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JP4655934B2 - パーフルオロエラストマーシール材 - Google Patents

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JP4655934B2 JP2005514082A JP2005514082A JP4655934B2 JP 4655934 B2 JP4655934 B2 JP 4655934B2 JP 2005514082 A JP2005514082 A JP 2005514082A JP 2005514082 A JP2005514082 A JP 2005514082A JP 4655934 B2 JP4655934 B2 JP 4655934B2
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Description

本発明は、特定条件下で測定したシール材の重量減少率が1重量%以下であるパーフルオロエラストマーシール材およびその製造方法に関する。
テトラフルオロエチレン(TFE)−パーフルオロビニルエーテル系のパーフルオロエラストマーは、その卓抜した耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性を示すことから、過酷な環境下で使用されるO−リング、ステムシール、シャフトシールなどのシール材として自動車工業、半導体工業、化学工業などの分野において広く用いられている。
これらのパーフルオロエラストマーシール材は、通常、パーフルオロエラストマーと架橋剤、充填剤、各種添加剤をロール等により混合した後、プレス加硫して製造される。さらにその後、性能を高めるための二次加硫を施すことが一般的である。しかしながら、加工時に受ける応力や二次加硫時における加熱により、高分子量体であるパーフルオロエラストマーの分子鎖が切断され、その結果、低分子量物や未架橋ポリマーが生じてしまう。この低分子量物や未架橋ポリマーを多く含むパーフルオロエラストマーからなるシール材は、使用時に、シール材が装着された部分の相手材に固着し、シール材の脱着を困難にしたり、動的な箇所においては、装置の動作に悪影響を及ぼす。さらには、ブリードアウトした低分子量物や未架橋ポリマーによる相手材の汚染や腐食または変色を起こすなどの問題がある。該低分子量物および未架橋ポリマーは、重合時のみではなく、加工段階においても発生するため、重合法の改良により低分子量物等を低減することでは改善することができず、加工後に低分子量物等を除去する必要性がある。
フッ素ゴム製シール材からのアウトガスを低減し、そのシール材が装着された真空チャンバーの汚染を防ぐ方法として、架橋されたフッ素ゴムを水などの溶剤に接触させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、該公報に記載されている溶剤では、パーフルオロエラストマーは充分に膨潤しないため、加工時等に生じた低分子量物を成形品内部から充分に除去することはできない。その結果、シール材の固着および汚染を防止することはできない。
また、真空性能改良のために複合構造O−リングのゴム製芯材の処理として、超臨界抽出処理によるアウトガス除去法が開示されている(例えば、特許文献2または特許文献3参照)。しかし、これらの方法は、直接ベースとなるゴム基材の固着性を改良するものではない。
したがって、固着強度の増大やシール材の接触部の汚染、腐食および変色の原因となる低分子量物等の除去方法、および低分子量物等の除去されたパーフルオロエラストマーシール材はいまだ存在しないのが現状である。
特開平6−107803号公報 特開平10−38089号公報 特開2000−55204号公報
本発明は、相手材との固着強度、接触面の汚染、腐食および変色が改善された、特定条件下で測定したシール材の重量減少率が1重量%以下であるパーフルオロエラストマーシール材およびその製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬し、取り出し後、90℃で5時間、125℃で5時間および200℃で10時間乾燥させたときのシール材の重量減少率が、1重量%以下であるパーフルオロエラストマーシール材に関する。
前記重量減少率が、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
300℃で70時間の熱処理を施した後、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬したときの膨潤率が300%以下であることが好ましい。
また、本発明は、パーフルオロエラストマー成形品を、60℃で70時間浸漬したときの前記成形品に対する膨潤率が50%以上である溶剤を用い、該溶剤に浸漬する方法、該溶剤蒸気に暴露する方法、該溶剤を噴霧する方法、該溶剤によるソックスレー抽出をする方法、または超臨界抽出による方法に従って処理する工程を含むパーフルオロエラストマーシール材の製造方法に関する。
本発明は、固着強度ならびにシール材との接触面の汚染、腐食および変色が改善された、特定条件下で測定したシール材の重量減少率が1重量%以下であるパーフルオロエラストマーシール材を提供する。さらに、本発明は、パーフルオロエラストマー成形品を、60℃で70時間浸漬した時の膨潤率が50%以上である溶剤で処理する工程を含む製造方法であって、未架橋ポリマーおよび低分子量物を大幅に除去できるパーフルオロエラストマーシール材の製造方法を提供する。
固着強度の測定のための試験片の処理方法の説明図である。 固着強度の測定方法の説明図である。
本発明のパーフルオロエラストマーシール材は、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに、60℃で70時間浸漬し、取り出し後、90℃で5時間、125℃で5時間および200℃で10時間乾燥させたときのシール材の重量減少率が、1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下であり、より好ましくは0.4重量%以下であり、さらに好ましくは0.3重量%以下であり、とくに好ましくは0.1重量%以下である。重量減少率が、1重量%より多いと、相手材と強固に固着し、場合によっては相手材を汚染、腐食させる傾向がある。シール材の重量減少は、パーフルオロエラストマーシール材中に存在する未架橋ポリマーおよび低分子量物が、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに溶出することに起因するものである。ここで、未架橋ポリマーとは、シール材成形時に架橋されなかったポリマー、または架橋が切断されたポリマーなどである。低分子量物とは、重合時から残存する物、シール材成形時に充分に架橋されなかったもの、シール材として成形する際の加工時に受ける応力や、二次加硫時における加熱により、高分子量エラストマーの分子鎖が切断されてできる物などである。低分子量物とは、数平均分子量が10000以下のものをいう。
