本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の参考例)
図1は、本発明の第1の参考例の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置を一部破断して示す構成図であり、図2の(a)は、プローブと、ヨーク、永久磁石およびコイルとの関係を示す概略図であり、同図(b)はヨークに磁気抵抗調節ネジおよびギャップ調節ネジを配設した概略図であり、図3は、本発明の第1の参考例の接触式プローブを説明するための図であって、(a)は本参考例の接触式プローブの模式図であり、(b)はその磁気回路を示し、(c)は従来の接触式プローブを説明するための模式図である。
先ず、本発明の第1の参考例における接触式プローブについて、図3を参照して説明する。
図3の(c)は従来の接触式プローブを模式的に示す図であり、3次元的に移動可能な測定軸等の移動部材103の先端部に一方向に移動可能にプローブ102を配設し、プローブ102は、その先端に球101を有し、ばね104によって移動部材103に吊下げられている。このばね104は、前述したように、非常に弱いばねとする必要がある一方プローブ102の自重を支えなければならないので、ばね104の伸びが非常に大きくなるため、プローブ102全体のサイズも大きくなり、問題であった。
これに対し、本参考例における接触式プローブにおいては、図3の(a)に示すように、プローブ102に強磁性体からなる部材105を取り付けるとともに、ヨーク106、永久磁石107およびコイル108からなる磁気回路をプローブ102に設ける。ヨーク106とプローブ102(強磁性部材105)の間に働く磁力は、後述するように、プローブ102の重力方向の力をキャンセルする一定の力と、プローブ102の変位にしたがって変化するばね要素の力とがある。
図3の(a)における磁気回路の作用について説明すると、この磁気回路は、模式的に図3の(b)のように描くことができる。永久磁石107を簡単なモデルとして起磁力Mと内部抵抗R0で表すことにし、永久磁石107から発生する磁束をΦとする。また、プローブ102(強磁性部材105)とヨーク106の間のギャップをδとし、ギャップδの磁気抵抗をR1とする。コイル108部分のモデルは、起磁力をM’、発生する磁束をΦ’、ヨーク等の内部抵抗をR0’とする。
図3の(a)に示すように、ヨーク106とプローブ102(強磁性部材105)の重なり部分をz、紙面に垂直な方向である厚さをb、隙間(ギャップ)をδ、透磁率をμとすると、ギャップ部分の磁気抵抗は、
これではわかりにくいので、z=0のまわりで1次までテーラー展開すると、
式(3)における第1項は、定数でプローブ102の自重を支える力を発生させる項である。項の中にコイル108の起磁力M’があるので、これを調節することにより、この力を微調節できることがわかる。また、第2項は、プローブ102の移動量zを含み、zが大きくなればなるほど力が減少することを示している。プローブ102が変位するにしたがって発生力がかわるので、機械的なばねに相当する。
つまり、図3の(a)の磁気回路は、プローブ102の自重を支えるカウンタバランスの質量と同じ作用に加え、ばね要素の作用をかねている。また、磁気抵抗R0などは磁石107やヨーク106の材質や形状を変えることにより調節することができる。
以上のように、プローブ102にこれらの磁力を作用させることによって、従来例のようにサイズの大きい弱いばねを使わなくてすみ、小型のプローブが実現できる。また、従来例のように環境温度の変化等でばねが変形し、押しつけ力が変化することもないので、押しつけ力の安定性が向上する。
また、コイル108に通電する電流を変化させることにより、磁力が変化するので、押しつけ力の精密な調整が可能となる。プローブ先端の球101の交換等によってプローブの自重が変化しても、調整しなおすことにより、その影響を軽減し、測定精度を上げることができる。さらに、電流を制御するだけで押しつけ力を調節できるので、遠隔操作で調節することが可能となり、作業が容易になるため効率的な測定装置の運用が可能となる。
なお、プローブ102の支持方法として、図3の(a)の模式図では転がりガイドを用いているが、平行板ばねで支持してもいいし、空気軸受けで支持することもできる。
次に、以上のように構成される本参考例の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置について、図1および図2を用いて説明する。
図1において、球1を取り付けるための円錐状の先端をもち、中心に小さな穴を貫通させたプローブチップ2を、スペーサ3を挟んで、中心に小さな穴を設けたプローブシャフト4の下側にねじ込み固定する。ミラー6を強磁性材料で製作したミラー固定駒5に接着固定し、このミラー固定駒5をプローブシャフト4の上側にねじ込み固定する。プローブシャフト4の中央部には小さな穴に連通する真空配管7が固定されており、真空配管7は真空度計9に接続され、さらにエアーバルブ8を介して、図示しない真空源に接続されている。このとき、エアーバルブ8は、真空配管7を、真空源に接続するか、大気に解放するかを選択できるものを用いる。
このように、プローブ内に真空路を設け、プローブチップ2の円錐状の先端部に球1を真空吸着できるように構成することにより、真空路の圧力を大気圧にすれば球1は簡単に取り外すことができ、先端の球1の交換が簡単である。従来のように先端球を取り付けた部品を製作し組立てる必要がないので交換に要する費用や交換に要する時間を軽減することができる。また、この構成により、先端の球1を頻繁に交換することが経済的に考えても可能となる。例えば、先端球に鋼球を使用する場合、球の値段は1〜3円程度であり、その効果は大きい。しかも、従来例のようにプローブ先端部分を固定する操作、例えばねじ締め等が必要ないために、交換に要する時間も格段に短縮できる。これらの結果、常に新しい球に交換して測定することが交換コスト、測定時間などを考慮しても十分可能となり、常に新しい球で測定することにより、問題点のところで指摘した先端球の損傷が生じても、その影響範囲をその測定のみ、つまり最小限に抑えることができる。したがって、測定の信頼性が向上する。
