JP4603762B2 - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェットヘッドとしては、複数の圧力室が表面に沿って設けられた流路部材と、電圧が印加されることにより変形する圧電部材とを、接着剤で貼り合わせたものが知られている。
【0003】
例えば、フレキシブルプリントケーブルと電気的に接合するための表面電極が上面の長辺縁に沿って設けられたセラミックス製の圧電アクチュエータ(圧電部材)と、多数の圧力室が長辺方向に沿って配設された金属板製のキャビティプレート(流路部材)とを、圧電アクチュエータの下面(表面電極が設けられた面の裏面)とキャビティプレートの圧力室が設けられた面とを向かい合わせた状態で接着剤で貼り合わせるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−254634号公報(第4−8頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、セラミックス製の圧電部材は寸法精度が低いため、流路部材と良好に貼り合わせる際には、その圧電部材と流路部材とを接着剤を挟んで重ね合わせた状態で、非常に強い力で加圧する必要がある。
【0006】
しかしながら、圧電部材に対して外部から接着用の圧力を加える加圧用部材は、圧電部材の表面電極に当接した状態で圧電部材を押圧することとなるため、圧電部材に対する加圧力は表面電極の形成されている部分に集中する。その結果、表面電極の形成されていない部分では、接着が不十分となって圧力室間にインクのリークが生じたり、接着剤の厚みが厚くなり過ぎたりすることがあり、インクの吐出性能を低下させる原因となっていた。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、圧電部材と流路部材とを良好に貼り合わせることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法は、インク供給源、吐出ノズル及び前記吐出ノズルに接続される複数の圧力室が表面に沿って設けられた流路部材と、流路部材の上記表面に接着された状態で電気的に駆動されることにより圧力室の容積を変化させる板状の圧電部材とを有するインクジェットヘッドを製造するためのものである。そして、本製造方法は、流路部材と圧電部材とを加熱することによって接着する接着剤を挟んだ状態で圧電部材が複数の圧力室に跨って配置されるように加圧接着する接着工程と、接着工程よりも前に行われる工程であって、圧電部材における接着工程によって流路部材と接触する側の面の裏面に導電膜を形成する導電膜形成工程と、接着工程よりも後に、流路部材に圧力室を形成する工程と同一工程で形成された認識マークを基準にして導電膜を部分的に除去することにより、各圧力室に対応して設けられ圧電部材を駆動するための電極及び電極と同じ厚みのスペーサ部材に分離する分離工程とを含み、前記接着工程が、ヒータを内蔵しかつ平らな押圧面を有する加圧用部材により前記導電膜形成工程により形成された導電膜形成面を加熱及び押圧することを特徴としている。
【0009】
このような請求項1のインクジェットヘッドの製造方法によれば、接着工程において、圧電部材に対して外部から接着用の圧力を加える加圧用部材は、圧電部材のスペーサに当接した状態で圧電部材を押圧することとなるため、スペーサ部材の設けられている部分、即ち、圧電部材と流路部材との接触部分に圧力が加わるようにすることができる。このため、圧電部材と流路部材とを良好に貼り合わせることができ、その結果、安定したインク吐出性能のインクジェットヘッドを製造することができる。特に、圧電部材に形成した導電膜を電極及びスペーサ部材に分離するようにしているため、製造工程を簡略化することができる。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
一方、請求項2に記載のように、流路部材が、複数の圧力室が二次元方向に配置されたものである場合には、圧力部材と流路部材とを確実に貼り合わせるための困難性が一層高くなるが、本製造方法によれば良好に貼り合わせることができる。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、第1実施形態のインクジェットヘッドの分解斜視図であり、図2は、インクジェットヘッドの断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、インクジェットヘッド1は、キャビティプレート10と、圧電アクチュエータ20と、フレキシブルプリント回路(FPC:flexible printed circuit)40とを備えている。
ここで、まずキャビティプレート10の構造について説明する。
【0022】
図3は、キャビティプレート10の分解斜視図であり、図4は、キャビティプレート10の部分拡大分解斜視図である。
図3及び図4に示すように、キャビティプレート10は、ベースプレート12、スペーサプレート13、第1マニホールドプレート14、第2マニホールドプレート15及びノズルプレート43の5枚の薄板を接着剤で接合することにより積層した構造となっている。なお、本第1実施形態では、ノズルプレート43を除いた各プレート12,13,14,15は、42%ニッケル合金鋼板製で、50μm〜150μm程度の厚さである。
【0023】
ノズルプレート43には、微小径のインク吐出用のノズル54が、このノズルプレート43の長手方向に沿って2列の千鳥配列状に配設されている。
また、第2マニホールドプレート15には、ノズルプレート43の各ノズル54と対応する位置に複数の貫通孔15aが設けられており、更に、貫通孔15aの列の両側に沿って延びるように一対のマニホールド室15b,15bが設けられている。同様に、第1マニホールドプレート14にも、第2マニホールドプレートの貫通孔15a及びマニホールド室15b,15bと重なる位置に、貫通孔14a及びマニホールド室14b,14bが設けられている。なお、図4に示すように、第2マニホールドプレート15のマニホールド室15b,15bは、この第2マニホールドプレート15の上面側にのみ開口した凹み形状となっている。
【0024】
一方、スペーサプレート13には、第1マニホールドプレート14の各貫通孔14aと対応する位置に複数の貫通孔13aが設けられている。また、スペーサプレート13における貫通孔13aの列の両側には、第1マニホールドプレート14のマニホールド室14bに連通する複数の貫通孔13bが設けられており、更に、スペーサプレート13の長手方向の一端にも、各マニホールド室14bに連通する2つの供給孔13c,13cが設けられている。
【0025】
一方また、ベースプレート12には、その長辺方向に沿った中心線と直交する方向(短辺方向)に延びる細幅の圧力室(厳密には、圧電アクチュエータ20及びスペーサプレート13が貼り合わせられることで圧力室となる開口空間)16が多数設けられている。ここで、各圧力室16の一端16aは、スペーサプレート13及び各マニホールドプレート14,15に設けられた貫通孔13a,14a,15aを介してノズルプレート43のノズル54に連通している。また、各圧力室16の他端16bは、スペーサプレート13の貫通孔13bを介してマニホールドプレート14,15におけるマニホールド室14b,15bに連通している。なお、図4に示すように、各圧力室16の上記他端16bは、ベースプレート12の下面側にのみ開口した凹み形状となっている。
