以下、本発明のトナー、トナー、現像剤、該トナーの製造方法、該トナーを用いる画像形成装置及び該トナーを用いて行う画像形成方法について、実施形態に即して詳細に説明する。
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、少なくとも、ポリエステル樹脂と、融点が50℃以上100℃未満のポリアルキレングリコールエステル化合物と、を含有し、更に必要に応じて、着色剤、離型剤、帯電制御剤等のその他の成分を含有してなる。
ポリエステル樹脂とポリアルキレングリコールエステル化合物は50℃以下では互いに非相溶であり、かつ100℃以上では相溶する。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂としては、少なくとも1種以上のポリエステル樹脂を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して用いることが可能であり、例えば、公知のバインダー樹脂を用いることができる。
本実施形態で用いるポリエステル樹脂は、下記の化学式3で表される1種もしくは2種以上のポリオールと、下記の化学式4で表される1種もしくは2種以上のポリカルボン酸と、を脱水縮合または脱アルコールしてポリエステル化したものである。
なお、上記の化学式3中、Aは炭素数1〜20のアルキレン基、アルキン基、置換基を有していてもよい芳香族基もしくはヘテロ環芳香族基を、mは2〜4の整数を、Rは炭素数1〜20のアルキル基または水素原子を表す。なお、mが複数の場合には、OR基は同一でも異なっていてもよい。
また、上記の化学式4中、Bは炭素数1〜20のアルキレン基、アルキン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を、nは2〜4の整数を表す。
化学式3で表される化合物のうちポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、などが挙げられる。なお、上記した化合物のOH基の少なくとも1つの水素基(水素原子)をアルキル基(たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)で置換した化学式3で表されるエーテル化合物の例となる。
化学式4で表されるポリカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)等が挙げられる。
ポリエステル樹脂の使用量としては、トナー組成物に対して50〜95重量%が好ましく、さらに70〜85重量%が好ましい。
樹脂は、水酸基価が20mgKOH/g以上であるのが好ましい。何故なら、該水酸基価が20mgKOH/gであると、ホットオフセット性に優れるからである。なお、このような特性が表出するのは、水酸基価が後述する架橋剤との架橋構造に反応しやすい部位と弱い架橋を3次元的に構成しているためであると考えられる。
<ポリアルキレングリコールエステル化合物>
ポリアルキレングリコールエステル化合物は、下記の化学式5で表される1種もしくは2種以上のカルボン酸と、下記の化学式6で表されるポリアルキレングリコールと、をエステル化して得られた化合物である。
なお、上記の化学式5中、Xは炭素数1〜24の脂肪族飽和アルキル基もしくはアルキレン基を表す。また、上記の化学式6中、nは2以上の整数を表し、mは2以上4以下の整数を表し、Rxm、Rymは、Hまたは炭素数1〜6までの直鎖あるいは分岐鎖状のアルキル基を表す。
化学式5で表されるカルボン酸と、化学式6で表されるポリアルキレングリコールと、からなるポリアルキレングリコールエステル化合物は、従来公知の酸触媒或いはアルカリ触媒を用い、溶媒の存在下あるいは非存在下で脱水縮合することにより得ることができる。
化学式5で表されるカルボン酸の一例としては、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族飽和カルボン酸が挙げられる。具体的には、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ピバル酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールエステル化合物は、ポリエチレングリコールジエステル化合物であることが好ましい。何故なら、ポリアルキレングリコールエステル化合物がポリエチレングリコールジエステル化合である場合、50℃以下ではポリエステル樹脂と非相溶で、かつ100℃以上でポリエステル樹脂と相溶状態となりやすいからである。
また、ポリアルキレングリコールエステル化合物は、重量平均分子量が3000〜20000であることが好ましい。何故なら、分子量が3000未満であるとポリアルキレングリコールエステル化合物の融点が50℃以下になりやすいため耐熱保存性に劣り、分子量が20000を超えるとポリアルキレングリコールエステル化合物の親水性が増加するためトナーの帯電特性が劣化するおそれがあるからである。
また、ポリアルキレングリコールエステル化合物のトナー中での含有量はポリエステル樹脂100重量部に対し1〜20重量部であることが好ましい。何故なら、1重量部未満であるとポリエステルと定着時に相溶するポリアルキレングリコールエステル化合物の量が少量であるため低温定着性に劣ることがあり、20重量部を超えるとホットオフセット性に劣るおそれがあるからである。
<相溶状態の測定>
保存時におけるポリエステル樹脂とポリアルキレングリコールエステル化合物の相溶状態の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。一例を挙げれば、トナーをエポキシ樹脂に包埋して約100μmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率10,000倍で観察を行い、写真撮影し、この写真を画像評価することにより、保存時においてポリエステル・ポリアルキレングリコールエステル化合物が互いに非相溶であることを測定できる。
加熱時におけるポリエステル樹脂とポリアルキレングリコールエステル化合物の相溶状態の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。一例を挙げれば、トナーを100℃以上に加熱溶融し、ポリエステル樹脂とポリアルキレングリコールエステル化合物が互いに分離して界面を形成するかどうかで判断できる。この手法において界面を形成しない場合、ポリエステル樹脂とポリアルキレングリコールエステル化合物は互いに加熱時に相溶する化と判断できる。
樹脂、トナー、ポリアルキレングリコールエステル化合物のガラス転移温度及び融点の測定は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計「DSC−60」;島津製作所株式会社製)を用いて、以下の方法により測定することができる。
昇温1回目における樹脂及びトナーのTg(ガラス転移温度)は、まず、樹脂又はトナー(試料)約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットし、次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱し、示差走査熱量計「DSC−60」によりDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、例えばDSC−60システム中の解析プログラムを用いて、樹脂(又はトナー)の変極点より前の曲線と、変極点以降の曲線との接線の交点から算出する。
また、同時にポリアルキレングリコールエステル化合物に由来するピークの値から、ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点などを求めることができる。
なお、ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点が、トナー中の他の物質(樹脂、ワックス等)のピークと重なる場合には、ポリアルキレングリコールエステル化合物単体でのDSC測定を行うことによりポリアルキレングリコールエステル化合物の融点を求めることができる。
得られたトナーの昇温1回目のTgは50℃以上であることが好ましい。何故なら、Tgが50℃未満である場合、トナーの耐熱保存性が劣るおそれがあるからである。
<その他の成分>
トナーを製造する際に使用される結着樹脂以外のその他の成分としては、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。これらは、特に制限なく、目的に応じて適宜選択して用いることができる。
(着色剤)
着色剤は、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤のトナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。何故なら、着色剤の含有量が1質量%未満であるとトナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えるとトナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがあるからである。
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と、着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練させて製造する。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。
また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いる。
(離型剤)
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して用いることができる。
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等を用いる。具体的には、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などを用いることができる。また、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
