近年、レーザ装置は、小型でかつ低消費電力である等の理由から、情報機器に多く使われるようになってきた。例えば、ホログラフィックデータストレージ(HDS:Holographic Data Storage)については、シングルモードレーザが用いられる。HDSは、1本のレーザ光をビームスプリッタで2本に分けた後に記録メディア上で再び合わせ、その干渉によってデータを記録する。
このような、ホログラム記録再生用の光源としては、シングルモードの光源であるガスレーザやSHGレーザが用いられることが多い。しかしながら、マルチモード発振である、レーザダイオード(LD)のような半導体レーザでも、これを外部共振器と組み合わせることによってシングルモード化することができ、ホログラム記録再生用の光源として使用することが可能である。
ここで、従来の代表的な外部共振型半導体レーザを含むリットロー型のレーザ装置の構成を、図1を参照して説明する。図1は、レーザ装置200の平面図である。このレーザ装置200の構成は、下記の非特許文献1に記載されたレーザ装置の構成と同様のものである。
レーザ装置200では、レーザダイオード201から出射された縦多モードのレーザ光がコリメートレンズ202によって平行に集められ、反射型回折格子(以下、グレーティングと称する)203に入射される。グレーティング203は、入射した光の1次回折光を出力する。グレーティング203の配置角度に応じた特定の波長の1次回折光がレンズ202を介してレーザダイオード201に逆注入される。この結果、レーザダイオード201が、注入された1次回折光に共振してシングルモードの光(矢印Fによって表された0次光)を出射するようになり、その光の波長は、グレーティング203から戻ってきた光の波長と同じになる。
グレーティング203は、支持部204に保持されている。支持部204には、溝206が設けられており、支持部204に設けられたネジ205を回転させることにより、溝206の間隔が部分的に広がり、あるいは狭まり、それによってグレーティング203の水平方向の配置角度が僅かに変化する。グレーティング203によって反射した1次光の反射角は、波長によって異なり、所望の波長に対応する1次光がレーザダイオード201に戻るように、グレーティング203の角度を設定することによって、所望の波長のレーザ光を発生することができる。
同様の機構が、グレーティング203の垂直方向の角度を調整するために設けられている。グレーティング203を保持する支持部204は、支持部207に保持されている。支持部207には、溝(図示しない)が設けられており、支持部207に設けられたネジ208を回転させることにより、溝の間隔が部分的に広がり、あるいは狭まり、それによってグレーティング203の垂直方向の配置角度が僅かに変化する。
ここで、レーザダイオード201として例えば青色レーザダイオードが使用される。また、上述したように構成された外部共振型は、単一モードのシングル性のレーザ光が要求されるホログラフィメモリ用ライタ等の用途にも利用可能である。
次に、図2のグラフを参照して、図1で説明したような外部共振器型のレーザ装置から出力されるレーザ光のレーザパワーと波長の関係を説明する。図2に示すグラフの横軸はレーザパワーを示し、単位はmWである。一方、グラフの縦軸は波長を表しており、単位はnmである。図2から分かるように、レーザ光のレーザパワーの増加に伴って、レーザ光の波長は、概ね、のこぎり波状の変化を示す。
外部共振器型のレーザ装置では、レーザパワーの増加に伴って射出されたレーザ光の波長が徐々に大きくなる外部共振器モードホップの領域と、レーザパワーが増加した場合に、射出されたレーザ光の波長が急激に小さくなる、半導体レーザ内のレーザチップによるモードホップの領域が存在する。レーザ光の波長は、レーザパワーの増加に伴い、ある程度離散的に推移する。
また、例えば、レーザパワーが30mW付近では単一の波長のレーザ光が射出されて完全なシングルモードとなっているが、レーザパワーが32mW付近では、3つのモード(3モード)の光が発生している。さらに、半導体レーザ内のレーザチップによるモードホップの領域にあたる、レーザパワーが35mWの付近においては、波長409.75nm付近で3モードの光が発生し、さらに波長409.715nm付近で3モードの光が発生し、全体として6モードの光が射出されている。
