JP4647384B2 - 全芳香族ポリアミドと薄層カーボンナノチューブとからなるコンポジットファイバー - Google Patents
全芳香族ポリアミドと薄層カーボンナノチューブとからなるコンポジットファイバー Download PDFInfo
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1.下記式(A)及び(B)
―NH―Ar1―NH― (A)
―OC―Ar2―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar1、Ar2は各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の構成単位から主としてなる全芳香族ポリアミド100重量部と外径が0.7〜50nm、平均アスペクト比が5.0以上、層数2〜10の薄層カーボンナノチューブ0.01〜20重量部から構成されるコンポジットファイバーであり、全芳香族ポリアミド中に薄層カーボンナノチューブが、凝集直径が200nm以下で分散していることを特徴とするコンポジットファイバー。
P=IYY/IXX (1)
(式中、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。)
で表される配向度Pが0より大きく0.2以下を満たすことを特徴とする上記記載のコンポジットファイバー。
及び
であり、Ar2が
(薄層カーボンナノチューブについて)
本発明において、薄層カーボンナノチューブとは、外径がおよそ0.7〜50nm、好ましくは1.4〜30nm、長さがおよそ10nm〜10μmのカーボンからなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては炭素の6角網目の面(グラフェンシート)がチューブ軸に平行に管を形成し、多重管になっているものであって、層数としては2〜10であることが好ましい。
一方で、薄層カーボンナノチューブは、表面修飾を行ったとしても内部にあるナノチューブの構造は保たれるため、単層カーボンナノチューブよりも好ましい。
本発明のコンポジットファイバーにおける全芳香族ポリアミドは、実質的に下記式(A)及び(B)
―NH―Ar1―NH― (A)
―OC―Ar2―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar1,Ar2は各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
の2つの構成単位が交互に繰り返された構造からなる全芳香族ポリアミドである。
Ar2はメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好ましく、パラフェニレン基がさらに好ましい。
及び
であり、Ar2が
本発明のコンポジットファイバーの組成としては全芳香族ポリアミド100重量部に対して、薄層カーボンナノチューブが0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。薄層カーボンナノチューブが0.01重量部未満であると機械特性の向上の効果が観察されにくく、20重量部より上のものは薄層カーボンナノチューブの分散性が低下する。
本発明ではコンポジットファイバー中の薄層カーボンナノチューブが、凝集直径が200nm以下で分散していることを特徴とする。本発明において薄層カーボンナノチューブの分散性は繊維軸と平行に切断した繊維断面を直接TEM等の電子顕微鏡で観察することができる。
本発明ではコンポジットファイバー中の薄層カーボンナノチューブが、繊維軸方向に配向していることを特徴とする。かかる薄層カーボンナノチューブの配向性は繊維軸と平行に切断した繊維断面を直接TEM等の電子顕微鏡で観察する他に、偏向ラマン分光測定により評価する。
P=IYY/IXX (1)
(式中、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。)
で表される配向度Pにて配向性を評価する方法である。本発明では配向度Pが0以上0.2以下を満たすことが好ましい。
本発明のコンポジットファイバーは単繊維径は0.01〜1000dtexである。好ましくは、0.1から500dtexである。
本発明のコンポジットファイバーの製造法としては、全芳香族ポリアミドと薄層カーボンナノチューブの混合溶液を調製し、その混合溶液から紡糸する方法が好ましい。
そこで本発明者らは、カーボンナノチューブ分散液の分散性を向上させる方法として、カーボンナノチューブ溶媒分散液に少量の全芳香族ポリアミドを分散剤として添加し、分散させることで飛躍的にカーボンナノチューブの分散性が向上することを見出した。
分散溶媒は、種類が特に限定されるものではなく、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等、100%硫酸、りん酸、ポリりん酸、メタンスルホン酸等の酸溶媒が挙げられる。これらの液体は単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。これらの分散媒は、薄層カーボンナノチューブを分散させるのに好ましい液体である。また、分散性を阻害しない範囲において水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールといった1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールといった2価アルコール、グリセリンといった3価アルコール、アセトンといったケトン類、テトラヒドロフランといった環状エーテル、1,2−ジクロロベンゼンといったハロゲン化芳香族炭化水素、クロロホルムといったハロアルカン、1−メチルナフタレンといった置換複素環化合物を含んでいてもさしつかえない。
本発明において、少量の全芳香族ポリアミドを分散剤として添加するによって薄層カーボンナノチューブ分散液の分散性が極めて向上する。
―NH―Ar1―NH― (A)
―OC―Ar2―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar1、Ar2は各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の2つの構成単位が交互に繰り返された構造からなる全芳香族ポリアミドである。
Ar2はメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好ましく、パラフェニレン基がさらに好ましい。
分散剤としての全芳香族ポリアミドの使用量としては薄層カーボンナノチューブに対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.2〜20重量%であることがより好ましい。
得られた薄層カーボンナノチューブ分散液を濃縮することにより、分散性を保持したまま高濃度の薄層カーボンナノチューブ分散液を得ることも可能である。
薄層カーボンナノチューブ分散液と全芳香族ポリアミド溶液とを混合する方法としては、特に限定はされないが、超音波や各種攪拌方法を使用することができる。
(1)コンポジットファイバー中のカーボンナノチューブの凝集直径:EFI社製TECNAI12 BIO TWINを用いて繊維軸と平行に切断した繊維断面(倍率:10万倍)を用いて4μm2の範囲での凝集直径を直接観察することにより評価した。
(2)偏向ラマン分光測定:ラマン分光装置は,顕微レーザーラマン分光測定装置(堀場ジョバンイボン製LabRamHR)を用いた。励起レーザー光源として波長785nmの半導体レーザーを用い,レーザービーム径は約1μmに集光した。かかる装置を使い、以下のようにして偏光ラマン分光測定を行なった。入射レーザーを繊維組成物の側面に繊維軸と直交方向から照射してカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定する際、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のラマンシフト波数1580cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド強度(IXX),レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度(IYY)を測定した。
