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JP4682592B2 - 砥石車 - Google Patents

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Description

本発明は、回転するワークを研削加工する研削盤の砥石車に関し、特に、回転する砥石車が回転力により遠心膨張しても加工面である砥石表面が均等に膨張するだけでテーパ状になることがなく、ツルーイングまたはドレッシング(以下、ツルーイングという)が低回転数で容易に行え、かつ、加工精度に優れた研削盤の砥石車に関するものである。
従来、研削盤の砥石車としては、円盤状の砥石コアの外周面に砥石層が形成され、中心部に砥石軸への取付穴およびその取付穴の周囲に砥石車を砥石軸等へ固定するための固定用穴部が形成されているものが知られている(例えば、特許文献1)。そして、この砥石車は、固定用穴部から取付ボルト等により前記の砥石軸の取付けハブ部あるいはフランジ部へ取付けられ、または別部材の取付け用フランジ等を介して砥石軸に取付けられている。
また、砥石車の砥石形状を修正するためのツルーイング装置が知られている(例えば、特許文献2)。
特開2002−103236号公報(図1、図2) 特許第2749154号公報
しかし、砥石車のツルーイングは、加工を開始する前に砥石形状を修正し、砥石の切れ味を再生するために行われるが、上記特許文献1に示したような従来の砥石車の断面形状は、砥石車が停止している場合についてのみ考慮され、回転時の形状変化は考慮されていない。
すなわち、回転する砥石車には、遠心力が働き、その結果、砥石コアは遠心力により膨張する。砥石コアの軸線方向の各部に働く遠心力は各部各々の回転速度、半径及び重量(砥石層を含む、以下同じ)による。砥石車はフランジ等を介して砥石軸に取付けられているが、砥石コアが砥石軸側に当接して拘束力が発生する拘束領域は砥石コアの両面で異なっている。そして、砥石コアの遠心力による膨張は、上記の遠心力と砥石コアの各部各々の剛性および上記の砥石コアの拘束力との関係で決まる。
図7は、従来の砥石車の停止時と回転時の形状変化を示す図である。図7(a)に示すように、従来の砥石車は停止時には形状変化はないが、砥石車の回転時には、砥石コアの軸線方向の各部に働く遠心力と前記拘束力との関係に従い、砥石車、すなわち砥石コアは一般に不均等に遠心膨張し、図7(b)に示すように、砥石外周面がテーパ状になったりする。これは、砥石車の回転時に、砥石コアが砥石軸に拘束されている側と砥石軸に拘束されていない側とで拘束力が異なり、拘束されていない側の方が拘束されている側よりも砥石コアの半径方向への弾性変形に係る剛性が小さくなることによる。この結果、砥石コアが拘束力が大きい方向へ変形し、砥石コアおよびその外周部に形成された砥石層が不均等に遠心膨張する。この形状変化は、砥石車の回転数にも依存するので、ツルーイングは、砥石車の加工時と同一の回転数で行う必要がある。
最近のCBN(立方晶窒化硼素:Cubic Boron Nitrid)砥粒を用いた砥石車を装着した研削盤では、砥石車の周速度を速くして研削効率を向上するために砥石車は高速で回転駆動される。砥石車を切れ味よくツルーイングするために、砥石車とツルーイングロールとの周速比は、一般的に、0.75〜0.8に設定される。
例えば、砥石車の周速を120m/sにすると、ツルーイングロールの直径は100mm程度であるので、ツルーイングロールの回転数は15,000〜20,000rpmとなり、ツルーイングロールをきわめて高速回転することができる回転軸に取り付ける必要がある。しかし、このような高速回転可能なツルアは高価であり、比較的低速でしか回転できないツルアを採用した場合、加工時の回転速度以下の条件でツルーイングし、そのツルーイングされた砥石車で加工することになるので、工作物にこの形状誤差が転写されることになり、研削精度の低下を招くことになる。
従って、本発明の目的は、所定の回転数で回転する砥石車が回転力により遠心膨張しても加工面である砥石表面が均等に膨張するだけでテーパ状等になることがなく、ツルーイングが低回転数で容易に行え、かつ、加工精度に優れた研削盤の砥石車を提供することにある。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、砥石コア部とその外周部に形成された砥石層とを有して構成され、回転可能に支持され取付けのためのフランジ部を有する砥石軸に取付けられて所定の回転数で回転する砥石車において、前記砥石コア部は、前記砥石軸の前記フランジ部へのボルト固定のための複数の固定用穴部と、前記複数の固定用穴部の内側に設けられて前記砥石軸を貫通させる取付穴と、前記砥石軸のフランジ部側の端面に前記砥石軸と同心状に周設された切欠き溝とを有し、前記フランジ部側の端面の剛性が、前記フランジ部とは反対側の端面の剛性よりも小さいことを特徴とする研削盤の砥石車を提供することである。