図3は、いくつかのレーザ光のスペクトラムを表している。上述したように、レーザ光の波長が徐々に大きくなる外部共振器モードホップの領域では、図3A、図3B、図3Cのようなスペクトラムとなる。一方、例えば、レーザパワーが35mW付近の半導体レーザ内のレーザチップによるモードホップの領域では、図3Dに示すようなスペクトラムとなる。
これらのレーザ光をHDSに用いる場合、レーザパワーが32mW付近で生じるような(すなわち、図3Aに示すような)3モードの光や、2モードの光(すなわち、図3Bに示すような光)は、完全なシングルモードの光(図3Cに示すスペクトラムの光)と同等の記録再生特性を示すので、シングルモードの光と同様に使用することができる。ここでは、例えば、レーザパワーが30mW付近で発生するような完全なシングルモードと、例えば、レーザパワーが32mW付近で生じるような3モードや2モードを総称して使用可能モードと呼ぶことにする。
一方、例えば、図3Dに示すような、レーザパワーが35mW付近で生じるような6モード状態は、2つの3モードの組が、互いに約40pm程度離れているために、良好なホログラム記録を実現することができない。ここでは、このようなモードを使用不可モードと呼ぶことにする。
使用可能モードのレーザ光が得られる領域は、外部共振器モードホップの領域にほぼ対応し、使用不可モードのレーザ光が得られる領域は、半導体レーザ内のレーザチップによるモードホップの領域にほぼ対応する。図2のグラフから分かるように、一般的には、使用可能モードのレーザ光が得られる領域の方が、使用不可モードのレーザ光が得られる領域よりはるかに広いので、使用不可モードのレーザ光を効果的に排除できれば、HDSに外部共振器型半導体レーザを用いることは十分可能である。
また、図2に示すような、レーザパワーとレーザ光の波長の特性は、外部共振器型半導体レーザ内の温度によって変動する。例えば半導体レーザの温度が一定でないと、使用不可モードとなるレーザパワーの位置が変化する。したがって、従来より、この外部共振器型半導体レーザ内の温度を、ほぼ一定に保ち(例えば、10mK内の変動に抑え)、使用不可モードのレーザ光が得られる領域が変動しないようにしたうえで、その領域に属するレーザパワーの使用を回避するという手法がとられている。
しかしながら、上述した従来の手法により、使用不可モードのレーザ光が射出されないよう外部共振器型半導体レーザを制御するためには、外部共振器型半導体レーザ内の温度を、ほぼ一定に保ったうえで、レーザパワーを制御する必要があり、レーザ装置の構造や制御が複雑なものとなる。
また、波長の検出結果を利用して、外部共振器型半導体レーザのレーザパワーを制御する方法も考えられるが、従来の波長検出装置は非常に大きく、高価なものであり、HDS等の用途には適合しない。
かかる問題点を解決するために、本願発明者は、先に、簡単な構造を用いて外部共振器型半導体レーザから射出されるレーザ光の波長を判定することが可能な装置および方法を提案している。具体的には、オプティカルウェッジを用いて外部共振器型半導体レーザから射出されるレーザ光の波長を検出することを提案している。
この発明は、オプティカルウェッジを用いて外部共振器型半導体レーザから射出されるレーザ光の波長を検出するものである。
ここで、最初に、干渉縞を生じさせる光学素子の一例であるオプティカルウェッジについて説明する。オプティカルウェッジとは、両面のなす角が数十分程度の断面くさび形のガラス板である。これに単一波長のレーザ光を約45度傾けて入射すると、ガラス板の表面と裏面で反射した光が干渉縞を形成する。すなわち、二つの反射光の位相が一致すれば、明となり、二つの反射光の位相が反対であれば、暗となる。位相差は、オプティカルウェッジの厚みによって変化するので、厚みの変化する方向に明暗の縞模様の像が得られる。また、波長が変化すると、明暗の位置が変化する。
