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JP4662596B2 - 血液凝固時間を測定するための電気化学的システム - Google Patents

血液凝固時間を測定するための電気化学的システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、全血凝固時間を測定するための個々のシステム、電気化学的測定を許容する特定のトロンビン酵素試薬を含む小さな寸法の使い捨てセンサー及び該センサーを装置内に導入し分析すべき血液の滴を置いた時に前記センサーから受容した電気信号を相関させることができる電気的測定装置に関する。
【0002】
本発明は、より詳しくは、センサー上に置かれた試薬組成物が、末端断片がトロンビン酵素により選択的に切断されて荷電した基を遊離することができる化学基質を含む場合に、プロトロンビン時間(PT)をアンペロメトリーにより測定することができる測定装置及びこの型のセンサーに関する。
【0003】
【従来の技術】
出血を防ぐための血液凝固時間、即ち血液成分がクロットを形成する傾向の検査は、多数の後天性の病理的、外傷性、又は術後の状態で行う日常検査又は毎日の検査の一部を形成する。例えば、過剰投与の場合の出血の危険、又は逆に、投与する抗凝血剤の量が不十分である場合の血栓症の危険を避けるために、医薬、例えばワルファリン又はヘパリンの投与量を正確に調節することができることが心臓関連の病気の場合の抗凝血剤での治療の間に必要とされる。
【0004】
この測定を行うために異なるパラメータが保持されているが、最も一般的なのは、活性化の後のプロトロンビン時間(PT)、即ちクロットの形成が患者から採取した血液サンプルで観察されるまでの時間を測定することである。このような分析は、長時間、複雑かつ厄介な装置を備えた特殊な実験員の専門家の意見に完全に依存している。これは、患者の通院を強要し、例えばシトレートを加えることによる家で採取した血液サンプルの調製を要求し、研究所分析が行われるまで待たせる。
【0005】
小型化、特に電気部品を用いるものに関して行われる方法は、ここ十数年の間、患者が家庭で凝固時間測定を行うのを可能にするより種々の型のコンパクトな装置を有することを可能にする。これらの個々の装置の部品のほとんどは、研究所の装置、即ち流体状態から粘性又はクロット状態へ変化した時に通常の凝固試薬が添加されている血液サンプル中の赤血球動力学の直接の観察と同じ原理による。
【0006】
最初の原理によれば、調製された血液サンプルがもはや、測定装置に適合し得るシングルユーズ受容手段により支持される毛管又はより大きな径の管の口径が測定されたチョークを通して流れなくなるまでの時間が測定される。この流れは一般に、測定装置内に組み込まれた気体ポンプ装置により強制され、凝固がおこるまでの時間は一般に光学的手段により検出される。この型の装置は、例えば、米国特許第3,486,859、3,890,098及び5,302,348に開示される。この原理による装置は、例えば商標“Hemochron"で提示されているもの又はInternational Technidyne Corporation (NT-USA) により商標“Protime Microcoagulation System"の最近の改良品である。測定装置は、明らかに、機械部分(ポンプ)及び凝固検査の終り(光学的検出)の両方に電力を供給するための電力源を含む。最初の使用後に使い捨て可能である分析すべき血液サンプルのための各々の受容手段は比較的扱いにくく(約3×9cm)、行う各々の分析のコストを必要に応じて増加させる精密技術(毛管又はチョークの較正)に依存する。
【0007】
第2の原理によれば、使い捨て灰吹皿に入れた調製された血液サンプルが回転する磁場により動く磁気体の凝固により固定するまでの時間を測定する。ここで凝固現象の検出は最も頻繁には、光学的手段により再び行われる。米国特許第3,967,934は、サンプルを受容する目的の容器が強磁性のボールを含むこの原理を既に開示する。このような装置は、例えば商標“Thrombotrack" でNycomed Pharma (Oslo, Norway) により供される装置に用いられる。例えば米国特許5,154,082に記載される他の変形例によれば、ボールは電磁場にもかけられる強磁性粒子により置換される。これは、支持体上で、試薬を乾燥させ、赤血球の移動度が光学的手段により検出される、先の型の装置は、商標“Coaguchek"で販売されるBoehringer Mannheim (Germany) 装置に相当する。この第2の原理に従って提供される製品は、おそらくCoaguchek 装置のための血液サンプル受容手段のコストがより低いことを除いて第1の原理に従う装置について既に述べたのと同じ欠点を有する。
