JP4658394B2 - マルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒の圧縮機をガスエンジンによって駆動するとともに、暖房運転時には、当該ガスエンジンの排気ガスを液冷媒の加熱源として利用するガスヒートポンプ式空気調和装置に係り、特に、複数の室内ユニットを備えて全数冷房運転、全数暖房運転及び冷暖房同時運転から選択切換可能なマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒートポンプを利用して冷暖房等の空調運転を行う空気調和装置は、室内熱交換器、圧縮機、室外熱交換器、絞り機構等の要素を含む冷媒回路を備えている。室内の冷暖房は、冷媒がこの回路を巡る途中で、室内熱交換器及び室外熱交換器において室内の空気(以下「室内気」と呼ぶ)及び外気とそれぞれ熱の交換を行うことによって実現される。また、この冷媒回路には、室外熱交換器による冷媒の熱の受取り(暖房運転時)のみに頼るのではなく、冷媒そのものを直接的に加熱するための冷媒加熱器が設置されることもある。
【0003】
ところで、近年、上述した冷媒回路中に設けられる圧縮機の動力源として、通常使用されている電動機に代わり、ガスエンジンを利用するものが開発されている。このガスエンジンを利用した空気調和装置は、一般にガスヒートポンプ式空気調和装置(以下「GHP」と略す)と呼ばれている。このGHPによれば、比較的安価である都市ガス等を燃料として利用できるため、電動機を利用した圧縮機を備えている空気調和装置(以下「EHP」と略す)のように、ランニングコストがかさむということがなく、消費者にとってコストダウンが可能となる。
【0004】
また、GHPにおいては、たとえば暖房運転時に、ガスエンジンから排出される高温の排気ガスやエンジン冷却水の熱(いわゆる廃熱)を冷媒の加熱源として利用すれば、優れた暖房効果を得ることが可能になるとともに、EHPに比してエネルギの利用効率を高めることができる。ちなみに、この場合において、GHPのエネルギ利用効率は、EHPと比較して1.2〜1.5倍ほど高くなる。また、このような仕組みを導入すれば、冷媒回路中において、上述したような冷媒加熱器等の機器を特別に設置する必要がなくなる。
【0005】
その他、GHPでは、暖房運転時に必要な室外熱交換器の霜除去動作、いわゆるデフロスト動作についてもガスエンジンの廃熱を利用して実施することができる。一般に、EHPにおけるデフロスト動作は、暖房運転を停止して一時的に冷房運転を行って室外熱交換器の霜除去を行うようになされている。この場合、室内に対しては冷風が吹き出すことになるから、室内環境の快適性を損なうこととなる。GHPでは、上記したような事情から連続暖房運転が可能となり、EHPで懸念されるような問題の発生がない。
【0006】
一方、EHPの室内ユニット側においては、複数の空調対象区画毎に独立した室内ユニットを設置し、全区画(室内ユニットの全数)または一部区画の冷房運転、全区画(室内ユニットの全数)または一部区画の暖房運転及び空調対象区画または室内ユニット毎に冷房/暖房/休止の同時運転を行うことができるマルチ型と呼ばれるシステムが開発されており、たとえば特開平1−247967号公報、特開平7−43042号公報、特開平9−60994号公報などに開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように多くの利点を有するGHPの室内ユニットについても、EHPと同様にマルチ型システムの適用が望まれる。
しかしながら、GHPにマルチ型システムを適用する場合には、室外ユニット側に設けられている室外熱交換器の凝縮能力や蒸発能力について、各室内ユニットの運転状況に応じた広範囲の要求能力に対応する必要がある。すなわち、主として冷房運転を行う場合には、冷房運転を行っている室内機ユニット数や暖房運転を行っている室内機ユニット数の組み合わせに応じて、コンデンサとして機能する室外熱交換器に求められる凝縮能力が広範囲にわたって変化するため、要求に応じた凝縮能力を容易に提供できる安価なシステムが望まれる。
【0008】
図11は、空気調和装置の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。冷房運転の場合には、図中のi1−i2間が室内熱交換器の冷房(蒸発)能力となる。この冷房能力を得るためには、室外熱交換器側からi3−i1間の凝縮能力を得る必要がある。
