JP4651186B2 - 生体光計測装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、光を用いて生体内情報を計測する生体光計測装置に関し、特に計測した生体内物質の濃度信号の解析機能を備えた生体光計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体光計測は、生体に可視から赤外領域の波長の光を照射し、生体から反射した光或いは生体を透過した光を検出することによって、生体内部の血液循環、血行動態、ヘモグロビン変化等の生体内情報を計測するものである。このような光計測は、簡便で、被験者に対して低拘束でかつ生体に害を与えずに計測できことから、種々の生体光計測装置が実用化され、また提案されている(例えば、特開昭57-115232号、特開昭63-275323号など)。
【0003】
特に所定の領域内の複数の計測位置についてヘモグロビン濃度の変化を計測し、等高線のようなグラフ(トポグラフ)で表示可能にした光トポグラフィは、例えば特定の作業を行わせた場合の脳活性部位の特定や、てんかん発作の局所焦点同定などへの臨床応用が期待されている。さらに脳内のヘモグロビン変化に関連して、運動、感覚、言語さらには思考に及ぶ高次脳機能等を計測することも可能である。
【0004】
例えば「近赤外線脳血流マッピング法(CLINICAL NUEROSCIENCE Vol.17, No.11 1999-11)」には、運動、言語課題遂行時の脳内ヘモグロビン変化について報告されており、ここではヘモグロビンの変化量や、最大変化量に達するまでの時間等を運動、言語課題遂行時の脳の活性状態を判定する指標として用いている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように計測されたヘモグロビン変化データから臨床的な診断を行うためには、変化量や経時的な要素が必要となる。具体的には、ヘモグロビン変化グラフの微分値は活性化領域に流れ込んでくるヘモグロビン変化率を表し、被検体の課題(刺激)への反応を知る上で重要な値である。またヘモグロビン量の変化が始まる位置或いは変化が終わる位置と、実際に刺激を開始した時点或いは刺激を終了した時点との差(潜時時間)も、課題への反応時間の指標である。さらにヘモグロビン変化グラフの積分値は、活性領域におけるヘモグロビン総変化量に対応し、脳がどれだけ反応したかの指標となる。
【0006】
しかしながら従来の生体光計測装置は、前述したような変化量をトポブラフとして表示する機能や、変化曲線を表示する機能しか備えていないため、さらに臨床的な応用を進めるためには、目視によって、計測位置ごとに変化率、変化量、潜時時間等を見分けなければならなかった。
そこで本発明は、単にヘモグロビン変化のみならず、生体機能計測や診断に重要な情報(定量データ)を生体光計測装置の出力として得ることができる生体光計測装置を提供することを目的とする。また本発明は、生体光計測で得られた複数人のデータを用いて統計処理をしたり、同一人について、例えばリハビリテーション治療の効果を確認するためにその前後のデータを比較する機能などのデータ解析機能を備えた生体光計測装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の生体光計測装置は、所定の波長の光を被検体に照射するとともに前記被検体内部を通過した光を検出し、前記光を吸収する被検体内物質の濃度に対応する信号を発生する光計測部と、前記光計測部からの信号を入力し、前記信号の時間軸に沿った濃度変化曲線について数量解析を行い、定量データを作成する信号処理部と、前記信号処理部が作成した定量データを表示する表示部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような生体光計測装置によれば、光計測部で得られる生の濃度データについて定量的な解析を行ない、その結果である定量データを表示することにより、診断や機能の判定に重要な情報を直接得ることができる。
【0009】
信号処理部が行う数量解析としては、例えば、濃度変化曲線について微分値及び/又は積分値を求める、被検体内物質の変化を生じせしめる被検体側の原因の開始時点或いは終了時点と、前記濃度信号の変化が所定の閾値以上となる時点或いは所定の閾値以下となる時点との差を、潜時時間として求める、がある。
【0010】
また本発明の生体光計測装置は、計測時或いは計測対象の異なる複数の計測において計測された濃度信号データを格納する記憶手段を備える。この場合、信号処理部は、前記記憶手段から読み出した複数の濃度信号データについて濃度変化量を求め、差分、加算平均等を算出する手段を備えたものとすることができる。
【0011】