【0008】
Angelida Bernadoら (Thrombosis, Embolism and Bleeding, ch. 3.5-Eg. Butchart and E. Bodnar ICR Publisher 1992) による上述の先行技術 (“Home Prothrombin Estimation")の方法及び装置で行った比較テストは、家での患者の医学的追跡が病院環境での患者のそれと同様、少くとも満足いくものであったが、患者が合理的な期間の訓練を受けていない場合、信頼できる再現性のある結果を得ることができなかったことを証明している。先行技術の装置は、もちろん、家庭用に供され、容易に移動させることができるが、まだ患者にとって比較的かさばっており、家で、身体、例えばポケット内に維持することができず、動き回れない。光学及び電気機械の両方である装置に依存する測定の信頼性について、その装置が出来るだけ小さく移動できることについての要求があることに疑いはない。
【0009】
最後に、1又は他の上述の原理に従うと、電力を光学及び電気機械装置に供給するために必要な電力源は、凝固時間測定に直接関連しないが、それが自律的である場合(バッテリー)、比較的大きくなければならない。
しかしながら、その内壁が凝固現象がおこるのと進行してシリンジに接続されたオシロスコープにより被検体のインピーダンスの変化を測定することができる一系列の電極を含むシリンジを開示する1972年の米国特許3,674,014を引用することができる。このような装置は、まだ、凝固の間の被検体の特性の変化に依存するだけであり、明らかに個人の使用を目的としていない。
【0010】
とりわけプロトロンビン時間を測定することができる欧州特許EP 0 679 193に開示される装置は電極間の抵抗変化を表す信号から受容手段上の血液サンプルの存在を検出するための測定にのみ関係する2つの電極を含み、時間を測定することにおいて直接の役割はない。この装置において、時間測定は、トロンビン酵素による切断により遊離され得る脱離基としてロダミンを有するオリゴペプチドの基質からの媒体の蛍光の光度測定により行われる。この型の基質は例えば米国特許4,557,862に開示される。クロマトフォアとしてp−ニトロアニリンを有する少し異なる基質を用いる比色測定法は商標“NYCOTEST-CHROM" でNycomed Pharmaにより市販される商品に相当する。
【0011】
これらの比色測定法は、もはや機械的又は電気機械的手段に依存しない利点を有するが、他方、それらは血漿部分のみでの検出を行うために赤血球を除去するために欧州特許EP 0 679 193に提唱されるように、膜による更なる遠心又は限外ろ過ステップを要求する。これらの方法は、高精度の光学的検出手段を有する測定する装置を要求し、これにより輸送が難しい比較的もろい装置となり、そして測定を行う前に一般に5分超の比較的長い発色を必要とするという欠点を有する。
【0012】
電気化学的測定に依存する比較的簡単な原理での方法が米国特許4,304,853に開示される。この方法は少くとも2の電極、クエン酸添加血液サンプル及びジメチルスルホキシド(DMSO)のような溶媒内に維持されなければならないオリゴペプチド基質を含む測定セルに導入することからなる。基質は電気的に活性な脱離基に連結し、その最初のアミノ酸の水素が保護基で置換され得る末端アミノ酸としてアルギニンを有するアミノ酸の鎖から形成される。ここで、これらのアミノ酸、脱離基及び保護基は極めて限られたリストから選択される。反応カスケードによる凝固現象の複雑さのため、溶媒の存在はトロンビンの遊離を導く中間産物を妨害し得、これにより測定の精度を害する。
【0013】
Pentapharm AG (Basel, Switzerland)会社により同日に出願された “Oligopeptiddcrivative"との標題のPCT特許出願において、基質、特にアミノ酸及び脱離基の構成連結の特定の選択が、溶液中に基質を維持するために溶媒又は共溶媒を加える必要なく、以前に用いたのと同じ型の測定セルを用いて、液体媒体中の血液サンプルの凝固時間の測定を行うことを許容する。たとえこれらの新しい基質の使用が特定の利点を有するとしても、測定セルの使用及びこれが要求する操作は、なお、自分自身で自分の凝固時間を検査しようとする患者に輸送が容易で簡単に使用できる装置を与えない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明によるシステムの目的は、個人の凝固時間を測定するために以前に用いられているものより、特定の試薬及び異なる方法の使用の結果としてかなり小さな大きさの装置及びセンサーを供することにより先行技術のシステムになお存在する欠点を克服することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