しかしながら、複数の室内ユニットにおいてそれぞれ冷房及び暖房の混合運転がなされる場合、暖房運転をしている少数の室内熱交換器からi4−i1間の暖房(凝縮)能力が得られるため、室外熱交換器ではi3−i4間に相当する凝縮能力を負担すればよい。すなわち、i1−i2間の冷房能力及びi4−i1間の暖房能力は使用者が選択する運転状況に応じて変化する値であるため、室外熱交換器に要求される凝縮能力もこれに応じて広範囲にわたって変化する。
【0009】
また、主として暖房運転を行う場合には、使用者の設定に応じて、冷房運転を行う少数の室内熱交換器で得られる蒸発能力と暖房運転を行う多数の室内熱交換器で得られる凝縮能力とが変化するので、エバポレータとして機能する室外熱交換器に要求される蒸発能力もこれに応じて広範囲に変化する。なお、暖房運転時においては、たとえばガスエンジンから水熱交換器にエンジン冷却水を導入してガスエンジンの廃熱を利用すれば、エバポレータとして機能する室外熱交換器の蒸発能力を補うことも可能である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数の室内機ユニットを備え冷暖房混合運転も可能なマルチ型システムの運転状況に応じて、室外熱交換器に対する凝縮能力及び気化能力の要求変動に容易に能力変化させることができる安価なシステムを備えたマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用した。請求項1に記載のマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置は、それぞれに室内熱交換器を備え室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う複数の室内機ユニットと、ガスエンジンで駆動する圧縮機及び外気と冷媒との間で熱交換を行う室外熱交換器を備えている室外機ユニットと、前記室内機ユニットのそれぞれについて冷媒の流れ方向を制御し冷暖房運転の選択切換を行う分流コントロールユニットとを具備してなるマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置であって、前記室外熱交換器を複数に分割して並列に接続すると共に、同室外熱交換器の各分割部分毎にそれぞれ設けられ、対応する該分割部分に接続される第1ポート、前記圧縮機の吐出側に接続される第2ポート、及び前記分流コントロールユニットに接続される第3ポートを有して冷媒の流れを制御する四方弁を備える冷媒供給切換手段を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
このようなマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置によれば、複数に分割した室外熱交換器に対し、各分割部毎に冷媒の流れを制御することができるので、室外熱交換器の凝縮能力または蒸発能力を分割数に応じて段階的に変化させることができる。
【0013】
請求項1に記載のマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置においては、前記室外熱交換器に隣接して前記ガスエンジンのラジエータを設置し、該ラジエータを複数に分割して並列に接続すると共に、同ラジエータの各分割部毎にエンジン冷却水の導入を選択する切換手段を設けることが好ましく、これにより、ラジエータに導入するエンジン冷却水から得られるエンジン廃熱を、ラジエータの分割数に応じて段階的に有効利用することができる。
【0014】
請求項1または2に記載のマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置においては、前記室外熱交換器の室外機ファンで外気導入の風量制御を行うことが好ましく、これにより、風量制御により室外熱交換器の凝縮能力または蒸発能力を調整することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係るマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置の一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