また、プローブチップ2の先端に球1を真空吸着したときに、ゴミを挟んだりすることがあり、その場合には測定誤差が非常に大きくなるため、測定信頼性が悪化する。しかし、先端球1がゴミを挟んでいると隙間があるために、空気が漏れ、真空度が悪化する。そこで、真空路に配設した真空度計9で真空度を監視することにより、先端球の吸着状態の良否判定が可能となる。もし先端球の吸着状態が悪ければ測定を中断する工程を設けることにより、測定信頼性を向上することができる。
プローブシャフト4は、薄い空気膜を介して非接触に支持する手段いわゆる空気軸受け11を介して、ハウジング10に対して上下方向に移動可能に支持されており、ハウジング10には、空気軸受け11に圧縮空気を導くための圧縮空気穴12が穿設してある。これらの圧縮空気穴12は、ドリルで片面からあけ必要に応じて穴の表面部分をネジ止めや接着材等で塞ぐなどすれば、ハウジング10内部を自由に引き回すことができる。この圧縮空気穴12は圧縮空気配管13に接続され、さらに図示しない圧縮空気源に接続されている。この構成により、プローブシャフト4は上下方向に摩擦なしに自由に移動することができる。
ハウジング10にはその下面部に突起状の下側ストッパー10bが設けられており、スペーサ3と衝突することによってプローブシャフト4の上方向への過剰な動きを規制する。下方向への過剰な動きに対しても同様に、突起状の上側ストッパー10aがハウジング10の上面部に設けられており、プローブのミラー固定駒5に突き当たるようになっている。これらストッパー10a、10bには衝撃を和らげるために、例えば薄いゴムシート等のダンパーを接着固定しておく。ハウジング10は、測定軸15に固定された第2のハウジング16に固定され支持されている。
第2のハウジング16には磁気回路を構成するヨーク17が固定してあり、この部分を上からみた図を図2の(a)に示し、ヨーク17には、永久磁石18とコイル19が取り付けられており、プローブの磁気回路を構成し、コイル19は配線を介して電流源20に接続されている。なお、ヨーク17と強磁性材で製作したミラー固定駒5との隙間(ギャップ)をδ、重なり部分の上下方向の長さをzとする。上からみたヨーク17とミラー固定駒5の重なり部分をbとする。
このように構成される図1および図2の(a)に図示するプローブの磁気回路が発生する力は、前述した式(3)に基づいて説明するように、プローブの自重を支える一定の力を発生する作用に加え、変位にしたがって力が変化するばね要素の作用をかねている。
また、プローブの磁気回路に関して、図2の(b)に示すように、ヨーク17に磁気抵抗を調節するための磁気抵抗調節ネジ17aを設け、また、ヨーク17とミラー固定駒5とのギャップδを調節するためギャップ調節ネジ17bを設けることもできる。
磁気抵抗調節ネジ17aを出し入れすると、磁束がそこを通るときの磁気抵抗が増減し、式(3)における磁気抵抗R0、R0’を調節できるようになるため、磁気回路の発生する一定の力と、ばね要素に相当する力を調節することが可能となる。また、ギャップ調節ネジ17bを出し入れすることでギャップδを調節することができ、ギャップδを変化させることにより、磁気回路の発生する磁力が変化する。この構成によれば、磁気回路が発生する2種類の力、すなわち一定の力と変位に比例する力の割合を調節することができるので、部品の製作精度を緩和することができる。
また、第2のハウジング16には、プローブを押し下げる方向にエアーを吹き付けるノズル21が設けられており、ノズル21に接続された配管22は、エアーバルブ23を介して図示しない圧縮空気源に接続されている。このエアーバルブ23は図示していないコントローラで自動制御され、図4に示すフローチャートにしたがって測定動作が行われる。図4については後述する。
測定軸15は、プローブシャフト4と同じ方向に、すなわち上下方向(Z方向)に、ガイド24を用いて移動可能にXYテーブル26に対して支持され、ボールネジ25とサーボモータ27で駆動される。XYテーブル26は、図示しない定盤に対してXおよびY方向に移動可能にガイドされ、サーボモータ(不図示)で位置決めされる。測定軸15を駆動するサーボモータ27はサーボアンプ29に接続され、サーボアンプ29は、制御系切り替え装置31に接続される。サーボモータ27の回転軸にはエンコーダ33が接続してあり、その出力を位置制御補償回路30に接続する。制御系切り替え装置31が位置制御系に接続している時は、測定軸15の位置を制御することができる。この制御系切り替え装置31は図示していないコントローラで自動制御され、図4に示すフローチャートにしたがって測定動作が行われる。
また、干渉計34および4分の1波長板35は、測定軸15に固定され、その上方にミラー36を配置し、ミラー36はフレーム37に固定する。この構成により、干渉計34はミラー6とミラー34の間の距離を測定することができる。フレーム37の下方部分には被測定物の載置台(不図示)が設けられ、この載置台に被測定物38が固定される。
プローブのZ方向の位置調整は、プローブシャフト4に固定した凸球面ミラー46に対向する位置に配置されたポジションセンサー47によりプローブシャフト4のZ方向の位置を測定し、調整を行う。すなわち、図示しない光源から光ファイバー42に光を入射し、光ファイバー固定駒43から光束を出射させる。この光ファイバー固定駒43は、固定部材44で第2のハウジング16に固定される。レンズ45を固定部材44に固定して設け、光束を集光させる。集光した光はプローブシャフト4に固定された凸球面ミラー46で反射し、ポジションセンサー27上で焦点を結ぶ。ここで、凸球面ミラー46の球面の中心を、プローブシャフト4のセンター軸上に配置する。ポジションセンサー47は、測定軸15に固定された微動テーブル48の上に固定されており、Z方向に位置を調整して固定できる。
