JP4647047B2 - 過冷却制御冷蔵庫 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮食品等を保冷し貯蔵する冷蔵庫内の温度を一時的に凍結点以下の過冷却状態とし、食品の長期保蔵と食品のおいしさを促進することを目的とする過冷却制御冷蔵庫に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、青果物や肉・魚介類の生鮮食品、または豆腐やハム・かまぼこ等の加工食品を冷蔵で保存するには、凍結しないできるだけ低い温度と、結露しないできるだけ高い湿度での保存条件が好ましいとされ、高湿化技術や均温化技術が発達してきた。その代表的操作方法として、壁面冷却による方法がある。壁面冷却とは冷蔵庫内の壁面をその外周に流れる冷気で−3℃〜3℃前後に冷やし、扉をつけ冷蔵庫内の密閉性を上げることにより、冷蔵庫内を0〜5℃の範囲で均一に冷却すると共に、扉の開閉により進入する湿気を捕らえ、高湿化とするものである。冷気の漏れや進入が無く4面又は5面の壁面からの自然冷却であり、冷蔵庫内を均一に、また確実に冷却可能であり、庫内温度を0℃まで冷却しても冷蔵庫内の温度ムラが少なく、部分的に凍結することは少ない。
【0003】
しかし、均一に冷やすには庫内容量に制限があり、庫内容積が大きくなると、冷却面積の割合が低くなり、また、冷却されている壁面と保冷品との距離が離れることになり、庫内の中央部に置かれた食品は均一になるまで時間がかかり、冷却スピードが非常に緩慢となる。すなわち、既に冷えているものを保冷したり、長期保存する上においては問題は少ないが、家庭用冷蔵庫のように頻繁にドアの開け閉めが行われ、室温に置かれた食材や清涼飲料水やビール等を出し入れし、それらの保冷品を室温から適温に冷やすのに時間がかかり商品価値を著しく低下させる。
【0004】
そこで庫内の冷却速度を上げるには、冷媒が圧縮機と凝縮器と絞り弁と蒸発器を通り再度圧縮機に戻る冷凍サイクルと、蒸発器にて冷却された冷気を冷気循環ファンで冷蔵庫内に吐き出す冷却機構により冷蔵庫内を冷却する間接冷却方式が好ましい。
【0005】
しかし、この方法では庫内の設定温度より低い温度の冷気を吹き込む為に、庫内設定温度に調整するには、冷気循環ファン及び圧縮機と庫内温度検知器と連動させ、冷気の吹き込みを間欠運転とする必要がある。すなわち、図6の冷蔵庫内設定温度と品温の変化をグラフで示すように、品温の曲線が上下変動を繰り返す。
【0006】
又、冷蔵庫内の滞留部には冷気が回らず冷却不足となり、冷風吹き出し口近郊ではスポット的に過冷却となる所も存在する。結果的に冷蔵庫庫内は大きな温度ムラが生じる。この温度ムラを考慮して、温度が低くなる場所や温度変動において食品が凍結しない為に全体の設定温度を高くしておく必要があった。特に生鮮食品である野菜や果物が凍結すると細胞内の水分が凍結し、凍結による膨張により細胞を破壊することになる。よって、生鮮食品に対して最適の保存条件よりもかなり高い温度での保存を冷蔵庫では余儀なくされ、鮮度を維持することは非常に困難であった。
【0007】
間接冷却方式で均温化するにはダンパーの開閉を小さくし流れ込む冷気の量を絞り込む方法もあるが、冷蔵庫内容量が小さいと、かなりの均温化は図れるが、壁面冷却と同じように容量が大きくなると温度ムラが大きくなることには変わりがない。
【0008】
さらにこのような冷却方法では非常に低い蒸発器表面を通り抜けてくるため蒸発器表面で除湿され、吹き出される冷気は相対湿度が低くなり、保冷材である食品の乾燥を促進させることになる。
【0009】
上記問題点の解決策として、特開平10−318645号公報では冷蔵室と野菜室とからなる冷蔵庫内と、温度帯の違う冷凍庫内とからなり、それぞれの冷却温度に応じ冷気循環ファンと能力可変圧縮機の回転数が設定され、各冷気循環ファンは庫内温度検知機構である温度センサーの出力に応じて回転数を可変して各目的温度別室の温度調節を可能にすることで、極端に冷蔵庫内の設定温度と冷気循環ファンにより送り込まれてくる冷風温度との間に大きな温度差を無くすために風量を調整できるようにしている。
【0010】
さらに最近の家庭用冷凍冷蔵庫では冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器とを並列に連結し、冷蔵用蒸発器内の蒸発温度を上げ、蒸発器の表面温度を高く設定し除湿効果を下げ、さらに、圧縮機停止時には冷蔵庫内側の蒸発器についた霜を、冷気循環ファンのみを稼動し、冷蔵庫内の加湿を行う機構が搭載されている。