シール材の重量減少率の測定は、
(1)未処理のパーフルオロエラストマーシール材の重量を測定し(Ag)、
(2)シール材をパーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬し、
取り出し後、90℃で5時間、125℃で5時間および200℃で10時間乾燥し
(3)乾燥後のシール材の重量を測定する(Bg)
ことにより行われる。シール材の重量減少率は、(A−B)/A×100(重量%)により計算される。
また、重量減少率測定用の抽出溶剤として、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンを使用するのは、あらゆるパーフルオロエラストマーを充分に膨潤させることができるためである。
本発明で好適に使用され得るパーフルオロエラストマーとしては、シール材用、とくに半導体製造装置のシール材用に用いられているものであればとくに制限はない。ここで、パーフルオロエラストマーとは、構成単位の90モル%以上がパーフルオロオレフィンから構成されているエラストマーをいう。
パーフルオロエラストマーとしては、パーフルオロゴム(a)、熱可塑性パーフルオロゴム(b)、およびこれらのパーフルオロゴムからなるゴム組成物などがあげられる。
パーフルオロゴム(a)としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/架橋部位を与える単量体からなるものなどがあげられる。その組成は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、50〜90/10〜50(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、50〜80/20〜50(モル%)であり、さらに好ましくは、55〜70/30〜45(モル%)である。また、架橋部位を与える単量体は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の合計量に対して、0〜5モル%であることが好ましく、0〜2モル%であることがより好ましい。これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
この場合のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、たとえばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、
一般式(1):
CX1 2=CX1−Rf 1CHR12 (1)
(式中、X1は、水素原子、フッ素原子または−CH3、R1は、水素原子または−CH3、X2は、ヨウ素原子または臭素原子、Rf 1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基であり、エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、
一般式(2):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m−(CF2n−X3 (2)
(式中、mは、0〜5の整数、nは、1〜3の整数、X3は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、または臭素原子)で表されるような単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。このヨウ素原子、臭素原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が架橋点として機能することができる。
パーフルオロゴム(a)は、常法により製造することができる。
パーフルオロゴム(a)の具体例としては、国際公開97/24381パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報などに記載されているパーフルオロゴムなどがあげられる。
熱可塑性パーフルオロゴム(b)としては、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントおよび非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのそれぞれの構成単位の90モル%以上がパーフルオロオレフィンである含フッ素多元セグメント化ポリマーがあげられる。
まず、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントについて説明する。エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントは重合体に柔軟性を付与し、ガラス転移点が25℃以下、好ましくは0℃以下である。その構成単位の90モル%以上を構成するパーフルオロオレフィンとしては、たとえばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、
一般式(3):
CF2=CFO(CF2CFX4O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf 2 (3)
(式中、X4は、フッ素原子または−CF3、Rf 2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、pは、0〜5の整数、qは、0〜5の整数)で表されるフルオロビニルエーテルなどがあげられる。
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを構成するパーフルオロオレフィン以外の構成単位としては、たとえばビニリデンフルオライド、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体などであればよい。
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの好ましい例としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/架橋部位を与える単量体からなるポリマー鎖があげられる。その組成は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、50〜85/50〜15(モル%)であり、架橋部位を与える単量体が、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の合計量に対して、0〜5モル%であることが好ましい。
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(1)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(2)で表されるような単量体などがあげられる。
このヨウ素原子、臭素原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が架橋点として機能することができる。