ポジションセンサー47は、センサーアンプ49に接続され、光点位置を電気信号に変換する。センサーアンプ49は針圧制御補償回路32に接続され、さらに制御系切り替え装置31に接続されている。この制御系切り替え装置31が針圧制御系に接続されているときは、センサーアンプ49の出力が一定になるように、サーボモータを制御する。
また、プローブの可動範囲内にプローブ押しつけ力を測定するための力センサー39を設置する。
次に、以上のように構成された形状測定装置を用いて行う測定動作を図4のフローチャートを用いて説明する。
先ず、測定前にプローブの準備を行う。最初にプローブを下端に固定する(ステップS01)。すなわち、エアーバルブ23を開いて圧縮空気をノズル21から吹き出させてプローブを下方へ移動させる。すると、ミラー固定駒5が上側ストッパー10aに当接し、プローブは下端に固定される。
次に、先端の球1を次のようにセットする(ステップS02)。エアーバルブ55を開き、プローブチップ2内部の穴の圧力を下げた状態で、先端の球1をプローブチップ2に真空吸着する。球1が真空吸着されると配管内部の圧力が下がるので、真空度計9の測定値が真空に近づく。したがって、この真空度計9の測定値を監視することによって、プローブ先端球の有無を検出することができる(ステップS03)。もしも圧力が異常ならば、なんらかの故障なので処理を中断する(ステップS20)。圧力が正常なら次の処理(ステップS04以降)に進む。
制御系切り替え装置31を位置制御系に設定し、すなわち、測定軸15の位置が一定になるようなフィードバック制御系を選択し、そして、安全位置、すなわち、プローブが最も被測定物38から離れる方向に測定軸15を退避させる(ステップS04)。次に、力センサー39の上にプローブがくるようにXYテーブル26を移動させ(ステップS05)、そして、測定軸15を下げて、プローブを力センサー39に接触させる(ステップS06)。
ここで、先端の球1が、被測定物や力センサー等に接触して反力を受けると、プローブシャフト4が押し上げられ、その変位を光りてこの原理を使用した変位計で読みとることができる。この変位計部分の動作を次に説明する。
光ファイバー固定駒43から出射した光束は次第に広がりながらレンズ45に入射し、そして、集光しながら、プローブシャフト4に固定された凸球面ミラー46で反射し、ポジションセンサー47の上で焦点を結ぶ。その焦点の位置がポジションセンサー47の中心位置にくるように、あらかじめ、微動テーブル48を調整し固定しておく。プローブシャフト4が移動すると、前に説明したとおり、凸球面ミラー46に入射する光束と反射する光束の中間方向に垂直な方向、すなわち、図1に矢印Aで示す方向の移動量が拡大されて、ポジションセンサー47上の焦点位置が移動する。プローブシャフト4は上下方向だけに移動可能に支持されているので、矢印Aで示す方向はほぼプローブシャフト4の移動方向と考えられる。このプローブ移動方向と変位測定方向の角度差をθとすると、プローブ移動量のcosθを測定することになる。その位置変化をセンサーアンプ49で電気信号に変える。
プローブシャフト4が押し上げられると、ヨーク17とミラー固定駒5との重なる長さzがプラス側に増える。すると、前述した式(3)より磁気回路の発生する力が弱まるので、プローブの先端球1が被測定物等を押しつける力がその分だけ次第に増える。これはばね要素がそこにあるのと同じ作用である。したがって、センサーアンプ49の出力は、プローブの押しつけ力を表している。なお、このセンサーアンプ49の出力は、凸球面ミラー46の中心まわりの傾斜には影響されない。これは凸球面ミラー46の球面の中心がプローブシャフト4のセンター軸に一致しているからである。
プローブの先端球が被測定物等に接触したかしないかは、プローブの変位測定信号、すなわち、センサーアンプ49の信号をモニタしていれば判別できる。プローブはミラー固定駒5とハウジング10の突起状のストッパー10aが接触しているので、測定軸15が動き外乱振動があってもプローブは動かない。したがって、センサーアンプ49の信号が外乱振動によって揺れることがなく、接触の判定を容易に行うことができる。すなわち、あらかじめ定めた信号レベルに達するかどうかを監視していればよいため、非常に高速で、例えば1msで接触の有無が判定できる。
次に、エアーバルブ23を閉め、ノズル21から圧縮空気を吹き付けるのを止め、プローブの動きを自由にする(ステップS07)。変位センサーの値があらかじめ定められた値、例えば0ボルトになるまで測定軸15を移動させる。そして、制御系切り替え装置31を針圧制御系に切り替える(ステップS08)。すなわち、測定軸15をセンサーアンプ49の出力が一定になるように制御する。
次いで、力センサー39を用いてプローブの押しつけ力を測定する(ステップS09)。この時の押しつけ力の値が所定の値かどうかを判断する(ステップS10)。この時、押しつけ力の良否の判定は例えば設定値の±10%と設定する。もし、この値に入っていなければ異常なのでプローブ押しつけ力を調節する(ステップS21)。押しつけ力はコイル19に流す電流を変化させれば調節できる。そこで、力センサー39で測定したプローブ押しつけ力が所定の値になるように電流源20の電流を調節する。
プローブ押しつけ力の判定(ステップS10)が良好だった場合には、制御系切り替え装置31を再び位置制御系に切り替え、測定軸15を安全位置に退避させ(ステップS11)、再びエアーバルブ23を開いてプローブを下端に固定する(ステップS12)。
以上で、プローブの準備が完了し、次に被測定物の形状測定の工程に入る。
先ず、最初の測定位置にXYテーブル26を移動する(ステップS13)。そして、先ほどと同じ手順で、測定軸15を下げて、プローブの先端球1を被測定物21に接触させる(ステップS14)。
次に、エアーバルブ23を閉め、ノズル21から圧縮空気を吹き付けるのを止め、プローブの動きを自由にする(ステップS15)。