この生体光計測装置によれば、例えば、複数の異なる計測対象から得たデータを加算平均することにより、濃度変化を生じせしめる原因(課題や刺激)に対する生体反応の平均値を得ることができ、また平均テンプレートグラフの作成が可能となる。或いは同一対象について異なる時間に行われた計測で得たデータの差分を取ることにより、リハビリテーション前後などにおける運動機能の回復度合いを診断する際の定量的な指標を与えることができる。
【0012】
本発明の生体光計測装置において、信号処理部および表示部は、光計測部と一体的に構成することも、独立した外部装置として構成することも可能である。独立した外部装置とした場合には、例えば遠隔地での計測結果を、集中的に格納、管理したり、診断・判定スキルのある場所での処理を行うことができる。その場合、信号処理部と光計測部は、例えばLANケーブル、通信ネットワーク、可搬記録媒体によってデータの送受を行うことができる。
【0013】
本発明の生体光計測装置において、光計測部は単一の発光素子と受光素子との組み合わせからなる光計測装置であっても、複数の計測チャンネルを有する光計測装置であってもよい。
【0014】
複数の計測チャンネルを有する光計測装置とは、被検体に対する光の照射位置と、その光を受光する受光位置とで決まる計測位置を複数有し、これら複数の計測位置に対応する数の濃度信号を出力するものであり、既存の光トポグラフィ装置を利用することができる。このような光トポグラフィ装置を利用することにより、所定の領域についての定量情報を得ることができる。
【0015】
光計測部として複数の計測チャンネルを有する光計測装置を用いる場合には、信号処理部は、好適には、複数の計測位置に対する濃度信号のうち、濃度の変化量の大きい濃度信号について、処理を行う。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の生体光計測装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の生体光計測装置の一実施形態を示す図である。この生体光計測装置は、被験者104の所望の部位(図示する実施例では頭部)に光の照射と受光を行うためのプローブ103と、位置情報を含む所定の波長の光を照射し、また被験者から反射した光を検出し、ヘモグロビン値に対応する信号(ヘモグロビン信号)を生成する光計測部101と、光計測部101で生成したヘモグロビン信号に周波数解析、微分等の演算を行い、種々の生体情報を生成し、表示するための生体情報演算部(信号処理部)105とを備えている。
【0017】
プローブ103と光計測部101は、光ケーブル102を介して接続されている。生体情報演算部105は、光計測部101に備えられる計算機が兼ねることも可能であるが、ここでは、例えばパーソナルコンピュータ等の、光計測部101からは独立したコンピュータシステムで構成されている。このような生体情報演算部105は、ローカルエリアネットワーク、インターネット等のネットワークを介して光計測部101と接続されていてもよいし、光磁気記録媒体(MO)、磁気記録媒体(FD)等の可搬型の記録媒体を介して光計測部101からのデータを受け取ることも可能である。
【0018】
プローブ103は、複数の光ケーブル102の末端部がそれぞれ所定の配列となるように配置し、被験者が装着できる形状に固定したもので、通常、照射用光ケーブル末端と受光用の光ケーブル末端とを2次元方向に交互に配置し、マトリクス状にしたものである。これにより照射用光ケーブル末端から照射され、被験者の皮膚を透過して組織内で反射された光は、その末端近傍(周囲)に配置された複数の受光用光ケーブル末端から光計測部に送られるようになっている。
【0019】
図2に、照射用光ケーブル末端と受光用光ケーブル末端の配置の一例を示す。図示する例では、4つの照射用光ケーブル末端R1〜R4と、それらと交互に配置された5つの受光用光ケーブル末端D1〜D5を示している。照射用光ケーブル末端と受光用光ケーブル末端との中点が計測位置となり、本例では12の計測位置が存在する。この計測位置が後述する光計測部220における検出部の計測チャンネルに対応する。
【0020】
光計測部101は、さらに図3に示すように、発光部210、検出部220および制御部230からなる。光計測部101としては、従来の光トポグラフィ装置をそのまま利用することが可能である。
【0021】