離型剤の融点は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がより好ましい。何故なら、融点が50℃未満であると離型剤が耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、120℃を超えると低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いからである。この点、融点が50〜120℃の低融点の離型剤を使用すると、樹脂と分散されるので、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でも良好なホットオフセット性を実現できる。
離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cps(5〜1000mPa・S)が好ましく、10〜100cpsがより好ましい。何故なら、溶融粘度が5cps(5mPa・S)未満であると離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがあるからである。
離型剤のトナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。何故なら、含有量が40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがあるからである。
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、帯電制御剤は市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
帯電制御剤のトナーにおける含有量は、樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なるので一概に規定することができないが、例えば、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。何故なら、該含有量が、0.1質量部未満であると帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えるとトナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがあるからである。
(無機微粒子)
無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用する。無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、無機微粒子のトナーにおける含有量としては、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.01〜2.0質量%がより好ましい。
(流動性向上剤)
流動性向上剤とは、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。
なお、シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
(クリーニング性向上剤)
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加されるものであり、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。該ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
(磁性材料)
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等を用いることができる。なお。これらの中でも、色調の点で白色のものが特に好ましい。
<トナーの製造>
上述のトナーは、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法等の公知の方法を使用して得る(製造する)ことができ、例えば、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中に乳化ないし分散させて乳化ないし分散液を調製した後トナーを造粒することにより得ることができる。
好ましい態様としては、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを少なくとも含むトナー材料の溶解ないし分散液と、を水系媒体中に乳化ないし分散させ、該水系媒体中で活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を少なくとも含む粒子を生成させて得る。
(トナー材料の溶解ないし分散液)
トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を溶媒あるいは分散媒に溶解ないし分散させたものである。
トナー材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、活性水素基含有化合物、及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)のいずれかを少なくとも含んでなるもの、好ましくはさらに可塑剤を含んでなるもの、更に必要に応じて未変性ポリエステル樹脂や離型剤、着色剤、帯電制御剤等の上記その他の成分を含んでなるものを用いることができる。
トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を有機溶剤に溶解ないし分散させて調製する。なお、有機溶剤は、トナーの造粒時ないし造粒後に除去するのが好ましい。
有機溶剤または分散剤としては、トナー材料を溶解ないし分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して用いることができるが、特に、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましい。一例を挙げれば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられるが、ステル系溶剤であるのが好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の使用量は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トナー材料100質量部に対し40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部が更に好ましい。
なお、トナーの製造において、トナー材料の溶解ないし分散液の調製は、有機溶剤中に、活性水素基含有化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、未変性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、帯電制御剤、等のトナー材料を、溶解ないし分散させることにより行うことができる。トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、後述する水系媒体の調製において該水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体に添加する際に該溶解ないし分散液と共に水系媒体に添加してもよい。
(活性水素基含有化合物)
活性水素基含有化合物は、水系媒体中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体がイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、該イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、アミン類(B)が好適である。
上述の活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。活性水素基としては、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等、を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
なお、ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。また、該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4'−ジアミノ−3,3'ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。また、該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。また、アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。また、アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。また、アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
また、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、(B1)から(B5)のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
なお、活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などを用いることができる。
アミン類(B)と、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であるのが好ましく、1/2〜2/1であるのがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であるのが特に好ましい。何故なら、混合当量比([NCO]/[NHx])が1/3未満であると低温定着性が低下することがあり、3/1を超えるとウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」)としては、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば、特に制限はなく公知の樹脂等の中から適宜選択して用いることができる。プレポリマーとしては、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
