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JP4602911B2 - 希土類系テープ状酸化物超電導体 - Google Patents

希土類系テープ状酸化物超電導体 Download PDF

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Description

本発明は、酸化物超電導体に係り、特に超電導ケーブルや超電導電力貯蔵のような電力機器及びモーターなどの動力機器への使用に適したテープ状の希土類系酸化物超電導体に関する。
酸化物超電導線材のうち、YBaCu7−x(YBCO)超電導線材は、金属基板上に2軸配向した無機材料薄膜を1層あるいは複数層形成し、その上に超電導膜および安定化層を順次形成した構造をとる。この線材は結晶が2軸配向しているため、ビスマス系の銀シース線材に比べて臨界電流(Ic)値が高く、液体窒素温度での磁場特性に優れているため、この線材を用いることにより、現在、低温で使用されている超電導機器を高温状態で使用できることが期待されている。
このYBCO超電導体の特性は、その結晶の配向性に大きく影響され、従って、この下層を構成する基板および中間層の結晶の配向性に大きく影響される。
即ち、YBCO超電導体の結晶系は斜方晶であり、このため、通電特性において材料の特性を発揮させるためには、結晶のCuO面を揃えるだけでなく、面内の結晶方位をも揃えることが要求される。その理由は、僅かな方位のずれが双晶粒界を発生させ、通電特性を低下させることによる。
YBCO超電導線材は、現在、種々の成膜方法で検討が行われ、テープ状金属基板の上に面内配向した中間層を形成した2軸配向金属基板の製造技術として、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法やRABiTS(商標:Rolling Assisted Biaxially Textured Substrate)法が知られており、無配向また配向金属テープ上に面内配向度と方位を向上させた中間層を形成したYBCO超電導線材が多く報告され、例えば、基板として、強圧延加工後の熱処理により配向集合組織を有するNi又はNi基合金からなる基板を用い、この表面上にNi酸化物の薄層、CeO等のMOD法により形成された酸化物中間層及びYBCO超電導層を順次形成した希土類系テープ状酸化物超電導体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この内、最も高特性が得られているのはIBAD基板を用いた方法である。この方法は、非磁性で高強度のテープ状Ni系基板(ハステロイ等)上に、このNi系基板に対して斜め方向からイオンを照射しながら、ターゲットから発生した粒子をレーザー蒸着法で堆積させて形成した高配向性を有し超電導体を構成する元素との反応を抑制する中間層(CeO 、YSZ等)または2層構造の中間層(YSZまたはGdZr/CeOまたはY等)を設け、その上にCeOをPLD法で成膜した後、YBCO層をPLDで成膜して超電導線材を製造するものである(例えば、特許文献2乃至4参照。)。
しかし、この方法は、全ての層が気相法による真空プロセスで作られるため、緻密で平滑な中間層膜を得ることができるという利点を有するが、成膜速度が遅く、また設備コストがかかり、線材価格が上がるなどの問題点があり、このIBAD法の他にもいくつかの気相を使った成膜方法が検討されているが、コスト、製造速度の問題を解決する有効な手段は報告されていない。
低コストを実現するために最も有効な方法は金属有機酸塩あるいは有機金属化合物を原料として用い、塗布後に熱処理を施すことによって酸化物層を形成するMOD法(Metal Organic Deposition Processes:金属有機酸塩堆積法)である。
このプロセスは簡便であるが、熱分解時の体積減少によって発生するクラック、や結晶粒成長の不完全さによる基板元素の拡散と結晶性の不完全性により、中間層としての機能を十分に持つ膜を得ることは困難であった。
一般にY系超電導体の中間層としては、上記のようにCeOが用いられているが、これは、CeO中間層がYBCO超電導層との整合性がよく、かつYBCO層との反応性が小さいため最も優れた中間層の一つとして知られていることによる。このCeO中間層をMOD法で成膜すると基板との熱膨張率との違い等の原因でクラックが入り、中間層としての機能を果たさない。CeOにGdを添加した固溶体をMOD法でNi基板上に成膜するとクラックの発生は抑えられるが、NiあるいはNi合金基板からの元素拡散を抑えることはできない。
