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JP4605848B2 - 車両用ドアガラスの昇降装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ドアガラスの昇降装置に関し、特にドアガラスの下辺前部及び後部に各々設けられたスライダ及びこのスライダを転動或いは摺動可能に嵌装案内するフロントサッシュ及びリヤサッシュを備えた車両ドアガラスの昇降装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用ドアガラスの昇降装置は、例えば図4に車体側面方向から透視した部分配置図を、図5に図4のII−II線拡大断面図を示すように、ドア本体50内に上下方向に沿って延在するフロントサッシュ51及びリヤサッシュ52を設け、これらフロントサッシュ51及びリヤサッシュ52に各々ドアガラス53に設けられたスライダ54を転動或いは摺動自在に嵌装させると共に、例えばXアーム式のレギュレータの作動により、図6に示すようにドアガラス53をスライダ54を介してフロントサッシュ51及びリヤサッシュ52により案内して昇降させるように構成されている。
【0003】
ここで、フロントサッシュ51及びリヤサッシュ52は、通常、車体側面からの軽衝突によるドアアウタパネル55の変形に起因する変形或いは破損を回避するために、ドアアウタパネル55の外側壁部分55aと対向するドアインナパネル56の内側壁部分56aに、上端部及び下端部を各々ブラケット57を介してアジャストネジ58により位置調整可能に取り付けられている。
【0004】
また、フロントサッシュ51及びリヤサッシュ52は、通常、断面長方形でその一方の長辺部分に昇降方向に延在してスリット59が形成された略C字状であり、その内部にドアガラス53側に設けたスライダ54が転動或いは摺動自在に嵌装してドアガラス53を昇降方向に案内するようになっている。なお、リヤサッシュ52側のスライダ54は、例えばドアガラス53の下辺部にホルダ60を介してスリット59内に嵌装するように取り付けた支持軸、例えば球ボルト61の先端に支持されてドアガラス53側に設けられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の車両用ドアガラスの昇降装置にあっては、フロントサッシュ51及びリヤサッシュ52の双方が、ドアインナパネル56の内側壁部分56aに取付支持され、スリット59が車体外側面方向、即ちドアガラス53が走行時に風圧や振動によってブレる車幅方向を向くことから、車体側面方向からの荷重に対して充分な強度及び剛性を確保しドアガラス53を保持することが難くなることが懸念され、これに伴いドアガラス53のガタを充分低減せしめることが困難になることが懸念される。
【0006】
また、通常の乗用車、特に4ドアセダン車では、車体のサイズやパッケージングの制約上、側面視状態において、図4に示すようにリヤサッシュ52が着座した乗員62とラップする位置関係にならざるを得ないことが多い。しかも、リヤサッシュ52の上端部側のブラケット57の取り付け位置が、乗員62の胸から肩の高さ位置近傍になる。このため、例えば車両の側面衝突時においてドア本体50に側方から衝突荷重が作用した際に、リヤサッシュ52やブラケット57の存在によって、ドアパネル間、即ちドアアウタパネル55とドアインナパネル56との間における衝撃エネルギー吸収ストローク、換言すると衝撃エネルギー吸収のためのクラッシュストロークが充分に確保できないことが懸念される。
【0007】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、車体側面方向からの荷重に対して充分なドアガラス保持強度及び剛性を確保できると共に、ドアパネルの衝撃エネルギー吸収ストロークを充分に確保できる安全性に優れた車両用ドアガラスの昇降装置を提供することにある。
【0008】