【0026】
また更に、ベースプレート12の長手方向の一端には、スペーサプレート13の供給孔13c,13cに連通する2つの供給孔12a,12aが設けられている。そして、供給孔12a,12aの上面には、その上方のインク供給源としてのインクタンク(図示せず)から供給されるインク中の塵除去のためのフィルタ29が張設されている。
【0027】
このような構造により、インクタンク(図示せず)からベースプレート12及びスペーサプレート13における供給孔12a,13cを介して左右両マニホールド室14b,15b内に流入したインクは、この各マニホールド室14b,15bから各貫通孔13bを通って各圧力室16内に分配されたのち、この各圧力室16内から各貫通孔13a,14a,15aを通って、各圧力室16に対応するノズル54に至る。
【0028】
次に、圧電アクチュエータ20の構造について説明する。
図5は、圧電アクチュエータ20の分解斜視図であり、図6は、圧電アクチュエータ20の部分拡大分解斜視図である。
図5に示すように、圧電アクチュエータ20は、8枚の圧電シート21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,22と、1枚の絶縁シート23とを積層した構造となっている。なお、本第1実施形態では、各圧電シート21a〜21g,22及び絶縁シート23の厚さは、いずれも15μm〜40μm程度である。また、絶縁シート23は、製造上、他の圧電シートと全く同じ材料(例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミックス材料)を用いることが好ましい。
【0029】
最下層の圧電シート22とそれを1番目として上方へ数えた場合の奇数番目の圧電シート21b,21d,21fの表面(広幅面)のうち短辺の中央線を挟んだ両側には、細幅の個別電極24が、これら各圧電シート22,21b,21d,21fの短辺と平行に、且つ、長辺に沿って複数並べてパターン形成されている。ここで、個別電極24は、キャビティプレート10における各圧力室16に対応した位置に形成されている。また、各個別電極24の幅寸法は、これと対応する圧力室16の広幅部よりも少し狭くなるように設定されている。
【0030】
一方、下から偶数番目の圧電シート21a,21c,21e,21gの表面(広幅面)には、複数個の圧力室16に対して共通のコモン電極25が形成されている。そして、各圧電シート21a〜21gのうち個別電極24及びコモン電極25が積層方向に重なる箇所(個別電極24及びコモン電極25に挟まれる箇所)が、圧電効果により機械的変位(歪み)を生じる活性部35である。
【0031】
また、圧力室16は、ベースプレート12の長辺方向に沿って2列に配列されているので、コモン電極25は、この2列の圧力室16を一体的に覆うように、偶数番目の圧電シート21a,21c,21e,21gの短辺方向の中央部において長辺方向に延びる平面視略矩形状に形成されている。そして、偶数番目の圧電シート21a,21c,21e,21gにおける短辺縁の近傍箇所には、この短辺縁の略全長にわたって延びる引き出し部25a,25aが、コモン電極25と一体形成されている。
【0032】
また更に、偶数番目の圧電シート21a,21c,21e,21gの表面のうち活性部35以外の箇所(偶数番目の圧電シート21a,21c,21e,21gにおける長辺縁の近傍箇所であって、コモン電極25が形成されていない箇所)には、個別電極24と略同じ幅寸法で長さの短いダミー個別電極26が、個別電極24と同じ上下位置に形成されている。これらダミー個別電極26は、圧電アクチュエータ20の変形作用(歪み)には寄与しない捨てパターンの電極であり、各圧電シート22,21a〜21g及び絶縁シート23を積層した場合の部分的な厚さの変化を少なくするためのものである。
【0033】
一方、奇数番目の圧電シート22,21b,21d,21fの表面のうち引き出し部25a,25aと対応する位置(同じ上下位置)には、捨てパターンの電極としてのダミーコモン電極27が形成されている。
一方また、最上層の圧電シートである絶縁シート23の表面には、個別電極24に対応する表面電極30と、コモン電極25の引き出し部25aに対応する表面電極31とが、当該絶縁シート23の長辺縁に沿って設けられている。
【0034】
そして更に、絶縁シート23の表面には、表面電極30と交互にダミー表面電極34が設けられている。このダミー表面電極34は、圧電アクチュエータ20の変形作用には寄与しない捨てパターンの電極であり、表面電極30,31と同じ材質且つ同じ厚みのものである。また、ダミー表面電極34は、図7及び図8に示すように、キャビティプレート10における圧電室16と重ならず且つ圧力室16に隣接する部分に相当する位置に形成されており、表面電極30とダミー表面電極34とにより各圧力室16の周囲を取り囲むような配置となっている。
【0035】
そして、最下層の圧電シート22を除いて、他の全ての圧電シート21a〜21g及び絶縁シート23には、表面電極30と、これに対応する位置の個別電極24及びダミー個別電極26とが互いに連通するように、スルーホール32が穿設されている。同様に、圧電シート21a〜21g及び絶縁シート23には、少なくとも1つの表面電極31(本第1実施形態では絶縁シート23の四隅の表面電極31)と、これに対応する位置の引き出し部25a及びダミーコモン電極27とが互いに連通するように、スルーホール33が穿設されている。これら各スルーホール32,33には、個別電極24やコモン電極25等と同じ材質(例えばAg−Pd系の導電ペースト等)の導電材料が充填されている。そのため、上下に積層した複数の圧電シート22,21a〜21g及び絶縁シート23においては、同じ上下位置の個別電極24とダミー個別電極26と表面電極30とがスルーホール32内の導電材料を介して電気的に接続される一方、同じく上下複数枚のコモン電極25とダミーコモン電極27と表面電極31とがスルーホール33内の導電材料を介して電気的に接続される。
【0036】
なお、各圧電シート21a〜21g及び絶縁シート23の各スルーホール32,33は、各圧電シート21a〜21g及び絶縁シート23の長辺方向に沿って一列状に整列しないように適宜ずらして穿設されている。
次に、圧電アクチュエータ20の製造方法について説明する。なお、ここでは、シート状の素材から複数個の圧電アクチュエータ20を製造する場合について述べる。
【0037】
まず、圧電アクチュエータ20における圧電シート21b(21d,21f,22も同様)の複数個分をマトリックス状に並べた大きさを有する第1素材シート(グリーンシート)の表面のうち各圧電シート21b(21d,21f)となる箇所に、複数個の個別電極24と捨てパターンの電極としてのダミーコモン電極27とを設ける位置に対して、予めスルーホール32を穿設する。
【0038】
同様にして、圧電シート21a(21c,21e,21gも同様)の複数個分をマトリックス状に並べた大きさを有する第2素材シート(グリーンシート)の表面のうち各圧電シート21a(21c,21e,21g)となる箇所に、複数個のコモン電極25の引き出し部25aと捨てパターンの電極としてのダミー個別電極26とを設ける位置に対して、予めスルーホール33を穿設する。
【0039】