発光部210は、複数の、半導体レーザ等の発光素子およびその駆動回路からなる光モジュール211と、発振周波数の異なる複数の発振器212とを備える。半導体レーザは、目的とする生体情報に合わせた波長の光を発生する。例えばヘモグロビンの検出を目的とする場合には、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの最大吸収波長等、ヘモグロビン変化に対し受光量変化が大きくなる波長の光を発生する。各半導体レーザからの光は、発振器からの周波数によって変調される。これにより、プローブ103において、マトリクス上に配置された複数の照射用光ケーブル末端から、それぞれ異なる周波数に変調された光が被験者の皮膚に照射される。
【0022】
検出部220は、複数の受光用光ファイバ毎にそれぞれ接続されており、フォトダイオード等の光検出素子221と、検出した光信号成分を、その周波数毎に選択的に分離してロックイン検出するロックイン増幅器222と、ロックイン増幅器222から出力される信号をその各チャンネル毎に時間積算するサンプルホールド回路223と、時間積算後の信号をA/D変換するA/D変換器224とを備えている。ロックイン増幅器222のチャンネルは、前述した計測位置に対応する。
【0023】
制御部230は、発光部210および検出部220を制御するとともに、検出部220が検出しデジタル化した信号に演算を行い、例えば脳活動に伴う酸素化ヘモグロビン濃度変化、脱酸素化ヘモグロビン濃度変化、全ヘモグロビン濃度変化等を計算し、トポグラフを作成する計算機231と、計算機231の演算結果等を表示する表示部232と、計算機231における制御や計算のために必要な条件や計測に必要な情報(例えば患者IDや患者名)等を入力するための入力部233と、計算に必要なデータや計算結果を記憶するメモリ234とを備えている。
【0024】
計算機231が行う演算、即ちヘモグロビン濃度変化を求める計算や画像を作成する手法は、例えば特開平9-19408号公報やアツシ・マキ他による「無侵襲近赤外トモグラフィによるヒト脳活動の時空間解析(Spatial and temporal analysis of human motor activity using noninvasive NIR topography)」、1995年およびメディカルフィジックス第22巻、第1997-2005頁に記載されている。本発明の光計測部でも計測信号の計算には、これらの方法を採用することができるが、本発明においてトポグラフの作成は必須ではなく、演算前の信号、即ちロックイン増幅器222から出力されるヘモグロビン濃度(酸素化ヘモグロビン濃度、脱酸素化ヘモグロビン濃度)に対応する信号、或いは計算機231において算出した全ヘモグロビン濃度に対応する信号が生体情報演算部105に入力される。
【0025】
生体情報演算部105は、上述したようにコンピュータシステムからなり、そのハードウェアは、たとえばCPU108や、主記憶、ハードディスクなどの固定型の記憶媒体を用いる外部記憶装置107、可搬型の記憶媒体を用いる外部記憶装置110、ネットワークを介した通信を制御する通信制御装置、キーボードやポインティングデバイスなどの入力装置109、表示装置などの出力装置111を備えた一般的な電子計算機の構成を有する。そしてCPU108が主記憶にロードされたプログラムを実行することにより以下に説明する各処理が行われる。上述した光計測部101の制御部230で生成したヘモグロビン信号は、LANケーブル、通信ネットワーク、或いは可搬記憶媒体によって生体情報演算部105に入力され、例えば図示するようにハードディスク107上に記録される。
【0026】
次に生体情報演算部105が行う処理の一実施形態について説明する。
図4に具体的な処理の態様を示す。この実施形態では、図示するように、生体情報演算部105は基本的な処理としてフィルタ処理、ベースライン処理および周波数解析(ステップ402)を行う。
【0027】
まず、表示部111に表示された初期画面で、例えば患者ID或いは患者名、計測日時等の情報を入力することによって、所望のデータを検索し、読み込み、表示部111に表示する。表示された画面を図5に示す。上述した患者情報の入力、読み込みの指示は、患者IDや患者名を表示する患者情報表示ウィンド501、データ読み込みボタン507によって行う。光計測部101から読み込まれるデータは、例えばハンドグリッピング運動を行った際の、運動野領域におけるヘモグロビン濃度(変化量)を示すグラフ502であり、図中縦軸503はヘモグロビン変化量を、横軸506は時間を示している。縦線504,505はそれぞれ運動を開始した時点、終了した時点を示す。このような運動の開始、終了を認識させるために、光計測部からのデータには、上述したヘモグロビン変化量に対応するデータのほかに、例えば0-1の矩形信号データが記述されている。
【0028】
このグラフから、運動開始からヘモグロビンが増加し、運動終了後ヘモゴロビンが減少する様子が見られる。しかし、処理前の信号には体動、脈波、生体リズムなどのノイズ成分が重畳されているため、S/Nの悪い信号になっている。このようなノイズ成分を除去するため、フィルタ処理およびベースライン処理402を行う。
