以下、本発明を実施した撮像レンズ装置等を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学的に取り込んで電気的な信号として出力する光学装置であって、被写体の静止画撮影や動画撮影に用いられるカメラの主たる構成要素を成すものである。そのようなカメラの例としては、デジタルカメラ;ビデオカメラ;監視カメラ;車載カメラ;テレビ電話用カメラ;ドアホーン用カメラ;パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,携帯電話,携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant),これらの周辺機器(マウス,スキャナー,プリンター等),その他のデジタル機器等に内蔵又は外付けされるカメラが挙げられる。これらの例から分かるように、撮像レンズ装置を用いることによりカメラを構成することができるだけでなく、各種機器に撮像レンズ装置を搭載することによりカメラ機能を付加することも可能である。例えば、カメラ付き携帯電話等の画像入力機能付きデジタル機器を構成することが可能である。
なお、従来「デジタルカメラ」の語は、専ら光学的な静止画を記録するものを指していたが、静止画と動画を同時に扱えるデジタルスチルカメラや家庭用デジタルムービーカメラも提案されており、現在では特に区別されなくなってきている。したがって「デジタルカメラ」の語は、デジタルスチルカメラ,デジタルムービーカメラ,ウェッブカメラ(オープン型・プライベート型を問わず、ネットワークに接続されて画像の送受信を可能にする機器に接続されるカメラであって、ネットワークに直接接続されるもの、パーソナルコンピュータ等の情報処理機能を有する機器を介して接続されるもの、の両方を含む。)等のように、光学像を形成する撮影レンズ系,その光学像を電気映像信号に変換する撮像素子等を備えた撮像レンズ装置を主たる構成要素とするカメラすべてを含むものとする。
図13に、撮像レンズ装置UTの構成例を示す。この撮像レンズ装置UTは、物体(すなわち被写体)側から順に、物体の光学像(IM:像面)を変倍可能に形成するズームレンズ系(撮影レンズ系に相当する。)TLと、平行平面板PL(必要に応じて配置される光学的ローパスフィルター,赤外カットフィルター等の光学フィルター;撮像素子SRのカバーガラス等に相当する。)と、ズームレンズ系TLにより受光面SS上に形成された光学像IMを電気的な信号に変換する撮像素子SRとを備えており、デジタルカメラ,携帯情報機器(つまり、携帯電話,PDA等の小型で携帯可能な情報機器端末)等に相当するデジタル機器CTの一部を成している。この撮像レンズ装置UTでデジタルカメラを構成する場合、通常そのカメラのボディ内部に撮像レンズ装置UTを配置することになるが、カメラ機能を実現する際には必要に応じた形態を採用することが可能である。例えば、ユニット化した撮像レンズ装置UTをカメラボディに対して着脱自在又は回動自在に構成してもよく、ユニット化した撮像レンズ装置UTを携帯情報機器(携帯電話,PDA等)に対して着脱自在又は回動自在に構成してもよい。
図13に示す撮像レンズ装置UTでは、ズームレンズ系TL内の光路の途中に平面状の反射面RLが配置されており、反射面RLの前側と後側には各々少なくとも1枚のレンズが配置されている。この反射面RLにより、ズームレンズ系TLを屈曲光学系として使用するための光路の折り曲げが行われ、その際、光軸AXが略90度(つまり90度又は実質的に90度)折り曲げられるようにして光束が反射される。このようにズームレンズ系TLの光路中に光路を折り曲げる反射面RLを設ければ、撮像レンズ装置UTの配置の自由度が高まるとともに、撮像レンズ装置UTの厚さ方向のサイズを変化させて、撮像レンズ装置UTの見かけ上の薄型化を達成することが可能となる。
上記反射面RLは、プリズム類(直角プリズム等),ミラー類(平面ミラー等)等の反射部材により構成される。例えば、後述する第1〜第3の実施の形態では反射部材として直角プリズムが用いられているが、使用する反射部材はプリズム類に限らず、平面ミラー等のミラー類を反射部材として用いることにより反射面RLを構成してもよい。また、2つ以上の反射面でズームレンズ系TLの光軸AXを略90度折り曲げるように光束を反射させる反射部材を用いてもよい。光路を折り曲げるための光学的作用も反射に限らず、屈折,回折,又はそれらの組み合わせでもよい。つまり、反射面,屈折面,回折面,又はそれらを組み合わせて有する屈曲光学部材を用いてもよい。
後述する第1〜第3の実施の形態に用いられているプリズムPRは、光学的なパワー(パワー:焦点距離の逆数で定義される量)を有していないが、光路を折り曲げる光学部材に光学的パワーを持たせてもよい。例えば、プリズムPRの反射面RL,光入射側面,光射出側面等に、ズームレンズ系TLの光学的パワーを一部負担させれば、レンズ素子のパワー負担を減らして光学性能を向上させることが可能となる。後述する第1〜第3の実施の形態では、プリズムPRの物体側に第1レンズL1が配置されているが、その第1レンズL1を配置する代わりに、プリズムPRの物体側面(すなわち光入射側面)に曲率をつけて、負又は正のパワーをもたせてもよい。また、光路の折り曲げ位置はズームレンズ系TLの前側,途中,後ろ側のいずれでもよい。光路の折り曲げ位置は必要に応じて設定すればよく、光路の適正な折り曲げにより、撮像レンズ装置UTが搭載されるデジタル機器(例えばデジタルカメラ)CTの見かけ上の薄型化やコンパクト化を達成することが可能となる。