【0011】
又、特開平8−247608号公報では冷却器で冷やされた冷気は冷気案内通路を通過して冷蔵庫庫内に供給されるが、冷気吐き出し口に回転冷気吐き出し部材を設けることにより冷気を左右に分散し冷蔵庫内を均一に冷却する様に工夫されている。
【0012】
また、特開平7−115952号公報には生体にストレスを付与しうまみを向上させる方法が記載されている。すなわち、野菜類,果物類,穀物類,活魚,貝類などの呼吸をしている生体へ、0℃以下の低温帯下で乾燥,加水,圧力,光線,雪,音波などによるストレス処理を与えることにより生体内に各種旨み関連成分を分泌させ、未熟のものを完熟に、本来旬の味で無いものを旬の味に、さらにそれ以上の味覚に旨みを向上させることができると記載され、この効果を証明する自然界の現象として、霜が降りた時の白菜の甘味の増加等がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−318645号公報のようにそれぞれの冷却温度に応じた冷気循環ファンを設け、能力可変圧縮機で冷蔵温度帯に合わせて回転数を設定し、各冷気循環ファンを温度センサーの出力に応じて回転数を可変して目的の温度調節を可能にしたところで、また、特開平8−247608号公報の様に冷気吐き出し口の回転冷気吐き出し部材によって冷気を左右に分散し冷蔵庫内を均一に冷却する様にしても、特開平7−115952号公報に示すような過冷却状態で食品を保存することはできず、庫内温度の設定を下げると庫内の一部にて食品の凍結が進み、細胞が破壊され食品の味覚の低下が進むことになる。
【0014】
又、0℃以下の低温帯下で乾燥,加水,圧力,光線,雪,音波などによるストレス処理を与えても、家庭用冷蔵庫にて温度を長期にわたり一定にすることは不可能であり、何らかの刺激により氷の核が形成すると一気に凍結が開始され生鮮食品の細胞が破壊されることになる。
【0015】
そこで本発明は、上記生鮮食品の旨みを引き出し、熟成を促進させ、野菜等の蒸発抑制を行うことのできる過冷却制御冷蔵庫を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記する目的を達成する為に、開閉可能な扉を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の庫内を冷却する冷却手段と、前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度を検知する温度検知手段と、前記冷却手段と前記温度検知手段とを連動させ庫内を所定の温度設定値に制御する制御手段とを持ち、通常時には前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度設定値は貯蔵される保冷品の凍結点以上、水分を含む食材に対しては0℃以上の冷蔵温度帯で運転され、過冷却運転時には所定の時間、保冷品の凍結点以下の温度設定値である過冷却温度帯で運転し、保冷品を貯蔵するものである。
【0017】
また、開いた扉が閉じた時を検知手段により検知して過冷却運転を開始し、あるいは、過冷却温度帯での運転を終えた後、通常の冷蔵運転での温度設定値による冷却手段の稼動と停止が1回以上繰り返された時を過冷却運転の開始タイミングとすることを特徴とするものである。
【0018】
また、ガラス板上に二枚の水を含むろ紙を置き、前記二枚のろ紙に挟まれた温度計の値を保冷品の表面温度とした時、冷蔵温度帯での保冷品の表面温度が1K低下するに要する単位時間に対し、過冷却温度帯での所定の運転時間を前記単位時間の80倍より短時間としたものである。
【0019】
また、冷媒が圧縮機と凝縮器と絞り弁と蒸発器を通り再度圧縮機に戻る冷凍サイクルと、前記蒸発器で冷やされた冷気を断熱箱体の冷蔵庫内に均一に循環させるマルチダクトと冷気循環ファンとで構成された冷却手段を特徴とするものである。
【0020】