(3)ラマン分光測定:ラマン分光装置は,顕微レーザーラマン分光測定装置(堀場ジョバンイボン製T64000)を用いた。励起レーザー光源として波長514.5nmのArイオンレーザーを用い,レーザービーム径は約1μmに集光した。D/Gの値はラマンシフト波数1360cm−1付近のディスオーダー構造由来のDバンド強度とラマンシフト波数1580cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド強度から算出した。
(4)繊維の機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aを用いて、得られた繊維の単糸での引張り試験を行い、弾性率および強度を求めた。
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコに、脱水精製したNMP2152g、p−フェニレンジアミン27.04g及び3、4’―ジアミノジフェニルエーテル50.06gを常温下で添加し窒素中で溶解した後、氷冷し攪拌しながらテレフタル酸ジクロリド101.51gを添加した。その後徐々に昇温して最終的に80℃、60分反応させたところで水酸化カルシウム37.04gを添加して中和反応を行い、NMPのアラミド樹脂溶液を得た。得られたドープを水にて再沈殿することにより得たアラミド樹脂の濃度0.5g/100mLの濃硫酸溶液を30℃で測定した特有粘度は3.5dL/gであった。
NMP30gに薄層カーボンナノチューブ(DWNT シンセンナノテクポート社製 D/G=0.21)0.1gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この薄層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む薄層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、薄層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに薄層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド100重量部/薄層カーボンナノチューブ1重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から200nmを超える薄層カーボンナノチューブの凝集物は観察されなかった。偏向ラマン分光測定から配向係数Pは0.11であった。ファイバーの単繊維径は1.6dtex、弾性率は84.1GPa、強度は25.60cN/dtexであった。
NMP30gに薄層カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブA+Bタイプ マイクロフェーズ社製 D/G=0.22)0.1gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この薄層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む薄層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、薄層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに薄層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド100重量部/薄層カーボンナノチューブ1重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から200nmを超える薄層カーボンナノチューブの凝集物は観察されなかった。偏向ラマン分光測定から配向係数Pは0.13であった。ファイバーの単繊維径は1.7dtex、弾性率は79.9GPa、強度は25.57cN/dtexであった。
NMP30gに薄層カーボンナノチューブ(DWNT Nanocyl社製 D/G=0.13)0.1gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この薄層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む薄層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、薄層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに薄層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド100重量部/薄層カーボンナノチューブ1重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から200nmを超える薄層カーボンナノチューブの凝集物は観察されなかった。偏向ラマン分光測定から配向係数Pは0.14であった。ファイバーの単繊維径は1.7dtex、弾性率は82.6GPa、強度は24.50cN/dtexであった。
NMP30gに多層カーボンナノチューブ(MWNT 外径60〜100nm シンセンナノテクポート社製)0.1gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この多層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む多層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、多層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに多層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド100重量部/多層カーボンナノチューブ1重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から200nmを超える多層カーボンナノチューブの凝集物が観察された。また、多層カーボンナノチューブとポリマーとの界面でクラックが発生していることが確認された。ファイバーの単繊維径は1.7dtex、弾性率は69.9GPa、強度は21.60cN/dtexであった。
参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液245gに、さらにNMP55gを加えて温度80℃で4時間攪拌することにより、実施例1とほぼ同じポリマー濃度であるカーボンナノチューブを含まないアラミド樹脂溶液を得た。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,ファイバーを得た。ファイバーの単繊維径は1.7dex、弾性率は76.1GPa、強度は23.70cN/dtexであった。
Claims (5)
- 下記式(A)及び(B)
―NH―Ar1―NH― (A)
―OC―Ar2―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar1、Ar2は各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の構成単位から主としてなる全芳香族ポリアミド100重量部と外径が0.7〜50nm、平均アスペクト比が5.0以上、層数2〜10の薄層カーボンナノチューブ0.01〜20重量部から構成されるコンポジットファイバーであり、全芳香族ポリアミド中に薄層カーボンナノチューブが、凝集直径が200nm以下で分散していることを特徴とするコンポジットファイバー。 - 偏光ラマン分光測定で入射レーザーを繊維の側面に繊維軸と直交方向から照射したときのカーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて下記式(1)
P=IYY/IXX (1)
(式中、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。)
で表される配向度Pが0より大きく0.2以下を満たすことを特徴とする請求項1に記載のコンポジットファイバー。 - 用いられる薄層カーボンナノチューブのラマン分光測定から算出したD/G値(Dバンド強度/Gバンド強度)が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のコンポジットファイバー。
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