図1に示すマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置(以下「MGHP」と略す)1は、大きくは複数の室内機ユニット10と、各室内機ユニット10毎に冷媒の流れ方向を制御して冷暖房運転の選択切換を行う分流コントロールユニット20と、後述するガスエンジン駆動の圧縮機や室外熱交換器を備えた室外機ユニット30とを具備して構成されている。このMGHP1では、各室内ユニット10、分流コントロールユニット20及び室外機ユニット30の間が冷媒配管2をもって接続されている。
【0016】
室内機ユニット10には、図2に示すように、冷房運転時に低温低圧の液冷媒を蒸発気化させて室内の空気(室内気)から熱を奪うエバポレータとして機能し、暖房運転時に高温高圧のガス冷媒を凝縮液化させて室内気を暖めるコンデンサとして機能する、室内熱交換器11が具備されている。なお、図中の符号12は冷房運転用の絞り機構として設けた電子膨張弁、13は暖房運転用の絞り機構として機能するキャピラリチューブ、14は逆止弁である。
図示の例では、上述した室内機ユニット10が4台(10A〜10D)並列に設けられており、それぞれが独立した空調対象区画に設置されて、後述する分流コントロールユニット20の切換操作により、全数冷房運転、全数暖房運転、または各室内機ユニット毎に冷房運転/暖房運転/休止(以下「冷暖房同時運転」と呼ぶ)を選択できるようになっている。
【0017】
分流コントロールユニット20は、室内機ユニット10と室外機ユニット30との間を接続する冷媒の管路と、冷媒が流れる管路及びその流れ方向を選択切り換えする電磁弁等の開閉弁とにより構成されている。
図示の例では、各室内機ユニット10毎に4個の電磁弁21,22,23,24が設けられ、それぞれの室内機ユニット10の運転に応じて各電磁弁21〜24を開閉することで、すなわち冷房運転、暖房運転及び休止のいずれかが選択される運転状況に応じて各電磁弁21〜24の開閉状態を切り換えることで、後述する室外機ユニット30と接続されて冷媒が流れる管路や冷媒の流れ方向を選択切換できるようになっている。
なお、分流コントロールユニット20は、一つの室内機ユニット10毎にそれぞれ設けられた2本の室内機ユニット接続用の冷媒配管2と、後述する室外機ユニット30と接続するために設けた3本の室外機接続用の冷媒配管2とを備えている。
【0018】
室外機ユニット30は、その内部において、二つの大きな構成部分に分割される。第1の構成部分は、圧縮機や室外熱交換器などの機器を中心として室内機ユニット10と共に冷媒回路を形成する部分であり、以後冷媒回路部と呼ぶことにする。第2の構成部分は、圧縮機駆動用のガスエンジンを中心として、これに付随する機器を備えた部分であり、以後ガスエンジン部と呼ぶことにする。
【0019】
冷媒回路部内には、圧縮機31、室外熱交換器32、水熱交換器33、アキュムレータ34、レシーバ35、オイルセパレータ36、絞り機構37、四方弁38、電磁弁39及び逆止弁40などが具備されている。また、冷媒回路部は、分流コントロールユニット20に設けられた3本の冷媒配管2と接続するため、それぞれに第1操作弁41,第2操作弁42,第3操作弁43を設けた分流コントロールユニット接続用の3本の冷媒配管2を備えている。
圧縮機31は、後述するガスエンジンGEを駆動源として運転され、室内熱交換器11または室外熱交換器32のいずれかより吸入される低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。これにより冷房運転時には、外気温が高い場合でも、冷媒は室外熱交換器32を通して外気に放熱することが可能となる。また、暖房運転時には、室内熱交換器11を通して室内気に熱を与えることが可能となる。
【0020】
室外熱交換器32は、冷房運転時に高温高圧のガス冷媒を凝縮液化させて外気に放熱するコンデンサとして機能し、逆に暖房運転時には低温低圧の液冷媒を蒸発気化させて外気から熱を奪うエバポレータとして機能する。つまり、冷暖房それぞれの運転時において、室外熱交換器32は、先の室内熱交換器11とは逆の働きを行うことになる。
【0021】
この実施形態における室外熱交換器32は、熱交換部分を複数に分割して並列に接続した構成としてある。図示の例では、室外熱交換器32が4分割されており、それぞれに符号32A,32B,32C,32Dを付す。