また、冷気循環ファンを能力可変型とし、温度検知手段により前記冷気循環ファンの回転数を制御する回転数制御手段を特徴とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、開閉可能な扉を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の冷蔵庫内を冷却する冷却手段と、前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度を検知する温度検知手段と、前記冷却手段と前記温度検知手段とを連動させ冷蔵庫内を所定の温度設定値に制御する制御手段とを有し、過冷却運転時には、保冷品の凍結点以下の温度設定値である過冷却温度帯で運転することで、一時的に前記保冷品は凍結点以下になるもののすぐに凍結が進むことは無く過冷却状態となり保冷品を貯蔵することを特徴とするもので、一時的に保冷品は凍結点以下になるもののすぐに凍結が進むことは無く過冷却状態となり、又、凍結が開始されたとしても凝固熱を必要とする為に容易には凍結を完了させない。また過冷却状態における生鮮食品は特開平7−115952号公報に示すような効果を発し、生鮮食品の旨みを引き出し、熟成が促進される。さらに、野菜等においては気孔が収縮し水分の蒸散が少なくなる効果を持つ。
【0022】
また、本発明は、保冷品を青果物類,生鮮野菜類,穀物類,ナッツ類,魚介類,肉類,練り物類,等の食品の時、凍結点を水の氷結点である0℃とすることを特徴とするもので、0℃とすることにより、食品中の水分率の大小にかかわらず、すべての食品に対応できる過冷却制御冷蔵庫を得ることができる。
【0023】
また、本発明は、開いた扉が閉じた時を検知手段により検知して過冷却運転を開始することにより、扉の開閉により上昇した冷蔵庫内を一気に低下させ、新しい保冷品を過冷却運転とすることで保冷品の鮮度保持効果と熟成効果とをより早く授与するものである。
【0024】
また、本発明は、過冷却温度帯での運転を終えた後、通常の冷蔵運転での温度設定値による冷却手段の稼動と停止が1回以上繰り返された時を過冷却運転の開始時機とすることにより、凍結が進み出した食品の出現があっても、通常の冷蔵運転でのサイクルを一回でも行うことにより過冷却運転の影響から解き放ち、確実に凍結を防止するものである。
【0025】
また、本発明は、ガラス板上に二枚の水を含むろ紙を置き、前記二枚のろ紙に挟まれた温度計の値を保冷品の表面温度とした時、冷蔵温度帯での保冷品の表面温度が1K低下するに要する単位時間に対し、過冷却温度帯での所定の運転時間を前記単位時間の80倍より短時間とすることで、凝固熱分の熱量を消費するまでに過冷却運転を停止することで、細胞内の破壊を防止できる。
【0026】
また、本発明は、冷媒が圧縮機と凝縮器と絞り弁と蒸発器を通り再度圧縮機に戻る冷凍サイクルと、前記蒸発器で冷やされた冷気を断熱箱体の冷蔵庫内に均一に循環させるマルチダクトと冷気循環ファンとで構成された冷却手段をもつことにより、吐き出し冷気の温度を庫内温度にできるだけ近づけ、収納量の大小にかかわらず冷蔵庫内の温度均一化をはかり、過冷却を確実に行うことができる。
【0027】
また、本発明は、冷気循環ファンを能力可変型とし、温度検知手段により前記冷気循環ファンの回転数を制御する回転数制御回路をもつもので、過冷却運転時には風量を増し、できるだけ早く過冷却状態にすることで乾燥の防止と熟成の促進を図るものである。
【0028】
以下本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における過冷却制御冷蔵庫の内部構造を示す断面図である。図1において、1は冷蔵庫3の断熱箱体を示しており、外装パネル5の内側に断熱材が設けられた構造となっている。断熱箱体1内には、上方から冷蔵室9,野菜室11,第1冷凍室13,第2冷凍室15が多段にて構成され、冷蔵室9,野菜室11,第1冷凍室13,第2冷凍室15にはそれぞれ開閉扉17,18,19,20が設けられ、各開閉扉17,18,19,20の開閉により食品等の保冷品21の出し入れが可能となる。
【0030】
野菜室11と第1冷凍室13の間は断熱しきり壁22により、設定温度が異なる冷蔵庫内23と冷凍庫内25に独立して上下に仕切られている。
【0031】
冷蔵庫内23は、冷蔵室9と野菜室11とで構成され、冷蔵室9と野菜室11は、仕切り板27により冷気が循環するように上下に仕切られている。仕切り板27は同一温度の冷気が循環するところから、断熱材は必要とせず、冷蔵室9に設けられた脱着可能な棚29及び収納容器31と同一部材で薄く形成され、占有スペースが小さくてすむように設定されている。