そして、制御系切り替え装置31を針圧制御系に切り替え(ステップS16)、被測定物の測定領域をXYテーブル26を用いて走査(トレース)し、同時に、測定軸の位置を図示しない座標測定装置で測定する(ステップS17)。また、プローブの上下方向については、参照ミラー6と参照ミラー36の間の距離を測定する干渉計34で直接測定する。
全測定領域を走査したら、制御系切り替え装置31を再び位置制御系に切り替え、測定軸を安全位置に退避し(ステップS18)、再びエアーバルブ23を開いてプローブを下端に固定する(ステップS19)。
以上説明してきたように、本参考例によれば、先端球1、プローブチップ2、スペーサ3、プローブシャフト4、ミラー固定駒5、ミラー6、配管7等にかかる重力を図2に示す磁気回路が発生する磁力でキャンセルする。したがって、従来例のように弱くしかもサイズの大きいばねを用いる必要がない。このため小型のプローブが実現可能である。
また、温度変化等の環境変化に対して発生力が変化するばねを使用していないため、プローブ押しつけ力の精度が向上し、その結果測定精度が向上する。
また、プローブ先端球の着脱および交換が容易であり、プローブ先端球を頻繁に交換することが可能となる。その結果、傷付いた先端球で形状測定する危険を軽減することが可能となり、測定信頼性が向上する。
また、測定軸15の制御を本参考例ではサーボモータとボールネジで構成しているが、例えばリニアモータ等の他の駆動手段を用いることもできる。
本参考例ではプローブの準備として、押しつけ力の調整を図4のフローチャートを用いて説明したが、毎回の測定でこの調整が必要とは限らない。つまり、押しつけ力の調整を省略することも考えられる。
(第2の参考例)
図5は、本発明の第2の参考例の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置を一部破断して示す構成図であり、図6の(a)ないし(c)は、それぞれ、本発明の第2の参考例の接触式プローブを説明するための模式図である。なお、本参考例において、前述した第1の参考例における要素や部材と同様な要素や部材には同一符号を付して説明する。
本参考例における接触式プローブは、天秤とバランス重りを用いてプローブの自重を補償するものであり、先ず、図6の(a)を参照して説明する。
図6の(a)において、3次元的に移動可能な測定軸等の移動部材103に支点110の回りを揺動自在な天秤111を配設し、天秤111の一端につり糸112を介してプローブ102を接続し、天秤111の他端につり糸113を介してバランス重り114を吊り下げ、バランス重り114に弱い微調整用のばね115の一端を接続し、このばね115の他端を移動部材103に形成した支点の回りを回転自在なてこ116に接続する。てこ116の他端部には調節用のネジ117を設けてある。
このように、天秤111を介してバランス重り114を設けることにより、バランス重り114がプローブ102にかかる重力のほとんどを受けるので、ばね115が受け持つ力は従来例(例、図3の(c)参照)に対して非常に少なくなる。したがって、弱いばねを採用しても、ばねが長く伸びてプローブ全体のサイズが大きくなるという問題を回避することができる。さらに、ばね115の一端を調節ネジ117を配置したてこ116に接続することにより、調節ネジ117を調節することでばね115の長さを調節することができ、ばね115の長さを変化させることができるために精密なばね力の調節が可能となり、これによってプローブ102の接触力の精密な調整ができる。また、プローブ102の球101の交換等によってプローブ102の自重が変化しても、調節ネジ117により調整しなおすことにより、その影響を軽減することができるため、測定精度を上げることができる。
また、温度変化等によってばね115が変形しても、もともとばね115の受け持つ発生力が小さいので、プローブ押しつけ力誤差への影響も少ない。プローブ押しつけ力の誤差が小さくなるので、測定精度が向上できる。
また、図6の(b)には、同図(a)に図示する接触式プローブにおいて調節ネジ117による調節機能を省略した接触式プローブの模式図を示す。すなわち、バランス重り114の下に接続した微調整用のばね115の他端を移動部材103に接続するものである。このような構造においても、天秤111を介するバランス重り114がプローブ102にかかる重力のほとんどを受けるので、ばね115が受け持つ力は従来例に対して非常に少なくなり、弱いばねを採用しても、ばねが長く伸びてプローブ全体のサイズが大きくなるという問題を回避することができ、温度変化等によってばね115が変形しても、もともとばね115の受け持つ発生力が小さいので、プローブ押しつけ力誤差への影響も少ない。プローブ押しつけ力の誤差が小さくなるので、測定精度が向上できる。
また、図6の(c)に示すように、天秤111に代えてプーリー118を用いることもできる。すなわち、移動部材103に支点110の回りを回動自在なプーリー118を配設し、このプーリー118の回りに掛けられたつり糸119の一端にプローブ102を接続して他端にバランス重り114を接続し、そして、バランス重り114の下に微調整用のばね115の一端を接続し、このばね115の他端を移動部材103に接続する。このような構成としても、図6の(b)に示す接触式プローブと同様の作用効果を奏することができる。
なお、微調整用のばね115は、図6の(a)ないし(c)においては、バランス重り114に接続しているが、プローブ102側に接続しても同じことである。また、プローブ102の支持方法は、図6の(a)ないし(c)においては転がりガイドを用いているが、平行板ばねで支持してもいいし、空気軸受けで支持することもできる。
次に、図6の(a)に示すように構成された本参考例の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置について、図5を用いて説明する。
