しかしながら、上記従来の定着装置では、加熱ローラの撓みは抑制されるものの、記録媒体が通過する圧接部分は1つのみであるため、トナー像の定着性が十分ではない場合があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱ローラの撓みを抑制しつつ、トナー像の定着性を向上することが可能な定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る定着装置は、記録媒体に転写された未定着のトナー像を当該記録媒体に定着させる定着装置であって、外周面に前記記録媒体が接し、当該記録媒体を加熱する加熱ローラと、前記加熱ローラの外周面における前記記録媒体が接する接触領域に圧接される少なくとも2つの加圧ローラと、を備え、前記少なくとも2つの加圧ローラから前記加熱ローラに加えられる圧接力が均衡するように、前記各加圧ローラは前記加熱ローラに圧接され、前記記録媒体は、前記加熱ローラと前記各加圧ローラとの間の圧接部分のそれぞれを通過して、前記トナー像が定着されることを特徴とする。
ここで、記録媒体は、例えば用紙や、樹脂製のOHPシートや、はがきなど、トナー像を定着させることができる記録媒体である。また、少なくとも2つの加圧ローラから前記加熱ローラに加えられる圧接力が均衡する場合には、圧接力の合力が零となる場合だけでなく、圧接力の合力が加熱ローラの形状に変化を生じないほど微小となる場合なども含む。
本発明によれば、記録媒体が、少なくとも2つの加圧ローラと加熱ローラとの間の圧接部分を通過するので、トナー像の定着性が向上する。また、少なくとも2つの加圧ローラから加熱ローラに加えられる圧接力が均衡しているので、加圧ローラの圧接による加熱ローラの撓みが抑制される。
また、本発明の一態様では、前記少なくとも2つの加圧ローラは、前記加熱ローラの周方向に等間隔で配置されることを特徴とする。
この態様によれば、少なくとも2つの加圧ローラは、加熱ローラの周方向に等間隔で配置されているので、各加圧ローラは加熱ローラを挟むようにして配置され、安定的に加圧ローラを加熱ローラに圧接させることが出来る。
また、上記課題を解決するために、本発明は記録媒体に転写された未定着のトナー像を当該記録媒体に定着させる定着装置であって、外周面に前記記録媒体が接し、当該記録媒体を加熱する加熱ローラと、前記加熱ローラの外周面における前記記録媒体が接する接触位置に圧接される少なくとも2つの加圧ローラと、前記加熱ローラの外周面における前記記録媒体の非接触領域に圧接される押圧ローラと、を備え、前記押圧ローラ及び前記少なくとも2つの加圧ローラから前記加熱ローラに加えられる圧接力が均衡するように、前記押圧ローラと前記各加圧ローラは前記加熱ローラに圧接され、前記記録媒体は、前記加熱ローラと前記各加圧ローラとの間の圧接部分のそれぞれを通過して、前記トナー像が定着されることを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも2つの加圧ローラと加熱ローラとの間の圧接部分を通過するので、トナー像の定着性が向上する。また、少なくとも2つの加圧ローラと押圧ローラから加熱ローラに加えられる圧接力が均衡しているので、加圧ローラの圧接による加熱ローラの撓みが抑制される。
また、本発明の一態様では、前記少なくとも2つの加圧ローラと前記押圧ローラは、前記加熱ローラの周方向に等間隔で配置されることを特徴とする。
この態様によれば、少なくとも2つの加圧ローラと押圧ローラは加熱ローラの周方向に等間隔で配置されているので、各加圧ローラと押圧ローラは加熱ローラを挟むようにして配置され、安定的に加圧ローラ及び押圧ローラを加熱ローラに圧接させることが出来る。
また、本発明の一態様では、前記少なくとも2つの加圧ローラは、同一構造を有することを特徴とする。
この態様によれば、定着装置が同一構造の加圧ローラを備えるので、複数種の加圧ローラを設計及び生産する必要がなくなり、定着装置の生産性が向上する。
また、本発明の一態様では、前記少なくとも2つの加圧ローラと前記押圧ローラは、同一構造を有することを特徴とする。
この態様によれば、定着装置が同一構造の加圧ローラと押圧ローラとを備えるので、複数種の加圧ローラ及び押圧ローラを設計、生産する必要がなくなり、定着装置の生産性が向上する。
また、上記課題を解決するための画像形成装置は、上記いずれかの定着装置を備えたものである。
ここで、画像形成装置は、例えば、プリンタや、複写機や、ファクシミリや、これらの機能を一体的に備える複合機などである。この画像形成装置によれば、当該画像形成装置が備える定着装置が、加熱ローラに加えられる圧接力が均衡するように圧接する加圧ローラ又は押圧ローラを備えるので、加熱ローラの撓みが抑制されて、加熱ローラの撓みによるトナー像の定着不良が抑制される。また、記録媒体が、少なくとも2つの加圧ローラと加熱ローラとの間の圧接部分を通過するので、トナー像の定着性が向上する。