後述する第1〜第3の実施の形態では、複数の群から成り群間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズ系TLが、撮影レンズ系として用いられている。第1〜第3の実施の形態を構成するズームレンズ系TLは、物体側から順に、負パワーの第1群GR1と、正パワーの第2群GR2と、負パワーの第3群GR3と、正パワーの第4群GR4と、を少なくとも有しており、そのうちの少なくとも第1群GR1と第3群GR3とを固定群としている。第2群GR2と第4群GR4は移動群であり、各群の間隔を変化させるように光軸AXに沿って移動することにより、ズームレンズ系TLの変倍(すなわちズーミング)を行う。図13に示すようにズームレンズ系TLを屈曲光学系とすることは、ズームレンズ系TLの全長を短縮して全体をコンパクト化する上で有効である。そして、それにより撮像レンズ装置UTの小型化・薄型化を効果的に達成することができる。
撮像素子SRとしては、例えば複数の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の固体撮像素子が用いられる。そして、ズームレンズ系TLにより(撮像素子SRの受光面SS上に)形成された光学像は、撮像素子SRにより電気的な信号に変換される。撮像素子SRで生成した信号は、必要に応じて所定のデジタル画像処理や画像圧縮処理等が施されてデジタル映像信号としてメモリー(半導体メモリー,光ディスク等)に記録されたり、場合によってはケーブルを介したり赤外線信号に変換されたりして他の機器に伝送される。
ズームレンズ系TLで形成されるべき光学像は、撮像素子SRの画素ピッチにより決定される所定の遮断周波数特性を有する光学的ローパスフィルター(図13中の平行平面板PLに相当する。)を通過することにより、電気的な信号に変換される際に発生するいわゆる折り返しノイズが最小化されるように、空間周波数特性が調整される。これにより、色モアレの発生を抑えることができる。ただし、解像限界周波数周辺の性能を抑えてやれば、光学的ローパスフィルターを用いなくてもノイズの発生を懸念する必要がなく、また、ノイズがあまり目立たない表示系(例えば、携帯電話の液晶画面等)を用いてユーザーが撮影や鑑賞を行う場合には、撮影レンズ系に光学的ローパスフィルターを用いる必要がない。したがって、光学的ローパスフィルターを必要としない撮像レンズ装置では、射出瞳位置を適正に配置することができれば、バックフォーカスの短縮により撮像レンズ装置やカメラの小型化を達成することが可能である。
また光学的ローパスフィルターとしては、複屈折型ローパスフィルターや位相型ローパスフィルター等が適用可能である。複屈折型ローパスフィルターとしては、結晶軸方向が所定方向に調整された水晶等の複屈折材料から成るもの、偏光面を変化させる波長板等を積層して成るもの等が挙げられる。位相型ローパスフィルターとしては、必要とされる光学的な遮断周波数特性を回折効果により達成するもの等が挙げられる。
図1〜図3は、第1〜第3の実施の形態を構成するズームレンズ系TLにそれぞれ対応する光学構成図であり、広角端(W)でのレンズ配置,光路等を光路展開状態における光学断面で示している。また図4〜図6は、第1〜第3の実施の形態を構成するズームレンズ系TLにそれぞれ対応する光学構成図であり、広角端(W)でのレンズ配置,光路等を光路折り曲げ状態における光学断面で示している。図1〜図3中、実線矢印m2,m4は広角端(W)から望遠端(T)へのズーミングにおける第2群GR2,第4群GR4の移動をそれぞれ模式的に示しており、破線矢印m1,m3,m5は第1群GR1,第3群GR3,第5群GR5がズーミングにおいて位置固定であることを示している。矢印mFは、無限遠撮影から近距離撮影へのフォーカスレンズ群の移動を模式的に示している。また図1〜図3中、ri(i=1,2,3,...)が付された面は物体側から数えてi番目の面(riに*印が付された面は非球面)であり、di(i=1,2,3,...)が付された軸上面間隔は、物体側から数えてi番目の軸上面間隔のうち、ズーミングにおいて変化する可変間隔である。
前述したように、第1〜第3の実施の形態を構成しているズームレンズ系TLはいずれも、物体側から順に、負のパワーを有する第1群GR1と、正のパワーを有する第2群GR2と、負のパワーを有する第3群GR3と、正のパワーを有する第4群GR4とを有し、第2群GR2と第4群GR4を可動群として各群間隔を変化させることによりズーミングを行う撮像用のズームレンズである。そして、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第2群GR2が物体側に移動する。つまり、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第2群GR2は像側から物体側へ単調に移動することにより、像面IMに対する相対位置を変化させる。
第4群GR4のズーム移動は、第1,第2の実施の形態(図1,図2)と第3の実施の形態(図3)とで異なっている。第1,第2の実施の形態では、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第4群GR4が像側に凸のUターン形状の軌跡を描くように移動する。つまり、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第4群GR4が最初に物体側から像側へ移動し、その後、望遠端(T)付近で像側から物体側へ移動することにより、像面IMに対する相対位置を変化させる。第4群GR4のズーム移動方向の変化点は、後でデータを挙げて具体的に示すように、中間焦点距離状態(M)と望遠端(T)との間に存在する。第3の実施の形態では、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第4群GR4が像側に移動する。つまり、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第4群GR4が物体側から像側へ単調に移動することにより、像面IMに対する相対位置を変化させる。