つぎに、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントについて説明する。非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上を構成するパーフルオロオレフィンとしては、たとえばテトラフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、
一般式(4):
CF2=CF(CF2p5 (4)
(式中、pは、1〜10の整数、X5は、フッ素原子)で表される化合物、パーフルオロ−2−ブテンなどがあげられる。
非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを構成するパーフルオロオレフィン以外の構成単位としては、たとえばビニリデンフルオライド、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体などであればよい。
非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの好ましい例としては、テトラフルオロエチレン85〜100モル%および
一般式(5):
CF2=CF−Rf 3 (5)
(式中、Rf 3は、Rf 4または−ORf 4であり、Rf 4は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表される化合物0〜15モル%からなる非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントがあげられる。
また、得られる熱可塑性フッ素ゴム(含フッ素多元セグメント化ポリマー)の耐熱性という点から、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は、150℃以上であることが好ましく、200〜360℃であることがより好ましい。
つまり、含フッ素多元セグメント化ポリマーは、1分子中にエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントがブロックやグラフトの形態で結合した含フッ素多元セグメント化ポリマーであることが重要である。
そこで、含フッ素多元セグメント化ポリマーの製造方法としては、エラストマー性セグメントと非エラストマー性セグメントとをブロックやグラフトなどの形態でつなぎ、含フッ素多元セグメント化ポリマーとするべく、公知の種々の方法が採用できるが、なかでも特公昭58−4728号公報などに示されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法や、特開昭62−34324号公報に示されたグラフト型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法などが好ましく採用できる。
とりわけ、セグメント化率(ブロック化率)も高く、均質で規則的なセグメント化ポリマーが得られることから、特公昭58−4728号公報、高分子論文集(Vol.49、No.10、1992)記載のいわゆるヨウ素移動重合法で合成されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーが好ましい。
エラストマー性セグメントは、フッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法で製造できる(特公昭58−4728号公報、特開昭62−12734号公報)。たとえば実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記パーフルオロオレフィンと、要すれば架橋部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下乳化重合を行なう方法があげられる。使用するジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカンおよび1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタンである。これらの化合物は単独で使用してもよく、相互に組み合せて使用することもできる。なかでも、1,4−ジヨードパーフルオロブタンが好ましい。ジヨウ素化合物の量は、エラストマー性セグメント全重量に対して0.01〜1重量%であることが好ましい。
このようにして得られるエラストマー性セグメントの末端部分は、非エラストマー性セグメントのブロック共重合の開始点となるヨウ素原子を有している。
本発明におけるエラストマー性セグメントの製造で使用するラジカル重合開始剤は、従来からフッ素系エラストマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。
こうして得られるエラストマー性セグメントの数平均分子量は、得られる含フッ素多元セグメント化ポリマー全体へ柔軟性の付与、弾性の付与、機械的物性の付与の点から、5,000〜750,000であることが好ましく、20,000〜400,000であることがより好ましい。
ついで、非エラストマー性セグメントのブロック共重合は、エラストマー性セグメントの乳化重合に引き続き、単量体を非エラストマー性セグメント用に変えることにより行なうことができる。
非エラストマー性セグメントの数平均分子量は、1,000〜1,200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜600,000であり、広い幅で調整することができる。
こうして得られる熱可塑性パーフルオロゴム(b)は、エラストマー性セグメントの両側に非エラストマー性セグメントが結合したポリマー分子、エラストマー性セグメントの片側に非エラストマー性セグメントが結合したポリマー分子を主体とするものであり、非エラストマー性セグメントが結合していないエラストマー性セグメントのみのポリマー分子は、含フッ素多元セグメント化ポリマー中のセグメントとポリマー分子との合計量に対して20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下である。
本発明においては、前述のようなパーフルオロゴム(a)と熱可塑性パーフルオロゴム(b)とからなる組成物を用いることもできる。
パーフルオロゴム(a)と熱可塑性パーフルオロゴム(b)とからなるフッ素ゴム組成物としては、前記のようにして得られるパーフルオロゴム(a)と熱可塑性パーフルオロゴム(b)とを、ディスパージョン状態での混合またはオープンロールなどによるドライブレンドにて任意の割合で混合して得ることができる。
本発明のパーフルオロエラストマーシール材は、このようなパーフルオロエラストマー、架橋剤および架橋助剤からなる組成物を用いて成形する。