また、室外熱交換器32は、後述するガスエンジGEのラジエータ53と隣接して設置されている。ラジエータ53は、ガスエンジンGEのエンジン冷却水を外気と熱交換して冷却する熱交換器である。従って、たとえば低外気温時に暖房運転を行うような場合には、室外機ファン44の回転方向を選択切換することにより、エバポレータとして機能する室外熱交換器32がラジエータ53を通過して温度上昇した外気と熱交換できるようになるため、その蒸発能力を高めることができる。
【0022】
水熱交換器33は、後述するガスエンジンGEのエンジン冷却水から冷媒が熱を回収するために設けられている。すなわち、暖房運転時において、冷媒は室外熱交換器32における熱交換のみに頼るのではなく、ガスエンジンGEのエンジン冷却水からも廃熱を回収することができるようになるため、暖房運転の効果をより高めることが可能となる。
【0023】
アキュムレータ34は、圧縮機31に流入するガス冷媒に含まれる液状成分を貯留するために設けられている。
レシーバ35は、コンデンサとして機能する熱交換器で液化した冷媒を気液分離し、冷凍サイクル中の余剰冷媒を液として蓄えるために設けられている。
オイルセパレータ36は、冷媒中に含まれる油分を分離して圧縮機31に戻すために設けられたものである。
【0024】
絞り機構37は、凝縮された高温高圧の液冷媒を減圧、膨張させて低温低圧の液冷媒とするためのものである。図示の例では、絞り機構37として、電子膨張弁、膨張弁及びキャピラリーチューブが目的に応じて使い分けられている。
【0025】
四方弁38は、冷媒配管2に設けられて冷媒の流路や流れ方向を選択切り換えするものであり、電磁弁39や逆止弁40と共に、複数に分割した室外熱交換器32への冷媒供給切換手段を構成している。
この四方弁38には4つのポートD,C,S,Eが設けられており、ポートDは圧縮機31の吐出側と、ポートCは室外熱交換器32と、ポートSは圧縮機31の吸入側とそれぞれ冷媒配管2で接続され、さらにポートEは、ポートCと室外熱交換器32とを接続する冷媒配管2の途中に接続されている。図示の構成例では、4分割した室外熱交換器32に対応して3個の四方弁38が3個設けられており、それぞれに符号38A,38B,38Cを付す。
【0026】
第1の四方弁38Aは、符号32Aを付した室外熱交換器(熱交換部)に接続されている。この室外熱交換器32Aは単独使用が可能であり、しかも、この冷媒配管には絞り機構37として電子膨張弁を備えているため、熱交換能力の可変制御が可能である。
第2の四方弁38Bは、符号32B,32Cを付した二つの室外熱交換器(熱交換部)に接続されている。この場合、室外熱交換器32B,32Cは、常に両方が同時使用され、しかもその用途は同じになる。
第3の四方弁38Cは、符号32Dを付した室外熱交換器(熱交換部)に接続されている。この室外熱交換器32Dは、単独での使用が可能である。
【0027】
従って、室外熱交換器32A〜Dを均等に分割すれば、その熱交換能力は、室外熱交換器32Aを単独で使用する25%能力、室外熱交換器32B,32Cを同時使用する50%能力、室外熱交換器32B〜Dの3分割を使用する75%能力、そして、室外熱交換器32A〜Dを全て使用する100%能力から、使用状況に応じて適宜選択することができる。
また、四方弁38A〜Dや電磁弁39を開閉切換操作することにより、冷媒の流れ方向についても切り換えることができるので、室外熱交換器32A及び32Dをそれぞれ単独で、そして、室外熱交換器32B,32Cを一体的に、エバポレータまたはコンデンサとして使い分けることができる。
【0028】
一方、ガスエンジン部には、ガスエンジンGEを中心として、冷却水系50や燃料吸入系60の他、図示省略の排気ガス系及びエンジンオイル系が具備されている。
ガスエンジンGEは、冷媒回路部内に設置されている圧縮機31とシャフトまたはベルト等により接続されており、ガスエンジンGEから圧縮機31に駆動力が伝達されるようになっている。
【0029】
冷却水系50は、水ポンプ51、リザーバタンク52、ラジエータ53などを備え、これらを配管により接続して構成される回路(破線で表示)を巡るエンジン冷却水によって、ガスエンジンGEを冷却するための系である。水ポンプ51は、ガスエンジンGEの冷却水を回路に循環させるために設けられている。リザーバタンク52は、この回路を流れる冷却水において、その余剰分を一時貯蔵しておく、あるいは冷却水が回路に不足した場合にそれを供給するためのものである。ラジエータ53は、室外熱交換器32と一体的に構成されたものであって、エンジン冷却水がガスエンジンGEから奪った熱を外気に放出するために設けられている。