【0032】
第1の蒸発器33において、熱交換された冷気は、第1の能力可変冷気循環ファン35によって開閉扉17側となる前方へ送り出された後、冷蔵室9,野菜室11を矢印のごとく流れ、後方の冷気流路41から再び第1の蒸発器33に戻る循環を繰り返すことで、適切な冷蔵庫内温度が得られるように設定されている。冷気流路41は、棚背面の一部分を切り欠くことで、前方側では冷蔵庫9から野菜室11へ抜ける開口部43を設けることで形成される。
【0033】
冷蔵庫内25は、第1冷凍室13,第2冷凍室15で構成され、仕切り板49により冷気が循環するよう上下に仕切られている。仕切り板49は、同一温度の冷気が循環するところから、断熱材は必要とせず、庫内に設けられた収納容器51と同一部材により薄く形成されている。第2の蒸発器53において熱交換された冷気は、第2の能力可変冷気循環ファン55によって一方は、仕切り板49の冷気流路61から第1冷凍室13内へ、他方は隅壁63と仕切り板49の間から第2冷凍室15へ送出される。また、第1冷凍室13内を通過した冷気は、第2冷凍室15へ抜ける仕切り板49の前方に形成された連通孔65を介して第2冷凍室15内で合流し、第2冷凍室15の収納容器51と冷蔵庫底壁66との隙間を通って再び第2の蒸発器53へ戻る循環を繰り返すことで−15℃以下の冷凍庫内温度が得られるように設定されている。
【0034】
また、断熱箱体1の最下部に設けられた機械室67には、能力可変圧縮機69が設けられると共に、凝縮器71,三方弁72,第1絞り弁73,第2絞り弁74も設けられ、上述した第1の蒸発器33,第1の能力可変冷気循環ファン35,第2の蒸発器53,第2の能力可変冷気循環ファン55と共に、図2に示す冷凍サイクルからなる冷却機構77(冷却手段)を構成するようになっている。
【0035】
すなわち、図2に示す冷凍サイクルでは、第1の蒸発器33と第2の蒸発器53は並列に接続され、圧縮機69から吐出された冷媒は、凝縮器71,三方弁72で二方向に切替が出来るようになっており、一方は第1絞り弁73より第1の蒸発器33に、又、もう一方は第2の絞り弁74を経て第2の蒸発器53の順に通過し、再び圧縮機69に戻る冷凍サイクル78を構成している。
【0036】
以上のように構成される冷蔵庫においては、能力可変圧縮機69は、それぞれの温度帯空間を構成する冷蔵庫内23には冷蔵庫内23の温度検知機構79(温度検知手段)が設けられ、冷凍庫内25には冷凍庫内25の温度検知機構81がそれぞれ設けられ、その出力と設定温度に応じて冷蔵庫内23,冷凍庫内25のいずれか一方の温度帯にあわせて回転数が設定され、また、第1及び第2の能力可変冷気循環ファン35,55はそれぞれの庫内温度検知機構79,81の出力に応じてそれぞれの回転数を可変制御することにより冷蔵庫内23、と冷凍庫内25の温度調整をそれぞれ行うことができる。
【0037】
なお、冷蔵庫内23の温度設定は断熱箱体1の外装パネルの制御装置83により設定されており、食品の凍結温度を境とする冷蔵温度値と過冷却温度値の2つの温度に設定可能にしてある。
【0038】
本実施の形態1で用いた具体値は、第1冷凍室13および第2冷凍室15は冷凍温度として−18〜−20℃に設定され、冷蔵室9及び野菜室11の冷蔵庫内23の温度は冷蔵温度値を3℃と過冷却温度値を−5℃に設定されている。冷凍庫内25では、第2の能力可変冷気循環ファン55の駆動によって第2の蒸発器53を通過した冷気は、上述したように第1冷凍室13と第2冷凍室15に供給され、この時の吹き出し空気温度が−24℃になるように第2の冷気循環ファン55の回転数を制御する。
【0039】
また、温度検出機構79と冷却機構77とを制御装置83(制御手段)にて連動させることにより冷蔵庫内23の温度をコントロールする。すなわち、冷蔵庫内23は、当初3℃に維持されるが、冷蔵庫の扉17、または野菜室の扉18の開閉を検知手段(図示せず)によって検知することにより制御装置83内の冷蔵庫内23の設定温度が−5℃に切り替わり、過冷却運転が開始される。過冷却設定運転は−5℃となることを検知し、制御装置83内のタイマー85により約10分経過することにより完了し、再び3℃の通常の冷蔵運転に切り替わる。又、制御装置83内の冷蔵運転への切り替わり時をスタートにして冷蔵庫内の3℃を基準とするノッチ数をカウントするカウンター87により、カウント数が2回経過してから再び−5℃の過冷却運転が開始されるように設定してある。よって、10分経過すると再び3℃の通常運転となる。すなわち、扉の開閉がなされるか、ノッチのカウント数が2回を示すかのタイミングがくると前記作用が繰り返されることとなる。