本発明によれば、所定の回転数で砥石コア部をその軸線方向の各位置において遠心膨張力が等しくなる形状に構成するので、回転する砥石車が回転力により遠心膨張しても加工面である砥石表面はほぼ均等に膨張する。そのことによって、研削盤の砥石車において、ツルーイングが低回転数で容易に行え、かつ、加工時において高精度の砥石形状が得られる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る砥石車および砥石車が装着される研削盤の全体構成について説明する。
(研削盤の全体の構成)
図1は、研削盤の全体構成の概略を示す平面図である。以下に、第1の実施の形態に係る研削盤の全体構成の概略について説明する。
研削盤100は、コンピュータ数値制御装置(CNC)により全体の駆動が制御されるものである。研削盤100の基台部分を構成するベッド10の上面には、Z軸レール11が設けられており、このZ軸レール11を介してベッド10上の後部側にZ軸移動体20が載置され、Z軸方向(左右方向)に移動駆動される。Z軸移動体20の上面には、X軸レール21が設けられており、このX軸レール21を介してZ軸移動体20上にX軸移動体である砥石台30が載置され、X軸方向(前後方向)に移動駆動される。そして、この砥石台30は、砥石駆動モータ53を搭載する砥石台本体50を備えている。また、砥石台本体50には砥石軸ユニット51が搭載され、この砥石軸ユニット51には回転可能に支持される砥石軸52に取付けられ、砥石駆動モータ53から駆動ベルト54を介して回転駆動される砥石車Tが備えられている。ベッド10上の前部側に載置されたワークテーブル40には、ワークWを支持すると共に回転駆動する左右一対の主軸台41が設けられている。また、この左右一対の主軸台41は、ワークWの端部を支持する主軸42を具備しており、この主軸42を回転させることで、支持したワークWを回転駆動する。
主軸台41の主軸42には、円盤状のツルア43が同心的に設けられている。このように加工点に近い位置にツルアを設けることにより加工時に近い振動状態でツルーイングすることができる。また、別体のツルアを設置するよりも部品点数を削減して小型化を図ることができるとともに、コスト削減もできる。ただし、主軸42により回転されるので、ツルアは比較的低速回転である。
図2は、第1の実施の形態の砥石車の断面図である。以下の説明において、x軸を砥石軸52の中心軸方向とし、y軸を外周へ向かう半径方向としており、原点は、砥石軸52の中心軸線上と砥石コア55のフランジ部52fと反対側の端面55gとの交点としている。砥石車Tは、円盤状の砥石コア55と、砥石コア55の外周面に形成される砥石層56と、中心部に砥石軸52への取付穴52hおよびその取付穴の周囲に砥石コア55を砥石軸52等へ固定するための固定用穴部55hとを有する。この砥石車Tは、固定用穴部55hから取付ボルトB等の固着手段により前記砥石軸52の取付けハブ部あるいはフランジ部52fへ取付けられる。または、別部材の取付け用フランジ等を介して砥石軸52に取付けてもよい。
砥石コア55には、砥石コア55のフランジ部52f側の端面55fに取付穴52hを中心に同心状に周設された切欠き溝57が形成されている。
(砥石車Tの動作)
砥石車Tが回転すると、遠心力が働き、その結果、砥石コア55は遠心力により膨張する。ここで、砥石コア55に作用する力は次のようである。砥石コア55のx軸方向の各部に遠心力が作用し、これは回転速度、半径及び重量により決まる。また、砥石コア55のx軸方向の各部には、切欠き溝57よりも内径側(y軸方向内側)で、砥石軸52への固定によって拘束力が発生し、端面55fで大きく、端面55gでより小さい。また、砥石コア55のx軸方向の各部は、剛性を有し、これは主に砥石コア55の形状と縦弾性係数で決まる。従って、砥石コア55および砥石層56の遠心膨張量は、x軸方向の各部における遠心力、拘束力および剛性で決定されることになる。
砥石コア55に形成された切欠き溝57は、上記述べた砥石コア55のx軸方向の各部の重量と剛性に影響を与え、切欠き溝57の大きさで重量が決まる。また、切欠き溝57によってこれより外径側(y軸方向外側)の砥石コア55自体の拘束力が決まって剛性が決まる。