架橋剤としては、採用する架橋系によって適宜選定すればよい。架橋系としてはポリアミン架橋系、ポリオール架橋系、パーオキサイド架橋系、イミダゾール架橋系のいずれも採用できる。また、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系なども採用できる。これら架橋剤のなかでも、シール材の耐熱性および固着強度に優れ、しかもシール材との接触面の汚染および変色が改善される点から、イミダゾール架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系のものが好ましく、イミダゾール架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系のものがより好ましい。
架橋剤としては、ポリオール架橋系ではたとえば、ビスフェノールAF、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ジアミノビスフェノールAFなどのポリヒドロキシ化合物が、パーオキサイド架橋系ではたとえばα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が、ポリアミン架橋系ではたとえばヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンなどのポリアミン化合物があげられる。
トリアジン架橋に用いる架橋剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどの有機スズ化合物があげられる。
オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用する架橋剤としては、たとえば一般式(6):
Figure 0004655934
(式中、R2は−SO2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基または単結合手であり、R3およびR4は一方が−NH2であり他方が−NHR5、−NH2、−OHまたは−SHであり、R5は水素原子、フッ素原子または一価の有機基であり、好ましくはR3が−NH2でありR4が−NHR5である)で示されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(7):
Figure 0004655934
で示されるビスアミドラゾン系架橋剤、一般式(8)または(9):
Figure 0004655934
(式中、Rf 5は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)、
Figure 0004655934
(式中、nは1〜10の整数)
で示されるビスアミドキシム系架橋剤などがあげられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは、従来シアノ基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基およびアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
とくに好ましい架橋剤としては、複数個の3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、または3−アミノ−4−メルカプトフェニル基を有する化合物、もしくは一般式(10):
Figure 0004655934
(式中、R2、R3、R4は前記と同じ)で示される化合物があげられ、具体的には、たとえば2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)メタン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどである。
架橋剤の配合量はエラストマー100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤が、0.01重量部より少ないと、架橋度が不足するため、含フッ素成形品の性能が損なわれる傾向があり、10重量部をこえると、架橋密度が高くなりすぎるため架橋時間が長くなることに加え、経済的にも好ましくない傾向がある。
ポリオール架橋系の架橋助剤としては、各種の4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、環状アミン、1官能性アミン化合物など、通常エラストマーの架橋に使用される有機塩基が使用できる。具体例としては、たとえばテトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩;ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどの4級ホスホニウム塩;ベンジルメチルアミン、ベンジルエタノールアミンなどの一官能性アミン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデク−7−エンなどの環状アミンなどがあげられる。
パーオキサイド架橋系の架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリス(ジアリルアミン−s−トリアジン)、トリアリルホスファイト、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルテトラフタラミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
架橋助剤の配合量はエラストマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0重量部である。架橋助剤が、0.01重量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10重量部をこえると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、成形品の圧縮永久歪も低下する傾向がある。
さらに通常の添加剤である充填材(カーボンブラックのような無機充填材、ポリイミド樹脂粉末等の有機フィラー)、加工助剤、顔料、酸化マグネシウムのような金属酸化物、水酸化カルシウムのような金属水酸化物などを本発明の目的を損なわない限り使用してもよい。
また本発明のパーフルオロエラストマーシール材は、300℃で70時間の熱処理を施した後、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬したときの膨潤率が300%以下であるものが、耐熱性および固着強度に優れ、しかもシール材との接触面の汚染および変色が改善される点から好ましい。なお、該膨潤率は275%以下のものがより好ましく、250%以下のものがさらに好ましい。具体的な処理条件は下記のとおりである。
(1)300℃で70時間の熱処理を空気中で行った後、
(2)パーフルオロエラストマーシール材の体積を水中置換法により測定し(C1)、
(3)シール材を対象溶剤(パーフルオロトリ−n−ブチルアミン)に60℃で70時間浸漬し、
(4)取り出し後、膨潤状態でのシール材の体積を測定する(D1)