これにより、本発明は、全血の滴の凝固時間を表す値を測定するための電気化学的システムであって、
少くとも基準電極及び特定の試薬が固定されている作用電極を有する小さな寸法のストリップの形状の電気化学的センサーであって、前記試薬の組成が少くとも1の化学基質を組み込んでおり、該基質の1の末端の結合はトロンビン酵素により切断されて荷電した基(LG)を供することを特徴とするセンサー、並びに電気回路が電力源により電力が供され、可変もしくは非可変の電流又は可変もしくは非可変の電位差を前記センサーの電極に与えることができ、前記荷電した基のマイグレーションにより生ずる電気シグナルを処理することができ、該シグナルを凝固時間を表す値に相関させることができ、そして該値を前記測定装置の表示装置に表示することができることを特徴とする測定装置を含むことを特徴とする電気化学的システムに関する。
【0016】
作用電極上に固定された特定の試薬は更にトロンボプラスチン及び緩衝媒体を含む。
その1の末端の結合がトロンビンにより切断されて荷電した基LGを遊離することができる化学基質はトロンビン酵素のための立体特異的部位を有さなければならない。適切な化学基質は、例えば、オリゴペプチド誘導体、より詳しくはトロンビンにより切断されて荷電した基(LG)を供することができる基に連結した末端のアミノ酸としてアルギニン(arg)を有するオリゴペプチド誘導体により形成される。好ましい実施形態によれば、トロンビンにより遊離され得るこれらの基は、置換してもよいアミノ−アリール又はアミノ−ヘテロアリール基から選択され、ここでアルギニンとの連結はそれらのアミン官能基の1つにより行われる。
【0017】
本発明は、添付の図面を引用してより詳細に説明されよう。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は実質的に1:1のスケールでの測定装置10、及び実質的に3:1のスケールでの約40mmの長さ及び8mmの幅のストリップの形状の電気化学センサー20を示す。
これにより、本装置により形成されるユニット及びいくつかのセンサーのパックは、患者が手本に置いて動き回ることができるいずれの他の携帯用装置のものにも匹敵する大きさを有する。
【0019】
測定装置10及び電気化学的センサー20は、例えば米国特許5,378,628、5,532,602及び欧州特許EP 0 787 984に開示されるような電流滴定法により、グルコースレベルの量的分析のために用いられるものに匹敵する同じ技術から得られる。
更に、測定装置10は、例に示すような卵形のケース11を含み、そのケースは2つの成形されたプラスチック部品11a及び11bをアセンブルすることにより作製され、その上部部品11aは表示パネル12のための窓領域12及び種々の表示モードにアクセスできる制御ボタン13のための開口部を含む。
【0020】
そのケース内に含まれる電気回路は、例えば上述のような電流滴定による。グルコース分析のために用いられる回路の適応構造であり、凝固時間を表示するために異なる電気信号パラメータを用いることのみそれから異なる。
測定装置10は、ケース11の2つの部品11a,11bの間に実質的に配置されたスリット14も含み、その中に、接触領域28を含むセンサー20の一部が導入される。血液サンプルを受容することを目的とする測定領域29を含むセンサー20の他の部分は、全測定時間の間、装置10の外値にあるであろう。先行技術の測定装置のほとんどにおいて、サンプルは装置の内側の、更なる電力消費を導く一般に37℃に温度調節されたエンクロージャーに導入される。
【0021】
サンプルを温度調節エンクロージャーに導入しない本発明によるシステムにおいては、エンクロージャーを温度制御するために必要な量よりかなり少い電力消費で、環境温度の関数として電気信号パラメータを調節するためにスリット14の近くの装置上に必要に応じて熱プローブ15を供することは容易である。
図1に示す電気化学センサー20は、上述のような電流滴定によりグルコースレベルを測定するために用いられる型のものである。それは、それらを電気的に絶縁する小さなスペース23により分離されたその全長にわたって2つの電流コレクター24,25を支持する。例えばPETから作られたうすいプラスチック支持体21を含む。