図4は、オプティカルウェッジ1にレーザ光3が入射された様子を示す。レーザ光3は、オプティカルウェッジ1で反射し、曇りガラス2に入射する。オプティカルウェッジ1は、図4に示す座標のz軸方向に進むにつれて、厚さdが小さくなるように形成されている。z軸方向は、図4の記載面または表示面の手前から裏側に向かう方向である。また、x軸方向は、オプティカルウェッジ1の表面1aおよび裏面1bに平行でかつy軸と垂直な方向であり、y軸方向は、x軸とz軸に直交する方向である。
レーザ光3は、オプティカルウェッジ1の表面1aで反射して曇りガラス2に入射するとともに、オプティカルウェッジ1の裏面1bで反射して曇りガラス2に入射するため、光路差が生じ、その結果、図5のような干渉縞10が発生する。なお、オプティカルウェッジ1の厚さdが小さくなる方向は、x軸方向でも良い。この場合、図5に示す干渉縞10が横向きとなる。
後で説明するように、この発明では、図5に示された干渉縞10を人間が肉眼で見る必要はないので、曇りガラス2はこの発明に必須の構成要素ではない。この発明では、干渉縞10の検出に、少なくとも2つのディテクタを有する2分割ディテクタを用いる。
ここで、オプティカルウェッジについてさらに詳細に説明する。図6に示すように、1本のレーザ中の光線A、Bがオプティカルウェッジ1に入射する場合を考える。ここで、オプティカルウェッジ1は、図4に示すものと同様であり、図に示すz軸方向に進むにつれて、オプティカルウェッジ1の厚さdが小さくなるように形成されている。
光線Aは、オプティカルウェッジ1の表面1aで反射して光線Cとなり、光線Bは、オプティカルウェッジ1の裏面1bで反射して、やはり光線Cとなるとする。このとき、光線Aと光線Bの光路差を求め、それを使って光線Cでの位相差を計算する。まず、Snellの法則より、以下の式1の関係が成り立つ。
sinθ/sinθ’=n ・・・(1)
一方、Lgの長さは、以下の式2で表される。
Lg=2d*tanθ’*sinθ ・・・(2)
また、光線Bが、オプティカルウェッジ1内を通過する距離Lpは、以下の式3で表される。
Lp=2(Lp/2)=2(d/cosθ’)=2d/cosθ’ ・・・(3)
ここで、Lp’を、Lpの光学距離とすると、Lp’は以下の式4で表される。
Lp’=2nd/cosθ’ ・・・(4)
Lp’とLgの光路差△Lは、以下の式5となる。
△L=Lp’−Lg=2nd/cosθ’−2d*tanθ’*sinθ=2d(n/cosθ’−sinθ*tanθ’) ・・・(5)
△Lによる位相差△δは、以下の式6で表される。
△δ=△L/λ+π ・・・(6)
ただし、πは反射時の位相変化のために付加されている。
ここで、光強度Iは、以下の式7となる。
I=(cos△δ)2 ・・・(7)
図7に示すように、オプティカルウェッジ1は、x軸に沿って見ると、先端部15が角度(ウェッジ角と適宜称する)αで構成されるくさび型をしている。しかしながら、オプティカルウェッジ1は、先端部15までを有している必要はなく、通常は、先細の先端部分を含まない、およそ台形の形状で構成される。また、図7に示すように、オプティカルウェッジ1の厚さdは、z軸座標における変位zの関数となり、以下の式8のように表される。ここで、zは、z軸上における、先端部15からの距離である。
d=z*tanα ・・・(8)
次に、オプティカルウェッジ1で反射される光がどのような干渉縞を発生するのかを、2つの波長の光の強度に着目して実験する。ここでは、外部共振器型半導体レーザにおけるのこぎり波状の波長変化で見られる典型的な下限波長(λ1)および上限波長(λ2)の光を用いるものとする。すなわち、λ1を410.00nm、λ2を410.04nmとする。また、屈折率n=1.5、入射角θ=45度、オプティカルウェッジ1のウェッジ角α=0.02度とする。
図8は、波長λ1の光と波長λ2の光が入射されるオプティカルウェッジ1の位置に応じて、オプティカルウェッジ1の反射光の強度がどのように変化するかを示すグラフであり、縦軸は相対的な光強度を表し、横軸はオプティカルウェッジ1の先端部15からの距離、すなわち、図7に示すオプティカルウェッジ1の先端部15からz軸方向への距離を表している。図8は、波長λ1の光と波長λ2の光を、オプティカルウェッジ1の先端部15から3mm程度までの間に照射した場合の、反射光の強度の変化を表している。