更に、絶縁シート23の複数個をマトリックス状に並べた大きさを有する第3素材シート(グリーンシート)の表面のうち各絶縁シート23の箇所に、複数個の表面電極30,31を設ける位置に対して、スルーホール32,33を穿設する。
【0040】
そして、各圧電シート22,21b,21d,21fの表面に個別電極24及びダミーコモン電極27を、各圧電シート21a,21c,21e,21gの表面にコモン電極25及びダミー個別電極26を、絶縁シート23の表面に表面電極30,31及びダミー表面電極34を、それぞれAg−Pd系の導電ペースト等の導電材料を用いたスクリーン印刷にて形成する。
【0041】
この場合、各スルーホール32,33は、第1〜第3素材シートの上下広幅面に貫通しているから、各スルーホール32,33内に導電材料が浸入し、各スルーホール32,33を介して各電極部分24,25,26,27,30,31を通じてシートの上下面で導通可能となる。次いで、各素材シートを乾燥したのち積層し、次いで積層方向にプレスすることにより一体化して1枚の積層体にして焼成する。その後所定の大きさにカットする。
【0042】
以上により、上下に積層した複数の圧電シート22,21a〜21g及び絶縁シート23においては、同じ上下位置の個別電極24とダミー個別電極26と表面電極30とがスルーホール32内の導電材料を介して電気的に接続される一方、同じく上下複数枚のコモン電極25とダミーコモン電極27と表面電極31とがスルーホール33内の導電材料を介して電気的に接続される。
【0043】
次に、こうして製造された圧電アクチュエータ20を、キャビティプレート10及びFPC40と貼り合わせてインクジェットヘッド1を製造する工程について説明する。
まず、圧電アクチュエータ20の下面(キャビティプレート10の圧力室16と対向する広幅面)全体に、インク非浸透性の合成樹脂材からなる接着剤41(図2)を予め塗布する。
【0044】
次いで、図7に示すように、キャビティプレート10に対して、圧電アクチュエータ20における各個別電極24がキャビティプレート10における各圧力室16の各々に対応するように重ね合わせ、ヒータを内蔵すると共に平らな押圧面を有した加圧用部材としてのヒータバー(図示せず)により、圧電アクチュエータ20の上面を加圧しつつ加熱する。ここで、圧電アクチュエータ20の上面には、キャビティプレート10と接触する部分の裏側に相当する位置に表面電極30,31及びダミー表面電極34が設けられており、これらがヒータバーの押圧面に当接する。このため、ヒータバーからの押圧力は、表面電極30,31及びダミー表面電極34が設けられた位置に相当する各圧力室16の周囲部分に集中することとなり、圧電アクチュエータ20とキャビティプレート10とが良好に貼り合わせられる。なお、本工程が接着工程に相当する。
【0045】
その後、圧電アクチュエータ20の上面に、FPC40を重ね押圧することによって、FPC40における各種の配線パターン(図示せず)を各表面電極30,31に電気的に接合する。
そして、全個別電極24とコモン電極25との間に、通常の使用時よりも高い電圧を印可することで、圧電シート21a〜21gの上記両電極24,25間に挟まれる部分を分極処理する。
【0046】
以上の構成において、圧電アクチュエータ20における各個別電極24のうち任意の個別電極24とコモン電極25との間に電圧を印加することにより、圧電シート21a〜21gのうち電圧を印加した個別電極24に対応する部分が圧電による積層方向の歪みを生じ、この歪みにて各個別電極24に対応する圧力室16の内容積が縮小されることにより、圧力室16内のインクがノズル54から液滴状に吐出して、所定の印字が行われる。
【0047】
なお、本第1実施形態のインクジェットヘッド1では、キャビティプレート10が、流路部材に相当し、圧電アクチュエータ20(詳しくは、圧電アクチュエータ20から表面電極30,31及びダミー表面電極34を除いたもの)が、圧電部材に相当し、ダミー表面電極34が、スペーサ部材に相当している。
【0048】
以上のように、本第1実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法によれば、キャビティプレート10と圧電アクチュエータ20とを貼り合わせる際に、ヒータバーによる押圧力を、圧電アクチュエータ20の表面電極30,31及びダミー表面電極34によって、確実な接着が要求される圧力室16の周囲部分に伝えることができるため、キャビティプレート10と圧電アクチュエータ20とを良好に貼り合わせることができる。その結果、圧力室16間でのインクのリークや、接着剤41の厚みが厚くなることによる圧力室16の容積変化量の低下(インク吐出速度の低下)等を防止することができるため、安定したインク吐出性能のインクジェットヘッド1を製造することができる。
【0049】
そして特に、本インクジェットヘッド1の製造方法では、ダミー表面電極34の厚み及び材質を表面電極30,31と同じにしているため、表面電極30,31及びダミー表面電極34によってヒータバーからの押圧力を均等に伝達することができる。加えて、製造も容易となる。
【0050】
次に、第2実施形態について説明する。
図9は、インクジェットヘッドの平面図である。図10は、図9内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図11は、図10内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図12は、図9に示すインクジェットヘッドの要部断面図である。図13は、図9に示すインクジェットヘッドの要部分解斜視図である。
【0051】
図9に示すように、インクジェットヘッド101は、一方向(主走査方向)に延在した矩形平面形状をしている。インクジェットヘッド101は、後述する多数の圧力室110やインク排出口(ノズル)108(共に図10〜図12参照)が形成された流路ユニット104を有しており、その上面には、千鳥状になって2列に配列された複数の台形のアクチュエータユニット121が接着されている。より詳細には、各アクチュエータユニット121は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット104の長手方向に沿うように配置されている。また、隣接するアクチュエータユニット121の斜辺同士が、流路ユニット104の幅方向にオーバーラップしている。なお、図9〜図13では図示省略しているが、アクチュエータユニット121上には、後述する個別電極135及び共有電極134の電位を制御する信号を供給するためのFPC150(図15参照)がそれぞれ貼り付けられている。
【0052】
アクチュエータユニット121の接着領域と対応した流路ユニット104の下面は、インク吐出領域となっている。インク吐出領域の表面には、後述するように、多数のインク排出口108がマトリクス状に(二次元方向に)配列されている。また、流路ユニット104の上方には、その長手方向に沿ってインク溜まり103が配置されている。インク溜まり103は、その一端に設けられた開口103aを介してインク供給源としてのインクタンク(図示せず)に連通しており、常にインクで満たされている。インク溜まり103には、その延在方向に沿って開口103bが2つずつ対になって、アクチュエータユニット121が設けられていない領域に千鳥状に設けられている。
【0053】
