬化性接着剤を塗布した面と、厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(熱可塑性樹脂フィルム)をラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
続いて、上記スティック防止剤塗布液を、熱可塑性樹脂フィルム面(多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)にバーコーターを用いて、乾燥後の付着量が0.05g/m2となるように塗布し、乾燥してスティック防止層を形成した。
以上により、実施例1の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<導電性物質塗布液2>
イオン性高分子化合物として、アニオン系高分子化合物水溶液(JSR社製、K106、不揮発分濃度35%)を水で希釈し、不揮発分濃度が17%となるように導電性物質塗布液2を調製した。なお、K106中のアニオン系高分子化合物は、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩である。
厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が5g/m2の多孔性樹脂膜を形成した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記導電性物質塗布液2を前記多孔性樹脂膜に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後における導電性物質塗布液2の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.3g/m2であった。結果を表1に示す。
続いて、上記スティック防止剤塗布液を、熱可塑性樹脂フィルム面(多孔性樹脂膜を積層した面と反対側の面)にバーコーターを用いて、乾燥後の付着量が0.05g/m2となるように塗布し、乾燥してスティック防止層を形成した。
以上により、実施例2の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<導電性物質塗布液3>
ポリオキシエチレンモノアクリレート5%水溶液により、導電性物質塗布液3を調製した。なお、前記ポリオキシエチレンモノアクリレートは、電子線硬化樹脂である。
厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が2g/m2の多孔性樹脂膜を形成した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記導電性物質塗布液3を前記多孔性繊維膜に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後における導電性物質塗布液3の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.048g/m2であった。結果を表1に示す。
更に、ロールコーターを用いて、上記電子線硬化性接着剤を付着量が0.4g/m2となるように、上記多孔性繊維膜の導電性物質を塗布した面とは反対側に塗布した。該電子線硬化性接着剤を塗布した面と、前記付着量が2g/m2の多孔性樹脂被膜とをラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
続いて、上記スティック防止剤塗布液を、熱可塑性樹脂フィルム面(多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)にバーコーターを用いて、乾燥後の付着量が0.05g/m2となるように塗布し、乾燥してスティック防止層を形成した。
以上により、実施例3の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<導電性物質塗布液4>
カチオン界面活性剤(日本油脂社製、エレガン264−WAX、固形分濃度100%)4質量部、ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40%)40質量部、及び水56質量部とを混合し、ボールミルで分散して、導電性物質塗布液4を調製した。該導電性物質塗布液4は、低分子界面活性剤とバインダー樹脂との混合物である。
ロールコーターを用いて、上記電子線硬化性接着剤を付着量が0.4g/m2となるように、上記多孔性繊維膜の一面に塗布した。この多孔性繊維膜の電子線硬化性接着剤を塗布した面と、厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(熱可塑性樹脂フィルム)をラミネートした。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記導電性物質塗布液4を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性繊維膜を設けたのとは反対側の面に塗布し、50℃にて乾燥した。
更に、この積層体に5Mradの電子線を照射し、実施例4の感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、熱可塑性樹脂フィルムにおける導電性物質塗布液4の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.31g/m2であった。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が5g/m2の多孔性樹脂膜を形成した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例3と同様の導電性物質塗布液3を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜を設けたのとは反対側の面に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後における導電性物質塗布液3の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.03g/m2であった。結果を表1に示す。
以上により、実施例5の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<導電性物質塗布液5>
イオン性高分子化合物として、アニオン系高分子化合物水溶液(JSR社製、K106、不揮発分濃度35%)を水で希釈し、不揮発分濃度が0.4%となるように導電性物質塗布液5を調製した。なお、K106中のアニオン系高分子化合物は、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩である。
厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が2g/m2の多孔性樹脂膜を形成した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記電子線硬化性接着剤を付着量が0.4g/m2となるように、上記多孔性繊維膜の一面に塗布した。該電子線硬化性接着剤を塗布した面と、前記付着量が2g/m2の多孔性樹脂被膜とをラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記導電性物質塗布液5を、熱可塑性樹脂フィルム面(多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)に、乾燥後の総塗布量が0.0028g/m2となるように塗布し、乾燥した。この乾燥後の総塗布量は、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