ことにより行った。シール材の膨潤率は、(D1−C1)/C1×100(%)により計算した。なお、上記(1)〜(4)の操作中にて、シール材が溶解するなどによりシール材の膨潤率を測定できないものは、膨潤率が300%以下に含まれない。
本発明のパーフルオロエラストマーシール材の製造方法は、パーフルオロエラストマー成形品を、特定の溶剤(例えば、60℃、70時間浸漬した時の膨潤率が50%以上である溶剤)で処理する工程を含む。
パーフルオロエラストマーの成形方法としては、一般的な成形方法であれば特に限定されないが、たとえば、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、射出成形など、従来公知の方法が採用できる。
処理に使用する溶剤としては、60℃、70時間浸漬した時の膨潤率が50%以上である単一もしくは2種類以上の混合溶剤であればよく、80%以上であることがより好ましい。膨潤率が、50%未満であると、低分子量物および未架橋ポリマーの抽出に多大な時間を要する傾向がある。
また、処理に使用する溶剤としては、上記作用効果をより享受できる点から、40℃(溶剤の沸点が40℃に満たない場合は沸点温度)、70時間浸漬した時の膨潤率が50%以上である単一もしくは2種類以上の混合溶剤であることが好ましく、膨潤率が80%以上であることがより好ましい。
前記溶剤としては、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されたパーハロ系溶剤が好ましく、特に水素原子の全てがフッ素原子で置換されたパーフルオロ系溶剤が好ましい。パーフルオロ系溶剤の具体例としては、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン、パーフルオロトリエチルアミンなどのパーフルオロ3級アミン、パーフルオロ置換テトラヒドロフラン、パーフルオロベンゼン、フロリナートFC−77(住友スリーエム株式会社製)、デムナムソルベント(ダイキン工業株式会社製、主成分:C614)、R−318(ダイキン工業株式会社製、主成分:C48Cl2)、フロリナートFC−43(住友スリーエム株式会社製、主成分:(C493N)などがあげられるが、これらの中でも、取り扱い性の点から、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン、フロリナートFC−77が好ましい。
また前記溶媒としては、先述の条件を満たすものであれば如何なるものでもよいが、例えば上記例示のものの他に各種フッ素系溶媒が好ましく用いられ、具体例としては、パーフルオロアルカン、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)などがあげられ、具体的には、HFE−7100(住友スリーエム株式会社製、主成分:C49OCH3)、HFE−7200(住友スリーエム株式会社製、主成分:C49OC25)、バートレルXF(デュポン株式会社製、主成分:C5210)などをあげることができる。
処理方法としては、溶剤に浸漬する方法、溶剤蒸気に暴露する方法、溶剤を噴霧する方法、ソックスレー抽出またはそれに類似する方法、超臨界抽出による方法などがあげられる。超臨界抽出法では上記溶剤をエントレーナーとして用いることで、たとえば炭酸ガスを抽出媒体とした場合でも低分子量物および未架橋ポリマーを効率よく抽出することができる。
パーフルオロエラストマーシール材を前記溶剤に浸漬する場合の浸漬条件は、使用される溶剤の種類、およびパーフルオロエラストマーの組成などにより、適宜決めればよいが、好ましい条件としては、室温〜250℃(より好ましくは室温〜200℃)で、1〜100時間浸漬することが好ましく、室温〜100℃、48〜70時間浸漬することがより好ましい。さらに、高圧下で処理することが好ましい。
また、浸漬または噴霧等ののちに乾燥させるが、そのときの乾燥条件としては、250℃以下で、5時間以上乾燥させることが好ましく、200℃で、10時間以上乾燥させることがより好ましい。乾燥方法としては、オーブンによる乾燥、真空乾燥など一般的に使用できる方法を用いることができる。
前記溶剤で処理することで、パーフルオロエラストマーが膨潤し、膨潤することにより発生した隙間より、低分子量物および未架橋ポリマーが溶剤に溶け出すと考えられる。
本発明の製造方法で得られたパーフルオロエラストマーシール材は、低分子量物等の含有量が少ないため、固着強度が小さく、シール材と接触する相手材の汚染、腐食および変色も起こらない。
本発明のパーフルオロエラストマーシール材は、以下に示す分野で好適に用いることができる。
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野では、O(角)リング、パッキン、シール材、チューブ、ロール、コーティング、ライニング、ガスケット、ダイアフラム、ホース等があげられ、これらはCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、熱処理成膜装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置、薬液配管、ガス配管に用いることができる。具体的には、ゲートバルブのO−リング、シール材として、クォーツウィンドウのO−リング、シール材として、チャンバーのO−リング、シール材として、ゲートのO−リング、シール材として、ベルジャーのO−リング、シール材として、カップリングのO−リング、シール材として、ポンプのO−リング、シール材、ダイアフラムとして、半導体用ガス制御装置のO−リング、シール材として、レジスト現像液、剥離液用のO−リング、シール材として、ウェハー洗浄液用のホース、チューブとして、ウェハー搬送用のロールとして、レジスト現像液槽、剥離液槽のライニング、コーティングとして、ウェハー洗浄液槽のライニング、コーティングとしてまたはウェットエッチング槽のライニング、コーティングとして用いることができる。さらに、封止材・シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、絶縁、防振、防水、防湿を目的とした電子部品、回路基盤のポッティング、コーティング、接着シール、磁気記憶装置用ガスケット、エポキシ等の封止材料の変性材、クリーンルーム・クリーン設備用シーラント等として用いられる。
自動車分野では、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材およびホースはエンジンならびに周辺装置に用いることができ、ホースおよびシール材はAT装置に用いることができ、O(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材およびダイアフラムは燃料系統ならびに周辺装置に用いることができる。具体的には、エンジンヘッドガスケット、メタルガスケット、オイルパンガスケット、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、オイルホース、酸素センサー用シール、ATFホース、インジェクターO−リング、インジェクターパッキン、燃料ポンプO−リング、ダイアフラム、燃料ホース、クランクシャフトシール、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達のO−リング、オイルシール、排ガス再燃焼装置のシール、ベアリングシール、EGRチューブ、ツインキャブチューブ、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部等)、再燃焼装置用ホース、酸素センサーブッシュ等として用いることができる。