第2,第3の実施の形態(図2,図3)のズームレンズ系TLは、第5群GR5を有している。その第5群GR5はズーミング中に位置固定である。したがって、本質的には負・正・負・正の4成分ズームと変わらない。ズーミング中に位置固定のレンズ群を最も像面側に配置することにより、収差補正上の優位性に基づいた性能向上が可能となる。しかも、移動群を増やしたりするわけではないので、撮像レンズ装置UT等の薄型化に対して不利になることもない。
前述したように、いずれの実施の形態においても第1群GR1と第3群GR3は固定群であり、平行平面板PL及び撮像素子SRと共にズーミング中位置固定、つまり広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し像面IMに対して位置固定になっている。また、第2群GR2が最も第1群GR1側に開口絞りSTを有しており、ズーミングに際し第2群GR2の一部として移動する。開口絞りSTが第2群GR2の一部としてズーム移動する構成により、移動群である第2群GR2の径が小さくなり、さらに最も径の大きくなる第1群GR1の径も小さくなる。したがって、ズームレンズ系TL全体のレンズ径,全長を小さくできるため、撮像レンズ装置UTの小型化・薄型化を実現することができる。
第1〜第3の実施の形態を構成しているズームレンズ系TLのレンズ構成を、以下に詳しく説明する。なお、いずれの実施の形態においても、撮像素子SRを備えたカメラ(図13中のデジタル機器CTに相当する。)に用いられる撮像レンズ装置UTとして、光学フィルター(例えば、光学的ローパスフィルター,赤外カットフィルター)等に相当する2枚のガラス製平行平面板PLが、ズームレンズ系TLの像面IM側に配置されている。
第1の実施の形態(図1,図4)では、負・正・負・正の4群ズーム構成において各群が以下のように構成されている。第1群GR1は、物体側から順に、第1レンズL1,第2レンズL2及び第3レンズL3と、第1レンズL1と第2レンズL2との間に挿入されたプリズムPRと、で構成されている。第1レンズL1は片面が非球面から成る像側に凹の負メニスカスレンズから成っており、プリズムPRは光軸AXを90度曲げるための反射面RL(図4,図13)を有する直角プリズムから成っている。第2レンズL2は両凹の負レンズから成っており、第3レンズL3は物体側に凸の正メニスカスレンズから成っており、第2レンズL2と第3レンズL3とで接合レンズを構成している。第2群GR2は、物体側から順に、開口絞りSTと、両凸の正レンズと、両凹の負レンズ及び両凸の正レンズから成る接合レンズと、片面が非球面で像側に凹の負メニスカスレンズと、で構成されている。第3群GR3は、両面非球面で物体側に凹の負メニスカスレンズで構成されている。第4群GR4は、物体側から順に、片面が非球面から成る両凸の正レンズLPと、物体側に凹の負メニスカスレンズLNと、で構成されている。
第2の実施の形態(図2,図5)では、負・正・負・正・負の5群ズーム構成において各群が以下のように構成されている。第1群GR1は、物体側から順に、第1レンズL1,第2レンズL2及び第3レンズL3と、第1レンズL1と第2レンズL2との間に挿入されたプリズムPRと、で構成されている。第1レンズL1は片面が非球面から成る像側に凹の負メニスカスレンズから成っており、プリズムPRは光軸AXを90度曲げるための反射面RL(図5,図13)を有する直角プリズムから成っている。第2レンズL2は両凹の負レンズから成っており、第3レンズL3は物体側に凸の正メニスカスレンズから成っており、第2レンズL2と第3レンズL3とで接合レンズを構成している。第2群GR2は、物体側から順に、開口絞りSTと、片面が非球面から成る両凸の正レンズと、正レンズ及び負レンズから成る接合レンズと、両凸の正レンズと、で構成されている。第3群GR3は、両面非球面で物体側に凹の負メニスカスレンズで構成されている。第4群GR4は、物体側から順に、両凸の正レンズLPと、像側に凹の負メニスカスレンズLNと、で構成されている。第5群GR5は、片面が平面で物体側に凹の負レンズで構成されている。
第3の実施の形態(図3,図6)では、負・正・負・正・負の5群ズーム構成において各群が以下のように構成されている。第1群GR1は、物体側から順に、第1レンズL1,第2レンズL2及び第3レンズL3と、第1レンズL1と第2レンズL2との間に挿入されたプリズムPRと、で構成されている。第1レンズL1は、物体側面が非球面から成り像側面が平面から成る、物体側に凹の負レンズで構成されている。プリズムPRは、光軸AXを90度曲げるための反射面RL(図6,図13)を有する直角プリズムから成っており、第1レンズL1と接合されている。第2レンズL2は物体側面が非球面の両凹の負レンズから成っており、第3レンズL3は両凸の正レンズから成っており、第2レンズL2と第3レンズL3とで接合レンズを構成している。第2群GR2は、物体側から順に、開口絞りSTと、物体側に凸の正メニスカスレンズと、両凹の負レンズ及び両凸の正レンズから成る接合レンズと、両面非球面で像側に凸の正メニスカスレンズと、で構成されている。第3群GR3は、両凹の負レンズで構成されている。第4群GR4は、物体側から順に、物体側に凹の負メニスカスレンズLNと、両面非球面を有する両凸の正レンズLPと、で構成されている。第5群GR5は、物体側に凹の負メニスカスレンズで構成されている。