上述したように、反射光による像を生じさせると、強度が大きい位置が明るい帯となり、強度が小さい位置が暗い帯となり、明るい帯と暗い帯が交互に位置する干渉縞が現れる。この場合、2つの波長λ1とλ2が非常に近接しており、さらに、それらの光がオプティカルウェッジ1の先端部15に近い部分に照射されているため、光路差もきわめて小さい。したがって、波長λ1の光の反射光の強度を表す曲線21と波長λ2の光の反射光の強度を表す曲線22は、ほぼ同一の曲線となり、干渉縞は重なって見える。
図9は、図8と同様に、オプティカルウェッジ1に入射した光の反射光の強度がどのように変化するかを示すものである。図9は、光の入射する位置が、オプティカルウェッジ1の先端部15から1000mm(1m)付近である場合について示したものである。オプティカルウェッジ1の先端部15からの距離が約1mといっても、1mの長さのオプティカルウェッジが必要なわけではない。上述したように、先端部15から1m付近の部分を台形に切り出して形成されるので、オプティカルウェッジ自体の大きさは小さくすることが可能である。
この場合、オプティカルウェッジ1の先端部15から約1mの位置では、オプティカルウェッジ1の厚さdがかなり大きく、これによって、λ1とλ2の波長差0.04nmが蓄積され、曲線21と曲線22のわずかな位相差が生じてくる。位相差が小さいため、それぞれの場合に観察される縞模様はほとんど変わらない。
これは、波長λ1の光と、波長λ2の光を個別に所定の位置に照射して実験した結果である。図2に示すような、のこぎり波状の波長変化を繰り返す光が、このオプティカルウェッジ1に照射されたと仮定する。ここで、波長変化における波長の下限はλ1であるとし、上限はλ2であるとする。そうすると、最初は、波長λ1の光の反射光による曲線21が現れる。その後、半導体レーザのレーザパワーを増加していくと、波長はλ1からλ2に徐々に変化して曲線22に近づく。その後、さらにレーザパワーを増加していくと、曲線21と曲線22の両方が存在する状態となり、その後、波長λ1の光の反射光による曲線21のみとなる。これ以降、レーザパワーの増大に伴って、このような干渉縞の変化が周期的に観察されることになる。
図10は、図8と同様に、オプティカルウェッジ1に入射した光の反射光の光強度がどのように変化するかを示すものである。図10では、光の入射する位置が、オプティカルウェッジ1の先端部15から約6000mm(6m)の場合について示したものである。この場合は、波長λ1の光の反射光の強度を表す曲線21と、波長λ2の光の反射光の強度を表す曲線22がほぼ逆相となっており、両方の光が同時にオプティカルウェッジ1に入射した場合は、干渉縞が観察しづらい状態になる。
また、図9に示す状態で、ウェッジ角αを0.02度から0.04度に変えると、曲線21と曲線22の周期がどちらも小さくなり、同じ距離における縞の数が、図9に示すものより多くなる。このように、オプティカルウェッジの光が照射される位置や、ウェッジ角α等を調整することによって、干渉縞の態様を自在に調整することが可能となる。
次に、オプティカルウェッジ1からの反射光から得られるプッシュプル値について、図11を参照して説明する。図11では、前述の下限波長(λ1)による曲線21と上限波長(λ2)による曲線22に加えて、波長λ3(410.01nm)、波長λ4(410.02nm)、波長λ5(410.03nm)の光による曲線を、それぞれ曲線23、曲線24、および曲線25として表している。また、ここでは、オプティカルウェッジ1の形状や、ウェッジ角α等の条件については、図10に示すものと同様とする。
ここで、オプティカルウェッジ1の先端部15からの距離(z)が6001.6mmの位置の前後に、それぞれ0.3mm幅の、第1のディテクタ31と第2のディテクタ32を並べた2分割ディテクタによって差信号(プッシュプル)を生成する。ここで、差信号は、ディテクタ31とディテクタ32によってそれぞれ検出された光強度の差を示すものである。ディテクタ31によって検出される光の位置は、矢印Dによって示されており、ディテクタ32によって検出される光の位置は、矢印Eによって示されている。また、ディテクタ31および32に近接した位置にディテクタ35および36を設けられる。これらのディテクタ35および36によって検出される光の位置が矢印FおよびGでそれぞれ示されている。以下の説明では、ディテクタ31および32による検出に注目する。