航空機分野、ロケット分野および船舶分野では、ダイアフラム、O(角)リング、バルブ、チューブ、パッキン、ホース、シール材等があげられ、これらは燃料系統に用いることができる。具体的には、航空機分野では、ジェットエンジンバルブステルシール、燃料供給用ホース、ガスケットおよびO−リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール等に用いられ、船舶分野では、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライ弁の軸シール等に用いられる。
プラント等の化学品分野では、ライニング、バルブ、パッキン、ロール、ホース、ダイアフラム、O(角)リング、チューブ、シール材、耐薬品用コーティング等があげられ、これらは医薬、農薬、塗料、樹脂等化学品製造工程に用いることができる。具体的には、化学薬品用ポンプ、流動計、配管のシール、熱交換器のシール、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキング、農薬散布機、農薬移送ポンプのシール、ガス配管のシール、メッキ液用シール、高温真空乾燥機のパッキン、製紙用ベルトのコロシール、燃料電池のシール、風洞のジョイントシール、耐トリクレン用ロール(繊維染色用)、耐酸ホース(濃硫酸用)、ガスクロマトグラフィー、pHメーターのチューブ結合部のパッキン、塩素ガス移送ホース、ベンゼン、トルエン貯槽の雨水ドレンホース、分析機器、理化学機器のシール、チューブ、ダイアフラム、弁部品等として用いることができる。
医薬品等の薬品分野では、薬栓等として用いることができる。
現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野および塗装設備等の塗装分野では、ロール等があげられ、それぞれフィルム現像機・X線フィルム現像機、印刷ロールおよび塗装ロールに用いることができる。具体的には、フィルム現像機・X線フィルム現像機の現像ロールとして、印刷ロールのグラビアロール、ガイドロールとして、塗装ロールの磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、各種コーティングロール等として用いることができる。さらに、乾式複写機のシール、印刷設備の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、塗布、塗装設備の塗布ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト、乾式複写機のベルト、ロール、印刷機のロール、ベルト等として用いることができる。
またチューブを分析・理化学機分野に用いることができる。
食品プラント機器分野では、ライニング、バルブ、パッキン、ロール、ホース、ダイアフラム、O(角)リング、チューブ、シール材、ベルト等があげられ、食品製造工程に用いることができる。具体的には、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール等として用いることができる。
原子力プラント機器分野では、パッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイアフラム、バルブ、ロール、チューブ等があげられる。
鉄板加工設備等の鉄鋼分野では、ロール等があげられ、鉄板加工ロール等に用いることができる。
一般工業分野では、パッキング、O−リング、ホース、シール材、ダイアフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウェザーストリップ、PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト等があげられる。具体的には、油圧、潤滑機械のシール、ベアリングシール、ドライクリーニング機器の窓、その他のシール、六フッ化ウランの濃縮装置のシール、サイクロトロンのシール(真空)バルブ、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガス、塩素ガス分析用ポンプのダイアフラム(公害測定器)、印刷機のロール、ベルト、酸洗い用絞りロール等に用いられる。
電気分野では、具体的には、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、油井ケーブルのジャケット等として用いられる。
燃料電池分野では、具体的には、電極、セパレーター間のシール材や水素・酸素・生成水配管のシール等として用いられる。
電子部品分野では、具体的には、放熱材原料、電磁波シールド材原料、エポキシ等のプリント配線板プリプレグ樹脂の変性材、電球等の飛散防止材、コンピューターのハードディスクドライブのガスケット等に用いられる。
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
製造例1
着火源をもたない内容積3リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水1リットルおよび乳化剤として
Figure 0004655934
10g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩0.09gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=25/75モル比)を、内圧が0.78MPa・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の527mg/mlの濃度の水溶液10mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
重合の進行により内圧が、0.69MPa・Gまで降下した時点で、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)3gを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が0.78MPa・Gになるように、TFEを4.7gおよびPMVE5.3gをそれぞれ自圧にて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、0.69〜0.78MPa・Gのあいだで、昇圧、降圧を繰り返すと共に、TFEとPMVEの合計量が70g、130g、190gおよび250gとなった時点でそれぞれCNVE3gを窒素圧で圧入した。