プレポリマーにおける活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができ、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。
プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)であるのが特に好ましい。
ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)におけるウレア結合生成基がイソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としてはイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適に挙げられる。
イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり且つ活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。
ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール(DIO)単独、又はジオール(DIO)と少量の3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が好ましい。
なお、ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、等が挙げられる。また、アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、等が挙げられる。また、脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。また、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの、等が挙げられる。また、ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。また、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの、等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましい。例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等である。
3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの、等が挙げられる。
ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物における、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はDICと少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
ジカルボン酸(DIC)としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。
アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。また、アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
3価以上のポリカルボン酸(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物におけるジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
ポリオール(PO)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。何故なら、含有量が0.5質量%未満であると耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると低温定着性が悪化することがあるからである。
ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。また、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独でも使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート(PIC)と、活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、該ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と、該水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1でるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。何故なら、イソシアネート基[NCO]が5を超えると低温定着性が悪化することがあり、1未満であると耐オフセット性が悪化することがあるからである。
ポリイソシアネート(PIC)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。何故なら、含有量が0.5質量%未満であると耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると低温定着性が悪化することがあるからである。
イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がより好ましい。何故なら、イソシアネート基の平均数が1未満であると、ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、3,000〜40,000が好ましく、4,000〜30,000がより好ましい。何故なら、該重量平均分子量(Mw)が3,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、40,000を超えると低温定着性が悪化することがあるからである。
なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行う。
まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1ml(1ミリリットル)の流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl(マイクロリットル)注入して測定する。
試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.または東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、及び4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いる。
(水溶媒体)
水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などを用いることができる。これらの中でも、水が特に好ましい。
水と混和可能な溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。該樹脂微粒子の該水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、特に0.5〜10質量%が好ましい。
樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂でもあってもよい。
該樹脂微粒子としては、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているものが好ましい。
なお、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、特に該樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。該樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、以下の方法が好適である。
(1)ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法
(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法
(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
(乳化ないし分散)
トナー材料の溶解ないし分散液の水系媒体中への乳化ないし分散は、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中で攪拌しながら分散させる。該分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の分散機などを用いて行うことができる。該分散機としては、低速せん断式分散機、高速剪断式分散機などが挙げられる。
本実施形態のトナーの製造方法においては、乳化ないし分散の際、活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを伸長反応ないし架橋反応させ、接着性基材を生成する。
(接着性基材)
接着性基材は、紙等の記録媒体に対し接着性を示し、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを少なくとも含んでなる。なお、更に公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂を含んでいてもよい。
接着性基材の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が特に好ましい。何故なら、重量平均分子量が3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