ディテクタ31とディテクタ32による検出の結果、各波長ごとに、図12に示すようなプッシュプル値が得られる。ただし、これは、各波長の光が、単独でオプティカルウェッジ1の位置zに照射された場合の信号である。
また、こうして求められたプッシュプル値は、光量の増減によっても変化してしまうので、和信号を用いてノーマライズすることが望ましい。このようにノーマライズされたプッシュプル値と波長の関係が図13に表されている。
次に、外部共振器型半導体レーザの光の波長変化とプッシュプル値の関係について説明する。今、図14に示すように、レーザパワーに応じてのこぎり波状の波長変化をする外部共振器型半導体レーザがあるとする。なお、これは、図2に示したグラフと同様の波長変化を模式的に表したものである。すなわち、レーザパワーの増加に伴って波長が410.00nmから410.04nmまで変化するが、レーザパワーが例えば、23mWや35mW付近になると、急激に波長が変化して、410.00nmに戻り、この変化を繰り返す。また、この急激な変化が生じる際には、410.00nm付近の波長の光と410.04nm付近の波長の光とが混在して、ホログラム記録等には適さない光(使用不可モードの光)となる。
そこで、この急激な変化が生じる場合、すなわち、410.00nmの波長(λ1)の光と410.04nmの波長(λ2)の光とが混在する場合に、図11で説明したような位置関係のディテクタ31およびディテクタ32によってプッシュプル値を取得してみる。図15では、波長λ1の光に関して得られる光量は曲線21で表され、波長λ2の光に関して得られる光量は曲線22で表されている。曲線21と曲線22はほとんど逆相となっているため、これらの光によって全体的に得られる光強度は、オプティカルウェッジ1への照射位置が変化しても、あまり変化しない。ディテクタ31およびディテクタ32による検出の結果、ディテクタ31で検出される光量と他のディテクタ32で検出される光量はほぼ等しく、プッシュプル値は0に近い値となる。
一方、外部共振器型半導体レーザから射出されるレーザ光の波長が、レーザパワーの増加に応じて単調に上昇する場合(使用可能モード)では、シングルモード、あるいは非常に近い波長の2モード、または3モードの光となる。そのため、この場合は、代表的なピークを構成する波長のシングルモードの光が射出されると仮定する。その波長が、410.01nm(λ3)である場合は、図16に示すように、ディテクタ31およびディテクタ32によって検出される光量の差が小さく、プッシュプル値が小さな値となる。
図17には、波長410.02nm(λ4)について、ディテクタ31およびディテクタ32が光量を検出する様子が示されている。この場合は、それぞれのディテクタで検出される光量に差があり、比較的大きなプッシュプル値が得られる。また、図18には、波長410.03nm(λ5)について、ディテクタ31およびディテクタ32が光量を検出する様子が示されているが、この場合は、それぞれのディテクタで検出される光量に大きな差があり、頗る大きなプッシュプル値が得られる。
ディテクタ31およびディテクタ32に代えてディテクタ35および36からなる2分割ディテクタを使用した場合には、プッシュプル値の変化が異なったものとなる。このように、実際の、外部共振器型半導体レーザの波長変化を前提として得られたプッシュプル値は、波長410.02nm付近で0に近づけることができる。一方、図12および図13に示した、波長ごとに得られたプッシュプル値を見ると、波長410.00nmや波長410.04nmは、その波長単独では大きなプッシュプル値を示すことがわかる。また、外部共振器モードホップの領域で発生する波長の光については、少なくとも、それぞれ異なるプッシュプル値が得られる。
したがって、この発明では、外部共振器モードホップの領域において得られたプッシュプル値から、レーザ光の波長が410.00nm(または410.04nm)に近づいたことを検出し、その場合に、半導体レーザのレーザパワーを所定の値だけ変化させて、これらの波長の光が混在するモード、すなわち使用不可モードを回避するように、レーザパワーを制御する。用途によっては、図3Aおよび図3Bに相当する場合にもレーザパワーを変化させて常にシングルモードになるように制御することも可能である。