一般に、負・正・正や負・正・負・正のマイナスリードのズームレンズ系は、5倍〜10倍の高変倍には適していない。高変倍のズーミングを行おうとすると、望遠端での第1群及び第2群のレンズ径が大きくなってしまうからである。しかし、第1〜第3の実施の形態のように、3倍程度の変倍比を有するズームレンズ系の場合、第1群が正パワーを有する(いわゆるプラスリード)のズームレンズ系に比べて、レンズ群の数が少なく、偏芯誤差感度も小さいことが知られている。さらに、2つの移動群の間に負パワーを有する固定群を配置すると、移動群の数を増やすことなく光学性能を向上させるとともに全体の偏心誤差感度を更に低減することが可能となる。したがって、第1〜第3の実施の形態で採用しているような負・正・負・正のズーム構成は、製造誤差が小さい、レンズ群の数が少ない、といったメリットがあるため好ましい。
上記の性能向上及び感度低減を達成するには、第3群GR3のパワーが最適に配置されていることが必要となる。具体的には以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
-15.0<f3/fw<-2.0 …(1)
ただし、
f3:第3群の焦点距離、
fw:広角端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。
条件式(1)は、第3群のパワーに関する好ましい条件範囲を規定している。条件式(1)の下限を越えると、第3群のパワーが弱くなり、固定の第3群を配置して性能向上と感度低減を達成する効果が小さくなるので好ましくない。逆に、条件式(1)の上限を超えると、第3群のパワーが強くなりすぎるために、第3群で発生する収差が大きくなりすぎ、光学系全体の収差を補正することが困難になってしまう。
以下の条件式(1a)を満足することが更に望ましい。
-10.0<f3/fw<-4.0 …(1a)
この条件式(1a)は、上記条件式(1)が規定している条件範囲のなかでも、上記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。そして、この条件式(1a)を満たすことにより、更に良好な光学性能を得ることが可能になるとともに、更に低い感度を実現することが可能になる。
さらに、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し像面IMに対して位置固定のレンズ群(例えば、コンデンサー機能を有するレンズ群)を、像面IM付近に配置してもよい。ズーミング中位置固定の正パワー又は負パワーのレンズ群を像面IM付近に追加すれば、若干の性能向上が見込まれる。その場合でも、第1〜第3の実施の形態で採用しているズームレンズ系TLと同等の効果を得ることは可能である。
第1〜第3の実施の形態(図1〜図6)のように、第1群GR1がズーミング中位置固定であることが好ましい。つまり、物体側から順に、反射部材を有する負パワーの第1群GR1と、正パワーの第2群GR2と、負パワーの第3群GR3と、正パワーの第4群GR4と、でズームレンズ系を構成するとともに、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第1群GR1を像面IMに対して位置固定とすることが好ましい。第1群GR1をズーミング中位置固定とすることにより、ズームレンズ系TLの入射側での光軸AX方向の長さを短くすることができる。したがって、ズームレンズ系TLの小型化・高倍率化や撮像レンズ装置UT及びデジタル機器(デジタルカメラ等)CTの薄型化を達成することが可能になる。
第1群GR1には反射面RLが含まれているため、第1群GR1を移動させようとすると大きなスペースが必要になる。特に反射面RLをプリズムPRで構成している場合には、重量の大きなプリズムPRを移動させようとすると、駆動機構に大きな負担を強いることになってしまう。上記のように変倍時の第1群GR1のズーム位置を像面IMに対して固定とすれば、このような問題は発生せず、また全長が変化しない(つまりズーミングや沈胴による厚さの変化が生じない)ズームレンズ系を得ることができる。そして、ズームレンズ系の全長が変化しなければ、ズームレンズ系全体を箱型の構造で保持することができるので、ズームレンズ系を剛性の高い構造で保持することができる。
負・正・負・正のズームレンズ系は、ズーミングにおける移動に関して2種類のタイプに大きく分けられる。第1のタイプでは、広角端から望遠端までのズーミングに際し、第2群と第4群とが互いに異なる速さで共に物体側に移動する。第2のタイプでは、広角端から望遠端までのズーミングに際し、第2群が物体側に移動し、第4群が像側に直線的に移動するか、又は像側に凸のUターン形状の軌跡を描いて移動する。2つのタイプでズーム移動が大きく異なっているのは、各群の変倍負担に大きな違いがあるからである。
第1のタイプの場合、第2群が増倍を行い、第3群が減倍を行う。このような場合、第2群の変倍負担が全系の変倍比よりも大きくなり、第2群で発生する収差変動が大きくなってしまい好ましくない。第2のタイプの場合、第2群と第4群とで変倍を分担するので、ズーミングにおける収差変動は小さい。このため、少ないレンズ枚数でもズーム全域で良好な収差性能を得ることができる。したがって第1〜第3の実施の形態のように、広角端(W)から望遠端(T)までのズーミングに際し、第2群GR2が物体側に移動し、第4群GR4が像側に移動するか、あるいは像側に凸のUターン形状の軌跡を描くように移動することが好ましい。ただし、像側に凸のUターン形状の軌跡を描く第4群GR4の移動に対して、第2群GR2の物体側への移動は、直線的(つまり単調)である。