接着性基材のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、30〜70℃が好ましく、40〜65℃がより好ましい。何故なら、本実施形態のトナーでは、架橋反応、伸長反応したポリエステル樹脂が共存していることにより、従来のポリエステル系トナーと比較してガラス転移温度が低くても良好な保存性を示すものであるが、ガラス転移温度(Tg)が30℃未満であるとトナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると低温定着性が十分でないことがあるからである。
ガラス転移温度は、例えば、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて測定する。具体的には、まず、トナー約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットする。室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温まで試料を冷却して10min放置する。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出する。
接着性基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂、などが特に好適である。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを水系媒体中で反応させることで得ることができる。
ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよい。この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。何故なら、ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
ウレア変性ポリエステル樹脂としては、以下に挙げる(1)から(10)までの物質が好適である。
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、等が好適に挙げられる。
(結着樹脂)
結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、ポリエステル樹脂等を用いることができる。特に未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)が好ましい。何故なら、未変性ポリエステル樹脂をトナー中に含有させると、低温定着性及び光沢性を向上させることができるからである。
未変性ポリエステル樹脂としては、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂と同様のもの、即ちポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物、等が挙げられる。該未変性ポリエステル樹脂は、その一部がウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と相溶していること、すなわち、互いに相溶可能な類似の構造であるのが、低温定着性、耐ホットオフセット性の点で好ましい。
未変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。何故なら、重量平均分子量(Mw)が30,000を超えると低温定着性が悪化することがあり、重量平均分子量(Mw)が1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあるからである。なお、上述したように重量平均分子量(Mw)が1,000未満である成分の含有量は、8〜28質量%であることが必要である。
未変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は35〜70℃が好ましい。何故なら、ガラス転移温度が35℃未満であるとトナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると低温定着性が不十分となることがあるからである。
未変性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、10〜120mgKOH/gがより好ましく、20〜80mgKOH/gが更に好ましい。何故なら、水酸基価が5未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがあるからである。
未変性ポリエステル樹脂の酸価は、1.0〜30.0mgKOH/gの範囲が好ましく、5.0〜20.0mgKOH/gが特に好ましい。一般にトナーに酸価をもたせることによって負帯電性となり易くなるからである。
未変性ポリエステル樹脂をトナーに含有させる場合、ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と該未変性ポリエステル樹脂(PE)との混合質量比(RMPE/PE)としては、5/95〜25/75が好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。何故なら、未変性ポリエステル樹脂(PE)の混合質量比が95を超えると耐ホットオフセット性が悪化することがあり、75未満であると低温定着性や画像の光沢性が悪化することがあるからである。
結着樹脂における未変性ポリエステル樹脂の含有量としては、50〜100質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましい。何故なら、該含有量が50質量%未満であると低温定着性や定着画像強度、光沢性などが悪化することがあるからである。
接着性基材(例えば、ウレア変性ポリエステル樹脂)は、例えば、(1)活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含むトナー材料の溶解ないし分散液を、活性水素基含有化合物(例えば、アミン類(B))と共に、水系媒体中に乳化ないし分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)トナー材料の溶解ないし分散液を、予め活性水素基含有化合物を添加した水系媒体中に乳化ないし分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよく、あるいは(3)トナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に添加混合させた後で、活性水素基含有化合物を添加し、油滴を形成し、該水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよい。
なお、(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成されるので、該トナー粒子において濃度勾配を設けることが可能となる。
乳化ないし分散により、接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と活性水素基含有化合物との組み合わせに応じて適宜選択することができる。反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
水系媒体中において、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む分散体を安定に形成する方法としては、例えば、水系媒体中に、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、着色剤、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を有機溶剤に溶解ないし分散させて調製したトナー材料の溶解ないし分散液を添加し、剪断力により分散させる方法、等が挙げられる。
乳化ないし分散において、水系媒体の使用量としては、トナー材料100質量部に対し50〜2,000質量部が好ましく、100〜1,000質量部がより好ましい。何故なら、使用量が50質量部未満であるとトナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると生産コストが高くなることがあるからである。
(分散剤)
乳化ないし分散においては、必要に応じて、油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、特にフルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。該フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
また、陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。該陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。該カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
また、非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。また、両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。
なお、酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
また、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。
また、クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。また、ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。分散安定剤としてリン酸カルシウム塩を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
分散液の調製においては、伸長反応ないし架橋反応の触媒を用いることができる。該触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、等が挙げられる。
(有機溶剤の除去)
乳化ないし分散により得られた乳化スラリーから、有機溶剤を除去する。有機溶剤の除去方法としては、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等を採用することができる。