【0029】
図6に、フィルタ処理、ベースライン処理、周波数解析処理を行う画面を示す。
図示する例では、フィルタ処理として低周波ノイズを除去するハイパスフィルタHPF、高周波ノイズを除去するLPF等を用いており、表示画面の「フィルタ」607において、これらフィルタのカットオフ周波数、窓関数を設定することができる。カットオフ周波数については、デフォルトで適当な数値を設定しておき、さらにユーザーが任意に変更可能にしておいてもよい。窓関数は、方形窓、ハニング窓、ハミング窓等の公知のものを予め収納しておき、プルダウンによってそれらを表示、選択可能にすることができる。
【0030】
これらフィルタ処理に必要な条件を設定すると、図6に示す画面の上側のグラフには、フィルタ処理前のデータ602と、処理後のデータ604が表示される。図示する例では処理前のデータを0.1HzのLPF処理した場合を示している。
【0031】
フィルタ処理の結果は周波数解析によって確認することができる。表示画面の「FFT」608において、高速フーリエ変換処理の条件を設定することにより、フィルタ処理前データ602、処理後データ603の両者に対し周波数解析処理が行われ、その結果が図6の下側のグラフに示すように表示される。604が処理前データ、605が処理後データであり、ローパスフィルタ処理によって0.1Hzの帯域からの信号がカットされS/Nが向上していることがわかる。
尚、周波数解析は、このようなノイズ除去確認のみならず、信号成分の解析にも利用することができる。
【0032】
ベースライン処理では、表示画面の「BASE LINE」609に次数を設定することにより実行する。この設定された次数により、ヘモグロビンデータ602に対する近似曲線を算出し、この近似曲線をベースラインとするベースライン処理を行う。即ち、ベースライン処理結果(AfterPolyfitData)は、(フィルタ処理後の)ヘモグロビン変化グラフ(HbData)と近似曲線(Polyfit)から以下の式によって求める。
(AfterPolyfitData)=(HbData)/(Polyfit)
【0033】
ベースライン処理の次数は、デフォルトとして適当な数値、例えば5次に設定しておいてもよいし、例えば0次から10次の間の任意の次数をユーザーが設定、変更可能にしてもよい。
【0034】
光計測部101から入力した生データについて、このように前処理を行うことにより、次に行う数量解析の実効性を上げることができる。
【0035】
次に前処理したデータを用いて、指定区間の微分値、積分値、潜時時間(信号のONset位置、OFFset位置と実際の運動(刺激)開始或いは終了時点との差)を求める処理を行う。このような処理を行う画面を図7に示す。
【0036】
まず、「LOAD」ボタン710により、上述のように前処理後のヘモグロビンデータ705を読み込む。ここでも運動開始時点と終了時点が縦線706、708でそれぞれ示される。
【0037】
次に潜時時間計算、積分値計算、微分値計算の基礎となる閾値ライン702を設定する。閾値ライン702は、画面の「閾値」711に値を入力することにより設定される。この閾値ライン702以上となる変化ポイントが、ヘモグロビン値が変化し始めるOnset位置707、閾値ライン702以下となる変化ポイントがヘモグロビン値が変化前に戻るOFFset位置709である。
【0038】
ついで実際の運動開始時点706とOnset位置707との差(潜時時間)、運動終了時点708とOFFset位置709との差(潜時時間)をそれぞれ計算する。Onset、OFFsetのそれぞれについて、その時間および潜時時間が「Onset」ウィンド712、「OFFset」ウィンド713にそれぞれ表示される。
【0039】
また閾値ライン702が設定されると、この閾値ライン702とヘモグロビンデータ705曲線で囲まれる領域704について面積を計算し、画面の「面積」714に値を表示する。この場合、図示するように面積計算された領域704をカラー表示或いは諧調表示によってグラフ上に表示してもよい。
【0040】
さらに、例えばOnset位置707から所定の区間を指定すると、その区間における微分値、即ちヘモグロビン変化率を計算する。区間の指定および計算結果の表示は、「傾きΔt」715のウィンドで行う。この場合にも、実際の傾きを図中703で示すように直線でグラフ上に表示してもよい。
【0041】
潜時時間、ヘモグロビン変化率は、既に述べたように被験者の刺激に対する反応を示す指標であり、また面積は、刺激に対し脳がどれだけ反応したかを示す指標であり、ともに機能判定に重要な情報である。操作者は、これら情報を各表示ウィンドに表示された数値として、或いはグラフ上の表示された線分や着色等によって容易に把握することができる。