上記第1の目的を達成する請求項1に記載の車両用ドアガラスの昇降装置の発明は、ドアガラスの下辺前部及び後部に各々略水平方向に延在して設けられた各支持軸の先端に各々スライダを支持する一方、ドアパネルによって形成されたドア本体内に上記各支持軸を上下方向に移動可能に嵌挿するスリットが形成されて上記スライダを転動或いは摺動可能に嵌装案内する断面略C字状のフロントサッシュ及びリヤサッシュを備えた車両用ドアガラスの昇降装置において、上記ドアガラスの下辺後部に設けられた支持軸は、上記ドアガラスのガラス面と略平行に延在してドアガラス後方に向けてドアガラスの突出すると共に、先端に上記スライダを支持し、上記リヤサッシュは、上記スリットが該車体前方側に位置し、該リヤサッシュと協働して上下方向に延在する中空な閉断面構造を形成するブラケット及び該ブラケットを上記ドアパネルの後部縦壁部分に位置調整可能に取り付ける位置調整機構を介して上記ドアパネルの後部縦壁部分に取り付けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によると、リヤサッシュはそのスリットが車体前方側を向いてドアパネルの剛性が充分に確保された後部縦壁部分に取り付けられるので、車両側面方向からの荷重に対して充分なドアガラス保持強度及び剛性を確保することが可能になり、ドアガラスのガタも充分低減することが可能になると共に、リヤサッシュが側面視で上記ドアガラスの昇降通路から外れた車両後方側に位置せしめられ、側面視においてリヤサッシュが着座した乗員とのラップが回避され、これにより乗員が位置する部分のドアパネルの衝撃エネルギー吸収ストロークが充分に確保でき、側面衝突時の安全性を更に高めることが可能となる。
更に、リヤサッシュを後部縦壁部分に取り付けるブラケットがリヤサッシュと協働して上下方向に延在する中空な閉断面構造を形成するので、車両側面方向からの荷重に対するリヤサッシュの強度及び剛性を更に高めることが可能になると共に、ドアガラスのガタをより低減することが可能になり、しかもブラケットは位置調整可能に後部縦壁部分に取り付けられるので、リヤサッシュの位置調整が可能になり、ドアガラスをよりスムーズに昇降させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1の車両用ドアガラスの昇降装置において、上記リヤサッシュは、上記ドアガラスのガラス面の延長位置において上記ドアパネルの後部縦壁部分に取り付けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によると、リヤサッシュをドアガラスのガラス面の延長位置に配設することによって、請求項1に加え、ドアパネルの変形が許容されて更にドアパネルの衝撃エネルギー吸収ストロークが確保され、側面衝突時の安全性が更に向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の車両用ドアガラスの昇降装置において、上記リヤサッシュは、側面視で上記ドアガラスの昇降通路から外れた車両後方側に位置することを特徴とする。
請求項3の発明によると、リヤサッシュが側面視でドアガラスの昇降通路から離れた車両後方に位置せしめられ、側面視においてリヤサッシュが着座した乗員とのラップが回避され、これにより乗員が位置する部分のドアパネルの衝撃エネルギー吸収ストロークが充分確保でき、側面衝突時の安全性を更に高めることが可能になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の車両用ドアガラスの昇降装置において、上記ドアガラスの端部にホルダを介して上記支持軸を設け、上記ドアガラスと上記スライダとの間に間隔を設けていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車両用ドアガラスの昇降装置の実施の形態を図1乃至図3によって説明する。
【0015】
図1は車両側面方向からの要部の透視図を、図2は図1のI−I線拡大断面図を、図3はドアガラスの昇降状態を各々示している。この車両用ドアガラスの昇降装置は、ドア本体1内に断面略C字状で上下方向に延在するフロントサッシュ2及びリヤサッシュ3を設け、これらフロントサッシュ2及びリヤサッシュ3にそれぞれドアガラス4側に設けたスライダ5を転動或いは摺動自在に嵌装させて、例えばXアーム式のレギュレータ(図示せず)の作動によりドアガラス4を昇降させるものである。
【0016】