【0022】
支持体21及びコレクター24,25は絶縁コーティング22でコートされ、その中に2つの窓28,29が、例えばスタンピングにより各々の端近くに切断され、コレクター24,25の部分が出現する。第1の窓28はセンサー20が測定装置10に電気的に接続されるのを許容し、第2の窓29は測定領域を構成し、その目に見えるコレクター部分は各々作用電極24a及び標準電極25aを形成する。
【0023】
作用電極24aは、例えば、プラチナの薄いストリップを積層することにより作られ、標準電極25aは、続いて塩素化された銀の薄いストリップを積層して同時に標準電極を作ることにより作られる。測定領域29において、作用電極、標準電極及び対電極を別個に供することもできる。作用電極はプロトロンビン時間(PT)の測定を許容する以後より詳細に記載される特定の試薬30でコートされる。
【0024】
特定の試薬は、本明細書に記載される例において、少くとも1のトロンボプラスチン、緩衝媒体、及び一般に“脱離基”(LG)で示される荷電した末端部分の切断を許容するためにトロンビン酵素の部位の立体特異的コンフィグレーションを有するオリゴペプチド基質を含む組成物から乾燥状態で固定される。後に報告される実験において、用いる基質はオリゴペプチド誘導体又はその塩の1つがアルギニンに加えて、2−アミノ酪酸(Abu)、アラニン(Ala)、3−シクロヘキシルアラニン(Cha)、2−シクロヘキシルグリシン(Chg)、フェニルアラニン(Phe)、ピペコール酸(Pip)、プロリン(Pro)、バリン(Val)及びグリシン(Gly)からなる群から選択される少くとも1の他のラジカルアミノ酸を含み、ここで該アミノ酸はL,D又はDL型であり得る。
【0025】
これらのオリゴペプチド及びそれらが得られる様式は、上述のPentapharm AG による上述の特許出願により詳細に記載されており、ここでは、凝固時間を測定するためのこれらのオリゴペプチドの大きな利点が、研究セルによる液体媒体での実験により確立されている。これにより、本発明は更にこのようなオリゴペプチドには関連しないが、それらを電気化学的センサー上に乾燥状態でおいた時に処理するのに十分な電気信号を得ることができ、直線性に優れ、かつ応答時間が短いその状態に関連する。
【0026】
同様に、本発明の状態においてアルギニン(Arg)の酸機能と容易に反応し、トロンビンにより切断され得、そして十分な電荷を有さなければならない脱離基は、好ましくは、置換され得る、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アニリノ及びアミノフェニル基からなる群から選択される1又は複数の置換基により任意に置換される、アニリン、キノリルアミン及びナフチルアミン誘導体から選択される。
【0027】
実験は、所定の基質は、液体媒体中での電気信号の検出を許容し得るが、同じ基質を電気化学センサーの作用電極にある乾燥形態で用いる場合に効力がなく、又は作用しないことを示した。この差を説明することができる要因の1つは、オリゴペプチドが作用電極上でその鎖の反対の端を介して脱離基LGを含むものに固定されなければならないという事実である。この結果は、オリゴペプチド鎖の最初のアミノ酸により達成することができるが、好ましくはその末端アミノ酸機能の水素は、Boc(テトラブトキシカルボニル)、Tos(パラトルエンスルホニック)、t−Bups(ter−ブチルフェニルスルホニル)、Mes(メチルスルホニル)、Naps(2−ナフチルスルホニル)、Bzo(ベンゾイル)、Z(ベンゾイルオキシカルボニル)、イソプロピルスルホニル、カンホスルホニル酸からなる群から選択される保護基Rにより置換される。
【0028】
好ましい実施形態によれば、保護基、α−アミノ酸及びそれらの鎖形成、並びに脱離基は、以下のオリゴペプチド基質:
−Z−Gly−Pro−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
−Tos−Gly−Pro−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
−Boc−(D)−Chg−Gly−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
−H−(D)−Chg−Gly−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