【0042】
なお、光計測部が複数の計測チャンネルのデータを作成し、これらデータを入力する場合には、上述した処理を各計測チャンネルのデータについて行ってもよいし、各計測チャンネルのデータのうち、有意なヘモグロビン変化のあるチャンネルのデータについてのみ数量解析を行ってもよい。その場合、生体情報演算部105において、データ読み込み401後、前処理402前或いは数量解析403〜405の前に、信号の最大値と最小値が所定の閾値以上となるデータを選択する処理を加えることができる。
【0043】
次に生体情報演算部105が行う処理の第二の実施形態について説明する。
図8は本実施形態の具体的な処理の態様を示したもので、図9は処理のための表示画面を例示したものである。この実施形態では、図8に示すように、生体情報演算部105は、複数のヘモグロビンデータの読み込み(ステップ801)を行ない、これに加算平均処理(ステップ802)または差分処理(ステップ803)を行う。加算平均処理或いは差分処理後の処理は、第一の実施形態と同様であり、前処理としてのフィルタ処理、ベースライン処理および周波数解析(ステップ804)、ヘモグロビン変化量(微分値)計算(ステップ805)、変化量面積(積分値)計算(ステップ806)、Onset・OFFset(潜時時間)計算(ステップ807)、計算結果の表示(ステップ808)を行う。
【0044】
加算平均処理802は、例えば、多数の人を対象として、ヘモグロビン量変化グラフの微分値、積分値、潜時時間の平均値を求めるために行う。このような統計処理を行うためには、生体情報演算部105の外部記憶装置内に、多数の人の計測データを格納したデータベースを構築しておくことが好ましい。データベースは、例えば多数のデータを所定のカテゴリー(例えば性別、年齢、計測時間、地域等)やツリー構造に分類し、カテゴリー毎に読み出し可能しておくことが好ましい。そして、例えばこのようなデータベースから一定のカテゴリーのデータを選択して読み出し、カテゴリー毎に処理を行う。もちろん全データについて処理を行ってもよい。
【0045】
このため、画面の患者情報901において所望のカテゴリーの選択と「LOAD」ボタン906を操作し、複数のヘモグロビンデータを読み込む。なお、患者情報として患者名、患者ID901の入力と「LOAD」ボタン906の操作を繰り返し、所望の複数の患者データを選択することも可能である。このようにしてデータの読み込みが完了したならば、「ADD」ボタン907を操作する。これにより、ヘモグロビンデータの加算平均処理が行われる。この加算平均処理の結果は、第一の実施例について示した図5の画面と同様に表示されるので、その後、第一の実施例と同様に、前処理およびそれに続く数量解析を行う。
【0046】
これによって、第一の実施例について示した図7の画面と同様の画面に、選択したカテゴリー或いは患者群について、微分値、積分値、潜時時間の平均データが表示される。このようなデータは、個々の患者の平均値からのずれを判断するのに利用できるほか、そのまま平均テンプレートグラフとして利用できる。
【0047】
差分処理803は、例えば、同一人を対象として、その患者の経過を観察するのに利用する。このため図9の画面の患者情報901を入力するとともに、「COMMENT」で計測時点を入力し、「LOAD」ボタン906を操作して、その患者の所定の計測時点におけるヘモグロビンデータを読み込む。患者名、患者IDはそのままにして、新たな計測時点を入力し、別な計測時点のヘモグロビンデータを読み込む。図9には、このようにして読み込まれた2つのグラフ902,903が表示された様子を示す。ついで「DIFF」ボタン908を操作することにより、これらグラフの差分を示すデータが表示される(図示せず)。
【0048】
ついで前処理804、数量解析805〜807を行ない、結果を表示する。この表示された結果によって、例えば治療の効果を定量的に確認することができる。
なお、上記では同一人からの計測データについて差分処理を行う場合を説明したが、例えば一方の読み込みデータとして、加算平均処理で作成された平均テンプレートグラフを読み込み、他方の読み込みデータとして個人の計測データを読み込み、これら読み込みデータを差分処理してもよい。この場合には、当該個人について平均値からのずれを定量的に把握することができる。
【0049】
また、図8に示す実施形態では、加算平均処理802および差分処理803を行った後に、フィルタ処理、ベースライン処理、数量解析を行った場合を示したが、これら処理の順序は図示する実施形態に限定されない。即ち、例えば2データ間の差分処理のように読み込みデータ数が少ない場合には、読み込んだデータのそれぞれについてフィルタ処理、ベースライン処理を施し、その後、加算、差分等の処理を行ってもよい。