以下、本発明に係る一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る定着装置を備える画像形成装置1の概略を示す全体構成図であり、図2は、上記定着装置10の概略を示す断面図である。なお、図1において、二点鎖線Rは記録媒体Pの搬送経路を示している。
図1に示すように、画像形成装置1は、定着装置10と、当該定着装置10より記録媒体Pの搬送経路の上流側に画像形成機構20とを有している。画像形成機構20は、感光体ドラム22と、当該感光体ドラム22の周囲に配置される帯電ローラ23と、光走査装置24と、現像装置25と、転写ローラ27と、クリーニング装置26とを備えている。
感光体ドラム22は、画像形成装置1の動作時に時計方向(図1においてαに示す方向)に回転する。帯電ローラ23は、感光体ドラム22の表面に均一にマイナス電荷を帯びさせる。光走査装置24は、感光体ドラム22の表面に画像形成装置1が出力するべき画像パターンのレーザ光線又はLED(Light Emitting Diode)を照射し、感光体ドラム22の表面上に静電潜像を形成する。現像装置25は、トナーを静電潜像に付着し、感光体ドラム22の表面に画像パターンに応じたトナー像を形成する。転写ローラ27は、トナー像を樹脂性のシートや紙などの記録媒体Pに転写し、記録媒体Pに未定着のトナー像を形成する。記録媒体Pは、定着装置10に搬送され、定着装置10において未定着のトナー像が定着された後、画像形成装置1の外部に排出される。なお、クリーニング装置26により、感光体ドラム22の表面から残留トナーや紙粉等が除去される。また、給紙前の記録媒体Pは、給紙トレー4において保持されている。記録媒体Pは、不図示の給紙機構によって、給紙トレー4から搬送経路Rの下流側(画像形成機構20側)に搬送される。
図2に示すように、定着装置10は、加熱ローラ12と、同一構造を有する2つの加圧ローラ14,15とを備えている。加熱ローラ12は円筒状の外周部12cを有し、記録媒体Pの搬送方向(図2においてβの示す方向)と垂直な軸線周りに回転可能に軸支されている。加熱ローラ12は、定着装置10の動作時には、その外周面において記録媒体Pと接しつつ、軸線を中心として時計回りの方向(図2においてAの示す方向)に回転して、当該記録媒体Pを搬送経路Rの下流側に搬送する。また、加熱ローラ12は、ヒータ12aを内蔵しており、ヒータ12aに通電することにより加熱ローラ12の外周部12cを加熱している。なお、加熱ローラ12の径方向外方には、その外周面に沿って湾曲したガイド部材19が、当該外周面に近接して配置されている。
加圧ローラ14,15は、円筒状の表面弾性体層14b,15bを有している。加圧ローラ14,15は、それぞれ加熱ローラ12の軸線に対して平行に配置されるととともに、加熱ローラ12の周方向に等間隔で配置されている。すなわち、一方の加圧ローラが加熱ローラ12の軸線を挟んで他方の加圧ローラとは反対側に位置し、加圧ローラ14,15の軸線と加熱ローラ12の軸線は同一平面上にある。なお、加圧ローラ14は、加圧ローラ15より記録媒体Pの搬送経路Rにおける上流側(画像形成機構20側)に配置されている。
加圧ローラ14,15は、それぞれ加熱ローラ12の外周面に圧接され、加圧ローラ14,15の外周面と加熱ローラ12の外周面との間に、記録媒体Pを加熱及び加圧するニップ部(圧接部分)14a及び15aが形成されている。この加圧ローラ14,15が加熱ローラ12に加える圧接力は均衡している。すなわち、それぞれの圧接力の大きさは等しく、且つ、その向きは互いに反対方向である。そのため、加圧ローラ14と加圧ローラ15の圧接力は互いに相殺して、その合力は零となっている。
なお、加圧ローラ14,15は、加熱ローラ12の外周面のうち、記録媒体Pが接する接触領域12bに圧接されている。すなわち、記録媒体Pは、定着装置10における搬送時において、加熱ローラ12の円筒状の外周面のうち、半円筒状の外周面(接触領域12b)に接する。加圧ローラ14は、接触領域12bにおける搬送経路Rの最上流の位置に圧接され、加圧ローラ15は最下流の位置に圧接されている。
定着装置10の動作時には、加圧ローラ14,15は、それぞれ加熱ローラ12に圧接されながら、その軸線周りに加熱ローラ12とは反対方向(図2においてB及びCに示す方向)に回転する。未定着のトナー像が転写された記録媒体Pは、加熱ローラ12及び加圧ローラ14,15が回転することにより、搬送経路Rの上流側(画像形成機構20側)からニップ部14a及びニップ部15aに引き込まれる。記録媒体Pは、ニップ部14a,15aを通過する際に加熱及び加圧されて、未定着のトナー像は加熱溶融されて、記録媒体Pに定着する。