−Z−Gly−Pro−Arg−2−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
及びそれらの適合可能な無機又は有機塩を有するように選択される。
【0029】
特定の試薬の組成中のオリゴペプチドは、一般に、それらの塩の1つの形態で用いられ、例えば塩酸(HCl)、酢酸又はトリフルオロ酢酸(TFA)と共に形成される。
プロトロンビンのような凝固時間を測定することができる全ての試薬はそれらの組成においてトロンボプラスチンを含む。最近の分析方法において、生きている組織から抽出された物質の欠点、例えば汚染及び血液が有する医薬又はそれらの代謝物の妨害の危険を避けるために再構成されたトロンボプラスチンが用いられる。これは、例えば、特に25〜35%の負極性ホスファチジルセリン(PS)及び65〜75%正極性ホスファチジルセリン(PS)を含む組成の欧州特許EP 0 565 665の対象を形成する製品Innovin(登録商標)(Dade Int. III USA)に関する。
【0030】
驚くことに、本発明によるシステムは逆に、負リン脂質の量が正リン脂質の量より大きい逆PS/PC比を有するリン脂質と共に組織因子を用いて、プロトロンビン時間(PT)のより優れた測定(シグナルの高さ、直線性)を得ることができることが観察された。
特定の試薬は、その組成において、アクティベーターとしてCaCl2 のようなカルシウム塩を組み込む。しかしながら、得られた最適化条件は、全血中のCa2+の濃度が活性化のために既に十分である場合に、カルシウム塩を組み込むことは必ずしも必要でないことを意味する。
【0031】
ほとんどの生物反応において、媒体を所定のpHに維持し、十分なイオン強度を有することが必要である。当業者に公知である緩衝媒体のうち、Hepes緩衝液(スルホニックN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′2−アミノエタン酸)は、後に示すように、Pentapharm companyのオリゴペプチド基質を用いる場合に最も適切であることが証明されているものである。
【0032】
液体又はばらつきのない組成物からの作用電極上の特定の試薬の固定は、当業者に周知の技術により、他の添加物なしに得ることができることが最後に観察されよう。しかしながら、凍結乾燥技術は後に示すように最も満足できることが判明している。
図2は、示されない電気検出回路に接続した電極24a及び25aを横切って電流が形成されるのを許容する化学反応の概略図である。式R1−AA2 −AA1 −Arg−LG(AA1 及びAA2 は上述の他のアミノ酸を示す)により概略的に示すことができる基質はオリゴヌクレオチドの方向をあわせる基R1により作用電極24aに接続され、その鎖の他端は先に定義される脱離基LGを含む。図の左部分には、酵素がアルギニンと前記脱離基との間の接続を選択的に切断することが見られる。図の右部分には、遊離した脱離基が電極25aに向かって移動し、遊離した脱離基LGの数、これによりサンプル内に形成されたトロンビンの量に比例するであろう電流を作り出すことが見られる。
【0033】
後に報告される実験は、用いるオリゴペプチド基質が全血中に存在する全ての他の酵素を排除してトロンビン酵素により選択的に切断されることも示す。
後に報告する実験において、以下の条件を得ることができるRadiometer (Copenhagen) のVm、ソフトウェアに接続したポテンシオスタットPGP201によりクロノアンペロメトリーによりポテンシオスタチック測定を行った:
電位1:0mV 時間1 1秒
電位2:300mV 時間2 5分
サイクルの数:1 測定頻度:1/秒
最小電流:−50mA 最大電流:50mA
最小感度:1μA
用いるセンサーの作用電極の表面は0.035cm2 であり、サンプル量、血液の滴、又は標準溶液は10μlである。測定の記録はサンプルを入れた後10秒に開始する。以後、先に示したものから選択される“基質”による使用に従って示す用いるオリゴペプチドは、
Tos−Gly−Pro−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド、2HClである。
【0034】
【実施例】
実験1:PC/PS比の影響
30/70の割合のホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルコリン(PC)により活性化される再構成されたヒト組織因子はCaCl2 の存在下で血漿中の凝固を活性化する。この組成は、全血における活性化をも許容するが、最適化についての調査が十分に高い電流滴定信号を得るために必要であることが判明した。これを行うために、後述の通り、PS/PC比を変えて一連の測定を行った。