有機溶剤を除去することで、トナー粒子が形成される。該トナー粒子に対し、洗浄、乾燥等を行い、更にその後、所望により分級等を行う。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行う。なお、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
(機械的衝撃の印加)
こうして、得られたトナー粒子を、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の粒子と共に混合し、更に機械的衝撃力を印加することで、該トナー粒子の表面から該離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。
機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等を採用することができる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢、等である。
<トナー物性>
本実施形態のトナーの形状、大きさ等の諸物性については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)、針入度、低温定着性、オフセット未発生温度、等を有していることが好ましい。
トナーの体積平均粒径(Dv)は、3〜8μmが好ましい。何故なら、体積平均粒径が3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあるからである。また、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがあるからである。
また、トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、例えば、1.30以下が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。何故なら、体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させたりすることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあるからである。また、1.30を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがあるからである。
この点、体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.30であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。また、二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。
なお、体積平均粒径(Dv)、および体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
針入度としては、例えば、針入度試験(JIS K2235−1991)で測定した針入度が、15mm以上であることが好ましく、20〜30mmがより好ましい。何故なら、針入度が15mm未満であると、耐熱保存性が悪化することがあるからである。
針入度は、JIS K2235−1991に従って測定することができる。具体的には、50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に20時間放置する。このトナーを室温まで冷却し、針入度試験を行うことにより針入度を測定する。なお、針入度の値が大きいほど、耐熱保存性が優れることを示している。
低温定着性としては、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させる観点からは、定着下限温度が低くなるほど好ましく、また、オフセット未発生温度が高くなるほど好ましい。定着温度低下とオフセット未発生とを両立させ得る温度領域としては、定着下限温度が150℃未満であり、オフセット未発生温度が200℃以上である。
なお、定着下限温度は、例えば、画像形成装置を用い、転写紙をセットし、複写テストを行い、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度を定着下限温度としたものである。
オフセット未発生温度は、例えば、画像形成装置を用いて、転写紙をセットし、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各単色、及び中間色としてレッド、ブルー、及びグリーンのベタ画像を各単色で現像されるように調整し、定着ベルトの温度が可変となるように調整して、オフセットの発生しない温度を測定することにより求めることができる。
トナーの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができる。
<効果>
本実施形態のトナーは、少なくともポリエステル樹脂と、下記化学式7で表されるポリアルキレングリコールエステル化合物とを含み、該ポリアルキレングリコール化合物は、融点が50〜100℃であり、ポリエステル樹脂に対し50℃では非相溶に存在し、100℃では相溶する。保存時には互いが非相溶状態で独立して存在するので、保存時には優れた耐熱保存性を示し、定着時の加熱によりポリエステル樹脂とポリアルキレングリコールエステル化合物が相溶化し低温で定着するので、定着時には優れた低温定着性を示す。従って、本実施形態のトナーは、流動性、定着性等のトナーとしての諸特性について良好であり、且つ優れた低温定着性と耐熱保存性とを両立することができる。
なお、上記化学式7において、R1,R2は、炭素数1〜24の直鎖または分岐状のアルキル基を、Rxm,Rymは水素または炭素数1〜6までの直鎖または分岐状のアルキル基を示す。また、nは2以上の整数を、mは2以上4以下の整数を表す。
<他の実施形態>
上述した本実施形態のトナーは、流動性、定着性等の諸特性が良好であり、優れた低温定着性と耐熱保存性とを両立する。よって、上述のトナーは、各種分野において好適に使用することができ、特に電子写真法による画像形成に好適に使用することができる。また、後述する現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に特に好適に使用することができる。
以下、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法について説明する。
<現像剤>
本実施形態の現像剤は、少なくとも上述したトナーを含有してなる。また、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
上述のトナーを用いた一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像を得ることができる。
また、上述のトナーを用いた二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性を実現することができる。
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等を用いることができる。画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき、高画質化に有利である点では、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10〜150μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。何故なら、平均粒径(体積平均粒径(D50))が10μm未満であると、キャリア粒子の分布において微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると比表面積が低下しトナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは特にベタ部の再現性が悪くなることがあるからである。
樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等が挙げられる。ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよい。導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、等が挙げられる。なお、導電粉の平均粒子径は、1μm以下が好ましい。何故なら、平均粒子径が1μmを超えると電気抵抗の制御が困難になることがあるからである。
樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、等が挙げられる。
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテート、等を用いることができる。
焼付手法としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などの手法を採用することができる。
樹脂層のキャリアにおける量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。何故なら、量が0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがあるからである。
現像剤が二成分現像剤である場合、キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90〜98質量%が好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
本実施形態の現像剤は、上述のトナーを含有しているので、流動性、定着性等のトナーとしての諸特性について良好であり、且つ優れた低温定着性と耐熱保存性とを両立することができる。
<トナー収容容器>
上述の電子写真用トナー(現像剤)を収容する容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、トナー収容容器本体とキャップとを有してなるもの、等が一例として挙げられる。