本実施の形態では、リヤサッシュ3を、上記図4に示す状態から略90度回転させてドアガラス4のガラス面の延長線に対して略直交させ、即ち断面略C字状のリヤサッシュ3のスリット3aを車体前方側に向け、かつ側面視状態でドアガラス4の昇降通路から外れた車両後方側に位置させて、その両端部を各々ブラケット6を介してドアインナパネル7の後部縦壁部分7aに位置調整可能に取り付ける。
【0017】
また、ドアガラス4の車両後方側の下辺部には断面略L字状のホルダ8がボルト及びナット等によって取り付けられ、このホルダ8にドアガラス4のガラス面と略平行でかつ略水平に延在して車両後方側に突出して先端がリヤサッシュ3のスリット3a内を貫通して侵入するように支持軸、例えば球ボルト9をかしめ等により固定し、この球ボルト9の先端にリヤサッシュ3内を転動或いは摺動可能なスライダ5が支持される。
【0018】
ブラケット6は、前方が開放された断面略C字状で上下方向に延在し、リヤサッシュ3に両端縁を溶接固定することにより、リヤサッシュ3と協働して上下方向に中空な閉断面構造を形成するようにする。このブラケット6には、少なくとも2個の雌ネジ部11を形成し、各雌ネジ部11に、後部縦壁部分7aに形成した穴12を貫通させてアジャストネジ13を螺合することによって位置調整機構を形成し、ブラケット6を後部縦壁部分7aに車両前後方向及び左右方向の調整を可能にして取付固定する。なお、アジャストネジ13の縦壁部分7aから外部に突出する部分はカバー14によって覆われる。
【0019】
フロントサッシュ2は、上記図4に示す従来例と同様に、その上下両端部においてブラケット15を介して、ドアインナパネル7の内側壁部分7bに位置調整可能に取り付けられる。
【0020】
このようにして、例えばXアーム式のレギュレータの作動により、図3に示すようにドアガラス4をスライダ5を介してフロントサッシュ2及びリヤサッシュ3により転動或いは摺動案内して昇降させる。
【0021】
従って、本実施の形態によると、リヤサッシュ3はスリット3aが車両前方側を向いて上下方に延在してドアインナパネル7の剛性の高い後部縦壁部分7aに取り付けられるので、車両側面方向からの荷重に対して充分な強度及び剛性を確保することができ、ドアガラス4の保持剛性が確保されて走行時の風圧や振動に起因するガタを充分低減することができると共に、ドアガラス4の振動騒音の低減がもたらされる。
【0022】
また、リヤサッシュ3は、側面視でドアガラス4の昇降通路から車両後方側に外れて配置されているので、着座した乗員21とのラップが回避されると同時に、乗員21が位置する部分のドアパネルの衝撃エネルギー吸収ストローク、即ちクラッシュストロークが充分確保でき、側面衝突時の安全性を更に高めることができる。
【0023】
なお、ドアインナパネル7は、必ずしも平面的にする必要はないので、レギュレータをXアーム式に代えてワイヤー式に変更して、乗員の肘から胴体にかけて接近するドアインナパネル7に凹部を形成することにより、実質的な居住空間の拡大をもたらすこともできる。
【0024】
また、このようにドアインナパネル7に凹部を形成した場合には、ドア内側面と乗員との間の空間の増大が図られるで、サイドエアバックを設ける場合にはその動作の安定が確保され、かつ大きな容量のサイドエアバックを設けることが可能となり、更に安全性を向上することができる。
【0025】
更に、本実施の形態では、ブラケット6をリヤサッシュ3と協働して剛性に優れた閉断面構造を形成することから、リヤサッシュ3の剛性が向上し、このブラケット6を介してリヤサッシュ3を車両前後方向及び左右方向に調整して後部縦壁部分7aに固定できるようにしたので、車両側面方向からの荷重に対するリヤサッシュ3の強度及び剛性を更に高めることができると共に、ドアガラス4のガタをより低減でき、ドアガラス4をよりスムーズに昇降させることができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、リヤサッシュ3は、側面視でドアガラス4の昇降通路とラップさせた状態で、スリット3aが前方となるように後部縦壁部分7aに取り付けることもできる。この場合も、リヤサッシュ3はスリット3aを有する辺が車両前方を向いて剛性の高い後部縦壁部分7aに取り付けられるので、車両側面方向からの力に対して充分な強度及び剛性を確保することができると共に、ドアガラス4のガタも充分低減することができる。