図5において、球1を取り付けるための円錐状の先端をもち、中心に小さな穴を貫通させたプローブチップ2を、スペーサ3を挟んで、中心に小さな穴を設けたプローブシャフト4の下側にねじ込み固定する。中心に穴を有するミラー6をミラー固定駒5に接着固定し、このミラー固定駒5をプローブシャフト4の上側にねじ込み固定する。プローブシャフト4の中央部には小さな穴に連通する真空配管7が固定されており、真空配管7は真空度計9に接続され、さらにエアーバルブ8を介して、図示しない真空源に接続されている。このとき、エアーバルブ8は、真空配管7を、真空源に接続するか、大気に解放するかを選択できるものを用いる。これにより、プローブチップ2の円錐状の先端部に球1を真空吸着することができ、先端球の交換が簡単となる。さらに、真空度計9で真空度を監視することにより、先端球の吸着状態の良否判定が可能となり、測定信頼性を向上することができる。
プローブシャフト4は、薄い空気膜を介して非接触に支持する手段いわゆる空気軸受け11を介して、ハウジング10に対して上下方向に移動可能に支持され、ハウジング10には、空気軸受け11に圧縮空気を導くための圧縮空気穴12が穿設してある。これらの圧縮空気穴12は、ドリルで片面からあけ必要に応じて穴の表面部分をネジ止めや接着材等で塞ぐなどすれば、ハウジング10内部を自由に引き回すことができる。この圧縮空気穴12は圧縮空気配管13に接続され、さらに図示しない圧縮空気源に接続されている。この構成により、プローブシャフト4は上下方向に摩擦なしに自由に移動することができる。
また、ハウジング10にはその下面部に突起状の下側ストッパー10bが設けられており、スペーサ3と衝突することによってプローブシャフト4の上方向への過剰な動きを規制する。下方向への過剰な動きに対しても同様に、突起状の上側ストッパー10aがハウジング10の上面部に設けられており、プローブのミラー固定駒5に突き当たるようになっている。これらストッパーには衝撃を和らげるために、例えば薄いゴムシート等のダンパーを接着固定しておく。ハウジング10は、測定軸15に固定された第2のハウジング16に固定され支持されている。
第2のハウジング16には、固定したピン50の回りを揺動自在な天秤51が配設されており、天秤51の一端にはつり糸52を介してミラー固定駒5が吊下げられ、天秤51の他の一端にはつり糸53を介してバランス重り54が接続されている。このバランス重り54は、薄い空気膜を介して非接触に支持する手段いわゆる空気軸受け55を介して、第2のハウジング16に対して上下方向に移動可能に支持され、バランス重り54は上下方向に摩擦なしに自由に移動することができる。バランス重り54の質量はプローブシャフト側の質量よりも少なくしておく。第2のハウジング16には空気軸受け55に圧縮空気を導くための圧縮空気穴56が穿設され、この圧縮空気穴56は圧縮空気配管57に接続され、さらに図示しない圧縮空気源に接続されている。
また、第2のハウジング16には、バランス重り54を上方に吹き上げる方向にノズル21が設けられており、ノズル21には配管22が接続され、配管22はエアーバルブ23を介して図示しない圧縮空気源に接続されている。このエアーバルブ23は図示していないコントローラで自動制御される。
バランス重り54の下方には弱い微調整用のばね58の一端が接続されており、このばね58の他端は、調節用のネジ60を備えたてこ59に接続されている。このてこ59は、図5に示すように第2のハウジング16の一部をヒンジとして一体で構成することができる。この場合、ヒンジの位置が支点となるためばね調節用のネジ60を調節することにより、ネジ60の動きを縮小してばねの長さを変化させることができるため精密なばね力の調節が可能となる。
また、測定軸15は、プローブシャフト4と同じ方向、すなわち上下方向(Z方向)にガイド24を用いて移動可能にXYテーブル26に対して支持され、ボールネジ25とサーボモータ27で駆動される。XYテーブル26は、図示しない定盤に対してXおよびY方向に移動可能にガイドされ、サーボモータ(不図示)で位置決めされる。測定軸15を駆動するサーボモータ27はサーボアンプ29に接続され、サーボアンプ29は、制御系切り替え装置31に接続される。サーボモータ15の回転軸にはエンコーダ33が接続してあり、その出力を位置制御補償回路30に接続する。制御系切り替え装置31が、位置制御系に接続している時は、測定軸15の位置を制御することができる。この制御系切り替え装置31は図示していないコントローラで自動制御される。
また、干渉計34および4分の1波長板35は、測定軸15に固定され、その上方にミラー36を設け、ミラー36はフレーム37に固定する。このように構成することにより、干渉計34はミラー6とミラー34の間の距離を測定することができる。フレーム37の下方部分には被測定物の載置台(不図示)が設けられ、この載置台に被測定物38が固定される。
プローブシャフト4のZ方向の位置調整は、プローブシャフト4に固定した凸球面ミラー46に対向する位置に配置されたポジションセンサー47によりプローブシャフト4のZ方向の位置を測定し、調整を行う。すなわち、図示しない光源から光ファイバー42に光を入射し、光ファイバー固定駒43から光束を出射させる。この光ファイバー固定駒43は、固定部材44で第2のハウジング16に固定される。レンズ45を固定部材44に固定して設け、光束を集光させる。集光した光はプローブシャフト4に固定された凸球面ミラー46で反射し、ポジションセンサー27上で焦点を結ぶ。ここで、凸球面ミラー46の球面の中心を、プローブシャフト4のセンター軸上に配置する。ポジションセンサー47は、測定軸15に固定された微動テーブル48の上に固定されており、Z方向に位置を調整して固定できる。
ポジションセンサー47は、センサーアンプ49に接続され、光点位置を電気信号に変換する。センサーアンプ49は針圧制御補償回路32に接続され、さらに制御系切り替え装置31に接続されている。この制御系切り替え装置31が針圧制御系に接続されている時は、センサーアンプ49の出力が一定になるように、サーボモータを制御する。