トナー収容容器本体の大きさ、形状、構造、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、形状としては円筒状等が好ましく、特に、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物であるトナーが排出口側に移行可能であり、かつ該スパイラル部の一部又は全部が蛇腹機能を有しているもの、が特に好ましい。
トナー収容容器本体の材質としては、特に制限はなく、寸法精度がよいものが好ましい。一例を挙げれば樹脂材料が好適であり、その中でも、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、等が好適である。
トナー収容容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れ、後述するプロセスカートリッジ、画像形成装置等に着脱可能に取り付け、トナーの補給に使用することができる。
<プロセスカートリッジ>
本実施形態のプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、現像剤を用いて該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなる。なお、必要に応じて適宜選択したその他の手段を有していてもよい。
現像手段としては、上述の電子写真用トナーあるいは上述の現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー又は現像剤を担持し且つ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなる。なお、さらに、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
<画像形成方法および画像形成装置>
画像形成の工程(画像形成方法)は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、好ましくはクリーニング工程を含み、さらに必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
また、画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有し、好ましくはクリーニング手段を有し、さらに必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
上述の画像形成方法は、上述の画像形成装置により好適に実施することができ、静電潜像形成工程は静電潜像形成手段により、現像工程は現像手段により、転写工程は転写手段により、定着工程は定着手段により、その他の工程はその他の手段により行う。
(静電潜像形成工程/静電潜像形成手段)
静電潜像形成工程は、感光体などの静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
静電潜像担持体(「光導電性絶縁体」、「感光体」)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その形状としてはドラム状が好適に挙げられる、また、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行う。この静電潜像の形成は、静電潜像形成手段により行う。
静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器と、を少なくとも有して構成される。
帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行う。帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、等を用いることができる。
露光は、例えば、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行う。露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器を用いることができる。
なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
(現像工程/現像手段)
現像工程は、静電潜像を、上述した電子写真用トナーまたは上述の電子写真用現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、現像手段により行う。
現像手段は、例えば、上述の電子写真用トナー又は上述の電子写真用現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、上述の電子写真用トナー又は電子写真用現像剤を収容し、静電潜像に該トナー/該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適であり、上述のトナー収容容器を備えた現像器等がより好適である。
現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。例えば、上述の電子写真用トナー又は電子写真尿現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、等が好適な一例である。
現像器内では、電子写真用トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、静電潜像担持体近傍に配置されており、該マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
現像器に収容させる現像剤は、上述の電子写真用トナーを含む現像剤であるが、該現像剤は一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
(転写工程/転写手段)
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程である。中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。また、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
転写は、転写手段により行う。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、無端状の転写ベルト等が好適に挙げられる。
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
なお、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
(定着工程/定着手段)
定着工程は、定着手段を用いて記録媒体に転写された可視像を定着させる工程である。各色のトナーに対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、等が挙げられる。
加熱加圧手段における加熱温度は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、目的に応じて、上述の定着手段と共に、あるいはこれに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
(その他の工程/その他の手段)
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により行う。除電手段としては、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等を用いることができる。
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する残留トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する残留トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ、等を用いることができる。
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去した残留トナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
制御工程は、上述の各工程を制御する工程であり、制御手段により行う。制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器がを用いることができる。
(画像形成装置)
図1を参照して、上述の画像形成方法を実施する画像形成装置の一態様について説明する。
画像形成装置100は、静電潜像担持体としての感光体ドラム10と、帯電手段としての帯電ローラ20と、露光手段としての露光装置30と、現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置60と、除電手段としての除電ランプ70と、を有して構成される。
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置され中間転写体50を張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。
中間転写体50には、その近傍にクリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、最終転写材としての転写紙95に現像像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。
また、中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー像に電荷を付与するためのコロナ帯電器52が、感光体ドラム10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部と、の間に配置されている。
現像装置40は、現像剤担持体としての無端状の現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cと、を有して構成される。なお、各色現像ユニット45は、現像剤収容部42と、現像剤供給ローラ43と現像ローラ44と、を備える。また、現像ベルト41は、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が感光体ドラム10と接触している。
図1に示す画像形成装置100では、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。