図示の例では、室外熱交換器32と同様に、ラジエータ53も4分割されて並列に接続されており、それぞれに符号53A,53B,53C,53Dを付してある。また、電磁弁39を設けて、ラジエータ53A,53Dの単独使用、ラジエータ53B,53Cの同時使用を選択できるようにしてある。
【0030】
冷却水系50には、上記した構成の他に排気ガス熱交換器54が設けられている。これは、ガスエンジンGEより排出される排気ガスの熱を、エンジン冷却水に回収するために設けられているものである。また、冷却水系50には先に説明した水熱交換器33が備えられ、冷媒回路部及び冷却水系50の両系に跨るように配置されている。これらのことから、暖房運転時には、エンジン冷却水はガスエンジンGEから熱を奪うだけでなく排気ガスからも熱を回収し、かつその回収された熱が、エンジン冷却水より水熱交換器33を通して冷媒に与えられる仕組みになっている。
なお、冷却水系50におけるエンジン冷却水の流量制御は、2箇所に設けられた流量制御弁55により行われる。
【0031】
燃料吸入系60は、ガスレギュレータ61、ガス電磁弁62、ガス接続口63などを備え、ガスエンジンGEに液化天然ガス(LNG)等の都市ガスをガス燃料として供給するための系である。ガスレギュレータ61は、ガス電磁弁62及びガス接続口63を介して外部から供給されるガス燃料の送出圧力を調整するために設けられている。このガスレギュレータ61で圧力調整されたガス燃料は、図示省略の吸気口から吸入された空気と混合された後、ガスエンジンGEの燃焼室に供給される。
【0032】
以下では、上記の構成となるMGHP1において、室内を冷暖房するそれぞれの運転時について、その作用を説明する。
まず最初に、室内ユニット10A〜Dの全数を冷房運転する場合について、図1ないし3を参照して説明する。なお、各弁類の開閉状態は黒塗りで図示した弁類が閉であり、冷媒の流れ方向が矢印で示されている。
この場合、冷媒回路部30の四方弁38A〜Cは、いずれもポートD/C間が連通され、圧縮機31の吐出側と室外熱交換器32とが接続されている。この状態では、圧縮機31より吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁38を通ってコンデンサとして機能する室外熱交換器32に送られる。
【0033】
高温高圧のガス冷媒は室外熱交換器32で凝縮液化され、外気に放熱して高温高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、図3に示すように、逆止弁40を通過してレシーバ35に導かれる。レシーバ35で気液分離された液冷媒は、第3操作弁43を通って分流コントロールユニット20へ流れ込む。
分流コントロールユニット20に流れ込んだ高温高圧の液冷媒は、電磁弁24を経て電子膨張弁12に導かれ、同電子膨張弁12を通過する過程で減圧されて低温低圧の液冷媒となり、エバポレータとして機能する室内熱交換器11に送られる。
【0034】
室内熱交換器11に送られた低温低圧の液冷媒は、室内気から熱を奪って蒸発気化する。この過程で室内気を冷却して低温低圧のガス冷媒となり、再度分流コントロールユニット20に戻され、さらに、第1操作弁41を通って室外機ユニット30の冷媒回路部に送られる。
冷媒回路部に送られた低温低圧のガス冷媒はアキュムレータ34に流入し、液状成分が分離されたのち圧縮機31に吸入される。圧縮機31に吸入されたガス冷媒は、圧縮機31の作動により圧縮され、高温高圧のガス冷媒となって再び室外熱交換器32に送られるので、冷媒が状態変化を繰り返す冷凍サイクルを形成することができる。
【0035】
次に、室内ユニット10A〜Dの全数を暖房運転する場合について、図4ないし6を参照して説明する。
この場合、冷媒回路部の四方弁38A〜Cは、いずれもポートC/S間が連通され、圧縮機31の吐出側と室内熱交換器11とが接続されている。この状態では、圧縮機31より吐出された高温高圧のガス冷媒は、第2操作弁42を通って分流コントロールユニット20に送られる。分流コントロールユニット20内に導かれた冷媒は、電磁弁22を通って各室内ユニット10A〜Dのコンデンサとして機能する室内熱交換器11に送られる。
【0036】
高温高圧のガス冷媒は、室内熱交換器11で室内気と熱交換して凝縮液化される。この過程において、ガス冷媒は放熱して室内気を暖めたのち、高温高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、キャピラリーチューブ13を通ることで減圧されて低温低圧の液冷媒となり、逆止弁14を経て分流コントロールユニット20へ戻される。