また、かかる構成において、更にリヤサッシュ3の端部に、リヤサッシュ3と協働して閉断面構造を形成するようにブラケットを固定し、このブラケットを介してリヤサッシュ3を縦壁部分7aに位置調整可能に取り付けることもできる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、ドアガラスの下辺後部に設けられた支持軸は、ドアガラスのガラス面と略平行に延在してガラス後方に向けて突出した先端に上記スライダを支持すると共に、リヤサッシュは、スリットが前方に位置してドアパネルの後部縦壁部分に取り付けることにより、車体側面方向からの荷重に対して充分な強度及び剛性を確保することができると共に、ドアガラスのガタを充分低減でき、側面視でリヤサッシュと乗員とのラップが回避され、ドアパネルの衝撃エネルギー吸収ストロークを充分に確保でき、側面衝突時の安全性を更に高めることができる。
【0028】
更にリヤサッシュに閉断面構造を形成するようにブラケットを固定して、ブラケットを介して位置調整可能に取り付けることにより、車体側面方向からの荷重に対するリヤサッシュの強度及び剛性を更に高めることができると共に、ドアガラスのガタをより低減でき、ドアガラスをよりスムーズに昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両用ドアガラスの昇降装置の実施の形態の要部の構成を示す車両側面方向からの透視図である。
【図2】図1のI−I線拡大断面図である。
【図3】図1に示す実施の形態によるドアガラスの昇降状態を示す図である。
【図4】従来の車両用ドアガラスの昇降装置を説明する部分配置図である。
【図5】図4のII−II線拡大断面図である。
【図6】従来技術によるドアガラスの昇降状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ドア本体
2 フロントサッシュ
3 リヤサッシュ
4 ドアガラス
5 スライダ
6 ブラケット
7 ドアインナパネル
7a 後部縦壁部分
7b 内側壁部分
8 ホルダ
9 球ボルト(支軸)
11 雌ネジ部(位置調節機構)
12 穴(位置調節機構)
13 アジャストネジ(位置調節機構)
14 カバー
15 ブラケット
21 乗員

Claims (4)

  1. ドアガラスの下辺前部及び後部に各々略水平方向に延在して設けられた各支持軸の先端に各々スライダを支持する一方、ドアパネルによって形成されたドア本体内に上記各支持軸を上下方向に移動可能に嵌挿するスリットが形成されて上記スライダを転動或いは摺動可能に嵌装案内する断面略C字状のフロントサッシュ及びリヤサッシュを備えた車両用ドアガラスの昇降装置において、
    上記ドアガラスの下辺後部に設けられた支持軸は、
    上記ドアガラスのガラス面と略平行に延在してドアガラス後方に向けてドアガラスの突出すると共に、先端に上記スライダを支持し、
    上記リヤサッシュは、
    上記スリットが該車体前方側に位置し、該リヤサッシュと協働して上下方向に延在する中空な閉断面構造を形成するブラケット及び該ブラケットを上記ドアパネルの後部縦壁部分に位置調整可能に取り付ける位置調整機構を介して上記ドアパネルの後部縦壁部分に取り付けられたことを特徴とする車両用ドアガラスの昇降装置。
  2. 上記リヤサッシュは、
    上記ドアガラスのガラス面の延長位置において上記ドアパネルの後部縦壁部分
    に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアガラスの昇降装置。
  3. 上記リヤサッシュは、
    側面視で上記ドアガラスの昇降通路から外れた車両後方側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアガラスの昇降装置。
  4. 上記ドアガラスの端部にホルダを介して上記支持軸を設け、上記ドアガラスと上記スライダとの間に間隔を設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ドアガラスの昇降装置。
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