重合反応の開始から19時間後、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、300gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度21.2重量%の水性分散体1330gを得た。
この水性分散体のうち1196gを水3588gで希釈し、3.5重量%塩酸水溶液2800g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後5分間撹拌した後、凝析物をろ別し、得られたポリマーをさらに2kgのHCFC−141b中にあけ、5分間撹拌し、再びろ別した。この後このHCFC−141bによる洗浄、ろ別の操作をさらに4回繰り返したのち、60℃で72時間真空乾燥させ、240gのポリマーを得た。
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE/CNVE=56.6/42.3/1.1モル%であった。赤外分光分析により測定したところ、カルボキシル基の特性吸収が1774.9cm-1、1808.6cm-1付近に、OH基の特性吸収が、3557.5cm-1および3095.2cm-1付近に認められた。
製造例2
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水2リットルおよび乳化剤としてC715COONH420g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩0.18gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、80℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=29/71モル比)を、内圧が12.0kgf/cm2・Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の186mg/mlの濃度の水溶液2mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
重合の進行により内圧が、11.0kgf/cm2・Gまで降下した時点で、I(CF24I 4gを圧入した。ついでTFE22.0gおよびPMVE20.0gをそれぞれ自圧にて圧入し、昇圧、降圧を繰り返した。TFEおよびPMVEの合計仕込量が430g、511g、596gおよび697gに達した時点でICH2CF2CF2OCF=CF2を各1.5g圧入した。また反応開始後12時間毎に20mg/mlのAPS水溶液2mlを窒素ガスで圧入した。
重合反応の開始から45時間後、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、860gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度30.0重量%の水性分散体を得た。
この水性分散体をビーカーに入れ、ドライアイス/メタノール中で凍結させ凝析を行い、解凍後、凝析物を水洗、真空乾燥してゴム状重合体850gを得た。この重合体のムーニー粘度ML1+10(100℃)は55であった。
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE=64.0/36.0(モル%)であり、元素分析から得られたヨウ素含有量は0.34重量%であった。
実施例1
製造例1で得られた末端にカルボキシル基を有するシアノ基含有含フッ素エラストマーとジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンスのポリマー・ケミストリー編、Vol.20、2381〜2393頁(1982)に記載の方法で合成した架橋剤である2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(AFTA−Ph)と充填材であるカーボンブラック(Cancarb社製 Thermax N−990)とを重量比100/2.83/20で混合し、オープンロールにて混練して架橋可能なフッ素ゴム組成物を調製した。
このフッ素ゴム組成物を180℃で30分間プレスして架橋を行なったのち、さらにオーブン中で290℃で18時間、オーブン架橋を施し、厚さ2mm、20mm×15mmの成形物を作製した。
得られた成形品を、フロリナートFC−77(登録商標、住友スリーエム株式会社製、主成分:C816Oに、60℃で、70時間浸漬した後(このときの膨潤率は、170%であった)、90℃で5時間、125℃で5時間および200℃で10時間乾燥させ、被験サンプルを作製した。被験サンプルの重量減少率は、0.1重量%以下であった。
この被験サンプルの固着強度の測定結果、および変色度の評価を以下の方法により、行った。その結果を表1に示す。
<重量減少率の測定>
(1)未処理のパーフルオロエラストマーシール材の重量を測定し(Ag)、
(2)シール材をパーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬し、取り出し後、該成形品を90℃に設定したオーブンで5時間かけて乾燥させた後、オーブンの設定温度を125℃にして5時間乾燥させ、さらに設定温度を200℃にして10時間乾燥し、
(3)乾燥後のシール材の重量を測定する(Bg)ことにより行った。シール材の重量減少率は、(A−B)/A×100(重量%)により計算した。
<シール材の膨潤率>
(1)未処理のパーフルオロエラストマーシール材の体積を水中置換法により測定し(C)、
(2)シール材を対象溶剤に60℃で70時間浸漬し、
(3)取り出し後、膨潤状態でのシール材の体積を測定する(D)
ことにより行った。シール材の膨潤率は、(D−C)/C×100(%)により計算した。
<固着強度>
図1に示すように、2枚のSUS316板1の間に、被験サンプル2(20mm×15mm×2mm)を置き、250℃、荷重3:700g/cm2下で20時間放置した。その後、荷重3を加えた状態のまま、室温まで放冷した後、図2に示すように、SUS316板1をせん断方向4に引っ張り、固着強度(180度、せん断剥離)を測定した。
<SUS316板変色度>
固着強度測定後、SUS板から、被検サンプルをはがし、SUS板の状態を目視により観察し、以下の基準により評価した。
SUS板は変色していない‥‥‥○
SUS板は変色した‥‥‥×
<熱処理後の膨潤率>
(1)300℃で70時間の熱処理を空気中で行った後、
(2)パーフルオロエラストマーシール材の体積を水中置換法により測定し(C1)、
(3)シール材を対象溶剤(パーフルオロトリ−n−ブチルアミン)に60℃で70時間浸漬し、
(4)取り出し後、膨潤状態でのシール材の体積を測定する(D1)
ことにより行った。シール材の膨潤率は、(D1−C1)/C1×100(%)により計算した。
実施例2