上記第2のタイプのズーミングを行うには、第2群の変倍負担が全系の変倍負担よりも小さいことが必要である。具体的には以下の条件式(2)を満足することが望ましい。この条件式(2)の下限を越えると、第2群GR2の変倍負担が大きくなりすぎるので、良好な性能を得ることが困難になる。
1.0<(ft・m2w)/(fw・m2t) …(2)
ただし、
fw:広角端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
ft:望遠端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
m2w:広角端での第2群の結像倍率、
m2t:望遠端での第2群の結像倍率、
である。
上述したように第1〜第3の実施の形態のズームレンズ系TLは、第1群GR1にプリズムPRを反射部材として有している。第1〜第3の実施の形態に用いられているプリズムPR(図1〜図6)は直角プリズムであり、そのプリズムPRにより前述の反射面RL(図13)が構成されている。つまり、図4〜図6に示されているように、プリズムPRはズームレンズ系TLの光軸AXを略90度折り曲げるように内部の反射面RLで光束を反射させる構成になっている。なお、プリズムPRは直角プリズムに限らず、例えば2以上の反射面でズームレンズ系の光軸AXを略90度折り曲げるように光束を反射させるものでもよい。
通常の撮像素子の画面形状は長方形であり、第1〜第3の実施の形態に用いられている撮像素子SRの画面形状も長辺:短辺=4:3の比率の長方形になっている。このため、撮像レンズ装置UTの薄型化を達成するには、撮像素子SRの短辺方向に光路を折り曲げることが好ましい。なお、図4〜図6に示されている光路の折り曲げ方向は撮像素子SRの短辺方向になっており、図1〜図3ではプリズムPRを平行平面板として表現することにより、その光路を直線的に展開した状態で示している。
第1〜第3の実施の形態に用いられているプリズムPRは内部反射プリズムであるが、これに限るものではない。反射面RLを構成する反射部材としては、表面反射プリズム,内部反射平板ミラー,表面反射平板ミラー等、いずれの反射部材を採用してもよい。内部反射プリズムがプリズム内部で物体光を反射させるのに対し、表面反射プリズムは物体光をプリズム内部に入射させずに、プリズム表面を反射面として物体光を反射させるものである。また、表面反射平板ミラーがミラー表面を反射面として物体光を反射させるのに対し、内部反射平板ミラーはガラス板裏面を反射面として、ガラス板内に入射させた物体光を反射させるものである。
デジタルカメラ,携帯情報機器等のデジタル機器CT(図13)の薄型化を達成するには、上記反射部材のなかでも内部反射プリズムが最適である。内部反射プリズムを採用した場合、物体光はプリズム媒質中を通過することになるため、物体光がプリズムを透過する際の面間隔は物理的に短くなる。このため、反射面RLの構成に内部反射プリズムを採用した場合、光学的に等価な構成をよりコンパクトなスペースで達成することができるので好ましい。また、反射面RLは完全な全反射面でなくてもよい。つまり、反射面RLのうち一部分の反射率を適宜調整して一部の物体光を分岐するようにし、測光用センサーや測距用センサーに入射させてもよい。さらに、反射面RL全体の反射率を適宜調整してファインダー光を分岐させてもよい。
従来の撮像レンズ装置のように、光軸の方向を変更することなくズームレンズ系に含まれるレンズや絞り等の光学要素を直線的に配列した場合、撮像レンズ装置の厚み方向の大きさは、ズームレンズ系の最も物体側の光学要素から撮像素子までの大きさで事実上決定される。ところが、半導体素子等の画像処理能力の向上により、パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,携帯電話,携帯情報端末等に搭載される撮像レンズ装置にも、従来のように簡易なものではなく、より高画素,高倍率,高画質を有する撮像レンズ装置が求められるようになってきている。このため、撮像レンズ装置に含まれるズームレンズ系のレンズ素子の枚数も増大する一方であり、非使用時(いわゆる沈胴状態)でもレンズ素子の厚みのため薄型化を達成することが困難になっている。
これに対し、第1〜第3の実施の形態を構成しているズームレンズ系TLのように、反射面RLにより物体光を反射させて光軸AXを略90度折り曲げる構成を採用すれば、撮像レンズ装置UTの厚さ方向の大きさを、最も物体側に位置する第1レンズL1から反射面RLまでの大きさにまで小さくすることが可能になる。したがって、撮像レンズ装置UTの見かけ上の薄型化・小型化を達成することが可能になる。また、反射面RLで光軸AXを略90度折り曲げる構成を採用すると、反射面RL近傍で物体光の光路を重ね合わせることができるため、空間を有効に利用することが可能となり、撮像レンズ装置UTの更なる小型化を達成することができる。
第1〜第3の実施の形態のように、反射面RLの位置は第1群GR1の内部であることが好ましい。最も物体側に配置された第1群GR1の内部に反射面RLを配置することにより、撮像レンズ装置UTの厚さ方向の大きさを最小にすることが可能になる。なお必要に応じて、光軸AXの折り曲げ角度を90度以外の角度に設定してもよいが、光軸AXの折り曲げ角度が90度に近いほど撮像レンズ装置UTをよりコンパクトにすることが可能になる。したがって、光軸AXの折り曲げ角度は90度に近いほど好ましい。