第1の実施の形態では、砥石コア55の切欠き溝57は、フランジ部52f側の端面55fに設けられているので、砥石コア55は端面55fの方に位置する部分の方が重量が小さく、切欠き溝57より外径側では砥石コア55自体の拘束力が小さくて剛性も小さく、一方で上記述べたように、切欠き溝57よりも内径側では砥石コア55の砥石軸52への固定によって拘束力は大きい。従って、切欠き溝57を適当に設けることで、取付穴52hを起点として図7(b)のように図2中右へ反る遠心膨張量と、切欠き溝57を起点として図2中左へ反る遠心膨張量が合成される。よって、遠心力と拘束力と剛性で決定される遠心膨張の量あるいは力をx軸方向の各部においてほぼ均等にすることが可能となる。ここで、切欠き溝57の形状は、砥石コア形状(砥石幅、砥石径)や砥石回転速度によって決定するが、これらを変化させて解析あるいは設計することで砥石コア55および切欠き溝57の形状の最適化を行うことができる。
(第1の実施の形態の効果)
上記した第1の実施の形態によると、砥石車Tが所定の回転数で回転した場合、回転による遠心膨張力が等しく加工面である砥石表面は均等に膨張するので、砥石の形状精度がよく加工精度が向上する。また、砥石表面は遠心膨張によって停止時と相似的に膨張し、テーパ状等になることがないので、所定の回転数以下でツルーイングを行ってもそれによる砥石表面の形状精度低下への影響は小さい。従って、ツルーイングが低回転数で可能となることから、ツルーイング用のモータが小型化でき、省スペース、コスト削減、省エネルギー、低振動および熱による変位が低減できる効果を有する。また、CBN砥石を使用した高速回転の研削盤において特に効果が大きい。
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の砥石車の断面図である。以下に本発明の第2の実施の形態に係る砥石車について説明する。尚、以下の説明で、第1の実施の形態と同一の構成および機能を有する部分においては同一の符号を付している。
砥石コア55は、図3に示すように、端面55fにおいて外周側の方がx位置が大きく、端面55gにおいても外周側の方がx位置が大きく、断面として非対称な形状である。あるいは、断面としてy軸に対して傾斜した形状ともいえる。このような形状であると、図3において、砥石層56が存在するx位置で考えると、x位置が小さい部分すなわち端面55gの近傍では、y方向(径方向)において砥石コア55自体の拘束力が大きく剛性が大きい。一方、x位置が大きい部分すなわち端面55fの近傍では、y方向(径方向)内側において砥石コア55が存在せず砥石コア55自体の拘束力が小さく剛性が小さい。従って、取付穴52hを起点として図3中右へ反る遠心膨張量と、端面55fの傾斜開始点を起点として図3中左へ反る遠心膨張量とが合成される。よって、端面55gの近傍と端面55fの近傍とで、所定の砥石車Tの回転数における遠心膨張力を等しくするような断面形状とすることができる。よって、第1の実施の形態と同様に、遠心膨張力をx軸方向の各部においてほぼ均等にすることが可能となる。
(第2の実施の形態の効果)
上記した第2の実施の形態によると、第1の実施の形態による好ましい効果に加えて、第1の実施の形態のような切欠き溝を有しないので、応力集中が生じにくく、高速回転において破壊強度の向上が図られる。
(比較例)
図4に、第1の実施の形態で示した切欠き溝付形状の砥石車と、第2の実施の形態で示した傾斜形状の砥石車と、従来例で示したストレート形状の場合の回転に伴う形状変化の1例を示す。解析条件を、砥石コア材質としてチタン(Ti)、砥石周速として120m/s、砥石径として160mmとした。
グラフの左端x=0は端面55gの位置であり、グラフの右端x=20は端面55fの位置である。これら両端の砥石遠心膨張量の差は、従来例で示したストレート形状の砥石車の場合は、1.42μmであるのに対して、第1の実施の形態で示した切欠き溝付形状の砥石車の場合は、0.03μm、第2の実施の形態で示した傾斜形状の砥石車の場合は、0.37μmであった。これより、第1の実施の形態で示した切欠き溝付形状または第2の実施の形態で示した傾斜形状の砥石車とすることで、大幅な形状精度の向上が図られていることがわかる。
(第3の実施の形態)
図5は、第3の実施の形態の砥石車の断面図である。以下に、本発明の第3の実施の形態に係る砥石車について説明する。