【0040】
第1の蒸発器33の温度は、図2に示す第2の絞り弁73と蒸発器53に直接接続されている為、絞り弁73により蒸発温度を自在に設定でき、本実施の形態においては−10℃の温度となるようにした。そこで、第1の能力可変冷気循環ファン35の回転数は冷気噴出し温度が−5℃程度になるように制御される。また、外気温度の変化または扉の開閉によって庫内の温度が変化した場合、能力可変圧縮機69の回転数は庫内温度に応じて制御されるが、過冷却設定運転時には能力可変冷気循環ファン35の最大風量になるように設定した。
【0041】
第2の蒸発器53の温度が変化すると、第1の蒸発器33の温度も変化するが、冷蔵室9への冷気吹き出し温度が設定温度となるように第1の冷気循環ファン35の回転数を可変し、冷蔵庫内23の温度を維持することができる。なお、圧縮機が停止しても第1の冷気循環ファン35は所定の時間がくるまで回転を続け、第1の蒸発器33の表面についた霜で冷蔵庫内23の加湿をおこなう。
【0042】
図3に示す冷蔵庫内の温度制御を中心とするフローチャートを参照して、本発明の実施の形態1の冷蔵庫通常運転動作と過冷却設定運転切り替わり時の運転動作について説明する。
【0043】
冷蔵庫3に電源が投入されて能力可変圧縮機69および第1および第2の能力可変冷気循環ファン35が動作する(ステップ320)。それから冷蔵庫内温度が3℃以上か否かをチェックし(ステップ330)、3℃以上であれば、ステップ320に戻って同じ動作を繰り返す。また、3℃以下である場合には圧縮機69をOFF(ステップ350)となる。この時循環ファン35は所定時間ONの状態を保ち、第1の蒸発器に33についた霜を融解し、冷蔵庫内23の加湿を行う。
【0044】
次に、再度冷蔵庫内23の庫内温度をチェックし(ステップ360)、3℃以上の場合はカウンター87のカウント数を1回カウントし、積算カウント数が2回以下の場合にはステップ320に戻り圧縮機をONさせる。ステップ360で冷蔵庫温度が3℃以下では圧縮機69の停止状態を継続する。ステップ320からステップ360のステップが繰り返されカウント数が2以上になると過冷却運転(ステップ380)にはいる。すなわち圧縮機69と冷気循環ファンは最大能力で運転され(ステップ390)、冷蔵庫内の温度を−5℃にまで冷却する。
【0045】
ステップ400では冷蔵庫内の温度が−5℃以上であれば圧縮機69と循環ファン35は運転状態を保ち、−5℃以下になればタイマーチェック(ステップ410)の工程に入る。すなわち、過冷却運転が開始してからの時間を測定しているタイマーの経過時間をチェックし、10分以内であれば運転を10分になるまで継続させ、10分経過すればステップ360に戻り同じ動作を繰り返して行う。
【0046】
また、扉の開閉信号が入ると過冷却運転が強制的にスタートする。
【0047】
なお、タイマーを10分と設定した理由は、本実施の形態において冷蔵庫内23に模擬負荷としてガラス板上に二枚の濡れたろ紙を置き、二枚のろ紙に挟まれた温度計の値を保冷品の表面温度とした時、冷蔵温度帯での保冷品の表面温度が1K低下するに要する単位時間が30秒であった実験結果を元に算出したもので、過冷却温度帯での所定の運転時間を前記単位時間の80倍より短時間としておくことで食品表面の凍結を回避するものである。すなわち計算上は約40分以内であれば凍結はしないが、安全を記して本実施例では10分と設定したものであり必ずしも10分と規制するものではない。
【0048】
また、カウント数を2回としたのは3℃の運転をしばらく続けることにより過冷却運転時の部分凍結を解消させる為であり、3℃の冷蔵運転が1回以上であれば問題はない。
【0049】
図4は本実施の形態1の冷蔵庫内23設定温度と品温の変化をプロットしたグラフであるが白菜やキャベツ等の食品の品温は0℃以下となっても凍結することなく保存されることを確認した。また、このように0℃以下となった食品は熟成が進み美味しくなることも確認できており、特に葉菜類は気孔が閉まり、初期的には蒸発が進むが、温度が安定すると蒸発量が低下する。
【0050】