以上説明した定着装置10によれば、加圧ローラ14,15が、その加熱ローラ12に対する圧接力が均衡するように、当該加熱ローラ12に圧接されているので、加圧ローラ14,15の圧接による加熱ローラ12の撓みが抑制されている。また、記録媒体Pが2つのニップ部14a,15bを通過しているので、トナー像の定着性が向上する。
なお、本発明は以上説明した定着装置10に限られず種々の変形が可能である。例えば、定着装置10が、さらに多くの加圧ローラを備えるようにし、各加圧ローラの加熱ローラ12に対する圧接力が均衡するように、各加圧ローラが加熱ローラ12の外周面に圧接するようにしてもよい。例えば、図3に示す定着装置10aは、3つの加圧ローラ14,15,16を備え、これら加圧ローラ14,15,16の加熱ローラ12に対する圧接力の大きさは等しく、また、これらの圧接力の方向は互いに打ち消しあう方向に向いており、これらの圧接力は均衡している。
すなわち、定着装置10aでは、加圧ローラ14,15,16は、この順に加熱ローラ12の周方向に等間隔で配置され、加熱ローラ12の軸線と各加圧ローラ14,15,16の軸線とを含む平面が互いになす角度は、すべて等しい角度(ここでは120度)となっている。各加圧ローラ14,15,16による加熱ローラ12に対する圧接力は、加熱ローラ12の外周面に対して垂直な方向に向いている。そのため、各圧接力は互いに相殺し、その合力は零となっている。
なお、定着装置10aにおいても、加圧ローラ14,15,16は、いずれも加熱ローラ12の外周面における記録媒体Pが接する接触領域12bに圧接されている。そして、記録媒体Pは、加熱ローラ12の外周面と各加圧ローラ14,15,16の外周面との間に形成されるニップ部14a,15a,16aを通過するので、記録媒体Pが通過するニップ部が1つのみである場合に比べ、トナー像の定着性が向上されている。
また、以上説明した実施形態では、記録媒体Pは、ニップ部間では、加熱ローラ12の外周面に接するようにして、搬送経路Rの下流側に搬送されていたが、例えば図4に示す定着装置10bのように、ニップ部14aとニップ部15aとの間では記録媒体Pが加熱ローラ12の外周面から離間するようにしてもよい。この場合、記録媒体Pと加熱ローラ12の外周面とが接する面積が減少し、加熱ローラ12から記録媒体Pに伝達される熱量が減少するので、加熱ローラ12の温度低下が抑制される。
さらに、以上説明した実施形態では、加熱ローラ12の外周面における記録媒体Pが接する接触領域12bに圧接されるように、加圧ローラを設けていたが、このような加圧ローラの他に、加熱ローラ12の外周面において記録媒体Pが接していない非接触領域に圧接されるローラ(押圧ローラ)を設けて、圧接による加熱ローラ12の撓みを抑制してもよい。図5に示す定着装置10cは、この形態に係る定着装置の例である。
定着装置10cは、記録媒体Pを加圧する3つの加圧ローラ14,15,16を備えるとともに、加熱ローラ12の軸線に対して平行に配置され、加熱ローラ12の外周面において記録媒体Pが接していない非接触領域12dに圧接される押圧ローラ17を備えている。加圧ローラ14,15,16及び押圧ローラ17は、それぞれ加熱ローラ12の外周面に圧接されている。各圧接力の大きさは等しく、また、それらの圧接力の方向は互いに相殺する方向となっており、圧接力は均衡している。
すなわち、加圧ローラ14,15,16及び押圧ローラ17は、この順に加熱ローラ12の周方向に等間隔で配置され、加熱ローラ12の軸線と各加圧ローラ14,15,16又は押圧ローラ17の軸線とを含む平面が互いになす角度は、すべて等しい角度(ここでは90度)となっている。各加圧ローラ及び押圧ローラ17による加熱ローラ12に対する圧接力は、加熱ローラ12の外周面に対して垂直な方向に向いている。そのため、加圧ローラ14の圧接力は、加熱ローラ12の軸線を挟んで加圧ローラ14とは反対側に配置される加圧ローラ16の圧接力と相殺し、加圧ローラ15の圧接力は、加熱ローラ12の軸線を挟んで加圧ローラ15とは反対側に配置される押圧ローラ17の圧接力と相殺している。なお、定着装置10cにおいて押圧ローラ17は、表面弾性体層17bを有し、加圧ローラ14,15,16及び押圧ローラ17は同一構造を有している。
また、以上説明した実施形態では、加圧ローラ14,15,16又は押圧ローラ17から加熱ローラ12に加えられる圧接力は、すべて等しい大きさであったが、圧接力の大きさが不均一となるようにしてもよい。この場合、加熱ローラ12の外周面に対する加圧ローラ14,15,16又は押圧ローラ17の圧接方向を変えることにより、圧接力を均衡させることが出来る。
1 画像形成装置、4 給紙トレー、10 定着装置、12 加熱ローラ、14,15,16 加圧ローラ、17 押圧ローラ、19 ガイド部材、20 画像形成機構、22 感光体ドラム、23 帯電ローラ、24 光走査装置、25 現像装置、26 クリーニング装置、27 転写ローラ、P 記録媒体、R 搬送経路。