前述したように第1群GR1にはズームレンズ系TLの光軸AXを略90度折り曲げるように光束を反射させるプリズムPRが反射部材として含まれているが、第1〜第3の実施の形態のズームレンズ系TLのように、反射部材の物体側には非球面を有する負パワーの第1レンズL1を配置することが好ましい。プリズムPR等の反射部材の物体側に配置されるレンズが単レンズであること、つまり、パワーを有する光学素子として第1レンズL1のみを反射部材の物体側に配置することにより、光軸AXが折り曲げられたズームレンズ系TLの幅(つまりズームレンズ系TLの入射側での光軸AX方向の長さ)を小さくすることができ、撮像レンズ装置UTの薄型化を達成することが可能となる。さらに、第1レンズL1として負レンズを用いることにより、広画角化が可能になるとともに前玉径を小さくすることが可能になる。
また、第1〜第3の実施の形態ではプリズムPRの光入射側面と光射出側面がいずれも平面から成っており、第3の実施の形態では第1レンズL1の光射出側面も平面から成っている。しかも第3の実施の形態では、第1レンズL1の光射出側面とプリズムPRの光入射側面とが接合されている(すなわち面間隔がゼロである。)。そのプリズムPRと第1レンズL1とは屈折率が異なっているが、仮に両者の屈折率が同じである場合には一体で加工することが可能である。しかし、それはプリズムの光入射側面が平面ではなく曲面であることを意味する。したがって、ガラスモールド成型・プラスチック射出成型の技術やプリズムの後加工を考えた場合、製造上解決すべき課題が大きく、一体加工する際の製造誤差による性能劣化や一体加工の製造難易度によるコストアップが懸念されるので好ましくない。
第1〜第3の実施の形態のように第1群GR1が負パワーを有するズームレンズ系TLにおいて、広角端(W)で発生する歪曲収差と像面湾曲を補正することは、一般に極めて難しい。レンズ枚数を多くすることによってこの問題を解決することは通常可能であるが、レンズ枚数を増やせば収差性能の低下を招くおそれがある。例えば第1の実施の形態のように、第1レンズL1と接合レンズL2,L3との間にプリズムPRを挿入した場合、プリズムPRが無い場合と比べて、第1群GR1の像側主点位置が物体側に大きく移動し、パワーも弱くなってしまう。同じパワーを得るためには各レンズのパワーを強くする必要があるが、パワーを強くすると像面湾曲が更に大きく発生してしまう。第1〜第3の実施の形態では第1レンズL1に非球面を導入することにより、構成上発生する歪曲収差,非点収差等の補正を行っている。また、第1レンズL1に非球面を導入することにより、第1レンズL1のパワーを強くすることができるため、結果として反射部材での光路幅を小さくすることができる。この効果を得るためには、光軸AXから離れるほど第1レンズL1の負パワーが弱くなる非球面を、第1レンズL1に導入することが望ましい。
第1群GR1を第1レンズL1と反射部材(例えばプリズムPR)のみで構成すると、ズームレンズ系TLはコンパクトになるが、色収差やその他の収差を補正することが難しくなる。諸収差を良好に補正するためには、第1群GR1がプリズムPR等の反射部材よりも像側に、少なくとも1枚の負レンズと少なくとも1枚の正レンズとから成るレンズ群を含むことが好ましい。したがって第1群GR1は、物体側から順に、非球面を有する負パワーの第1レンズL1と、ズームレンズ系TLの光軸AXを略90度折り曲げるように光束を反射させるプリズムPR等の反射部材と、少なくとも1枚の負レンズと少なくとも1枚の正レンズとから成るレンズ群と、で構成されることが好ましい。これにより、コンパクトな構成で色収差,歪曲収差,非点収差等の補正が可能となる。また、少なくとも1枚の負レンズと正レンズは接合されていることが製造上の誤差を低減できるので好ましい。そして、反射部材の像側に配置される(第1群GR1中の)レンズ群は、正パワーを有することが更に好ましい。
また、第1群GR1内での色収差等の補正を良好に行うために、第1〜第3の実施の形態のように、第1群GR1中のプリズムPR等の反射部材の像側には、負レンズから成る第2レンズL2と正レンズから成る第3レンズL3とで構成された接合レンズを、上記レンズ群として配置することが好ましく、第3の実施の形態のように、両凹の負レンズから成る第2レンズL2と両凸の正レンズから成る第3レンズL3とで構成された接合レンズを、上記レンズ群として配置することが更に好ましい。接合レンズはズームレンズ系に対する組み込みが容易であるため、反射部材の像側に負・正のレンズ2枚から成る接合レンズを配置すれば、簡単・コンパクトな構成で歪曲収差や非点収差等の収差を良好に補正することが可能になる。
先に述べたように第1〜第3の実施の形態のズームレンズ系TLでは、ズーミングにおいて第1群GR1と第3群GR3(及び第5群GR5)が固定であり、第2群GR2と第4群GR4がズーム移動することにより変倍を行っている。負・正・負・正のズームレンズ系では、第1群のズーム移動により収差変動を補正して、第4群をレンズ1枚構成とするのが一般的である。しかし、第1群がズーム位置固定の場合には、第4群に対する収差変動がかなり大きくなり、レンズ1枚構成ではズーミングでの収差変動を補正することが困難になる。そこで第1〜第3の実施の形態のように、少なくとも1枚の負レンズLNと、少なくとも1枚の正レンズLPと、で第4群GR4を構成することが好ましい。このように負レンズLNと正レンズLPをそれぞれ少なくとも1枚用いれば、色収差等を補正することができるので、良好な性能を確保することができる。