図9及び図10に示すように、インク溜まり103は、開口103bを介してその下層にある流路ユニット104内のマニホールド105と連通している。開口103bには、インク内に含有される塵埃などを捕獲するためのフィルタ(図示せず)が設けられていてよい。マニホールド105は、その先端部が2つに分岐して副マニホールド105aとなっている。1つのアクチュエータユニット121の下部には、当該アクチュエータユニット121に対してインクジェットヘッド101の長手方向両隣にある2つの開口103bからそれぞれ2つの副マニホールド105aが進入してきている。つまり、1つのアクチュエータユニット121の下部には、合計で4つの副マニホールド105aがインクジェットヘッド101の長手方向に沿って延在している。各副マニホールド105aには、インク溜まり103から供給されたインクが満たされている。
【0054】
図10及び図11に示すように、アクチュエータユニット121に対応したインク吐出領域の表面には、多数のインク排出口108が配列されている。各インク吐出口8は、図12からも分かるように、先細形状のノズルとなっており、平面形状がほぼ菱形の圧力室(キャビティ)10(長さ900μm、幅350μm)及びアパーチャ112を介して副マニホールド105aと連通している。このようにして、インクジェットヘッド101には、インクタンクからインク溜まり103、マニホールド105、副マニホールド105a、アパーチャ112及び圧力室110を経てインク吐出口8に至るインク流路132が形成されている。なお、図10及び図11において、図面を分かりやすくするために、アクチュエータユニット121の下方にあって破線で描くべき圧力室110及びアパーチャ112を実線で描いている。更に、図10及び図11において、後述する溝部153及び導電膜138の図示を省略している。
【0055】
また、図11からも明らかなように、アクチュエータユニット121の下方にあるインク吐出領域に対応した流路ユニット104内では、1つの圧力室110と連通したアパーチャ112が当該圧力室に隣接する圧力室110と重複するように、圧力室110同士が密着して配列されている。このようなことが可能なことの一因は、図12にも示すように、圧力室110とアパーチャ112とを異なる高さに設けるようにしたからである。このようにすることで、圧力室110を高密度に配列することが可能であり、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド101により高解像度の画像形成を実現している。
【0056】
圧力室110は、図10及び図11に描かれた平面内において、インクジェットヘッド101の長手方向(第1配列方向)と、インクジェットヘッド101の幅方向からやや傾いた方向(第2配列方向)との2方向にインク吐出領域内で配列されている。インク吐出口8は、第1配列方向には50dpiで配列されている。一方で、圧力室110は、第2配列方向には1つのインク吐出領域内に最大で12個が含まれるように配列されており、そして、第2配列方向に12個の圧力室110が配列されたことによる第1配列方向への変位は圧力室110の1つ分に相当している。これにより、インクジェットヘッド101の全幅内で、第1配列方向に隣接する2つのインク吐出口8間の距離だけ離隔した範囲には、12個のインク吐出口8が存在するようになっている。なお、各インク吐出領域の第1配列方向についての両端部(アクチュエータユニット121の斜辺に相当する)では、インクジェットヘッド101の幅方向に対向するインク吐出領域と相補関係となることで上記条件を満たしている。そのため、本インクジェットヘッド101では、第1及び第2配列方向に配列された多数のインク吐出口8から、インクジェットヘッド101の幅方向への用紙に対する相対的な移動に伴って順次インク滴を吐出させることで、主走査方向に600dpiで印刷を行うことが可能になっている。
【0057】
次に、インクジェットヘッド101の断面構造について説明する。
図12及び図13に示すように、インクジェットヘッド101の底部側の要部は、上から、アクチュエータユニット121、キャビティプレート122、ベースプレート123、アパーチャプレート124、サプライプレート125、マニホールドプレート126,127,128、カバープレート129、ノズルプレート130の合計10枚のシート材が積層された積層構造を有している。これらのうち、アクチュエータユニット121を除いた9枚のプレートから流路ユニット104が構成されている。
【0058】
アクチュエータユニット121は、後で詳述するように、4枚の圧電シートが積層され且つ電極が配されることによってそのうちの最上層だけが活性層とされ残り3層が非活性層とされたものである。キャビティプレート122は、圧力室110に対応するほぼ菱形の開口(即ち、アクチュエータユニット121及びベースプレート123と貼り合わせられることで圧力室110となる開口空間)が多数設けられた金属プレートである。ベースプレート123は、キャビティプレート122の1つの圧力室110について、圧力室110とアパーチャ112との連絡孔及び圧力室110からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。アパーチャプレート124は、キャビティプレート122の1つの圧力室110について、アパーチャ112のほかに圧力室110からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート125は、キャビティプレート122の1つの圧力室110について、アパーチャ112と副マニホールド105aとの連絡孔及び圧力室110からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。マニホールドプレート126,127,128は、副マニホールド105aに加えて、キャビティプレート122の1つの圧力室110について、圧力室110からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。カバープレート129は、キャビティプレート122の1つの圧力室110について、圧力室110からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート130は、キャビティプレート122の1つの圧力室110について、ノズルとして機能する先細のインク吐出口8がそれぞれ設けられた金属プレートである。
【0059】
これら10枚のシート121〜130は、図12に示すようなインク流路132が形成されるように、互いに位置合わせして積層される。このインク流路132は、副マニホールド105aからまず上方へ向かい、アパーチャ112において水平に延在し、それから更に上方に向かい、圧力室110において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ112から離れる方向に斜め下方に向かってから垂直下方にインク吐出口8へと向かう。
【0060】
次に、アクチュエータユニット121の詳細な構造について説明する。
図14は、図11に示す領域におけるアクチュエータユニット121の拡大平面図である。図15は、図14のA−A線に沿ったインクジェットヘッド101の部分断面図である。
【0061】