分流コントロールユニット20に流れ込んだ低温低圧の液冷媒は、電磁弁24及び第3操作弁43を通って室外機ユニット30の冷媒回路部に送られる。
【0037】
冷媒回路部30に送られた液冷媒は、レシーバ35を経て気液分離がなされ、液冷媒のみがエバポレータとして機能する室外熱交換器32へ送られる。この液冷媒は、室外熱交換器32へ入る前に、絞り機構37として設けられているキャピラリーチューブを通過して再度減圧される。
室外熱交換器32においては、低温低圧の液冷媒は外気から熱を奪い、蒸発気化して低温低圧のガス冷媒となる。この時、ラジエータ53に高温のエンジン冷却水を流すと、エンジン廃熱を利用して液冷媒を効率よく蒸発気化させることができる。
【0038】
こうして低温低圧のガスとなった冷媒は、四方弁38のポートCからポートSを経てアキュムレータ34へ導かれ、液状成分が分離されたのち圧縮機31に吸入される。圧縮機31に吸入されたガス冷媒は、圧縮機31の作動により圧縮され、高温高圧のガス冷媒となって再び室内熱交換器11に送られるので、冷媒が状態変化を繰り返す冷凍サイクルを形成することができる。
【0039】
最後に、室内ユニット10A〜Dを冷暖房同時運転する場合について、図7ないし9を参照して説明する。なお、ここでの冷暖房同時運転は、暖房主体運転に冷房運転を混在させた場合、具体的には3セットの室内機ユニット10A〜Cを暖房運転とし、残る1セットの室内機ユニット10Dを冷房運転する場合を例にして説明する。
この場合、冷媒回路部の四方弁38A,Cは、いずれもポートC/S間が連通され、圧縮機31の吐出側と室内ユニット10A〜Cの室内熱交換器11とが接続されている。
【0040】
この状態では、圧縮機31より吐出された高温高圧のガス冷媒は、第2操作弁42を通って分流コントロールユニット20に送られる。分流コントロールユニット20内に導かれた冷媒は、室内機ユニット10A〜Cに対応するそれぞれの電磁弁22を通って、各室内ユニット10A〜Cにおいてコンデンサとして機能する室内熱交換器11A〜Cに送られる。
【0041】
高温高圧のガス冷媒は、室内熱交換器11A〜Cで室内気と熱交換して凝縮液化される。この過程において、ガス冷媒は放熱して室内気を暖めたのち、高温高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、キャピラリーチューブ13を通ることで減圧されて低温低圧の液冷媒となり、逆止弁14を経て分流コントロールユニット20へ戻される。
分流コントロールユニット20に流れ込んだ低温低圧の液冷媒は、電磁弁24及び第3操作弁43を通って室外機ユニット30の冷媒回路部に送られる。
【0042】
一方、冷房運転されている室内機ユニット10Dは、分流コントロールユニット20内において、対応する電磁弁21,24が開となる。このため、室内機ユニット10A〜Cから室外機ユニット30へ送られる低温低圧の液冷媒は、その一部が第3操作弁43の上流側で分流し、電磁弁24及び電子膨張弁12を通ってエバポレータとして機能する室内熱交換器11Dに送られる。
室内熱交換器11Dに送られた低温低圧の液冷媒は、室内気から熱を奪って蒸発気化し、室内気を冷却する。この過程で室内気を冷却して低温低圧のガス冷媒となり、分流コントロールユニット20に戻される。分流コントロールユニット20内では電磁弁21を通り、第1操作弁41から室外機ユニット30の冷媒回路部に送られる。
【0043】
室内機ユニット10Dへ分流させた残りの液冷媒は、第3操作弁43から冷媒回路部30に送られる。この液冷媒は、レシーバ35を経て気液分離がなされ、液冷媒のみがエバポレータとして機能する室外熱交換器32へ送られる。この液冷媒は、室外熱交換器32へ入る前に、絞り機構37として設けられているキャピラリーチューブを通過して再度減圧される。
【0044】
ところで、室外熱交換器32に要求される蒸発能力は、全数暖房運転時と比較して少なくてすむ。すなわち、4セット設けてある室内機ユニット10A〜Dのうち、3セットが暖房運転され、残る1セットが冷房運転されていることから、4分割された室外熱交換器32A〜Dの約50%と、冷房運転している室内熱交換器11Dとを合計した蒸発能力があればよい。このため、ここでは室外熱交換器32A及び32Dを使用し、残る50%の室外熱交換器32B,32Cは休止させている。