また、プローブの可動範囲内にプローブ押しつけ力を測定する力センサー39を設置する。
次に、以上のように構成された形状測定装置を用いて行う測定動作を前述した図4のフローチャートを参照して説明する。
先ず、測定前にプローブの準備を行う。最初にプローブを下端に固定する(ステップS01)。すなわち、エアーバルブ23を開いて圧縮空気をノズル21から吹き出させ、バランス重り54を上方に持ち上げる。すると天秤51が傾き、プローブは下方へ移動し、やがてミラー固定駒5が上側ストッパー10aに当接し、プローブは下端に固定される。
次に、先端の球1を次のようにセットする(ステップS02)。エアーバルブ55を開き、プローブチップ2内部の穴の圧力を下げた状態で、先端の球1をプローブチップ2に真空吸着する。プローブが真空吸着されると配管内部の圧力が下がるので、真空度計9の測定値が真空に近づく。従ってこの真空度計9の測定値を監視することによって、プローブ先端球の有無を検出することができる(ステップS03)。もしも圧力が異常ならば、なんらかの故障なので処理を中断する(ステップS20)。圧力が正常ならば、次の処理(ステップS04以降)に進む。
制御系切り替え装置31を位置制御系に設定し、すなわち、測定軸15の位置が一定になるようなフィードバック制御系を選択し、そして、安全位置、すなわち、プローブが最も被測定物38から離れる方向に測定軸15を退避させる(ステップS04)。次に、力センサー39の上にプローブがくるようにXYテーブル26を移動させ(ステップS05)、そして、測定軸15を下げて、プローブを力センサー39に接触させる(ステップS06)。
ここで、先端の球1が、被測定物や力センサー等に接触して、反力を受けると、プローブシャフト4が押し上げられ、その変位を光りてこの原理を使用した変位計で読みとることができる。この変位計部分の動作を次に説明する。
光ファイバー固定駒43から出射した光束は次第に広がりながらレンズ45に入射し、そして、集光しながら、プローブシャフト4に固定された球面ミラー46に反射し、ポジションセンサー47の上で焦点を結ぶ。その焦点の位置がポジションセンサー47の中心位置にくるように、あらかじめ、微動テーブル48を調整し固定しておく。プローブシャフト4が移動すると、前に説明したとおり、凸球面ミラー46に入射する光束と反射する光束の中間方向に垂直な方向、すなわち、図6に矢印Aで示す方向の移動量が拡大されて、ポジションセンサー47上の焦点位置が移動する。プローブシャフト4は上下方向だけに移動可能に支持されているので、矢印Aで示す方向は、ほぼ、プローブシャフト4の移動方向と考えられる。このプローブ移動方向と変位測定方向の角度差をθとすると、プローブ移動量のcosθを測定することになる。その位置変化をセンサーアンプ49で電気信号に変える。
プローブシャフト4が押し上げられると、天秤51が傾き、ばね58が縮む。その変化長さにばね58のばね定数をかけた力が反力として発生する。その力が球1と被測定物等との間の押しつけ力になる。すなわち、押しつけ力とプローブシャフトの移動量が比例する。したがって、センサーアンプ49の出力は、プローブの押しつけ力を表している。なお、このセンサーアンプ49の出力は、凸球面ミラー46の中心まわりの傾斜には影響されない。これは凸球面ミラー46の球面の中心がプローブシャフト4のセンター軸に一致しているからである。
プローブが被測定物に接触したかしないかは、プローブの変位測定信号、すなわち、センサーアンプ49の信号をモニタしていれば判別できる。プローブはミラー固定駒5とハウジング10のストッパー10aが接触しているので、測定軸15が動き外乱振動があってもプローブは動かない。したがって、センサーアンプ49の信号が外乱振動によって揺れることがなく、接触の判定を容易に行うことができる。すなわち、あらかじめ定めた信号レベルに達するかどうかを監視していればよいため、非常に高速で、例えば1msで接触の有無が判定できる。
次に、エアーバルブ23を閉め、ノズル21から圧縮空気を吹き上げるのを止め、プローブの動きを自由にする(ステップS07)。変位センサーの値があらかじめ定められた値、例えば0ボルトになるまで測定軸15を移動させる。そして、制御系切り替え装置31を針圧制御系に切り替える(ステップS08)。すなわち、測定軸15をセンサーアンプ49の出力が一定になるように制御する。
次いで、力センサー39を用いてプローブの押しつけ力を測定する(ステップS09)。この時の押しつけ力の値が所定の値かどうかを判断する(ステップS10)。この時、押しつけ力の良否の判定は例えば設定値の±10%と設定する。もし、この値に入っていなければ異常なのでプローブ押しつけ力を調節する(ステップS21)。プローブ押しつけ力を所定の値にするためには、調節ネジ60を回す。すると、てこ59の傾斜角度が変化し、弱いばね58の下端の位置が変化する。一方プローブは力センサー39に接触しているので位置の変化がない。したがって、バランス重り54の位置も変化しないので、結局、弱いばね58の長さが変化する。そして、ばねの発生する力が変化し、その結果プローブの押しつけ力が変化する。こうしてプローブ押しつけ力が所定の値になるまで調節ネジ60の回転角度を調節する。
プローブ押しつけ力の判定(ステップS10)が良好だった場合には、制御系切り替え装置31を再び位置制御系に切り替え、測定軸を安全位置に退避し(ステップS11)、再びエアーバルブ23を開いてプローブを固定する(ステップS12)。
以上で、プローブの準備が完了し、次に被測定物の形状測定の工程に入る。
先ず、最初の測定位置にXYテーブル26を移動する(ステップS13)。そして、先ほどと同じ手順で、測定軸15を下げて、プローブの先端球1を被測定物21に接触させる(ステップS14)。
次に、エアーバルブ23を閉め、ノズル21から圧縮空気を吹き上げるのを止め、プローブの動きを自由にする(ステップS15)。