図14に示すように、アクチュエータユニット121の上面であって平面視で各圧力室110と実質的に重なり合う位置には、厚さ1.1μm程度の個別電極135がそれぞれ設けられている。個別電極135は、ほぼ菱形の電極部135aと、電極部135aの一方の鋭角部から連続して形成された矢印形状の電極部135aとからなる。電極部135aは、圧力室110よりも一回り小さくほぼこれと相似形状を有しており、平面視において圧力室110に収まるように配置されている。また、電極部135aは、平面視においてそのほとんどの領域が圧力室110からはみ出している。
【0062】
アクチュエータユニット121の上面の個別電極135以外の領域は、そのほとんどが個別電極135と同じ厚みで同じ材料からなる導電膜138で被覆されている。個別電極135と導電膜138との間は、個別電極135の外縁に沿ってアクチュエータユニット121の表面に形成された幅30μm程度、深さ5〜10μm程度の溝部153によって絶縁されている。後述するように、溝部153によって隣接する個別電極135同士の相互干渉が軽減されるので、クロストークの発生を抑制することが可能となっている。
【0063】
図15に示すように、アクチュエータユニット121は、それぞれ厚みが15μm程度で同じになるように形成された4枚の圧電シート141,142,143,144を含んでいる。そして、アクチュエータユニット121には、個別電極135及び共通電極134の電位を制御する信号を供給するためのFPC150が貼り付けられている。圧電シート141〜144は連続平板層であり、アクチュエータユニット121は、インクジェットヘッド101内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室110に跨って配置されている。圧電シート141〜144が連続平板層として多数の圧力室110に跨って配置されることで、圧電素子の機械的剛性を高く保つことができるので、インクジェットヘッド101におけるインク吐出性能の応答性を高めることができるようになっている。本第2実施形態において、圧電シート141〜144は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
【0064】
最上層にある圧電シート141とその下方に隣接した圧電シート142との間には、シート全面に形成された厚み2μm程度の共通電極134が介在している。また、上述したように、アクチュエータユニット121の上面つまり圧電シート141の上面には、平面形状が圧力室110と相似形状(長さ850μm、幅250μm)を有し且つ積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる電極部135aと矢印形状の電極部135bとからなる個別電極135が、圧力室110毎に形成されている。更に、圧電シート143と圧電シート144との間、及び、圧電シート142と圧電シート143との間には、アクチュエータユニット121を補強するための補強用金属膜136a,136bがそれぞれ介在している。補強用金属膜136a,136bは、共通電極134とほぼ同じ厚さを有している。本第2実施形態において、個別電極135、導電膜138は下地にNi(膜厚1μm程度)、表層にAu(膜厚0.1μm程度)が形成された積層金属材料からなるものであり、共通電極134及び補強用金属膜136a,136bは、Ag−Pd系の金属材料からなるものである。補強用金属膜136a,136bは電極として作用するものではなく必ずしも設ける必要はないが、補強用金属膜136a,136bがあることで焼結後の圧電シート141〜144の脆さを補うことができ、圧電シート141〜144がハンドリングし易くなるという利点がある。
【0065】
共通電極134は、図示しない領域においてFPC150を介して接地されている。これにより、共通電極134は、全ての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位に保たれている。また、個別電極135は、各圧力室110に対応するもの毎に電位を制御することができるように、矢印形状の電極部135aにおいて、個別電極135毎に独立してFPC150内に配線されたリード線(図示せず)と接触しており、このリード線を介して図示しないドライバに接続されている。このように、本第2実施形態では、平面視において圧力室110の外側にある電極部135aにおいて個別電極135とFPC150とが接続されていることにより、アクチュエータユニット121の積層方向への伸縮が阻害されることが少なく、圧力室110の容積変化量を大きくすることができるようになっている。なお、共通電極134は、積層方向への射影領域が圧力室領域を含むように或いは射影領域が圧力室領域に含まれるように圧力室110毎に多数形成されたものであってもよく、必ずしもシート全面に形成された1枚の導電シートである必要はない。ただし、このとき、圧力室110に対応する部分が全て同一電位となるように共通電極同士が電気的に接続されていることが必要である。
【0066】
本第2実施形態のインクジェットヘッド101において、圧電シート141〜144の分極方向はその厚み方向となっている。つまり、アクチュエータユニット121は、最上側(つまり、圧力室110から最も離れた)の圧力シート141を活性層とし且つ下側(つまり、圧力室110に近い)3枚の圧電シート142〜144を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。したがって、個別電極135を正又は負の所定電位とすると、例えば電界と分極とが同方向であれば活性層である圧電シート141の電極に挟まれた部分が分極方向と直角方向に縮む。一方、圧電シート142〜144は、電界の影響を受けないため自発的には縮まないので、最上層の圧電シート141と下層の圧電シート142〜144との間で、シート間で分極方向への歪みに差を生じることとなり、圧電シート141〜144全体が非活性側に凸となる変形を生じる(ユニモルフ変形)。このとき、図15で示したように、圧電シート141〜144の下面は圧力室を区画する隔壁(キャビティプレート)122の上面に固着されているので、結果的に圧電シート141〜144は圧力室側へ凸になるように変形する。このため、圧力室110の容積が低下して、インクの圧力が上昇し、インク吐出口8からインクが吐出される。その後、個別電極135への駆動電圧の印加が停止されれば、圧電シート141〜144は元の形状に戻って、圧力室110の容積が元の容積に戻るので、インクをマニホールド105側から吸い込む。
【0067】
なお、他の駆動方法として、予め個別電極135に電圧を印加しておき、吐出要求がある毎に一旦電圧の印加を停止し、その後所定のタイミングにて再び電圧を印加する方法を用いることもできる。この場合は、電圧の印加が停止されたタイミングで、圧電シート141〜144が元の形状に戻ることにより、圧力室110の容積は、初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、インクがマニホールド105側から吸い込まれ、その後再び電圧が印加されたタイミングで、圧電シート141〜144が圧力室側へ凸となるように変形し、圧力室の容積低下によりインクへの圧力が上昇し、インクが吐出される。
【0068】