【0050】
また図8に示す処理を全て行うのではなく、所望の処理のみを行ってもよい。
例えば差分のみ行ない、その後の処理を省略することも可能である。
以上、本発明の生体光計測装置の実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、光計測部として光トポグラフィ装置を用いた場合を説明したが、単独の発光素子と受光素子からなる光計測装置であっても適用できる。
【0051】
また被検体内物質の濃度に対応する信号として、ヘモグロビン濃度信号を例に説明したが、ヘモグロビン濃度信号は酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、全ヘモグロビンでもよいし、それ以外の生体内物質、例えばチトクロームa、a3やミオグロビン等についても、光の波長を適宜選択することにより同様に適用することが可能である。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、生体光計測で得られる被検体内物質の濃度情報を用いて、診断等により重要な数値データを作成し、直接表示することができるので、光計測の有効な臨床応用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生体光計測装置の概要を示す図
【図2】生体光計測装置のプローブを示す図
【図3】生体光計測装置の光計測部を示す図
【図4】本発明の生体光計測装置の信号処理部が行う処理の一実施形態を示す図
【図5】データの読み込みを行うための画面の一例で、処理前のデータを示す図。
【図6】前処理を行うための画面の一例で、図5のデータを処理した状態を示す図
【図7】数量解析を行うための画面の一例で、図6のデータを処理した状態を示す図
【図8】本発明の生体光計測装置の信号処理部が行う処理の他の実施形態を示す図
【図9】図8の実施形態においてデータの読み込みを行うための画面の一例を示す図。
【符号の説明】
101・・・光計測部
103・・・プローブ
105・・・生体情報演算部(信号処理部)
111・・・表示装置
Claims (6)
- 所定の波長の光を被検体に照射するとともに前記被検体内部を通過した光を検出し、前記光を吸収する被検体内物質の濃度に対応する信号を発生する光計測部と、前記光計測部からの信号を入力し、前記信号の時間軸に沿った濃度変化曲線について数量解析を行い、定量データを作成する信号処理部と、前記信号処理部が作成した定量データを表示する表示部とを備えた生体光計測装置であって、
前記信号処理部は、前記被検体内物質の変化を生じせしめる被検体側の原因の開始時点或いは終了時点と、前記濃度変化が所定の閾値以上となる時点或いは所定の閾値以下となる時点との差を、潜時時間として求める手段を備え、前記定量データとして、前記潜時時間と、当該潜時時間によって規定される指定区間の微分値、および積分値を含む定量データを作成することを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1に記載の生体光計測装置であって、計測時或いは計測対象の異なる複数の計測において計測された濃度信号データを格納する記憶手段を備え、
前記信号処理部は、前記記憶手段から読み出した複数の濃度信号データについて濃度変化量を求め、差分、加算平均等を算出する手段を備えたことを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1に記載の生体光計測装置であって、
前記信号処理部および表示部は、前記光計測部から独立した外部装置として構成されていることを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項3に記載の生体光計測装置であって、
前記信号処理部と前記光計測部は、LANケーブル、通信ネットワーク、可搬媒体のいずれかによってデータの送受を行うことを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項1に記載の生体光計測装置であって、
前記光計測部は、前記被検体に対する光の照射位置と、その光を受光する受光位置とで決まる計測位置を複数有し、これら複数の計測位置に対応する数の濃度信号を出力することを特徴とする生体光計測装置。 - 請求項5に記載の生体光計測装置であって、
前記信号処理部は、前記複数の計測位置に対する濃度信号のうち、濃度の変化量の最も大きい濃度信号について、処理を行うことを特徴とする生体光計測装置。
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