また、Zr系の中間層も研究されており、基板からの元素拡散を防止する効果があることが報告されている。このZr系中間層を用いた線材に関しては、1MA/cmを超えるJcが得られることが一部の研究機関から報告されている。
特開2004−171841号公報 特開平4−329867号公報 特開平4−331795号公報 特開2002−202439号公報
上述のように、MODプロセスにおいて、中間層及び超電導層の全ての配向性を始めとする超電導特性を決定する要因の1つに基板表面の平滑性がある。中間層の配向は基板近傍から始まるため、基板表面の平滑性を向上させることができれば、その上に形成される膜の特性が改善されるばかりでなく、中間層の膜厚も薄くできる。これまでは、テープ形状の面の表面研磨は機械的な研磨手法を使って行われることが多く、これによって基板表面の温度が上がり基板の配向性を損ねるという問題点があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、基板上に表面平滑性に優れた第1中間層を設け、その上に形成される第2中間層及び超電導層の配向性を向上させ、超電導特性に優れた希土類系テープ状酸化物超電導体を提供することをその目的としている。
本発明の希土類系テープ状酸化物超電導体は、NiまたはNi基合金あるいはCuまたはCu基合金に冷間加工後、加熱処理を施して形成した2軸配向性を有する基板上にCe、GdまたはSmから選択された1種類の元素およびZrを含む各金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に金属元素量で0.08〜0.5mol/l溶解した混合溶液を塗布後仮焼する工程を複数回繰り返して形成された Zr (ここでAは、Ce、GdまたはSmから選択された1種類の元素を示す。)からなる第1中間層と、CeO膜またはCe−Gd−O膜からなる第2中間層および酸化物超電導層を順次形成するようにしたものである。
上記の第1中間層は、Ce、GdまたはSmから選択された1種類の元素およびZrを含む各金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した混合溶液を塗布後仮焼する工程を複数回繰り返すことにより形成される
本発明によれば、2軸配向した基板上に表面平滑性に優れた第1中間層を形成したことにより、この上に成膜される第2中間層及び超電導層の配向性が向上し、その結果、1MA/cm以上の臨界電流密度(Jc)を有する超電導特性に優れた希土類系テープ状酸化物超電導体を得ることができる。
本発明の希土類系テープ状酸化物超電導体は、2軸配向性を有する基板上に、5nm以下の表面平滑性を有するAZr第1中間層(ここで、Aは、Ce、ZrまたはSmにいずれか1種を示す。)、第2中間層および酸化物超電導層を順次設けたものであるが、この酸化物超電導層の上には、通常、金属性の安定化層が積層される。
上記の2軸配向した基板としては、Niまたはこれに1種類以上の元素を添加してなるNi基合金あるいはCuまたはこれに1種類以上の元素を添加してなるCu基合金を冷間圧延して所定の厚さにした後、熱処理を施したものが用いられるが、この場合の熱処理は900〜1300℃の温度範囲で、基板の表面酸化を防ぐために水素を含んだ不活性ガス雰囲気中で施される。この熱処理により、NiまたはNi基合金あるいはCuまたはCu基合金を高配向化させることができる。この熱処理は、連続方式でもバッチ方式のいずれをも採用することができる。
また、上記のNi基合金あるいはCu基合金は、NiまたはCuにW、Sn、Zn、Mo、Cr、V、TaまたはTiの中から選択されたいずれか1種以上の元素を添加した合金を用いることができ、この場合の添加元素量は、0.1〜15at%の範囲とすることが好ましい。この添加元素量が0.1at%未満であると、基板強度が弱く、その後のプロセスによって劣化を起こす恐れがあり、15at%を超えると、冷間圧延および熱処理によって2軸配向性が得られにくいだけでなく、その後のプロセスによって添加元素が中間層中に拡散し、超電導特性を低下させる。