また、例えば電界と分極とが逆方向であれば電極に挟まれた活性層である圧電シート141の一部が分極方向と直角方向に伸びる。したがって、圧電シート141〜144の電極134,35に挟まれた部分は、圧電横効果により、圧力室側に凹となるように湾曲する。このため、圧力室110の容積が増加して、インクをマニホールド105側から吸い込む。その後、個別電極135への駆動電圧の印加が停止されれば、圧電シート141〜144は元の形状に戻って、圧力室110の容積が元の容積に戻るので、インクをノズルから吐出する。
【0069】
このように、本第2実施形態のインクジェットヘッド101では、アクチュエータユニット121の圧力室から最も離れた圧電シート141が活性層であって、その圧力室側にある面とは反対側の面(上面)に個別電極135が形成されていると共に、圧電シート141の上面に個別電極135同士の離隔を保つような導電膜138が形成されている。そのため、接着力の強化のために個別電極135だけでなく圧電シート141上の全面にFPC150を接着により貼り合わせた場合に、個別電極135以外の領域に個別電極135とほぼ同じ厚さを有する導電膜138が存在するために、個別電極135が形成された領域とそれ以外の領域とに高低差がほとんど生じない。したがって、FPC150を引き剥がそうとする外力がこれに加えられた場合であっても、FPC150とアクチュエータユニット121とが剥がれにくくなって、インクジェットヘッド101の信頼性が向上する。
【0070】
また、本第2実施形態のインクジェットヘッド101は、アクチュエータユニット121の圧力室から最も離れた圧電シート141だけが活性層であって、その圧力室側にある面とは反対側の面(上面)上だけに個別電極135が形成されたものである。そのため、アクチュエータユニット121を作製する際に、平面視で重なるように設けられた個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを形成する必要がなく、容易に製造可能である。
【0071】
更に、本第2実施形態のインクジェットヘッド101は、圧力室110から最も離れた活性層としての圧電シート141と流路ユニット104との間に、3枚の非活性層としての圧電シートが配置されたものである。このように、1層の活性層に対して非活性層を3層とすることで、圧力室110の容積変化量を比較的大きくすることができ、したがって、個別電極135の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室110の小型化及び高集積化を図ることが可能となる。
【0072】
本第2実施形態のインクジェットヘッド101は、活性層である圧電シート141と非活性層である圧電シート142〜144とが同じ材料で形成されているために、材料を交換する手間が不要となり、比較的簡略な製造工程により製造可能である。そのため、製造コストを低減できることが期待される。更に、活性層である圧電シート141と非活性層である圧電シート142〜144とが全て実質的に同じ厚みを有していることからも、製造工程の簡略化によるコスト削減を図ることができる。なぜなら、圧電シートとなるセラミックス材料を塗布積層していくときの厚さ調整工程を簡単に行うことができるようになるからである。
【0073】
また、上述のように構成された本第2実施形態のインクジェットヘッド101によれば、圧電シート141を共通電極134と個別電極135とで挟み込むことにより、圧電効果によって容易に圧力室110の容積を変化させることができる。また、活性層である圧電シート141が連続平板層であるため、容易に製造することが可能である。
【0074】
また、本第2実施形態のインクジェットヘッド101は、圧力室110に近い圧電シート142〜144を非活性層とし、圧力室110から離れた圧電シート141を活性層としたユニモルフ構造のアクチュエータユニット121を有している。そのため、圧電横効果により圧力室110の容積変化量を大きくすることができて、圧力室110側が活性層でその反対側が非活性層のインクジェットヘッドと比較して、個別電極135に印加される電圧の低電圧化や圧力室110の高集積化を図ることが可能となる。印加電圧の低電圧化を図ることにより、個別電極135を駆動するドライバを小型化できてコストを抑えることができ、圧力室110を小さくできてその高集積化を図ったときであっても十分な量のインクを吐出することが可能となって、ヘッド101の小型化と印刷ドットの高密度配置が実現される。
【0075】
次に、本第2実施形態のインクジェットヘッド101の製造方法について、更に図16〜図20を参照しつつ説明する。
インクジェットヘッド101を製造するには、まず流路ユニット104及びアクチュエータユニット121をそれぞれ並行して別個に作製し、その後両者を接着する。流路ユニット104を作製するには、これを構成する各プレート122〜130に、パターニングされたフォトレジストをマスクとした異方性エッチングを施して、図12及び図13に示すような開孔及び凹部を各プレート122〜130のそれぞれに形成する。また、図16に示すように、キャビティプレート122に圧力室110を形成する際、これと同時のエッチング工程により、円形のマーク(キャビティ位置認識マーク)155を形成する。つまり、圧力室110及びマーク155に相当する部分に開孔を有するフォトレジストをマスクとしてキャビティプレート122にエッチングを施す。マーク155は、後述するレーザ加工のトレース位置決定・修正のために設けられるものであり、例えば、インク吐出領域外において、キャビティプレート122の長手方向の所定間隔毎に、キャビティプレート122の幅方向に離れた2個所に形成される。マーク155は開孔であってもよいし、凹部であってもよい。なお、図16においては、多数の圧力室110のうち一部の圧力室110だけを図示している。
【0076】
変形例として、マーク155は、圧力室110を形成するためのエッチングと別工程で、つまり別のフォトレジストをマスクとして行うようにしてもよい。しかしながら、マーク155を形成するためのエッチングを圧力室110を形成するためのエッチングと同時の工程とすることで、圧力室110に対するマーク155の位置精度を高めることができ、後述するように個別電極135と圧力室110との位置精度が向上するという利益が得られる。
【0077】
また、キャビティプレート122以外の8枚のプレート123〜130についても、エッチングにより開孔を形成する。その後、インク流路132が形成されるように9枚のプレート122〜130を接着剤を介在させつつ重ね合わせ、接着することで流路ユニット104を作製する。
【0078】
一方、アクチュエータユニット121を作製するには、まず、圧電シート144となるセラミックス材料上に、補強用金属膜136aとなる導電性のペーストをパターン印刷する。それと並行して、圧電シート143となるセラミックス材料上に補強用金属膜136bとなる導電性のペーストをパターン印刷すると共に、圧電シート142となるセラミックス材料上に共通電極134となる導電性のペーストをパターン印刷する。その後、4枚の圧電シート141〜144を冶具を用いて位置合わせしつつ重ね合わせることによって得られた積層物を所定の温度で焼成する。これにより、最上層にある圧電シート141の下面に共通電極134が形成された、個別電極を有しない積層物が形成される。この時点でのアクチュエータユニット121の部分拡大断面図を図17に示す。
【0079】