そして、制御系切り替え装置31を針圧制御系に切り替え(ステップS16)、被測定物の測定領域をXYテーブル26を用いて走査(トレース)し、同時に、測定軸の位置を図示しない座標測定装置で測定する(ステップS17)。また、プローブの上下方向については、参照ミラー6と参照ミラー36の間の距離を測定する干渉計34で直接測定する。
全測定領域を走査したら、制御系切り替え装置31を再び位置制御系に切り替え、測定軸を安全位置に退避し(ステップS18)、再びエアーバルブ23を開いてプローブを固定する(ステップS19)。
以上説明してきたように、本参考例によれば、先端球1、プローブチップ2、スペーサ3、プローブシャフト4、ミラー固定駒5、ミラー6、配管7、つり糸52、53等にかかる重力の一部をバランス重り54が受け持つため、ばね58で発生させる力が従来例にくらべて非常に少なくすることが可能である。したがって、弱いばねを採用しても、ばねの伸びが大きくなることはなく、図5に示すように比較的小型に構成できる。
また、ばねが発生する力がもともと少ないので、温度変化などの環境変化に対してばねの発生力が多少変化してもその影響も小さい。したがって、プローブ接触力の精度が向上し、その結果測定精度が向上する。
また、プローブ先端球の着脱および交換が容易であり、プローブ先端球を頻繁に交換することが可能となる。その結果、傷付いた先端球で形状測定する危険を軽減することが可能となり、測定信頼性が向上する。
また、測定軸15の制御を本参考例ではサーボモータとボールネジで構成しているが、例えばリニアモータ等の他の駆動手段を用いることもできる。
本参考例ではプローブの準備として、押しつけ力の調整をフローチャートを用いて説明したが、毎回の測定で、この調整が必要とは限らない。つまり、押しつけ力の調整を省略することも考えられる。
また、本参考例では弱いばね58をバランス重り54の下に配置しているが、反対に上に引っ張り上げる構成でも同じことである。
(第1の実施形態)
図7は、本発明の第1の実施形態の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置を一部破断して示す構成図であり、図8は、本発明の第1の実施形態の接触式プローブを説明するための図であって、(a)は本実施形態の接触式プローブの模式図であり、(b)はその磁気回路を示す。
本実施形態は、前述した第2の参考例に対し、バランス重り側に磁力を利用した力発生機構を設けた点と、プローブを固定するために、圧縮空気を吹き出すのではなく、空気の吸引を利用する点を特徴としており、その他の部分は第1の実施形態と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。なお、本実施形態においても、前述した第1の参考例および第2の参考例における要素や部材と同様な要素や部材には同一符号を付して説明する。
先ず、本実施形態における接触式プローブについて、図8を参照して説明する。図8の(a)において、3次元的に移動可能な測定軸等の移動部材103に支点110の回りを揺動自在な天秤111を配設し、天秤111の一端につり糸112を介して球101を先端に有するプローブ102を接続し、天秤111の他端につり糸113を介してバランス重り114を吊り下げ、このバランス重り114を挟むように一対のヨーク121、122を配置し、一対のヨーク121、122間に永久磁石123を取り付けて磁気回路を構成し、これらを移動部材103に固定する。また、バランス重り114側に流れる磁束の強さを調節するために、永久磁石123の下方側に調節ネジ124を設け、永久磁石123の発生する磁束を迂回させる。バランス重り114側とヨーク121、122の重なっている領域が異なっていると、いわゆる磁力のずり力が働き、バランス重り114はヨーク121、122の中央部部分に引き込まれる。この力があるので、バランス重り114の質量を小さくすることができる。
図8の(a)の磁気回路の作用について説明すると、この磁気回路は、模式的に図8の(b)のように描くことができる。永久磁石123を簡単なモデルとして起磁力Mと内部抵抗R0で表すことにし、永久磁石123から発生する磁束をΦとする。また、バランス重り114側の磁気抵抗をR1とし、調節ネジ1241側の磁気抵抗をR2とする。また、バランス重り114側の重なり部分をz、厚さをb、隙間をδとし、透磁率をμとすると、磁気抵抗は、
また、調節ネジ124側のギャップをh、断面積をSとすると
また、MとΦには、図8の(b)より次の関係が成り立つ。
これではわかりにくいので、z=0のまわりで1次までテーラー展開すると、
式(8)における第1項は、定数でプローブの自重を支える力を発生させる項である。項の中に調節ネジ124とヨーク122の間の隙間hがあるので、調節ネジ124を突き出したり引っ込めたりして隙間hを変えることにより、この力を調節できることがわかる。また、第2項は、プローブの移動量zを含み、zが大きくなればなるほど、力が減少することを示している。変位するにしたがって発生力が変化するので、機械的なばねに相当する。つまり、図8の(a)の磁気回路は、プローブの自重を支えるカウンタバランスの質量と同じ作用に加え、ばね要素の作用をかねている。また、磁気抵抗R0は、磁石123やヨーク121、122の材質や形状を変えることにより調節することができる。
以上のように、本実施形態においては、プローブの自重を支えるための力を永久磁石による磁力を利用して発生させるので、バランス重りの質量を軽くすることができる。プローブの可動部分の質量が軽くなると、その慣性が小さくなるので、被測定物の微少な凹凸に対する追従速度が向上する。被測定物への追従精度があがるということは、測定精度の向上につながる。
次に、以上のように構成される本実施形態の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置について、図7を用いて説明する。