また、特に、基板の平滑性が必要な場合は、この基板に機械研磨、電解研磨またはその両方を使った複合研磨などを施すことも可能である。
第1中間層は、Jc値を高めるため、上述のように、Ce、GdまたはSmから選択された1種類の元素およびZrを含む各金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した混合溶液を塗布後仮焼する工程を複数回繰り返して形成される。
このMOD法による第1中間層の原料としては、Ce、GdあるいはSmから選択された1種類の元素およびZrのオクチル酸塩、ナフテン酸塩またはネオデカン酸塩などが挙げられるが、1種類あるいは2種類以上の有機溶媒に均一に溶解し、基板上に塗布できるものであれば用いることができる。この場合、混合溶液中に含まれる金属元素量は0.08〜0.5mol/lとし、好ましくは0.1〜0.3mol/lとする。混合溶液中の金属元素量が0.08mol/l未満であると、1回の塗布および熱処理で形成される酸化物膜が薄くなり、均一な中間層が得られない。また、混合溶液中の金属元素量が0.5mol/lを超えると、1回の塗布および熱処理で形成される酸化物膜が厚くなり、表面平滑性を損ねるだけでなく、結晶性が低下する。塗布および熱処理を繰り返す回数によって膜厚をコントロールするが、表面の平滑性を考慮すると3回〜5回の塗布によって所望の厚さを得ることが有効である。また、膜厚は30nm〜300nmが好ましい。
塗布方法は、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法等が挙げられるが、基板上に均一に成膜できるものであれば用いることができる、第1中間層は、上述のようにMOD法により成膜される
第1中間層上に成膜される第2中間層は、CeO膜あるいはこれにGdを所定量添加したCe−Gd−O膜から形成されるが、この第2中間層は、MOD法、パルスレーザー蒸着法、スパッタ法またはCVD法のいずれかの方法により成膜することができ、Ce−Gd−O膜中のGd添加量は50at%以下が好ましい。この値を超えると、結晶系が変化し、この上にYBCO超電導層を成膜した場合に、良好な配向性が得られない。この膜厚は50nm〜3μmが好ましい。50nm未満では基板の元素拡散防止に対する効果が少なく、3μm以上では膜にクラックが入る可能性がある。
第2中間層上に成膜されるYBCO層は、MOD法、パルスレーザー蒸着法、スパッタ法またはCVD法のいずれかの方法で成膜される。
MOD法を用いる場合の原料溶液は、Y、Ba、Cuを所定のモル比で含んだ有機酸塩または有機金属化合物と有機溶媒の混合溶液である。混合溶液中の金属元素のモル数はY:Ba:Cu=1:(2a):(3+b)とし、0.01<a<0.3、0.01<b<0.5とする。この範囲以外のモル数にした場合、超電導層が形成されないか、あるいは多数の不純物が生成するなどの問題点が生じる。このMOD原料としては、例えば、各元素のオクチル酸塩、ナフテン酸塩またはネオデカン酸塩などが挙げられるが、1種類あるいは2種類以上の有機溶媒に均一に溶解し、基板上に塗布できるものであれば用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1〜3
図1は、本発明の希土類系テープ状酸化物超電導体のテープの軸方向に垂直な断面を示したもので、希土類系テープ状酸化物超電導体10は、冷間圧延によりNi―W合金を所定の厚さに成形した後、900〜1300℃の温度で配向化熱処理を施して2軸配向させたテープ状基板1の表面に、Ce、GdまたはSmから選択された1種類の元素およびZrを含む各金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した混合溶液を塗布後仮焼する工程を複数回繰り返して形成した5nm以下の表面平滑性を有するAZrからなる第1中間層2、この第1中間層2の上にパルス蒸着法により形成されたCeO膜からなる第2中間層3、MOD法により形成されたYBCO超電導層4およびこのYBCO超電導層の上にAg安定化層5が成膜された構造を有する。
図1に示す基板として、Ni―3at%W合金に冷間圧延加工を施して70μm厚×10mm幅の長さ100mのテープを製造し、これにAr/H 気流中で1100℃の温度で配向化熱処理を施して2軸配向性を有するテープ状基板を製造した。このテープ状基板上に、所定量の金属含有量を有するCe、Zrの各オクチル酸塩の混合溶液をディップコート法で塗布し仮焼する工程を所定回数繰り返して第1中間層を形成した。このときの表面粗さを測定した。