以上により、実施例6の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例1と同様の導電性物質塗布液1を前記多孔性繊維膜に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後の導電性物質塗布液2の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、1.1g/m2であった。結果を表1に示す。
次に、ロールコーターを用いて、前記電子線硬化性接着剤を付着量が0.4g/m2となるように、上記多孔性繊維膜の一面に塗布した。この多孔性繊維膜の電子線硬化性接着剤を塗布した面と、厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートした。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例6と同様の導電性物質塗布液5を、熱可塑性樹脂フィルム面(多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)に、乾燥後の総塗布量が0.0028g/m2となるように塗布し、乾燥した。この乾燥後の総塗布量は、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
以上により、実施例7の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が5g/m2の多孔性樹脂膜を形成した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例2と同様の導電性物質塗布液2を前記多孔性樹脂膜に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後における導電性物質塗布液2の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.3g/m2であった。結果を表1に示す。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例3と同様の導電性物質塗布液3を前記熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜を設けたのとは反対側の面に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後における導電性物質塗布液3の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.03g/m2であった。結果を表1に示す。
以上により、実施例8の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
厚さ2μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に、グラビアロールにて前記多孔性樹脂膜形成用塗布液を塗布し、50℃にて乾燥し、乾燥後の付着量が2g/m2の多孔性樹脂膜を形成した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例3と同様の導電性物質塗布液3を前記多孔性繊維膜に塗布し、50℃にて乾燥した。この乾燥後における導電性物質塗布液3の不揮発分の総塗布量を、実施例1と同様にして測定したところ、0.048g/m2であった。結果を表1に示す。
更に、ロールコーターを用いて、上記電子線硬化性接着剤を付着量が0.4g/m2となるように、上記多孔性繊維膜の導電性物質を塗布した面とは反対側に塗布した。該電子線硬化性接着剤を塗布した面と、前記付着量が2g/m2の多孔性樹脂被膜とをラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
続いて、25℃に加熱したロールコーターを用いて、上記実施例4と同様の導電性物質塗布液4を、熱可塑性樹脂フィルム面(多孔性繊維膜を積層した面と反対側の面)に、乾燥後の総塗布量が0.31g/m2となるように塗布し、乾燥した。この乾燥後の総塗布量は、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
以上により、実施例9の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
<導電性物質塗布液6>
カチオン界面活性剤(日本油脂社製、エレガン264−WAX、固形分濃度100%)1質量部、トルエン99質量部とを混合し、導電性物質塗布液6を調製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、多孔性繊維膜に塗布する導電性物質塗布液1を、前記導電性物質塗布液6に代え、該導電性物質塗布液6の乾燥後における不揮発分の総塗布量を0.2g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例6において、熱可塑性樹脂フィルム面に塗布する導電性物質塗布液5を、前記比較例1と同様の導電性物質塗布液6に代え、該導電性物質塗布液6の乾燥後における不揮発分の総塗布量を0.2g/m2としたこと以外は、実施例6と同様にして比較例2の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例9において、多孔性繊維膜に塗布する導電性物質塗布液3を、前記導電性物質塗布液6に代え、該導電性物質塗布液6の乾燥後における不揮発分の総塗布量を0.2g/m2とし、熱可塑性樹脂フィルム面に塗布する導電性物質塗布液4を、前記比較例1と同様の導電性物質塗布液6に代え、該導電性物質塗布液6の乾燥後における不揮発分の総塗布量を0.2g/m2としたこと以外は、実施例9と同様にして比較例3の感熱孔版印刷用マスターを作製した。
次に、前記で作製した実施例1〜9及び比較例1〜3の各感熱孔版印刷用マスターについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。
各感熱孔版印刷用マスターを直径約6cmの紙管にロール状に巻いて、50℃環境で1週間保管した後、シート状に切り出して、各感熱孔版印刷用マスターをシート状態で23℃−65%RH雰囲気中に4時間吊し、調湿を行った上で測定した。測定面は、それぞれのマスターにおいて、導電性物質を設けた側の面とした。
前記測定環境は23℃−65%RHであり、測定装置はセンサー部が、「Hewlett−Packard 16008A Resistivity Cell」、本体が「Yokogawa−Hewlett−Packard 4329A High Resistance Meter」、test voltageは100voltsの設定とした。
実施例1〜9及び比較例1〜3の各感熱孔版印刷用マスターについて、10℃−20%RHの環境下で印刷機(株式会社リコー製、RicohサテリオA400)を用いて無製版搬送し、ドラムに巻きつけた際、スキューすることなくドラムにまっすぐにまかれるかどうかの試験を行い、下記基準で評価した。なお、マスターの帯電が大きいと搬送過程において静電気によるマスター同士の貼り付きによって不具合が起こる場合がある。
〔評価基準〕
○:静電気によるマスターの貼り付きがなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
△:静電気によるマスターの貼り付きが若干観られるものの、マスターがドラムに正常に巻きつけられ、実用上問題がない。