図7において、第2のハウジング16には、バランス重り54を上方に吸引するように構成されたノズル21aが設けられており、ノズル21aには配管22aが接続され、配管22aはエアーバルブ23aを介して図示しない真空源に接続されている。
磁石63を挟んで形成された一対のヨーク62、62は、その上方部分がバランス重り54を間隔をもって挟むように第2のハウジング16に固定され、また、下方部分には、バランス重り54側に流れる磁束の強さを調節するための調節ネジ64が設けられている。したがって、磁石63から発生した磁束は、その一部がバランス重り54側へ、残りが調節ネジ64側に流れる。そこで、調節ネジ64を回転させて、調節ネジ64とヨーク62の間の隙間を調節することにより、バランス重り54側に流れる磁束の量を調節することができる。本実施形態において、磁石63の発生する力は、前述した式(8)に基づいて説明するように、定数部分と、プローブの変位に比例する部分があり、定数部分はプローブの自重をキャンセルするように作用し、プローブの変位に比例する部分はばね要素として作用する。
以上のように構成される形状測定装置において、その測定動作は前述した図4のフローチャートで説明した方法と同じであるので、説明を省略する。ただし、プローブを固定する方法は、エアーバルブ23aを開き、ノズル21aから空気を吸引することによってバランス重り54を引っ張り上げ、ストッパーにプローブを押し当てる。また、針圧を調節する方法は、調節ネジ64を調節することによって行う。
本実施形態では、前述した第1の実施形態に対してさらに次の効果がある。
(1)磁力を利用してプローブ自重を支えているのでバランス重りを軽くすることができる。したがって、プローブの慣性が小さくなり、プローブの被測定物表面に対する応答性、追従性が向上できる。
(2)磁気回路はばね要素をかねているので、ばねを設ける必要がなくなり、小型化が可能となる。
また、第2の参考例で説明したてことばねを用いた押しつけ力の調節機構と、本実施形態で説明した磁力を利用した押しつけ力の調節機構とを両方もつ実施形態も考えられるが、作用効果は同じである。この場合、ばねと磁石の両方の機構が必要になるが、それぞれの受け持つ発生力の範囲を選ぶ時の自由度が高くなる。たとえば、プローブ自重を主に磁石が受け持ち、残りの押しつけ力に関する精密な力をばねが受け持つなどの実施形態が考えられる。つまり、粗い調節を磁石が受け持ち、精密な調節をばねが受け持つといった具合である。
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置を一部破断して示す構成図であり、図10は、本発明の第2の実施形態の接触式プローブを説明するための模式図である。
本実施形態は、前述した第1の実施形態に対し、バランス重り側に永久磁石とコイルを利用した力発生機構を設けた点を特徴としており、その他の部分は第1の実施形態と同様であり、それらの詳細な説明は省略する。なお、本実施形態においても、前述した第2の参考例または第1の実施形態における要素や部材と同様な要素や部材には同一符号を付して説明する。
先ず、本実施形態における接触式プローブについて、図10を参照して説明する。3次元的に移動可能な測定軸等の移動部材103に支点110の回りを揺動自在な天秤111を配設し、天秤111の一端につり糸112を介して球101を先端に有するプローブ102を接続し、天秤111の他端につり糸113を介してバランス重り114を吊り下げ、このバランス重り114を挟むようにヨーク125を配置し、ヨーク125、永久磁石126およびコイル127からなる磁気回路を構成する。この磁気回路は、図3の(b)のように描くことができる。このような磁気回路は、第1の参考例において説明したところであり、詳細は省略し、結論だけ引用すると、本実施形態における磁気回路においてもプローブの自重を支えるカウンタバランスの質量と同じ作用に加え、ばね要素の作用をかねている。すなわち、コイル127に通電する電流を変化させることにより、磁気回路の発生力が変化するので、接触力の精密な調整が可能となる。プローブ先端の交換になどによってプローブの自重が変化しても、調整しなおすことにより、その影響を軽減することができるため、測定精度を上げることができる。前述した第2の実施形態に対し、構成がやや複雑になるが、電流を制御すればよいので遠隔操作が可能となり、作業が容易になるため効率的な測定装置の運用が可能となる。
次に、以上のように構成される本実施形態の接触式プローブを組み込んだ形状測定装置について、図9を用いて説明する。
図9において、ヨーク65と磁石66およびコイル67からなる磁気回路は第2のハウジング16に固定され、ヨーク65の上方部分でバランス重り54を挟むように配置する。コイル67は電流源68に接続する。磁石66とコイル67で発生した磁力が、バランス重り54に作用する力は、前述した式(3)に基づいて説明するように、磁気回路の発生する力は、定数部分と、プローブの変位に比例する部分があり、定数部分はプローブの自重をキャンセルするように作用し、プローブの変位に比例する部分はばね要素として作用する。
以上のように構成される形状測定装置において、その測定動作は前述した図4のフローチャートで説明した方法と同じであるので、説明を省略する。ただし、プローブ押しつけ力の調節は電流源68を調節し、コイル67で発生する磁力を加減すればよいので、第1の実施形態で説明した方法に比べて簡単である。
本実施形態においては、前述した第1の実施形態に加え次のメリットがある。
(1)プローブ押しつけ力の調整を自動化することができる。コイルへの電流を制御するだけでプローブ押しつけ力が変化するので、自動的にプローブ押しつけ力を調節することが可能となる。したがって、測定の準備時間を短縮することができ、測定コストを下げることができる。
(2)プローブ押しつけ力の調節精度が向上できる。コイルへの電流は精密に制御できるため、ばねや磁力の調節ネジなど機械の動きを伴う方法に対して精度が高い。押しつけ力の設定精度が上がるため、測定精度を向上することができる。