【0035】
2.5mgのデオキシコール酸ナトリウム塩を含む“TRIS緩衝液”(トリメチロールアミノエタン50nM、NaCl/100M、NaN3 、0.02%)の溶液1000μlを最初のオリジナル溶液を得るために5分、超音波浴を用いて溶かした。同様に、5μモルのPSを含む第2のオリジナル溶液を調製した。次に以下の範囲を有するように上述の希釈液で調節した後、2つのオリジナル溶液を混合して1000μl当り2.5mgの全リン脂質濃度(PS+PC)を得た。
【0036】
a−PC100%−PS0%
b−PC75%−PS25%
c−PC50%−PS50%
d−PC25%−PS75%
e−PC0%−PS100%
ここで百分率は mol%で表す。
【0037】
164mg/mlの濃度の組織因子10ml(American Diagnostica 4500 からの組換えヒト組織因子)も20μlの蒸留水と混合し、次に10μlの先のPS/PC組成物を加え、260μl当り1mg/mlのBSAの比でBSA(ウシ血清アルブミン)を含むTRIS溶液を600μlまで加え、次にそれを2分、撹拌する。次にこの溶液220μlを最終濃度1100μlが得られるまでTRIS溶液で希釈する。先の操作を、5の一連の異なるトロンビン溶液が得られるように他のPS/PC組成物でくり返す。
【0038】
最後に、5分の超音波浴を用いることにより、5の基質溶液、即ち先に示す割合でPC/PS比を変えた5つの特定の試薬を得るように、0.33mg/ml(0.5M/l)で先の溶液の各々に溶かす。
実験にかける電気化学センサーを、10μlの特定の試薬を作用電極におき、次に30℃で2時間オーブン内で乾燥させることにより調製する。
図3(a)〜3(e)は、分で表した時間の関数としてμA/cm2 で表した電流密度を表す曲線であり、10μlの全血のかわりに10μlのTRIS緩衝液を含むブランクテスト(3a0,3b0,3c0,3d0,3e0)を引用する3つの異なるテスト(3a1,3a2,3a3;3b1,3b2,…等)について記録した結果である。図3aに見られるように、曲線3a0,3a1,3a2及び3a3は同一であり、即ちPC/PS比が100/0である場合に電気シグナルが得られない。組成Innovin(登録商標)の好ましい比に対応するPC/PS比が75/25である場合、図3bは電流密度が極めて低く、ブランクテスト曲線3b0とかろうじて異なる。PC及びPSが等量である場合(図3(c))、大きな電流密度を得るか、大きすぎて測定結果が分散する。25/75のPC/PS比では曲線3d1,3d2,3d3が実用的に同一であることが図3(d)で見られる。即ち、優れた再現性及び満足いく直線性が得られる。PSのみを用いる(図3(d))ことにより、シグナルは高いが、再現性はより満足できないものであり得る。これらの実験は、好ましい組成物が65%〜100%のホスファチジルセリン(PS)を有さなければならないことを示す。
【0039】
更に、上述の結果は、全血中のカルシウムイオンの濃度が十分であるなら、CaCl2 を加える必要なく得られた。
他の実験は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の添加が測定にいずれの改良ももたらさないこと、及び組織因子のみ、即ちリン脂質をして活性化は得られなかったことを示した。
【0040】
実験2:緩衝媒体の影響
実験1について記載されるのと同じ方法に従って、緩衝媒体としてTRIS緩衝液と共に比25/75でPC−PSを含む第1の基質溶液(d)及びTRIS緩衝液をHepes緩衝液で置換した第2の基質溶液(f)を調製し、次に2つの測定を行った。これは、同じ患者からの血液サンプルを用いて、各々の基質での曲線、4d1,4d2(TRIS)及び4f1,4f2(Hepes)の各々に対応する。見てわかるように、Hepes緩衝液でかなり高いシグナルが得られ、これにより、好ましい緩衝媒体として保持することができる。
【0041】
実験3:乾燥態様の影響
本実験において、特定の試薬を凍結乾燥により乾燥させた時に得られたシグナルの形状を、先の実験の場合と同様に、30℃で2時間、オーブン内で乾燥させることにより得られたものと比較した。特定の試薬はHepes緩衝液での例2のものと同じである。1又は他の乾燥態様を用いることにより、各々の時間、曲線5f1,5f2(オーブン乾燥)及び5g1,5g2(凍結乾燥)に各々対応する2つの測定を行う。凍結乾燥技術により、かなり短い時間で、より高いシグナルを得ることができることを観察することができる。これは、凍結乾燥が、オーブン乾燥で得られるより、電極の表面の均一な被覆を得ることを許容するという事実により説明することができる。