この制御によって、外部共振器型半導体レーザから射出されているレーザ光の波長を把握することができ、半導体レーザ等の温度管理を厳密に行わなくても、レーザ光の波長を適切なものに維持するように制御することが可能となる。上述したように、従来の外部共振器型半導体レーザでは、例えば、ネジとピエゾ素子とを組み合わせて、グレーティングの角度を調整し、波長を変化させることができるが、ここでは、原則として、グレーティングの角度は一定に維持されるものとする。また、この波長制御は、例えば、外部共振器型半導体レーザから射出されているレーザ光の波長変化のように、狭い範囲で変動する波長を特定するのに有効である。
次に、図19を参照して、2分割ディテクタの2つのディテクタ31、32と干渉縞との位置関係について説明する。図19において、参照符号40は、オプティカルウェッジの表面と裏面で反射した光の明暗に対応する曲線を示す。横軸は、z軸に対応し、縦軸は、光量(光強度)を示す。この曲線40は、ある波長を例に取ったものであるが、外部共振器型半導体レーザ内の半導体レーザに提供するレーザパワーを変化させれば波長が変化し、それに応じて、曲線40も位相も変化する。図19の下部には、2分割ディテクタ内のディテクタ31とディテクタ32とが示されており、その位置で曲線40の光量をそれぞれ検出する。
曲線40のうち、光量の小さい部分は、領域41として示されており、この部分は、干渉縞の暗く見える部分に対応する。図19に示す状態の場合、ディテクタ31は、曲線40の、光量の大きな部分に配置されており、結果的に大きな光量を検出する。一方、ディテクタ32は、曲線40の、光量の小さい部分に配置され(一部が領域81と重複している)、小さな光量を検出する。ここで、各ディテクタの検出信号の差を求めることにより、プッシュプル値が求められ、それに対応する波長が把握できる。
図20Aおよび図20Bは、上述した波長検出機能を有するレーザ装置の一構成を示す。図20Aは、レーザ装置のグレーティング54の反射面側から見た図であり、図20Bは、レーザ装置の平面図である。図20において、参照符号51がレーザダイオードを示す。レーザダイオード51がホルダー52内に気密に収納されている。ホルダー52に取り付けられたコリメートレンズ53を介してレーザダイオード51からのレーザ光が出射され、グレーティング54に入射される。コリメートレンズ53がレーザダイオード51をホルダー52内に気密に収納するための窓ガラスの機能を兼ねている。
グレーティング54がグレーティング取付部55に取り付けられている。グレーティング取付部55は、板バネ56を介して支柱57に保持されている。グレーティング取付部4の板バネ4が取り付けられた位置から離れた位置がネジ58の回転に応じて上下に変位されることによって、グレーティング54の角度が可変される。ネジ58は、ネジ支え59に挿入されている。
グレーティング54によって回折されたレーザ光がオプティカルウェッジ1に入射される。オプティカルウェッジ1の傾きは、45°ではなく、例えば30°とされている。後述するように、この発明では、オプティカルウェッジ1がボックスカバーのレーザ出射口を塞ぐための窓ガラスを兼ねるので、45°に設定すると、2分割ディテクタがレーザ装置の端に寄り、そのためにレーザ装置のサイズが大きくなる。このために、約30°の角度でオプティカルウェッジ1が設置される。
オプティカルウェッジ1は、例えば反射率が5%以下とされる。5%の場合では、表面の反射と裏面の反射とでほぼ10%を波長検出に使用され、外部に出射されるレーザ光が90%に減少する。このロスを少なくするためには、オプティカルウェッジ1の反射率が3%以下であることが好ましい。具体的には、低反射コーティングを施すことで、低反射率とできる。但し、反射率が低すぎると、波長検出に支障をきたすので、0.5%以上の反射率を確保する必要がある。