従って、低温低圧の液冷媒は、室外熱交換器32A,32Dを通過して流れる過程において外気から熱を奪い、蒸発気化して低温低圧のガス冷媒となる。この時、ラジエータ53に高温のエンジン冷却水を流すと、エンジン廃熱を利用して液冷媒を効率よく蒸発気化させることができる。
【0045】
こうして低温低圧のガスとなった冷媒は、四方弁38A,CのポートCからポートSを経てアキュムレータ34へ導かれる。また、室内熱交換器11Dで蒸発気化した低温低圧のガス冷媒は、第1操作弁41の後流側で四方弁38A,Cからアキュムレータ34へ導かれるガス冷媒と合流し、同様にしてアキュムレータ34へ導かれる。アキュムレータ34に導入された低温低圧のガス冷媒は、液状成分が分離されたのち圧縮機31に吸入される。圧縮機31に吸入されたガス冷媒は、圧縮機31の作動により圧縮され、高温高圧のガス冷媒となって再び室内熱交換器11に送られるので、冷媒が状態変化を繰り返す冷凍サイクルを形成することができる。
【0046】
このように、冷暖房同時運転を行う場合には、室内機ユニット10A〜Dの運転状況に応じて、4分割された室外熱交換器32A〜Dの運転形態を、コンデンサ、エバポレータまたは休止の中から、四方弁38及び電磁弁39の操作によりそれぞれ選択切り換えすることができる。
すなわち、4分割された室外熱交換器32A〜Dは、コンデンサとして使用する場合、その使用数に応じて、図10に実線で示すように、段階的に変化する凝縮能力の特性を有している。この特性では、要求能力がa%から25%までの間は凝縮能力も比例して増加している。これは、絞り機構37として調整機能を有する電子膨張弁が採用されている室外熱交換器32Aを単独で使用するためである。なお、凝縮能力の最低値は、電子膨張弁の調整範囲により定まる。
【0047】
要求能力が25%以上になると、室外熱交換器を2台同時使用することで50%の凝縮能力が得られるようにしてある。この場合、室外熱交換器32B,32Cを常に同時使用することで、選択切換に必要となる電磁弁39の数を減らしている。なお、この場合の絞り機構37には、低コスト化を狙って調整機能がない膨張弁を採用しているため、凝縮能力を比例制御することはできない。
要求能力が50%以上になると、室外熱交換器を3台使用して75%の凝縮能力が得られるようにしてある。この場合、上述した50%の凝縮能力が得られる室外熱交換器32B,32Cに加えて、室外熱交換器32Dを追加使用する。
そして、要求能力が75%以上になると、4分割した室外熱交換器32A〜Dを全数使用し、100%の凝縮能力が得られるようにしてある。
なお、上述した凝縮能力は、エバポレータとして使用する場合には蒸発能力と読み替えることができる。
【0048】
ところで、室外熱交換器32の分割数は4分割に限定されるものではなく、室内ユニット10の数や冷暖房同時運転の要求などに応じて適宜変更可能である。また、調整機能を有する電子膨張弁を絞り機構37の全てに採用すれば、ほぼ全域にわたって比例制御することができる。従って、絞り機構37についても、全てに調整機能を有する電子膨張弁を採用してもよいし、反対に全てに調整機能をもたない膨張弁を採用することも可能である。
【0049】
このように、全数冷房運転の場合には、冷房運転することでエバポレータとして機能する室外熱交換器11A〜Dの数と、コンデンサとして機能する室外熱交換器32A〜Dの数を一致させ、全数暖房運転の場合には、暖房運転することでコンデンサとして機能する室内熱交換器11A〜Dの数とエバポレータとして機能する室外熱交換器32A〜Dの数とを一致させればよい。
また、冷暖房同時運転の場合には、エバポレータとして機能する室内熱交換器11及び室外熱交換器32の蒸発能力と、コンデンサとして機能する室内熱交換器11及び室外熱交換器32の凝縮能力とがバランスするように、分割された室外熱交換器32の使用数や組合せなどを決めればよい。なお、たとえば室内熱交換器11が4セット設置され、冷房運転及び暖房運転が共に2セットと同数の場合には、室内熱交換器11どうしで能力がバランスするので、室外熱交換器32を全数休止させることも可能である。
【0050】
さて、上述した実施形態では、ラジエータ53を室外熱交換器32と同様の4分割としてある。このため、電磁弁39の開閉操作により、特に、室外熱交換器32をエバポレータとして使用する分割部に対応してエンジン冷却水を導入することが可能になり、ラジエータの分割数に応じてエンジン廃熱を段階的に有効利用することができる。