【0042】
グルコースセンサーの場合にシグナルが最適化される添加物を用いる緩衝液中の基質のみで行った他の実験は、特定表面を増加させる炭素粉末の使用が好ましい効果を有さないことを示した。これは、炭素粉末によるベース電流が測定すべき電流を妨害したからである。
実験4:トロンビン酵素に対する特定の試薬の特異性
全血が極めて多数の成分を含むと仮定すると、本実験は、トロンビン酵素のみが特定の試薬基質を切断することができることを示した。本実験は、等量の血液及び緩衝液での希釈で始めて、緩衝液にかえてr−ヒルジン(r-hirudin 2000 ATU/bulb, Pentapharm AG, Basel, Switzerlandから市販) の濃度を増加させることによりトロンビン酵素を次第に阻害する実験3(即ち比25/75のPC/PS、Hepes緩衝液及び凍結乾燥)により規定される最適化条件で、好ましくは因子Xaがr−ヒルジンにより阻害されないことを検査して行う。図6において、曲線6aはr−ヒルジンを含まない対照線であり、曲線6b〜6gは、各々12.5 ARU/ml;25 ATU/ml;37.5 ATU/ml;50 ATU/ml;100 ATU/ml;1000 ATU/mlで行った測定の曲線である。
【0043】
見てわかるように、シグナルの高さは、r−ヒルジンの濃度が増加するにつれて、それが実際に0から100 ATU/mlになるまで、次第に減少する。これにより、本発明によるシステムは、基質がトロンビンにより選択的に切断されることを許容し、これによりこの酵素の選択的測定を許容すると結論づけることができる。
【0044】
より詳しく曲線6a,6b及び6cを見ると、最大値はサンプル中のトロンビン酵素の減少に実質的に比例しており、線形パラメータ関係と認識することができる。実際、最大値はとらないが、その値は曲線の上昇部分の方向変換点、即ちトロンビンの遊離の速度が最大である点に対応する。実際、15秒の検出窓を用い、勾配の方向の増加から勾配の方向の減少への通過が観察される2つの検出窓間に含まれる値を保持する。
【図面の簡単な説明】
【図1】血液凝固時間を測定するための本発明によるシステムのための測定装置及びセンサーの透視図である。
【図2】測定装置により利用され得る電気信号を導く過程の図である。
【図3】(a)〜(e)は、PC/PS比の関数としてのシグナル変化曲線を示す。
【図4】緩衝媒体の関数としてのシグナル変化曲線を示す図である。
【図5】乾燥態様の関数としてのシグナル変化曲線を示す図である。
【図6】基質特異性を示す曲線を示す図である。
【符号の説明】
10…測定装置
11…ケース
12…表示パネル
13…制御ボタン
14…スリット
15…熱プローブ
20…電気化学的センサー
21…支持体
22…絶縁コーティング
23…スペース
24,25…コレクター
24a,25a…電極
28…接触領域
29…測定領域
30…特定の試薬

Claims (17)

  1. 少なくとも基準電極及び作用電極を絶縁し、血液サンプルを受容することを目的とする測定領域を含む、ストリップの形状の支持体
    を含むことを特徴とする、全血の滴の凝固時間を表す値を測定するための電気化学的センサーであって、
    ここで、前記作用電極は、乾燥形態の特定の試薬を用いてコートされ、該試薬の組成は少なくともトロンボプラスチンと、トロンビン酵素により切断されて荷電した末端基(LG)を供することができるトロンビン酵素のための立体特異的部位を有するオリゴペプチドの誘導体を含む基質とを組み込んでいる電気化学的センサー。
  2. 前記特定の試薬が、緩衝媒体を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学的センサー。
  3. 前記緩衝体がHEPESタイプであることを特徴とする、請求項2に記載の電気化学的センサー。
  4. 前記少なくともトロンボプラスチンが、負リン脂質の量が正リン脂質の量より大きい組成を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  5. 負リン脂質のレベルが65%より大きいことを特徴とする、請求項4に記載の電気化学的センサー。