しかる後、圧電シート141上の全面に導電膜138を、PVD(Physical Vapor Deposition:物理的蒸着)、印刷又はメッキにより形成する。この時点でのインクジェットヘッド101の図15に相当する断面図を図18(a)に、その一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図19(a)にそれぞれ示す。なお、この工程が、導電膜形成工程に相当する。
【0080】
次に、上述のようにして作製されたアクチュエータユニット121となる積層物を、圧電シート144とキャビティプレート122とが接触するように流路ユニット104と接着することとなるが、その際、圧電シート144とキャビティプレート122との間に接着剤を介在させた状態で両者を重ね合わせ、ヒータを内蔵すると共に平らな押圧面を有した加圧用部材としてのヒータバー(図示せず)により、アクチュエータユニット121となる積層物の導電膜138形成面を加圧しつつ加熱する。その際、ヒータバーの押圧面は導電膜138全域に当接するため、ヒータバーからの押圧力が均一に加わることとなる。なお、本工程が接着工程に相当する。
【0081】
なお、アクチュエータユニット121となる積層物と流路ユニット104との位置合わせは、流路ユニット104のキャビティプレート122の表面及び圧電シート141の表面にそれぞれ形成された位置合わせのための目印に基づいて行われるが、アクチュエータユニット121となる積層物に未だ個別電極が形成されていないことから、高い精度を要求されない。
【0082】
次に、図18(b)及び図20に示すように、キャビティプレート122上に形成されたマーク155を基準にして、平面視で圧力室110の外縁やや内側にレーザが照射されるよう出射方向を制御しつつ例えばYAGレーザを用いてレーザ加工を行い、圧電シート141上の導電膜138の図14に示す溝部153に対応する領域157(図20において太線で示す)だけを除去する。こうして導電膜138を部分的に除去することにより、導電膜138とは絶縁した個別電極135のパターンが形成される。このときの図18(b)の一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図19(b)に示す。なお、この工程が、分離工程に相当する。
【0083】
このように、本第2実施形態では、圧力室110のある流路ユニット104側に形成されたマーク155に基づいてレーザ加工により個別電極135のパターンを形成するので、予め個別電極などが形成されたアクチュエータユニットを流路ユニットに接着する場合と比較して、圧電シート141上に形成される個別電極135の圧力室110に対する位置精度が向上する。これにより、インク吐出性能の均一性が優れたものとなり、インクジェットヘッド101の長尺化を図ることが容易になる。つまり、本第2実施形態のようにアクチュエータユニット121を複数設け、それらを流路ユニット104の長手方向に配列するのではなく、アクチュエータユニット121として流路ユニット104と同じ程度に長いものを1つだけ用いるようにすることができる。
【0084】
その後、個別電極135に電気信号を供給するためのFPC150をアクチュエータユニット121上に貼り付け、更に所定の工程を経ることによってインクジェットヘッド101の製造が完了する。
なお、本第2実施形態のインクジェットヘッド101では、流路ユニット104が、流路部材に相当し、アクチュエータユニット121(詳しくは、導電膜138を形成する前のアクチュエータユニット121)が、圧電部材に相当し、個別電極135を除く導電膜138が、スペーサ部材に相当している。
【0085】
以上のように、本第2実施形態のインクジェットヘッド101の製造方法によれば、流路ユニット104とアクチュエータユニット121とを貼り合わせる際に、ヒータバーによる押圧力を、アクチュエータユニット121の導電膜138によって均一に伝えることができるため、流路ユニット104とアクチュエータユニット121とを良好に貼り合わせることができる。その結果、圧力室110間でのインクのリークや、接着剤の厚みが厚くなることによる圧力室110の容積変化量の低下(インク吐出速度の低下)等を防止することができるため、安定したインク吐出性能のインクジェットヘッド101を製造することができる。特に、本第2実施形態では、流路ユニット104に多数の圧力室110が二次元方向に配列されており、アクチュエータユニット121と確実に貼り合わせるための困難性が高くなっている分、一層効果的である。
【0086】
また、本第2実施形態のインクジェットヘッド101の製造方法では、圧電シート141〜144を積層する際に隣接する圧電シート間に個別電極を形成しない、つまり、圧力室110から最も離れた圧電シート141だけが活性層となるようにしているので、平面視で重なるように設けられた個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを圧電シート141〜144に形成する必要が無い。そのため、上述したように、本第2実施形態のインクジェットヘッド101は、比較的簡易な工程により低コストで製造可能である。
【0087】
更に、本第2実施形態では、4枚の圧電シート141〜144を積層し、そのうち最上層の圧電シート141だけが活性層となり残りの3枚の圧電シート142〜144が非活性層となるようにしている。このようにして製造されたインクジェットヘッド101によれば、上述したように、圧力室110の容積変化量を比較的大きくすることができ、したがって、個別電極135の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室110の小型化及び高集積化を図ることが可能となる。
【0088】
また、本第2実施形態では、導電膜138が除去された後もレーザ加工を引き続いて行うことにより、圧電シート141の厚さの1/3〜2/3程度の深さを有する溝部153を圧電シート141に形成する。このように、個別電極135と導電膜138との間に個別電極135の外縁に沿って溝部153を形成することによって、ある圧力室110に対応した圧電シートの変形による影響が隣接する圧力室110上の圧電シートに伝わりにくくなり、隣接した圧力室110間のクロストークの発生を低減させることが可能となっている。
【0089】
また、本第2実施形態では、溝部153に対応する部分以外の導電膜138は除去しない。そのため、上述したように、接着力の強化のために個別電極135だけでなく圧電シート141上の全面にFPC150を接着により貼り合わせた場合に、個別電極135以外の領域に個別電極135とほぼ同じ厚さを有する導電膜138が存在することで、個別電極135が形成された領域とそれ以外の領域とに高低差がほとんど生じない。したがって、FPC150を引き剥がそうとする外力がこれに加えられた場合であっても、FPC150とアクチュエータユニット121とが剥がれにくくなって、インクジェットヘッド101の信頼性が向上するという利益が得られる。
【0090】
なお、本第2実施形態では、個別電極135のみ、共通電極134及び補強用金属膜136a,136bとは異なり圧電シート141〜144となるセラミックス材料と一緒に焼成しない。これは、個別電極135が露出しているために、焼成時の高温加熱により蒸発しやすく、セラミックス材料に被覆された共通電極134などに比べて厚みの制御が困難だからである。しかしながら、共通電極134なども焼成時に多少なりとも厚みが減少するので、焼成後の連続性を維持することを考慮するとその厚みを薄くすることが難しい。一方、個別電極135は、焼成後に上述したような手法で形成するために、共通電極134などよりも薄く形成することが可能である。このように、本第2実施形態のインクジェットヘッド101では、最も上層にある個別電極135を共通電極134よりも薄くすることで、活性層である圧電シート141の変位が個別電極135によって規制されづらくなって、インクジェットヘッド101における圧力室110の容積変形量を向上させている。