第1〜第3の実施の形態のように、プリズムPRよりも像側に開口絞りST又はシャッターを有することが、撮像レンズ装置UTを小型化・薄型化する上で有効である。また、デジタルカメラの薄型化には、レンズやプリズムといった光学部品が薄い領域内に配置できることが必要であるが、それに加えて鏡胴や駆動部品を含んだ構成がコンパクトであることも必要である。第1〜第3の実施の形態では、開口絞りSTが第2群GR2中の最も物体側に配置されており、第2群GR2の一部としてズーム移動する構成になっている。通常のデジタルカメラでは開口絞りSTの位置にメカシャッターを配置するが、メカシャッターを用いる場合、その遮光部が退避する場所を確保する必要がある上に、駆動モーター等の駆動素子も必要になる。したがって、かなり大きなスペースが必要となる。
第1〜第3の実施の形態のように開口絞りSTが移動群と共にズーム移動する場合、大きなスペースを必要とするメカシャッターが移動群に搭載されると、移動群自体が大きくなってしまう。その上、駆動ユニットに過大な負担がかかるため、全体として非常に大きな構成になってしまう可能性がある。つまり、光学部品だけがコンパクトであっても、構成によっては小型化が困難になる場合がある。そこで第1〜第3の実施の形態では、移動群にシャッター機構を搭載しないことが、メカ構成を含めた小型化に際しては好ましい。また、ズーム位置固定の第3群GR3の像面IM側にシャッター機構を配置することが好ましい。なお、撮像素子SRとして電子シャッター機能を有する固体撮像素子を用いれば、撮像レンズ装置UTをより一層小型化することができる。
第1〜第3の実施の形態では、矢印mF(図1〜図3)で示すように第4群GR4を物体側に移動させることにより、無限遠物体から近接物体へのフォーカシングを行う構成になっている。従来より、ズーミングに対するレンズ駆動は、1つの駆動装置の動力をズームカムを通じて複数の移動レンズ群に伝達することで行われている。フォーカシングは、別の駆動装置を用いたフォーカスレンズ群の移動により行われている。しかし、第1〜第3の実施の形態のようにズーミングやフォーカシングで移動するレンズ群が2つであれば、カム等を使わずに2つのレンズ群にそれぞれ駆動装置を直接接続することができる。各レンズ群の移動量をコントロールすることによりズーミングやフォーカシングを行えば、カムが不要となるので構成を簡略化することができ、ひいては薄型化につながるので好ましい。また、前述したように負レンズLNと正レンズLPをそれぞれ少なくとも1枚用いて第4群GR4を構成し、近接撮影を行う際のフォーカシングを、第4群GR4を物体側に繰り出すことにより行う構成にすれば、フォーカシング時の収差変動を小さくすることができるので好ましい。
第1〜第3の実施の形態を構成しているズームレンズ系には、入射光線を屈折作用により偏向させる屈折型レンズ(つまり、異なる屈折率を有する媒質同士の界面で偏向が行われるタイプのレンズ)が用いられているが、使用可能なレンズはこれに限らない。例えば、回折作用により入射光線を偏向させる回折型レンズ,回折作用と屈折作用との組み合わせで入射光線を偏向させる屈折・回折ハイブリッド型レンズ,入射光線を媒質内の屈折率分布により偏向させる屈折率分布型レンズ等を用いてもよい。ただし、媒質内で屈折率が変化する屈折率分布型レンズは、その複雑な製法がコストアップを招くため、屈折率分布の均一な均質素材レンズを用いることが望ましい。また、開口絞りSTのほかに不要光をカットするための光束規制板等を必要に応じて配置してもよい。
なお、上述した各実施の形態や後述する各実施例には以下の構成が含まれており、その構成によると、良好な光学性能が確保され、かつ、小型化を達成したズームレンズ系を実現することができる。そして、それをデジタルカメラ,携帯情報機器(携帯電話,PDA等)等の撮影レンズ系として用いることにより、当該機器の軽量・コンパクト化,低コスト化,高性能化及び高機能化等に寄与することができる。
(Z1) 物体側から順に、負パワーの第1群と、正パワーの第2群と、負パワーの第3群と、正パワーの第4群とを少なくとも有し、広角端から望遠端までのズーミングに際し、前記第1群と前記第3群が像面に対して位置固定であり、前記第2群が物体側に移動し、前記第4群が像側に移動するか、あるいは像側に凸のUターン形状の軌跡を描くように移動することを特徴とするズームレンズ系。
(Z2) 前記第2群が開口絞りを有することを特徴とする上記(Z1)記載のズームレンズ系。
(Z3) 前記第1群が光路を折り曲げるための反射部材を有し、前記反射部材がズームレンズ系の光軸を略90度折り曲げるように光束を反射させることを特徴とする上記(Z1)又は(Z2)記載のズームレンズ系。
(Z4) 前記第1群が、物体側から順に、非球面を有する負パワーの第1レンズと、前記反射部材と、1枚の負レンズ及び1枚の正レンズから成る接合レンズと、で構成されることを特徴とする上記(Z3)記載のズームレンズ系。
(Z5) 前記第4群が、少なくとも1枚の負レンズと、少なくとも1枚の正レンズと、から成ることを特徴とする上記(Z1)〜(Z4)のいずれか1項に記載のズームレンズ系。
(Z6) 前記第4群を物体側に移動させることにより、無限遠物体から近接物体へのフォーカシングを行うことを特徴とする上記(Z1)〜(Z5)のいずれか1項に記載のズームレンズ系。
(Z7) 前記条件式(1),(1a),(2)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする上記(Z1)〜(Z6)のいずれか1項に記載のズームレンズ系。