また、上述した室外熱交換器32の熱交換能力については、室外機ファン44の運転速度を制御することにより外気導入の風量が変化するので、使用する分割部の数を切り換える段階的な調整に加え、風量に応じた調整も可能である。
なお、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置によれば、室外熱交換器を複数に分割して並列に接続し、冷媒供給切換手段により各分割部毎の冷媒の流れを制御できるようにしたので、全数冷房運転、全数暖房運転及び冷暖房同時運転から適宜選択される室内機ユニットの運転状況に応じて大きく変動する蒸発能力または凝縮能力を、安価なシステムで容易に得ることができるといった顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置の一実施形態を示す図で、全数冷房運転時の状態を示す全体構成図である。
【図2】 図1における分流コントロールユニット及び室内機ユニットの内部構成を示す図である。
【図3】 図1における室外熱交換器周辺の構成例を示す図である。
【図4】 本発明に係るマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置の一実施形態を示す図で、全数暖房運転時の状態を示す全体構成図である。
【図5】 図4における分流コントロールユニット及び室内機ユニットの内部構成を示す図である。
【図6】 図4における室外熱交換器周辺の構成例を示す図である。
【図7】 本発明に係るマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置の一実施形態を示す図で、冷暖房同時運転時の状態を示す全体構成図である。
【図8】 図7における分流コントロールユニット及び室内機ユニットの内部構成を示す図である。
【図9】 図8における室外熱交換器周辺の構成例を示す図である。
【図10】 本発明の実施形態に示した室外熱交換器について、凝縮能力の特性を示す図である。
【図11】 マルチ型ガスヒートポンプ式空気調和機において、冷暖房同時運転を実施した場合の問題点を説明するために示したモリエル線図である。
【符号の説明】
1 マルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置(MGHP)
10 室内機ユニット
11 室内熱交換器
20 分流コントロールユニット
30 室外機ユニット
31 圧縮機
32 室外熱交換器
37 絞り機構
38 四方弁
39 電磁弁
40 逆止弁
41 第1操作弁
42 第2操作弁
43 第3操作弁
GE ガスエンジン
Claims (3)
- それぞれに室内熱交換器を備え室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う複数の室内機ユニットと、ガスエンジンで駆動する圧縮機及び外気と冷媒との間で熱交換を行う室外熱交換器を備えている室外機ユニットと、前記室内機ユニットのそれぞれについて冷媒の流れ方向を制御し冷暖房運転の選択切換を行う分流コントロールユニットとを具備してなるマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置であって、
前記室外熱交換器を複数に分割して並列に接続すると共に、
同室外熱交換器の各分割部分毎にそれぞれ設けられ、対応する該分割部分に接続される第1ポート、前記圧縮機の吐出側に接続される第2ポート、及び前記分流コントロールユニットに接続される第3ポートを有して冷媒の流れを制御する四方弁を備える冷媒供給切換手段を設けたことを特徴とするマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置。 - 前記室外熱交換器に隣接して前記ガスエンジンのラジエータを設置し、該ラジエータを複数に分割して並列に接続すると共に、同ラジエータの各分割部毎にエンジン冷却水の導入を選択する切換手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置。
- 前記室外熱交換器の室外機ファンで外気導入の風量制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチ型ガスヒートポンプ式空気調和装置。
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