砥石コア55は、図5に示すように、網掛けで図示した硬化層領域Sにおいて、端面55gの表面から所定の深さまで高周波焼入れ等の硬化処理が施されている。具体的には、レーザ光を照射して端面55gの表層部のみを加熱し、レーザ光が通り過ぎた後、自己冷却により急冷し、その部分を焼入れ改質するもので、焼入れ部の硬度が大きくなりその部分の縦弾性係数が大きくなっている。従って、図5において、x位置が小さい部分すなわち端面55gの近傍では、剛性が大きい。
一方、x位置が大きい部分すなわち端面55fの近傍では、剛性が小さい。従って、拘束力が小さく剛性が大きい端面55gの近傍と、拘束力が大きく剛性が小さい端面55fの近傍とで、所定の砥石車Tの回転数における遠心膨張力を等しくすることができる。よって、第1の実施の形態と同様に、遠心膨張力をx軸方向の各部においてほぼ均等にすることが可能となる。
(第3の実施の形態の効果)
上記した第3の実施の形態によると、第1の実施の形態による好ましい効果に加えて、第1の実施の形態のような切欠き溝57を有しないので、応力集中が生じにくく、高速回転において破壊強度の向上が図られる。また、第2の実施の形態による好ましい効果に加えて、第2の実施の形態のように断面において非対称な形状とする必要がなく製作が容易である。また、焼入れ深さを調節することで容易に微調整が可能である。
(第4の実施の形態)
図6は、第4の実施の形態の砥石車の断面図である。以下に、本発明の第4の実施の形態に係る砥石車について説明する。
砥石コア55は、図6に示すように、端面55gの表面に砥石コア55の材質よりも縦弾性係数の大きな材質の補強版58が一体的に固着されている。補強版58は、取付ボルトBにより砥石コア55と共締めで固定されていてもよく、また、補強版58が端面55gに接着あるいは溶接等によって固定されていてもよい。従って、図6において、x位置が小さい部分すなわち端面55gの近傍では、剛性が大きい。一方、x位置が大きい部分すなわち端面55fの近傍では、剛性が小さい。従って、拘束力が小さく剛性が大きい端面55gの近傍と、拘束力が大きく剛性が小さい端面55fの近傍とで、所定の砥石車Tの回転数における遠心膨張力を等しくすることができる。よって、第1の実施の形態と同様に、遠心膨張力をx軸方向の各部においてほぼ均等にすることが可能となる。
(第4の実施の形態の効果)
上記した第4の実施の形態によると、第1の実施の形態による好ましい効果に加えて、第1の実施の形態のような切欠き溝57を有しないので、応力集中が生じにくく、高速回転において破壊強度の向上が図られる。また、第2の実施の形態による好ましい効果に加えて、第2の実施の形態のように断面において非対称な形状とする必要がなく製作が容易である。また、補強版58の取付け時に、砥石車の静的バランスあるいは動的バランスをとることが可能になり、砥石車の交換に伴う振動をさらに低減することが可能になる。
研削盤の全体構成の概略を示す平面図である。 第1の実施の形態の砥石車の断面図である。 第2の実施の形態の砥石車の断面図である。 第1の実施の形態で示した切欠き溝付形状の砥石車と、第2の実施の形態で示した傾斜形状の砥石車と、従来例で示したストレート形状の場合の回転に伴う形状変化の1例を示す比較図である。 第3の実施の形態の砥石車の断面図である。 第4の実施の形態の砥石車の断面図である。 従来の砥石車の停止時と回転時の形状変化を示す図である。
符号の説明
10 ベッド
11 Z軸レール
20 Z軸移動体
21 X軸レール
30 砥石台
40 ワークテーブル
41 主軸台
42 主軸
43 ツルア
50 砥石台本体
51 砥石軸ユニット
52f フランジ部
52h 取付穴
52 砥石軸
53 砥石駆動モータ
54 駆動ベルト
55 砥石コア
55h 固定用穴部
55f、55g 端面
56 砥石層
57 切欠き溝
58 補強版
100 研削盤
B 取付ボルト
S 硬化層領域
T 砥石車
W ワーク

Claims (1)

  1. 砥石コア部とその外周部に形成された砥石層とを有して構成され、回転可能に支持され取付けのためのフランジ部を有する砥石軸に取付けられて所定の回転数で回転する砥石車において、
    前記砥石コア部は、前記砥石軸の前記フランジ部へのボルト固定のための複数の固定用穴部と、前記複数の固定用穴部の内側に設けられて前記砥石軸を貫通させる取付穴と、前記砥石軸のフランジ部側の端面に前記砥石軸と同心状に周設された切欠き溝とを有し、前記フランジ部側の端面の剛性が、前記フランジ部とは反対側の端面の剛性よりも小さいことを特徴とする砥石車。
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