  6. 前記特定の試薬が、その組成において、カルシウム塩を含むアクティベーターを更に含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  7. 前記オリゴペプチド誘導体が、アルギニン(Arg)を末端アミノ酸として有し、該アミノ酸が2−アミノ酪酸(Abu)、アラニン(Ala)、3−シクロヘキシルアラニン(Cha)、2−シクロヘキシルグリシン(Chg)、フェニルアラニン(Phe)、ピペコリン酸(Pip)、プロリン(Pro)、バリン(Val)及びグリシン(Gly)からなる群から選択される他のラジカルアミノ酸に連結され、ここで該ラジカルアミノ酸はL,D又はDL型であり得ることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  8. 前記荷電した末端基(LG)が、置換することができる、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アニリノ及びアミノフェニル基からなる群から選択される1又は複数の置換基により任意に置換された、アニリン、キノリルアミン及びナフチルアミン誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の電気化学的センサー。
  9. 前記基質が、前記荷電した末端基(LG)を含む鎖に対して、反対の末端にある保護基(R)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  10. 前記保護基(R)が、Boc(ter−ブトキシカルボニル)、Tos(パラトルエンスルホニック)、t−Bups(ter−ブチルフェニルスルホニル)、Mes(メチルスルホニル)、Naps(2−ナフチルスルホニル)、Bzo(ベンゾイル)、Z(ベンゾイルオキシカルボニル)、イソプロピルスルホニル、カンホスルホニル酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の電気化学的センサー。
  11. 前記オリゴペプチド誘導体の塩が、塩酸(HCl)、酢酸又はトリフルオロ酢酸(TFA)で形成されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  12. 前記基質が、
    −Z−Gly−Pro−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
    −Tos−Gly−Pro−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
    −Boc−(D)−Chg−Gly−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
    −H−(D)−Chg−Gly−Arg−3−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
    −Z−Gly−Pro−Arg−2−クロロ−4−ヒドロキシアニリド
    及びそれらの適合可能な無機又は有機塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  13. 前記特定の試薬が、凍結乾燥により前記作用電極に提供されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電気化学的センサー。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の電気化学的センサーの測定領域にある全血の滴のプロトロンビン時間(PT)を測定するための携帯用電気的測定装置であって、該センサーは前記装置に接続され、該装置が、
    電力源を収容し、前記センサーを接続することができるケースと、
    前記センサーの電極間の電圧又は強度を調節することができ、プロトロンビン時間を示す信号を処理して表示パネル上に表示することができる電気回路と、
    を含む携帯用電気的測定装置。
  15. 前記電力源が、自律した電力源であることを特徴とする、請求項14に記載の測定装置。
  16. 前記測定領域を所定の温度にし、該領域を該温度に維持するための手段を更に含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の測定装置。
  17. 環境温度の関数として電気信号パラメータを調節するための前記電気化学的センサーとの接続の近くに、熱プローブを更に含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の測定装置。
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