該可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、さらに転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体ドラム10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体ドラム10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
図2を参照して、上述の画像形成方法を実施する画像形成装置の他の態様について説明する。なお、同一の構成部材については、図1と同一の符号番号を付している。
図2に示す画像形成装置100は、現像ベルト41を備えておらず、感光体ドラム10の周囲に、各色現像ユニット45Y〜Kが直接対向して配置されていること以外は、図1に示す画像形成装置100と同様の構成を有する。このような構成においても上述の画像形成装置、画像形成方法と同様の作用効果を実現できる。
図3を参照して、上述の画像形成方法を実施する画像形成装置の他の態様について説明する。図3に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置であり、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400と、を有して構成される。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。該中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架されており、時計回り(図中矢印方向)に回転する。
支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。また、支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。
図4に示すように、タンデム型現像器120は各色画像形成手段18からなる。各色画像形成手段18は、感光体ドラム10と、感光体ドラム10を一様に帯電させる帯電器60と、各感光体ドラム10に形成された静電潜像を各色カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー)を用いて現像し、各色トナー像を形成する現像器61と、各色トナー像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、感光体ドラムクリーニング装置63と、除電器64とを備えている。
タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。露光装置21は、タンデム型現像器120を露光し、感光体ドラム10上に静電潜像を形成する。図4中、Lは、露光装置21からの露光を示す。
中間転写体50のタンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能となっている。
二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27と、を有して構成される。
また、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成するために該転写紙を反転させるシート反転装置28が配置されている。
次に、タンデム型現像器120を備えた画像形成装置100におけるフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。
まず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちにスキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読み取りセンサ36で受光されることで、カラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報が得られる。
ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報に基づいて、露光装置21は、各色に対応する静電潜像を、タンデム型現像器120の感光体ドラム10に形成する。各色静電潜像は、タンデム型現像器120の各色現像器61により現像され、各色トナー像となる。
形成されたブラックトナー像、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動する中間転写体50上に、順次重ねて転写(一次転写)され、中間転写体50上に合成カラー像(カラー転写像)が形成される。
給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、手差しトレイ51上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ58で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
そして、中間転写体50上に合成された合成カラー像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。
合成カラー像が転写されシート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出される。そして、定着装置25により、熱と圧力とにより合成カラー像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
本実施形態の画像形成装置および画像形成方法では、現像剤として上述のトナーを含有した現像剤、すなわち、流動性、定着性等のトナーとしての諸特性について良好で且つ優れた低温定着性と耐熱保存性とを両立するトナーを含有した現像剤を使用しているので、省電力及び待機時間の短縮を実現することができる。また、低温定着条件下でも高画質な画像を効率よく得ることができる。
<実施例と比較例の比較>
以下、上述した本発明の電子写真用トナーの実施例(1〜3)と、比較例(1〜3)と、の比較結果について、表を参照して説明する。
(実施例1)
実施例1のトナーは以下の工程により製造した。
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物67質量部と、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84質量部と、テレフタル酸274質量部と、ジブチルチンオキサイド2質量部とを投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、該反応液を10〜15mmHgの減圧下に5時間反応させて、未変性ポリエステルを合成した。
得られた未変性ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が5,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃であった。
ポリアルキレングリコールエステル化合物は、ポリエチレングリコールジステアリン酸(融点56℃ Mw=6000)200質量部と、未変性ポリエステル樹脂400質量部と、酢酸エチル800質量部と、を混合し、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスしてポリアルキレングリコールエステル化合物の分散を行い、ポリアルキレングリコールエステル化合物分散液を調製した。なお、25℃において分散溶媒である酢酸エチルへのポリアルキレングリコールエステル化合物の溶解度を測定したところ、0質量%であった。
水1000質量部、及びカーボンブラック「商品名Printex35」(デグサ株式会社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部と、上述の未変性ポリエステル1200質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。該混合物を150℃環境下において二本ロールで30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部と、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部と、テレフタル酸283質量部と、無水トリメリット酸22質量部と、ジブチルチンオキサイド2質量部とを仕込み、常圧下230℃で8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステル411質量部と、イソホロンジイソシアネート89質量部と、酢酸エチル500質量部とを仕込み、100℃下5時間反応させて、プレポリマー(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン30質量部とメチルエチルケトン70質量部とを仕込み、50℃で5時間反応を行い、ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)を合成した。得られたケチミン化合物(活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
ビーカー内に、プレポリマー15質量部と、未変性ポリエステル60質量部と、酢酸エチル130質量部と、ポリアルキレングリコールエステル化合物分散液100質量部とを入れ、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))10質量部と、マスターバッチ10質量部とを仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、ケチミン2.7質量部を加えて溶解させ、トナー材料の溶解ないし分散液を調製した。
イオン交換水306質量部、リン酸三カルシウム10質量%懸濁液265質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を混合撹拌し、均一に溶解させて水系媒体相を調製した。
水系媒体相150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これにトナー材料の溶解ないし分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化ないし分散液(乳化スラリー)を調製した。
攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃で12時間脱溶剤した。
分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後に濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、実施例1のトナー母体粒子を得た。
(実施例2)
実施例1において、トナー材料の溶解ないし分散液の調製におけるポリアルキレングリコールエステル化合物分散液の添加量を、100質量部から200質量部に変えた以外は、実施例1と同様の製造工程で製造し、実施例2のトナー母体粒子を得た。
(実施例3)
実施例1において、ポリアルキレングリコールエステル化合物分散液の調製で使用したポリエチレングリコールジステアリン酸(融点56℃、Mw=6000)をポリエチレングリコールジベヘニン酸(融点61℃、Mw=18000)に変えた以外は、実施例1と同様の製造工程で製造し、実施例3のトナー母体粒子を得た。
なお、25℃において有機溶剤に対するポリアルキレングリコールエステル化合物の溶解度を測定したところ、0質量%であった。
(比較例1)
実施例1において、トナー材料の溶解ないし分散液の調製におけるポリアルキレングリコールエステル化合物分散液の添加量を、100質量部から0質量部に変えた以外は、実施例1と同様の製造工程で製造し、比較例1のトナー母体粒子を得た。
(比較例2)
実施例1において、ポリアルキレングリコールエステル化合物分散液の調製で使用したポリエチレングリコールジステアリン酸(融点56℃ Mw=6000)をポリエチレングリコールジベヘニン酸(融点45℃ Mw=4000)に変えた以外は、実施例1と同様の製造工程で製造し、比較例2のトナー母体粒子を得た。
(比較例3)
実施例1において、ポリアルキレングリコールエステル化合物分散液の調製で使用したポリエチレングリコールジステアリン酸(融点51℃、Mw=2000)をポリエチレングリコールジステアリン酸(融点61℃、Mw=4000)に変えた以外は、実施例1と同様の製造工程で製造し、比較例3のトナー母体粒子を得た。
なお、25℃において有機溶剤に対するポリアルキレングリコールエステル化合物の溶解度を測定したところ、10質量%であった。
(トナーの製造)
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3のトナー母体粒子100質量部に対し、外添剤としての疎水性シリカ(「H2000」;クラリアントジャパン株式会社製)1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用い、周速30m/sとして30秒間混合し1分間休止する処理を5サイクル行い、目開き35μmメッシュで篩い、実施例1〜3及び比較例1〜3のトナーを製造した。
次に、トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(「オルガノストレートシリコーン」100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、コート層形成液を調製した。該コート層形成液を、流動床型コーティング装置を用い、粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面にコーティングして磁性キャリアを作製した。
(Tg測定結果)
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の各トナーについて昇温一回目のTgを測定した。Tgの測定結果を表1に示す。
なお、Tgは、DSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC−60」;島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、各トナー(試料)約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱し、示差走査熱量計(「DSC−60」;島津製作所製)によりDSC曲線を計測(作成)し、得られたDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、樹脂(又はトナー)の変極点以前の曲線と変極点以降の曲線との接線の交点から融点を算出した。また、同時にポリアルキレングリコールエステル化合物に由来するピークの値から、ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点(Tm)を求めた。
(現像剤の製造)
外添剤処理済の実施例1〜3及び比較例1〜3の各トナー5質量部とキャリア95質量部とをボールミル混合し、実施例1〜3及び比較例1〜3の各二成分現像剤を製造した。
得られた各現像剤について、定着性(耐ホットオフセット性及び低温定着性)、耐熱保存性、流動性、コピーブロッキング性を評価した。評価結果を表2に示す。
なお、該評価においては、タンデム型カラー電子写真装置(「Imagio Neo C350」;株式会社リコー製)の定着ユニットから、シリコーンオイル塗布機構を取り去り、オイルレス定着方式に改造して、温度及び線速を調整可能にチューニングした装置と、普通紙(「タイプTYPE 6000<70W>Y目」;株式会社リコー製)とを用いた。該タンデム型カラー電子写真装置は、A4サイズの用紙を毎分35枚連続印刷することができる。このとき、定着ローラの線速を125mm/sとし、ローラ温度を変化させて評価を行った。
(定着性/ホットオフセット性)
タンデム型カラー電子写真装置を用いて、普通紙に、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各単色のベタ画像を各単色で、0.85±0.3mg/cm2のトナーが現像されるように調整した。得られた画像を加熱ローラの温度を変えて定着させ、ホットオフセットの発生する定着温度(オフセット発生温度)を測定し、下記の評価基準によりホットオフセット性の評価を行った。
評価基準
◎:210℃以上
○:210℃未満190℃以上
△:190℃未満170℃以上
×:170℃未満
(定着性/低温定着性)
タンデム型カラー電子写真装置を用いて、普通紙をセットし、複写テストを行った。得られた定着画像を専用の布パットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とし、下記の評価基準により低温定着性の評価を行った。
評価基準
◎:100℃未満
○:120℃未満100℃以上
△:140℃未満120℃以上
×:140℃以上
(耐熱保存性)
50mlのガラス容器に各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した。このトナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により針入度(mm)を測定し、下記の評価基準により耐熱保存性の評価を行った。
なお、針入度の値が大きいほど耐熱保存性が優れていることを示し、5mm以下の場合には、使用上問題が発生する可能性が高い。
評価基準
○:針入度25mm以上
△:針入度15mm以上25mm未満
×:針入度15mm未満
(流動性)
測定装置としてパウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用い、振動台上に、バイブロシュート、パッキン、スペースリング、フルイ(3種類/上>中>下)、オサエバー、をこの順にセットし、次いで、ノブナットで固定し、振動台を作動させた。なお、詳細な条件は、以下の通りである。
測定条件
フルイ目開き(上):75μm
フルイ目開き(中):45μm
フルイ目開き(下):22μm
振巾目盛:1mm
試料採取量:10g
振動時間:30秒
上述の条件にて測定した後、下記の数式1〜4に基づいて、トナーの凝集度(%)を算出し、下記の評価基準により、流動性の評価を行った。
A(%)=(上段のフルイに残った粉体重量/試料採取量)×100
・・・式(3)
B(%)=(中段のフルイに残った粉体重量/試料採取量)×100
・・・式(4)
C(%)=(下段のフルイに残った粉体重量/試料採取料)×100
・・・式(5)
凝集度(%)=A+B+C ・・・式(6)
評価基準
◎:凝集度が5%未満
○:凝集度が10%未満
△:凝集度が20%未満
×:凝集度が20%以上
(コピーブロッキング)
画像面積率7%の標準画像を連続して1,000枚出力し、用紙同士の接着状態を目視にて観察し、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
◎:用紙同士が問題なく1枚1枚分離されている状態
○:スタックされた下部の用紙のみが一部分離の必要あり
△:分離はされるが、スタックされた用紙上下にしごかないと分離し難い状態
×:スタックされた用紙を上下にしごいても、部分的に接着している状態
<比較結果の評価>
上述の評価テストの結果を示す表1及び表2により、以下のことが明らかである。
実施例1のトナー・現像剤は、流動性及び耐熱保存性に優れ、定着性が良好であり、コピーブロッキングが発生しない。
実施例2のトナー・現像剤は、実施例1よりもポリアルキレングリコールエステル化合物濃度が高いため定着下限温度に優れる。
実施例3のトナー・現像剤は、実施例1と異なる種類のポリアルキレングリコールエステル化合部を用いているが、実施例1と同等の特性を有する。
比較例1のトナー・現像剤は、トナーがポリアルキレングリコールエステル化合物を含まないため、低温定着性に劣る。
比較例2のトナー・現像剤は、ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点が低いため、耐熱保存性及び流動性が悪い。
比較例3のトナー・現像剤は、ポリアルキレングリコールエステル化合物が有機溶剤に溶解し保存時に既にポリエステル樹脂と相溶化しているため、耐熱保存性及び流動性に劣る。
<付記事項>
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施形態の一例を示すものにすぎず、本発明の実施の形態を限定する趣旨のものではない。よって、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形実施を行うことが可能である。