また、能力可変圧縮機69および第1と第2の冷気循環ファン35,55を使用し冷蔵庫内23,冷凍庫内25の温度状況に応じて回転速度を可変することができるため庫内の温度変動が小さく各目的温度別室の設定温度にあった最適な制御を行うことができ省電力化を測ることができる。
【0051】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における過冷却制御冷蔵庫の内部構造を示す断面図である。なお実施の形態1と同じ構成部分については同一符号を付与し詳細な説明は省略する。
【0052】
図5において、第1の蒸発器33において、熱交換された冷気は、第1の能力可変冷気循環ファン35によって、複数の吹き出し口(後述)を設けたマルチダクト90,92の中を開閉扉17側となる前方へ運ばれ、吹き出し口94,96より冷蔵庫内23に吐出し、冷蔵室9,野菜室11を矢印のごとく流れ、後方の冷気流路41から再び第1の蒸発器33に戻る循環を繰り返すことで、適切な冷蔵庫内温度が得られるように設定されている。冷気流路41は、棚背面の一部分を切り欠くことで、前方側では冷蔵庫9から野菜室11へ抜ける開口部43を設けることで形成される。
【0053】
天面マルチダクト90、と側面マルチダクト92は、庫内に保冷品の収納の大小にかかわらず冷気を扉付近まで運ぶ働きを持ち全室均温に冷却されることになり、過冷却運転による冷気のスポット的な冷却から回避することができるもので、局部的な凍結が防止できる。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明は、開閉可能な扉を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の庫内を冷却する冷却手段と、前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度を検知する温度検知手段と、前記冷却手段と前記温度検知手段とを連動させ庫内を所定の温度設定値に制御する制御手段とを持ち、通常時には前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度設定値は貯蔵される保冷品の凍結点以上の冷蔵温度帯で運転され、過冷却運転時には所定の時間、保冷品の凍結点以下の温度設定値である過冷却温度帯で運転し保冷品を保存することを特徴とするもので、一時的に保冷品は凍結点以下になるがすぐに凍結が進むことは無いので過冷却状態を維持する。又、凍結が開始されたとしても凝固熱を必要とする為に容易には凍結が進むことはなく、過冷却状態における生鮮食品の旨みを引き出し、熟成が促進される効果を発揮する。さらに、野菜等においては気孔が収縮し水分の蒸散が少なくなる蒸発抑制効果を持つ。
【0055】
また、保冷品を青果物類,生鮮野菜類,穀物類,ナッツ類,魚介類,肉類,練り物類,等の食品の時、凍結点を水の氷結点である0℃とすることにより、食品中の水分率の大小にかかわらず、すべての食品に対応できる過冷却制御冷蔵庫となる。
【0056】
また、開いた扉が閉じた時を検知手段により検知して過冷却運転を開始することにより、扉の開閉により上昇した冷蔵庫内を一気に低下させ、より早く新しい保冷品を過冷却運転とすることで保冷品の鮮度保持効果と熟成効果と効果的に授与するものである。
【0057】
また、過冷却温度帯での運転を終えた後、通常の冷蔵運転での温度設定値による冷却手段の稼動と停止が1回以上繰り返された時を過冷却運転の開始時機とすることにより、局部的に凍結が進み出した食品の出現があっても、通常の冷蔵運転でのサイクルを一回でも行うことにより融解させ、確実に凍結を防止するものである。
【0058】
また、ガラス板上に二枚の濡れたろ紙を置き、前記二枚のろ紙に挟まれた温度計の値を保冷品の表面温度とした時、冷蔵温度帯での保冷品の表面温度が1K低下するに要する単位時間に対し、過冷却温度帯での所定の運転時間を前記単位時間の80倍より短時間とすることで、冷却により凝固熱分の熱量を消費するまでに過冷却運転を停止することで、完全凍結による細胞内の破壊を防止できる。
【0059】
また、冷媒が圧縮機と凝縮器と絞り弁と蒸発器を通り再度圧縮機に戻る冷凍サイクルと、前記蒸発器で冷やされた冷気を断熱箱体の冷蔵庫内に均一に循環させるマルチダクトと冷気循環ファンとで構成された冷却手段をもつことにより、吐き出し冷気の温度を庫内温度にできるだけ近づけ、冷蔵庫内の収納量に影響されずに冷蔵庫内の温度均一化をはかり過冷却制御運転を確実に行うことができる。