(Z8) 前記プリズムよりも像側に開口絞り又はシャッターを有することを特徴とする上記(Z1)〜(Z7)のいずれか1項に記載のズームレンズ系。
(U1) 上記(Z1)〜(Z8)のいずれか1項に記載のズームレンズ系と、そのズームレンズ系により形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備えたことを特徴とする撮像レンズ装置。
(C1) 上記(U1)記載の撮像レンズ装置を備え、被写体の静止画撮影,動画撮影のうちの少なくとも一方に用いられることを特徴とするカメラ。
(C2) デジタルカメラ;ビデオカメラ;又は携帯電話,携帯情報端末,パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,若しくはこれらの周辺機器に内蔵又は外付けされるカメラであることを特徴とする上記(C1)記載のカメラ。
(D1) 上記(U1)記載の撮像レンズ装置を備えることにより、被写体の静止画撮影,動画撮影のうちの少なくとも一方の機能が付加されたことを特徴とするデジタル機器。
(D2) 携帯電話,携帯情報端末,パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,又はこれらの周辺機器であることを特徴とする上記(D1)記載のデジタル機器。
以下、本発明を実施した撮像レンズ装置に用いられるズームレンズ系の構成等を、コンストラクションデータ等を挙げて更に具体的に説明する。ここで挙げる実施例1〜3は、前述した第1〜第3の実施の形態にそれぞれ対応する数値実施例であり、第1〜第3の実施の形態を表す光学構成図(図1〜図6)は、対応する実施例1〜3のレンズ構成をそれぞれ示している。
表1〜表6に、実施例1〜実施例3のコンストラクションデータを示し、表7に各条件式規定のパラメータに対応するデータ及び関連するデータを各実施例について示す。表1,表3,表5において、λ0は設計波長(単位:nm)、Y'maxは撮像素子SRの受光面SS上での最大像高(光軸AXからの距離に相当する。単位:mm)、f,Fnoは各焦点距離状態(W),(M),(T)に対応する全系の焦点距離(単位:mm),Fナンバーをそれぞれ示している。なお、Wは広角端(最短焦点距離状態)、Mはミドル(中間焦点距離状態)、Tは望遠端(最長焦点距離状態)である。
表1,表3,表5中の物体面OBから像面IMまでの基本的な光学構成(i:面番号)において、ri(i=0,1,2,3,...)は物体側から数えてi番目の面の曲率半径(単位:mm)、di(i=0,1,2,3,...)は物体側から数えてi番目の面と(i+1)番目の面との間の軸上面間隔(単位:mm)を示しており(d0:物体距離)、Ni(i=1,2,3,...),νi(i=1,2,3,...)は軸上面間隔diに位置する光学材料のd線に対する屈折率(Nd),アッベ数(νd)をそれぞれ示している。なお、各実施例は光学的ローパスフィルター(平行平面板PLに相当する。)が存在する例であるが、前述したように光学的ローパスフィルターは適宜省略可能である。
曲率半径riのデータに*印が付された面は、非球面(非球面形状の屈折光学面、非球面と等価な屈折作用を有する面等)であり、非球面の面形状を表わす以下の式(AS)で定義される。表2,表4,表6中に、各実施例の非球面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-n,E+n=×10+nである。また、軸上面間隔diのデータに#印が付された空気間隔は、ズーミングやフォーカシングにより変化する可変間隔である。表2,表4,表6中に、各実施例の可変間隔データを示す。POS1,POS2,POS3は無限遠合焦状態、POS4,POS5,POS6は近接距離合焦状態、POS1,POS4は広角端(W)、POS2,POS5はミドル(M)、POS3,POS6は望遠端(T)での可変間隔データをそれぞれ示している。
x=(C0・y2)/[1+{1-(1+K)・C02・y2}1/2]+Σ(Aj・yj) …(AS)
ただし、式(AS)中、
x:高さyの位置での光軸AX方向の変位量(面頂点基準)、
y:光軸AXに対して垂直な方向の高さ、
C0:近軸曲率(=1/ri)、
K:円錐係数、
Aj:j次の非球面係数、
である。
図7〜図12は実施例1〜実施例3の収差図であり、図7,図9,図11のPOS1,POS2,POS3は実施例1〜3の無限遠合焦状態での諸収差を示しており、図8,図10,図12のPOS4,POS5,POS6は実施例1〜3の近接距離合焦状態での諸収差をそれぞれ示している。また、(A)〜(C)は広角端(W)、(D)〜(F)はミドル(M)、(G)〜(I)は望遠端(T)での諸収差をそれぞれ示している。
図7〜図12中、(A),(D),(G)は球面収差図、(B),(E),(H)は非点収差図、(C),(F),(I)は歪曲収差図である。球面収差図は、ラインdで示すd線(波長587.56nm:λ0)に対する球面収差量、ラインCで示すC線(波長656.28nm)に対する球面収差量、ラインgで示すg線(波長435.84nm)に対する球面収差量を、それぞれ近軸像面からの光軸AX方向のズレ量(横軸,単位:mm)で表しており、縦軸は瞳への入射高さをその最大高さで規格化した値(すなわち相対瞳高さ)を表している。非点収差図において、破線DTはd線に対するタンジェンシャル像面、実線DSはd線に対するサジタル像面を、近軸像面からの光軸AX方向のズレ量(横軸,単位:mm)で表しており、縦軸は像高(IMG HT,単位:mm)を表している。歪曲収差図において、横軸はd線に対する歪曲(%)を表しており、縦軸は像高(IMG HT,単位:mm)を表している。