×:静電気によるマスターの貼り付きが原因で、マスターがドラムに対して斜めに巻きつけられた。
実施例1〜9及び比較例1〜3の各感熱孔版印刷用マスターを50℃環境中に1週間保存した後、上記と同様の搬送試験を行い、下記基準に基づき、保存後の搬送性を評価した。
〔評価基準〕
○:搬送性に劣化がない。
△:搬送性にやや劣化は有るものの実用上問題がない。
×:搬送性に劣化が著しく有り、実用上問題となる。
穿孔及び印刷装置としてサテリオA400(株式会社リコー製:東芝社製サーマルヘッド搭載)を用い、実施例1〜9及び比較例1〜3の各感熱孔版印刷用マスターに10cm×10cmのベタチャートによる製版及び印刷を行った。得られた印刷画像について、下記基準により印刷画像の白抜けの程度を評価した。
〔評価基準〕
○:印刷画像に白抜けが殆どない。
△:印刷画像にやや白抜けが観られるが、実用上問題のないレベルである。
×:実用上問題となるレベルの白抜けが観られる。
サテリオA400(株式会社リコー製:東芝社製サーマルヘッド搭載)を用い、実施例1〜9及び比較例1〜3の各感熱孔版印刷用マスターを30℃−90%RHの環境下で、1万版、A4サイズのベタ製版を繰り返し、印刷画像にサーマルヘッド腐食による発熱不良が原因の白スジが発生するか否かを確認し、下記基準によりサーマルヘッド腐食性を評価した。
〔評価基準〕
○:白スジが発生しなかった。
×:白スジが1本以上発生した。
*T−1:酸化スズ粉末(三菱マテリアル株式会社製、T−1)
*EM90:ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)
*264A:カチオン界面活性剤(日本油脂社製、エレガン264−WAX、固形分濃度100%)
*F+T:熱可塑性樹脂フィルム(F)上に多孔性繊維膜(T)を積層したもの
*F+P:熱可塑性樹脂フィルム(F)上に多孔性樹脂被膜(P)を積層したもの
*F+P+T:熱可塑性樹脂フィルム(F)上に多孔性樹脂被膜(P)、多孔性繊維膜(T)をこの順に積層したもの
特に、多孔性支持体側表面への導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量が、0.05〜1.0g/m2、熱可塑性樹脂フィルム側表面への導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量が、0.003〜0.3g/m2の範囲内である実施例2、5及び8では、帯電特性、搬送性、及びサーマルヘッドの腐食性に極めて優れることが認められ、極めて高画質な画像が記録できた。
比較例1は、搬送性は初期では良好であったが、保存後は搬送性に乏しかった。これは、多孔性支持体側面に液体の導電性物質(低分子界面活性剤)を塗布しているため、50℃で1週間の保存中に、多孔性樹脂被膜表面の導電性物質が繊維膜内部に移動したからであると思われる。また、サーマルヘッド腐食が発生したが、これはロール状に巻き取ったことで、多孔性樹脂被膜上の導電性物質が、熱可塑性樹脂フィルム側に転移したためと思われる。
比較例2は、搬送性は初期では良好であったが、保存後は搬送性に乏しかった。これは、熱可塑性樹脂フィルム表面に液体の導電性物質(低分子界面活性剤)を塗布しているため、50℃で1週間の保存中に、熱可塑性樹脂フィルム表面の導電性物質が繊維膜内部に移動したからであると思われる。また、サーマルヘッド腐食が発生したが、これは熱可塑性樹脂フィルム面側に液体の導電性物質を塗布したため、該熱可塑性樹脂フィルムの導電性物質が、サーマルヘッド内部に浸透し、アルミ電極に接触したためと思われる。
積層体の両面に液体状の導電性物質を設けた比較例3においても、前記比較例1及び比較例2と同様な理由で、保存後の搬送性に乏しく、サーマルヘッド腐食が認められた。
2 多孔性繊維膜
3 多孔性支持体
4 積層体
5 多孔性樹脂被膜
Claims (13)
- 熱可塑性樹脂フイルムと、該熱可塑性樹脂フイルムの少なくとも一方の面上に多孔性支
持体を積層してなる積層体であって、該積層体の少なくとも一方の表面に導電性物質を固
体状態で有してなり、該導電性物質が導電性を有する電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。 - 導電性物質が、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートである請求項1に記載の感
熱孔版印刷用マスター。 - 少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を、積層体の少なくとも一方の表面に塗
布した請求項1から2のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。 - 導電性物質が、多孔性支持体を積層していない熱可塑性樹脂フイルム面側に含有された請求項1から3のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 積層体の導電性物質を有する面の23℃−65%RH環境下での表面抵抗値が1×10
6 〜1×10 13 Ωである請求項1から4のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。 - 積層体の熱可塑性樹脂フイルム側表面への導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量が、0
.003〜0.3g/m 2 である請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マス
ター。 - 積層体の多孔性支持体側表面への導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量が、0.05〜
1.0g/m 2 である請求項1から6のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。 - 多孔性支持体が、多孔性繊維膜である請求項1から7のいずれかに記載の感熱孔版印
刷用マスター。 - 多孔性支持体が、多孔性樹脂膜である請求項1から7のいずれかに記載の感熱孔版印
刷用マスター。 - 多孔性支持体が、熱可塑性樹脂フイルム上に、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順
に有してなる請求項1から7のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。 - 多孔性樹脂膜が、熱可塑性樹脂フイルム上に、流動体を塗布し乾燥してなる請求項9
から10のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。 - 熱可塑性樹脂フイルムの少なくとも一方の面上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の少な
くともいずれかを含む多孔性支持体を積層して積層体を形成する積層体形成工程と、該積
層体の少なくとも一面に、少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する導電
性物質塗布工程とを含み、該導電性物質が導電性を有する電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法。 - 溶解した合成樹脂を含む油中水型乳化液を、熱可塑性樹脂フイルム上に一定厚みで塗布
し乾燥させることにより、多孔性樹脂膜を形成する請求項12に記載の感熱孔版印刷用マ
スターの製造方法。
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