オプティカルウェッジ1は、断面が矩形の窓が形成されている保持台60に対して取り付けられている。オプティカルウェッジ1の反射光が2分割ディテクタ61に対して入射され、オプティカルウェッジ1を透過したレーザ光が外部に出射される。2分割ディテクタ61は、ディテクタ支え62によって支持されている。上述したように、2分割ディテクタ61の二つのディテクタの検出信号の差信号の値からレーザ光の波長が検出される。レーザダイオード51等のレーザ装置の構成部品は、台座64上に取り付けられている。なお、図20Aでは、簡単のために、板バネ55、支柱56、2分割ディテクタ61およびディテクタ支え62についての図示が省略されている。
上述したレーザ装置の全体がボックスカバー内に収納される。図21において、参照符号70がボックスカバーを示す。図21Aがボックスカバー70の側面図であり、図21Bがボックスカバー70の平面図である。ボックスカバー70は、台座64上に構成されたレーザ装置の構成部品を上から覆うように、台座64上に取り付けられる。
ボックスカバー70のレーザ光の出射位置に円形の開口71が形成されている。オプティカルウェッジ1の保持台60が嵌合することができるように、開口71の直径よりやや大きい幅と高さを有する角筒状の導光部72が開口71から内側に延長して設けられている。導光部72の延長端は、斜めに切り落とされている。この延長端の角度は、オプティカルウェッジ1の傾きと一致したものとされている。なお、角筒状ではなく、円筒状の導光部を設けても良い。
図22Aおよび図22Bは、ボックスカバー70を取り付けた状態を示す側面図および平面図である。但し、簡単のために、図20に示されている一部の構成部品の図示が省略されている。図22Bに示すように、ボックスカバー70に設けられた導光部72の端部にオプティカルウェッジ1の保持台60が嵌合して取り付けられている。保持台60に対してオプティカルウェッジ1が取り付けられている。したがって、ボックスカバー70の開口71がオプティカルウェッジ1によって塞がれ、オプティカルウェッジ1が窓ガラスの機能を果たし、窓ガラスを省略できる。
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば検出素子としては、2分割ディテクタ21に限らず、1次元PSD(Position Sensitive Detector)を使用しても良
い。PSDは、高抵抗半導体基板の片面または両面に均一な抵抗層が形成され、抵抗層の両端に信号取り出し用の一対の電極が設けられた構成を有している。受光面が抵抗層と同時にPN接合も形成し、光起電力効果によって光電流が生成される。受光面上の光スポットLBの位置に応じて両端の電極から光電流A、Bが発生する。受光面の中央位置に光スポットが位置する場合には、光電流AおよびBが等しい値となる。さらに、検出素子としてCCD(Charge Coupled Device )を使用しても良い。
さらに、この発明の外部共振器型半導体レーザにリットロー型を用いるものとして説明してきたが、例えば、リットマン型のような、他の外部共振器型半導体レーザを用いることもできる。
また、この発明は、オプティカルウェッジと同等の効果が得られる他の光学部品を使用しても良い。例えば、オプティカルウェッジの替わりに、両面がフラットなガラスを用いた場合、レーザ光がわずかでも拡散光あるいは収束光であれば、オプティカルウェッジと同様に、波長の変化に伴って縞模様が変化する。入射レーザ光とフラットなガラスの角度によって、縞模様の各縞は、ほぼ直線の形状となったり、湾曲した形状となる。
拡散光あるいは収束光のレーザ光が入射された場合、波面が平面でないため、フラットなガラスが所定の角度で入射光を受光すると、同心円の縞模様が現れる。このときに、波長が変化すると同心円の縞模様は外に広がったり、内側に集まったりする。そこで、フラットなガラスの角度を変えると、同心円の中心から離れた縞模様が現れ、この場合に、各縞が湾曲した縞模様となる。一方、フラットなガラスの角度をさらに調整すると、同心円の中心から、さらに離れた縞模様が現れ、この場合に、各縞がほぼ直線の縞模様となる。
1・・・オプティカルウェッジ、51・・・半導体レーザ、54・・・グレーティング、60・・・オプティカルウェッジの保持台、61・・・2分割ディテクタ、70・・・ボックスカバー、71・・・開口、72・・・導光部