【0091】
また、圧電シートや電極の材料は、上述したものに限らず、その他の公知の材料に変更してもよい。また、圧力室の平面形状や断面形状、配置形態、活性層の数、非活性層の数などは、適宜変更してよい。また、活性層と非活性層とで層厚を異なる厚みにしてもよい。
【0092】
また、上記第2実施形態では、エッチングにより流路ユニットを構成する各プレートに開孔やマークを形成しているが、エッチング以外の方法で各プレートに開孔やマークを形成してもよい。また、上記第2実施形態では、レーザ加工を行う際に個別電極となる以外の導電膜を残存させているが、個別電極となる領域以外の導電膜は完全に除去してもよい。ただし、上述した利益が得られなくなることに加え加工時間が増加してコストアップにつながるので個別電極となる領域以外の導電膜の除去は特に行う必要は無い。
【0093】
また、上記第2実施形態では、最上層にある圧力室から最も離れた圧電シートだけを活性層としているが、それ以外の圧電シートを活性層としてもよい。このようなインクジェットヘッドを製造するには、圧電シートを積層する際に、活性層とする圧電シートの一方の面(例えば圧電シート142の下面)に接触するような個別電極をパターン印刷すればよい。この場合は、平面視で上下に重なり合う個別電極同士を接続するためのスルーホールを形成する必要があり、製造工程がやや煩雑となる。また、最上層の圧電シート以外と接触する個別電極の圧力室に対する位置精度は低下するものの、最上層の圧電シートが圧力室の容積変化に最も寄与すると考えられるため、本第2実施形態は有効である。
【0094】
また、上記第2実施形態では、導電膜の除去に引き続いて最上層の圧電シートを一部除去して溝部を形成しているが、溝部は必ずしも形成しなくてもよい。また、溝部は共通電極を孤立させない限りは上から2層目の圧電シート以下まで達していてもよく、溝部を深く形成するほどクロストーク抑制効果は大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態のインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】 図1に示すインクジェットヘッドの断面図である。
【図3】 キャビティプレートの分解斜視図である。
【図4】 キャビティプレートの部分拡大分解斜視図である。
【図5】 圧電アクチュエータの分解斜視図である。
【図6】 圧電アクチュエータの部分拡大分解斜視図である。
【図7】 圧電アクチュエータとキャビティプレートとの一端部を示す拡大斜視図である。
【図8】 圧電アクチュエータの平面図である。
【図9】 第2実施形態のインクジェットヘッドの平面図である。
【図10】 図9内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図11】 図10内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図12】 図9に示すインクジェットヘッドの要部断面図である。
【図13】 図9に示すインクジェットヘッドの要部分解斜視図である。
【図14】 図11に示す領域におけるアクチュエータユニットの拡大平面図である。
【図15】 図14のA−A線に沿ったインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図16】 図9に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、マークが形成されたキャビティプレートを示す平面図である。
【図17】 図9に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、アクチュエータユニットの部分拡大断面図である。
【図18】 図9に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における部分断面図である。
【図19】 図18に対応した部分拡大断面図である。
【図20】 図9に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、レーザ照射される領域を説明するための平面図である。
【符号の説明】
10…キャビティプレート、12…ベースプレート、13…スペーサプレート、14…第1マニホールドプレート、15…第2マニホールドプレート、16…圧力室、20…圧電アクチュエータ、21a〜21g,22…圧電シート、23…絶縁シート、24…個別電極、25…コモン電極、30,31…表面電極、34…ダミー表面電極、43…ノズルプレート、54…ノズル、101…インクジェットヘッド、103…インク溜まり、103a,103b…開口、104…流路ユニット、105…マニホールド、105a…副マニホールド、108…インク排出口、110…圧力室、112…アパーチャ、121…アクチュエータユニット、122…キャビティプレート、130…ノズルプレート、132…インク流路、134…共通電極、135…個別電極、135a,135b…電極部、136a,136b…補強用金属膜、141…圧電シート(活性層)、142〜144…圧電シート(非活性層)、150…FPC、153…溝部、155…マーク、157…領域
Claims (2)
- インク供給源、吐出ノズル及び前記吐出ノズルに接続される複数の圧力室が表面に沿って設けられた流路部材と、前記流路部材の前記表面に接着された状態で電気的に駆動されることにより前記圧力室の容積を変化させる板状の圧電部材とを有するインクジェットヘッドを製造するための製造方法であって、
前記流路部材と前記圧電部材とを加熱することにより接着する接着剤を挟んだ状態で前記圧電部材が複数の圧力室に跨って配置されるように加圧接着する接着工程と、
前記接着工程よりも前に行われる工程であって、前記圧電部材における前記接着工程によって前記流路部材と接触する側の面の裏面に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
前記接着工程よりも後に、前記流路部材に前記圧力室を形成する工程と同一工程で形成された認識マークを基準にして前記導電膜を部分的に除去することにより、各圧力室に対応して設けられ前記圧電部材を駆動するための電極及び前記電極と同じ厚みのスペーサ部材に分離する分離工程と、
を含み、
前記接着工程が、ヒータを内蔵しかつ平らな押圧面を有する加圧用部材により前記導電膜形成工程により形成された導電膜形成面を加熱及び押圧することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記流路部材は、前記複数の圧力室が二次元方向に配置されたものであることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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