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、デムナムソルベント(ダイキン工業株式会社製、主成分:C614)に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、158%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例3
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、HFE−7100(住友スリーエム株式会社製、主成分:C49OCH3)に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、114%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例4
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、HFE−7200(住友スリーエム株式会社製、主成分:C49OC25)に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、95%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例5
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、バートレルXF(デュポン株式会社製、主成分:C5210)に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、99%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例6
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、R−318(ダイキン工業株式会社製、主成分:C48Cl2)に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、181%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例7
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、フロリナートFC−43(住友スリーエム株式会社製、主成分:(C493N)に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、142%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例8
製造例2で得られたヨウ素含有含フッ素エラストマーと架橋剤であるトリアリルイソシアヌレート(TAIC:日本化成株式会社製)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B:日本油脂株式会社)と充填材であるカーボンブラック(Cancarb社製 Thermax N−990)とを重量比100/2/1/20で混合し、オープンロールにて混練して架橋可能なフッ素ゴム組成物を調製した。
このフッ素ゴム組成物を160℃で10分間プレスして架橋を行なったのち、さらにオーブン中で180℃で4時間、オーブン架橋を施し、厚さ2mm、20mm×15mmの成形物を作製した。
得られた成形品を、フロリナートFC−77(登録商標、住友スリーエム株式会社製、主成分:C816Oに、60℃で、70時間浸漬した後(このときの膨潤率は、100%であった)、90℃で5時間、125℃で5時間および200℃で10時間乾燥させ、被験サンプルを作製した。被験サンプルの重量減少率は、0.1重量%以下であった。結果を表1に示す。
実施例9
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、フロリナートFC−77(住友スリーエム株式会社製、主成分:(C493N)に60℃で24時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、170%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
実施例10
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、フロリナートFC−77(住友スリーエム株式会社製、主成分:(C493N)に180℃で24時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、175%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
また、フロリナートFC−77の沸点は100℃であるので、圧力容器中にて浸漬を行った。この時の圧力は約0.14MPaであった。
比較例1
60℃、70時間浸漬した時の膨潤率が50%以上である溶剤で処理する工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に行った。被験サンプルの重量減少率は、1.3重量%であった。
この被験サンプルの固着強度の測定結果、および変色度の評価を行った結果を表1に示す。
比較例2
得られた成形品を、フロリナートFC−77に60℃で、70時間浸漬することにかえて、ゼオローラH(日本ゼオン株式会社製、主成分:C537に40℃で70時間浸漬したこと(このときの膨潤率は、8%であった)以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
なお、実施例1~10、比較例2で得られた成形品を、実施例1~10、比較例2で用いた溶剤に40℃で70時間、60℃で70時間、60℃で24時間、または180℃で24時間浸漬した時の膨潤率については、表2に示す。
Figure 0004655934
Figure 0004655934

Claims (5)

  1. パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬し、取り出し後、90℃で5時間、125℃で5時間および200℃で10時間乾燥させたときのシール材の重量減少率が、1重量%以下であるパーフルオロエラストマーシール材。
  2. 前記重量減少率が、0.5重量%以下である請求項1記載のパーフルオロエラストマーシール材。
  3. 前記重量減少率が、0.1重量%以下である請求項1記載のパーフルオロエラストマーシール材。
  4. 300℃で70時間の熱処理を施した後、パーフルオロトリ−n−ブチルアミンに60℃で70時間浸漬したときの膨潤率が300%以下である請求項1、2または3記載のパーフルオロエラストマーシール材。
  5. パーフルオロエラストマー成形品を、60℃で70時間浸漬したときの前記成形品に対する膨潤率が50%以上である溶剤を用い、該溶剤に浸漬する方法、該溶剤蒸気に暴露する方法、該溶剤を噴霧する方法、該溶剤によるソックスレー抽出する方法、または超臨界抽出による方法に従って処理する工程を含むパーフルオロエラストマーシール材の製造方法。
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