次いで、この第1中間層の上にCeOからなる第2中間層をパルス蒸着法により膜厚が200nmとなるように成膜した。この膜上にYBCO超電導膜をMOD法により成膜し、液体窒素中でJc値を測定した。
第1中間層の表面粗さおよびJc値についての測定結果を、金属含有量、塗布回数および膜厚とともに表1に示す。
Figure 0004602911
比較例1および2
金属含有量および塗布回数を変え、他は上記実施例と同様の方法により第1中間層を形成し、以後実施例と同様の方法により第2中間層およびYBCO超電導膜を成膜し、液体窒素中でJc値を測定した。
第1中間層の表面粗さおよびJc値についての測定結果を、金属含有量、塗布回数および膜厚とともに表1に示した。
以上の実施例および比較例の結果から明らかなように、基板上にCe、GdまたはSmから選択された1種類の元素およびZrを含む各金属有機酸塩を有機溶媒中に溶解した混合溶液を塗布後仮焼する工程を複数回繰り返して形成した5nm以下の表面粗さ(表面平滑性)を有するAZrからなる第1中間層を用いたYBCO超電導体は、1MA/cm以上の優れたJc値を示す。この場合の上記混合溶液中の金属含有量は0.08〜0.5mol/lの範囲内である。
一方、上記の金属含有量が0.08mol/l未満の混合溶液を用いて多数回の塗布および仮焼を繰り返したものは、Jc値が著しく低下し(比較例1)、また、混合溶液中の金属含有量が0.5mol/lを超え、塗布および仮焼を1回施したものは表面平滑性に優れるが、同様にJc値が著しく低下する(比較例2)。
本発明による希土類系テープ状酸化物超電導体は、ケーブル、電力機器及び動力機器への利用が可能である。
本発明による希土類系テープ状酸化物超電導体の一実施例を示すテープの軸方向に垂直な断面図である。
符号の説明
1 Ni―W合金からなるテープ状基板
2 AZrからなる第1中間層
3 CeO膜からなる第2中間層
4 YBCO超電導層
5 Ag安定化層
10 希土類系テープ状酸化物超電導体

Claims (6)

  1. NiまたはNi基合金あるいはCuまたはCu基合金に冷間加工後、加熱処理を施して形成した2軸配向性を有する基板上にCe、GdまたはSmから選択された1種類の元素およびZrを含む各金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に金属元素量で0.08〜0.5mol/l溶解した混合溶液を塗布後仮焼する工程を複数回繰り返して形成された Zr (ここでAは、Ce、GdまたはSmから選択された1種類の元素を示す。)からなる第1中間層と、CeO膜またはCe−Gd−O膜からなる第2中間層および酸化物超電導層を順次形成したことを特徴とする希土類系テープ状酸化物超電導体。
  2. 混合溶液は、この中間層を構成する各元素を含むオクチル酸塩、ナフテン酸塩またはネオデカン酸塩の混合溶液の塗布後、熱処理を施すことにより形成されることを特徴とする請求項1記載の希土類系テープ状酸化物超電導体。
  3. 金属元素量は、0.1〜0.3mol/lであることを特徴とする請求項1記載の希土類系テープ状酸化物超電導体。
  4. 第2中間層は、MOD法、パルスレーザー蒸着法、スパッタ法またはCVD法のいずれかの方法により成膜された層からなることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の希土類系テープ状酸化物超電導体。
  5. Ni基合金あるいはCu基合金は、NiまたはCuにW、Sn、Zn、Mo、Cr、V、TaまたはTiの中から選択されたいずれか1種以上の元素を0.1〜15at%添加した合金からなることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の希土類系テープ状酸化物超電導体。
  6. 2軸配向した基板は、900〜1300℃の温度範囲で熱処理が施されたものであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の希土類系テープ状酸化物超電導体。
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