【0060】
また、冷気循環ファンを能力可変型とし、温度検知手段により前記冷気循環ファンの回転数を制御する回転数制御手段をもつもので、過冷却運転時には風量を増し、できるだけ早く過冷却状態にすることで乾燥の防止と熟成の促進を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における過冷却制御冷蔵庫の内部構造を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1における冷媒回路図
【図3】本発明の実施の形態1における基本動作を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1における冷蔵庫内温度設定値と品温変化を示す特性図
【図5】本発明の実施の形態2における過冷却制御冷蔵庫の内部構造を示す断面図
【図6】従来の冷蔵庫内温度設定値と品温の変化を示す特性図
【符号の説明】
1 断熱箱体
3 冷蔵庫
17,18 扉
21 保冷品
23 冷蔵庫内
33 蒸発器
35 第1の冷気循環ファン
55 第2の冷気循環ファン
69 圧縮機
71 凝縮器
73,74 絞り弁
77 冷却機構(冷却手段)
78 冷凍サイクル
79 温度検知機構(温度検知手段)
81 温度検知機構
83 制御装置(制御手段)
90,92 マルチダクト
Claims (6)
- 開閉可能な扉を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の冷蔵庫内を冷却する冷却手段と、前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度を検知する温度検知手段と、前記冷却手段と前記温度検知手段とを連動させ冷蔵庫内を所定の温度設定値に制御する制御手段とを有し、過冷却運転時には、保冷品の凍結点以下の温度設定値である過冷却温度帯で運転することで、一時的に前記保冷品は凍結点以下になるもののすぐに凍結が進むことは無く過冷却状態となり保冷品を貯蔵し、前記過冷却温度帯での運転を終えた後、通常の冷蔵運転での温度設定値による冷却手段の稼動と停止が1回以上繰り返された時を過冷却運転の開始時機とすることを特徴とする過冷却制御冷蔵庫。
- 開閉可能な扉を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の冷蔵庫内を冷却する冷却手段と、前記断熱箱体の冷蔵庫内の温度を検知する温度検知手段と、前記冷却手段と前記温度検知手段とを連動させ冷蔵庫内を所定の温度設定値に制御する制御手段とを有し、過冷却運転時には、保冷品の凍結点以下の温度設定値である過冷却温度帯で運転することで、一時的に前記保冷品は凍結点以下になるもののすぐに凍結が進むことは無く過冷却状態となり保冷品を貯蔵し、ガラス板上に二枚の水を含むろ紙を置き、前記二枚のろ紙に挟まれた温度計の値を保冷品の表面温度とした時、冷蔵温度帯での保冷品の表面温度が1K低下するに要する単位時間に対し、過冷却温度帯での所定の運転時間を前記単位時間の80倍より短時間としたことを特徴とする過冷却制御冷蔵庫。
- 保冷品は青果物類,生鮮野菜類,穀物類,ナッツ類,魚介類,肉類,練り物類,等の食品で、凍結点を水の氷結点である0℃としたことを特徴とする請求項1または2に記載の過冷却制御冷蔵庫。
- 開いた扉が閉じた時を検知手段により検知して過冷却運転を開始することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の過冷却制御冷蔵庫。
- 冷媒が圧縮機と凝縮器と絞り弁と蒸発器を通り再度圧縮機に戻る冷凍サイクルと、前記蒸発器で冷やされた冷気を断熱箱体の冷蔵庫内に均一に循環させる複数の吹き出し口を設けたマルチダクトと冷気循環ファンとで構成された冷却手段を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の過冷却制御冷蔵庫。
- 冷気循環ファンを能力可変型とし、温度検知手段により前記冷気循環ファンの回転数を制御する回転数制御手段を特徴とする請求項5に記載の過冷却制御冷蔵庫。
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